特許第6918350号(P6918350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大阪製薬の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918350
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】動物用害虫防除具
(51)【国際特許分類】
   A01N 53/08 20060101AFI20210729BHJP
   A01N 53/10 20060101ALI20210729BHJP
   A01N 47/02 20060101ALI20210729BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20210729BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20210729BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20210729BHJP
   A01M 99/00 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   A01N53/08 100
   A01N53/10 210
   A01N47/02
   A01P7/02
   A01P7/04
   A01N25/02
   A01M99/00
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-132393(P2017-132393)
(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2019-14673(P2019-14673A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由明
(72)【発明者】
【氏名】稲見 浩之
【審査官】 奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−234922(JP,A)
【文献】 特表平11−508276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 53/08
A01M 99/00
A01N 25/02
A01N 47/02
A01N 53/10
A01P 7/02
A01P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分であるピレスロイド系化合物又はフェニルピラゾール系化合物から選ばれる少 なくとも1種以上の化合物、溶剤であるジエチレングリコールモノエチルエーテルを含 有する薬剤と、
前記薬剤を収容し、ノルボルネンとエチレンの共重合体である脂環式オレフィン系樹脂 を含む容器本体と、
前記容器本体の開口を覆い、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、 ポリプロピレン、ポリエチレン、アルミニウムから選ばれる2つ以上の素材で積層され ている蓋部とを備えることを特徴とする動物用害虫防除具。
【請求項2】
前記ピレスロイド系化合物が、フェノトリン、アレスリンから選ばれる少なくとも一種 以上であることを特徴とする請求項1に記載の動物用害虫防除具。
【請求項3】
前記フェニルピラゾール系化合物が、フィプロニルであることを特徴とする請求項1又 は請求項2に記載の動物用害虫防除具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットや家畜などの動物に付着するシラミ、ノミ、ダニなどの害虫に対して優れた駆除効力を有する防除具に関し、詳しくは、それら害虫を駆除する薬剤を構成する溶剤にジエチレングリコールモノエチルエーテルを用いる防除具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犬、猫、ウサギなどのペット、豚や牛などの家畜など人と関わり合いがある動物に付着してそれら動物に対して有害な作用を及ぼすシラミ、ノミ、ダニなど害虫を駆除するために、それら動物の体表面に対して滴下、噴霧、塗布などしてそれら害虫を駆除する防除剤が種々知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、猫に寄生するネコノミを駆除するためにフェノトリン、アレスリンなどの殺虫成分と、それらを溶解するジエチレングリコールモノエチルエーテルである溶剤からなる防除剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−234922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、溶剤として用いているジエチレングリコールモノエチルエーテルの物性により、有効成分と溶媒からなる薬剤を収納している容器が経年劣化により容器の白化や軟化などの問題があった。
【0006】
