特許第6918279号(P6918279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6918279癌および感染症の治療のために骨髄由来抑制細胞分化を誘導する方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918279
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】癌および感染症の治療のために骨髄由来抑制細胞分化を誘導する方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20210729BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210729BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210729BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20210729BHJP
【FI】
   A61K39/395 DZNA
   A61P35/00
   A61K39/395 E
   A61K39/395 T
   A61K39/395 N
   A61K45/00
   C12Q1/686
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-520986(P2017-520986)
(86)(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公表番号】特表2017-538669(P2017-538669A)
(43)【公表日】2017年12月28日
(86)【国際出願番号】IB2015058124
(87)【国際公開番号】WO2016063233
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2018年10月18日
(31)【優先権主張番号】14190370.8
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517129245
【氏名又は名称】オーエスイー イムノセラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポワリエ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンホーブ、ベルナール
【審査官】 大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/056352(WO,A1)
【文献】 CHAO Mark P., MAJETI Ravindra and WEISSMAN Irving,Blood,2012年 5月 3日,Vol. 119, No. 18,pp. 4334-4335
【文献】 SOLITO Samantha et al.,ANNALS OF THE NEW YORK ACADEMY OF SCIENCES,2014年 6月,Vol. 1319, Issue 1,pp. 47-65,DOI: 10.1111/nyas.12469
【文献】 DUGAST Anne-Sophie et al.,The Journal of Immunology,2008年 6月15日,Vol. 180, Issue 12,pp. 7898-7906,DOI: 10.4049/jimmunol.180.12.7898
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−51/12
A61P 1/00−43/00
C12Q 1/00− 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞癌又はメラノーマの治療および予防のための医薬組成物であって、特異的にSIRPaと結合し、SIRPaとCD47の間の相互作用を遮断する、抗シグナル調節タンパク質アルファ(抗SIRPa)抗体または、その抗原結合性フラグメントを有効成分として含有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記肝細胞癌又はメラノーマが転移性である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が第2治療薬と併用される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記第2治療薬が化学療法剤、放射線療法、免疫療法剤、抗生物質およびプロバイオティックスから成る群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記第2治療薬が、治療ワクチンおよび免疫チェックポイント遮断剤から成る群から選択される免疫療法剤、または免疫チェックポイント賦活剤である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記第2治療薬が、抗PDL1抗体、抗PD1抗体、抗CTLA4抗体および抗CD137抗体から成る群から選択される免疫チェックポイント遮断剤または免疫チェックポイント賦活剤である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物による肝細胞癌又はメラノーマの治療効果を決定する方法であって、
前記医薬組成物によって治療される患者からのサンプル中で、
MDSCと、人間遺伝子マーカーCD11bならびに、CD80、CD86およびCD103から成る群から選択される少なくとも一つの人間遺伝子マーカーを発現する細胞、の存在を測定すること、および、
人間遺伝子マーカーCD11bならびに、CD80、CD86およびCD103から成る群から選択される少なくとも一つの人間遺伝子マーカーを発現する細胞の数が、MDSCの数に対して増加した時、治療が効果的であると評価すること、
を含む、方法。
【請求項8】
前記サンプルが血液サンプル、組織サンプル、腫瘍からのサンプル、または滑液サンプルである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫療法の分野に関する。より具体的には、本発明は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)誘導の免疫抑制を軽減し、その結果、癌、感染症、ワクチン接種、外傷、自己免疫疾患、慢性炎症疾患および移植での適切な免疫応答を可能にするために、MDSCを非抑制細胞に分化させる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
骨髄由来抑制細胞(MDSC)は、未成熟造血骨髄性細胞の前駆細胞の異種細胞群であり、免疫抑制機能を発揮するため、免疫応答を負に制御する(Gabrilovich and Nagaraj,2009;Talmadge and Gabrilovich,2013)。MDSCは、多くの病的状態で蓄積され、多くの冗長なメカニズムを利用して、自然免疫応答および適応免疫応答の両方に影響を与えることが認められた(Dilek et al,2010;Gabrilovich et al.,2012)。MDSCは、特に栄養素(例、L−アルギニンおよびL−システイン)の枯渇メカニズム、活性酸素種(ROS)および活性窒素種(RNS)の産生、T−リンパ球輸送の混乱(例、L−セレクチン発現の減少および異常ケモカイン放出)、アポトーシスの誘導(ガレクチン9経由)およびIL−1β産生からのTh−17応答へのT−リンパ球分化の偏りによるT−およびB−リンパ球の活性化、増殖および応答の強力な抑制細胞である(Bruchard et al.,Nat.Med.2013)。MDSCは、抗原特異性ナチュラル調節T−細胞(nTreg)を増殖させ、ナイーブT−細胞の誘導Treg(iTreg)細胞への変換を促進し、炎症部位、感染部位または腫瘍部位でのTreg浸潤を促進する極めて高い能力も有する。MDSCは、特に膜結合TGFβによりNK細胞数を減少させ、その機能を抑制するとも説明された。さらに、MDSCは、T細胞応答において誘導する免疫の偏りと同様に、IL−12のマクロファージ産生を抑制することによって、マクロファージをM2表現型(非炎症性マクロファージ)に偏らせる。同様に、MDSCは、IL−10を産生することによって樹状細胞(DC)機能を損ない、さらに、加えてDCによるIL−12産生を抑制し、DCのT−細胞活性化能を減少させる。最後に、MDSCは、非造血細胞に作用し、また、特に、腫瘍の血管形成、腫瘍の拡大、腫瘍細胞の浸潤および転移を促進することが広く認識されている(Keskinov and Shurin,2014;Ye et al.,2010)。
