特許第6918330号(P6918330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6918330
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/12 20060101AFI20210729BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20210729BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20210729BHJP
   C04B 24/08 20060101ALI20210729BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20210729BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20210729BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20210729BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20210729BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210729BHJP
   C08L 55/00 20060101ALI20210729BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   C04B24/12 A
   C04B24/16
   C04B24/26 B
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C04B24/26 H
   C04B24/08
   C04B24/02
   C04B24/32 A
   C04B28/02
   C08L33/14
   C08L101/00
   C08L55/00
   C08L71/02
【請求項の数】6
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2021-11123(P2021-11123)
(22)【出願日】2021年1月27日
【審査請求日】2021年2月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】古田 章宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 善將
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−270072(JP,A)
【文献】 特開2020−176045(JP,A)
【文献】 特開2000−063164(JP,A)
【文献】 特開2004−043284(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/066095(WO,A1)
【文献】 特開2005−200298(JP,A)
【文献】 特開2017−057101(JP,A)
【文献】 特開2010−013320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A成分と、
下記B成分と、
下記C成分及び下記D成分から選択される少なくとも1つと、
を含有し、
前記A成分、前記B成分及び前記C成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を1〜70質量部、前記B成分を29〜98質量部、及び前記C成分を0.05〜10質量部の割合で含有し、
前記A成分、前記B成分及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を1〜60質量部、前記B成分を19〜98質量部、及び前記D成分を0.5〜40質量部の割合で含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
<A成分>
ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、ジアリルアミン重合体、ジアリルアミン塩重合体、ジアリルアミン・二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1つ。
<B成分>
下記一般式(1)で示される化合物である単量体1から形成された構成単位1、及び、下記一般式(2)で示される化合物である単量体2から形成された構成単位2を含み、
前記構成単位1及び前記構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、前記構成単位1が50〜99質量%、前記構成単位2が50〜1質量%の割合であり、
更に、質量平均分子量が5,000以上で100,000以下であるビニル共重合体。
【化1】
(一般式(1)において、R,R,Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基である。ROは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。aは0〜5の整数である。bは0又は1の整数である。cは1〜300の整数である。)
【化2】
(一般式(2)において、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。R,R,Rは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又は−(CHCOOMで示される有機基(但し、pは0〜2の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。−(CHCOOMは、COOM又は他のCOOMと無水物を形成してもよいが、その場合はそれらの基においてM、Mは存在しない。)である。
<C成分>
下記一般式(3)で示される化合物。
【化3】
(一般式(3)において、Rはロジンのアシル残基である。R10は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。sは1〜200の整数である。)
<D成分>
下記一般式(4)で示される化合物である単量体3から形成された構成単位3、及び、下記一般式(5)で示される化合物である単量体4から形成された構成単位4を含み、
前記構成単位3と前記構成単位4の構成割合の合計を100質量%としたとき、前記構成単位3が50〜99質量%、前記構成単位4が50〜1質量%であり、
更に、質量平均分子量が100,000超で600,000以下であるビニル共重合体。
【化4】
(一般式(4)において、R11,R12,R13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R14は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基である。R15Oは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。dは0〜5の整数である。eは0又は1の整数である。fは1〜300の整数である。)
【化5】
(一般式(5)において、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。R16,R17,R18は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又は−(CHCOOMで示される有機基(qは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミン)である。−(CHCOOMは、COOM又は他のCOOMと無水物を形成してもよいが、その場合はそれらの基においてM、Mは存在しない。)
【請求項2】
前記一般式(3)における−(AO)−が、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の構成割合の合計を100モル%とすると、
炭素数2のオキシアルキレン基を90モル%以上の割合で有するものである、請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項3】
前記D成分が、
硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤に由来する構造単位(TA)を更に含有する、請求項1または2に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項4】
前記D成分が、
硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤に由来する構造単位(TB)を更に含有する、請求項3に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項5】
前記A成分、前記B成分、前記C及び前記D成分を含み、前記A成分、前記B成分、前記C成分及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を1〜60質量部、前記B成分を19〜98質量部、前記C成分を0.05〜10質量部、及び前記D成分を0.5〜40質量部の割合で含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物に関する。更に詳しくは、コンクリート等の水硬性組成物に添加される水硬性組成物用添加剤及びこれが添加された水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート等の硬化物は、水硬性組成物を所定の型枠内へ充填し、その後、硬化させることによって製造されている。
【0003】
この水硬性組成物は、型枠内への充填などの作業性等の観点から十分な流動性を有することが重要となる。
【0004】
そこで、水硬性組成物の流動性を向上させるための添加剤が開発されている。具体的には、ポリカルボン酸系重合体(A)とアミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)とを含んでなり、ポリカルボン酸系重合体(A)と該アミド結合に由来しない窒素原子を有する化合物(B)との質量比(A/B)が所定であるセメント混和剤(例えば、特許文献1参照)、セメント及びクレイに対する吸着量が所定の条件を満たすポリマーを含有するもの(例えば、特許文献2参照)などが報告されている。
【0005】
ここで、上述の通り、型枠内への充填などの作業性等の観点から十分な流動性を有することが、水硬性組成物には重要な要素の一つであるが、一方で、充填後は所望の時間で(即ち、比較的短時間で)凝結して硬化し、強度等において十分な性能を発揮することが要求される。
【0006】
このように流動性の保持と凝結時間を過度に遅延させないことの両方を満足することは簡単ではなく、一般的に、流動性の保持が良い水硬性組成物は、凝結時間が長く、硬化に時間が必要になることが多い。このようなことから、水硬性組成物の流動性を保持しつつ、凝結時間を過度に遅延させない添加剤の開発が行われている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−043284号公報
