特許第6918276号(P6918276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6918276キトサン−プルロニック複合体、及びこれを含むナノ運搬体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918276
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】キトサン−プルロニック複合体、及びこれを含むナノ運搬体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20210729BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20210729BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20210729BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20210729BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20210729BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20210729BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   A61K47/36
   A61K47/10
   A61K47/34
   A61K9/51
   A61K8/73
   A61K8/86
   A61P17/00
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-520410(P2020-520410)
(86)(22)【出願日】2018年6月14日
(65)【公表番号】特表2020-524184(P2020-524184A)
(43)【公表日】2020年8月13日
(86)【国際出願番号】KR2018006706
(87)【国際公開番号】WO2018236090
(87)【国際公開日】20181227
【審査請求日】2019年12月20日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0078481
(32)【優先日】2017年6月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519456251
【氏名又は名称】スキンメドカンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】チェ ウォンイル
(72)【発明者】
【氏名】キム ソンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】シン ヨンチョル
(72)【発明者】
【氏名】イ ズンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジンファ
(72)【発明者】
【氏名】ユン ヨンソン
【審査官】 吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0087859(US,A1)
【文献】 Journal of Controlled Release,2010年,Vol. 143,p. 374-382
【文献】 Journal of Controlled Release,2010年,Vol. 147,p. 109-117
【文献】 ACS NANO,2010年,Vol. 4, No. 11,p. 6747-6759
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
A61K 8/00−8/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経皮透過用ナノ運搬体であって、
プルロニック高分子の両末端にキトサンが置換された、キトサン−プルロニック複合体、及びプルロニック高分子を含み、
前記プルロニック高分子が、下記化1で表され、
前記キトサン−プルロニック複合体とプルロニック高分子の重量比が、8:2である、
ナノ運搬体。
(化1)
(PEO)−(PPO)−(PEO)
(前記PEOはポリエチレンオキシド、前記PPOはポリプロピレンオキシドであり、前記a及びbはそれぞれ独立に1乃至300の整数である。)
【請求項2】
前記キトサン−プルロニック複合体における、キトサンの分子量が3乃至760kDaである、請求項に記載のナノ運搬体。
【請求項3】
前記ナノ運搬体は、大きさが500nm以下である、請求項に記載のナノ運搬体。
【請求項4】
前記ナノ運搬体は、表面電荷が0乃至50mVである、請求項に記載のナノ運搬体。
【請求項5】