【0003】
生理的状態では、造血幹細胞は、共通リンパ系前駆細胞(CLP)または共通骨髄性前駆細胞(CMP)に分化する。その後、これらの前駆細胞は、我々の免疫系の2種類の異なるタイプの細胞を発生させる。すなわち、CLPは、リンパ球またはナチュラルキラー(NK)細胞に分化するが、CMPは、未成熟骨髄性細胞(IMC)に分化する。正常な場合、IMCは、各種の末梢臓器まで移動し、そこで、もっぱら樹状細胞およびマクロファージまたは多形核細胞(顆粒球とも称される)に分化する。しかし、多くの病的状態で産生される複数の因子(例、GM−CSF、M−CSF、IL−6、IL−1β、IL−13、S100A8/A9など)は、IMCの蓄積を促進し、それらの分化を防ぎ、それらの活性化を誘導する。これらの細胞は、活性化後、免疫抑制機能を発揮し、2007年にMDSCと名付けられた(Gabrilovich et al.,2007)。これまでのところ、3種類の主要MDSC群が表現型および機能について特徴付けられている。すなわち、前骨髄球性または単球性MDSC(M−MDSCまたはMo−MDSC)および多形核(顆粒球性とも呼ばれる)MDSC(PMN−MDSCまたはG−MDSC)である。Mo−MDSCは、マウスのCD11bLy6CLy6G表現型、ヒトのCD11bCD33HLA−DR−/lowCD14表現型を特徴とし、最も強力な免疫抑制MDSC群であり、少なくとも酸化窒素シンターゼ(iNOS)およびアルギナーゼ(ARG1)酵素を発現することによって機能し、腫瘍微小環境に豊富に存在する。前骨髄球性MDSCは、Mo−MDSCに似ているが、CD14マーカーを発現せず、Mo−MDSCに比べてさらに未成熟な状態であることが示唆される(Diaz−Montero et al.,2014)。PMN−MDSCは、マウスのCD11bLy6ClowLy6G表現型、ヒトのCD11bCD33HLA−DRCD15表現型を特徴とし、末梢およびリンパ器官でより顕著で、主に活性酸素種(ROS)を産生することによって機能する(Solito et al.,2014)。MDSCは、一部の病的状態において分化が遮断されるマクロファージ、樹状細胞または顆粒球の前駆体であるが、それらは、依然、「正常な」分化経路をたどる可能性を有する。事実、炎症性または腫瘍由来可溶性因子を伴わないMo−MDSCの培養、ならびに、健康なナイーブ宿主への移行が、これらの細胞をマクロファージまたは樹状細胞に分化させる。さらに、低酸素状態(腫瘍微小環境など)が、免疫抑制M2様腫瘍関連マクロファージ(TAM)へのそれらの分化を促す場合がある。同様に、PMN−MDSCは、炎症性または腫瘍由来可溶性因子無添加での24時間の培養後、表現型、機能が成熟顆粒球に似る(Gabrilovich et al.,2012)。さらに、Mo−MDSCよりも比較的短い寿命と低い増殖能を有するPMN−MDSCは、病的状況ではMo−MDSCからの補充が可能である(Youn et al.,2013)。
【0004】
現在、MDSCは、病的状況で増殖し、適切な免疫応答を阻止する非常に重要な細胞と考えられており、重大な罹病や多数の疾患との併存症と関連する。第1に、MDSCレベルは、癌病期重症度、転移と相関し、多様な癌、すなわち乳癌、大腸癌、メラノーマ、肺癌、肝臓癌、胃癌、腎臓癌、膵臓癌、膀胱癌、前立腺癌、卵巣癌、食道癌、肉腫、神経膠芽腫、頭頸部癌、ならびに、リンパ腫、白血病、および、骨髄腫、血液癌、を発症した患者における全生存期間を個別に予知する、と実証した研究が増加している(Diaz−Montero et al.,2009;Gabitass et al.,2011;Huang et al.,2013;Idom et al.,2014;Kalathil et al.,2013;Khaled et al.,2013;Kitano et al.,2014;Shen et al.,2014;Solito et al.,2014;Sun et al.,2012;Weide et al.,2014;Zhang et al.,2013)。MDSCは、多発性癌の予後に明らかに重要であり、新たなデータが、癌免疫療法の予測バイオマーカーとして、また、進行性固形腫瘍患者の全身化学療法への臨床応答を予測するための早期リーディングマーカーとして循環MDSCの有用性を裏付けている(Kitano et al.,2014;Weide et al.,2014)。これらの臨床研究および多数の前臨床報告に基づいて、癌免疫療法、化学療法との併用または個別に転移プロセスを抑制するためのアプローチの一貫としてMDSCを対象とするのは、明らかに臨床上非常に有望な戦略である(Diaz−Montero et al.,2014)。
【0005】
MDSCの蓄積は、癌以外の状況でも報告されている。持続性および慢性感染症の定着に病原体が用いる宿主免疫を回避することは、腫瘍回避のメカニズムと極めて似ている。したがって、MDSCは、細菌感染症(例、シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacteterium tuberculosis)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、細菌性肺炎、寄生虫感染症(例、リーシュマニア(Leishmania))、真菌感染症(例、カンジダ(Candida))、ウイルス感染症(BおよびC型肝炎、HIV、インフルエンザ、ヘルペス)を含めた様々な感染症で報告されており、慢性感染症の持続と関連付けられていた(Cai et al.,2013;Goh et al.,2013;Van Ginderachter et al.,2010;Vollbrecht et al.,2012)。事実、感染症急性期に産生される炎症性サイトカイン、および、トル様受容体(TLR)の病原体由来粒子賦活剤がMDSCを誘導し、増殖させ、適切な免疫応答を抑制し、慢性感染症の共同原因である、と説明された。さらに、多くのウイルスは、発癌性もあり、合わせて、局所的に腫瘍のそれと同様の機能障害環境を誘発するので、ウイルス感染中に生じるMDSCは、特に興味深い。
【0006】
MDSCは、感染症や癌と同様に、ワクチン接種でも病原体または腫瘍抗原の両方に対して非常に有害な役割も果たす。例えば、一方で、HIVワクチン組成物に使用される抗原、ならびに、アジュバントは、MDSCを活性化し、増殖させる(Garg and Spector,2014;Sui et al.,2014)。他方、患者へのサルモネラワクチン後の防御免疫は、MDSC増殖の減少と直接相関し(Heithoff et al.2008)、MDSCの枯渇は、治療的ワクチン接種後の抗腫瘍免疫を著しく増加させる(Srivastava et al.,2012a,2012b)。高レベルMDSCは、外傷、損傷または火傷患者でも報告されており、高レベルのこれらの未成熟骨髄性細胞は、特に敗血症を原因とする高罹病リスクと顕著に関連した(Cheron et al.,2010;Cuenca et al.,2011;Janols et al.,2014;Makarenkova et al.,2006;Taylor et al.,2000;Venet et al.,2007;Zhu et al.,2014)。