【特許文献2】特開2014−181171号公報
【特許文献3】特開2007−270072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の水硬性組成物等の添加剤は、水硬性組成物等における流動性、粘度等の状態を改善するものであるが、未だ改善の余地があり、新たな水硬性組成物用添加剤の開発が求められていた。具体的には、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間を過度に遅延させない添加剤の開発が求められていた。
【0009】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間を過度に遅延させない添加剤(水硬性組成物用の添加剤)の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定のA成分及びB成分に加え、更に、C成分及びD成分の少なくとも一つを配合することによって上記課題を解決できることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物が提供される。
【0011】
[1] 下記A成分と、
下記B成分と、
下記C成分及び下記D成分から選択される少なくとも1つと、
を含有し、
前記A成分、前記B成分及び前記C成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を1〜70質量部、前記B成分を29〜98質量部、及び前記C成分を0.05〜10質量部の割合で含有し、
前記A成分、前記B成分及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を1〜60質量部、前記B成分を19〜98質量部、及び前記D成分を0.5〜40質量部の割合で含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【0012】
<A成分>
ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、ジアリルアミン重合体、ジアリルアミン塩重合体、ジアリルアミン・二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1つ。
【0013】
<B成分>
下記一般式(1)で示される化合物である単量体1から形成された構成単位1、及び、下記一般式(2)で示される化合物である単量体2から形成された構成単位2を含み、
前記構成単位1及び前記構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、前記構成単位1が50〜99質量%、前記構成単位2が50〜1質量%の割合であり、
更に、質量平均分子量が5,000以上で100,000以下であるビニル共重合体。
【0014】
【化1】
(一般式(1)において、R,R,Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基である。ROは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。aは0〜5の整数である。bは0又は1の整数である。cは1〜300の整数である。)
【0015】
【化2】
(一般式(2)において、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。R,R,Rは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又は−(CHCOOMで示される有機基(但し、pは0〜2の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。−(CHCOOMは、COOM又は他のCOOMと無水物を形成してもよいが、その場合はそれらの基においてM、Mは存在しない。)である。
【0016】
<C成分>
下記一般式(3)で示される化合物。
【0017】
【化3】
(一般式(3)において、Rはロジンのアシル残基である。R10は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。sは1〜200の整数である。)
<D成分>
下記一般式(4)で示される化合物である単量体3から形成された構成単位3、及び、下記一般式(5)で示される化合物である単量体4から形成された構成単位4を含み、
前記構成単位3と前記構成単位4の構成割合の合計を100質量%としたとき、前記構成単位3が50〜99質量%、前記構成単位4が50〜1質量%であり、
更に、質量平均分子量が100,000超で600,000以下であるビニル共重合体。
【0018】
【化4】
(一般式(4)において、R11,R12,R13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R14は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基である。R15Oは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。dは0〜5の整数である。eは0又は1の整数である。fは1〜300の整数である。)
【0019】
【化5】
(一般式(5)において、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。R16,R17,R18は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又は−(CHCOOMで示される有機基(qは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミン)である。−(CHCOOMは、COOM又は他のCOOMと無水物を形成してもよいが、その場合はそれらの基においてM、Mは存在しない。)
【0020】
[2] 前記一般式(3)における−(AO)−が、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の構成割合の合計を100モル%とすると、
炭素数2のオキシアルキレン基を90モル%以上の割合で有するものである、前記[1]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0021】
[3] 前記D成分が、
硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤に由来する構造単位(TA)を更に含有する、前記[1]または[2]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0022】
[4] 前記D成分が、
硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤に由来する構造単位(TB)を更に含有する、前記[3]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0023】
(削除)
【0024】
(削除)
【0025】
] 前記A成分、前記B成分、前記C及び前記D成分を含み、前記A成分、前記B成分、前記C成分及び前記D成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、
前記A成分を1〜60質量部、前記B成分を19〜98質量部、前記C成分を0.05〜10質量部、及び前記D成分を0.5〜40質量部の割合で含有する、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0026】
] 前記[1]〜[]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【発明の効果】
【0027】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間を過度に遅延させないという効果を奏するものである。
【0028】
本発明の水硬性組成物は、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間が過度に遅延しないという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0030】
(1)水硬性組成物用添加剤:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、所定のA成分と、所定のB成分と、所定のC成分及び所定のD成分から選択される少なくとも1つと、を含有するものである。別言すれば、所定のA成分及び所定のB成分を含有し、更に、所定のC成分及び所定のD成分の一方、または、所定のC成分及び所定のD成分の両方が配合されたものである。
【0031】
このような水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物に配合することで、当該水硬性組成物は、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能となる。特に、通常は高温(例えば、30℃以上)の環境下では、経時による流動性の変化が大きく、高温下である程、早くに流動性が低下する。しかし、本発明の水硬性組成物用添加剤を添加することで、高温環境下であっても経時による流動性の変化が少なくなる。このようなことから、使用温度が高くなる、気温が30℃以上となるような気温の高い国や地域でも良好に使用することができる。
【0032】
また、一方で、水硬性組成物は、コテ等による仕上げや、型枠の脱型等の関係から、適度な時間で凝結することが求められる(即ち、凝結時間が長過ぎず適当であることが望まれる)。この点、本発明の水硬性組成物用添加剤は、使用温度に関わらず、水硬性組成物の凝結時間を過度に遅延させないという利点がある。ここで、凝結時間を過度に遅延させないとは、添加剤を配合することで、水硬性組成物の流動性が練り混ぜから数時間程度(例えば、1〜2時間程度)保持されて、凝結開始を遅延させることができるが、一方で、練り混ぜから数時間程度で、流動性が低下し凝結が開始することである。
【0033】
具体的には、生コンクリート(水硬性組成物)の製造後、直ぐに生コンクリートの打ち込みを行うことができればよいが、通常は、生コンクリートの製造から作業現場での打ち込みまでには、生コンクリート工場から作業現場までの運搬時間や、作業現場での待機時間などの時間を要する。この生コンクリート工場から作業現場までの時間は、数時間程度であることがある。そのため、練り混ぜから数時間程度(例えば、1〜2時間程度)保持されることが望まれる。一方で、生コンクリートの打ち込み後には、凝結が開始されることが望まれる。このように、運搬等の時間を考慮して所定時間は流動性が確保され、所定時間の経過後、適切に凝結が開始することが望まれる。
【0034】