そこで、本発明では、犬、猫、ウサギなどのペット、豚や牛などの家畜など人と関わり合いがある動物に付着するシラミ、ノミ、ダニなどの害虫に対して優れた駆除効力を有する薬剤において、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルを用いたときにおいてもその薬剤を経時安定的に保持することができるとともに、容器から薬剤を取り出すことが容易である動物用害虫防除具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、有効成分であるピレスロイド系化合物又はフェニルピラ ゾール系化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、溶剤であるジエチレングリ コールモノエチルエーテルを含有する薬剤と、前記薬剤を収容し、ノルボルネンとエチ レンの共重合体である脂環式オレフィン系樹脂を含む容器本体と、前記容器本体の開口 を覆い、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポ リエチレン、アルミニウムから選ばれる2つ以上の素材で積層されている蓋部とを備え ることを特徴とする動物用害虫防除具である。
【0008】
〔2〕そして、前記ピレスロイド系化合物が、フェノトリン、アレスリンから選ばれる少なくとも一種以上であることを特徴とする前記〔1〕に記載の動物用害虫防除具である。
【0010】
〔4〕そして、前記フェニルピラゾール系化合物が、フィプロニルであることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔3〕のいずれかに記載の動物用害虫防除具である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、犬、猫、ウサギなどのペット、豚や牛などの家畜など人と関わり合いがある動物に付着するシラミ、ノミ、ダニなどの害虫に対して優れた駆除効力を有する薬剤において、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルを用いたときにおいてもその薬剤を経時安定的に保持することができるとともに、容器から薬剤を容易に取り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の動物用害虫防除具に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0013】
本発明におけるピレスロイド系化合物は、除虫菊に含有される殺虫作用を有する成分及びその誘導体であり、植物等から抽出などの方法で取り出される天然物、有機合成の手法で合成される合成物のいずれも含むものである。ピレスロイド系化合物を用いることにより、ペットや家畜などの動物に付着するシラミ、ノミ、ダニなどの神経に作用してそれら害虫を死滅させたり忌避させたりなどの防除効果を有し有効成分として作用するとともに、それら動物の体温により拡散されやすいので好ましい。
【0014】
ピレスロイド系化合物としては、天然ピレスロイドとして、ピレトリンI<(1R,3R)−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(1S)−2−メチル−4−オキソ−3−(2Z)−2,4−ペンタジエニル−2−シクロペンテン−1−イルエステル>、ピレトリンII<(1R,3R)−3−[(1E)−3−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−1−プロペニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸(1S)−2−メチル−4−オキソ−3−(2Z)−2,4−ペンタジエニル−2−シクロペンテン−1−イルエステル>、シネリンI<(1R,3R)−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(1S)−3−(2Z)−(2−ブテニル)−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテン−1−イルエステル>、シネリンII<(1R,3R)−3−[(1E)−3−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−1−プロペニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸(1S)−3−(2Z)−(2−ブテニル)−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテン−1−イルエステル>、ジャスモリンI<(1R,3R)−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸 (1S)−2−メチル−4−オキソ−3−(2Z)−2−ペンテニル−2−シクロペンテン−1−イルエステル>、ジャスモリンII<(1R,3R)−3−[(1E)−3−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−1−プロペニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸 (1S)−2−メチル−4−オキソ−3−(2Z)−2−ペンテニル−2−シクロペンテン−1−イルエステル>、合成ピレスロイドとして、アレスリンI<2,2−ジメチル−3−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペニル)−2−シクロペンテン−1−イルエステル>、アレスリンII<3−(3−メトキシ−2−メチル−3−オキソ−1−プロペニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロペニル)−2−シクロペンテン−1−イルエステル>、フタルスリン(別名;D−テトラメトリン)<(1,3−ジオキソ−4,5,6,7−テトラヒドロイソインドリン−2−イル)メチル=2