特許第6918336号(P6918336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918336
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】草刈り機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/44 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
   A01D34/44
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-252516(P2016-252516)
(22)【出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2018-102225(P2018-102225A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宝蔵 伸行
(72)【発明者】
【氏名】垣見 明彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 準
【審査官】 小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05203150(US,A)
【文献】 米国特許第06128892(US,A)
【文献】 特開2012−191864(JP,A)
【文献】 実開平01−118602(JP,U)
【文献】 特開平07−039224(JP,A)
【文献】 特公昭45−005003(JP,B1)
【文献】 実開昭54−126422(JP,U)
【文献】 特開2015−015936(JP,A)
【文献】 実開昭53−054809(JP,U)
【文献】 特開2012−039933(JP,A)
【文献】 特開2011−103850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B27/00 −49/06
A01D34/00 −34/01
A01D34/412−34/90
A01D42/00 −42/08
A01D43/06 −43/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体から動力を受けて草刈り作業を行う作業部と、
前記作業部を、前記走行機体の進行方向に対して側方にオフセットした位置に移動可能なオフセット機構部と、
前記動力を前記作業部に伝達する動力伝達部と、
前記走行機体の進行方向を軸としたとき、前記軸を中心として前記作業部を回動させる回動機構部と、
前記作業部の回動位置に応じて前記作業部との相対的な位置関係が変化するカバー部材を有するカバー機構部と、
を含
前記作業部を正面から見た場合、前記カバー部材は、前記作業部が前記走行機体より下方の傾斜面を作業する位置にあるときに、前記作業部から突出した位置関係となる、草刈り機。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記作業部の前方側に配置される、請求項1に記載の草刈り機。
【請求項3】
前記カバー機構部は、前記カバー部材の位置を変化させるリンク部材をさらに有する、請求項1又は2に記載の草刈り機。
【請求項4】
前記リンク部材は、前記作業部と前記回動機構部との間に架設される、請求項3に記載の草刈り機。
【請求項5】
前記リンク部材は、前記カバー部材に固定されるとともに一端が前記作業部に回動可能に連結された第1ロッドと、一端が前記回動機構部に回動可能に連結されるとともに他端が前記第1ロッドに回動可能に連結された第2ロッドとを含む、請求項3又は4に記載の草刈り機。
【請求項6】
前記作業部を正面から見た場合、前記カバー部材は、前記作業部が水平面に対して略平行な位置にあるとき、又は、前記作業部が前記走行機体より上方の傾斜面を作業する位置にあるときに、全体が前記作業部に重畳した位置関係となる、請求項1乃至のいずれか1項に記載の草刈り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は草刈り機に関する。特に、走行機体の後部に装着され、走行機体の側方において草刈り作業を行うオフセットタイプの草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農道や荒れ地の雑草を除去するため草刈り作業を行う農作業機として草刈り機が知られている。一般的に、草刈り機は、トラクタ等の走行機体によって作業部を牽引することにより草刈り作業を進める。