前記ナノ運搬体は肌透過率の低い薬物又は活性成分を運搬する、請求項に記載のナノ運搬体。
【請求項6】
前記ナノ運搬体は、肌透過率の低い薬物又は活性成分のローディング(loading)効率が90%以上である、請求項に記載のナノ運搬体。
【請求項7】
前記肌透過率の低い薬物又は活性成分は、化粧品、医薬品、医薬外品、又は美容用品に使用される機能性の物質である、請求項に記載のナノ運搬体。
【請求項8】
前記ナノ運搬体は、化粧品、医薬品、医薬外品、又は美容用品に用いられる、請求項に記載のナノ運搬体。
【請求項9】
前記ナノ運搬体は、肌透過率の低い薬品又は活性成分を含有する薬物複合体に用いられる
、請求項に記載のナノ運搬体。
【請求項10】
(a)プルロニック高分子とキトサンとを混合し、プルロニック高分子の末端にキトサン
が置換された複合体を製造する段階と、
(b)前記複合体を溶媒としてのアセトンの存在下でプルロニック高分子と混合して混合物を製造する段階と、
(c)前記混合物を蒸留水に滴下する段階と、
(d)前記混合物が滴下した蒸留水を攪拌する段階と、を含み、
前記プルロニック高分子が、下記化1で表され、
前記キトサン−プルロニック複合体とプルロニック高分子の重量比が、8:2である、
請求項1に記載の経皮透過用ナノ運搬体の製造方法。
(化1)
(PEO)−(PPO)−(PEO)
(前記PEOはポリエチレンオキシド、前記PPOはポリプロピレンオキシドであり、前記a及びbはそれぞれ独立に1乃至300の整数である。)
【請求項11】
前記(a)段階で、3乃至760kDaの分子量のキトサンを混合する、請求項10に記
載のナノ運搬体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮透過用ナノ運搬体に関し、より詳細にはキトサンをベースとするナノスポンジ構造のナノ運搬体を提供する。
【背景技術】
【0002】
肌を通過する薬物は、使用の便利性により、肌を通して特定器官に伝達する目的を有する。これと共に、アトピー治療剤、美白、シワ改善用化粧品等肌自体に伝達する場合も存在する。
【0003】
肌はヒトの身体で表面積が最も大きな器官であって、適切な方法を使用する場合、効果的に薬物を伝達することができる経路になる。しかしながら、肌の一番外側で死んだ細胞から構成されている角質層により、外部物質の肌透過度は非常に低いため、分子量が大きく、親水性のある物質の伝達に困難がある。特に、角質層内の角質形成細胞とこれらの間の角質細胞間脂質である。殆どの肌で生理学的に活性を示す分子(以下、肌生理活性分子)は、肌角質層の抵抗性のため、経皮透過率が低くなる。
【0004】
このような肌生理活性分子の経皮透過率を促進させることができる様々な方法が研究されてきたが、最近、細胞透過性ペプチドを用いた伝達システムに多くの関心が集中している。細胞透過性を有するペプチドの使用は種々の長所を有するが、これは主に常時ペプチド配列に行われ得る様々な変形に起因する。
【0005】
しかしながら、ペプチドを用いた伝達システムは、従来、細胞透過性ペプチドを構成するアミノ酸配列の分析を通じて、特徴的なアミノ酸配列を選定、人工的に合成したものという点で、人体に適用するとき、免疫反応等の副作用を引き起こす素地があり、伝達しようとするタンパク質の構造及び機能に影響を与え得るため、細胞内へ伝達しようとする生物学的活性物質と連結する際に効率が低下するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10−2012−0104036号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、キトサンを含むナノ運搬体を提供することによって、化粧品及び医薬品分野に適用可能であり、生体適合性が高く、肌内薬物伝達に優れたナノ運搬体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、プルロニック高分子の両末端にキトサンが置換されたキトサン−プルロニック複合体を提供することを本発明の一側面とする。
【0009】
前記プルロニック高分子は、下記化学式1で表すことができる。
【0010】
(化1)
(PEO)−(PPO)−(PEO)
【0011】
(前記PEOはポリエチレンオキシド、前記PPOはポリプロピレンオキシドであり、前記a及びbはそれぞれ独立に1乃至300の整数である。)
【0012】
前記キトサンの分子量は、3乃至760kDaであり得る。
【0013】
また、本発明は、前記のキトサン−プルロニック複合体を含むナノ運搬体を提供することを本発明の別の側面とする。
【0014】
前記ナノ運搬体は、プルロニック高分子をさらに含むことができ、前記キトサン−プルロニック複合体と前記プルロニック高分子は総重量100重量%に対して、前記キトサン−プルロニック複合体は10重量%以上100重量%以下であり、前記プルロニック高分子は、0重量%以上90重量%以下の重量比で混合されたものであり得る。
