(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出力制御部は、前記音声出力部からの音声出力を制限する場合、前記第1放送装置のボリューム設定を無効化して、前記放送回線から入力された音声信号を前記乗務員室内に一定音量で音声出力させるように制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の乗務員連絡システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マスコンテーブル202及びハンドセット201は、
図6に示すように、駅のホームの状況を確認するための落とし窓203から離れた位置に設置されている。したがって、車掌が落とし窓203でホームの状況を確認しながら運転士と通話する必要がある場合(例えば、ホーム進出時の非常停止、ホーム進入時の停車位置修正等)、ハンドセット201が車掌の手が届かない位置に設置されているため、運転士と通話することができないという課題がある。なお、落とし窓203の近傍には、
図6に示すように、マイクロホン204が設置されているが、このマイクロホン204は車両放送(車内放送)等、乗務員連絡とは別の用途に用いられるものであるため、運転士と通話する手段を提供するものではなかった。
【0005】
本発明は、ホームの状況を確認しながら乗務員連絡を行うことが可能な乗務員連絡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
乗務員連絡システムにおいて、
各乗務員室
の落とし窓から手が届かない位置に設置され、連絡回線を介して乗務員間の連絡を行う際に使用される第1音声入力部と、
前記各乗務員室の
前記落とし窓近傍に設置され、前記連絡回線とは異なる放送回線を介して車両放送を行う際に使用される第2音声入力部と、
前記第2音声入力部から入力された音声信号を前記放送回線に出力するとともに、前記放送回線から入力された音声信号を前記乗務員室内に音声出力する第1放送装置と、
前記放送回線から入力された音声信号を、車両ごとに設けられた音声出力部から音声出力させる第2放送装置と、
前記音声出力部からの音声出力を制限する出力制御部と、
を備えるように構成した。
【0007】
かかる構成の乗務員連絡システムによれば、車掌が落とし窓近傍に設置された第2音声入力部を用いて運転士と乗務員連絡を行うことができる。したがって、車掌がホームの状況を確認しながら運転士と通話することができる。
【0008】
ここで、望ましくは、
前記出力制御部は、前記音声出力部からの音声出力を手動で制限するスイッチである。
かかる構成によれば、乗務員がスイッチを切り替えるという簡易な操作で、車両放送と乗務員連絡とのいずれを利用するかを選択することができる。したがって、例えば、第1音声入力部としてのハンドセットが故障する等、乗務員連絡が行えない状態となった場合であっても、乗務員の判断で即座に対応することができるので、乗務員連絡をより確実に行うことができる。
【0009】
また、望ましくは、
前記出力制御部は、前記音声出力部からの音声出力を行わせないように制御する。
かかる構成によれば、乗務員連絡時に乗務員室以外の各車両の内外への出力を完全に停止することができる。したがって、乗客に対して乗務員連絡を聞かせることなく、乗務員連絡を行うことができる。
【0010】
さらに、望ましくは、
前記出力制御部は、前記音声出力部からの音声出力を制限する場合、前記制御増幅器のボリューム設定を無効化して、前記放送回線から入力された音声信号を前記乗務員室内に一定音量で音声出力させるように制御する。
かかる構成によれば、制御増幅器のボリューム設定にかかわらず、受話側の乗務員(運転士)が聞き取り可能な音量で音声出力させることができる。したがって、仮に制御増幅器のボリューム設定が「0」に設定されている場合であっても、受話側の乗務員(運転士)に乗務員連絡の内容を確実に伝達することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホームの状況を確認しながら乗務員連絡を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
本発明の実施の形態に係る乗務員連絡システム100は、