近年は、草刈り作業を行う作業部が走行機体の側方に移動可能となっていて、走行機体の側方において草刈り作業を行うオフセットタイプの草刈り機が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−191864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、草刈り機では、草刈り作業を行う刈刃がアップカット方向(草を下から上に向けて刈り上げる方向)に回転する。そのため、作業中において、草刈りを行う作業部から走行機体に向けて小石等が飛ぶ場合がある。したがって、例えば、特許文献1に記載されたオフセットタイプの草刈り機の場合、作業部前方に飛んだ小石がトラクタ等のサイドミラーに当たり、サイドミラーが破損するといった問題が起こり得る。
【0005】
このような問題に対処するため、通常、草刈り機の作業部前方には、土や小石の飛散を防止するためのカバー部材が揺動自在に垂下されていることが多い。例えば、特許文献1に記載された草刈り機には、図3に示されるように、草刈作業部103の前端部及び後端部のそれぞれに揺動自在のフロントプレート125が設けられている。これにより、刈刃124の回転によって弾き飛ばされた小石等は作業部前方のカバー部材であるフロントプレート125に当たって落ちるため、走行機体への小石等の飛散を防ぐことができる。
【0006】
しかしながら、オフセットタイプの草刈り機を用いて走行機体より下方に位置する傾斜面の作業を行う場合、カバー部材が効果的に機能しない場合がある。例えば、特許文献1の図7では、トラクタ501が、接地面GLを走行しながら下方に傾斜する傾斜面GCの草刈り作業を行っている。この場合、接地面GLの縁GBよりもトラクタ501に寄った部分には、接地面GLと草刈作業部103との間に略三角形状の空間(隙間)が生じる。
【0007】
このような空間が生じてしまうと、接地面GLとフロントプレート125との間の距離が離れすぎてしまうため、回転する刈刃124によって弾かれた小石等が飛散する角度によっては前方にあるフロントプレート125内壁に当たらない場合がある。すなわち、接地面GL上に位置する刈刃124の回転によって弾かれた小石がフロントプレート125をすり抜けて前方のトラクタ501に当たってしまい、場合によってはトラクタ501のサイドミラーの破損等の弊害をもたらす虞がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、作業姿勢に依らず作業部からの異物の飛散を防止することが可能な草刈り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態における草刈り機は、走行機体から動力を受けて草刈り作業を行う作業部と、前記作業部を、前記走行機体の進行方向に対して側方にオフセットした位置に移動可能なオフセット機構部と、前記動力を前記作業部に伝達する動力伝達部と、前記走行機体の進行方向を軸としたとき、前記軸を中心として前記作業部を回動させる回動機構部と、前記作業部の回動位置に応じて前記作業部との相対的な位置関係が変化するカバー部材を有するカバー機構部と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
上述した本発明の一実施形態における草刈り機は、作業姿勢に依らず作業部からの異物の飛散を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態における草刈り機の構成を示す平面図である。
図2】第1実施形態における草刈り機の構成を示す側面図である。
図3】第1実施形態における草刈り機の構成を示す背面図である。
図4】第1実施形態における草刈り機の動力伝達部の構成を示す平面図である。
図5】第1実施形態における草刈り機の通常時の作業状態を示す平面図である。
図6】第1実施形態における草刈り機の通常時の作業状態を示す背面図である。
図7】第1実施形態における草刈り機の作業部が下方に回動した位置にある状態を示す背面図である。
図8】第1実施形態における草刈り機の作業部が上方に回動した位置にある状態を示す背面図である。
図9】第1実施形態における草刈り機の通常時の作業状態を示す正面図である。
図10】第1実施形態における草刈り機の作業部が下方に回動した位置にある状態を示す正面図である。
図11】第1実施形態における草刈り機の作業部が上方に回動した位置にある状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の草刈り機の実施形態について説明する。但し、本発明の草刈り機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