最後に、MDSCは、病因や生理とは無関係に、ほぼすべての炎症状態で普遍的に増殖するため、細胞、組織または臓器の移植後(Dilek et al. 2010;Ochando and Chen 2012)、ならびに、多発性硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、1型糖尿病または自己免疫肝炎などの自己免疫および慢性炎症疾患(Baniyash et al.,2014;Cripps and Gorham 2011;Kurko et al.,2014;Serafini 2013;Smith and Reynolds 2014;Whitfield−Larry et al.,2014)でも蓄積することが認められている。げっ歯類実験モデルでの複数の研究は、これらの前述の疾患において免疫応答を抑えるためのこれらの免疫抑制細胞の重要性を実証している。これの急激過ぎる解釈は、移植、自己免疫または慢性炎症疾患で望ましくない免疫応答をコントロールするために、MDSC蓄積を促進し、および/または、それらの成熟細胞への分化を阻止する治療戦略を用いるという考えに至る。しかし、最近、相反する結果が浮上した。すなわち、急性炎症期中に誘導されるMDSCは、明らかに有益である(実験げっ歯類モデルで検討されたMDSC)が、慢性炎症期に検出されるMDSCは、同様の特徴を共有しないと考えられるのである。事実、自己免疫または慢性炎症環境から単離されたMDSCは、明らかに、癌、損傷または感染環境とは対照的に、エクスビボでT−細胞を抑制せず、むしろ、炎症およびMDSC動員を増加させる(Cripps and Gorham 2011)。同様に、慢性炎症性腸疾患の場合、結腸に認められるMDSCは、有害なTh17に偏った細胞傷害性免疫応答を促進する大量のIL−1βおよびIL−6を放出した(Kurmaeva et al.,2014)。固形臓器移植では、MDSCは、様々な移植片寛容誘導段階で重要な役割を果たす。臨床転帰を改善するためには、いくつかの段階で移植片に移行するMDSC、特にMo−MDSCの存在を低減させることが有用であると考えられる(Hock et al.,2015)。
【0007】
病因および生理とは無関係に、これらの多数の臨床関連性と、これらの多様な病的状態におけるMDSCが果たす重要な役割に基づいて、その蓄積を阻止または促進するためにMDSCを調節する薬学的手法が、現在、増加している関心分野である。しかし、現在まで、二次的有害作用を伴わずに効率的なMDSCの調節を可能にする治療法はない。事実、大半の他の細胞群に反して、ヒトのMDSCは、特異的マーカーを発現せず、これらの細胞の直接および特異的標的化を可能にするだけである。最近、ゲムシタビン、5−フルオロウラシル、ドセタキセルまたは2−ヒドロキシアセトフェングリシネートなどの化学療法剤が、実際にMDSCのアポトーシスを誘発できることが発見された(Apetoh et al.2011;Vincent et al.2010)。しかし、それらのMDSC排除効果は、限定的で、かかる薬物は、他の細胞の望ましくないアポトーシスを誘発するため、既知の毒性と関連する。さらに、この方法は、炎症がMDSCにアポトーシス耐性を付与するという問題に直面する(Hu et al.2013;Ostrand−Rosenberg et al.,2012)。
【0008】
MDSCの免疫抑制機能をコントロールするための開発戦略は、複雑な抑制的作用メカニズム(iNos、Arg1、ROS、RNS、栄養欠乏、Fas誘導細胞死、免疫抑制サイトカイン分泌、免疫偏向、Tregの誘導・・・)により困難である。さらに、これらのメカニズムは、MDSCのタイプ(前骨髄球性、Mo−MDSCまたはPMN−MDSC)に応じて異なる。効果を示すメカニズムも、標的とする免疫細胞(T−リンパ球およびB−リンパ球、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞)または非免疫細胞(例、血管新生増加時は血管細胞、および、転移促進時は癌細胞)のタイプに依存する。MDSCの腫瘍部位への移動の阻止(Highfill et al.,2014)が試みられた(例、CXCR2拮抗剤)が、MDSCは、依然として、末梢に対する非特異的全身免疫抑制機能を発揮し続けている。さらに、CXCR2は、Mo−MDSCではなく、PMN−MDSCのみによって発現されるので、この方法は、より強力な抑制MDSCであり、上記のようにPMN−MDSCを補充すると記述されたこれらのMo−MDSCを損なわない。MDSCの誘導および生成を阻止するために、MDSCの誘導因子として同定された腫瘍または炎症による因子の放出を遮断する試みがなされた。一例は、プロスタグランジン−E2(PEG2)拮抗剤である(Mao et al.,2014)。しかし、これらの戦略は、MDSC誘導を司る多数の他因子(例、GM−CSF、M−CSF、IL−6、IL−1β、IL−13、S100A8/A9など)に向き合うことになる。
【0009】
別の概念は、MDSCを標的にし、それらの成熟細胞への変換を誘導する、というものである。これは、有害な未成熟細胞(MDSC)をエフェクター細胞(Mo−MDSCがマクロファージおよび樹状細胞、PMN−MDSCが顆粒球)に変換するという利点がある。例えば、ビタミンAの代謝産物オール−トランス−レチノイン酸(ATRA)は、高ROS産生を中和することができ、MDSCを成熟顆粒球に変換する能力を有する(Nefedova et al.,2007)。ATRAは、GM−CSFと共同で、マクロファージや樹状細胞を誘導する(Gabrilovich et al.,2001)。しかし、これらの研究は、マウスで実施されたもので、ヒトで評価する場合、ATRAは、ヒトそれぞれ異質の吸収およびクリアランスを有し、成熟骨髄性細胞の表現型や機能に作用しなかった(Mirza et al.,2006)。同様に、ビタミンD3は、インビトロで未成熟骨髄性細胞レベルを低下させ、それらの成熟を誘導することが立証されている。しかし、その作用は、ATRAよりも温和である。非メチル化デオキシシトシン−デオキシグアニンジヌクレオチド(CpG)モチーフを高頻度で含有するDNA断片は、Toll様受容体9(TLR9)を介して免疫細胞を刺激することができる。マウス、例えば腫瘍へのCPGの局所投与は、PMN−MDSC(Mo−MDSCではなく)を減少させ、それらの表現型をわずかに変化させ、それらの抑制機能を無効にするのではなく、軽減すると説明された(James et al.,2014)。しかし、ある以前の研究は、CpGが骨髄前駆体のMDSCへの分化を誘導し、そのため、インビボでMDSCレベル低減能を制限することを証明した(Chen et al.,2013)。
【0010】
本明細書が説明したように、本発明者は、MDSCが、マクロファージ、樹状細胞または顆粒球とは異なる、細胞傷害性NK細胞表現型を有する新規、予想外の非抑制リンパ系細胞群に分化し得ることを見出した。本発明者は、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)が、このこれまで未確認であったMDSCの分化経路を緊密にコントロールすることも確認した。この新規分化経路の促進を狙った治療組成物は、確かに、多様な病的状況で、MDSC蓄積と関連する免疫抑制/免疫修飾によってもたらされる医学的問題を解決する可能性を有する。かかる治療組成物は、病原性の蓄積MDSCを減少させ、MDSCを非抑制的エフェクター細胞に分化させることによって、熟達した免疫応答、特にNK機能を必要とする現行の免疫療法、化学療法およびワクチン接種戦略と相乗効果を発揮する高い可能性を有する。
【0011】
シグナル調節タンパク質アルファ、すなわちSIRPa(CD172aまたはSHPS−1とも呼ばれる)は、Src相同領域2(SH2)ドメイン含有ホスファターゼ−SHP−1およびSHP−2と関連する、主にマクロファージおよび骨髄性細胞上に存在する膜タンパク質として初めて同定された。SIRPaは、近縁のSIRPタンパク質のSIRP対受容体ファミリーのプロトタイプメンバーである。CD47によるSIRPaの会合は、宿主細胞の貪食作用を抑制する下方調節シグナルを提供し、そのため、CD47は、「don’t−eat−me」シグナルとして機能する。
【0012】
SIRPaは、単球上、組織マクロファージの最多小群上、顆粒球上、(リンパ系)組織樹状細胞(DC)サブセット上、一部の骨髄前駆細胞上、および、様々なレベルで、ニューロン上に発現され、極めて顕著な発現は、脳の富シナプス領域、例えば小脳顆粒層および海馬に見られる(Seiffert et al.,1994;Adams et al.,1998;Milling et al.,2010)。