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロパ−1−エン−1−イル)シクロプロパン−1−カルボキシラート>、レスメトリン<(5−ベンジル−3−フリル)メチル=2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロパ−1−エン−1−イル)シクロプロパンカルボキシラート>、フェノトリン<3−フェノキシベンジル=2−ジメチル−3−(メチルプロペニル)シクロプロパンカルボキシラート>、ペルメトリン<3−フェノキシベンジル=3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボキシラート>、シフェノトリン<シアノ(3−フェノキシフェニル)メチル=2,2−ジメチル−3−(2−メチルプロパ−1−エン−1−イル)シクロプロパンカルボキシラート>、エトフェンプロックス<4−(4−エトキシフェニル)−4−メチル−1−(3−フェノキシフェニル)−2−オキサペンタン>、メトフルトリン<2,2−ジメチル−3−(プロパ−1−エン−1−イル)シクロプロパンカルボン酸=2,3,5,6−テトラフルオロ−4−(メトキシメチル)ベンジル>、トランスフルトリン<(1R,3S)−3−[(E)−2,2−ジクロロビニル]−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸=2,3,5,6−テトラフルオロベンジル>、シフルトリン<シアノ(4−フルオロ−3−フェノキシフェニル)メチル=3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチルシクロプロパン−1−カルボキシラート>、などが好ましい。そして、上記のうちペルメトリン、フェノトリン、アレスリン、フタルスリン、レストメトリン、メトフルトリン、トランスフルトリンがより好ましく、さらに、フェノトリン、アレスリンが最も好ましい。また、上記のピレスロイド系化合物は1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明におけるフェニルピラゾール系化合物は、含窒素5員環のピラゾールの1位にフェニル基が置換した構造含む化合物である。フェニルピラゾール系化合物を用いることにより、ペットや家畜などの動物に付着するシラミ、ノミ、ダニなどの神経に作用してそれら害虫を死滅させたり忌避させたりなどの防除効果を有し有効成分として作用するので好ましい。
【0016】
フェニルピラゾール系化合物としては、例えば、フィプロニル、エチプロールなどが好ましい。また、上記のフェニルピラゾール系化合物は1種類のみ、又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0017】
本発明におけるジエチレングリコールモノエチルエーテルは、本発明における薬剤における溶媒であり、20〜30℃程度の室温において液状の無色透明の化合物でジエチレングリコールの二つの水酸基のうち一方がエチル化された化合物である。ジエチレングリコールモノエチルエーテルを用いることにより、ジエチレングリコールモノエチルエーテルの粘度が25℃で1.84mPaと一般的な溶剤よりも小さいためにジエチレングリコールモノエチルエーテルに溶解させたピレスロイド系化合物をペットや家畜などの動物の体表面に速やかに拡散させることができるなどの効果があるので好ましい。
【0018】
そして、本発明における薬剤には、ピレスロイド化合物、又はフェニルピラゾール系化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、ジエチレングリコールモノエチルエーテル以外にも防除効果を妨げない範囲において他の成分を混合することができる。
【0019】
本発明の薬剤に追加することができる他の成分として、共力剤が好ましい。共力剤を用いることにより、害虫の体内でピレスロイド系化合物又はフェニルピラゾール系化合物の代謝分解を阻害させることができるので、ピレスロイド系化合物又はフェニルピラゾール系化合物の効果を持続させることができる。共力剤としては特に限定されるものではないが、例えば、害虫の体内での代謝分解を行うミクロソーム複合酸化酵素の阻害剤に属するものが挙げられる。
【0020】
共力剤としては、例えば、ピペロニルブトキシド(5−[[2−(2−ブトキシエトキシ)エトキシ]メチル]−6−プロピル−1,3−ベンゾジオキソール)、オセサミン、セサモリン、セサメックス、プロピルアイソム、サフロキサン、サルホキサイド、ピペロニルシクロネン、N−(2−エチル)ヘキシル−5,6−ノルボルネンジカルボキシイミド、2,2’,3,3,3,3’,3’,3’−オクタクロロジプロピルエーテル、O−プロパルギル−O−プロピル フェニルホスホネ−トなどが挙げられる。特に、ピペロニルブトキシドが好ましい。これらの共力剤については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明の薬剤に追加することができる他の成分として、昆虫成長制御剤が好ましい。昆虫成長制御剤を用いることにより、ピレスロイド系化合物又はフェニルピラゾール系化合物に対して耐性を有する害虫が存在していたとしてもその成長を抑制することにより繁殖を抑制し経時的に害虫を減少させることができる。昆虫成長制御剤としては特に限定されるものではないが、例えば、幼若ホルモン様物質又はキチン合成阻害剤に属するものが挙げられる。
【0022】
