特許第6918301号(P6918301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 吉佳エンジニアリング株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社三和綜合土木の特許一覧

<>
  • 特許6918301-既設管更生方法 図000002
  • 特許6918301-既設管更生方法 図000003
  • 特許6918301-既設管更生方法 図000004
  • 特許6918301-既設管更生方法 図000005
  • 特許6918301-既設管更生方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918301
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】既設管更生方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/26 20060101AFI20210729BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20210729BHJP
   F16L 58/10 20060101ALI20210729BHJP
   F16L 55/162 20060101ALI20210729BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20210729BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20210729BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   B29C63/26
   F16L1/00 J
   F16L58/10
   F16L55/162
   B05D7/22 A
   B05D1/02 Z
   B05D7/24 301V
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-207144(P2016-207144)
(22)【出願日】2016年10月21日
(65)【公開番号】特開2018-65356(P2018-65356A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年9月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595053777
【氏名又は名称】吉佳エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515261446
【氏名又は名称】株式会社三和綜合土木
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】大岡 伸吉
(72)【発明者】
【氏名】梅林 勲
(72)【発明者】
【氏名】張 満良
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−102796(JP,A)
【文献】 特開昭60−110368(JP,A)
【文献】 特開昭59−132972(JP,A)
【文献】 特開2005−028351(JP,A)
【文献】 特開2007−125480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
B05D 1/00−7/26
F16L 57/00−58/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管を更生する方法であって、
前記既設管の内側に更生管を設置する更生管設置工程と、
前記更生管の内周面に、該更生管内を移動される噴射装置から経時的に硬化する樹脂組成物を噴射し、その噴射された樹脂組成物の硬化により、前記更生管の内側に止水補強層を形成する止水補強層形成工程と、
を含み、
前記噴射装置により噴射を行っているときに、前記更生管内において、前記噴射装置の移動方向とは逆方向の気体の流れを形成することを特徴とする既設管更生方法。
【請求項2】
前記止水補強層形成工程は、
前記樹脂組成物を噴射するためのノズルと前記更生管内を移動可能とする移動手段とを有する噴射装置を用いて行われ、
前記噴射装置は、前記更生管内を移動しつつ前記樹脂組成物の噴射を行うことを特徴とする請求項1に記載の既設管更生方法。
【請求項3】
前記噴射装置は、前記ノズルを前記更生管の周方向に回転させる回転機構を有し、
前記噴射は、前記ノズルを回転させながら行われることを特徴とする請求項2に記載の既設管更生方法。
【請求項4】
前記噴射装置は、前記ノズルの噴射角度を調整可能な角度調整機構を有し、
前記噴射は、噴射方向を調整しつつ行われることを特徴とする請求項2又は3に記載の既設管更生方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、ポリウレア形成用樹脂組成物又はポリウレタン形成用樹脂組成物であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の既設管更生方法。
