(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918309
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】駆動装置および圧電アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
H02N2/04
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-70734(P2017-70734)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-174636(P2018-174636A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】502254796
【氏名又は名称】有限会社メカノトランスフォーマ
(73)【特許権者】
【識別番号】591009705
【氏名又は名称】株式会社 東京ウエルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】徐 世傑
(72)【発明者】
【氏名】矢野 健
(72)【発明者】
【氏名】青島 弘明
【審査官】
小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−198931(JP,A)
【文献】
特開平11−187678(JP,A)
【文献】
特開2011−164113(JP,A)
【文献】
特開2004−357393(JP,A)
【文献】
特開2002−286796(JP,A)
【文献】
特開平09−298398(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0136046(KR,A)
【文献】
特開昭64−058559(JP,A)
【文献】
特開2018−011375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ状の電子部品を処理する電子部品処理装置において電子部品の処理に用いる作用子を駆動する駆動装置であって、
印加電圧に応じて所定方向に伸縮変位する圧電素子を有する圧電素子部と、
前記圧電素子の伸縮変位が伝達され、その伸縮変位を拡大された角度変位として出力する変位拡大機構と、
基端部が前記変位拡大機構に取り付けられるとともに、先端部に前記作用子が取り付けられ、前記変位拡大機構の角度変位にともなって揺動し、前記作用子を揺動させる揺動アームと
を備え、
前記変位拡大機構は、
前記圧電素子部の一方の端部を固定する第1部材と、
前記圧電素子部の他方の端部を固定する第2部材と、
前記圧電素子部の他方の端部側において、前記第1部材および前記第2部材に、それぞれ可撓性を有する第1のヒンジ部および第2のヒンジ部を介して結合され、前記揺動アームが取り付けられる第3部材とを有し、
前記第1部材および前記第2部材は、前記圧電素子の伸縮変位により相対的な変位を生じ、その相対的な変位が前記第1のヒンジ部および第2のヒンジ部を介して前記第3部材に拡大された角度変位として伝達され、その拡大された角度変位が前記揺動アームに伝達されることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記変位拡大機構は、前記電子部品処理装置のベース部材に接触するように設けられ、前記圧電素子から前記変位拡大機構を介して前記ベース部材に至る放熱経路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記変位拡大機構の前記第1部材は、前記圧電素子部の側面を覆うように設けられた側面部を有し、前記側面部が前記ベース部材に接触するように設けられていることを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記側面部は、前記圧電素子部の一方の側面を覆うように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記側面部は、前記圧電素子部の両側面を覆うように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記圧電素子部からの熱が熱伝導により前記側面部に伝熱されるように構成されていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記圧電素子部と前記側面部との間に高熱伝導材料が介装されていることを特徴とする請求項6に記載の駆動装置。
【請求項8】
前記圧電素子部は、前記圧電素子と、前記圧電素子に予め圧縮力を付与する与圧機構と、を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項9】
前記電子部品処理装置は、電子部品の特性の測定を行うための測定装置であり、前記作用子は、前記電子部品に接触されて特性を測定するための測定プローブであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項10】
前記電子部品処理装置は、電子部品の特性の測定を行うための測定装置であり、前記作用子は、前記電子部品を吸着するための吸着ノズルであり、前記吸着ノズルに吸着された電子部品が特性を測定するための測定プローブに接触されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項11】
前記電子部品処理装置は、電子部品をテーピングする際に電子部品をキャリアテープに挿入する挿入装置であり、前記作用子は、前記電子部品を吸着するための吸着ノズルであり、前記吸着ノズルに吸着された電子部品が前記キャリアテープに挿入されることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項12】
