(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0015】
本発明の滑り止め用シートは、微小中空球体(s)が分散された軟質樹脂から形成された滑り止め用シートの表面が該微小中空球体(s)の外殻が破壊された微小孔(A)(以下、単に微小孔(A)という場合がある)および微小中空球体(s)に由来しない軟質樹脂自体の凹凸(B)を有する。
この滑り止め用シートは、微小孔(A)の吸盤効果と微小中空球体(s)に由来しない軟質樹脂自体の凹凸(B)による滑り止め効果の相乗効果により微小孔(A)の吸盤効果単独による滑り止め効果よりも優れた滑り止め効果を奏する。
【0016】
さらにこの軟質樹脂自体の凹凸(B)の凹部の表面であってその範囲の中に微小中空球体(s)の外殻が破壊された微小孔(A)を含むのが好ましい。
微小孔(A)が軟質樹脂自体の凹凸(B)の凹部の表面であってその中にあると、大小の二重の吸盤効果を奏し、相乗効果は一層顕著になり、さらに良好な滑り止め効果を奏する。
【0017】
[微小孔(A)を含む軟質樹脂の製造方法]
本発明における微小孔(A)を含む軟質樹脂は以下のようにして製造される。
本発明で用いられる微小中空球体(s)としては、中に空洞を有し微小な球体であれば限定はないが、たとえば、フェノール樹脂、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂などの有機質系のもの、ガラス、アルミナシリケート、セラミックス、カーボンなどの無機質系のものが挙げられる。有機質系のものに無機物を配合したコンポジット系のものも使用できる。中空粒子の中の空洞に膨張剤を入れた熱膨張型中空粒子のものも好ましく使用できる。
これらの中でも特に、柔軟性および軽量化の点で有機質系の微小中空球体および強度を上げた有機質系のものに炭酸カルシウムなどの無機物を配合したコンポジット系のものが好ましく使用できる。
【0018】
微小中空球体の大きさは限定されるものではないが、平均粒子径は好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜150μmのものである。種々の粒子径のものを混合して用いてもよい。
【0019】
軟質樹脂は、その分子構造、含有される官能基の種類、その製造方法には限定されず、軟質であればよく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
【0020】
具体的には、軟質の熱可塑性樹脂として、軟質塩化ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、およびスチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー、アルキル(メタ)アクリレートを主成分としたスチレン−アルキル(メタ)アクリレート−アクリロニトリル共重合体、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートからなる複合ゴムにビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体、高ゴム含量のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、高ゴム含量アクリロニトリル−アクリレート−スチレン共重合体、高ゴム含量のアクリロニトリル−エチレン−ブテン−スチレン共重合体、シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン−メチルメタクリレートグラフト共重合体、(エチレン−エチルアクリレート)−メチルメタクリレートグラフト共重合体、低密度ポリエチレン−グリシジルメタクリレートグラフト共重合体、ポリエステル−ポリエステルブロック共重合体、ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体、ウレタン樹脂系エラストマー、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、酸基含有エチレン−プロピレン共重合体、エポキシ基含有エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体およびアミド樹脂系エラストマーなどが挙げられる。
【0021】
軟質の熱硬化性樹脂としては、硬化性樹脂を軟質化したものが使用できる。たとえば、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
上記した樹脂は、1種単独でも、又は2種以上のものを混合して用いることができる。
【0022】
これらの内で、微小中空球体(s)を混合する点で樹脂の粘度は低い方が分散しやすく。その点で熱硬化性樹脂が好ましい。すなわち、熱硬化性樹脂を製造する前の原料は粘度が低いのでその一部に微小中空球体(s)を配合しておいて、硬化する前に樹脂原料を配合することによって微小中空球体(s)を均一に分散することができる。