昆虫成長制御剤としては、例えば、ピリプロキシフェン、S−メトプレン、ハイドロプレン、フエノキシカノレブ、エトキサゾール、クロルフルアズロン、フルアズロン、トリアズロン、ノバルロン、ヘキサフルムロン、ジフルベンズロン、シロマジン、フルフェノクスロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、フルシクロクスロン、ヒドロプレン、ルフェヌロン、ノビフルムロン、ビストリフルロンなどが挙げられる。特に、ピリプロキシフェンとS−メトプレンが好ましい。これらの昆虫成長制御剤については、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
そして、本発明の薬剤に追加することができる他の成分として、天然精油成分も好ましい。天然精油成分は、植物の枝葉、根茎、木皮、果実、花、つぼみ、樹脂などから得られる揮発性の油状物であり、水蒸気蒸留法、圧搾法、抽出法などで植物の各箇所より分離し、精製して得られる化合物である。
【0024】
精油の原材料としては、種々挙げられるが、グレープフルーツ、ゼラニウム、ローズマリー、アニス、アルモワーズ、イランイラン、オレンジ、カナンガ、カモミール、カルダモン、カユプテ、クラリセージ、クローブ、コリアンダー、サイプレス、サンダルウッド、シダーウッド、シトロネラ、ジュニパーベリー、ジンジャー、スペアミント、セージ、ティートリー、ナツメグ、ネロリ、パインニードル、バジル、パチョリー、パルマローザ、フェンネル、ブラックペッパー、ペチグレン、ベチバー、ペパーミント、ベルガモット、マージョラム、マンダリン、ユーカリレモン、ライム、ラベンダー、レモン、レモングラス、ローズウッド、月桃葉油、桂皮油、薄荷油が好ましい。これら原材料から得られた精油は、害虫に対して有用な忌避効果を有する。そして、精油には揮発性を有する種々の化合物が含有されているため、精油の香りがなくなったときには防除効果が著しく低下していることを使用者の臭覚で感知でき、視覚として認識することが難しい防除効果を簡便に把握することができる。
【0025】
上記原料から得られる精油には、揮発性を有する種々の化合物が含有されている。グレープフルーツには、d−リモネン、ミルセン、α−ピネンなどが含有されている。ゼラニウムには、シトロネロール、ゲラニオール、リナロールなどが含有されている。ローズマリーには、α−ピネン、カンファー、1,8−シネオールなどが含有されている。アニスには、(E)−アネトール、リモネン、アニスアルデヒドなどが含有されている。アルモアーズには、1,8−シネオール、ツジョン、ボルネオール、カンファー、ピネン、アルテミシニン(セスキテルペン・ラクトン)リナロール、ネロールなどが含有されている。イランイランには、リナロール、β−カリオレフィン、ゲルマクレンDなどが含有されている。オレンジには、リモネン、ミルセン、β−ビサボレンなどが含有されている。カナンガには、カリオフィレン、酢酸ゲラニル、テルピネオールなどが含有されている。カモミールには、ファルネセン、カマズレン、α−ビサボロールオキサイドBなどが含有されている。カルダモンには、1,8−シネオール、α−テルピニルアセテート、リモネンなどが含有されている。カユプテには、1,8−シネオール、α−テルピネオール、パラ−シメンなどが含有されている。クラリセージには、酢酸リナリル、リナロール、ゲルマクレンDなどが含有されている。クローブには、オイゲノール、β−カリオフィレン、オイゲニルアセテートなどが含有されている。コリアンダーには、d−リナロール、カンファー、α―ピネンなどが含有されている。サイプレスには、α―ピネン、δ−3−カレンなどが含有されている。サンダルウッドには、シス−α−サンタロール、シス−β−サンタロール、epi−β−サンタロールなどが含有されている。シダーウッドには、ツヨプセン、α−セドレン、セドロールなどが含有されている。シトロネラには、ゲラニオール、リモネン、シトロネロールなどが含有されている。ジュニパーベリーには、α−ピネン、ミルセン、β−ファルネセンなどが含有されている。ジンジャーには、ar−クルクメン、α−ジンジベレン、β−セスキフェランドレンなどが含有されている。スペアミントには、(−)−カルボン、ジヒドロカルボン、1,8−シネオールなどが含有されている。セージには、α−ツヨン、β−ツヨン、カンファーなどが含有されている。ティートリーには、テルピネン−4−オール、γ−テルピネン、α−テルピネンなどが含有されている。ナツメグには、α−ピネン、サビネン、β−ピネンなどが含有されている。ネロリには、リナロール、リモネン、βピネンなどが含有されている。パインニードルには、α−ピネン、β−ピネン、ミルセンなどが含有されている。バジルには、リナロール、メチルチャビコール、β−カリオフィレンなどが含有されている。パチョリーには、パチュリアルコール、α−パチュレン、β−カリオフィレンなどが含有されている。パルマローザには、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、リナロールなどが含有されている。フェンネルには、(E)−アネトール、リモネン、メチルチャビコールなどが含有されている。ブラックペッパーには、β−3−カリオフィレン、δ−3−カレン、リモネンなどが含有されている。ペチグレンには、リナリルアセテート、リナロール、α―テルピネオールなどが含有されている。ベチバーには、ベチベロール、ベチベン、α−ベチボールなどが含有されている。ベルガモットには、リモネン、リナリルアセテート、リナロールなどが含有されている。マージョラムには、テルピネン−4−オール、シス−サビネンヒドレート、パラ−シメンなどが含有されている。マンダリンには、リモネン、γ−テルピネン、β−ピネンなどが含有されている。