チップ状の電子部品を処理する電子部品処理装置において電子部品の処理に用いる作用子を駆動するための圧電アクチュエータであって、
印加電圧に応じて所定方向に伸縮変位する圧電素子を有する圧電素子部と、
前記圧電素子の伸縮変位が伝達され、その伸縮変位を拡大された角度変位として出力する変位拡大機構とを備え、
前記変位拡大機構には、先端部に前記作用子が取り付けられた揺動アームの基端部が取り付けられ、前記揺動アームは、前記変位拡大機構の角度変位にともなって揺動し、前記作用子を揺動させ、
前記変位拡大機構は、
前記圧電素子部の一方の端部を固定する第1部材と、
前記圧電素子部の他方の端部を固定する第2部材と、
前記圧電素子部の他方の端部側において、前記第1部材および前記第2部材に、それぞれ可撓性を有する第1のヒンジ部および第2のヒンジ部を介して結合され、前記揺動アームが取り付けられる第3部材とを有し、
前記第1部材および前記第2部材は、前記圧電素子の伸縮変位により相対的な変位を生じ、その相対的な変位が前記第1のヒンジ部および第2のヒンジ部を介して前記第3部材に拡大された角度変位として伝達され、その拡大された角度変位が前記揺動アームに伝達されることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項13】
前記変位拡大機構は、前記電子部品処理装置のベース部材に接触するように設けられ、前記圧電素子から前記変位拡大機構を介して前記ベース部材に至る放熱経路が形成されていることを特徴とする請求項12に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項14】
前記変位拡大機構の前記第1部材は、前記圧電素子部の側面を覆うように設けられた側面部を有し、前記側面部が前記ベース部材に接触するように設けられていることを特徴とする請求項13に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項15】
前記側面部は、前記圧電素子部の一方の側面を覆うように設けられていることを特徴とする請求項14に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項16】
前記側面部は、前記圧電素子部の両側面を覆うように設けられていることを特徴とする請求項14に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項17】
前記圧電素子部からの熱が熱伝導により前記側面部に伝熱されるように構成されていることを特徴とする請求項14から請求項16のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項18】
前記圧電素子部と前記側面部との間に高熱伝導材料が介装されていることを特徴とする請求項17に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項19】
前記圧電素子部は、前記圧電素子と、前記圧電素子に予め圧縮力を付与する与圧機構と、を有することを特徴とする請求項12から請求項18のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ状の電子部品を処理する電子部品処理装置において電子部品の処理に用いる作用子を駆動する駆動装置、および駆動装置の駆動源として用いられる圧電アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
チップ状の電子部品は、テーピング装置によりテーピングされ、テープから基板上に実装されるが、テーピング装置においては、テーピング前の電子部品の特性が測定され、その後、電子部品のテーピングが行われる。
【0003】
テーピング装置において用いられる、電気部品の特性を測定する測定装置としては、測定プローブを駆動装置により駆動させて、ターンテーブルにより順次に搬送されてくるチップ状の電子部品に接触させることにより電気特性を測定するものが用いられている。測定プローブを駆動させる駆動装置としては、揺動可能に設けられた揺動アームに測定プローブを保持し、電磁コイルを有する駆動機構により揺動アームを揺動させて、測定プローブを測定位置と退避位置との間で移動させるものが知られている(例えば特許文献1、2)。
【0004】
また、測定装置として、他に、測定プローブを固定し、吸着ノズルに電子部品を吸着させ、電子部品を吸着した吸着ノズルを、電磁コイルを有する駆動装置で駆動して電子部品の電極を測定プローブに接触させるタイプのものも用いられている(例えば特許文献3)。
【0005】
さらに、テーピング装置において、電子部品をテーピングする際に、吸着ノズルに電子部品を吸着させ、電磁コイルを有する駆動装置で吸着ノズルを駆動して電子部品をテープに挿入する装置も知られている(例えば特許文献4)。
【0006】
このように、テーピング装置においては、電磁コイルにより作用子を駆動する駆動装置が多用されているが、このような駆動装置は高速化が要求されており、従来の電磁コイルを用いた駆動装置では、高速化も限界に達している。
【0007】
このような高速化に対応した駆動装置として、積層型の圧電素子を用いた圧電アクチュエータを用いて作用子としてのプローブを圧電素子の変位方向に進退移動させるものが提案されている(例えば、特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−249167号公報
【特許文献2】特開2001−272417号公報
【特許文献3】特開2002−286796号公報
【特許文献4】特開平9−298398号公報
