【実施例】
【0099】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0100】
化合物およびポリマーの同定
下記実施例で得られた化合物およびポリマーの
1H NMR、元素分析およびゲル浸透クロマトグラフ法 (GPC) を以下のようにして実施した。
【0101】
(a)
1H NMR
下記実施例で得られた化合物およびポリマーの
1H NMR を、JEOL ECS-400を用いて実施した。
【0102】
(b)元素分析
下記実施例で得られた化合物の元素分析を、MICRO CORDER JM10 (J-SCIENCE)を用いて実施した。
【0103】
(c)ゲル浸透クロマトグラフ法 (GPC)
下記実施例で得られたポリマーの数平均分子量(Mn) および重量平均分子量 (Mw) を、GPC により測定した。詳しくは、HLC-8020(東ソー)およびGPCカラム (KF-802.5, Shodex) を用い、THFを展開溶媒とし、40 ℃で流速1.0 mL min
-1の条件で測定を行った。Mn および Mw は標準ポリスチレンを用いてキャリブレーションした。
【0104】
実施例1:ポリマーP-Si の合成
(a)化合物S1 の合成
【0105】
【化6】
【0106】
4-ブロモ-4'-ヒドロキシビフェニル (2.5 g, 10 mmol)、炭酸カリウム (2.8 g, 20 mmol)、18-クラウン-6 (0.26 g, 1.0 mmol)、KI (0.17 g, 1.00 mmol)、および1,6-ジブロモヘキサン (4.9 g, 20 mmol) を50 mLのアセトンに懸濁し、50 ℃で24 時間撹拌した。沈殿物を濾別し、溶媒を留去した。残渣にヘキサンを加えて、生成した沈殿物を濾過により回収した。得られた固体をジクロロメタンに溶解し、水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して、化合物S1 の白色結晶3.3 g (8.0 mmol) を収率80%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ): 7.52 (dd, J = 11.6 and 1.3 Hz, 2H; 2,6-H in biphenyl), 7.49 (dd, J = 11.9 and 1.1 Hz, 2H; 3',5'-H in biphenyl), 7.42 (dd, J = 9.3 and 1.4 Hz, 2H, 3,5-H in biphenyl), 6.96 (dd, J = 10.2 and 2.5 Hz, 2H; 2',6'-H in biphenyl), 4.00 (t, J = 6.5 Hz, 2H; OCH
2), 3.43 (t, J = 6.3 Hz, 2H; BrCH
2), 1.91-1.89 (m, 2H; OCH
2CH
2), 1.84-1.81 (m, 2H; BrCH
2CH
2), and 1.55-1.51 (m, 4H; BrCH
2CH
2CH
2CH
2).
【0107】
(b)化合物S2 の合成
【0108】
【化7】
【0109】
化合物S1 (3.2 g, 7.8 mmol)、PdCl
2(PPh
3)
2(0.16 g, 0.23 mmol)、CuI (95 mg, 0.31 mmol) およびPPh
3(81 mg, 0.31 mmol)を30 mLのトリエチルアミンに溶解し、アルゴン雰囲気下で撹拌した。この溶液に1.5 gのトリメチルシリルアセチレン (15 mmol)をゆっくりと加え、反応混合物を 80 ℃で65 時間撹拌した。溶媒を留去した後、残渣をジクロロメタンに溶かし、水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン = 1/6 (体積比))で精製し、1.9 g (4.4 mmol)の化合物S2 を収率56%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ): 7.59-7.32 (m, 6H; CH in biphenyl), 6.97 (dd, J = 9.8 and 1.5 Hz, 2H; CH in biphenyl), 4.00 (t, J = 6.9 Hz, 2H; OCH
2), 3.43 (t, J = 6.2 Hz, 2H; BrCH
2), 1.90-1.85 (m, 2H; OCH
2C
H2), 1.83-1.78 (m, 2H; BrCH
2C
H2), and 1.55-1.48 (m, 4H; CH
2), and 0.26 (s; 9H; Si(CH
3)
3).
【0110】
(c)化合物M-Si の合成
【0111】
【化8】
【0112】
化合物S2 (1.9 g, 4.4 mmol)、メタクリル酸 (0.75 g, 9.0 mmol) および炭酸セシウム (1.50 g, 4.50 mmol)を25 mLのDMF に加え、アルゴン雰囲気下にて室温で24 時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、残渣をジクロロメタンに溶解して飽和食塩水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン = 1/2 (体積比))で精製した。さらに、エタノール/水の混合溶媒(1/10 (体積比))から再結晶し、1.4 gの化合物M-Si (3.2 mmol)を収率73%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ): 7.54-7.49 (m, 6H; 2,3,5,6,2',6'-H in biphenyl), 6.95 (dd, J = 9.9 and 1.4 Hz, 2H; 3',5'-H in biphenyl), 6.09 (s, 1H; Z-CHCCH
3), 5.55 (s; 1H, E-CHCCH
3), 4.18 (t, J = 6.6 Hz, 2H; COOCH
2), 3.99 (t, J = 6.0 Hz, 2H; PhOCH
2), 1.94 (s, 3H; CH
3CCH
2), 1.82 (quint, J = 5.6 Hz, 2H; COOCH
2CH
2), 1.72 (quint, J = 5.9 Hz, 2H; PhOCH
2CH
2), 1.43-1.53 (m, 4H Hz, 2OCH
2CH
2CH
2), and 0.26 (s, 9H; Si(CH
3)
3).