図1に示すように、ハンドセット1と、連絡回線2と、マイクロホン3と、制御増幅器4と、放送回線5と、出力増幅器6と、スピーカー7と、連絡スイッチ8と、を備えて構成されている。本実施の形態では、上記の各構成は、11両編成の鉄道車両上に構成されている。鉄道車両は、
図1に示すように、1号車及び11号車が運転室となっている。
なお、本実施の形態において、マスコンテーブル(図示省略)、ハンドセット1、落とし窓(図示省略)及びマイクロホン3の配置は、従来例(
図6参照)と同様であるので、説明を省略する。
【0015】
ハンドセット(第1音声入力部)1は、鉄道車両の先頭車両及び最後尾車両の各運転室に設置され、車掌〜運転士間の乗務員連絡を行う際に使用する。ハンドセット1は、乗務員により入力されたアナログの音声信号をデジタルの音声信号に変換し、連絡回線2に出力する。
連絡回線2は、デジタル信号を伝送するデジタル伝送路である。連絡回線2は、ハンドセット1から入力されたデジタルの音声信号を、他方のハンドセット1に出力する。
他方のハンドセット1は、連絡回線2から入力されたデジタルの音声信号をアナログの音声信号に変換し、内蔵するスピーカーより出力する。
なお、ハンドセット1は、落とし窓から離れた位置に設置されているため、車掌が落とし窓でホームの状況を確認しながらハンドセット1を用いて運転士と通話することはできない。
【0016】
マイクロホン(第2音声入力部)3は、ハンドセット1と同様、鉄道車両の先頭車両及び最後尾車両の各運転室に設置され、乗務員が旅客案内・旅客誘導等の車両放送(車内放送)や乗務員連絡などを行う際に使用する。マイクロホン3は、落とし窓近傍に設置されているため、乗務員がホームの状況を確認しながら使用することができる。
制御増幅器(第1放送装置)4は、放送回線5に接続されている。制御増幅器4は、マイクロホン3から入力されたアナログの音声信号をデジタル変換した音声データと、各車両の内外に設けられたスピーカー7(車内スピーカー71及び車外スピーカー72)からの出力を制御するためのスピーカー制御情報と、を含む音声パケットを、放送回線5に出力する。
【0017】
放送回線5は、音声パケットを伝送するデジタル伝送路である。放送回線5は、制御増幅器4から入力された音声パケットを、他方の制御増幅器4及び各車両に設けられた出力増幅器6に出力する。
【0018】
他方の制御増幅器4は、放送回線5から入力された音声パケットに含まれるデジタルの音声データをアナログの音声信号に変換し、内蔵するモニタースピーカー41より出力する。各制御増幅器4には、音量を調整するためのボリューム設定機能が設けられている。
【0019】
出力増幅器(第2放送装置)6は、鉄道車両の各車両に設置されている。出力増幅器6は、放送回線5から入力された音声パケットに含まれるスピーカー制御情報に基づいて、車両ごとに設けられた車内スピーカー71及び車外スピーカー72からの出力を制御する。具体的には、出力増幅器6は、放送回線5から入力された音声パケットに含まれるデジタルの音声データをアナログの音声信号に変換し、スピーカー制御情報においてONに設定されているスピーカー7に出力する。例えば、出力増幅器6は、車内スピーカー71がONに設定され、車外スピーカー72がOFFに設定されている場合、アナログの音声信号を車内スピーカー71に出力する。また、例えば、出力増幅器6は、車内スピーカー71及び車外スピーカー72が共にOFFに設定されている場合、いずれのスピーカー7にもアナログの音声信号を出力しない。
【0020】
スピーカー(音声出力部)7は、各車両の内に設けられた車内スピーカー71と、各車両の外に設けられた車外スピーカー72と、を備えて構成されている。
車内スピーカー71は、出力増幅器6から入力されたアナログの音声信号を、各車両内に出力する。
車外スピーカー72は、出力増幅器6から入力されたアナログの音声信号を、各車両外に出力する。
【0021】
連絡スイッチ(出力制御部)8は、マイクロホン3の近傍に設置されている。連絡スイッチ8は、車両ごとに設けられたスピーカー7からの音声出力を制限することで、マイクロホン3の使用目的を車両放送用から乗務員連絡用に切り替えるスイッチである。連絡スイッチ8は、通常時、OFFにされている。
なお、
図1〜
