(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918300
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】トーションビーム式サスペンション及びそれに使用するリインフォースメントメンバ
(51)【国際特許分類】
B60G 9/04 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
B60G9/04
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-188810(P2016-188810)
(22)【出願日】2016年9月27日
(65)【公開番号】特開2018-52232(P2018-52232A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112082
【氏名又は名称】ヒルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】植木 謙二
(72)【発明者】
【氏名】竹田 篤
(72)【発明者】
【氏名】浦田 学
(72)【発明者】
【氏名】安藤 正志
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 伸次
【審査官】
佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−229372(JP,A)
【文献】
特開2016−101848(JP,A)
【文献】
特開2016−164009(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2010−0056887(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右で対であるトレーリングアームと、
前記トレーリングアームに対してその両端部が固定された状態であるトーションビームと、
その基端側が前記トレーリングアームに対して固定された状態であり、その先端側が前記トーションビームに対して固定された状態であるリインフォースメントメンバとを含むトーションビーム式サスペンションであって、
前記リインフォースメントメンバは、その基端側に複数の突起を備えており、
前記複数の突起は、底面視又は平面視において、前記リインフォースメンバの基端側に向かって先細りになる形状であって、
前記複数の突起は、傾斜部を備えており、前記傾斜部によりリインフォースメントメンバの基端側はその幅が基端側に向けて全体的に先細りとなるテーパー形状とされ、
前記複数の突起と前記トレーリングアームとが溶接された状態であり、
前記リインフォースメントメンバは、その先端側に一対の突起を備えており、
前記一対の突起は、底面視又は平面視において、先端側に向かって先細りになる形状であるトーションビーム式サスペンション。
【請求項2】
前記一対の突起は、延設方向が変わる変曲点を備える請求項1に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項3】
前記複数の突起の先端部分は、平面視又は底面視において、円形状である請求項1又は2に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項4】
前記複数の突起の斜面と連続する曲線で構成される凹部を前記複数の突起の間に備える請求項1ないし3に記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項5】
前記リインフォースメントメンバは、板状の部材であって、
その基端側に複数の突起を備える前記トレーリングアームへの取付部を備えており、その先端側に前記トーションビームへの取付部を備える請求項1ないし4のいずれかに記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項6】
前記リインフォースメントメンバは、平面視又は底面視において、前記複数の突起の斜面から前記リインフォースメントメンバの先端側に向かって連続する傾斜部を前記リインフォースメントメンバと前記トレーリングアームとの接続部分に備えており、
前記傾斜部によって前記リインフォースメントメンバの基端側から前記リインフォースメントメンバの先端側に向かって前記トレーリングアームへの取付部の幅が徐々に大きくなる請求項1ないし5のいずれかに記載のトーションビーム式サスペンション。
【請求項7】
前記リインフォースメントメンバは、平面側又は底面側に折り曲げられた状態の折曲部を備えており、
前記折曲部と前記トーションビームとが溶接された状態である請求項1ないし6のいずれかに記載のトーションビーム式サスペンション
【請求項8】