また、熱硬化性樹脂の中でも特にウレタン樹脂が好ましい。熱硬化性ウレタン樹脂はシートが柔軟になりやすく、しかも樹脂の硬さの調整が容易であり、シート状に加工しやすい。
【0023】
以下、熱硬化性樹脂としてのウレタン樹脂について記載するが、他の軟質樹脂も公知の製造法について製造する際に同様に適用できる。また、熱可塑性樹脂は溶融した状態で微小中空球体(s)を分散して冷却すれば微小中空球体(s)が分散した熱可塑性樹脂が得られる。
ウレタン樹脂は、ポリオール(a)および/もしくはポリアミン(b)とイソシアネート(c)を反応させて得られる。
【0024】
ポリオールとしては、分子中にヒドロキシル基を2個以上有するものであれば特に限定されず、従来ウレタン樹脂で使用されてきたものが使用できる。たとえば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリル系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、シリコーン系ポリオール、エチレン性不飽和単量体で変性された重合体ポリオールなどが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
これらのポリオールの中でも、ウレタン樹脂の耐久性の観点から、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましく用いられ、さらに、製造時の作業性、経済性の観点から、ポリエーテルポリオールが特に好ましく用いられる。
【0026】
ウレタン樹脂は軟質性を有し、軟質度は強度との観点から決められるのが好ましい。軟質度を調整するためには、ポリオールやイソシアネートの種類を選択したり、ポリオールの平均官能基数、水酸基価及び末端官能基と後述するイソシアネートの平均官能基数を調節したりすればよい。分子内に長鎖骨格を含むポリオールやイソシアネートが軟質性を付与しやすい。
【0027】
ポリオールの平均官能基数は、ウレタン樹脂に軟質性を付与する観点から、好ましくは1.5〜3.0であり、より好ましくは1.7〜2.5であり、ポリオールの水酸基価は、好ましくは20〜200mgKOH/gであり、より好ましくは28〜160mgKOH/gである。
【0028】
また、ポリオールの末端水酸基の1級OH比率(すなわち、末端に位置する水酸基中の1級水酸基の比率)は、40〜100%であり、引張強度の向上の観点から、好ましくは50〜90%である。末端水酸基の1級OH比率が40%以上であると、ウレタン樹脂の機械物性が良好となる。
【0029】
このようなものとしては、たとえば、ポリオキシプロピレンポリオールの末端水酸基にエチレンオキサイドが開環付加されたポリオキシプロピレン系ポリオールや、さらにそのエチレンオキサイドの付加モル分布が狭いポリオキシアルキレン系ポリオールが挙げられる。これらは特開2002−308811号公報、特開2003−135951号公報に開示されている技術が採用できる。
【0030】
イソシアネートとしては、末端にイソシアネート基を2つ以上有するものであれば特に限定されず、たとえば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート及びその水素添加物;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;イソシアヌレート結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合、尿素結合、ビューレット結合、アロファネート結合などを1種以上有する前記ポリイソシアネート変性物などが挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
イソシアネートの平均官能基数は、架橋密度、軟質性の観点から、1.8〜4.5である。
ポリオールとイソシアネートとの反応に際しては、架橋密度、軟質性の観点から、両者の配合割合は、イソシアネートインデックスが70〜120になるように調整することが好ましく、より好ましくは80〜110である。
【0032】
ウレタン樹脂の製造法も限定されず、イソシアネートとポリオールの直接反応で製造しても、一旦イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを製造しておいて、そのイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーにポリオールを反応させて製造してもよい。
【0033】