図3においては、説明の便宜上、受話側(運転士側)のマイクロホン3及び連絡スイッチ8の記載を省略している。
【0022】
まず、
図2を参照して、乗務員がマイクロホン3を通常使用する時(連絡スイッチ8がOFF時)の音声の流れの一例を示す。
制御増幅器4は、乗務員(車掌)C1が連絡スイッチ8をOFFにした状態でマイクロホン3を使用した場合、車内スピーカー71をON、車外スピーカー72をOFFに設定するスピーカー制御情報を含む音声パケットを、放送回線5を介して他方の制御増幅器4及び各車両に設けられた出力増幅器6に出力する。
【0023】
他方の制御増幅器4は、スピーカー制御情報の内容にかかわらず、放送回線5から入力された音声パケットに含まれるデジタルの音声データをアナログの音声信号に変換し、内蔵するモニタースピーカー41より出力する。
【0024】
出力増幅器6は、放送回線5から入力された音声パケットに含まれるスピーカー制御情報に基づいて、車内スピーカー71及び車外スピーカー72からの出力を制御する。
図2に示す例では、スピーカー制御情報において、車内スピーカー71がON、車外スピーカー72がOFFに設定されている。したがって、出力増幅器6は、放送回線5から入力された音声パケットに含まれるデジタルの音声データをアナログの音声信号に変換し、スピーカー制御情報においてONに設定されている車内スピーカー71から出力させる。
以上により、乗務員は、車両放送を提供することができる。
【0025】
次に、
図3を参照して、乗務員が連絡スイッチ8をONにしてマイクロホン3を使用する時の音声の流れの一例を示す。
制御増幅器4は、乗務員(車掌)C1が連絡スイッチ8をONにした状態でマイクロホン3を使用した場合、車内スピーカー71及び車外スピーカー72を共にOFFに設定するスピーカー制御情報を含む音声パケットを、放送回線5を介して他方の制御増幅器4及び各車両に設けられた出力増幅器6に出力する。
【0026】
他方の制御増幅器4は、スピーカー制御情報の内容にかかわらず、放送回線5から入力された音声パケットに含まれるデジタルの音声データをアナログの音声信号に変換し、内蔵するモニタースピーカー41より出力する。
ここで、他方(受話側)の制御増幅器4のボリューム設定が「0」に設定されている場合、モニタースピーカー41よりアナログの音声信号を出力したとしても、乗務員(運転士)が気付くことができない。したがって、本実施の形態では、連絡スイッチ8がONにされた場合に、他方(受話側)の制御増幅器4のボリューム設定を無効化して、放送回線5から入力された音声信号を乗務員室内に一定音量で音声出力させるようにする制御が行われる。
【0027】
出力増幅器6は、放送回線5から入力された音声パケットに含まれるスピーカー制御情報に基づいて、車内スピーカー71及び車外スピーカー72からの出力を制御する。
図3に示す例では、スピーカー制御情報において、車内スピーカー71及び車外スピーカー72が共にOFFに設定されている。したがって、出力増幅器6は、放送回線5から入力された音声パケットに含まれるデジタルの音声データを、車内スピーカー71及び車外スピーカー72から出力させない。
以上により、乗務員は、乗務員連絡を行うことができる。
【0028】
図4に、乗務員連絡の一例を概念的に示す。
乗務員(車掌)C1が連絡スイッチ8をONにした状態でマイクロホン3を使用して「ただいま状況確認中です」と発声した場合、乗務員(運転士)C2は制御増幅器4に内蔵されるモニタースピーカー41から出力される「ただいま状況確認中です」との音声連絡を聞き取ることとなる。
一方、乗務員(運転士)C2は、上記の音声連絡に対し、ハンドセット1を使用して「指令に連絡します」と返答し、乗務員(車掌)C1は他方のハンドセット1に内蔵されるスピーカーから出力される「指令に連絡します」との返答を聞き取ることとなる。
以上の方法により、車掌〜運転士間の連絡を実現することができる。
【0029】