トレーリングアームに固定するための基端側の取付部と、前記トーションビームに固定するための先端側の取付部とを有するトーションビーム式サスペンションのリインフォースメントメンバであって、
前記リインフォースメントメンバは、その基端側の取付部に複数の突起を備えており、
前記複数の突起は、傾斜部を備えており、前記傾斜部によりリインフォースメントメンバの基端側はその幅が全体的に先細りとなるテーパー形状とされ、
前記複数の突起は、底面視又は平面視において、その基端側に向かって先細りになる形状であり、
前記リインフォースメントメンバは、その先端側に一対の突起を備えており、
前記一対の突起は、底面視又は平面視において、先端側に向かって先細りになる形状であるリインフォースメントメンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーションビーム式サスペンション及びそれに使用するリインフォースメントメンバ(補強材)に関する。
【背景技術】
【0002】
トーションビーム式サスペンションは主に前輪駆動車の後輪に用いられる。左右一対のトレーリングアームの間に長尺部材であるトーションビームが懸架される。トレーリングアームには車輪が支持されており、左右の車輪が路面の凹凸などによって独立して変位すると、トーションビームが捩じれたり撓んだりして弾性変形して左右の車輪とトレーリングアームとが独立して上下に変位するのを許容する。路面が平坦になるとトーションビームが元の形状に復帰してトレーリングアーム及び車輪を元の位置に復帰させる。一方、左右の車輪が同相で変位すると、左右の車輪とトレーリングアームが一体的に上下に揺動する。
【0003】
特許文献1には、棒状のスタビライザーを内蔵するトーションビームとトレーリングアームとを備えるサスペンション構造が記載されている。トーションビームの末端には、傾斜斜面、第一凸部、第二凸部等を備えるブラケットが固定される。そしてこのブラケットの傾斜面及び第一凸部は、トーションビームの内壁に溶接によって固定され、このブラケットの第二凸部はトレーリングアームの外壁に溶接によって固定される。
【0004】
特許文献2には、棒状のスタビライザーを内蔵するトーションビーム式サスペンション構造が記載されている。スタビライザーは、中空かつ大径のスタビライザーと、大径のスタビライザー内に貫通させた小径のスタビライザーとから構成される。大径のスタビライザーは、ガゼットの貫通孔に挿通された状態でガゼットと固定される。小径のスタビライザーは、トレーリングアームに設けた一対の貫通孔に挿通された状態でトレーリングアームと固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−111440号公報
【特許文献2】特開2007−246043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のサスペンション構造では、第二凸部をトレーリングアームに対して溶接によって固定することによってブラケットとトレーリングアームとを連結する。第二凸部は、底面視において台形である。このため、トレーリングアームが車輪と一体に上下動した際に、第二凸部の角部分に応力が集中して、トレーリングアームがひび割れるなど破損する可能性がある。
【0007】
特許文献2のトーションビーム式サスペンションでは、ガゼットをトレーリングアームに対して溶接することによって、両者を連結する。ガゼットは底面視において矩形である。このため、トレーリングアームが車輪と一体に上下動した際に、ガゼットの角部分に応力が集中して、トレーリングアームがひび割れるなど破損する可能性がある。
【0008】
以上のような問題点に鑑みて、本発明では、トレーリングアームに力が作用した際に、トレーリングアームとリインフォースメントメンバとの接合部分において応力が集中することを防止することが可能なトーションビーム式サスペンション及びリインフォースメントメンバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
左右で対であるトレーリングアームと、トレーリングアームにその両端部が固定された状態であるトーションビームと、その基端側がトレーリングアームに対して固定された状態であり、その先端側がトーションビームに対して固定された状態であるリインフォースメントメンバとを含むトーションビーム式サスペンションであって、リインフォースメントメンバは、その基端側に複数の突起を備えており、複数の突起は、底面視又は平面視において、リインフォースメンバの基端側に向かって先細りになる形状であって、複数の突起とトレーリングアームとが溶接された状態であるトーションビーム式サスペンションによって解決する。
【0010】
トレーリングアームに固定するための基端側の取付部と、トーションビームに固定するための先端側の取付部とを有するトーションビーム式サスペンションのリインフォースメントメンバであって、リインフォースメントメンバは、その基端側の取付部に複数の突起を備えており、複数の突起は、底面視又は平面視において、その基端側に向かって先細りになる形状であるリインフォースメントメンバによって、上記の課題を解決する。