【特許文献5】特開2009−229249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、圧電素子は、発生する変位が数μmから数十μmと極めて小さい。このため、上記特許文献5に示されたように圧電素子の駆動方向に作用子を移動させる場合には、必要なストロークを得るために圧電素子として極めて長いものが必要となり、実用的ではない。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、高速動作が可能な圧電素子を用いて電子部品の処理に用いる作用子を駆動させる実用的な駆動装置、およびそれに用いる圧電アクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の(1)〜(19)を提供する。
【0012】
(1)チップ状の電子部品を処理する電子部品処理装置において電子部品の処理に用いる作用子を駆動する駆動装置であって、
印加電圧に応じて所定方向に伸縮変位する圧電素子を有する圧電素子部と、
前記圧電素子の伸縮変位が伝達され、その伸縮変位を拡大された角度変位として出力する変位拡大機構と、
基端部が前記変位拡大機構に取り付けられるとともに、先端部に前記作用子が取り付けられ、前記変位拡大機構の角度変位にともなって揺動し、前記作用子を揺動させる揺動アームと
を備
え、
前記変位拡大機構は、
前記圧電素子部の一方の端部を固定する第1部材と、
前記圧電素子部の他方の端部を固定する第2部材と、
前記圧電素子部の他方の端部側において、前記第1部材および前記第2部材に、それぞれ可撓性を有する第1のヒンジ部および第2のヒンジ部を介して結合され、前記揺動アームが取り付けられる第3部材とを有し、
前記第1部材および前記第2部材は、前記圧電素子の伸縮変位により相対的な変位を生じ、その相対的な変位が前記第1のヒンジ部および第2のヒンジ部を介して前記第3部材に拡大された角度変位として伝達され、その拡大された角度変位が前記揺動アームに伝達されることを特徴とする駆動装置。
【0013】
(2)前記変位拡大機構は、前記電子部品処理装置のベース部材に接触するように設けられ、前記圧電素子から前記変位拡大機構を介して前記ベース部材に至る放熱経路が形成されていることを特徴とする(1)に記載の駆動装置。
【0014】
(3)前記変位拡大機構
の前記第1部材は、前記圧電素子部の側面を覆うように設けられた側面部を有し、前記側面部が前記ベース部材に接触するように設けられていることを特徴とする(2)に記載の駆動装置。
【0015】
(4)前記側面部は、前記圧電素子部の一方の側面を覆うように設けられていることを特徴とする(3)に記載の駆動装置。
【0016】
(5)前記側面部は、前記圧電素子部の両側面を覆
うように設けられていることを特徴とする(3)に記載の駆動装置。
【0017】
(6)前記圧電素子部からの熱が熱伝導により前記側面部に伝熱されるように構成されていることを特徴とする(3)から(5)のいずれかに記載の駆動装置。
【0018】
(7)前記圧電素子部と前記側面部との間に高熱伝導材料が介装されていることを特徴とする(6)に記載の駆動装置。
【0019】
(8)
前記圧電素子部は、前記圧電素子と、前記圧電素子に予め圧縮力を付与する与圧機構とを有することを特徴とする、(1)から(7)のいずれかに記載の駆動装置。
【0020】
(9)前記電子部品処理装置は、電子部品の特性の測定を行うための測定装置であり、前記作用子は、前記電子部品に接触されて特性を測定するための測定プローブであることを特徴とする(1)から(8)のいずれかに記載の駆動装置。
【0021】
(10)前記電子部品処理装置は、電子部品の特性の測定を行うための測定装置であり、前記作用子は、前記電子部品を吸着するための吸着ノズルであり、前記吸着ノズルに吸着された電子部品が特性を測定するための測定プローブに接触されることを特徴とする(1)から(8)のいずれかに記載の駆動装置。
【0022】
(11)前記電子部品処理装置は、電子部品をテーピングする際に電子部品をキャリアテープに挿入する挿入装置であり、前記作用子は、前記電子部品を吸着するための吸着ノズルであり、前記吸着ノズルに吸着された電子部品が前記
キャリアテープに挿入されることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の駆動装置。
【0023】
(12)チップ状の電子部品を処理する電子部品処理装置において電子部品の処理に用いる作用子を駆動するための圧電アクチュエータであって、
印加電圧に応じて所定方向に伸縮変位する圧電素子を有する圧電素子部と、
前記圧電素子の伸縮変位が伝達され、その伸縮変位を拡大された角度変位として出力する変位拡大機構とを備え、
前記変位拡大機構には、先端部に前記作用子が取り付けられた揺動アームの基端部が取り付けられ、前記揺動アームは、前記変位拡大機構の角度変位にともなって揺動し、前記作用子を揺動さ
せ、
前記変位拡大機構は、
前記圧電素子部の一方の端部を固定する第1部材と、
前記圧電素子部の他方の端部を固定する第2部材と、
前記圧電素子部の他方の端部側において、前記第1部材および前記第2部材に、それぞれ可撓性を有する第1のヒンジ部および第2のヒンジ部を介して結合され、前記揺動アームが取り付けられる第3部材とを有し、
前記第1部材および前記第2部材は、前記圧電素子の伸縮変位により相対的な変位を生じ、その相対的な変位が前記第1のヒンジ部および第2のヒンジ部を介して前記第3部材に拡大された角度変位として伝達され、その拡大された角度変位が前記揺動アームに伝達されることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【0024】
(13)前記変位拡大機構は、前記電子部品処理装置のベース部材に接触するように設けられ、前記圧電素子から前記変位拡大機構を介して前記ベース部材に至る放熱経路が形成されていることを特徴とする(12)に記載の圧電アクチュエータ。
【0025】
(14)前記変位拡大機構