【0015】
前記キトサン−プルロニック複合体における、キトサンの分子量が3乃至760kDaであってもよい。
【0016】
前記ナノ運搬体は、大きさが500nm以下であってもよく、好ましくは140nm以下であってもよい。
【0017】
前記ナノ運搬体は、表面電荷が0乃至50mVであってもよく、好ましくは11乃至18mVであってもよい。
【0018】
前記ナノ運搬体は肌透過率の低い薬物又は活性成分を運搬するものであってもよく、肌透過率の低い薬物又は活性成分のローディング(loading)効率が90%以上であってもよい。前記肌透過率の低い薬物又は活性成分は、疎水性の物質又は親水性の物質であってもよく、薬剤学的に許容される物質であってもよく、肌透過が難しいと判断される高分子量の物質を含んでもよい。
【0019】
前記肌透過率の低い薬物又は活性成分は、化粧品、医薬品、医薬外品、又は美容用品に使用される機能性の物質であってもよい。
【0020】
前記ナノ運搬体は、化粧品、医薬品、医薬外品、又は美容用品に用いられるものであってもよい。
【0021】
前記ナノ運搬体は、経皮透過用、経口投与用、又は侵襲用であってもよい。
【0022】
前記ナノ運搬体は、肌透過率の低い薬品又は活性成分を含有する薬物複合体に用いられることができる。
【0023】
また、本発明は、(a)プルロニック高分子とキトサンとを混合し、プルロニック高分子の末端にキトサンが置換された複合体を製造する段階と、(b)前記複合体を溶媒下でプルロニック高分子と混合して混合物を製造する段階と、(c)前記混合物を蒸留水に滴下する段階と、(d)前記混合物が滴下した蒸留水を攪拌する段階と、を含むナノ運搬体の製造方法を提供することを本発明のまた別の側面とする。
【0024】
前記(a)段階で、3乃至760kDaの分子量のキトサンを混合するものであってもよい。
【0025】
前記(b)段階で、前記複合体と前記プルロニック高分子は総重量100重量%に対して、前記キトサン−プルロニック複合体は10乃至100重量%であり、前記プルロニック高分子は、0乃至90重量%で混合することができる。
【発明の効果】
【0026】
前記のような本発明によると、キトサンを含む複合体をベースとする肌透過率が改善されたナノ運搬体を提供することによって、薬物又は化粧品物質等を肌内に効率的に伝達できるという効果がある。
【0027】
また、ナノ運搬体の凝集現象を最小化し、生体内の環境でも薬物又は化粧品物質等を安定的に伝達できるという効果がある。
【0028】
また、細胞毒性を引き起こさないので、生体適合性に優れた経皮透過用ナノ運搬体を提供するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施例に係るナノ運搬体の模式図である。
図2】本発明の一実施例に係る反応器が導入されたプルロニック高分子のH−NMRの分析結果である。
図3】本発明の一実施例に係るキトサン−プルロニック複合体のH−NMRの分析結果である。
図4】本発明の一実施例に係るナノ運搬体の大きさ及び表面電荷の測定結果である。
図5】本発明の一実施例に係るナノ運搬体の表面のキトサン量の測定結果である。
図6】本発明の一実施例に係るナノ運搬体の安定性の測定結果である。
図7】本発明の一実施例に係るナノ運搬体の薬物のローディング効率の分析結果である。
図8】本発明の一実施例に係るナノ運搬体の細胞毒性の分析結果である。
図9】本発明の一実施例に係るナノ運搬体を用いた薬物の肌透過率の測定結果である。
図10】本発明の一実施例に係るナノ運搬体を用いた薬物の肌透過分布イメージの測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明しようとする。これらの実施例は、ただ本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明である。
【0031】
実施例1.プルロニック高分子の両末端基に反応器導入
【0032】
2gのプルロニック(Pluronic F127、(PEO)−(PPO)−(PEO);前記a及びbはそれぞれ独立に1乃至300の整数である。)高分子の末端にアミンと反応性に優れた323mgのp−NPC(p−ニトロフェニルクロロホルメート、10分子比)を30mlのDCM(ジクロロメタン)で反応を行った。触媒剤として130μLのピリジン(pyridine)(10mr)を用いて、0℃で24時間反応した。以降、反応しないp−NPCとピリジンを除去するために、冷エーテル(cold ether)で精製(purification)を3回行った。
【0033】
前記の過程は、下記反応式1に示した。
【反応式1】
【0034】
【0035】
測定例1.p−NPC−プルロニックのH−NMR分析
【0036】