【請求項6】
前記更生管設置工程の後、前記止水補強層形成工程の前に、
前記更生管の内周面に凹凸を形成する凹凸形成工程、
を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の既設管更生方法。
【請求項7】
前記凹凸形成工程は、前記更生管内を移動可能で、前記更生管の内周面に凹凸を形成することが可能なブラシを周方向に回転可能に備えた凹凸形成装置により行われ、
前記凹凸の形成は、凹凸形成装置の移動中に前記ブラシを前記更生管の内周面に沿ってその周方向に回転可能させつつ行われることを特徴とする請求項6に記載の既設管更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は既設管更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管等の既設管は長年の使用により劣化し、その耐用年数は一般に約50年とされているため、耐用年数を超えた下水管は年々増加している。特に、老朽化した下水管は変形や亀裂等が生じており、下水の流下機能が低下するだけでなく、下水管周囲の地下水や土砂が下水管内に流入することによって地中に空洞が生じることから地面陥没の原因にもなっている。また、地中に埋設される下水管は地震等の地盤変動による影響を受けやすいこともあり、所定の時期に何らかの補修が必要となるのが現状である。
【0003】
既設管更生方法として既設管の内面にライニング材を被覆する方法が知られている。このような方法としては、例えば、特許文献1に記載の方法が知られており、この方法では、ガラス繊維等の繊維材に光や熱で硬化する硬化性樹脂組成物を含浸することにより作製した管状のライニング材を未硬化状態で既設管内に導入した後、ライニング材の両端部を閉塞して形成された密閉空間に圧縮空気を導入することによりライニング材を既設管の内面に押圧した状態でライニング材を光や熱により硬化させる。これにより、既設管の内側に樹脂製の更生管が形成されることにより既設管が更生される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−260223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような補修方法に使用されるライニング材は、その製造(含浸)過程において内部に微小の気泡が残存する場合があり、これが原因で形成される更生管にごく小さなピンホールが発生する場合がある。ピンホールが発生すると止水性が確保できなくなる場合があり、既設管外部から管路内に地下水や土砂が流入する恐れがある。
【0006】
また、更生する対象の既設管の口径が大きくなればなるほど、更生管の適切な強度を確保するためライニング材の厚みを大きくする必要がある。しかし、ライニング材の厚みを大きくするとその分重量も大きくなり、既設管内にライニング材を導入する作業に支障が生ずる場合がある。また、光硬化性樹脂組成物を含浸させたライニング材を使用する場合、その厚みが大きくなると、光照射の際に光が内部まで十分に浸透せず、硬化が不十分となる場合がある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、更生後の管強度を十分に確保することができ、優れた止水性を有する既設管の更生方法及び更生構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するための既設管更生方法は、
前記既設管の内側に更生管を設置する更生管設置工程と、
前記更生管の内周面に、経時的に硬化する樹脂組成物を噴射し、その噴射された樹脂組成物の硬化により、前記更生管の内側に止水補強層を形成する止水補強層形成工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、更生管の内側に更に止水補強層を設けていることにより、更生管にピンホールが生じている場合にはこれを止水補強層により塞ぐことができるため、優れた止水性を確保することができる。また、樹脂組成物が硬化した止水補強層が更生管の内側に形成されることにより、更生管の管としての強度を向上させることができる。これにより、例えば、更生対象の既設管の管径が大きい場合であっても、更生管を形成するためのライニング材の厚さを抑制することができ、ライニング材の導入作業や硬化作業の容易化や迅速化が図られる。
【0010】
また、前記止水補強層形成工程は、
前記樹脂組成物を噴射するためのノズルと前記更生管内を移動可能とする移動手段とを有する噴射装置を用いて行われ、
前記噴射装置は、前記更生管内を移動しつつ前記樹脂組成物の噴射を行うことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、噴射装置を更生管内で移動させることで、更生管の内部で全体に樹脂組成物を噴射することができ、均一な噴射が可能となり、噴射作業も容易なものとなる。
【0012】