ユーカリレモンには、シトロネラール、シトロネロール、シトラールなどが含有されている。ライムには、リモネン、γ−テルピネン、β−ピネンなどが含有されている。ラベンダーには、酢酸リナリル、リナロール、(Z)−β−オシメンなどが含有されている。レモンには、リモネン、β−ピネン、γ−テルピネンなどが含有されている。レモングラスには、ゲラニアール、シトラール、エレモールなどが含有されている。ローズウッドには、リナロール、α−テルピネオール、シスーリナロールオキサイドなどが含有されている。ペパーミントには、l−メントール、l−メントン、メントフランなどが含有されている。桂皮油には、シンナムアルデヒド、t−2−メトキシシンナムアルデヒド、クマリンなど含有されている。月桃葉油には、1,8−シネオール、テルピネン−4−オール、p―サイメンなどが含有されている。薄荷油には、l−メントール、l−メントン、メントフランなどが含有されている。
【0026】
また、本発明の薬剤に追加することができる他の成分として、使用者の臭覚で感知することができる香料が好ましい。そして、使用するピレスロイド系化合物又はフェニルピラゾール系化合物や精油の所定の温度における蒸気圧と同じ又は上下20%の範囲内である香料であることがさらに好ましい。香料を用いることにより、香料による香りがなくなったときには防除効果が著しく低下していることを使用者の臭覚で感知でき、視覚として認識することが難しい防除効果を簡便に把握することができる。また、とりわけ使用者の臭覚では感知することが困難であるピレスロイド系化合物又はフェニルピラゾール系化合物や精油を用いたときに、香料を配合することにより防除効果を簡便に把握することができる。
【0027】
本発明における容器は、有効成分であるピレスロイド系化合物又はフェニルピラゾール系化合物から選ばれる少なくとも1種以上の化合物、溶剤であるジエチレングリコールモノエチルエーテルを含有する薬剤を収容する容器本体と、容器本体の開口を覆う蓋部とで構成されている。蓋部は、開口を有する箱状の容器本体の縁にシールされているので、上記薬剤は密閉されており、容器本体及び蓋部の一部を折ることにより上記薬剤を取り出すことができる。
【0028】
容器本体は、脂環式オレフィン系樹脂を含んでおり、例えば、脂環式オレフィン系樹脂単独、ポリエチレンを所定量混合又は共重合した脂環式オレフィン系樹脂、又はポリプロピレン、ポリエチレンなどの直鎖状等の非環式オレフィン樹脂と脂環式オレフィン系樹脂との積層構造物などのようなものが好ましい。このような容器本体を用いることにより、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルを用いたときにおいてもその薬剤を経時安定的に保持することができるとともに、容器本体及び蓋部から薬剤を容易に取り出すことができ、容器本体の強度を向上することができる。このように、本発明における容器本体は、脂環式オレフィン系樹脂を包含しているところ、脂環式オレフィン系樹脂を単独から構成されることもできるし、他の樹脂と組み合わせ使用することもできる。また、脂環式オレフィン系樹脂と他の樹脂を組み合わせるときにおいて、必ずしも脂環式オレフィン系樹脂が上記薬剤と直接当接するように設ける必要はなく他の樹脂に対して多層構造として構成され間接的に上記薬剤を内包するよう構成することもできる。
【0029】
蓋部は、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アルミニウムから選ばれる2つ以上の素材で積層されており、例えば、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンの4層からなる構造物、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート、脂環式オレフィン系樹脂の4層からなる構造物などのような積層物が好ましい。これらの各層は蒸着や接着剤等により接合することができる。このような蓋部を用いることにより、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルを用いたときにおいてもその薬剤を経時安定的に保持することができるとともに、容器本体及び蓋部の一部を折ることにより薬剤を容易に取り出すことができる。
【0030】
上記脂環式オレフィン系樹脂は、少なくともシクロプロペン、シクロブテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの単環式又は複環式の脂環式化合物を用いた重合体であり、それら脂環式化合物とエチレン、プロピレンなどのオレフィンとの共重合体であることが好ましく、ノルボルネンとエチレンの共重合体であることがより好ましい。脂環式オレフィン系樹脂を用いることにより、一般的な樹脂に対して浸潤性の高いジエチレングリコールモノエチルエーテルを溶剤に使用したとしても溶解又は膨潤することなく経時安定性に優れた防除具とすることができる。また、紫外線による劣化も生じにくいために太陽光に当たる場所に保管していたとしても経時安定性に優れた防除具とすることができる。脂環式オレフィン系樹脂として、延伸、無延伸のいずれでも使用することができる。
【0031】
そして、上記脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移温度は、40〜220℃であることが好ましく、60〜180℃であることがさらに好ましく、70〜90℃であることが好ましくい。上記脂環式オレフィン系樹脂のガラス転移温度が上記範囲にあると、使用に耐えうる強度を確保しながら所定の形状に加工しやく、さらに、成形した容器に内容される上記薬剤を取り出すときに手で折り曲げるなどして折れやすいので好ましい。なお、上記ガラス転移温度は、ISO 11375−1,−2,−3やJIS K 7121−1987などに準拠して示差走査熱量測定(DSC)を用いた方法で測定されたときの数値である。