の前記第1部材は、前記圧電素子部の側面を覆うように設けられた側面部を有し、前記側面部が前記ベース部材に接触するように設けられていることを特徴とする(13)に記載の圧電アクチュエータ。
【0026】
(15)前記側面部は、前記圧電素子部の一方の側面を覆うように設けられていることを特徴とする(14)に記載の圧電アクチュエータ。
【0027】
(16)前記側面部は、前記圧電素子部の両側面を覆
うように設けられていることを特徴とする(14)に記載の圧電アクチュエータ。
【0028】
(17)前記圧電素子部からの熱が熱伝導により前記側面部に伝熱されるように構成されていることを特徴とする(14)から(16)のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
【0029】
(18)前記圧電素子部と前記側面部との間に高熱伝導材料が介装されていることを特徴とする(17)に記載の圧電アクチュエータ。
【0030】
(19)
前記圧電素子部は、前記圧電素子と、前記圧電素子に予め圧縮力を付与する与圧機構と、を有することを特徴とする(12)から(18)のいずれかに記載の圧電アクチュエータ。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、圧電素子の変位を変位拡大機構により拡大された角度変位として出力し、その拡大された角度変位にともなって、先端部に作用子が取り付けられた揺動アームを揺動させるので、圧電素子として極めて長いものを用いることなく、所望のストロークで作用子を駆動させることができる。また、揺動アームの長さおよび取り付け方向等を変更することにより、作用子の移動距離および移動方向を自在に調整することができる。また、揺動アームの材料も適宜選択することができる。このため、圧電素子を用いた実用的な駆動装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る駆動装置の一例を示す側面図である。
【
図2】
図1の測定プローブ駆動装置を斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図1の測定プローブ駆動装置を斜め下方から見た斜視図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る駆動装置により駆動された測定プローブにより電子部品の電気特性を測定している状態を示す図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る駆動装置の他の例を示す側面図である。
【
図7】
図6の駆動装置を測定装置に適用した状態を示す模式図である。
【
図8】
図6の駆動装置をキャリアテープに挿入する挿入装置に適用した状態を示す模式図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る駆動装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0034】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る駆動装置の一例を示す側面図、
図2は
図1の駆動装置を斜め上方から見た斜視図、
図3は
図1の駆動装置を斜め下方から見た斜視図、
図4は圧電素子部2を示す側面図である。
【0035】
本実施形態の駆動装置1は、ターンテーブル(
図1〜3では図示せず)上を搬送されるチップ状の電子部品の電気特性等を測定するための測定装置において、作用子としての測定プローブ40を駆動させるものであり、測定装置のベース部材50に取り付けられている。
【0036】
この駆動装置1は、印加電圧に応じて長さ方向に伸縮変位する圧電素子を有する圧電素子部2と、圧電素子の伸縮変位が伝達され、その伸縮変位を拡大された角度変位として出力する変位拡大機構3と、基端部が変位拡大機構3に取り付けられるとともに、先端部に測定プローブ40が取り付けられ、変位拡大機構3の角度変位にともなって揺動し、測定プローブ40を揺動させる揺動アーム4とを備えている。圧電素子部2と変位拡大機構3とで圧電アクチュエータ10を構成している。
【0037】
圧電素子部2は、印加電圧に応じて伸縮する圧電素子11と、圧電素子11に予め圧縮力を付与する与圧機構12とを有する。
【0038】
圧電素子11は、例えば、10mm×10mmの板状の圧電体が電極を挟んで複数積層されて例えば40mmの長さにされた直方体として構成されている。圧電素子11は、側面に電圧を印加するための電気端子(図示せず)を備えており、電気端子間に電圧が印加されることにより、長さ方向に伸縮するように構成されている。圧電体を構成する圧電材料としては、圧電効果を有するセラミック材料が用いられ、そのような材料として、典型的にはチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O
3;PZT)を挙げることができる。圧電素子2の形状は直方体に限らず、例えば三角柱や六角柱等の多角柱であっても、円柱であってもよい。
【0039】
与圧機構12は、圧電素子が引張力に対して弱いセラミック材料からなることに鑑み、圧電素子から生じる力に対して1/5〜1/2程度の圧縮力を与えておくためのものであり、圧電素子11の伸縮方向(長さ方向)の一端面および他端面に接着により固定された一対のヘッドピース13と、これら一対のヘッドピース13間に架け渡されるように設けられた直線状をなす2本の圧縮力付与部14とを有している。ヘッドピース13と圧縮力付与部14は一体となっている。
【0040】