また、前記噴射装置は、前記ノズルを前記更生管の周方向に回転させる回転機構を有し、前記噴射は、前記ノズルを回転させながら行われることを特徴とする。ノズルが回転して樹脂組成物が更生管の内周面全体に吹き付けられることで、止水補強層のより均一な厚さを確保することができる。
【0013】
また、前記噴射装置は、前記ノズルの噴射角度を調整可能な角度調整機構を有し、前記噴射は、噴射方向を調整しつつ行われることを特徴とする。
【0014】
噴射角度が調整可能であることにより、ノズルから噴射された樹脂組成物が更生管の内周面に到達するまでの時間を調整することができる。使用する樹脂組成物は経時的に硬化するタイプであるため、噴射されてから更生管に到達するまでの時間を調整できることで、樹脂組成物を適切に硬化させることができ、強度の十分な止水補強層を形成することが可能となる。
【0015】
また、前記噴射装置により噴射を行っているときに、前記更生管内において、前記噴射装置の移動方向とは逆方向の気体の流れを形成することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ノズルから噴射された樹脂組成物に含まれる成分が互いに反応して硬化するまでの時間を、気体の流れを形成することによって調整することが可能となる。したがって、意図したタイミングより早期に硬化することを防止することができ、樹脂組成物を適切に硬化させることが可能となる。
【0017】
また、前記樹脂組成物は、ポリウレア形成用樹脂組成物又はポリウレタン形成用樹脂組成物であることを特徴とする。ポリウレ及びポリウレタンは、強度や止水性に優れるだけでなく、耐摩耗性や耐酸性・耐アルカリ性にも優れる。したがって、固形物が多く流れる管や化学廃水を流す管に特に有用な更生方法を提供することができる。
【0018】
また、前記更生管設置工程の後、前記止水補強層形成工程の前に、前記更生管の内周面に凹凸を形成する凹凸形成工程、を含むことを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、更生管の内周面に凹凸を形成することにより、その内周面の表面積が増えることで、更生管の内周面と噴射される樹脂組成物との付着性を向上させることが可能となる。
【0020】
また、前記凹凸形成工程は、前記更生管内を移動可能で、前記更生管の内周面に凹凸を形成することが可能なブラシを周方向に回転可能に備えた凹凸形成装置により行われ、前記凹凸の形成は、凹凸形成装置の移動中に前記ブラシを前記更生管の内周面に沿ってその周方向に回転可能させつつ行われることを特徴とする。この構成によれば、周方向に回転可能なブラシにより効率的に凹凸を形成することが可能となる。

【0021】
さらに、上記目的は、既設管の内側に形成された更生管と、該更生管の内周面上に形成された、経時的に硬化する樹脂組成物の硬化物からなる止水補強層と、を有する既設管更生構造により達成される。前記止水補強層はポリウレア又はポリウレタンからなることが好ましく、これにより止水性及び補強性の点で優れる既設管更生構造を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、更生管の内周面上に経時的に硬化する樹脂組成物の硬化物からなる止水補強層を形成することで、更生後の管強度を十分に確保することができ、優れた止水性を有する既設管の更生方法を提供することが可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】樹脂製の更生管設置工程を示す説明図である。
図2】凹凸形成工程を示す説明図である。
図3図2の要部詳細図である。
図4】止水補強層形成工程を示す説明図である。
図5図4の要部詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態では既設管として下水管を例として説明するが、本発明では下水管だけでなくあらゆる既設管に適用可能である。図1は更生管形成工程の説明図である。更生形成性工程自体は従来と同じように行えばよい。
【0025】
すなわち、マンホール102−1、102−2の間に配置された下水管(下水道本管)100内に、管状のライニング材10を導入した後、その両端を閉塞部材62−1、62−2で閉塞する。これにより形成された閉塞空間70内に作業装置66からホース68を介して圧縮空気を導入し、管状ライニング材10を拡径してその外周面を下水管100の内周面に接触させる。
【0026】
その後、ライニング材10の内側からライニング材10に対してランプ連結体60により光照射することより、ライニング材10に含まれる硬化性樹脂組成物が硬化し、下水管100の内側にライニング材10が硬化した更生管が形成される。なお、ランプ連結体60はライニング材10内をケーブル64で牽引することにより移動可能となっている。
【0027】
図示中、符号90は下水の流れを堰き止める堰き止め部材である。符号66、72は作業装置であり、作業装置66からホース68を介して空気が閉塞空間70に供給されるとともに、ホース74から排出されることで、密閉空間70では空気の流れが生じており、可燃性物質の排出が行われている。
【0028】