また、説明の便宜上、上方、下方、前方、後方、右方、左方といった方向を示す語句を用いるが、重力の働く方向が下方であり、その逆が上方である。また、走行機体の進行する方向が前方であり、その逆が後方である。さらに、前方に向かって、右側が右方であり、左側が左方である。
【0014】
〈第1実施形態〉
[草刈り機の構成]
以下、第1実施形態における草刈り機100の概略の構成について、図1〜3を用いて説明する。図1は、第1実施形態の草刈り機100の構成を示す平面図である。図2は、第1実施形態の草刈り機100の構成を示す側面図である。図3は、第1実施形態の草刈り機100の構成を示す背面図である。
【0015】
本実施形態における草刈り機100は、装着部10、オフセット機構部20、動力伝達部30、作業部40、回動機構部50及びカバー機構部60を備えている。具体的には、草刈り機100は、トラクタ等の走行機体200に対して装着部10により連結される。装着部10と作業部40とは、オフセット機構部20及び動力伝達部30を介して連結される。これにより、走行機体200の走行に従って草刈り機100が牽引され、作業部40による草刈り作業が行われる。
【0016】
装着部10は、トラクタ等の走行機体200の2つの後方タイヤ210の間に設けられた三点リンク機構220(ただし、ここではロワーリンクのみ点線で示す)に対して連結される。三点リンク機構220は、通常、トップリンク、リフトロッド及びロワーリンクで構成される。三点リンク機構220は、公知の機構であるため、ここでの説明は省略する。
【0017】
装着部10は、走行機体200の幅方向である左右方向に延びるヒッチフレーム11を備え、ヒッチフレーム11は、走行機体200の後部に設けられた三点リンク機構220に連結可能に構成されている。ヒッチフレーム11の中央下部にはギアボックス(図示せず)が設けられ、このギアボックスに走行機体200から動力を受ける入力軸(図示せず)が設けられている。入力軸は、走行機体200に設けられたPTO軸230からユニバーサルジョイント(図示せず)を介して動力が伝達される構成となっている。
【0018】
オフセット機構部20は、作業部40のオフセット移動を行うための機構である。具体的には、オフセット機構部20は、作業部40を、走行機体200の進行方向に対して側方にオフセットした位置に移動させることができる。本実施形態のオフセット機構部20は、オフセットフレーム21、リンクロッド22、支持フレーム23及び伸縮部材24を有する。
【0019】
オフセットフレーム21は、中空状部材で構成される長尺のフレームであり、動力伝達部30の下方に配置される。オフセットフレーム21の一端は、ヒッチフレーム11に対して水平面上で回動可能に連結され、他端は、支持フレーム23に連結される。
【0020】
リンクロッド22は、筒状部材で構成される長尺の部材であり、オフセットフレーム21と同程度の長さを有する。リンクロッド22の一端は、ヒッチフレーム11に対して水平面上で回動可能に連結され、他端は、支持フレーム23に連結される。なお、ヒッチフレーム11上におけるオフセットフレーム21とリンクロッド22の連結位置は、異なる位置となっている。
【0021】
支持フレーム23は、筒状部材で構成される短尺の部材であり、オフセットフレーム21とリンクロッド22とを相互に連結する部材である。支持フレーム23に対し、オフセットフレーム21及びリンクロッド22は、共に回動可能に連結される。また、支持フレーム23は、ヒッチフレーム11に対して略平行に配置される。
【0022】
以上の構成により、ヒッチフレーム11、オフセットフレーム21、リンクロッド22及び支持フレーム23は、それぞれを各辺とする平行四辺形のリンク機構を構成する。このリンク機構により、オフセット機構部20は、作業部40をオフセット移動させることができる。
【0023】
伸縮部材24は、オフセット機構部20の動力源(アクチュエータ)であり、例えばガスシリンダ、油圧シリンダ等で構成される。伸縮部材24の一端は、ヒッチフレーム11に連結され、他端は、オフセットフレーム21の後方側(例えば、支持フレーム23との連結部分の付近)に連結される。伸縮部材24の伸縮により、オフセット機構部20が駆動され、作業部40のオフセット量(オフセット方向への移動量)を制御することができる。
【0024】
動力伝達部30は、装着部10の入力軸(図示せず)で受けた走行機体200からの動力を、作業部40側に伝達するための機構である。本実施形態の草刈り機100は、動力伝達部30として、従来のユニバーサルジョイントではなく、チェーン駆動機構としている。具体的には、動力伝達部30は、少なくとも駆動スプロケット31、従動スプロケット32及びローラーチェーン33を有する。ローラーチェーン33は、駆動スプロケット31及び従動スプロケット32に巻き掛けられた構成となっている。