圧電素子11を与圧機構12に装着する際には、与圧機構12して、圧電素子2の伸縮方向に引張力を作用させて圧縮力付与部14を伸長させた状態で圧電素子11を一対のヘッドピース13間に装着し、その後、引張力を解除する。これにより、圧電素子2に引張力に対応する圧縮力が付与された状態とされる。与圧機構12の与圧付与部14をこのように直線状にすることにより、与圧機構12の構造がシンプルになり、容易に加工することができ、コストを低くすることができる。
【0041】
与圧機構12を構成する材料としては、圧縮力付与可能な剛性を有し、比較的強度が高く、さらに耐候性や耐食性に優れ、熱膨張係数が小さいものが好ましい。このような材料としては、インバー合金、スーパーインバー合金、炭素繊維、ステンレス鋼を挙げることができる。
【0042】
なお、与圧機構12は必ずしも設ける必要はなく、例えば、変位拡大機構3に予圧機能を持たせること等により、与圧機構12を設けずに圧電素子11のみで圧電素子部2を構成してもよい。
【0043】
変位拡大機構3は、圧電素子部2の一方の端部Aを固定する第1部材21と、圧電素子部2の他方の端部Bを固定する第2部材22と、第1部材21および第2部材22に、それぞれ可撓性を有する第1のヒンジ部24および第2のヒンジ部25を介して結合され、揺動アーム4が取り付けられる第3部材23とを有している。第1部材21は、圧電素子部2の他方の端部Bに向けて延び、圧電素子11の一方の側面を覆うように設けられており側面部を構成している。第1部材21は、圧電素子部2を収容する切り欠き部26を有している。
【0044】
第1部材21および第2部材22は、圧電素子11の伸縮変位により相対的な変位を生じ、その相対的な変位が第1のヒンジ部24および第2のヒンジ部25を介して第3部材23に拡大された角度変位として伝達され、その拡大された角度変位が揺動アーム4に伝達される。
【0045】
すなわち、第1ヒンジ部24および第2ヒンジ部25は、圧電素子11の伸縮により弾性変形され、圧電素子11が伸縮変位した際に、その伸縮変位により変位する第2部材22と変位しない第1部材21との間の相対的な変位により撓み、これらが支点となって、第3部材23に数倍から数十倍に拡大された角度変位が生じる。このとき、第1ヒンジ部24と第2ヒンジ部25との距離が近いほど、第3部材23の角度変位の拡大率を大きくすることができる。
【0046】
変位拡大機構3を構成する材料としては、インバー合金、スーパーインバー合金、ステンレス鋼等、熱膨張が小さく、比較的熱伝導性のよい材料を挙げることができる。
【0047】
揺動アーム4は、基端部が変位拡大機構3の第3部材23の下面にねじ止めされ、先端部に測定プローブ40が取り付けられている。測定プローブ40は、揺動アーム4の先端部から上方に延びるように設けられており、その上端(先端)が測定端となっている。また、測定プローブ40の下端には測定治具(図示せず)が接続されている。そして、揺動アーム4は、第3部材23の拡大された角度変位が伝達されて揺動し、先端部の測定プローブ40を揺動させる。これにより、測定プローブ40が、上方にあるターンテーブル(
図1〜3では図示せず)を搬送されてきた電子部品に接触する位置と、電子部品から退避した位置との間で高速で移動する。これにより、複数の電子部品について電気特性等が高速で測定される。
【0048】
揺動アーム4は、第3部材23の拡大された角度変位にともなって、変位拡大機構3の第3部材23のねじ止め部分を支点として揺動するので、揺動アーム4の先端の揺動変位はさらに拡大され、そのさらに拡大された揺動変位が測定プローブ40に与えられる。このため、測定プローブ40に必要な大きさの変位を容易に得ることができる。また、揺動アーム4の長さおよび取り付け方向を変更することにより、測定プローブ40の動作位置および移動距離を自在に調整することができる。
【0049】
揺動アーム4は、測定プローブ40を高速で揺動させる必要があることから、アルミニウムまたはアルミニウム合金のような軽量な材料で構成されている。
【0050】
上記変位拡大機構3は、測定装置のベース部材50に接触するように設けられており、圧電素子11から変位拡大機構3を介してベース部材50に至る放熱経路が形成されている。これにより、圧電素子11で発生した熱が変位拡大機構3を介してベース部材50に放熱される。
【0051】
具体的には、圧電素子部2の一方の側面を覆うように設けられた側面部である第1部材21の上面がベース部材50の下面に接触するようにベース部材50にねじ止め固定され、圧電素子11の熱が第1部材21を介してベース部材50に伝達されるように構成される。
【0052】
圧電素子11と第1部材21との間には、圧電素子11の熱を熱伝導により側面部を構成する第1部材21に速やかに伝達できるように、良好な熱伝導性を有する熱伝導性材料5が介装されている。熱伝導性材料5としては、良好な熱伝導性を有する充填剤や、シリコンシート等の熱伝導性が高く伸縮可能なシートであることが好ましい。これにより、熱伝導性材料5が圧電素子11の伸縮に追従することができ、圧電素子11の熱が第1部材21に効果的に伝達され、圧電素子11の熱がベース部材50により放熱しやすくなる。
【0053】
次に、測定装置および駆動装置1の動作について説明する。
測定装置のターンテーブル70は、回転可能に設けられ、
図5に示すように、周方向に沿って電子部品60を収納する複数の収納溝71を有している。そして、ターンテーブル70を回転させつつ、圧電素子11の電気端子間に所定の電圧を印加して、圧電素子11を伸縮させることにより、変位拡大機構3および揺動アーム4を介して作用子としての測定プローブ40を揺動させることにより、複数の収納溝71に収納された電子部品60の電気特性等を順次測定する。すなわち、ターンテーブル70を回転させて収納溝71に収納された電子部品60が測定プローブ40の直上の測定位置に達した際に、測定プローブ40を上方に変位させて測定プローブ40の先端を電子部品60の下面に設けられた電極61に接触させ、電子部品60の電気特性を測定し、測定後、測定プローブ40を下方に変位させて退避させる。そして、次の電子部品60が測定位置に到達した時点で再び同様の動作を行い、これら動作を高速で繰り返す。測定プローブ40を高速で揺動させるために、圧電素子11の電気端子間にはパルス状の電圧が与えられる。