【0013】
SIRPaのCD47との相互作用は、ほぼ説明されており、宿主細胞の貪食作用を抑制する下方調節シグナルを提供する(レビューBarclay et al.,Annu.Rev.Immunol.,2014参照)。CD47も、SIRPaも、共に、他の相互作用に会合する。研究者らは、肺のサーファクタントタンパク質SP−AおよびSP−Dが、SIRPaとの相互作用を介して肺の炎症応答をコントロールする、と示唆している(Janssen et al.,2008)。
【0014】
CD47−SIRPa相互作用の最も特徴的な生理的機能の1つは、造血細胞、特に、赤血球および血小板のホメオスタシスにおける役割である。CD47は、don’t−eat−meシグナルとして働き、それ自体、マクロファージによる宿主細胞の貪食作用の重要な決定因子であるので、癌細胞クリアランスにおけるCD47−SIRPa相互作用の寄与の可能性が、近年、集中的に検討されている。
【0015】
今日、SIRPa/CD47経路は、マクロファージ貪食作用を増強するための様々な医薬品開発にも利用されている。事実、癌細胞は、被感染細胞同様、未知のタンパク質や異常レベルの正常タンパク質などの異常カーゴを保持し、しかも、これらの細胞は、免疫調節分子を同時に過剰発現することによって、先天性免疫コントロールメカニズムを頻繁に妨害する。かかるメカニズムの1つが、正常細胞によって自己発現されるタンパク質であるCD47に関与することが次第に明らかになっている(Barclay and Van den Berg,2014)。CD47は、SIRPaと相互作用する。これにより、貪食マクロファージにdon’t−eat−meシグナルが伝達され、マクロファージは、その後、標的細胞に影響を与えずにおく(Oldenborg et al.,2000)。癌細胞によるCD47の過剰発現は、癌細胞を治療抗体でコーティングした場合でさえ、癌細胞をマクロファージ耐性にし(Zhao et al.,2011)、多数の固形および血液癌の臨床転帰不良と相関する(Majeti et al.,2009;Willingham et al.,2012)。実験モデル、特に免疫不全マウスのヒト腫瘍異種移植モデルでは、CD47/SIRPa経路の遮断は、マクロファージによる腫瘍排除の促進に、また、癌細胞播種および転移形成の減少に非常に有効であった(Chao et al.,2011;Edris et al.,2012;Ulckan et al.,2009;Wang et al.,2013)。これらの研究では、MDSCの機能や表現型は検討されなかった。マクロファージでの抗体依存性貪食作用を増強することによるCD47/SIRPa経路の遮断は、トラスツズマブ(抗Her2)、セツキシマブ(抗EGFR)、リツキシマブ(抗CD20)およびアレムツズマブ(抗CD52)などの治療抗癌抗体の枯渇と相乗効果を示すと説明されている(Weiskopf et al.,2013)。
【0016】
次第にあいまいになりつつある一連の区分は、Tリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞およびNK−T細胞の間の区分である。これらのサブセットは、C型レクチンCD161を含めた特異的分子の共通発現を共有する。この表面分子は、元は、げっ歯類のNK細胞上に発現されたNKRP1糖タンパク質のヒト相同体として同定され、そのげっ歯類の同等物と46〜47%の相同性が認められた。ヒトNKRP1A、すなわちCD161は、約40kDaサブユニットのジスルフィド結合ホモダイマーから成る。これは、γδおよびαβTCR両発現サブセット(Maggietal,2010)およびNK−T細胞を含めて、大半のNK細胞と約24%の末梢T細胞(Lanier et al.,1994)によって発現される。NK−T細胞は、ヒト末梢血T細胞の1%未満を含む(Gumperzetal 2002)ので、CD161+T細胞は、特異なTリンパ球系統であるに違いない(Takahashi et al.,2006)。
【0017】
上記のように、SIRPaは、骨髄性細胞の貪食機能、樹状細胞の抗原提示およびサイトカイン分泌、および、成熟顆粒球の輸送を調節する、と説明されている。しかし、MDSCの抑制機能に対するSIRPaの機能は、開示されていない。Dugastら(2008)が、初めて同種移植腎モデルにおけるラットMDSC上のSIRPaの発現を立証した。しかし、彼らは、MDSC生物学におけるCD47/SIRPa経路の役割を特定せず、抗SIRPa抗体の使用による抑制活性も報告しなかった。したがって、この文書は、本明細書で開示しているような、MDSCでのSIRPa経路抑制が、MDSC細胞を非抑制細胞に分化できることを立証も示唆もしていない。
【0018】
国際公開第2010/130053号は、ヒトSIRPaとCD47との間の相互作用の調節を含む血液癌の治療法を開示した。この文書は、SIRPa−CD47の遮断が貪食作用経路を経由する先天性免疫系の活性化を誘導することを認めたものである。この特許出願で使用されたヒト白血病骨髄性細胞の移植モデルでは、動物にCD47拮抗剤を投与すると、移植片は拒絶された。この結果は、抗CD47投与時の貪食作用の増加であって、MDSCの抑制活性の抑制および/またはMDSCの非抑制細胞への分化でないことを示唆している。
【0019】
抗炎症および抗腫瘍療法での使用のための細胞機能の抑制法が、国際公開第0066159号に説明されている。この方法は、SIRPの細胞外ドメインを特異的に認識し、病的骨髄性細胞の機能を抑制する物質を含む薬剤の投与を含む。骨髄性細胞の例がマクロファージであるとすると、文書で説明されている抗SIRPaの大半は、マクロファージ活性化のブロックと貪食作用の抑制を目指す。この方法は、正常骨髄性細胞、より具体的にはMDSCへの抗SIRPa分子の有利な作用を提言していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、本発明の第1の態様は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)の非抑制細胞への分化によって改善または予防できる任意の病態の治療を目的とした、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)とそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用、特に、SIRPaとCD47との間の相互作用を遮断する化合物の使用である。
【0021】
本発明に従って使用可能な化合物の中でも、低化学分子、ポリペプチド(SIRPa/CD47受容体/リガンド系のドミナント−ネガティブ突然変異体、例えば、国際公開第2013109752A1号で説明のされている抗SIRP試薬など)、拮抗剤ペプチド、抗体およびその断片、特に下述の実験で使用されるものなどの抗SIRP抗体、あるいは、多くの市販抗SIRPa抗体から選択されるいずれかの他の遮断抗体、抗体断片、SIRPaを標的にするアプタマーなどを挙げることができる。
【0022】
本テキストでは、「シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)とそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物」という用語は、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)とそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断できるポリペプチドをコード化しており、細胞によるかかるポリペプチドの発現に至らしめる核酸(mRNAまたはDNA)も包含する。核酸をシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPa)とそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物として使用する場合、当業者は、いずれかの調節エレメント、ならびに、いずれかのベクター(ポリマー、カチオンおよび/またはリポソームなどの脂質ベクター、またはアデノウイルス、レンチウイルス、アデノ関連ウイルス(aav))を有する発現カセットを自由に選択し、適切な多数の患者の細胞での適切なレベルでの抗SIRPa化合物の発現を得る。