元素分析. calcd for C
27H
34O
3Si
7: C 74.61, H 7.88, Si 6.46; found: C 74.47, H 7.94.
【0113】
(d)ポリマーP-Si の合成
【0114】
【化9】
【0115】
M-Si (1.4 g, 3.2 mmol)と2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル) (AIBN) (26 mg, 0.16 mmol)を14 mLのDMFに溶解し、凍結融解サイクルを繰り返して脱気した。この溶液を60 ℃で48 時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、300 mLのメタノール中に注ぎ、生成ポリマーを沈殿させた。得られたポリマーをジクロロメタンに溶かし、大量のメタノールから再沈殿を行って精製した。沈殿物を回収し、減圧乾燥を行って、1.2 gのポリマーP-Si を転化率86%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ): 7.51-7.40 (br, 6H; 2,3,5,6,2',6'-H in biphenyl), 6.92-6.80 (br, 2H; 3',5'-H in biphenyl), 4.11-3.79 (br, 4H; 2 OCH
2), 1.79-1.59 (br 5H; CH
3and COOCH
2CH
2), 1.51-1.23 (br, 6H; PhOCH
2CH
2CH
2CH
2), 1.18-0.92 (br, 2H; CH
3CCH
2), and 0.24 (s, 9H; Si(CH
3)
3).
Mn = 1.9 x 10
4, Mw/Mn = 3.5
【0116】
実施例2:ポリマーP-H の合成
【0117】
【化10】
【0118】
ポリマーP-Si (0.67 g, 1.5 mmol) を15 mLのTHF に溶かし、この溶液に3.1 mLのフッ化テトラブチルアンモニウムのTHF 溶液 (1.0 M) を加えた。反応溶液を室温で 5 時間撹拌した。反応混合物に水を加え、ポリマーをジクロロメタンで抽出した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をエバポレーションにより濃縮した。得られた溶液を大量のメタノールに注ぎ、沈殿したポリマーを回収し、減圧乾燥して、0.50 gのポリマーP-H を転化率75%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ): 7.52-7.41 (br, 6H; 2,3,5,6,2',6'-H in biphenyl), 6.91-6.81 (br, 2H; 3',5'-H in biphenyl), 4.12-3.78 (br, 4H; 2 OCH
2), 3.09 (s, 1H; PhC≡CH), 1.80-1.58 (br 5H; CH
3 and COOCH
2CH
2), 1.51-1.23 (br, 6H; PhOCH
2CH
2CH
2CH
2), and 0.90-1.09 (br, 2H; CH
3CCH
2).
Mn = 1.6 x 10
4, Mw/Mn = 3.5
【0119】
実施例3:ポリマーP-C4の合成
(a)化合物S3 の合成
【0120】
【化11】
【0121】
4-ブロモ-4'-ヒドロキシビフェニル (2.0 g, 8.0 mmol)、6-クロロ-1-ヘキサノール (1.6 g, 12 mmol)、炭酸カリウム (2.2 g, 16 mmol)、およびヨウ化カリウム (68 mg, 0.40 mmol) を50 mLのDMFに懸濁させ、100℃で13時間撹拌した。混合溶液をジクロロメタンで抽出し、有機相を分離し、水、飽和食塩水の順で洗浄した。洗浄した有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)で精製し、1.6 g (4.6 mmol)の化合物S3を収率58%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3,δ): 7.51 (dd; J = 5.0 and 1.8 Hz; 2H; 3,5-H in biphenyl), 7.50 (dd; J = 4.3 and 2.4 Hz; 2H; 2,6-H in biphenyl), 7.42 (dd; J = 4.5 and 2.1 Hz; 2H; 2',6'-H in biphenyl), 6.96 (dd; J = 6.8 and 1.8 Hz; 2H; 3',5'-H in biphenyl), 4.00 (t; J = 6.59 Hz; 2H; OCH
2), 3.67 (m; 2H; HOCH
2), 1.86-1.76 (m; 2H; OCH
2CH
2), 1.66-1.56 (m; 2H; O(CH
2)
4CH
2), 1.52-1.40 (m; 4H; O(CH
2)
2CH
2CH
2), 1.24 (br; 1H; OH).