【0054】
このとき、圧電素子11の電気端子間に所定の電圧を印加することにより、圧電素子11が長さ方向に伸縮し、その伸縮変位が変位拡大機構3により、拡大された角度変位として出力され、変位拡大機構3の角度変位にともなって揺動アーム4が揺動され、作用子である測定プローブ40がターンテーブル70上の電子部品に接触する位置と、電子部品から退避した位置との間で揺動する。
【0055】
具体的には、圧電素子11の伸縮変位により変位拡大機構3の第2部材22が変位し、第1部材21は変位しないため、第1部材21と第2部材22との間に相対的な変位が生じ、その相対的な変位によって第1ヒンジ部24および第2ヒンジ部25が撓み、これらが支点となって、第3部材23に数倍から数十倍に拡大された角度変位が生じる。そして、第3部材23に取り付けられた揺動アーム4は、第3部材23の拡大された角度変位が伝達されて揺動し、先端部の測定プローブ40が揺動される。これにより、測定プローブ40が、ターンテーブル(
図1〜3では図示せず)に搭載された電子部品に接触する位置と、電子部品から退避した位置との間で高速で移動され、複数の電子部品について電気特性等が繰り返し測定される。
【0056】
圧電素子は、投入される電気エネルギーに対して60%以上が機械エネルギーに変換されエネルギー効率が極めて高く、特に、数kHz以上の高速応答が可能であるという優れた特性を有していることから、このように測定プローブを駆動する駆動装置として圧電素子を用いることにより、電磁コイルを用いた駆動装置と比較して2〜3倍という格段に大きな速度で測定プローブを動作させることができる。
【0057】
しかし、圧電素子自体の伸縮変位は一般的に小さく、素子の長さが30〜50mm程度で、発生する変位が数μm〜数十μm程度であり、測定プローブのストロークとしては十分ではない。必要なストロークを得るためには圧電素子として極めて長いものが必要となるが、このような極めて長い圧電素子を用いることは実用的ではない。
【0058】
そこで、本実施形態では、変位拡大機構3を用いることにより圧電素子11の長さ方向の伸縮変位を、数倍から数十倍に拡大された角度変位として出力し、変位拡大機構3の第3部材23に取り付けられた揺動アーム4をその角度変位にともなって揺動させる。これにより、揺動アーム4の先端に取り付けられた測定プローブ40に対し、さらに拡大された揺動変位が与えられ、圧電素子として特別に長いものを用いることなく、電磁コイルを用いた場合と同程度の必要なストロークを得ることができる。また、揺動アーム4の長さおよび取り付け方向は、適宜変更することが可能であり、これらを変更することにより、測定プローブ40の動作位置および移動距離を装置の設定等に応じて自在に調整することができる(設計の自由度の向上)。また、揺動アーム4は変位拡大機構3と別個に構成されているため、高速で揺動する揺動アーム4を軽量な別材質で構成して高速駆動により適したものとすることもできる。したがって、作用子である測定プローブを高速で動作させることができるとともに、実用的な駆動装置を得ることができる。
【0059】
ところで、このように圧電素子11を高速で伸縮させると、圧電素子11の発熱が大きくなる。発熱が大きくなって圧電素子11の温度が上昇すると、圧電素子11の容量が変化したり、その温度がキュリー温度以上となって圧電特性が得られないといった不都合が生じる。
【0060】
これに対して、本実施形態では、変位拡大機構3はベース部材50に接触するように設けられ、圧電素子11から変位拡大機構3を介してベース部材50に至る放熱経路が形成されているので、圧電素子11を高速で動作させても圧電素子11で発生した熱を速やかにベース部材50に逃がすことができ、圧電素子11の温度上昇を抑制することができる。
【0061】
具体的には、変位拡大機構3は、圧電素子部2の一方の側面を覆うように設けられた側面部である第1部材21を有し、その第1部材21の上面がベース部材50に接触するようにベース部材50にねじ止め固定され、圧電素子11の熱が第1部材21を介してベース部材50に伝達される。このため、圧電素子11の熱を有効に逃がすことができ、圧電素子11の温度が上昇してその容量が変化したり、圧電素子11の温度がキュリー温度以上となって圧電特性が得られないといった不都合を回避することができる。また、このとき、圧電素子11と第1部材21との間に熱伝導材料5が介在されているので、圧電素子11からの放熱をより促進することができる。熱伝導性材料5として、良好な熱伝導性を有する充填剤や、シリコンシート等の熱伝導性が高く伸縮可能なシートを用いることにより、熱伝導性材料5が圧電素子11の伸縮に追従することができ、圧電素子11の熱を第1部材21に効果的に伝達することができる。
【0062】
以上は、作用子として測定装置の測定プローブ40を用いた例について示したが、作用子は測定プローブに限るものではない。
【0063】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る駆動装置の他の例を示す側面図であり、駆動される作用子が電子部品を吸着する吸着ノズルである場合を示す。本例の駆動装置1′は、作用子が測定プローブ40である駆動装置1例とは、上下逆向きに設けられている他は同じ構成を有している。すなわち、本例では、変位拡大機構3は、側面部を構成する第1部材21が圧電素子部2の下側の側面を覆うように設けられており、その下面がベース部材50の上面に接触するように設けられている。そして、揺動アーム4の基端部は第3部材23の上面にねじ止めされ、揺動アーム4の先端部には吸着ノズル80が取り付けられている。吸着ノズル80は、揺動アーム4の先端部から下方に延びるように設けられており、吸着ノズル80の上端部には、吸着機構(図示せず)が設けられている。そして、吸着機構に設けられた真空ポンプ等の吸引機構により吸引することにより、吸着ノズル80の下端に電子部品を吸着する。そして、揺動アーム4は、第3部材23の拡大された角度変位が伝達されて揺動し、先端部の吸着ノズル80を揺動させる。