【0011】
リインフォースメントメンバの基端側に先細り形状の複数の突起を設けることによって、トレーリングアームが上下に変位した際に、リインフォースメントメンバとトレーリングアームの接合部分に応力が集中することを防ぐことが可能になる。
【0012】
複数の突起の先端部分は、平面視又は底面視において、円形状であることが好ましい。円形は、真円に限られない。突起の先端部分を円形状にすることによって、応力の集中をより効果的に防ぐことができる。
【0013】
先細り形状の複数の突起の斜面と連続する曲線で構成される凹部を複数の突起の間に備えるようにすることが好ましい。これによって、応力の集中をより効果的に防ぐことができる。
【0014】
リインフォースメントメンバは、平面視又は底面視において、先細り形状の突起の斜面からリインフォースメントメンバの先端側に向かって連続する傾斜部をリインフォースメントメンバとトレーリングアームとの接続部分に備えており、傾斜部によってリインフォー
スメントメンバの基端側からリインフォースメントメンバの先端側に向かってトレーリングアームへの取付部の幅が徐々に大きくなるように構成することが好ましい。傾斜部を設けることによって、トレーリングアームとリインフォースメントメンバとが接触する面積を増加させて、接合強度を高めると共に応力の集中を防ぐことができる。
【0015】
リインフォースメントメンバは、板状の部材であって、その基端側に複数の突起を備えるトレーリングアームへの取付部を備えており、その先端側にトーションビームへの取付部を備えるものとすることが好ましい。これによって、リインフォースメントメンバの重量を小さく抑えながらも、トレーリングアームとトーションビームとをリインフォースメントメンバによって強固に補強することができる。
【0016】
リインフォースメントメンバは、平面側又は底面側に折り曲げられた状態の折曲部を備えており、折曲部とトーションビームとを溶接によって固定することが好ましい。リインフォースメントメンバに折曲部を設けることによって、リインフォースメントメンバの剛性を高めることができる。また、折曲部を溶接代として利用することによって溶接作業を簡単かつ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
トレーリングアームに力が作用した際に、トレーリングアームとリインフォースメントメンバとの接合部分において応力が集中することを防止することが可能なトーションビーム式サスペンション及びリインフォースメントメンバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】トーション
ビーム式サスペンションの一実施形態を示す底面図である。
【
図2】
図1のトーション
ビーム式サスペンションの一部を拡大した拡大底面図である。
【
図3】
図1のトーション
ビーム式サスペンションの背面図である。
【
図4】
図1のトーション
ビーム式サスペンションを正面側から見た斜視図である。
【
図9】CAE解析を行ったトーション
ビーム式サスペンションの底面図である。
【
図10】CAE解析を行った比較例に係るトーション
ビーム式サスペンションの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。以下に示す実施形態は本発明の実施形態の一例に過ぎない。
【0020】
図1ないし
図8に、本発明の実施形態の一例を示す。本実施形態のトーションビーム式サスペンション1は、左右一対のトレーリングアーム11と、両端部がトレーリングアーム11に対して固定された状態であるトーションビーム12と、トレーリングアーム11の底面側とトーションビーム12の底面側とに固定される一対のリインフォースメントメンバ13と、トレーリングアーム11の平面側とトーションビーム12の平面側に固定される第二リインフォースメントメンバ14とを含む。
【0021】
図1等に示したように、本実施形態では、トレーリングアーム11の一端側に車輪の支持部材16を備える。本実施形態では、支持部材16は、エンドプレート17と呼ばれる板材と車軸15を含み、エンドプレート17の中央部分から車軸15が車両の左方向又は右方向に突出する。車輪側の軸孔を車軸15に挿通した状態で車輪をエンドプレート17に対して接面させて支持する。
【0022】
図1等に示したように、トレーリングアーム11の他端側には、車両に対する取付部材18を備える。本実施形態では、車両に対する取付部材18は、中空の菅状部材19の中にゴムなどの弾性体から構成されるブッシュを内蔵して構成されている。そして、トレーリングアーム11と中空の菅状部材19とは、溶接によって接合されている。トーションビーム式サスペンション1を車体に取り付ける際には、ブッシュの穴に車両側の軸を挿通して、トレーリングアーム11を車体に対して回動可能に支持する。車輪を介して負荷がトレーリングアーム11に入力されると、ブッシュに通した車両側の軸を中心として、他端側に回転可能に支持した車輪と共にトレーリングアーム11が車両の上下方向に対して変位する。