なお、既存の遅延剤(例えば、糖類、オキシカルボン酸塩等)を多量に用いることによって、流動性をある程度保持することは可能である。しかし、その場合は、凝結が過度に遅延し硬化不良を生じるという問題がある。このような問題に対して、本発明の水硬性組成物用添加剤を用いることで、流動性を保持することができるとともに、多量に遅延剤を用いた場合のように過度な凝結遅延が生じることを防止することができる。
【0035】
(1−1)A成分:
A成分は、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンイミンのアルキレンオキシド付加物、ジアリルアミン重合体、ジアリルアミン塩重合体、ジアリルアミン・二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、及びポリビニルピロリドンの中でも、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、ジアリルアミン重合体、ジアリルアミン塩重合体、ジアリルアミン・二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩・二酸化硫黄共重合体、及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1つである。このA成分を他の成分(B成分、及び、C成分とD成分の少なくとも一方)とともに配合することで、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間を過度に遅延させないという効果が発揮される。
【0036】
A成分としては、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1つであることが好ましい。A成分としての、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩、及びポリビニルピロリドンから選択される少なくとも1つは、その質量平均分子量が1,000以上で1,200,000以下であることが好ましく、1,000以上で900,000以下であることがより好ましく、1,000以上で300,000以下であることが更に好ましい。
【0037】
(1−2)B成分:
B成分は、所定のビニル共重合体である。このB成分を他の成分(A成分、及び、C成分とD成分の少なくとも一方)とともに配合することで、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間を過度に遅延させないという効果が発揮される。
【0038】
B成分は、一般式(1)で示される化合物である単量体1から形成された構成単位1、及び、一般式(2)で示される化合物である単量体2から形成された構成単位2を含むものである。そして、構成単位1の構成割合と構成単位2の構成割合の合計を100質量%としたとき、構成単位1の割合が50〜99質量%、構成単位2の割合が50〜1質量%のビニル共重合体である。
【0039】
この構成単位1の割合は、60〜99質量%とすることが好ましく、70〜95質量%とすることが更に好ましい。また、構成単位2の割合は、40〜1質量%とすることが好ましく、30〜5質量%とすることが更に好ましい。
【0040】
(1−2a)構成単位1:
構成単位1は、下記一般式(1)で示される化合物である単量体1から形成されたものである。
【0041】
【化6】
(一般式(1)において、R,R,Rは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基である。ROは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。aは0〜5の整数である。bは0又は1の整数である。cは1〜300の整数である。)
【0042】
一般式(1)におけるRは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基である。炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。これらの中でも、水素原子又は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等の炭素数1〜5の炭化水素基であることが好ましい。
【0043】
一般式(1)におけるROは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。
【0044】
Oが2種類以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であってもよい。
【0045】
一般式(1)におけるaは、0〜5の整数であり、0〜2の整数であることが好ましい。
【0046】
一般式(1)におけるcは、1〜300の整数であり、1〜200の整数であることが好ましく、1〜150の整数であることが更に好ましい。
【0047】
一般式(1)で示される化合物としては、例えば、α−アリル−ω−メトキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−アリル−ω−メトキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−アリル−ω−ブトキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−アリル−ω−ブトキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−アリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−ビニル−ω−メトキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−ビニル−ω−メトキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−ビニル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−ビニル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−ビニル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール、α−メタリル−ω−メトキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−メタリル−ω−メトキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−メタリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−メタリル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−メトキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−メトキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−アクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−アクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−アクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)プロピレンングリコール、α−アクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレングリコール、α−メタクリロイル−ω−ヒドロキシ−(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール等が挙げられる。
【0048】
(1−2b)構成単位2:
構成単位2は、下記一般式(2)で示される化合物である単量体2から形成されたものである。
【0049】
【化7】
(一般式(2)において、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。R,R,Rは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又は−(CHCOOMで示される有機基(但し、pは0〜2の整数であり、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。−(CHCOOMは、COOM又は他のCOOMと無水物を形成してもよいが、その場合はそれらの基においてM、Mは存在しない。)である。
【0050】
一般式(2)におけるM及び、上記有機基におけるMは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、有機アミン塩としては、アンモニウム塩、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩等が挙げられる。
【0051】
一般式(2)で示される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、クロトン酸、これらの塩(例えば、(メタ)アクリル酸塩)等が挙げられる。なお、これらの塩については特に制限するものではないが、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩、有機アミン塩等が挙げられる。
【0052】
(1−2c)質量平均分子量:
B成分は、その質量平均分子量が5,000以上で100,000以下であり、6,000以上で70,000以下であることが好ましい。B成分の質量平均分子量が下限値未満であると、調製直後の水硬性組成物において流動性が十分に確保できない。同様に、B成分の質量平均分子量が上限値超であると、調製直後の水硬性組成物において流動性が十分に確保できない不具合が生じ、特に、D成分を配合する場合には、D成分と重複することになり、本発明の効果が十分に得られなくなる。B成分とD成分では、調製直後の水硬性組成物に十分な流動性を付与する点で、質量平均分子量が低いB成分の方を必須とすることが重要となる。
【0053】
なお、B成分としてのビニル共重合体は、構成単位1及び構成単位2の他に、一般式(1)で示される化合物及び一般式(2)で示される化合物とは異なるその他の単量体から形成された構成単位を含有していてもよい。その他の単量体としては、例えば、(メタ)アリルスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を用いることができる。その他の構成単位は、1種又は2種以上から形成されていてもよい。その他の構成単位の共重合割合は、全構成単位中、20質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0054】
更に、B成分としてのビニル共重合体は公知の方法で製造することができる。例えば、このようなビニル共重合体としては、ラジカル重合にて合成され、上記の構成単位1を形成する一般式(1)で示される化合物である単量体1、構成単位2を形成する一般式(2)で示される化合物である単量体2、及びその他の構成単位を形成するその他の単量体、及びラジカル開始剤を混合(加熱)することにより得られる。