【0032】
そして、上記脂環式オレフィン系樹脂の引張弾性率は、2000〜3500MPaであることが好ましく、2300〜3200MPaであることがさらに好ましく、2400〜2900MPaであることが最も好ましい。上記脂環式オレフィン系樹脂の引張弾性率が上記範囲にあると、使用に耐えうる強度を確保しながら所定の形状に加工しやく、さらに、成形した容器に内容される上記薬剤を取り出すときに手で折り曲げるなどして折れやすいので好ましい。なお、上記引張弾性率は、ISO 527やJIS K 7161〜7165などに準拠した方法で測定されたときの数値である。
【0033】
そして、上記脂環式オレフィン系樹脂の鉛筆硬度は、4H〜4Bであることが好ましく、2H〜2Bであることがさらに好ましく、H〜Bであることが最も好ましい。上記脂環式オレフィン系樹脂の鉛筆硬度が上記範囲にあると、使用に耐えうる強度を確保しながら所定の形状に加工しやく、さらに、成形した容器に内容される上記薬剤を取り出すときに手で折り曲げるなどして折れやすいので好ましい。なお、上記鉛筆硬度は、JIS K 5401などに準拠した方法で測定されたときの値である。
【0034】
そして、脂環式オレフィン系樹脂がそれら脂環式化合物とエチレン、プロピレンなどのオレフィンとの共重合体であるときには、脂環式化合物の含有割合が50〜90重量%であることが好ましく、60〜85重量%であることがさらに好ましく、62〜70重量%であることが最も好ましい。上記脂環式オレフィン系樹脂における脂環式化合物の含有割合が上記範囲にあると、使用に耐えうる強度を確保しながら所定の形状に加工しやすく、さらに、成形した容器に内容される上記薬剤を取り出すときに手で折り曲げるなどして折れやすいので好ましい。
【実施例】
【0035】
〔実施例1〕
有効成分であるピレスロイド系化合物としてフェノトリン16.0W/V%(質量濃度、以下同様)、アレスリン1.6W/V%、さらに昆虫成長制御剤としてピリプロキシフェン0.5W/V%に、そして、共力剤としてピペロニルブトキド4.0W/V%、溶剤であるジエチレングリコールモノエチルエーテルを添加し100W/V%とした薬剤を調製した。そして、240μmのフィルム状であり、ガラス転移温度78℃、引張弾性率2600MPa、鉛筆硬度HBであり、ノルボルネンとエチレンの共重合体(ノルボルネンの含有割合が65重量%)からなる脂環式オレフィン系樹脂の上下面を、30μmのフィル状である無延伸ポリプロピレンでサンドイッチのように挟んだ構造の容器本体となる材料及び、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、20μmのフィル状であるアルミニウム、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、30μmのフィル状であるポリプロピレンの4層である構造物の蓋部となる材料を前記薬剤に浸漬し、50℃の恒温槽に30日間静置したときの経時変化を確認する浸漬試験を行った。試験後に上記脂環式オレフィン系樹脂を取り出し、表面に付着した余分な上記薬剤を除去して質量の増減率及び外観上の変化を確認した。質量の増減率は、{(試験後の質量)−(試験前の質量)}/(試験後の質量)の百分率で算出し0%、すなわち質量の増減がないことが良好である。また、外観上の変化は存在しないことが良好である。
【0036】
そして、フィルム状の上記脂環式オレフィン系樹脂の表面に刃物で切り込みを入れ、その切り込みを入れた面を上にして手で折り曲げたときの折れやすさを官能評価した。特に強い力を加えなくても簡単に折れたものを「○」と評価し、柔らかすぎて折れないとか特に強い力を加えないと折れないものを「×」と評価し、「○」評価のものが良好である。
【0037】
〔実験例2〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体となる材料として、ポリエチレンを10重量%混合した400μmのフィル状の脂環式オレフィン系樹脂と、蓋部として、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、20μmのフィル状であるアルミニウム、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、30μmのフィル状である無延伸脂環式オレフィン系樹脂の4層である積層物を用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0038】
〔実施例3〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体となる材料として、500μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンを40重量%混合した30μmのフィル状の脂環式オレフィン系樹脂の2層である積層物と、蓋部として、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、20μmのフィル状であるアルミニウム、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンを40重量%混合した30μmのフィル状である延伸脂環式オレフィン系樹脂の4層である積層物を用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0039】