ウレタン樹脂の製造法の具体的な一例を示せば、下記の通りである。まず、ポリオール(a)(またはポリアミン(b))に、必要に応じてウレタン化触媒、消泡剤、乾燥剤、添加剤、フォームとする場合は発泡剤、整泡剤などを配合し、ポリオール配合液(以下、ポリアミン配合液も含むものとする)を作成する。同時に、イソシアネート(c)に必要に応じて添加剤などを配合してイソシアネート配合液とする。次いで混合装置または発泡装置を使用し、ポリオール配合液とポリイソシアネート配合液とを急速混合する。得られた混合液を所定の容器(金型)にいれ、樹脂化後取り出してウレタン樹脂を得る。
【0034】
ウレタン化触媒としては、ウレタン化反応を促進する通常のウレタン化触媒が使用でき、たとえば、トリエチレンジアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノ−2−エチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンのPO付加物などの3級アミンおよびそのカルボン酸塩、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、スタナスオクトエート等のカルボン酸金属塩、ジブチルチンジラウレートなどの有機金属化合物が挙げられる。
【0035】
ウレタン樹脂をフォームとする場合には、発泡剤、整泡剤が用いられるが従来公知のものが使用できる。
【0036】
また、ウレタン樹脂の硬さや風合いを改良するためにウレタン樹脂を製造する場合に、添加剤として、従来公知の種々の軟化剤、無機や有機の補強剤、充てん剤、あるいは日光や熱などによる老化を防止するための老化防止剤、加工性を改良するための種々の油や滑剤、染料や顔料のような着色剤、抗菌剤、防かび剤、界面活性剤、触媒などを加えてもよい。
【0037】
本発明においては、軟質樹脂、特にウレタン樹脂中に微小中空球体(s)が分散される。ウレタン樹脂への微小中空球体(s)の配合量は特に限定しないが、ウレタン樹脂の原料の合計100重量部に対し1〜20重量部とするのが好ましい。微小中空球体(s)はポリオール(a)および/もしくはポリアミン(b)中に配合、分散するのが好ましい。微小中空球体(s)を均一に配合する場合には時間がかかるのでポリオール(a)および/もしくはポリアミン(b)などの安定な原料中で行うのが好ましい。微小中空球体の添加量が1重量部以上であるとシートに滑り止めの効果が認められ、20重量部以下であるとウレタン樹脂との混合が容易であり、またシート加工性も良好である。
【0038】
また、ウレタン樹脂を加工して得られるシートは水中に確実に速くしかも安定して沈ませるには、ウレタン樹脂の比重をより大きくする必要がある。水中に速く安定的に沈降させることが可能な好ましい比重としては、シートの比重を1.1以上2.4以下に調整することである。比重がこの範囲にあるシートであれば、浴槽用マットとしても好適である。
【0039】
シートの比重を上げる方法としては、特に限定されないが、たとえば、高比重の無機粒子の添加が挙げられ、具体例としては、金、銀、鉛、タングステン、バリウム塩、カルシウム塩、タルクなどが挙げられ、特に好ましくは、人体に対する人体への安全性、価格競争力、高比重である観点で、バリウム塩、カルシウム塩、及び滑石を上記の軟質樹脂と微小中空球体(s)の混合物配合にすることが好ましい。高比重の無機粒子の配合量は、シートの比重を1.1以上2.4以下にすることができれば特に限定されないが、樹脂への混合時に高粘度になると混合か困難になることから、配合量は、通常1重量%以上90重量%、好ましくは5重量%以上70重量%である。
【0040】
[本発明における軟質樹脂を用いて滑り止め用シートを製造する方法]
(軟質樹脂に微小孔(A)を形成する方法)
本発明の滑り止め用シートの製造方法は、上記のシートの表面が上記微小孔(A)および微小中空球体(s)に由来しない軟質樹脂自体の凹凸(B)を有すれば特に限定はない。たとえば、軟質樹脂を研磨すれば軟質樹脂自体に凹凸が生じる。大きい凹部を作ると表面であってその中にある微小中空球体(s)の外殻が切断されて微小孔(A)を生ずるので、上記の状態が発現する。
また、軟質樹脂自体の凸部における微小孔(A)も吸盤効果を奏し滑り止めに寄与するので、微小孔(A)は軟質樹脂自体の凹凸の凹部凸部の両方の場所にあるのが好ましい。上記の軟質樹脂自体の凹凸の凹部凸部の両方の場所に微小孔(A)が出来やすい製造方法としては、微小中空球体(s)が分散された軟質樹脂をスライスした後、軟質樹脂のスライスされた表面を研磨処理するのが、これらが確実に出来るので好ましい。
【0041】
まず軟質樹脂を所望の厚さにスライスし、次に所望の大きさに裁断して中間のスライスされたシート(以下単に中間シートという)を得るが、スライス、裁断の方法などについては特に限定されるものではない。
たとえば、スライスは、ゴムなどをスライスする装置が適用できる。移動テーブルもしくはコンベアー上に軟質樹脂を載せて、水平回転する刃物(バンドナイフ / 鋸)により水平方向にスライス裁断加工によって製造できる。
【0042】
中間シートの厚さも用途によって決められ限定はないが、好ましくは、1mm以上50mm以下である。スライスされた表面が微小孔(A)を有するので、滑りにくくなる。厚さがマット状であっても同様な効果を奏するので、中間シートに含めるものとする。