【0025】
駆動スプロケット31は、入力軸から受けた動力によって能動的に回転する歯車である。従動スプロケット32は、駆動スプロケット31からローラーチェーン33を介して伝達された回転動力によって受動的に回転する歯車である。ローラーチェーン33は、動力などを張力として伝達する機械要素である。
【0026】
ここで、本実施形態の草刈り機100に用いる動力伝達部30の構成について図4を用いて説明する。図4は、第1実施形態の草刈り機100が備える動力伝達部30の構成を示す平面図である。
【0027】
図4において、駆動スプロケット31と従動スプロケット32との間には、ローラーチェーン33が巻き掛けられている。なお、ローラーチェーン33の一部は、点線で省略されている。ここで、ローラーチェーン33のうち、駆動スプロケット31から従動スプロケット32に向けて移動する部分は、駆動スプロケット31によって押されている部分である。説明の便宜上、本明細書では、この部分を弛み側33aと呼ぶ。また、ローラーチェーン33のうち、従動スプロケット32から駆動スプロケット31に向けて移動する部分は、駆動スプロケット31によって引っ張られている部分である。本明細書では、この部分を張り側33bと呼ぶ。
【0028】
本実施形態の動力伝達部30は、さらに、ローラーチェーン33の弛み側33aの外側に配置されたテンショナー34aと、ローラーチェーン33の弛み側33aの内側に配置されたテンショナー34bを有する。なお、ここでいう外側とは、環状をなすローラーチェーン33の外側(ローラーチェーン33で囲まれていない領域)であり、内側とはローラーチェーン33の内側である。
【0029】
テンショナー34aは、弾性部材35の弾性力により引っ張られ、ローラーチェーン33に対して外側から内側に向けて張力を与える。本実施形態では、弾性部材35として引っ張りコイルバネを用いるが、他のバネ部材を用いてもよい。
【0030】
テンショナー34bは、テンショナー34aよりも上流側(すなわち、駆動スプロケット31に近い側)に配置される。テンショナー34bの位置は固定であり、ローラーチェーン33の軌道を固定するガイド部材として機能する。したがって、テンショナー34aがローラーチェーン33に対して外側から内側に向けて張力を与えることにより、相対的にテンショナー34bは、ローラーチェーン33に対して内側から外側に向けて張力を与えることになる。
【0031】
このように、本実施形態では、テンショナー34a及びテンショナー34bを用いてローラーチェーン33に対して張力を与えることにより、動力伝達時のローラーチェーン33の弛みを防止し、回転動力を効率的に伝達することができる。なお、テンショナー34a及び34bは必須の構成ではなく、省略することも可能であるし、テンショナー34aのみ設けた構成としてもよい。
【0032】
以上説明した駆動スプロケット31、従動スプロケット32、ローラーチェーン33、テンショナー34a、テンショナー34b及び弾性部材35は、チェーンケース36の内部に収納され、その外側をチェーンカバー37に覆われる。動力伝達部30は、オフセットフレーム21の上部に装着された支持部材(図示せず)の上に配置され、オフセットフレーム21と共に移動する。つまり、本実施形態では、動力伝達部30が、オフセット機構部20の一部を構成しているとも言える。
【0033】
また、本実施形態のように動力伝達部30としてチェーン駆動方式を採用した場合、スプロケットの径の変更により容易に作業ローター41の回転速度を変更することができるというメリットもある。つまり、スプロケットの交換という簡単な作業のみで作業ローター41の回転速度を向上させたりトルクを向上させたりすることができる。
【0034】
図1〜3に戻って説明を続ける。作業部40は、実際に草刈り作業を行う部位であり、作業ローター41、ローターカバー42、2枚の側板43及び刈刃駆動部44を有する。作業部40は、刈刃駆動部44が、動力伝達部30より伝達された動力を受けて作業ローター41を駆動することにより草刈り作業を行う。
【0035】
作業ローター41は、側板43の間に配置された回転軸41a及び回転軸41aに放射状に複数設けられた刈刃41bを含む。回転軸41aは、走行機体200の進行方向に対して直交する水平方向に設けられる。作業ローター41は、回転軸41aを回転させて刈刃41bにより雑草等を刈り取る。
【0036】