【0023】
上記の方法の特定の実施の形態によれば、SIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物は、単球MDSC(Mo−MDSC)の非抑制細胞への分化に使用される。
【0024】
上記の方法の別の特定の実施の形態によれば、SIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物は、MDSCの非抑制リンパ系細胞、好ましくはエフェクターリンパ系細胞への分化に使用される。
【0025】
SIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物は、好ましくは、MDSCの分化によって得られる非抑制細胞が、MHCクラスIIに陰性、ナチュラルキラー(NK)細胞の少なくとも1つのマーカーに陽性であるように選択される。NK細胞マーカーの無制限リストを次表で提供する。
【表1】
【発明の効果】
【0026】
上記のように、MDSC誘導免疫抑制は、多くの疾患および病態において重要で、有害な役割を果たす。骨髄由来抑制細胞(MDSC)の非抑制細胞への分化によって改善または予防できる病態の中でも、固形および血液癌、ウイルス感染症、細菌、寄生虫および真菌感染症、外傷、重度火傷、抗感染症および抗腫瘍ワクチン接種、ワクチンアジュバント、自己免疫疾患、臓器、組織または細胞の移植、移植片機能障害、および慢性炎症疾患を挙げることができる。
【0027】
好ましい実施の形態によれば、SIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物は、癌患者の治療に使用される。本明細書で使用する場合、「癌」は、あらゆるタイプの癌を意味する。特に、癌は、固形または非固形癌であることができる。癌の制限のない例は、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌または大腸癌、肉腫、リンパ腫、メラノーマ、白血病、胚細胞癌および芽細胞腫などのカルジノーマまたは腺癌である。本明細書で使用する場合、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」および「治療している(treating)」は、癌、特に固形癌の進行、重症度および/または罹病期間のいずれかの軽減または改善を指し、例えば、乳癌では、1種類超の治療薬の投与から生じる1種類超の症状の軽減を指す。SIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物による治療は、手術、化学療法剤、生物学的療法剤、免疫療法剤などのいずれかの他の抗悪性腫瘍剤と合わせて投与することができる。同時投与の場合、前記化合物を用いることなく従来より得られる抗悪性腫瘍治療薬の効果と併用療法の効果を比較することによって、SIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物の有益効果を評価する。
【0028】
本発明に従った方法の特定の実施の形態によれば、SIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物は、固形癌の治療に使用される。
【0029】
本発明に従った方法の特定の実施の形態によれば、SIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物は、転移癌の治療に使用される。
【0030】
本発明に従った方法のなおも別の実施の形態によれば、SIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物は、感染症の治療に使用される。
【0031】
このように、本発明の別の態様は、第2治療薬と併用した、治療を必要とする者、特に癌患者の治療へのSIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物の使用である。本発明のこの態様の好ましい実施の形態によれば、前記第2治療薬は、化学療法剤、放射線療法、手術、免疫療法剤、抗生物質およびプロバイオティクスから成る群から選択される。
【0032】
特に、有利な点として、第2治療薬は、治療ワクチンおよび免疫チェックポイント遮断剤または賦活剤、例えば抗PDL1、抗PD1、抗CTLA4および抗CD137などから成る群から選択できる。以下の実験の部で例証するように、これらの併用は、相乗効果を生じる。
【0033】
本発明は、SIRPaとそのリガンドのうちの少なくとも1つとの間の相互作用を遮断する化合物による治療効果を決定する方法にも関するもので、本方法は、該化合物によって治療される患者からのサンプル中で、MHCクラスIIに陰性であり、CD161、CD49b、NKp44、NKp46およびCD56から成る群から選択されるナチュラルキラー(NK)細胞の少なくとも1つに陽性である非抑制細胞の存在を測定することを含む。
【0034】
当業者は、状況に応じて、このフォローアップ法を実施するための適切なサンプルを選択する。例えば、前記治療薬を固形癌患者に投与する場合、該腫瘍からのサンプルを使用するのが有利である。同じ状況で、また、他の状況でも、組織サンプル、滑液サンプルなどに加えて、血液サンプルも使用できる。
【0035】
本発明の他の特徴は、発明の範囲を制限することなく、本発明の枠内で実施され、必要な実験のサポートを提供する実験および生物学的アッセイをたどる説明の過程でも明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図の説明
図1マウスおよびヒトMDSCはSIRPaを発現する。 A/マウスの新鮮単離脾臓細胞を、蛍光抗マウスSIRPaモノクロナール抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。以下の表現型に従って細胞を細分割した:CD11b細胞(灰色の棒グラフ)、CD11bMHCクラスII細胞(実線)、CD11bMHCクラスIILy6ChighLy6G細胞(Mo−MDSC;破線)およびCD11bMHCクラスIILy6CLy6G細胞(PMN−MDSC;点線)。B/健康なボランティアから得たヒト新鮮単離末梢血単核細胞を蛍光抗ヒトSIRPaモノクロナール抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。以下の表現型に従って細胞を細分割した:CD11b細胞(灰色の棒グラフ)、CD11bHLADR細胞(実線)、CD11bHLADR−/lowCD33CD14CD15細胞(Mo−MDSC;破線)、D11bMHCHLADRCD33CD14CD15細胞(PMN−MDSC;点線)。
図2抗SIRPa mAbは、2日間の培養後、ヒトMo−MDSC表現型の変化を誘導する。 フローサイトメトリーの分類(左)直後、または、無関連対照モノクロナール抗体または抗SIRPaモノクロナール抗体との2日間の培養後のCD161およびCD11c発現に対するヒトMo−MDSC(CD11bHLA−DR−/lowCD33CD14CD15細胞)の表現型。
図3抗SIRPa mAbは、2日間の培養後、ラットMDSC表現型の変化を誘導する。 フローサオトメトリーの分類直後(灰色の棒グラフ)、または、無関連対照モノクロナール抗体(点線)または抗SIRPaモノクロナール抗体(実線)との2日間の培養後の指示マーカーに対するMDSC(CD11bMHCクラスIINKRP1low脾臓細胞)の表現型。
図4抗SIRPa mAb−誘導による分化は、GM−CSF−誘導分化を圧倒する。 GM−CSF添加および無添加での無関連対照モノクロナール抗体(点線)または抗SIRPaモノクロナール抗体(実線)との2日間の培養後のMHCクラスIIおよびCD103(最上位)またはCD11bおよびCD80(最下位)に対するラットMDSC(CD11bMHCクラスIINKRP1low脾臓細胞)の表現型。