【0023】
トレーリングアーム11は、2枚の曲げ加工した鋼板を溶接によって接合して構成され、平面視又は底面視において中央部が車両の中央方向に向かって弓なりに窪んだ湾曲形状となっている。このトレーリングアーム11は、2枚の曲げ加工した鋼板から構成するため中空の部材となっており、
図6に示したようにその断面形状はその一端から他端に至るまで略矩形となっており、トレーリングアームの一端側から他端側に至るまで中空となっている。車両右側のトレーリングアーム11と車両左側のトレーリングアーム11は、左右対称の形状となっている。トレーリングアーム11は、中空に構成されているため、トーションビーム式サスペンション1を軽量化することができる。
【0024】
トーションビーム12は、
図5に示したように、平面側の板材121と、車両の正面側の板材122と、車両の背面側の板材123と、正面側の板材12
2及び背面側の板材123のそれぞれの縁から正面側又は背面側に突出するフランジ124とを備えており、その断面はハット形状である。このトーションビーム12の平面側の板材121、正面側の板材122、及び背面側の板材123のそれぞれの端部をトレーリングアーム11の突部に当接させて、トーションビーム12の底面側の開口が車両の底面側に向く状態として、溶接によってトレーリングアーム11とトーションビーム12とを固定している。
【0025】
本実施形態では、トレーリングアーム11の一端側の内側にダンパーの支持部23が設けられている。ダンパーの支持部23は、底面側の板材と左側の板材と右側の板材とから構成される溝であり、この溝が車両の正面側に向かって延びている。ダンパーの支持部23は、ダンパーの端部に配される軸を支持するための貫通孔を左右の板材に計2つ備えており、ダンパーの端部を受け入れるためにその平面側が解放されている。
【0026】
本実施形態では、ダンバーの支持部23とトレーリングアーム11の中央部に配される突部との間にコイルスプリングの支持部25が設けられている。コイルスプリングの支持部25は、底面側の板材とそこから平面側に隆起する板材とから構成されており、トレーリングアームの内側からトーションビーム12の中央方向に向かって延びる皿状の部材である。
【0027】
本実施形態では、トレーリングアーム11とトーションビーム12との接合部分にまたがるようにリインフォースメントメンバ13と第二リインフォースメントメンバ14とをそれぞれ固定している。本実施形態では、リインフォースメントメンバ13の基端側はトレーリングアーム11の底面側に固定され、その先端側はトーションビーム12を構成する平面側の板材121の裏面に固定される。そして、
図4に示したように、第二リインフォースメントメンバ14の基端側はトレーリングアーム11の平面側に溶接によって固定され、その先端側はトーションビーム12を構成する平面側の板材121の表面に溶接によって固定される。
【0028】
図1及び
図2に示したように、リインフォースメントメンバ13の基端側には複数の突起131が設けられる。突起131の形状は、底面視において、リインフォースメントメンバ13の基端側に向かって突起131の幅が先細りとなる形状、すなわちテーパー形状となっている。そして、個々の突起131の先端部分の形状は、底面視において円形状となっている。
【0029】
本実施形態では突起131の数は2つとしている。突起の数は、2つ以上とすることが好ましく、4つ以下とすることが好ましい。2つの先細り形状の突起131の間には、当該突起131の内側の斜面132と連続する曲線で構成される凹部133が設けられる。凹部133の形状は、2つの突起131の先端を基準としてリインフォースメントメンバ13の先端側に向かって窪んだ形状となっている。凹部133は曲線で構成されているため角がない。
【0030】
2つの先細り形状の突起131の外側の斜面132には、当該斜面132からリインフォースメントメンバの先端側に向かって連続する傾斜部134が、リインフォースメントメンバ13とトレーリングアーム11との接続部分に設けられる。傾斜部134は、車両の背面側と正面側との両方に設けられている。傾斜部134によって、リインフォースメントメンバ13の基端側はその幅が全体的に先細りとなるテーパー形状となっている。傾斜部134を設けることによって、リインフォースメントメンバ13とトレーリングアーム11との接触する距離(面積)を増大させて、両者の接合強度を高めることができる。また、テーパー形状とすることによって両者の接合部分に応力が集中することを防ぐことができる。リインフォースメントメンバ13とトレーリングアーム11との接続部分を直線状にした場合は、上記の場合に比べて、接触面積が減少する。傾斜部134、突起131、斜面132、凹部133、斜面132、突起131、及び傾斜部134を結ぶ線は曲線となっており、角部がない。これによって、局所的な応力の集中を効果的に防ぐことができる。