以上のように、本発明の実施の形態に係る乗務員連絡システム100では、連絡回線2を介して乗務員間の連絡を行う際に使用される第1音声入力部(ハンドセット1)と、乗務員室の落とし窓近傍に設置され、放送回線5を介して車両放送を行う際に使用される第2音声入力部(マイクロホン3)と、第2音声入力部から入力された音声信号を放送回線5に出力するとともに、放送回線5から入力された音声信号を乗務員室内に音声出力する第1放送装置(制御増幅器4)と、放送回線5から入力された音声信号を、車両ごとに設けられた音声出力部(スピーカー7)から音声出力させる第2放送装置(出力増幅器6)と、音声出力部からの音声出力を制限する出力制御部(連絡スイッチ8)と、を備えることで、車掌が落とし窓近傍に設置されたマイクロホン3を用いて運転士と乗務員連絡を行うことができる。
したがって、車掌がホームの状況を確認しながら運転士と通話することができる。
【0030】
特に、本発明の実施の形態に係る乗務員連絡システム100では、出力制御部が、音声出力部からの音声出力を手動で制限するスイッチ(連絡スイッチ8)であるので、乗務員がスイッチを切り替えるという簡易な操作で、車両放送と乗務員連絡とのいずれを利用するかを選択することができる。したがって、例えば、ハンドセット1が故障する等、乗務員連絡が行えない状態となった場合であっても、乗務員の判断で即座に対応することができるので、乗務員連絡をより確実に行うことができる。
【0031】
また、本発明の実施の形態に係る乗務員連絡システム100では、出力制御部が、音声出力部からの音声出力を行わせないように制御することで、乗務員連絡時に乗務員室以外の各車両の内外への出力を完全に停止することができる。したがって、乗客に対して乗務員連絡を聞かせることなく、乗務員連絡を行うことができる。
【0032】
また、本発明の実施の形態に係る乗務員連絡システム100では、出力制御部が、音声出力部からの音声出力を制限する場合、制御増幅器4のボリューム設定を無効化して、放送回線5から入力された音声信号を乗務員室内に一定音量で音声出力させるように制御することで、制御増幅器4のボリューム設定にかかわらず、受話側の乗務員(運転士)が聞き取り可能な音量で音声出力させることができる。したがって、仮に制御増幅器4のボリューム設定が「0」に設定されている場合であっても、受話側の乗務員(運転士)に乗務員連絡の内容を確実に伝達することができる。
【0033】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では、連絡回線2として、デジタル信号を伝送するデジタル伝送路を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。すなわち、デジタル伝送路の代わりに、アナログ信号を伝送するアナログ伝送路を用いるようにしてもよい。この場合、制御増幅器4は、音声信号のデジタル変換を行う必要はない。
同様に、上記実施形態では、放送回線5として、音声パケットを伝送するデジタル伝送路を例示して説明しているが、これに限定されるものではない。すなわち、デジタル伝送路の代わりに、アナログ信号を伝送するアナログ伝送路を用いるようにしてもよい。この場合も同様に、制御増幅器4は、音声信号のデジタル変換を行う必要はない。
【0035】
また、上記実施形態では、連絡スイッチ8を手動でONにすることによりスピーカー7からの音声出力を制限するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、落とし窓が開いた状態である場合に、ホームの状況を確認しながら乗務員連絡が行われると見做して、自動的にスピーカー7からの音声出力を制限するようにしてもよい。また、乗務員室の扉が開いた状態である場合に、やはりホームの状況を確認しながら乗務員連絡が行われると見做して、自動的にスピーカー7からの音声出力を制限するようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、連絡スイッチ8をONにすることによりスピーカー7(車内スピーカー71)からの音声出力を行わせないように制御するようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、車内スピーカー71からの音声出力を行わせないように制御する代わりに、車内スピーカー71のボリューム設定を乗客が聞き取れない程度の音量(例えば「0」)に設定させるようにしてもよい。
【0037】
その他、乗務員連絡システムを構成する各装置の細部構成及び各装置の細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。