図5抗SIRPa mAb−誘導による分化MDSCは免疫抑制機能を失う。 A/指定比率の新鮮精製MDSC(非分化)および無関連対照モノクロナール抗体(白色バー)または抗SIRPaモノクロマール抗体(黒色バー)の存在下でのT−リンパ球の増殖。B/無関連対照モノクロナール抗体(白色バー)または抗SIRPaモノクロマール抗体(黒色バー)と指定比率で2日間培養したMDSCの存在下でのT−リンパ球の増殖。分化したMDSCでの増殖アッセイ中、他の抗体は添加しなかった。
図6抗SIRPa mAb投与は、MDSC依存性免疫寛容を無効化する。 無関連対照抗体(白丸、n=4)または抗SIRPaモノクロナール抗体(黒四角、n=4)を投与した、ラットの寛容誘導同種移植腎レシピエントの0日から200日までのクレアチニン血症(A)および尿毒症(B)およびC/無拒絶生存期間の変動パーセンテージ。AおよびBの点線は、変動閾値30%を表し、それよりも上では、動物は拒絶反応を有すると見なした。
図7抗SIRPa mAb治療は、末梢でMDSCを減少させ、NK細胞を増加させる。 無関連対照抗体(白丸)または抗SIRPaモノクロナール抗体(黒四角)で平均10日間治療した後の寛容誘導同種移植腎レシピエントとナイーブラットの骨髄性細胞中MDSC(A)または総白血球(B)の0日からの変動パーセンテージ。C/総白血球中のNK細胞(CD161high)の0日からの変動パーセンテージについては、Bと同様である。
図8抗SIRPa mAb治療は、NK細胞およびマクロファージの浸潤を誘導する。 無関連対照抗体(左)または抗SIRPaモノクロナール抗体(右)で治療した寛容誘導同種移植腎レシピエントのTリンパ球(TCRαβ)、NK細胞(CD161)、マクロファージ(CD68)および骨髄性細胞(CD11b/c)の移植片免疫組織染色。
図9抗SIRPa mAb治療は、調節性T細胞の浸潤を軽減する。 無関連対照抗体(左)または抗SIRPaモノクロナール抗体(右)で治療した寛容誘導同種移植腎レシピエントのTリンパ球(TCRαβ)および調節性T細胞(TCRαβFox3)の移植片免疫組織染色。
図10肝細胞癌モデルにおいて、抗SIRPa mAb治療は生存期間を延長する。 Hepa1−6マウスヘパトーマ細胞2.5x10個を門脈から接種され、無関連対照抗体(点線)または抗SIRPaモノクロナール抗体(実線)の週3回治療、または、標準的ケア管理としてのソラフェニブの経口胃管投与(破線)を毎日受けたマウスの総生存率。
図11肝細胞癌モデルにおいて抗SIRPa mAbは、腫瘍の白血球動員を誘導する一方で、MDSCを減少させる。 Hepa1−6腫瘍細胞2.5x10個を門脈から接種されたマウスを腫瘍接種から2週間後に屠殺した。肝臓の非実質細胞(NPC)を抽出し、フローサイトメトリーでカウント、分析した。A/肝臓抽出NPC数、B/肝臓NPC中のT−リンパ球(CD3)およびC/無関連対照抗体(白色バー、n=7)または抗SIRPaモノクロナール抗体(黒色バー、n=7)で週3回治療されたマウスのCD11b骨髄性細胞中のMo−MDSC(CD11bMHCクラスIILy6ChighLy6G)のパーセンテージ。
図12肝細胞癌モデルにおいて抗SIRPa mAbは、成熟NK細胞の蓄積を誘導する。 Hepa1−6腫瘍細胞2.5x10個を門脈から接種されたマウスを腫瘍接種から2週間目に屠殺した。肝臓の非実質細胞(NPC)を抽出し、フローサイトメトリーでカウント、分析した。A/無関連対照抗体(白色バー、n=7)または抗SIRPaモノクロナール抗体(黒色バー、n=7)で週3回治療されたマウスから抽出した肝臓NPC中のNK細胞(CD161)数。B/肝臓NPC NK細胞のCD27(未成熟NKマーカー)およびCD11b(成熟NKマーカー)発現。
図13抗SIRPa mAbは、肝細胞癌モデルにおいて成熟NK細胞の蓄積を誘導する。 Hepa1−6腫瘍細胞2.5x10個を門脈から接種されたマウスを腫瘍接種から2週間目に屠殺した。肝臓の非実質細胞(NPC)を抽出し、フローサイトメトリーでカウント、分析した。肝臓NPC中のNK細胞小群数は次の通りである:CD11bおよびCD27(pNK:前駆NK)に二重陰性(DN);CD27単独(CD27SP)陽性(iNK:未成熟NK);CD27およびCD11bに二重陽性(eNK:エフェクターNK);CD11単独(CD11bSP)陽性(mNK:成熟NK);LY6CNK細胞。
図14抗SIRPa mAbは、メラノーマモデルにおいて、MDSC数を減少させ、腫瘍への腫瘍浸潤NK細胞を増加させる。 B16メラノーマ細胞2x10個を皮下注射され、無関連対照抗体(最上位)または抗SIRPaモノクロナール抗体(最下位)で週3回治療されたマウスを腫瘍接種から2週間目に屠殺した。腫瘍の白血球浸潤細胞を抽出し、(A)MDSC(CD11bクラスIILy6Chigh)の割合と(B)NK細胞(CD161)の割合をフローサイトメトリーで分析した。結果は、各条件でのマウス5匹の代表値である。
図15インビボメラノーマモデルにおいて、抗SIRPa mAbは、抗PDL1抗体で同時治療されたマウスの生存率を有意に増加させ、Mo−MDSC数を減少させる。 腫瘍接種と同時に、同位体対照抗体(Iso ctrl:星印:n=5)または抗Sirpα抗体(p84クローン:四角;n=5)または抗PD−L1抗体(10F−9G2 mAb:三角;n=8)または複合抗体(抗Sirpα+抗PD−L1:丸;n=5)で治療した。A.次に総生存率を分析した。B.最初の接種後2週間目に一部のマウスを屠殺し、無関連抗体で治療された動物を、抗SIRPa抗体投与マウスと比較した。腫瘍の白血球浸潤細胞を抽出し、CD11bクラスIILy6Chighを使って、Mo−MDSCマーカーの割合をFACSによって分析した。
図16ラット腎移植モデルにおいて、抗SIRPa投与は、免疫寛容無効化後の浸潤細胞表面マーカーのmRNA発現を改変する。 CD80、CD86、CD14、CD11b、IL12p40、CD103、NKRP1、MHCIIのmRNA発現量を測定すると、免疫寛容対照に比較して、抗SIRPa治療後増加した。
図17インビボ肝癌モデルに対する単一抗Sirpα投与または複合免疫調節治療の効果。 腫瘍接種から1週間後、動物に週3回、A.同位体対照抗体(Iso ctrl:黒四角:n=33)または抗Sirpα抗体(p84クローン:灰色四角;n=33)または抗CD137抗体(4−1BB mAb:黒三角;n=8)または複合抗体(抗Sirpα+抗CD137:灰色ひし形;n=8)で4週間治療した。次に総生存率を分析した。B.動物に週2回、同位体対照抗体(Iso ctrl:黒四角:n=5)または抗Sirpα抗体(p84クローン:灰色四角;n=5)または抗PD−L1抗体(10F−9G2 mAb:黒三角;n=8)または複合抗体(抗Sirpα+抗PD−L1:灰色ひし形;n=5)で4週間治療した。次に総生存率を分析した。
【実施例】
【0037】
1.材料および方法
MDSC表現型
ヒト血中MDSCを、次のように、フローサイトメトリーにより特徴付け、分類した。すなわち、Mo−MDSCがCD11bCD33HLADRlow/−CD14CD15、および、PMNMDSCがCD11bCD33HLADRCD14CD15であった。ラットの血中および脾臓MDSCを、フローサイトメトリーによりCD11bMHCクラスIINKRP1intとして(Mo−MDSC、PMN−MDSCは共に、この表現型に含まれる)特徴付け、分類した。マウスMDSCは、次のように特徴付けた。すなわち、Mo−MDSCがCD11bMHCクラスIILy6ChighLy6G、および、PMNMDSCがCD11bMHCクラスIILy6CLy6Gであった。
【0038】
MDSCの精製および培養
