【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のレーザーマーキング装置には、次のような課題があった。
すなわち、装置の稼動の際には、吸気ファンを駆動して被マーキング対象物の近傍の空気を吸引して吸気ダクトに向かう空気流を生じさせるが、印字領域(加工領域)は広い空間に開放されているため、空気流で副次物を取り込んで除去するという点においては、きわめて効率が悪かった。
【0009】
つまり、明細書の説明(特許文献1の段落番号〔0013〕に記載)では、稼動の際に吸気ダクトに向かう矢印方向に空気流が生じるとされているが、吸気ダクトの吸引口にごく近いところではこのような空気流が生じるとしても、吸気ダクトからやや離れたところでは、空間が大きすぎて吸気による空気の流れの制御がされにくく、説明されているような安定的な流れは生じにくい。
【0010】
したがって、レーザー加工の際に加工領域に生じた副次物を充分に除去することは難しく、副次物の一部が加工領域に滞留したり浮遊したりするために、結果的にワークの加工不良が生じたり、加工効率が低下したりするという問題は、依然として解消されていなかった。
【0011】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、ワークをレーザー加工する際に発生する副次物を吸引して除去するものにおいて、加工領域に吸気部へ向かって流れる安定的な空気流をつくることにより、副次物を効率的に取り込んで除去することができるレーザー加工装置及びレーザー加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記の目的を達成するために本発明は、被加工物であるワークを搬送するワーク搬送部と、該ワーク搬送部が通る略密閉された空間内に設けられた加工領域と、該加工領域で搬送される前記ワークのレーザー加工を行うレーザー装置と、前記加工領域において、前記ワーク搬送部の下流側の前記ワーク搬送部近傍に設けられた吸気口から空気を吸引して前記加工領域の外部へ誘導し、誘導した空気に含まれている前記レーザー加工により発生した副次物をフィルターで捕集して、清浄化した空気を排出する吸気部と、前記加工領域において、前記ワーク搬送部の上流側の前記ワーク搬送部近傍に設けられており、外気を取り入れる外気取入口とを備えるレーザー加工装置である。
【0013】
本発明のレーザー加工装置によれば、ワーク搬送部によって被加工物であるワークが搬送される。ワーク搬送部は、略密閉された空間内に設けられた加工領域を通るので、ワーク搬送部で搬送されるワークも加工領域を通る。
【0014】
一方、加工領域では、ワーク搬送部の下流側のワーク搬送部近傍に設けられた吸気口で加工領域の空気が吸引され、外部へ誘導される。これにより、空間が略密閉されている加工領域内の空気は負圧となり、加工領域においてワーク搬送部の上流側のワーク搬送部近傍に設けられた外気取入口から、加工領域内へ外気が取り入れられる。この空気の取り入れは、強制でなく、いわゆる自然給気となる。
【0015】
これにより、加工領域には、上流側の外気取入口から下流側の吸気口へ流れる空気流が生じる。この空気流は、加工領域の、外気取入口で外部と通じてはいるが略密閉された空間内に生じているので、外気取入口から吸気口へ続く各流線が流れ方向と平行かつ互いに平行な層流又は層流に近い安定的な流れとなる。
【0016】
そして、ワークは、加工領域でワーク搬送部により搬送されながら、レーザー装置によって所定のレーザー加工が行われる。レーザー加工によって、加工領域内で搬送されるワークの様々な箇所で、煙や蒸気、或いは焼滓等の副次物が発生する。
【0017】
これらの副次物は、外気取入口から吸気口へ向かって流れる上記空気流に乗せられて、吸気口から空気と共に吸引され、加工領域の外部へ誘導され、誘導経路にあるフィルターで捕集されて、清浄化した空気は排出される。
このように、本発明のレーザー加工装置は、加工領域に外気取入口から吸気部の吸気口へ向かって流れる安定的な空気流をつくることにより、この空気流で副次物を効率的に取り込んで、副次物を誘導経路にあるフィルターで捕集して、加工領域から除去することができる。
【0018】
(2)本発明に係るレーザー加工装置は、前記外気取入口の開口部の形状、大きさ或いは位置を調節するシャッター部材を備える構成とすることができる。
【0019】
この場合は、開口部の形状、大きさ或いは位置を調節することにより、外気取入口から取り入れられる空気流の断面形状、すなわち空気流の厚さや幅又は太さ等を調節することが可能になる。
【0020】
或いは、外気が取り入れられる位置の調節、つまり、外気取入口から入る空気流の高さを吸気口と同じ高さに揃えて空気流をより安定させたり、副次物が浮遊しにくいように下降しながら吸気口へ向かう空気の斜行流をつくるために外気取入口の上部を一部開口したりする等、適宜調節することができる。
【0021】
(3)本発明に係るレーザー加工装置は、前記外気取入口に、前記外気取入口を通る空気に所定の通気抵抗を与える通気抵抗部材を備える構成とすることができる。
【0022】