【0031】
上述の通り、リインフォースメントメンバ13の基端側はトレーリングアーム11に対する取付部135となっている。基端側の取付部135は、
図2においてバツ印で示したように、トレーリングアーム11とリインフォースメントメンバ13とを突き合わせた状態で、背面側の傾斜部134、背面側の突起131、凹部133、正面側の突起131、及び正面側の傾斜部134を結ぶように、トレーリングアーム11の底面側とリインフォースメントメンバ13とを連続的に溶接することによって、トレーリングアーム11とリインフォースメントメンバ13とが固定されている。
【0032】
リインフォースメントメンバ13の先端側は、
図2に示したように、トーションビーム12に対する取付部136となっている。先端側の取付部136は、先端側に行くにつれてその幅が先細りとなる形となっており、複数の突起137と当該突起137の間に配され当該突起137と連続する分割部138を備える。本実施形態では複数の突起137は一対であり、突起137に変曲点143を設けることによってトーションビーム12に捩じれや撓みが生じた際にリインフォースメントメンバ13の先端側とトーションビーム12との接合部分に応力が集中することを防止することができる。
図2及び
図8に示したように、リインフォースメントメンバ13の先端側の幅が先細りになり始める位置から突起137の中ほどに至るまでの範囲においてリインフォースメントメンバ13の左右の縁部は底面側に折り曲げられている。この先端側に位置する折曲部142によって先端側におけるリインフォースメントメンバ13の剛性が高められている。また、この折曲部142によって、溶接を簡単かつ確実に行うことが可能になる。
【0033】
リインフォースメントメンバ13は、リインフォースメントメンバ13の基端側の取付部135及びその先端側の取付部136が中間部139と連続する一枚ものの鋼板である。
図6に示したように、トレーリングアーム11の底面側の方がトーションビーム12を構成する平面側の板材121よりもより低い位置ある。このため、リインフォースメントメンバ13は、その側面視においてトレーリングアーム11の底面側から平面側の板材121に向けて徐々に上昇する傾斜面を備える板状の部材となっている。そして、
図2及び
図7に示したように、リインフォースメントメンバ13の左右の縁部は基端側の取付部135から中間部139の範囲において平面側に折り曲げられている。この基端側から中間部139に位置する折曲部141によって基端側から中間部139におけるリインフォースメントメンバ13の剛性が高められている。
【0034】
リインフォースメントメンバ13の中間部139は、底面視において、トーションビーム12の開口の幅と同程度の幅を有しており、その幅の大きさがビームの長手方向に連続する直線形状である。このため、トレーリングアーム11にリインフォースメントメンバ13の基端側の取付部135を固定し、トーションビーム12にリインフォースメントメンバ13の先端側の取付部136を固定した状態において、リインフォースメントメンバ13の中間部139と先端側の取付部136とは、
図1、
図2、
図5、及び
図8に示したように、トーションビーム12の凹溝の中に収まる。
【0035】
中間部139においては、
図2及び
図7においてバツ印で示したように、トーションビーム12の正面側の板材122又は背面側の板材123とリインフォースメントメンバ13の正面側の折曲部141又は背面側の折曲部141とが溶接によって固定される。折曲部141を溶接代として利用することで、リインフォースメントメンバの剛性を向上させるだけでなく、溶接を簡単かつ確実に行うことが可能になる。
【0036】
リインフォースメントメンバ13の先端側においては、
図2及び
図5に示したように、トーションビーム12の平面側の板材121の裏面とリインフォースメントメンバ13の突起137とが溶接によって固定される。トーションビーム12の正面側の板材122と平面側の板材121との接合部分は、角のないラウンド形状となっている。同様にトーションビーム12の背面側の板材123と平面側の板材121との接合部分は、角のないラウンド形状となっている。このため、
図2、
図5、及び
図8に示したように、連続的な溶接によってリインフォースメントメンバ13の中間部139からその先端側の取付部136に至るまでの領域を正面側の板材122又は背面側の板材123から平面側の板材121にかけて連続的に固定することができる。これによって、高い接合強度を得ることが可能になる。
【0037】
中間部139とリインフォースメントメンバ13の基端側も、