前記実施例1で製造されたp−NPC−プルロニック高分子を凍結乾燥(powdery state)した後、DOに溶かしてH−NMRを分析した。その結果を図2に示し、図2を参照すると、ピリジンが完璧に除去されたことが確認できる。(置換率>98%、純度100%)
【0037】
実施例2.キトサン−プルロニック(Chitosan−Pluronic)複合体の製造
【0038】
(1)実施例2−1.3kDaのキトサン−プルロニック複合体の製造
【0039】
前記実施例1で製造したp−NPC−プルロニックの両末端にキトサンを置換させるために、前記p−NPC−プルロニック300mgをDMSOに溶かした後、3kDaのキトサン900mgを触媒剤であるトリエチルアミン(triethylamine;TEA)と共に添加し、常温で12時間反応させた。以降、純度を向上させるために、反応しないキトサンはアセトンに沈殿させて除去し、未反応のTEAとp−NPCは冷エーテルから除去した。また、純度を向上させるために、キトサン−プルロニック複合体を3次蒸留水で透析(dialysis)して不純物を除去し、その後に凍結乾燥(powdery state)した。前述した過程は下記の反応式2に示した。
【0040】
(2)実施例2−2.10kDaのキトサン−プルロニック複合体の製造
【0041】
前記実施例1−1と同じように実施するが、10kDaのキトサンを用いた。
【反応式2】
【0042】
【0043】
測定例2.キトサン−プルロニック複合体のH−NMR分析
【0044】
前記実施例2−1及び2−2で製造したキトサン−プルロニック複合体(powdery state)をDOに溶かして、H−NMR分析を行い、その結果を図3に示した。図3(左側の結果:3kDaのキトサン使用(実施例2−1)、右側の結果:10kDaのキトサン使用(実施例2−2))を参照すると、キトサンの分子量と関係なく、98%以上の置換率を有するキトサン−プルロニック複合体を製造した。
【0045】
実施例3.ナノ運搬体の製造
【0046】
ナノ運搬体(3kDaのキトサンが置換されたナノ運搬体:Chi3K−NS、10kDaのキトサンが置換されたナノ運搬体:Chi10K−NS)は、前記実施例2で製造されたキトサン−プルロニック複合体とプルロニックの割合を調節し、ナノ沈殿法(nanoprecitation)を通じて製造した。より詳細には、前記実施例2で製造した3kDa又は10kDaのキトサンが置換されたキトサン−プルロニック複合体とプルロニックの割合を5:5、8:2、10:0の重量比で10mg/mlのアセトン(99%、sigma aldrich)の濃度で溶かして混合溶液を製造した後、混合溶液1mlを500rpmで攪拌(stirring)している5mLの3次蒸留水(Deionized Water)に0.1 ml/minの速度で徐々に投入した後、12時間以上常温で反応させ、この過程でアセトン溶媒は自然的に蒸発されて除去された。前述した製造過程は、下記の反応式3に示した。
【反応式3】
【0047】
【0048】
測定例3.ナノ運搬体の大きさ及び表面電荷の測定
【0049】
前記実施例3で製造したナノ運搬体を0.2μmのシリンジフィルタ(syringe filter)でフィルタした後、ナノスポンジ(2mg/mL)の大きさ及び表面電荷をDLS(ELS−8000、Otsuka Electronics Co.,Japan)装備を用いて分析し、その結果を図4に示した。
【0050】
図4を参照すると、製造されたナノ運搬体は均一な分布を示し、全てのグループで140nm以下の大きさを示し、配合割合及びキトサンの分子量による差は大きく表れなかった。
【0051】
しかしながら、表面電荷を測定した結果、キトサン−プルロニックとプルロニックの配合割合によってキトサンの量が多く投入される剤形の場合、より高い正電荷(約+11mV→約+18mV)を示し、キトサンの分子量による差は観察されなかった。
【0052】
測定例5.ナノ運搬体の表面のキトサン量の測定
【0053】
前記実施例3で製造したナノ運搬体の表面のキトサンの量を定量分析するために、ニンヒドリン法を用いて測定した。ナノ運搬体の溶液とニンヒドリン試薬(Nin−hydrin reagents)(2%溶液)を1:1の体積比で混合した後、90℃の条件で30分間反応させた。以降、最終反応溶液(紫色)を570nmのUV吸光度を測定してキトサンの量を定量し、その結果を図5に示した。
【0054】
図5を参照すると、配合割合によってキトサンの量が多く投入された剤形の場合、より多くの量のキトサンが存在した。
【0055】
測定例6.ナノ運搬体の安定性評価
【0056】
前記実施例3で製造したナノ運搬体の安定性を評価するために、生体内の環境と類似の条件(PBS(pH7.4)、37℃)で時間別にナノ運搬体の凝集現象が現れるかDLS装備で分析した。より具体的には、7日間37℃及び100rpmの条件下でキトサンの安定性が維持されるか観察をし、その結果を図6に示した。図6を参照すると、0乃至7日間凝集現象が現れずに均一な大きさがよく維持されることが観察されたことによって、生体内の環境で安定できることを確認できる。