ローターカバー42は、作業ローター41を覆って配置されるカバー部材である。ローターカバー42は、刈刃41bによって刈り取られた雑草、雑草に付着する土、作業面(地表面)に落ちている小石などの飛散を防止すると共に、刈り取られた雑草を再び刈刃41bに戻し、細かく破砕する効果を有する。
【0037】
ローターカバー42は、走行機体200の進行方向に対して前方側にフロントカバー42aを有する。フロントカバー42aは、作業部40の前方に向かって小石等が飛散することを防止するためのカバーである。通常は、ゴム等の弾性部材で形成された板状の弾性部材を揺動自在に配置して構成する。
【0038】
側板43は、ボールベアリング等を介して回転軸41aを回転可能に支持すると共に、ローターカバー42を支持する。本実施形態では、左方の側板43に対して刈刃駆動部44が設けられている。
【0039】
刈刃駆動部44は、走行機体200から動力伝達部30を介して伝達された回転動力を、作業ローター41の回転軸41aに伝達する。本実施形態の刈刃駆動部44は、図2に示されるように、駆動プーリー44a、従動プーリー44b、ベルト44c及びテンショナー44dを含む。ベルト44cは、駆動プーリー44aと従動プーリー44bとの間に巻き掛けられている。テンショナー44dは、駆動プーリー44aから従動プーリー44bに向かってベルト44cが押し出される側に配置され、ベルト44cの内側から外側に向かって張力を与えている。
【0040】
上述した構造の刈刃駆動部44では、駆動プーリー44aが動力伝達部30から伝達された回転動力により回転し、ベルト44cを介して従動プーリー44bへ回転動力を伝達する。従動プーリー44bは、駆動プーリー44aから与えられた回転動力を回転軸41aに伝達し、作業ローター41を駆動する。
【0041】
回動機構部50は、走行機体200の進行方向を軸としたとき、その軸を中心として作業部40を回動させるための機構である。動力伝達部30から出力された動力は、第1伝達軸51、回動機構部50及び第2伝達軸52を介して刈刃駆動部44へと伝達される。作業部40の回動については後述する。
【0042】
カバー機構部60は、作業部40の前方側(走行機体200の進行方向側)に配置され、草刈り作業時に土や小石等の異物が作業部40から走行機体200に向かって飛散することを防ぐ役割を果たす。具体的には、カバー機構部60は、作業ローター41の回転時に、刈刃41bによって弾かれた異物が前方に向かって飛散することを防ぐために配置される。特に、本実施形態のカバー機構部60は、作業部40が走行機体200より下方に位置する傾斜面に対して草刈り作業を行う際に、フロントカバー42aではカバーできない範囲までカバーすることができるという特長を有する。カバー機構部60の詳細な構成については後述する。
【0043】
(草刈り機の動作)
第1実施形態における草刈り機100の作業部40をオフセット移動させた状態について説明する。図5は、第1実施形態における草刈り機100の通常時の作業状態を示す平面図である。図6は、第1実施形態の草刈り機100の通常時の作業状態の構成を示す背面図である。
【0044】
ここで「通常時」とは、作業部40が、非作業状態から作業状態に向かってオフセット移動したままの状態を指す。つまり、作業部40が走行機体200の進行方向に対して側方にオフセット移動し、水平面に対して略平行な位置にある状態を指す。例えば、走行機体200が走行する圃場面の草刈り作業を行う状態が、通常時の作業状態に対応する。
【0045】
図5及び図6に示されるように、草刈り作業時には、オフセット機構部20の駆動により作業部40が走行機体200の進行方向に対して右方にオフセット移動する。これにより、走行機体200の進行方向に対して側方にオフセットした位置で草刈り作業を行うことが可能である。
【0046】
このとき、本実施形態の草刈り機100は、動力伝達部30と作業部40がほぼ直線上に連なる程度まで作業部40をオフセット移動させることができる。つまり、図5及び図6に示されるように、走行機体200の後方タイヤ210よりも大きく右方にオフセットした状態で草刈り作業を行うことが可能である。これは、動力伝達部30として、チェーン駆動方式の機構を採用しているため、一般的なユニバーサルジョイントを用いた場合に比べて、動力伝達部30の機構・構造に依るオフセット量の制限が少ないからである。
【0047】
さらに、本実施形態の草刈り機100は、作業部40がオフセット移動した状態で回動する。図7は、第1実施形態における草刈り機100の作業部40が下方に回動した位置にある状態を示す背面図である。図8は、第1実施形態における草刈り機100の作業部40が上方に回動した位置にある状態を示す背面図である。
【0048】