図2においてバツ印で示したように、連続的に溶接することができる。これによって、トーションビーム12、リインフォースメントメンバ13、及びトレーリングアーム11の計3点の部材を相互に確実に固定することができる。例えば、トーションビーム12が捩じれたり撓んだりした際やトレーリングアーム11が上下方向に変位した場合に、トーションビーム12、リインフォースメントメンバ13、及びトレーリングアーム11が溶接部分から分離することを防ぐことができる。
【0038】
図1、
図2、及び
図7に示したように、リインフォースメントメンバ13の基端側には、リインフォースメントメンバ13の基端側の取付部135と中間部139とに連続するように、底面側に向かって膨らむビード140を設けている。これによって、トレーリングアーム11とトーションビーム12との接合部分の強度を高めている。例えば、トーションビーム12が捩じれたり撓んだりした際やトレーリングアーム11が上下方向に変位した場合に、トーションビーム12とトレーリングアーム11の接合部分から座屈するような変形が生じることを防ぐことができる。
【0039】
第二リインフォースメントメンバ14は、リインフォースメントメンバ13に比べて、長手方向に対して短く、基端側の取付部及び先端側の取付部にそれぞれ溶接代を備える。この溶接代には、リインフォースメントメンバ13とは異なり、突起は設けられていない。
【0040】
上記の実施形態のトーションビーム式サスペンション1では、複数の突起131を溶接代として利用して、トレーリングアーム11とリインフォースメントメンバ13とを相互に溶接によって固定している。このため、車輪から荷重が入力されるなどしてトレーリングアーム11が上下に変位した際に、複数の突起131を利用してリインフォースメントメンバ13とトレーリングアーム11の接合部分に掛かる応力を分散させて、応力が特定の箇所に集中することを防止することができる。また、突起131の先端部分の形状を円形状にしたり、曲線で構成される凹部133を突起131の間に配したり、傾斜部134をリインフォースメントメンバ13とトレーリングアーム11との接続部分に配しているため上記のように変位等した際に特定の箇所に応力が集中することをより効果的に防止することができる。これによって、トレーリングアーム11とリインフォースメントメンバ13との接合部分等に繰り返し応力が作用することに起因して接合部分等に割れが生じることを防ぐことができる。
【0041】
上記の実施形態では、トーションビーム式サスペンション1の底面側にリインフォースメントメンバ13を設けて、その平面側に第二リインフォースメントメンバ14を設けて、開口を備えるトーションビーム12の底面側をトーションビーム式サスペンション1の底面側に向けた状態でトーションビーム12とトレーリングアーム11とを固定している。これを以下のように変更してもよい。すなわち、トーションビーム式サスペンションの平面側にリインフォースメントメンバを設けて、その底面側に第二リインフォースメントメンバを設けて、開口を備えるトーションビーム底面側をトーションビーム式サスペンションの平面側に向けた状態でトーションビームとトレーリングアームを固定する。
【実施例】
【0042】
図9及び
図10に示した構造を備えるトーションビーム式サスペンションにおいて、左右のコイルスプリングの支持部及びダンパーの支持部のそれぞれに対して複数回にわたって同相で荷重を掛けた際に、
図9及び
図10における
A位置及び
B位置に掛かる応力をCAE解析によって求めた。
図9のトーションビーム式サスペンションは、
図1ないし
図8に示した実施形態と同様の構成を備えるものであり、以下ではこれを実施例と称する。
図10は、リインフォースメントメンバ13
0の基端側の取付部の形状のみが
図9に示した実施例とは異なり、以下ではこれを比較例と称する。
【0043】
解析の結果、実施例に係るトーションビーム式サスペンションでは、比較例に係るトーションビーム式サスペンションと比較して、A位置における応力が18%ほど低減されていた。また、B位置においても、実施例は、比較例と比較して応力が30%ほど低減されていた。さらに、実施例に係るトーションビーム式サスペンションでは、比較例に係るトーションビーム式サスペンションと比較して、A位置及びB位置以外の領域にいても全体的に応力値が低減されていることが確認された。
【0044】
実施例と比較例の構成を備えるトーションビーム式サスペンションそれぞれを作製して、左右のコイルスプリングの支持部及びダンパーの支持部のそれぞれに同相で強制的に繰り返し荷重を加える試験を行った。そうしたところ、比較例のトーション
ビーム式サスペンションでは、実施例に係るトーションビーム式サスペンションよりも少ない回数でトレーリングアームに割れが生じてしまった。
【符号の説明】
【0045】
1 トーションビーム式サスペンション
11 トレーリングアーム
12 トーションビーム
13 リインフォースメントメンバ
131 突起
132 突起の斜面
133 凹部
134 傾斜部