【0043】
すなわち、スライスによって微小中空球体の外殻がスライサーのナイフにより切断されて凹部が生じ微小孔(A)となる。また、軟質樹脂に分散している微小中空球体がスライス面から外れることによる孔による凹部も生じるが、この微小孔は主として単独孔であり、吸盤構造となるので存在していてもよい。
【0044】
このようにして得られる微小孔(A)の径は微小中空球体(s)と同じく5μm以上200μm以下が好ましい。5μm以上であるとシート表面に滑り止め効果が発現し、200μm以下であると人体への触感が良好である。微小孔(A)の径が10μm以上150μm以下であるのがさらに好ましい。
【0045】
図1は、一実施形態である中間シートを拡大した断面図である。
図2は、本発明の一実施形態である中間シートを拡大した平面図である。これらは、Keyence社のdigital micr oscope VHXー500を用いて測定した。
この中間シートは、微小中空球体として「マツモトマイクロスフェアMFL−HD60CA」(AN系コポリマーと炭酸カルシウムの複合体、平均粒子径が50μm)をウレタン樹脂に分散してスライスしてマイクロスコープで拡大して観察したものである。
図1において、Sが中間シートの表面を示している。
図2の平面図と併せてみると、微小中空球体(s)の外殻が破壊された微小孔(A)1の他に、軟質樹脂に分散している微小中空球体がスライス面から外れることによる孔による微小孔2も観察される。このような微小孔1、2は吸盤効果による滑り止め効果を奏する。
【0046】
(軟質樹脂自体に凹凸を形成する方法)
次に軟質樹脂自体に凹凸を付ける方法を説明する。
軟質樹脂自体に凹凸を付ける方法であればサンドペーパーを用いて手作業で研磨してもよいが特に限定はなく、好ましくは研磨装置を用いる。研磨装置には通常研磨パッドが備えつけられている。研磨パッドは通常サンドペーパーが使用される。サンドペーパーに用いる砥粒の材質は特に限定されるものではないが、具体的には、アルミナ,ホワイトアルミナ,アルミナジルコニア,炭化ケイ素,ダイヤモンド,ガーネット,エメリー,フリントなどが挙げられる。
【0047】
サンドペーパーの番手は、JIS規定の40番以上2000番以下の範囲とすることが好ましい。より好ましいのは240番以上2000番以下であり、特に好ましいのは1000番以上2000番以下である。40番以上、2000番以下であると滑り止め効果が向上する。
【0048】
研磨方法、研磨条件は特に限定はなく、上記のようにサンドペーパーを用いて手作業で研磨してもよいし、研磨装置を用いて工業的に行ってもよい。使用する砥粒の材質、番手などは用途や滑り止め効果の程度などによって決められる。
この研磨により、軟質樹脂に微小中空粒子(s)に由来しない軟質樹脂自体の凹凸(B)を形成することができる。
【0049】
上記のように研磨された軟質樹脂において、微小中空球体(s)に由来しない軟質樹脂の表面における凹凸(B)が生じる。この凹凸(B)において生じた凹部の幅は、10μm以上500μm以下であるのが好ましい。この大きさであると、微小中空球体(s)の外殻が破壊された微小孔(A)を凹凸(B)の凹部の表面であってその中に含むことができる。大小の二重の吸盤効果が生じ、それらが相乗して滑り止め効果を向上することができる。
【0050】
図3は、一実施形態である研磨する前の中間シートをKeyence社のdigital micr oscope VHXー500で拡大して測定した断面の表面を線で表示した概略図である。
図3においては、微小中空球体(s)による微小孔(A)1が3個確認できる。軟質樹脂3はスライスで切断され、軟質樹脂3自体はほぼフラットになっている。
【0051】
図4は、一実施形態である研磨した後の中間シートをKeyence社のdigital micr oscope VHXー500で拡大して測定した断面の表面を線で表示した概略図である。
図4においては、大きい凹凸があり、凹部4の中にさらに微小孔(A)1が存在している。研磨により中にある微小中空球体(s)の外殻が切断された微小孔(A)1となったものである。
【0052】
上記のように微小中空球体(s)は研磨の際に凹部4においてその外殻が破壊され、凹部4において微小孔(A)1が形成される。また凸部5においてもスライスされた際に生じる微小孔(A)1はそのまま残る。その結果、凹部4においては微小孔(A)1による吸盤効果と凹部4そのものによる吸盤効果も生じる。さらに、軟質樹脂自体の凹凸4、5による滑り止め効果がある。したがって、微小孔(A)1単独に起因する滑り止め効果よりも優れた滑り止め効果を奏し、乾燥環境下はもとより、水濡れ環境下でも十分な滑り止め性能を有する。
また、表面における微小孔(A)1や凹凸(B)4,5は微小であるので、身体への良好な感触が得られる。と共に滑り止め効果が向上し、乾燥環境下はもとより、水濡れ環境下でも十分な滑り止め性能を有する。