【0064】
本例の駆動装置1′は、上記例の駆動装置1と同様、電子部品の測定を行うための測定装置に用いることができる。その際の測定装置の例を
図7に示す。この測定装置は、上記駆動装置1′と、上記吸着機構(図示せず)と、ターンテーブル90と、基盤100と、測定治具110とを有する。
【0065】
ターンテーブル90は、回転可能に設けられ、周方向に沿って電子部品60を収納する複数の収納溝91を有している。収納溝91はターンテーブル90を貫通するように設けられている。電子部品60は、電極61が下面側になるように収納溝91に収納される。基盤100は、ターンテーブル90を回転可能に支持し、その表面が電子部品60の搬送面となっている。また、基盤100には貫通孔101が形成され、貫通孔101の上方位置に作用子としての吸着ノズル80が設けられ、貫通孔101の下方位置に測定治具110が設けられている。測定治具110は架台120に取り付けられており、測定治具110の上面には、電子部品60の電極61に対応する位置に測定端子111が設けられている。
【0066】
そして、ターンテーブル90を回転させつつ、圧電素子11の電気端子間に所定の電圧を印加して、変位拡大機構3および揺動アーム4を介して作用子としての吸着ノズル80を揺動させることにより、複数の収納溝91に収納された電子部品60の電気特性等を順次測定する。すなわち、ターンテーブル90を回転させ、収納溝91に収納された電子部品60を基盤100の搬送面に沿って搬送させて、貫通孔101に対応する位置に達した際に、電子部品60を吸着ノズル80に吸着させ、この状態で吸着ノズル80を下方に変位させて電子部品60の電極61を測定治具110の電極111に接触させ、電子部品60の電気特性を測定し、測定後、吸着ノズル80を上方に変位させて吸着ノズル80に吸着された電気部品60を搬送面に戻し、吸着を解除する。そして、次の電子部品60が貫通孔101に対応する位置に到達した時点で再び同様の動作を行い、これら動作を高速で繰り返す。吸着ノズル80を高速で揺動させるために、圧電素子11の電気端子間にはパルス状の電圧が与えられる。
【0067】
このとき、駆動機構1′は、作用子が測定プローブ40から吸着ノズル80に代わった以外は、駆動機構1と同様に構成されているので、駆動装置1と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、本例の駆動装置1′は、電子部品をキャリアテープに装入する挿入装置に用いることができる。その際の挿入装置の例を
図8に示す。この挿入装置は、上記駆動装置1′と、上記吸着機構(図示せず)と、ターンテーブル130と、基盤140と、磁石160とを有する。
【0069】
ターンテーブル130は、回転可能に設けられ、周方向に沿って電子部品60を収納する複数の収納溝131を有している。収納溝131はターンテーブル90を貫通するように設けられている。基盤140は、ターンテーブル130を回転可能に支持し、その表面が電子部品60の搬送面となっている。また、基盤140の下方には、キャリアテープ150が移動可能に配置されている。キャリアテープ150には、電子部品60が収納される複数のキャビティ151が等間隔で設けられている。基盤140には貫通孔141が形成され、貫通孔141の上方位置に作用子としての吸着ノズル80が設けられ、キャリアテープ150下方の貫通孔141に対応する位置には磁石160が設けられている。
【0070】
そして、ターンテーブル130を回転させ、かつキャリアテープ150を移動させつつ、圧電素子11の電気端子間に所定の電圧を印加して、変位拡大機構3および揺動アーム4を介して作用子としての吸着ノズル80を揺動させることにより、複数の収納溝131に収納された電子部品60をキャリアテープ150のキャビティ151内に順次挿入させる。すなわち、ターンテーブル130を回転させ、収納溝131に収納された電子部品60を基盤140の搬送面に沿って搬送させて、貫通孔141に対応する位置に達した際に、電子部品60を吸着ノズル80に吸着させるとともに、貫通孔141に対応する位置にキャビティ151を位置させ、その状態で吸着ノズル80を下方に変位させ、吸着ノズル80の吸着を解除して電子部品60をキャビティ151内に挿入する。挿入後、吸着ノズル80を上方に変位させて貫通孔141および収納溝131を経て
図8の位置まで戻す。そして、次の電子部品60が貫通孔141に対応する位置に到達した時点で再び同様の動作を行い、これら動作を高速で繰り返す。吸着ノズル80を高速で揺動させるために、圧電素子11の電気端子間にはパルス状の電圧が与えられる。なお、磁石160は、キャビティ151内の電子部品60を吸引して電子部品60の姿勢を安定させるためのものである。
【0071】
以上のように駆動機構1′を挿入装置に用いた場合にも、駆動装置1と同様の効果を得ることができる。
【0072】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。
図9は本発明の第2の実施形態に係る駆動装置を示す斜視図である。
【0073】
本実施形態の駆動装置201は、第1の実施形態の変位拡大機構3とは異なる構成の変位拡大機構3′を有している。すなわち、本実施形態の変位拡大機構3′は、第1の実施形態の第1部材21の代わりに、圧電素子部2の両側を覆うように設けられた側面部を構成する第1部材21′を有している。他の構成は第1の実施形態と同様であるので、
図9中、