MDSCを前述の表現型に従って、フローサイトメトリーにより精製した。フローサイトメトリーにより分類した細胞の純度は、99%超であった。次に、新鮮精製MDSCを、96ウェル平底マイクロタイタープレートに細胞50x10個/ウェルで播種し、RPMI−1640培地(2mM L−グルタミン、100U/mLペニシリン、0.1mg/mLストレプトマイシン、10%熱不活性化ウシ胎児血清、1%非必須アミノ酸、5mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウムおよび1μM 2−メルカプトエタノールを補充)中、無関連対照抗体または10μg/mLの抗SIRPaモノクロナール抗体(ヒトMDSC用クローンSE7C2(Santa Cruz Biotechnology)およびSE5A5(Biolegend)またはラットMDSC用クローンED9(AbD Serotec))と共に2日間培養した。別の状況で、組換えGM−CSF(10ng/mL)も添加し、強制的にマクロファージ/樹状細胞を分化させた。2日後、上清を採取し、37℃で2mM EDTAと共に5分間インキュベートして、細胞を取り出した。次に、細胞を蛍光抗体で染色し、フローサイトメトリーによりそれらの表現型を特徴付けた。併行して、細胞を培養培地に再懸濁し、T−リンパ球増殖に対するそれらの免疫抑制機能を評価した。
【0039】
MDSC免疫抑制機能アッセイ
平底96−ウェルプレートを、抗CD3抗体でコーティングした(0.5μg/mL;37℃で2時間)。3回繰返しで、ラットの脾臓細胞を細胞50x10個/ウェルで播種し、RPMI−1640培地(2mM L−グルタミン、100U/mLペニシリン、0.1mg/mLストレプトマイシン、10%熱不活性化ウシ胎児血清、1%非必須アミノ酸、5mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウムおよび1μM 2−メルカプトエタノールを補充)中、2μg/mLの抗CD28モノクロナール抗体と共に3日間培養した。培養0日に、異なる比率の新鮮単離MDSCをこれらのポリクロナール活性化Tリンパ球培養液に添加した。培養0日から、対照抗体または抗SIRPa抗体(SE7C2、Santa Cruz Biotechnology(登録商標)inc.またはSE5A5、Biolegend(登録商標)を10μg/mLで添加した。他のプレートでは、対照または抗SIRPa抗体の存在下で48時間維持したMo−MDSCを洗浄し、抗体を取り出し、新たな抗体を添加せずに、同様の抑制アッセイで異なる比率で添加した。3日目に、0.5μCi[H]チミジン/ウェルを添加して増殖を測定した。
【0040】
同種移植腎免疫寛容ラットモデル
7〜9週令の雄Lewis1W(RT1u)およびLewis1A(RT1a)コンジェニックラットを、Janvier(Savigny/orges,仏)から入手し、施設内のガイドラインに従って、特定の無病原体条件下の当方の動物施設で飼育した。既述(Dugast et al.,2008)のとおり、腎臓同種移植を実施した。一方の自然Lewis1W腎(右側)をLEW1Aで置換した。7日後、ドナー同種移植と対側腎切除を実施し、その後、レシピエントの生存は、前記同種移植片の適正な機能に頼った。これらのラットに、抗CD28抗体(ハイブリドーマJJ319)の0.3mg/日での7日間の腹腔内投与で治療し、これを移植当日に開始した。治療なしでは、移植から11日後に、移植片は拒絶された。100日以内に拒絶反応が起こらない場合、ラットは、免疫寛容ありと考えられた。次に、150日目に、免疫寛容レシピエントに、抗SIRPa抗体(クローンED9、AbDSerotec)500μgまたは無関連対照抗体(クロン3G8)を腹腔内投与した後、300μgを2回/週、21日間投与した。フローサイトメトリー分析用に血液サンプルを抜き取った。血清でクレアチニン血症および尿毒症をモニターした。クレアチニン血症または尿毒症いずれかが0日から2倍増加することで移植腎の機能障害が明らかになった時点で、ラットを屠殺した。
【0041】
免疫組織化学染色
腎臓生検標本から凍結切片(10mm)を調製した。室温でアセトン固定を10分間行う前に、スライドを室温で1時間風乾した。切片を飽和溶液(5%ラット血清、2%正常ヤギ血清および4%BSA含有PBS)中で飽和し、必要な場合(すなわち、Foxp3染色)には、0.5%サポニンで透過処理した。切片を一次抗体と共に、続いて、蛍光二次抗体またはビオチニル化二次抗体により4℃で一晩インキュベートし、ABC Vectastainkit(Vector,Burlingame,CA)およびジアミノベンジリジン(DAB)で着色した後、エオジン−ヘマトキシリン染色した。標準または蛍光顕微鏡およびAxioVision画像ソフト(Carl Zeiss,Le Pecq,仏)を使ってスライドを分析した。
【0042】
使用した一次抗体は、抗ラットTCRαβ(クローンR73)、CD161(クローン3.2.3)、CD68(クローンED1)、CD11b/c(クローンOX42)およびFoxp3(クローンFJK−16s)であった。
【0043】
定量的リアルタイムPCR(qPCR)
SYBR GreenおよびTaqMan PCRコア試薬を使ったApplied Biosystems Viia7システムで定量的リアルタイムPCRを実施した。RNAを、Trizol試薬中、腎臓組織均質液から抽出し、DNAおよびタンパク質からクロロホルムで分離し、イソプロパノールで沈殿させ、エタノールで洗浄し、乾燥後、無RNase水に再懸濁した。DNAse処理後、RNAを逆転写し、相補的DNA(cDNA)を得た。ハウスキーピング遺伝子HPRTと比較して、2(−dCt)法で相対遺伝子発現量を算出した。全サンプルを2回繰返しで分析した。対象遺伝子の発現量は、対照抗体(3G8)または抗SIRPa抗体(ED9)で治療された免疫寛容動物の間で比較した。
【表2】

【表3】
【0044】
肝細胞癌マウスモデル
既述(Gauttier et al.,2014)のとおり、8週令C57B1/6J雄マウスが、腫瘍接種から4日および8日後、マウスに、ラット抗CD137 mAb(4−1BB mAb)100μgまたは抗マウスSIRPaモノクロナール抗体(クローンP84、Merck Millipore)300μg、または、両抗体、または、無関連対照抗体(クローン3G8)を3回/週、4週間(図17A)、または、抗PD−L1 mAb(クローン10F−9G2、BioXcell)200μgの腹腔内注射を行い、もしくは、両抗体(抗Sirpa+抗PDL1)を4週間与えた(図17B)。ソラフェニブ(Nexavar−Bayer)投与の治療マウスは、0日から28日まで、40mg/kgの強制経口投与100μLを毎日受けた(図10)。総生存率を分析した。白血球腫瘍浸潤を定量するため、また、PercollグラジェントおよびFACS分析により肝臓の非実質細胞を単離して特徴付けるために、腫瘍接種から14日後に、一部のマウスを屠殺した。
【0045】
メラノーママウスモデル
8週令C57B1/6J雄マウスが2x10個のB16−Ovaマウスメラノーマ細胞の脇腹への皮下注射を受けた。マウスは、腫瘍接種後0日から、300μgの無関連対照抗体(クローン3G8)または抗マウスSIRPaモノクロナール抗体(クローンP84)を3回/週、または、200μgの抗PD−L1 mAb(クローン10F−9G2、BioXCell)の2回/週腹腔内投与を受け、または、両抗体(抗Sirpaおよび抗PD−L1抗体)を4週間受けた。一部のマウスを、腫瘍接種から2週間目に屠殺し、フローサイトメトリーで腫瘍白血球浸潤を特徴付けた。総生存率を分析した。
【0046】
2.結果
MDSCは、SIRPaを発現する。
本発明者は、先に、ラットMDSC(単球および顆粒球)がその表面に高レベルのSIRPaを発現する、と述べた(Dugast et al.,2008)。ここで、図1は、マウスMo−MDSCおよびPMN−MDSCも、成熟骨髄性細胞(CD11bクラスII)と同様のレベルで、その表面にSIRPaを発現することを示している。対照的に、ヒトでは、SIRPaは、Mo−MDSCだけに成熟骨髄性細胞(CD11bHLADR)と同様のレベルで発現されるが、PMN−MDSCは、SIRPaを発現しない。
【0047】
SIRPaは、Mo−MDSCのNK−様表現型を有する非抑制細胞への分化をコントロールする。