図7に示される草刈り機100は、作業部40が、オフセットした状態において、回動機構部50により下方(時計回り)に回動している。前述のとおり、回動機構部50は、走行機体200の進行方向を軸としたとき、作業部40をその軸を中心として回動させるための機構である。図7に示される状態は、作業部40が、走行機体200よりも下方に位置する傾斜面(法面)の草刈り作業を行う位置にある状態であると言える。
【0049】
また、図8に示される草刈り機100は、作業部40が、オフセットした状態において、上方(反時計回り)に回動している。この場合、図8に示される状態は、作業部40が、走行機体200よりも上方に位置する傾斜面(法面)の草刈り作業を行う位置にある状態であると言える。
【0050】
(カバー機構部の構成)
ここで、第1実施形態における草刈り機100が備えるカバー機構部60の詳細な構成及び動作について図9〜11を用いて説明する。図9は、第1実施形態における草刈り機100の通常時の作業状態を示す正面図である。図10は、第1実施形態における草刈り機100の作業部40が下方に回動した位置にある状態を示す正面図である。図11は、第1実施形態における草刈り機100の作業部40が上方に回動した位置にある状態を示す正面図である。
【0051】
図9に示されるように、本実施形態の草刈り機100におけるカバー機構部60は、カバー部材61及びリンク部材62を有する。カバー部材61は、板状部材で構成され、本実施形態では略扇形の形状を有している。ただし、形状はこれに限定されるものではなく、適宜決定することができる。カバー部材61の材質としては、ステンレス等の金属材料を用いることもできるし、ゴム等の弾性材料を用いることもできる。
【0052】
リンク部材62は、カバー部材61の位置を変化させる機能を有する部位であり、本実施形態では、第1ロッド62a及び第2ロッド62bで構成される。リンク部材62は、第1ロッド62aと第2ロッド62bとが協働してリンク機構を構成する。本実施形態において、リンク部材62は、作業部40と回動機構部50との間に架設されるが、これに限られるものではない。例えば、リンク部材62は、作業部40とオフセット機構部20との間、又は、作業部40と動力伝達部30との間に設けられていてもよい。
【0053】
図9に示されるように、第1ロッド62aは、ボルト等の締結手段63によりカバー部材61に固定される。また、第1ロッド62aの一端は、作業部40のローターカバー42に対して軸64を中心として回動可能に連結される。第2ロッド62bは、一端がボルト等の締結手段65により回動機構部50の一部に固定されるとともに、その他端が、第1ロッド62aに対して軸66を中心として回動可能に連結される。
【0054】
このような構造とすることにより、リンク部材62は、回動機構部50による作業部40の回動に伴って変形し、カバー部材61の位置を変化させる。すなわち、作業部40の回動位置に応じて、カバー部材61と作業部40との相対的な位置関係が変化する。具体的には、本実施形態では、作業部40が走行機体200よりも下方に位置する傾斜面に対して作業を行う場合に、カバー部材61が作業部40の前方に向かって小石等が飛散することを防止するためのカバーとして機能する。
【0055】
図9は、作業部40が、水平面(走行機体200が走行する接地面に対応する)に対して略平行な位置で草刈り作業を行っている状態を示している。つまり、図9は、通常時の作業状態における作業部40の様子を表している。このとき、第1ロッド62a及び第2ロッド62bの位置関係により、カバー部材61は、その全体が作業部40に重畳した位置関係となる。したがって、図9に示す状態においては、カバー部材61は、上述したカバーとして機能せず、収納された状態となっている。
【0056】
次に、図10は、作業部40が、回動機構部50を中心として下方(ここでは反時計回り)に回動して、走行機体200が走行する接地面70aから下方に延びる傾斜面70bの草刈り作業を行っている様子を示している。このとき、作業部40の回動による第1ロッド62a及び第2ロッド62bの位置関係の変化に伴って、第1ロッド62aが軸64を中心として時計回りに回動する。
【0057】
その結果、カバー部材61は、作業部40から突出した位置関係となるように移動し、図10に示されるように、接地面70aと作業部40との間に形成された略三角形状の空間を塞ぐ形となる。そのため、図10に示す状態で作業部40が作業をした場合、接地面70aよりも上方に位置する作業ローター41の刈刃41bが小石等の異物を弾き飛ばしても、カバー部材61で異物の飛散を防ぐことができる。つまり、図10に示す状態においては、カバー部材61は、フロントカバー42aとは別に、接地面70aと作業部40との間に形成される隙間を遮るためのカバーとして機能する。