図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0074】
本実施形態の第1部材21′はU字状をなし、その中央に切り欠き部27を有しており、その切り欠き部27に圧電素子部2が挿入されている。第1部材21′は、ベース部材50に接触し、圧電素子部2の上面を覆う上部21′aと、圧電素子部2の下面を覆う下部21′bと、上部21′aおよび下部21′bを繋ぐ連結部21′cとを有し、これら上部21′aと、下部21′bと、連結部21′cの間に切り欠き部27が形成されている。なお、上部21′aと、連結部21′cとにより、第1の実施形態の駆動装置1における第1部材21と同様の構造が構成される。第2部材22は、切り欠き部27の先端部に挿入された状態となっている。また、下部21′bと第2部材22′との間は、第3のヒンジ部28で結合され、下部21′bと第2部材22′との間の相対移動を許容するようになっている。なお、図示していないが、圧電素子11と第1部材21′の上部21′aとの間、および圧電素子11と第1部材21′の下部21′bとの間には熱伝導性材料が介在されている。この熱伝導性材料は、第1の実施形態における熱伝導性材料5と同様に、良好な熱伝導性を有する充填剤や、シリコンシート等の熱伝導性が高く伸縮可能なシートであることが好ましい。
【0075】
本実施形態の駆動装置201は、第1の実施形態の駆動装置1と同様、圧電素子11の電気端子間に所定の電圧を印加することにより、圧電素子11が長さ方向に伸縮し、その伸縮変位が変位拡大機構3′により、拡大された角度変位として出力され、変位拡大機構3′の角度変位にともなって揺動アーム4が揺動され、作用子である測定プローブ40がターンテーブルの収納溝に収納された電子部品に接触する位置と、電子部品から退避した位置との間で揺動する。このとき、圧電素子11は高速応答可能であることから、測定プローブ40の高速駆動が可能であり、複数の電子部品について高速で電気特性等を測定することができる。
【0076】
本実施形態においても、変位拡大機構3′を用いることにより圧電素子11の長さ方向の伸縮変位を、数倍から数十倍に拡大された角度変位として出力し、変位拡大機構3′の第3部材23に取り付けられた揺動アーム4をその角度変位にともなって揺動させることができる。これにより、揺動アーム4の先端に取り付けられた測定プローブ40に対し、さらに拡大された揺動変位が与えられ、圧電素子として特別に長いものを用いることなく、電磁コイルを用いた場合と同程度の必要なストロークを得ることができる。また、第1の実施形態と同様、揺動アーム4の長さおよび取り付け方向は、適宜変更することが可能であり、設計の自由度の向上させることができる。また、高速で揺動する揺動アーム4を軽量な別材質で構成して高速駆動により適したものとすることもできる。したがって、本実施形態においても、作用子である測定プローブを高速で動作させることができるとともに、実用的な駆動装置を得ることができる。
【0077】
さらに、本実施形態では、変位拡大機構3′の側面部として機能する第1部材21′は、圧電素子部2を上部21′aと、下部21′bと、連結部21′cとで覆った状態となっており、圧電素子11の熱を第1部材21′からベース部材50(
図9では図示せず)へ一層逃がしやすくすることができ、圧電素子11の温度が上昇してその容量が変化したり、圧電素子11の温度がキュリー温度以上となって圧電特性が得られないといった不都合を一層有効に回避することができる。このとき、圧電素子11と第1部材21′との間に熱伝導材料が介在されているので、圧電素子11からの放熱をより促進することができる。さらにまた、このような構造の変位拡大機構3′を設けることにより、圧電素子部2を密閉しやすく有利であるとともに、強度アップを図ることができる。さらにまた、第2部材22′が下部21′bに第3のヒンジ部28を介して結合されているので、構造上、第1のヒンジ部24と第2のヒンジ部25の位置の自由度がアップし、これらの間の距離をより小さくして、変位の拡大率をさらに高めることもできる。
【0078】
なお、第2の実施形態の駆動装置においても、第1の実施形態の駆動装置と同様、作用子として吸着ノズルを用いてもよく、その場合には、測定装置の駆動機構として用いる他、電子部品をキャリアテープのキャビティに収容する挿入装置の駆動機構として用いることもできる。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、チップ状の電子部品の電気特性等を測定する測定装置や、キャリアテープに電子部品を挿入する挿入装置に用いる駆動装置について説明したが、適用される装置は測定装置や挿入装置に限らず、電子部品を処理する電子部品処理装置であればよく、また、駆動する作用子として測定プローブおよび吸着ノズルを用いた場合について説明したが、これに限らず他の作用子であってもよい。
【0080】
また、変位拡大機構についても上記実施形態の構成に限らず、圧電素子の伸縮変位を拡大された角度変位として出力できるものであればどのような構造であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1,1′,201;駆動装置
2;圧電素子部
3,3′;変位拡大機構
4;揺動アーム
5;熱伝導性材料
10;圧電アクチュエータ
11;圧電素子
12;与圧機構
13;ヘッドピース
14;圧縮力付与部
21,21′;第1部材
22,22′;第2部材
23;第3部材
24;第1ヒンジ部
25;第2ヒンジ部
26,27;切り欠き部
28;第3ヒンジ部
40;測定プローブ
50;ベース部材
60;電子部品
61;電極
70,90,130;ターンテーブル
71,91,131;収納溝
80;吸着ノズル
100,140;基盤
101,141;貫通孔
150;キャリアテープ
151;キャビティ