【0055】
使用するラジカル開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物等が挙げられる。これらは、亜硫酸塩やアスコルビン酸等の還元性物質、更にはアミン等と組み合わせ、レドックス開始剤系として用いることもできる。また、得られる共重合体の質量平均分子量を所望の範囲とするため、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリセロール、チオグリコール酸等の連鎖移動剤を使用してもよい。また、重合は、溶媒に水や有機溶媒を用いてもよく、無溶媒であってもよい。
【0056】
(1−3)C成分:
C成分は、下記一般式(3)で示される化合物である。このC成分を他の成分(A成分及びB成分、必要に応じてD成分)とともに配合することで、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間を過度に遅延させないという効果が発揮される。特に、このC成分を配合することで、練り混ぜ後、60分程度から90分程度の間における流動性の保持が非常に優れることになる。
【0057】
【化8】
(一般式(3)において、Rはロジンのアシル残基である。R10は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。AOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。sは1〜200の整数である。)
【0058】
一般式(3)におけるRは、ロジンのアシル残基である。ここで、ロジンとは、樹脂酸(ロジン酸)と称されるジテルペン系化合物をいう。このようなロジンとして、例えば、天然ロジン、変性ロジン、重合ロジンなどが挙げられる。
【0059】
天然ロジンは、マツ科植物から得られる樹脂油から、精油等の揮発性物質を留去した残留物中に存在する樹脂酸の混合物であり、製造方法により、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンに分類される。
【0060】
ガムロジンは、松の木に切り傷をつけ、そこから流出する生松脂をろ過精製し、水蒸気蒸留によりテレビン油を除去して得られる。ウッドロジンは、松の切株のチップを溶剤抽出して得られる。トール油ロジンは、松材からクラフトパルプ法でパルプを製造する工程で副生する粗トール油を蒸留精製して得られる。
【0061】
ロジンは、主成分の樹脂酸として、アビエチン酸を含み、その他の成分の樹脂酸として、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、レボピマール酸等を含む。
【0062】
変性ロジンとは、天然ロジンを変性したものをいい、例えば、天然ロジンを高圧化でニッケル触媒、白金触媒、パラジウム触媒等の貴金属触媒等を使用して水素添加して、分子内の二重結合を消失若しくは減少させた水添ロジン、天然ロジンを貴金属触媒又はハロゲン触媒の存在下に高温加熱することにより分子内の不安定な共役二重結合を消失させた不均化ロジンが挙げられる。
【0063】
重合ロジンとは、天然ロジン又は変性ロジン同士を反応させたものであり、これらの2量化物、3量化物をいう。
【0064】
なお、このようなロジンとして、入手の容易さの観点から、天然ロジンが好ましい。このような天然ロジンとしては、より好ましくは、ガムロジンである。ロジンは、様々な化合物の混合物として扱うことが一般的であり、カルボン酸量については、酸価を測定することで定量化される。酸価は、日本工業規格JIS K 0070(1992)により測定することで求められる。
【0065】
一般式(3)におけるR10は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数2〜20のアルケニル基である。この炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。炭素数2〜20のアルケニル基としては、エテニル基、n−プロペニル基、n−ブテニル基、n−ペンテニル基、n−ヘキセニル基、n−ヘプテニル基、n−オクテニル基、n−ノネル基、n−デセニル基、n−ウンデセニル基、n−ドデセニル基、n−トリデセニル基、n−テトラデセニル基、n−ペンタデセニル基、n−ヘキサデセニル基、n−ヘプタデセニル基、n−オクタデセニル基、n−ノナデセニル基、n−イコセニル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基、エテニル基、n−プロペニル基、n−ブテニル基、n−ペンテニル基等の炭素数2〜5のアルケニル基が好ましい。
【0066】
一般式(3)におけるAOは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。
【0067】
AOが2種類以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であってもよい。
【0068】
一般式(3)におけるsは、1〜200の整数であり、1〜150の整数であることが好ましく、5〜100の整数であることが更に好ましい。
【0069】
C成分は、一般式(3)における−(AO)−について、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の構成割合の合計を100モル%とするとき、炭素数2のオキシアルキレン基を90モル%以上の割合で有するものであることが好ましい。
【0070】
一般式(3)で表される化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、レボピマール酸等の樹脂酸の混合物であるロジンに、触媒等を用いることで常法によりアルキレンオキサイドを付加させて、一般式(3)で表されるロジンポリオキシアルキレン付加物を製造する方法や、R10に相当するアルコールに、予め、触媒等を用いることで常法によりアルキレンオキシドを付加し、その後ロジンとエステル化させることにより、一般式(3)で表される化合物を製造する方法等が挙げられる。
【0071】
(1−4)D成分:
D成分は、上記B成分とは異なる所定のビニル共重合体である。このD成分を他の成分(A成分及びB成分、必要に応じてC成分)とともに配合することで、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間を過度に遅延させないという効果が発揮される。なお、このD成分は、B成分(所定のビニル共重合体)よりも質量平均分子量が大きなビニル共重合体である。
【0072】
ここで、このD成分を配合することで、練り混ぜ後、0分(即ち、練り混ぜ直後)から60分程度の間における流動性が非常に優れることになる。
【0073】
なお、C成分とD成分の両方を配合すると、練り混ぜ後、0分(即ち、練り混ぜ直後)から90分程度の間において非常に優れた流動性が保持されることになる。そして、その後の凝結も良好に開始されることになる。
【0074】
このようにC成分とD成分では、優れた流動性が発揮される時間帯が異なるため、これらを使い分けることで、打ち込み時における適切な流動性を確保することができる。また、これらの両方を配合することで、両方の機能を十分に発揮させることができ、流動性の保持時間を長くすること、即ち、練り混ぜ後、0分(即ち、練り混ぜ直後)から90分程度の間の流動性を確保することができる。
【0075】
D成分は、一般式(4)で示される化合物である単量体3から形成された構成単位3、及び、一般式(5)で示される化合物である単量体4から形成された構成単位4を含むものである。そして、構成単位3の構成割合と構成単位4の構成割合の合計を100質量%としたとき、構成単位3の割合が50〜99質量%、構成単位4の割合が50〜1質量%のビニル共重合体である。
【0076】
この構成単位3の割合は、70〜99質量%とすることが好ましく、80〜95質量%とすることが更に好ましい。また、構成単位4の割合は、1〜30質量%とすることが好ましく、5〜20質量%とすることが更に好ましい。
【0077】
(1−4a)構成単位3:
構成単位3は、下記一般式(4)で示される化合物である単量体3から形成されたものである。
【0078】
【化9】
(一般式(4)において、R11,R12,R13は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R14は水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基である。R15Oは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)である。dは0〜5の整数である。eは0又は1の整数である。fは1〜300の整数である。)
【0079】
一般式(4)におけるR14は、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、例えば、一般式(1)におけるRの炭化水素基として例示した上記炭化水素基と同様のものなどが挙げられる。これらの中でも、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基であることが好ましい。
【0080】
一般式(4)におけるR15Oは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基(ただし、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独または2種以上とすることができる)であり、炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。
【0081】
一般式(4)におけるdは、0〜5の整数であり、0〜2の整数であることが好ましい。
【0082】
一般式(4)におけるfは、1〜300の整数であり、1〜200の整数であることが好ましく、1〜150の整数であることが更に好ましい。
【0083】
一般式(4)で示される化合物としては、例えば、一般式(1)で示される化合物として例示した上記化合物と同様のものなどが挙げられる。
【0084】
(1−4b)構成単位4:
構成単位4は、下記一般式(5)で示される化合物である単量体4から形成されたものである。
【0085】
【化10】
(一般式(5)において、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。R16,R17,R18は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基又は−(CHCOOMで示される有機基(qは0〜2の整数であり、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミン)である。−(CHCOOMは、COOM又は他のCOOMと無水物を形成してもよいが、その場合はそれらの基においてM、Mは存在しない。)
【0086】