〔実施例4〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体となる材料として、500μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、30μmのフィル状の脂環式オレフィン系樹脂の2層である積層物と、蓋部として、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、20μmのフィル状であるアルミニウム、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンを40重量%混合した30μmのフィル状である延伸脂環式オレフィン系樹脂の4層である積層物を用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0040】
〔実施例5〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体となる材料として、400μmのフィル状の脂環式オレフィン系樹脂と、蓋部として、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、20μmのフィル状であるアルミニウム、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、30μmのフィル状である無延伸脂環式オレフィン系樹脂の4層である積層物を用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0041】
〔実施例6〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体となる材料として、400μmのフィル状の脂環式オレフィン系樹脂と、蓋部として、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、20μmのフィル状であるアルミニウム、12μmのフィル状であるポリエチレンテレフタレート、25μmのフィル状である延伸脂環式オレフィン系樹脂の4層である積層物を用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0042】
〔比較例1〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体及び蓋部の材料としてポリエチレンテレフタレートを用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0043】
〔比較例2〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体及び蓋部の材料としてポリエチレンを用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0044】
〔比較例3〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体及び蓋部の材料としてポリエチレンナフタレートを用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0045】
〔比較例4〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体及び蓋部の材料としてポリ塩化ビニルを用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0046】
〔比較例5〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体及び蓋部の材料としてポリフッ化ビニリデンを用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0047】
〔比較例6〕
実施例1と同じ薬剤を調製し、容器本体及び蓋部の材料としてエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いた以外は実施例1と同様に浸漬試験を行った。また用いた樹脂の折れやすさも実施例1と同様に評価した。
【0048】
以上の実施例1〜6の結果を表1に、そして、比較例1〜6の結果を表2にまとめて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1から、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルを含有する薬剤に浸漬しても容器本体及び蓋部に用いられる材料は、溶解も膨潤もすることなく全く変化がなかったとともに、外観上の変化もなく、さらに、特に強い力を加えなくても簡単に折れることが分かり、非常に有用であることが分かった。また、表2に示すように、他の素材を用いたときにはジエチレングリコールモノエチルエーテルによる膨潤や軟化が見られ、簡単に折れないものも散見された。これらのことから、溶剤としてジエチレングリコールモノエチルエーテルを含有する薬剤を収容する容器本体の素材として、脂環式オレフィン系樹脂を用いることで、また、蓋部の素材として、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アルミニウムから選ばれる4つの素材で積層された積層物を用いることで、上記薬剤による容器の変形及びそれによる経時劣化が極めて生じにくく、内容物である上記薬剤を簡単に取り出すことができることが示された。