【0053】
本発明の滑り止め用シートは、浴室のマット、調理場のマット、自動車のシート、嵩崩れ防止のための梱包用シート、マグネット付きフックの一部分、ゴルフ用手袋や卓球、テニスラケット、ゴルフクラブのグリップ、印鑑押印用マット、ハンガー取付け端の崩れ防止材、スカートやズボンのハンガーの内張り、階段の滑り止め材、指サックの代用品、シーツや絨毯のズレ防止材、シリコンウェハーの研磨材料部品などの多様な用途に供されるが、これらに限定されない。
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。部は重量部を示す。
【0055】
実施例および比較例に使用したポリウレタン樹脂原料は以下の通りである。
(1)ポリオール(a):平均官能基数3.0、数平均分子量3000、水酸基価56であるグリセリンのPO付加物。
(2)ひまし油3(kO):平均官能基数2.7、数平均分子量950、水酸基価約160の精製ひまし油[伊藤製油社製ひまし油 SL]
(3)ウレタン化触媒(E):日東化成社製「ネオスタン U−600」
(4)微小中空球体(s):平均粒径110μmのアクリル樹脂中空球体の表面を炭酸カルシウムで被覆したマイクロバルーン(松本油脂製薬社製マツモトマイクロスフィアーMFL−110CAL
(5)無機粉体(H):メジアン径4μmのタルク「ソープストーンA」[日本ミストロン社製]
(6)脱水剤:ユニオン昭和社製「モレキュラーシーブ3A−Bパウダー」
(7)イソシアネ−ト(b):イソホロンジイソシアネート[「VESTANAT IPDI」、EVONIC社製、イソシアネート基含有率37.6重量%、比重1.06]
【0056】
(実施例1〜2、比較例1〜4)
真空ハードミキサー(日本ソセー工業社製、UVR−20L)を用いて、表1に示すポリオール配合液を作成し、その中に表1に示すイソシアネート配合液を投入して、15分間減圧下で混合し、できたウレタン樹脂反応液を縦300mm×横300mm×厚さ10mmの大きさの金属製金型内に投入して60分間硬化させた後に脱型し、ウレタン樹脂を得た。
【0057】
実施例1〜2、比較例1〜2、4のウレタン樹脂について、得られたウレタン樹脂をスライサー(独FOTUNA社製AN400D)で2mmの厚さにスライスした。比較例3はスライスしなかった。
【0058】
次に実施例1〜2、比較例3〜4のウレタン樹脂について、表面を1500番のサンドペーパーで均一に研磨した。研磨は室温において手作業で行ったが、同じような圧力下で行った。比較例3のウレタン樹脂については、スライスせず上記の研磨処理のみ行った。
【0059】
(比較例5)
市販の滑り止めシート(アクリル系樹脂製)を購入して評価した。
上記の実施例、比較例について、下記に示す測定方法でフォーム物性を測定した。測定結果は表1中に示した。
【0061】
(樹脂物性の測定方法)
微小孔(A)の大きさ:Keyence社のdigital microscope VHXー500を用いて300倍に拡大して測定した。
樹脂自体の凹凸の大きさ:上記と同様に測定した。
凹部の大きさ:上記と同様に測定した。凹部とは樹脂自体の凹凸における凹部のことを指す。
【0062】
C硬度:自動硬度計(高分子計器社製PX−100、加重1Kg)を用い、加重5分後の硬度を測定した。
乾燥時摩擦力:作成したウレタン樹脂のシートにスライスした後、得られたシートの上に底面積100cm
2を持つ2kgの立方体の重りを載せて、プッシュプルゲージにて重りを押し、重りが動き出すのに掛かる力を摩擦力とした
湿潤時摩擦力:上記の乾燥時摩擦力の方法に準じて行った。すなわち、作成したウレタン樹脂のシートにスライスした後、得られたシートを水中に浸して取り出し、表面が濡れた状態のシートの上に底面積100cm
2を持つ2kgの立方体の重りを載せて、プッシュプルゲージにて重りを押し、重りが動き出すのに掛かる力を摩擦力とした
感 触:シートを床の上に置き、評価者10人にその上に素足で載ってもらいシート表面の感触を評価してもらった。
○:表面の凹凸が感じられずすべすべしており、感触がよい。
×:表面がごつごつした感じで、感触が悪い。
【0063】
表1において、実施例1は比較例1の、実施例2は比較例2のシートの表面に研磨処理を加えたものであり、乾燥時または湿潤時の摩擦力が向上していることがわかる。特に乾燥時の摩擦力が大幅に向上している。比較例3は生成したウレタン樹脂をスライスせずにその表面を研磨処理したものであり、比較例1、2の場合より悪くはなっていないが、実施例1,2程の効果は生じていなかった。比較例4は微小中空球体(s)を入れていないので、摩擦力は向上していない。比較例5は市販品であるが摩擦力は今ひとつである上に、表面の感触も不良である。これに対して、本発明の滑り止め用シートは、ウレタン樹脂で形成されているので、表面の感触は良好である。以上のことから本発明の滑り止め用シートは滑り止め効果と表面に感触に優れていることを確認した。