一般式(5)におけるM及び、上記有機基におけるMは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)又は有機アミンである。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられ、有機アミン塩としては、アンモニウム塩、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩等が挙げられる。
【0087】
一般式(5)で示される化合物としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、クロトン酸、これらの塩(例えば、(メタ)アクリル酸塩)等が挙げられる。これらの塩については、特に制限するものではないが、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩、有機アミン塩等が挙げられる。
【0088】
(1−4c)質量平均分子量:
D成分は、その質量平均分子量が100,000超で600,000以下であり、150,000超で500,000以下であることが好ましい。D成分の質量平均分子量が下限値未満であると、流動保持性が低下する。この場合、B成分と重複することになり、C成分が含まれない場合には本発明の効果が十分に得られなくなる。D成分を配合することで、質量平均分子量が小さいB成分(ビニル共重合体)以外に、これよりも質量平均分子量が大きな所定のビニル共重合体が共存することになり、これにより本発明の効果が良好に発揮されることになる。同様に、D成分の質量平均分子量が上限値超であると、調製直後の水硬性組成物において流動性が十分に確保できない。
【0089】
なお、D成分としてのビニル共重合体は、構成単位3及び構成単位4の他に、一般式(4)で示される化合物及び一般式(5)で示される化合物とは異なるその他の単量体から形成された構成単位を含有していてもよい。その他の単量体としては、例えば、(メタ)アリルスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を用いることができる。その他の構成単位は、1種又は2種以上から形成されていてもよい。その他の構成単位の共重合割合は、全構成単位中、20質量%以下が好ましく、さらには10質量%以下が更に好ましい。
【0090】
更に、D成分としてのビニル共重合体は公知の方法で製造することができる。例えば、このビニル共重合体は、ラジカル重合にて合成され、上記の構成単位3を形成する一般式(4)で示される化合物である単量体3、構成単位4を形成する一般式(5)で示される化合物である単量体4、及びその他の構成単位を形成するその他の単量体、及びラジカル開始剤を混合(加熱)することにより得られる。
【0091】
使用するラジカル開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物等が挙げられる。これらは、亜硫酸塩やアスコルビン酸等の還元性物質、更にはアミン等と組み合わせ、レドックス開始剤系として用いることもできる。また、重合は溶媒に水や有機溶媒を用いてもよく、無溶媒であってもよい。
【0092】
(1−4d)連鎖移動剤に由来する構成単位:
D成分は、構成単位3及び構成単位4以外に、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)に由来する構成単位や、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)などの連鎖移動剤に由来する構成単位を更に含有していてもよく、これらの中でも、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)に由来する構成単位、及び硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)に由来する構成単位の少なくとも一方を含有することがよい。特に、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)に由来する構成単位を含有していることが好ましい。
【0093】
ここで、「連鎖移動剤に由来する構成単位を含有する」とは、ビニル共重合体の末端に硫黄原子を含有する連鎖移動剤に由来する構造を有することであり、ビニル共重合体主鎖の水素ラジカルの引き抜き後の連鎖移動反応により、主鎖に、導入された連鎖移動剤に由来する構造を含むことをいう。より具体的には、例えば硫黄原子を含有する場合、連鎖移動剤に由来する構造が、硫黄原子を介して、ビニル系単量体由来の構造の主鎖末端の少なくとも一つと結合した構造を有していることを意味する。つまり、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)と硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)の場合には、主として、それぞれの硫黄原子を介して、構成単位3及び構成単位4を含む主鎖の末端と結合している。
【0094】
硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)としては、例えば、2−メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオグリセロールが好ましい。また、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0095】
構成単位3及び構成単位4以外に、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)に由来する構成単位を更に含有しているビニル共重合体は、構成単位3を構成する一般式(4)で示される化合物である単量体3、構成単位4を構成する一般式(5)で示される化合物である単量体4、及び硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)の存在下において、水中又は無溶媒で重合させて製造されるものである。
【0096】
硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)に由来する構成単位は、構成単位3と構成単位4の合計に対する割合が、0.001〜4質量%であることが好ましい。
【0097】
D成分は、更に、構成単位3及び構成単位4以外に、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)に由来する構成単位と、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)に由来する構成単位の両方を含有していることが特に好ましい。
【0098】
硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、セチルメルカプタン、2−エチルヘキシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、ドコシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチルなどのメルカプトカルボン酸アルキルエステルなどが挙げられる。特に、アルキルメルカプタンが好ましく、アルキル鎖の炭素数は、8〜22であるのがより好ましい。これらの中でも、n−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、セチルメルカプタン、2−エチルヘキシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、ドコシルメルカプタンが好ましい。また、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0099】
また、構成単位3及び構成単位4以外に、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)に由来する構成単位と、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)に由来する構成単位との両方を含有しているビニル共重合体は、構成単位3を構成する一般式(4)で示される化合物である単量体3、構成単位4を構成する一般式(5)で示される化合物である単量体4、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)及び、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)の存在下において、水中又は無溶媒で重合させて製造されるものである。
【0100】
硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)に由来する構成単位と、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)に由来する構成単位の合計は、構成単位3と構成単位4の合計に対する割合が、0.001〜4質量%であることが好ましい。
【0101】
また、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)に由来する構成単位は、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)に由来する構成単位と、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)に由来する構成単位との合計に対する割合が、10〜99質量%であることが好ましく、40〜95質量%であることがより好ましい。
【0102】
また、D成分は、その他の(即ち、硫黄原子を含有するもの以外の)疎水性連鎖移動剤や親水性連鎖移動剤等の連鎖移動剤を併用してもよい。このような連鎖移動剤としては特に限定するものではないが、例えば、2−アミノプロパン−1−オール等の第1級アルコール;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、その塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、その塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物、その塩、四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;α−メチルスチレンダイマー、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物等が挙げられる。
【0103】
その他の疎水性連鎖移動剤や親水性連鎖移動剤は、硫黄原子を含有する親水性連鎖移動剤(TA)に由来する構成単位と、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤(TB)に由来する構成単位との合計に対する割合が、20質量%以下であることが好ましい。
【0104】
(1−5)各成分の配合割合:
本発明では、A成分、B成分及びC成分を含み(但し、D成分は含まない場合)、A成分、B成分及びC成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を1〜70質量部、B成分を29〜98質量部、及びC成分を0.05〜10質量部の割合で含有する。更に、A成分を1〜50質量部、B成分を49〜98質量部、及びC成分を0.05〜10質量部の割合で含有することが好ましく、A成分を1〜40質量部、B成分を59〜98質量部、及びC成分を0.05〜10質量部の割合で含有することが更に好ましい。このような範囲とすると、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が更に少なくなる。
【0105】
本発明では、A成分、B成分及びD成分を含み(但し、C成分は含まない場合)、A成分、B成分及びD成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を1〜60質量部、B成分を19〜98質量部、及びD成分を0.5〜40質量部の割合で含有する。更に、A成分を1〜50質量部、B成分を49〜98質量部、及びD成分を0.5〜40質量部の割合で含有することが好ましく、A成分を1〜40質量部、B成分を59〜98質量部、及びD成分を0.5〜40質量部の割合で含有することが更に好ましい。このような範囲とすると、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が更に少なくなる。
【0106】
A成分、B成分、C及びD成分を含み、A成分、B成分、C成分及びD成分の含有割合の合計を100質量部としたとき、A成分を1〜60質量部、B成分を19〜98質量部、C成分を0.05〜10質量部、及びD成分を0.5〜40質量部の割合で含有することが好ましい。このような範囲とすると、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が特に少なくなる。
【0107】
(1−6)その他の成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、A成分〜D成分以外に、効果が損なわれない範囲内で、その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類や、オキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延成分、リグニンスルホン酸ナトリウム等からなる分散作用を有する成分、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤などを挙げることができる。
【0108】
その他の成分の含有割合としては、例えば、本発明の水硬性組成物用添加剤全体の0〜20質量%とすることができる。
【0109】
更に、本発明の水硬性組成物用添加剤は、水や溶剤で希釈された形態で使用してもよい。
【0110】
(2)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有するものである。このような水硬性組成物は、使用温度に関わらず、経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、凝結時間が過度に遅延しないものである。
【0111】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合は特に制限はなく適宜設定することができるが、例えば、結合材に対し、固形分換算で、0.001〜2.0質量%が好適であり、さらには0.01〜2.0質量%がより好適である。
【0112】
本発明の水硬性組成物は、従来公知の水硬性組成物と同様に、結合材、水、細骨材、及び粗骨材を含むものとすることができる。
【0113】
結合材としては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメントなどの各種のセメントを挙げることができる。
【0114】
更に、結合材は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、石粉、シリカフューム、膨張材などの各種混和材を上述した各種セメントと併用してもよい。
【0115】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材などが挙げられる。
【0116】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材などが挙げられる。
【0117】
本発明の水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類や、オキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延成分、リグニンスルホン酸ナトリウム等からなる分散作用を有する成分、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤などを挙げることができる。
【0118】
その他の成分の含有割合としては、例えば、結合材に対して、固形分換算で0〜5質量%とすることができる。
【0119】
本発明の水硬性組成物は、その水と結合材の比率(水/結合材比)としては従来公知の割合を適宜採用することができる。
【実施例】
【0120】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0121】
まず、使用したA成分〜D成分について、以下の表1〜表5に示す。
【0122】
(A成分)
下記表1には、使用したA成分(A−1〜A−11)を示す。
【0123】
【表1】
【0124】
(合成例1)A−8の製造方法:
表1中のA−8は、以下のようにして製造した。まず、5Lのステンレス製の耐圧容器に、A−7のテトラエチレンペンタミン2000gを仕込んだ。そして、窒素置換後、75±5℃でエチレンオキサイド930gを0.3MPa以下の条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。冷却後、回収し、A−8(A成分)を得た。
【0125】
(B成分)
下記表2には、使用したB成分(B−1〜B−3)を示す。
【0126】
【表2】
【0127】
次に、表3には、B成分(B−1〜B−3)を構成する各ビニル共重合体(PC−1〜PC−4)について示す。
【0128】
【表3】
【0129】
表3中、構成単位Nの「合計割合(質量%)」は、構成単位1と構成単位2の合計に対する割合(質量%)を意味するものである。
【0130】
表3中、L−1〜L−4、M−1、M−2、及び、N−1は、以下の化合物を示し、各構成単位は当該化合物に由来するものである。
L−1:α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(9モル)オキシエチレン
L−2:α−メタリル−ω−メトキシ−ポリ(50モル)オキシエチレン
L−3:α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(53モル)オキシエチレン
L−4:ヒドロキシエチルアクリレート
M−1:メタクリル酸
M−2:アクリル酸
N−1:アクリル酸メチル
【0131】
以下に、各共重合体(PC−1〜PC−4)の合成方法を説明する。
【0132】
(合成例2)PC−1の合成:
イオン交換水428.9g、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(9モル)オキシエチレン329.8g、メタクリル酸45.0g、3−メルカプトプロピオン酸3.7gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した。その後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。
【0133】
次に、20%過硫酸ナトリウム水溶液22.5gを加え重合反応を開始した。2時間後、20%過硫酸ナトリウム水溶液11.2gを加え、2時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。これに30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH7に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整した。この反応物をPC−1とした。
【0134】
(合成例3)PC−2の合成:
イオン交換水343.6g、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(9モル)オキシエチレン266.1g、メタクリル酸88.7g、アクリル酸メチル3.5g、3−メルカプトプロピオン酸3.6g、30%水酸化ナトリウム水溶液70.9gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した。その後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。
【0135】
次に、20%過硫酸ナトリウム水溶液35.8gを加え重合反応を開始した。2時間後、20%過硫酸ナトリウム水溶液17.9gを加え2時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。これに30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH7に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整した。この反応物をPC−2とした。
【0136】
(合成例4)PC−3の合成:
イオン交換水162.7g、α−メタリル−ω−メトキシ−ポリ(50モル)オキシエチレン348.6gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。
【0137】
次に、10.0%過酸化水素水溶液19.4gを3.0時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水193.6gにアクリル酸31.0g、ヒドロキシエチルアクリレート7.7gを溶解させた水溶液を3.0時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換15.5gに3−メルカプトプロピオン酸1.9g、アスコルビン酸1.9gを溶解させた水溶液を4.0時間かけて滴下した。その後、0.5時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。これに30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH7に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整した。この反応物をPC−3とした。
【0138】
(合成例5)PC−4の合成:
イオン交換水153.6g、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(53モル)オキシエチレン330.3gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。