【0058】
次に、図11は、作業部40が、回動機構部50を中心として上方(ここでは時計回り)に回動して、走行機体200が走行する接地面70aから上方に延びる傾斜面70cの草刈り作業を行っている様子を示している。このとき、作業部40の回動による第1ロッド62a及び第2ロッド62bの位置関係の変化に伴って、カバー部材61は、通常時(図9)に比べて若干反時計回りに回動する。しかしながら、カバー部材61の全体は作業部40に重畳した位置関係となるため、図11に示す状態においては、カバー部材61は、上述したカバーとして機能せず、収納された状態となっている。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の草刈り機100は、作業部40の回動位置(作業部40の姿勢)に応じて作業部40との相対的な位置関係が変化するカバー部材61を備えている。また、カバー部材61は、作業部40の回動位置に応じて変形するリンク部材62の動きに従って(つまり連動して)その位置が変化する。これにより、草刈り機100が備えるカバー部材61は、作業部40が走行機体200より下方の傾斜面70bに対して作業を行う位置にあるときは、接地面70aと作業部40との間に生じる隙間を塞ぐカバーとして機能する。
【0060】
他方、作業部40が走行機体200より上方の傾斜面70cに対して作業を行う位置にあるとき、又は、通常時の作業状態にあるとき(すなわち、作業部40が水平面に対して略平行な位置にあるとき)は、カバー部材61は、作業部40に重畳して収納状態となる。なお、通常時の作業状態にあるときは、作業部40が備えるフロントカバー42aが小石等の異物が前方に飛散することを防いでくれる。
【0061】
以上のとおり、本実施形態の草刈り機100が備えるカバー部材61は、作業部40が走行機体200より下方の傾斜面70bに対して作業を行う位置にあるときに限り、作業部40から突出して隙間を遮るカバーとして機能し、その他の位置にあるときは作業部40に重畳して収納されている。このように本実施形態の草刈り機100は、作業姿勢に依らず作業部40からの異物の飛散を防止することが可能である。なお、本実施形態の草刈り機100が備える動力伝達部30は、チェーン駆動方式の機構を採用しているが、従来のユニバーサルジョイントを用いた構成であっても、もちろん構わない。
【0062】
〈第2実施形態〉
第1実施形態の草刈り機100では、リンク部材62の動きに連動させてカバー部材61の位置を変化させたが、これに限らず、手動で位置を変化させてもよいし、電動で位置を変化させてもよい。
【0063】
手動でカバー部材61の位置を変化させる場合、図9に示されるように、第1ロッド62aの一端は、作業部40に対して軸64を中心として回動可能に連結しておき、作業部40にカバー部材61を任意の位置で固定可能な部材を設けておけばよい。そして、作業部40が走行機体200より下方の傾斜面70bに対して作業を行う位置にあるときだけ、カバー部材61を手で動かし、作業部40から突出した位置に移動させてカバーとして機能させることが可能である。
【0064】
また、電動でカバー部材61の位置を変化させる場合、第1ロッド62aの一端は、作業部40に対して軸64を中心として回動可能に連結しておき、作業部40にカバー部材61を任意の位置に回動可能なアクチュエータを配置すればよい。このように、アクチュエータを使用すれば、必要に応じてリモコン等でアクチュエータを駆動して、カバー部材61を任意の位置に配置することが可能である。
【0065】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
10…装着部、11…ヒッチフレーム、20…オフセット機構部、21…オフセットフレーム、22…リンクロッド、23…支持フレーム、24…伸縮部材、30…動力伝達部、31…駆動スプロケット、32…従動スプロケット、33…ローラーチェーン、34a、34b…テンショナー、35…弾性部材、36…チェーンケース、37…チェーンカバー、40…作業部、41…作業ローター、41a…回転軸、41b…刈刃、42…ローターカバー、43…側板、44…刈刃駆動部、44a…駆動プーリー、44b…従動プーリー、44c…ベルト、44d…テンショナー、50…回動機構部、51…第1伝達軸、52…第2伝達軸、60…カバー機構部、61…カバー部材、62…リンク部材、62a…第1ロッド、62b…第2ロッド、63…締結手段、64…軸、65…締結手段、66…軸、200…走行機体、210…後方タイヤ、220…三点リンク機構、230…PTO軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11