【0057】
測定例7.薬物のローディング効率及び薬物がローディングされたナノ運搬体の特性評価
【0058】
モデル薬物として疎水性の特定を有し、赤色の蛍光を示せるナイルレッド(Nile Red)(ex.530nm/em.635nm)を使用し、ナノ運搬体の製造時に共にローディングさせた後、ローディング効率を分析した結果、約95%程度の高いローディング効率を示した。
【0059】
薬物をローディングした後、ナノ運搬体の大きさ及び表面電荷の変化を観察した結果を図7に示し、図7を参照すると、全ての条件で薬物のローディング前後の大きさ及び表面電荷に微細な差は存在するが、統計学的には差がないことによって、薬物がナノスポンジの内側の疎水性高分子部分に安定的に捕集されたことを確認できる。
【0060】
測定例8.ナノ運搬体の細胞毒性評価
【0061】
Mouse Embryonic fibrolast cell line(NIH/3T3、passage #15、1×10cells/wess)を96ウェルセルカルチャープレート(well cell culture plate)に塗布後、12時間程度安定化させた。(細胞培地:DMEM(FBS10%、抗生物質1%を含む))
【0062】
以降、モデル薬物であるナイルレッド(Nile red)がローディングされたナノ運搬体を1000μg/mLまで製造後、細胞に添加した後に24時間培養した後、それぞれのグループで細胞代謝作用に及ぼす影響に対してWST−8評価法を使用して分析した後、結果を図8に示した。
【0063】
図8を参照すると、全ての条件で1000μg/mLまで細胞毒性を引き起こさず、生体適合性に優れるということが確認できる。
【0064】
測定例9.薬物の肌透過率評価
【0065】
薬物の肌透過実験のために、フランツ型拡散セル(Franz type diffusion cell)のレセプターチャンバー(receptor chamber)にリリースバッファー(release buffer)であるPBSを5ml入れた後、レセプターチャンバーとドナーチャンバー(donor chamber)との間にヒト死体皮膚(human cadaver skin)を1.5×1.5cmの大きさで覆った後、フランツセルのドナー部分に2mg/mLの各サンプル(薬物(Nile red)がローディングされたナノ運搬体)を入れた。
【0066】
レセプターチャンバーの条件は37℃、600rpmに調節し、サンプル時間(sampling time)は0.5、1、2、4、8、12、18、24時間で500μLずつ回収し、時間別に肌を通して透過して出た薬物の量を、蛍光を測定して分析し、その結果を図9に示した。
【0067】
図9を参照すると、対照群(薬物自体)よりもナノ運搬体の剤形を使用した場合、薬物の肌透過率が4倍以上増加することが確認でき、特に3kDaのキトサンに置換されたナノ運搬体8:2の配合割合を剤形(3k−8:2)で最も高い薬物の肌透過率が観察された。(対照群に比べて約8倍向上した)
【0068】
また、ナノ運搬体の剤形のうち、10kDaのキトサンに置換した場合よりも3kDaのキトサンを使用した剤形の場合、薬物の肌透過率を向上させることによって、キトサンの分子量も薬物の肌透過率に影響を与え得るということが確認できる。
【0069】
薬物の肌透過実験を完了した後、薬物が肌内にどのように分布されているか確認するために、肌を10%中性ホルマリン溶液で12時間以上固定させ、固定された肌をOCT compoundと混合して液体窒素及び20℃以下で凍らせた後、cyro−section機器(−25℃)を通して20μmの厚さで肌を切った後、スライドガラスに付着させてサンプリングした。以降、3次蒸留水で洗浄した後、蛍光顕微鏡でモデル薬物(Nile red)の肌内分布現況を観察し、その結果を図10に示した。
【0070】
図10を参照すると、ナノ運搬体を使用しない対照群グループ(Drug(Nile red)alone)では、疎水性及び低分子の特性を有する薬物が角質層に集まっていることが観察され、それに対して、ナノ運搬体を使用したグループでは、薬物が角質層を透過し、表皮及び真皮層にむらなく広がっていることが観察された。
【0071】
特に、最適の剤形条件である3kDaのナノ運搬体8:2の配合割合(Chi3k−NS)で高い蛍光が観察されたことによって、様々な難病の治療薬物を肌内に伝達するために、新規のプラットフォームに使用されることができることを確認した。
【0072】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者において、このような具体的な技術は単に好ましい実施態様であるだけであり、これによって本発明の範囲が制限されるものではない点は明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10