【0139】
次に、10.0%過酸化水素水溶液19.2gを3.0時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換水199.7gにアクリル酸23.0g、ヒドロキシエチルアクリレート30.7gを溶解させた水溶液を3.0時間かけて滴下し、それと同時にイオン交換15.4gに3−メルカプトプロピオン酸1.9g、アスコルビン酸1.9gを溶解させた水溶液を4.0時間かけて滴下した。その後、0.5時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。これに30%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pH7に調整し、イオン交換水にて濃度を40%に調整した。この反応物をPC−4とした。
【0140】
(質量平均分子量)
合成した共重合体のPC−1〜PC−4の質量平均分子量について、下記に示す測定条件に従ってゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。
<測定条件>
装置:Shodex GPC−101(昭和電工社製)
カラム:OHpak SB−806M HQ+SB−806M HQ(昭和電工社製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:0.7mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:PEG/PEO(アジレント・テクノロジー社製)
【0141】
測定の結果、PC−1の質量平均分子量は36000であり、PC−2の質量平均分子量は32000であり、PC−3の質量平均分子量は40000であり、PC−4の質量平均分子量は39000であった。
【0142】
(C成分)
下記表4には、使用したC成分(C−1〜C−5)、CR−1を示す。
【0143】
【表4】
【0144】
なお、表4中、「CR−1」としては、中華人民共和国産(以降、単に「中国産」と記す)の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を用いた。
【0145】
また、表4中、「EO」はオキシエチレン基、「PO」はオキシプロピレン基を表す。
【0146】
以下に、C成分(C−1〜C−5)の合成方法を説明する。
【0147】
(合成例6)C−1の合成:
2Lのステンレス製の耐圧容器に、中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を542.2gと、水酸化カリウム2.0gを仕込み、120℃まで加熱し、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。窒素にて常圧に戻し、その後、150〜160℃でエチレンオキサイド1455.8gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、90%酢酸を3.5g添加し、120℃にて減圧脱水の後、加圧濾過を行い、化合物(C−1)を得た。
【0148】
(合成例7)C−2の合成:
1Lのガラス製の反応容器にα−ブトキシ−ω−ヒドロキシ−ポリ(45モル)オキシエチレン500.0gと中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を79.8g、メタンスルホン酸7.2gを仕込み、窒素置換後、150℃、0.5kPaで減圧脱水を行い、エステル化反応を行った。エステル化率が99%以上となったところで反応を終了し、精製し、化合物C−2を得た。
【0149】
(合成例8)C−3の合成:
2Lのステンレス製の耐圧容器に、中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を192.2gと、水酸化カリウム2.0gを仕込み、120℃まで加熱し、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。窒素にて常圧に戻し、その後、150〜160℃でエチレンオキサイド1805.8gを0.4MPaの条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製:キョーワード600)を20.0g添加し、120℃にて減圧脱水の後、加圧濾過を行い、化合物(C−3)を得た。
【0150】
(合成例9)C−4の合成:
2Lのステンレス製の耐圧容器に、中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を626.2gと、水酸化カリウム2.0gを仕込み、120℃まで加熱し、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。窒素にて常圧に戻し、その後、150〜160℃でエチレンオキサイド1260.9gを0.4MPaの条件で圧入し、続いてプロピレンオキサイド110.9gを同条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、吸着材(協和化学工業社製:キョーワード600)を20.0g添加し、120℃にて減圧脱水の後、加圧濾過を行い、化合物(C−4)を得た。
【0151】
(合成例10)C−5の合成:
2Lのステンレス製の耐圧容器に、中国産の「ガムロジン」のXグレード(酸価:171mgKOH/g)を966.1gと、水酸化カリウム2.0gを仕込み、120℃まで加熱し、撹拌しながら減圧脱水を1時間行った。窒素にて常圧に戻し、その後、150〜160℃でエチレンオキサイド518.8gを0.4MPaの条件で圧入し、続いてプロピレンオキサイド513.2gを同条件で圧入し、そのままの温度で1時間熟成を行った。その後、冷却し、90%酢酸を3.5g添加し、120℃にて減圧脱水の後、加圧濾過を行い、化合物(C−5)を得た。
【0152】
(D成分)
下記表5には、使用したD成分(D−1〜D−4)を示す。なお、D−4は、親水性連鎖移動剤のみの場合である。
【0153】
【表5】
【0154】
表5中、「合計割合(質量%)」は、構成単位3と構成単位4の合計に対する割合(質量%)を意味する。
【0155】
表5中、L−3、L−5、L−6、M−1、M−2、TA−1、TA−2、及び、TB−1〜TB−3は、以下の化合物を示し、各構成単位は当該化合物に由来するものである。
L−3:α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(53モル)オキシエチレン
L−5:α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(45モル)オキシエチレン
L−6:α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(23モル)オキシエチレン
M−1:メタクリル酸
M−2:アクリル酸
TA−1:3−メルカプトプロピオン酸
TA−2:チオグリコール酸
TB−1:n−ドデシルメルカプタン
TB−2:ステアリルメルカプタン
TB−3:セチルメルカプタン
【0156】
以下に、D成分(D−1〜D−4)の合成方法を説明する。
【0157】
(合成例11)D−1の合成:
イオン交換水274.5g、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(45モル)オキシエチレン179.5g、メタクリル酸19.9g、3−メルカプトプロピオン酸0.2g、n−ドデシルメルカプタン0.38gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。
【0158】
次に、35%過酸化水素水溶液1.2gをイオン交換水18.0gで希釈したものを加え重合反応を開始した。2時間後、35%過酸化水素水溶液0.4gをイオン交換水6.0gで希釈したものを加え、2時間、70℃を維持し、重合反応を終了した。イオン交換水にて濃度を20%に調整した。この反応物をD−1とした。
【0159】
(合成例12)D−2の合成:
イオン交換水436.8g、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(23モル)オキシエチレン338.9g、メタクリル酸59.6g、3−メルカプトプロピオン酸0.4g、ステアリルメルカプタン1.1gを温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。
【0160】
次に、35%過酸化水素水溶液2.4gをイオン交換水35.8gで希釈したものを加え重合反応を開始した。2時間後、35%過酸化水素水溶液0.8gをイオン交換水11.9gで希釈したものを加え、2時間、70℃を維持し、重合反応を終了した。イオン交換水にて濃度を20%に調整した。この反応物をD−2とした。
【0161】
(合成例13)D−3の合成:
イオン交換水216.4g、α−(3−メチル−3−ブテニル)−ω−ヒドロキシ−ポリ(53モル)オキシエチレン169.2gを温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。
【0162】
次に、3.5%過酸化水素水溶液16.0gを3.0時間かけて滴下し、それと同時にアクリル酸29.9gを3.0時間かけて滴下し、それと同時にチオグリコール酸0.06g、セチルメルカプタン0.31gの混合物を4.0時間かけて滴下し、それと同時にアスコルビン酸1.3gをイオン交換水11.7gで希釈したものを4.0時かけて滴下した。その後1.0時間70℃を維持し、重合反応を終了した。イオン交換水にて濃度を20%に調整した。この反応物をD−3とした。
【0163】
(合成例14)D−4の合成:
イオン交換水274.2g、α−メタクリロイル−ω−メトキシ−ポリ(45モル)オキシエチレン210.2g、メタクリル酸28.8g、3−メルカプトプロピオン酸0.36gを温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。
【0164】
次に、35%過酸化水素水溶液1.4gをイオン交換水13.0gで希釈したものを加え重合反応を開始した。2時間後、35%過酸化水素水溶液0.5gをイオン交換水4.3gで希釈したものを加え、2時間、70℃を維持し、重合反応を終了した。イオン交換水にて濃度を20%に調整した。この反応物をD−4とした。
【0165】
(質量平均分子量)
合成した共重合体のD−1〜D−4の質量平均分子量について、上述のPC−1〜PC−4と同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。
【0166】
測定の結果、D−1の質量平均分子量は300000であり、D−2の質量平均分子量は280000であり、D−3の質量平均分子量は250000であり、D−4の質量平均分子量は200000であった。
【0167】
(実施例1〜24,27,32、比較例1,2、参考例25,26,28〜31,33,34
次に、表6に示すように、各成分を混合して水硬性組成物用添加剤を作製した。なお、表6中、「水」の質量部は、水硬性組成物用添加剤100質量部に対する質量部を示す。