【0122】
(b)化合物S4 の合成
【0123】
【化12】
【0124】
化合物S3 (1.4 g, 3.9 mmol)、1-ヘキシン (0.89 g, 11 mmol)、PdCl
2(PPh
3)
2(0.12 g, 0.17 mmol)、CuI (53 mg, 0.28 mmol)、およびPPh
3 (58 mg, 0.22 mmol) を40 mLのトリエチルアミンに溶解し、80℃で22時間撹拌した。溶媒を留去した後、残渣をジクロロメタンに溶かし、水、飽和塩化アンモニウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル = 4/1 (体積比))で精製し、1.0 g (2.9 mmol) の化合物S4 を収率73%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ): 7.52-7.40 (m; 6H; 2,3,5,6,2',6'-H in biphenyl), 6.94 (dd; J = 5.0 and 1.8 Hz; 2H; 3',5'-H in biphenyl), 4.00 (t; J = 6.35 Hz; 2H; OCH
2), 3.67 (t; J = 6.4 Hz; 2H; HOCH
2), 2.43 (t; J = 7.0 Hz; 2H; ArCCCH
2), 1.82 (q; J = 6.9 Hz; 2H; ArOCH
2CH
2), 1.63-1.54 (m; 6H; HOCH
2CH
2, O(CH
2)
2CH
2, CH
3CH
2CH
2), 1.53-1.44 (m; 4H; HO(CH
2)
2CH
2, CH
3CH
2), 1.25 (s; 1H; OH), 0.96 (t; J = 7.24; 3H; CH
2CH
3).
【0125】
(c)化合物M-C4 の合成
【0126】
【化13】
【0127】
化合物S4 (1.3 g, 3.4 mmol)、塩化メタクリロイル (0.98 mL, 10 mmol)、およびトリエチルアミン(0.99 g, 9.5 mmol) を15 mLの超脱水THFに溶解し,アルゴン雰囲気下において室温で18時間撹拌した。溶媒を留去した後、残渣をジクロロメタンに溶かし、1M塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム)で精製し、0.5 g (1.2 mmol) の化合物M-C4 を収率35%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ): 7.54-7.42 (m; 6H; 2,3,5,6,2',6'-H in biphenyl), 6.95 (dd; J = 6.80 & 2.27 Hz; 2H; 3',5'-H in biphenyl), 6.10 (s; 1H; Z-CH=C), 5.55 (m; J =1.55 Hz; 1H; E-CH=C), 4.16 (t; J =6.55 Hz; 2H; OCOCH
2), 4.00 (t; J = 6.57 Hz; 2H; OCH
2), 2.43 (t; J = 7.01 Hz; 2H: ArCCCH
2), 1.94 (d; J = 1.70 Hz; 3H; CH
2=C(CH
3)C, 1.83 (q; J =6.91 Hz; 2H; OCOCH
2CH
2), 1.72 (q; J = 7.02 Hz; 2H; ArOCH
2CH
2), 1.67-1.61 (m; 2H; CH
3CH
2CH
2), 1.56-1.48 (m; 6H; CH
3CH
2, ArO(CH
2)
2(CH
2)
2), 0.955 (t; J = 7.25 Hz; 3H; CH
2CH
3).
【0128】
【化14】
【0129】
化合物M-C4 (0.50 g, 1.2 mmol)、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル) (AIBN) (0.011 mg, 0.065 mmol) を14 mL のDMFに溶解し、凍結融解サイクルを繰り返して脱気した。この溶液を60 ℃で48 時間撹拌した。混合溶液をジクロロメタンで抽出し,水,飽和食塩水の順で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去した。得られた固体をジクロロメタンに溶解し,大量のメタノールから再沈殿を行って精製した。沈殿物を回収し、減圧乾燥を行って、0.23 gのポリマーP-Si を転化率46%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ): 7.51-7.37 (br, 6H; 2,3,5,6,2',6'-H in biphenyl), 6.90-6.80 (br, 2H; 3',5'-H in biphenyl), 4.01-3.91 (br, 2H; OCH
2), 2.43-2.40 (br 2H; CH
2CH
2OCO), 1.73-1.25 (br, H; (CH
2)
3CH
2O, CH
3CCOO and (CH
2)
3CH
3, 1.15-0.97 (br, 2H; CH
2CCOO), 0.97-0.87 (br, 3H; (CH
2)
3CH
3).