SIRPaが標的となり、そのCD47との相互作用に拮抗するモノクロナール抗体が、インビトロで、48時間に亘ってMo−MDSCの生存に影響しないことを、我々は初めて観察した。対照的に、Mo−MDSCは、新鮮単離Mo−MDSCや対照抗体と48時間の間培養したMo−MDSCと比較してその表現型を改変した(図2および3)。MDSCは、これまでに、マクロファージや腫瘍関連マクロファージ(TAM)、樹状細胞または顆粒球に分化すると述べられているが、ここでは、我々は、抗SIRPa mAb分化Mo−MDSCがこれらの表現型を示さないことを観察した。対照的に、GM−CSFの存在下でのインキュベーションは、既述の表現型への分化を誘導した(図4)。明らかに、ラット種では、抗SIRPa処理MDSCは、高レベルのMHCクラスII分子もCD68も獲得せず、代わりに、CD4マーカーの獲得を失った。ヒトでは、これらの細胞は、CD11c発現を失い、HLA−DRを獲得しなかった。予想外なことに、我々は、これらの細胞が高レベルのNK−特異性マーカー、特にCD161およびCD49b、ならびに、成熟細胞(CD44h,CD103,CD80,CD86)のマーカーを発現することを観察した。それらは、リンパ系の他のマーカー(CD25、CD28、CD2)も発現し、これらの細胞が抗SIRPaモノクロナール抗体によって(非骨髄性)成熟リンパ系細胞に分化されていることが確認された。さらに、抗SIRPaが非骨髄性細胞において分化を誘導することを確認するため、MDSCをGM−CSFおよび抗SIRPaモノクロナール抗体の両方と共に培養した。GM−CSF単独は、成熟MHCクラスII骨髄性細胞(すなわち、樹状細胞およびマクロファージ)においてMDSCの分化を誘導するが、我々は、GM−CSFが、抗SIRPa抗体と結合すると、効果を示さず、抗SIRPa抗体が誘導する新規の分化経路を阻止しないことを観察した(図4)。これらの結果は、抗SIRPaモノクロナール抗体が、エフェクターNK様(CD161)表現型を有する細胞へのMDSCの分化を誘導すること、これが、それらの従来の分化経路を圧倒することを実証した。最後に、抗SIRPaモノクロナール抗体の作用メカニズムを確認するために、初めに、MDSCの免疫抑制機能の無効化能を評価した。抗SIRPaモノクロナール抗体は、新鮮単離MDSCの抑制機能を改変しなかったが、我々は、MDSCが、インビトロで抗SIRPa抗体によって分化されたMDSCが、T−リンパ球増殖の抑制能を喪失してしまうことを認めた(図5)。要約すると、抗SIRPaモノクロナール抗体は、Mo−MDSCの非抑制エフェクターNK様リンパ系細胞への分化を誘導した。
【0048】
抗SIRPaモノクロナール抗体は、インビボでMDSC依存性免疫寛容を無効化する。
我々は、先に、ラットにおいて抗CD28モノクロナール投与により誘導された同種移植腎が、Mo−MDSCの蓄積によって維持される、と述べた(Dilek et al.,2012;Dugast et al.,2008)。抗SIRPaモノクロナール抗体が、マクロファージ貪食作用の改善によるその腫瘍除去への効果とは無関係に、MDSC持続性免疫抑制を無効化できることを確認するために、免疫寛容同種移植腎レシピエントを抗SIRPaモノクロナール抗体または無関連対照抗体で治療した。免疫寛容レシピエントが抗SIRPa投与から2〜3ヶ月以内に同種移植片を拒絶することを認めたが、対照抗体によると、移植片の機能は安定を保った(図6)。これらの動物の末梢血免疫表現型決定を分析すると、我々のインビトロの観察が確認された。平均10日間の抗SIRPa抗体での治療後、MDSCの有意な減少を我々は観察したので、これらの動物の末梢血免疫表現型決定分析は、我々のインビトロ観察を確認した。同様に、NK細胞は、SIRPaを発現しなかったが、平均10日間の抗SIRPa抗体での治療後、NK系(CD161)細胞の有意な増加を認めた。外植片の組織検査は、T−リンパ球介在の予想される急性細胞拒絶反応を認めなかった。対照的に、免疫寛容レシピエントの移植片に元々存在するT−リンパ球浸潤が、抗SIRPa抗体投与後、拒絶反応動物の移植片ではるかに顕著でなくなることを、我々は認めた(図8)。このモデルの末梢MDSC蓄積が、移植片調節性T細胞の蓄積と関連することを、我々は先に述べた(Dilek et al.,2012)。本明細書に、我々は、調節性T細胞は抗SIRPa投与レシピエントの移植片ではほとんど検出不能であるので、抗SIRPa抗体治療がこれらの細胞を間接的にも調節する、と述べた(図9)。さらに、骨髄性(CD11b/c)細胞浸潤は、群間で同様であったが、マクロファージなどの成熟骨髄性細胞は、抗SIRPa投与レシピエントの移植片で一層豊富であった。さらに重要な点として、NK(CD161)細胞は、免疫寛容レシピエントの移植片ではほとんど検出不能であったが、我々は、抗SIRPa投与レシピエントに有意な移植片浸潤を観察し、インビトロ試験およびインビボの末梢観察において、抗SIRPa抗体がMDSCとNK細胞の両方を調節することを確認した。
【0049】
抗SIRPaモノクロナール抗体治療は、癌モデルにおいて、腫瘍−浸潤MDSCおよびNK細胞を調節し、死亡を防止した。
肝細胞癌およびメラノーマのマウスモデルに抗SIRPaモノクロナール抗体を投与した。肝細胞癌マウスモデル(Hepa1.6)は、肝臓への腫瘍細胞系接種から2週間以内に死亡を誘導する侵襲性癌モデルである。このモデルでは、承認済みケアの化学療法標準品(例、ソラフェニブ)は、マウスの平均60%を救済した(図10)。この厳密なモデルで、単剤療法における抗SIRPaモノクロナール抗体治療は、マウスを著しく保護し、ソラフェニブと同様な効果を有した。興味深いことに、2週間の抗SIRPa抗体による治療後、腫瘍浸潤が著しく増強された(特にT−リンパ球)が、我々は、骨髄性細胞内でのMDSCの有意な減少を認めた(図11c)。さらに、対照マウス(図12)に比較して、これらの腫瘍へのNK(CD161)細胞浸潤、特に成熟NK細胞(CD11bCD27)の蓄積の有意な増加も認めた(図13)。事実、CD27CD11b表現型が細胞を傷害できず、低レベルサイトカインを産生する未成熟NK細胞に相当し、CD11bCD27表現型がサイトカインを産生するが、細胞傷害性が低いエフェクターNK細胞に相当し、CD11bCD27表現型が成熟した、細胞傷害性の高いNK細胞に相当することは既述された(Desbois et al.,2012)。別の腫瘍モデルでこれらの結果を確認するために、B16メラノーママウスモデルを使用した。同様に、抗SIRPaモノクロナール抗体で2週間治療されたマウスの腫瘍から抽出した白血球もMo−MDSCの腫瘍内減少(図15B)およびNK(CD161)細胞の蓄積も示した(無関連抗体条件の細胞の4.23%から抗Sirpa治療動物の12.4%(図14))。図15Aは、4週間の間、メラノーマを接種され、抗PD−L1で治療された、または、抗SIRPaで治療された、または、両方で治療された動物の総生存率を表す。単一分子の治療に比較して、複合抗体は、相乗効果を示した。
【0050】
肝臓癌インビボモデルにおけるSIRPa遮断の効果
図17Aは、肝臓癌を接種され、4週間の間、抗CD137、抗Sirpaまたは両方で治療された動物の総生存率を表す。抗Sirpa治療動物の30%は、接種後20日超生存した。この結果は、動物が抗CD137抗体を受けた場合に得られた結果に匹敵する。興味深いことに、抗Sirp+抗CD137の複合抗体を受けた動物は100%が生存した。これは、各分子単独で得られる結果に比較して、2分子の強力な相乗効果を示すものである。
【0051】
図17Bは、肝臓癌を接種され、4週間の間、抗PD−L1、抗Sirpaまたはその両方で治療された動物の総生存期間を表す。先に観察されたように、抗Sirpa治療動物の20%超は、接種後20日超の間生存した。それぞれ単独投与に比べて、両分子で動物を治療した場合、結果は、非常に興味深い生存率を示した。この結果は、癌モデルで抗Sirpa抗体の抗PD−L1抗体との相乗効果を示している。
【0052】
2種類の異なる癌モデルについてのインビボ実験は、SIRPaが単剤療法として、さらには、他の免疫療法または化学療法と併用した場合でも、癌治療の興味深い対象であることを認めた。これらの結果は、SIRPaが、腫瘍への非抑制細胞を誘導する狙いを遮断するために重要な新しいチェックポイントであることを実証するものである。
【0053】
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【配列表】
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