【0168】
【表6】
【0169】
(実施例35〜58,61,66、比較例3〜6、参考例59,60,62〜65,67,68
次に、作製した水硬性組成物用添加剤を用い、表8に示す配合1を採用して、表7に示す各水硬性組成物を作製した。
【0170】
具体的には、以下のようにして水硬性組成物(コンクリート組成物)を調製した。まず、55Lの強制二軸ミキサーに、セメントとしての普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度=3.16g/cm)と、フライアッシュとしての中部フライアッシュ(テクノ中部社製、密度=2.33g/cm、JIS A 6201フライアッシュII種)と、高炉スラグ微粉末としてのエスメント4000(日鉄高炉セメント社製、密度=2.89g/cm、JIS A 6206高炉スラグ微粉末4000)と、骨材としての細骨材(大井川水系産陸砂、密度=2.58g/cm)及び粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm)と、をそれぞれ表8に示す配合(配合1)処方で配合した。そして、これに各水硬性組成物用添加剤(F−1〜34、FR−1〜2)を配合して、実施例35〜58,61,66、比較例3〜6、参考例59,60,62〜65,67,68の水硬性組成物を調製した(表7参照)。
【0171】
なお、実施例35〜58,61,66、比較例3〜6、参考例59,60,62〜65,67,68の各水硬性組成物は、水硬性組成物用添加剤水溶液の添加量を調整して練り混ぜ直後のスランプが21.0±1.5cmの範囲内となるようにし、市販のAE剤であるAE−300(竹本油脂社製)を適宜用い、及び、消泡剤であるAFK−2(竹本油脂社製)を結合材に対して0.001質量%用いて、空気量が4.5±1.0%の範囲内となるように調整を行った。
【0172】
また、各水硬性組成物の調製は、20℃及び30℃環境下でそれぞれ行い、各水硬性組成物の練り上がり温度が、各環境温度の±2℃の範囲内になるように、調製前に各材料を温調した。
【0173】
なお、実施例35〜58,61,66、比較例3〜6及び、参考例59,60,62〜65,67,68で採用した配合1は、水硬性粉体としてセメントを用いた配合である。
【0174】
次に、作製した各水硬性組成物(コンクリート組成物)について、スランプ(cm)、空気量(容積%)、及び、コンクリート温度(℃)の測定を行った。結果を下記表7に示す。20℃環境下と30℃の環境下における各測定値を示す。表7中、「スランプ(cm)」は、練り混ぜ直後のスランプ(cm)を意味し、「空気量(%)」は、練り混ぜ直後の空気量(%)を意味し、「コンクリート温度(℃)」は、練り混ぜ直後のコンクリートの温度(℃)を意味する。
【0175】
・スランプ(cm):
コンクリート組成物について、JIS−A1101(2020)に準拠して測定した。
【0176】
・空気量(容積%):
コンクリート組成物について、JIS−A1128(2020)に準拠して測定した。
【0177】
・コンクリート温度(℃):
コンクリート組成物について、JIS−A1156(2014)に準拠して測定した。
【0178】
【表7】
【0179】
なお、比較例5は、AE剤を使用せず、消泡剤であるAFK−2を結合材に対して0.005質量%用いても空気量が規定量以上となった。また、遅延剤水溶液は、グルコン酸ナトリウム(試薬:キシダ化学社製)400g、スクロース(試薬:キシダ化学社製)100g、及び、イオン交換水500gを混合して調製した。
【0180】
【表8】
【0181】
(評価結果)
作製した各水硬性組成物について、流動保持性の評価及び凝結時間の評価を行った。
【0182】
(流動保持性)
練混ぜ直後(0分後)、練混ぜ直後から60分後、及び、練混ぜ直後から90分後のスランプ(cm)をそれぞれ、上記測定方法により測定し、その後、得られた測定値に基づき、「0分後と60分後のスランプ差」、及び、「60分後と90分後のスランプ差」を算出した。そして、これらの「スランプ差」について以下の評価基準で評価を行い、これを流動保持性の評価とした。表9には、20℃環境下における流動保持性の評価結果を示し、表10には、30℃環境下における流動保持性の評価結果を示す。
【0183】
・0分後と60分後のスランプ差
S:差が2.0cm以下
A:差が2.0cm超、4.0cm以下
B:差が4.0cm超、6.0cm以下
C:差が6.0cm超、7.5cm以下
D:差が7.5cm超
【0184】
・60分後と90分後のスランプ差
S:差が3.0cm以下
A:差が3.0cm超、5.0cm以下
B:差が5.0cm超、7.0cm以下
C:差が7.0cm超、8.5cm以下
D:差が8.5cm超
【0185】
(凝結時間)
作製した各水硬性組成物(コンクリート組成物)について、以下のようにして凝結始発時間を測定し、その後、凝結時間の評価を行った。表9には、20℃の環境下における凝結始発時間の評価結果を示し、表10には、30℃の環境下における凝結始発時間の評価結果を示す。
【0186】
・凝結始発時間:
練り混ぜ直後のコンクリート組成物を用いて、JIS−A1147(2019)に準拠して凝結始発時間を測定した。
【0187】
20℃環境下と30℃環境下における凝結始発時間の評価の評価基準を以下に示す。
【0188】
・凝結時間(20℃環境下)
A:凝結の始発時間が7時間以内
B:凝結の始発時間が7時間超、8時間以内
C:凝結の始発時間が8時間超
【0189】
・凝結時間(30℃環境下)
A:凝結の始発時間が6時間半以内
B:凝結の始発時間が6時間半超、7時間半以内
C:凝結の始発時間が7時間半超
【0190】
なお、比較例4に示すように、C成分及びD成分のいずれも含まないような水硬性組成物用添加剤である場合、20℃環境下と30℃環境下を比較すると、高温である30℃環境下の方が、スランプ差が大きくなり、高温環境下において流動性が大きく低下することが分かる。また、比較例5は、上述の通り、AE剤を使用せず、消泡剤であるAFK−2を結合材に対して0.005質量%用いても空気量が規定量以上となり、空気量が過多のために調整が不可であったことから、表9及び表10中、「−」を記載している。
【0191】
【表9】
【0192】
【表10】
【0193】
(実施例69〜71、比較例7,8)
次に、作製した水硬性組成物用添加剤を用い、表12に示す配合2を採用して、上述した配合1と同様の水硬性組成物の調製方法と、同様のスランプ、及び、空気量の調整方法を用いて、表11に示す各水硬性組成物を作製した。なお、実施例69〜71及び比較例7,8で採用した配合2は、水硬性粉体としてセメント、フライアッシュ、及び、高炉スラグ微粉末を用いた配合である。
【0194】
次に、作製した各水硬性組成物(コンクリート組成物)について、上述した配合1と同様の測定方法を採用して、スランプ(cm)、空気量(容積%)、及び、コンクリート温度(℃)の測定を行った。結果を下記表11に示す。20℃環境下と30℃の環境下における各測定値を示す。表11中、「スランプ(cm)」は、練り混ぜ直後のスランプ(cm)を意味し、「空気量(%)」は、練り混ぜ直後の空気量(%)を意味し、「コンクリート温度(℃)」は、練り混ぜ直後のコンクリートの温度(℃)を意味する。
【0195】
【表11】
【0196】
表11中、遅延剤水溶液は、グルコン酸ナトリウム(試薬:キシダ化学社製)400gとスクロース(試薬:キシダ化学社製)100gとイオン交換水500gを混合して調製した。
【0197】
【表12】
【0198】
(評価結果)
(流動保持性)
練混ぜ直後(0分後)、練混ぜ直後から60分後、及び、練混ぜ直後から90分後のスランプ(cm)をそれぞれ、上記測定方法により測定し、その後、得られた測定値に基づき、「0分後と60分後のスランプ差」、及び、「60分後と90分後のスランプ差」を算出した。そして、これらの「スランプ差」について以下の評価基準で評価を行い、これを流動保持性の評価とした。表13には、20℃環境下における流動保持性の評価結果を示し、表14には、30℃環境下における流動保持性の評価結果を示す。
【0199】
・0分後と60分後のスランプ差
S:差が1.5cm以下
A:差が1.5cm超、3.0cm以下
B:差が3.0cm超、4.5cm以下
C:差が4.5cm超
【0200】
・60分後と90分後のスランプ差
S:差が2.0cm以下
A:差が2.0cm超、3.5cm以下
B:差が3.5cm超、5.0cm以下
C:差が5.0cm超
【0201】
(凝結時間)
作製した各水硬性組成物(コンクリート組成物)について、以下のようにして凝結始発時間を測定し、その後、凝結時間の評価を行った。表13には、20℃の環境下における凝結始発時間の評価結果を示し、表14には、30℃の環境下における凝結始発時間の評価結果を示す。
【0202】
・凝結始発時間:
練り混ぜ直後のコンクリート組成物を用いて、上述した配合1と同様の測定方法を採用して、凝結始発時間を測定した。
【0203】
20℃環境下と30℃環境下における凝結始発時間の評価の評価基準を以下に示す。
【0204】
・凝結時間(20℃環境下)
A:凝結の始発時間が8時間以内
B:凝結の始発時間が8時間超、9時間以内
C:凝結の始発時間が9時間超
【0205】
・凝結時間(30℃環境下)
A:凝結の始発時間が7時間半以内
B:凝結の始発時間が7時間半超、8時間半以内
C:凝結の始発時間が8時間半超
【0206】
【表13】
【0207】
【表14】
【0208】
(結果)
表9,表10、表13,表14に示されるように、本発明の水硬性組成物用添加剤を水硬性組成物に配合することで、使用時の環境温度に関わらず、水硬性組成物における経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、水硬性組成物の凝結時間を過度に遅延させない水硬性組成物が得られることが確認された。また、本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を配合することで、使用時の環境温度に関わらず、水硬性組成物における経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、その凝結時間が過度に遅延しないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0209】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、コンクリート等の水硬性組成物に添加される添加剤として利用することができる。また、本発明の水硬性組成物は、コンクリート等の硬化物を作製するものとして利用することができる。
【要約】
【課題】水硬性組成物に添加することで、使用温度に関わらず、水硬性組成物における経時による流動性の変化が少なく空気量の調整が適宜可能であり、一方で、水硬性組成物の凝結時間を過度に遅延させない水硬性組成物用添加剤を提供する。
【解決手段】所定のA成分と、所定のB成分と、所定のC成分及び所定のD成分から選択される少なくとも1つと、を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【選択図】なし