この場合は、吸気口からの吸気によって外気取入口から加工領域に入ってくる空気流は、通気抵抗部材が吸気口からの吸気により生じる空気流に抗うような作用をするため、吸気口に近い空気流は外気取入口を通る速度が遅い空気流を引っ張るように移動するので、外気取入口から吸気口へ向かう空気流は、更に安定した流れとなる。
【0023】
加工領域において安定的に流れる空気流は、レーザー加工により加工領域に生じた副次物を空気流の中に取り込んで副次物と共に吸気口へ移動する。この際の副次物の取り込みは、空気流が安定的な流れであるため、流れをそれ程乱すことなく効率的に行われ、副次物を空気流に乗せて吸気口へ送ることができる。また、副次物は安定的な空気流からは離脱しにくく、浮遊もしにくい。
【0024】
(4)本発明に係るレーザー加工装置は、前記通気抵抗部材が多孔板である構成とすることができる。
【0025】
この場合は、多孔板は板体に多数設けられた孔を空気が通ることにより、通過する空気に対して通気抵抗を与えることができ、孔の大きさ、或いは孔を設ける密度(孔の単位面積当たりの個数)を調節することにより、通気抵抗の調節も可能である。
また、通気抵抗部材を多孔板とした場合の作用は、上記(3)の外気取入口に通気抵抗部材を備える場合と略同様である。
【0026】
(5)本発明に係るレーザー加工装置は、前記吸気口の近傍に前記吸気口に向かう空気流の流線を誘導して整える整流板を備える構成とすることができる。
【0027】
この場合は、吸気口の近傍に前記吸気口に向かう空気流の流線を誘導して整える整流板を備えるので、空気流が吸気口に入る際に流線が誘導され整うので、空気流の乱れを抑止することができる。これにより、空気流の近傍又は離れた場所での渦流や乱流が発生しにくく、空気流が安定して維持されるので、空気流による副次物の取り込みを更に効率的に行なうことができる。
【0028】
(6)本発明に係るレーザー加工装置は、前記外気取入口と前記吸気口の幅が前記加工領域と略同じ幅を有する構成とすることもできる。
【0029】
この場合は、通常は処理能力を充分に確保するために比較的大きく設定される加工領域は必然的に幅が広くなるので、吸気口と外気取入口の幅も広くなり、つくられる空気流の幅も同じく広くなる。しかも、ワーク搬送部で搬送されるワークから発生する副次物を加工領域の全幅に亘り吸気口で一挙に吸引して外部へ排出することが可能になり、処理能力を更に高めることができる。
【0030】
(7)上記の目的を達成するために本発明は、被加工物であるワークを搬送するワーク搬送部が通る略密閉された空間を有する加工領域において、前記ワーク搬送部の下流側の前記ワーク搬送部近傍に設けられた吸気口から前記加工領域の空気を吸引し、これに伴い、前記加工領域において前記ワーク搬送部の上流側の前記ワーク搬送部近傍に設けられた外気取入口から外気を取り入れて、前記加工領域内の前記ワーク搬送部に沿う安定した空気流をつくる工程と、前記加工領域において、前記ワークを前記ワーク搬送部で下流側へ搬送しながら、レーザー加工を行うレーザー加工工程と、前記加工領域において、前記吸気口から前記レーザー加工により発生した副次物を前記空気流に乗せて吸引し、前記副次物を前記加工領域の外部へ誘導して、誘導経路に設けたフィルターで前記副次物を捕集し、清浄化した空気を排出する副次物吸引工程とを備えるレーザー加工方法である。
【0031】
本発明のレーザー加工方法において、空気流をつくる工程では、ワーク搬送部によって被加工物であるワークが搬送される。ワーク搬送部は、略密閉された空間内に設けられた加工領域を通るので、ワーク搬送部で搬送されるワークも同様に加工領域を通る。
【0032】
一方、加工領域では、ワーク搬送部の下流側のワーク搬送部近傍に設けられた吸気口で加工領域の空気が吸引され、外部へ誘導される。これにより、空間が略密閉されている加工領域内の空気は負圧となり、加工領域においてワーク搬送部の上流側のワーク搬送部近傍に設けられた外気取入口から、加工領域内へ外気が取り入れられる。この空気の取り入れは、強制でなく、いわゆる自然給気となる。
【0033】
これにより、加工領域には、上流側の外気取入口から下流側の吸気口へ流れる空気流が生じる。この空気流は、加工領域の、外気取入口で外部と通じてはいるが略密閉された空間内に生じているので、外気取入口から吸気口へ続く各流線が流れ方向と平行かつ互いに平行な層流又は層流に近い安定的な流れとなる。
【0034】
そして、レーザー加工工程では、ワークは、加工領域でワーク搬送部により搬送されながら、レーザー装置によって所定のレーザー加工が行われる。レーザー加工によって、加工領域内のワークの様々な箇所で煙や蒸気、或いは焼滓等の副次物が発生する。
【0035】
副次物吸引工程では、これらの副次物は、外気取入口から吸気口へ流れる空気流に乗せられて、吸気口で空気と共に吸引され、加工領域の外部へ誘導され、誘導経路にあるフィルターで捕集されて、清浄化した空気は排出される。
このように、本発明のレーザー加工方法では、加工領域に外気取入口から吸気部の吸気口へ向かって流れる安定的な空気流をつくることにより、この空気流で副次物を効率的に取り込んで、副次物を誘導経路にあるフィルターで捕集して、加工領域から除去することができる。