なお、ライニング材10は従来から使用されているものでよく、例えば、繊維基材(例えば、ガラス繊維マットやフェルトなどの不織布)に硬化性樹脂組成物を含浸した管状物と、必要に応じてその管状物の内面及び外面を保護するために設けられるインナーフィルム及びアウターフィルムを有するものが用いられる。
【0029】
図1で示した例では光で硬化する光硬化性樹脂組成物を含浸したライニング材を示したが、硬化性樹脂組成物は熱で硬化する熱硬化性樹脂組成物でもよい。いずれの硬化性樹脂組成物でも、ビニルエステル樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の重合性樹脂をスチレン等の溶媒に溶かしたものを使用することができ、光硬化性樹脂組成物の場合はアゾ化合物等の光重合開始剤が配合され、熱硬化性樹脂組成物の場合は熱に反応する有機過酸化物が配合される。熱硬化性樹脂組成物を使用した場合には、硬化作業は光照射ではなく、ライニング材を加熱することにより行われる。
【0030】
インナーフィルム及びアウターフィルムは従来から管状ライニング材の製造に用いられているものでよい。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどを用いることができる。硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂組成物の場合にはインナーフィルムは照射する光に対して透過性を有するものを用いる。ライニング材を硬化した後にインナーフィルムは剥離される。
【0031】
次に、更生管形成工程の後に必要に応じて行う凹凸形成工程について説明する。図2は凹凸形成工程の説明図であり、図3図2の要部詳細図である。凹凸形成工程では、まず、更生管の内周面に微細な凹凸を形成するための機器を配置する。すなわち、更生管20内には、凹凸を形成するための凹凸形成装置30が配置されている。本実施の形態において、凹凸形成装置30はプライマー噴射機能をも有している。プライマーの噴射は、更生管20と後述する止水機能層との接着性を向上させるために必要に応じて更生管20の内周面20aに対して行われるものである。地上には凹凸形成装置30にプライマーを供給するための供給装置40が配置されている。
【0032】
供給装置40の近傍には、後述する止水機能層を形成するための樹脂組成物の成分を収容している容器42A及び42B、プライマーを収容している容器42C、圧縮空気を供給するためのコンプレッサー42Dが置かれている。凹凸形成工程では、容器42C及びコンプレッサー42Dからからプライマー及び圧縮空気が供給装置40によりホース・ケーブル集合体44を介して凹凸形成装置30に送られる。
【0033】
図3に示しているように、凹凸形成装置30には、更生管20の内周面20aに凹凸を形成するためのブラシ36が備えられている。凹凸形成装置30の本体部31には軸部38が取り付けられており、ブラシ36はその軸部38に取り付けられている。軸部38は回転機構37によって、軸心Cを基準として更生管20の周方向に(即ち、矢印300方向に)回転可能となるように構成されている。これにより、ブラシ36は更生管20の内周面20aに沿うように周方向に回転可能なように構成されており、ブラシ36が回転することで更生管20の内周面20aに傷を付けることで微細な凹凸が形成される。
【0034】
ブラシ36を構成する材質としては、例えば鉄やステンレス鋼などの金属を用いることができる。更生管20の内周面20aは平坦であることが多く、後述する止水補強層形成工程の前に、更生管20内周面20aに凹凸を形成することにより、止水補強層と更生管20との付着性が良好となる。
【0035】
また、凹凸形成装置30には、ノズル32が備えられており、ノズル32を介して更生管20の内周面20aにプライマーが噴射される。ノズル32も上記の回転機構37によって軸心Cを基準として更生管20の周方向に(即ち、矢印300方向に)回転することができるようになっている。このように回転しながらノズル32の噴出口32aからプライマーが噴射されることで、更生管20の内周面20a全体にプライマーが塗布される。
【0036】
噴射装置30には車輪34が備えられており、自走又は牽引によって更生管20内を移動できるように構成されており、上記のブラシ36による凹凸形成及び上記プライマーの噴射をしながら、更生管20内を一端20a側から他端20b側(即ち、矢印200方向)に移動する。以上のようにして、凹凸形成工程が完了する。
【0037】
次に、止水補強層形成工程について説明する。図4は止水補強層形成工程の説明図であり、図5図4の要部詳細図である。止水補強層形成工程では、まず、更生管20内に、止水補強層を形成する樹脂組成物を噴射するための噴射装置50を配置する。噴射装置50には、地上に配置された容器42A及び42B及びコンプレッサー42Dから樹脂組成物の成分及び圧縮空気がホース・ケーブル集合体44を介して送られる。
【0038】
噴射装置50にはノズル52が備えられており、ノズル52を介して更生管20の内周面20aに樹脂組成物が噴射される。また、噴射装置50には車輪54が備えられており、自走又は牽引によって更生管20内を移動できるように構成されている。
【0039】
本実施の形態では、まず、噴射装置50を更生管20a内の一端20a近傍に位置するように配置する。そして、噴射装置50から樹脂組成物を更生管20の内周面20aに対して噴射しながら、噴射装置50は更生管20の他端20bに向かって(矢印200方向に)移動する。噴射された樹脂組成物は時間が経過すると硬化し、止水補強層58を形成していく。
【0040】
ノズル52は回転機構57を介して噴射装置50の本体部51に取り付けられており、ノズル52は回転機構57により軸心Cに対して周方向に(即ち、矢印300方向に)回転可能なように構成されている。これにより、更生管20の内周面20aの全面に対して樹脂組成物を噴射することができるようになっている。この回転は正回転と逆回転を交互に行う回転でもよいし、正回転を続けて行う回転でもよい。
【0041】
噴射される樹脂組成物は、経時的に硬化する樹脂組成物である。その例としては、ポリウレア形成用樹脂組成物やポリウレタン形成用樹脂組成物を使用することが好ましい。ポリウレア形成用樹脂組成物の場合、例えば、ポリアミン成分が容器42−1に保管され、ポリイソシアネート成分が容器42−2に保管され、それぞれ別個に供給装置40を介して噴射装置30に供給された後、噴射の直前にポリアミン成分とポリイソシアネート成分が混合しはじめる。ポリウレア及びポリウレタンは耐酸性、耐アルカリ性、耐化学薬品性、耐摩耗性に優れる。特にポリウレアがこれらの利点及び本発明の課題及び効果の点から好ましい。
【0042】
噴射装置50において、ノズル52から噴射される樹脂組成物の噴射角度は調節可能なように構成されている。すなわち、ノズル52の噴出口52aを有する管部52bの、更生管20の軸心Cに対する角度αが調節可能である。角度αは0°を超え90°以下が好ましく、特に好ましくは30〜60°である。ノズル52には管部52bの角度調節機構(図示せず)が備えられており、これにより噴射角度αが調整可能とされている。なお、噴射方向とは、噴出口52aから放出される樹脂組成物の中心の角度である。
【0043】
噴射角度を調整可能とすることにより、噴射された組成物が更生管20の内周面20aに到達する前に硬化することや樹脂組成物中の成分の十分な混合が行われる前に樹脂組成物が更生管20の内周面20aに到達することを防止することができる。
【0044】
すなわち、既設管100及び更生管20の管径が大きく、ノズル52の噴射口52aから更生管20の内周面20aまでの距離が長い場合であって、ノズル52から噴射された樹脂組成物が更生管20の内周面20aに到達する前に硬化する恐れがある場合、上記噴射角度αを大きく設定することで、ノズル52の噴射口52aから更生管20の内周面20aまでの距離を短くし、樹脂組成物が硬化する前に更生管20の内周面までに到達させることができる。
【0045】
また、容器42A及び容器42Bから供給される2種類の成分(以下、A液、B液と称する。)は、噴射装置50のノズル52まで混合されることなく別々に供給され、噴射される直前で両者が混合し始め、噴射されている間に互いに十分に混合される。そのため、既設管100及び更生管20の管径が小さく、ノズル52の噴射口52aから更生管20の内周面20aまでの距離が短い場合であって、ノズル52から噴射された樹脂組成物が更生管20の内周面20aに到達する前にA液及びB液の十分な混合が行われない恐れがある場合、上記噴射角度αを小さく設定することで、ノズル52の噴射口52aから更生管20の内周面20aまでの距離を長くし、噴射されたA液とB液が更生管20の内周面20aに到達する前に、両者を十分に混合することが可能となる。
【0046】
止水補強層形成工程においては、更生管20内において、更生管20の他端20b側から一端側20aに向けて(矢印400方向に)気体の流れを形成してもよい。これにより、噴射された樹脂組成物が更生管50の内周面までに到達するまでの時間が気体の流れを受けて長くなることにより、噴射されてから更生管50に到達するまでの時間を長くすることができ、樹脂組成物の硬化具合の最適化が図られる。この気体の流れを形成するためには、気体を送るためのホースをその放出口が更生管20の他端50b近傍位置するように配置した後、コンプレッサー等から圧縮空気を送ることなどにより行うことができる。
【0047】
以上のようにして止水補強層形成工程が完了すると本発明の既設管更生方法が終了し、本発明の既設管更生構造が形成される。なお、本発明は、例えば150〜1000mm程度の内径を有する既設管に適用することができる。更生管の厚さは例えば3〜15mm、止水補強層の厚さは例えば3〜10mmである。本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、本発明の要旨を超えない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 ライニング材
20 更生管
30 凹凸形成装置
32 ノズル
34 車輪
36 ブラシ
40 供給装置
42A、42B 樹脂成分収容容器
42C プライマー収容容器
42D コンプレッサー
44 ホース・ケーブル集合体
50 噴射装置
52 ノズル
54 車輪
58 止水補強層
60 ランプ連結体
図1
図2
図3
図4
図5