Mn = 6.7 x 10
3, Mw/Mn = 2.2
【0130】
ポリマーの特性評価
得られたポリマーの相転移挙動、熱物性および光物理挙動を以下のようにして評価した。
(a)相転移挙動および熱物性
ポリマーP-Si、ポリマーP-H およびポリマーP-C4 の相転移挙動を、偏光顕微鏡(Olympus EX51TH)およびホットステージ (Instec, FP80 hot-stage およびmK1000 controller) を用いて観察した。なお、ポリマーの重量が5重量%減少した温度を前記ポリマーの熱分解温度と定義して、この熱分解温度を、昇温速度5.0 ℃ min
-1の条件で熱重量分析装置 (Shimadzu, DTG-60AH)を用いて測定した。前記ポリマーの相転移温度(ガラス転移温度(Tg)、液晶相−等方相転移温度)を、5.0 ℃ min
-1の昇温・降温速度の条件で示差走査熱量分析装置(DSC, SII, X-DSC7000)を用いて測定した。なお、ポリマーP-Si、ポリマーP-H およびポリマーP-C4 は、いずれも、ガラス転移温度(Tg)以下の温度ではガラス状態であり、液晶相−等方相転移温度超の温度では等方相の状態である。また、ポリマーP-SiおよびポリマーP-H は、ガラス転移温度超〜液晶相−等方相転移温度以下の温度ではネマチック相の状態であり、一方、ポリマーP-C4 は、ガラス転移温度超〜液晶相−等方相転移温度以下の温度ではスメクチック相の状態である。
【0131】
【表1】
【0132】
(b)光物理挙動
ポリマーP-Si およびポリマーP-H の紫外可視吸収スペクトルを、V-550分光光度計(日本分光)を用いて測定した。また、前記ポリマーの発光スペクトルを、F-7000蛍光分光光度計(日立ハイテク)を用いて測定した。詳しくは、固体および液晶状態のポリマーの発光スペクトルを、自作の温度調整ホルダーを分光器中に設置し、2枚の石英板 (10 mm × 30 mm × 1 mm) で挟みこんだ試料を用いて測定した。ポリマーの発光量子収率を、積分球(日立ハイテク)を用いて測定した。ポリマーの発光寿命を、パルス光源 (堀場製作所、NanoLED-375L、波長 = 402 nm、パルス幅 <100 ps (半値全幅)、周波数100 KHz)を励起光源として用い、TBX検出器(堀場製作所)で発光の減衰挙動を観察することで求めた。結果を下記表2に示す。ポリマーP-Si 中、その47%のポリマーの発光寿命は1ナノ秒であり、その53%のポリマーの発光寿命は8ナノ秒であった。また、ポリマーP-H 中、その54%のポリマーの発光寿命は1ナノ秒であり、その46%のポリマーの発光寿命は8ナノ秒であった。
【0133】
【表2】
【0134】
試験例1:ポリマーP-Si、ポリマーP-H およびポリマーP-C4 の発光スペクトル
実施例1および2で得られたP-Si、ポリマーP-H またはポリマーP-C4を、THF に溶かし、得られた溶液(濃度:10
-2 mol/L)を石英基板上にキャストし、次いで風乾により溶媒を除去することによって、石英基板上にポリマー膜(厚さ:1 μm)を調製した。得られたポリマー膜の室温での発光スペクトル(励起光の波長(λ
ex):333 nm)を測定した。ポリマーP-Si、ポリマーP-H、およびポリマーP-C4の発光スペクトルを
図1に示す。なお、
図1の点線がポリマーP-Si の発光スペクトルであり、破線がポリマーP-H の発光スペクトルであり、実線がポリマーP-C4である。
図1に示されるように、ガラス転移温度(Tg)以下でガラス状態であるポリマーP-Si、ポリマーP-HおよびポリマーP-C4 は、深青色光を発光した。
【0135】
試験例2:ポリマーP-Si、ポリマーP-H およびポリマーP-C4 の発光スペクトルの加熱による変化
試験例1で得られたポリマーP-Si、ポリマーP-H およびポリマーP-C4の膜を、ホットプレートを使用して、空気雰囲気下、5℃/分の速度で加熱し、発光スペクトル(励起光の波長(λ
ex):333 nm)の加熱による変化を測定した。ポリマーP-Si の結果を
図2に、ポリマーP-Hの結果を
図3に、ポリマーP-C4の結果を
図4に示す。ポリマーP-Si、ポリマーP-HおよびポリマーP-C4 は、加熱により発光スペクトルが変化した。また、ポリマーP-Si、ポリマーP-H およびポリマーP-C4 をガラス転移温度(Tg)よりも高い温度に加熱した場合(ポリマーP-Si のTg:86℃、ポリマーP-H のTg:71℃、ポリマーP-C4 のTg:50℃)、これらは、白色光を発光した。
【0136】
試験例3:ポリマーP-Si およびポリマーP-H の発光スペクトルの冷却による変化
試験例2の後、ポリマーP-Si およびポリマーP-H の膜を、温度センサーを備えた自作のホットプレートを使用して、温度コントローラーを使用して温度制御を行いながら、空気雰囲気下、5℃/分の速度で室温まで冷却し、発光スペクトル(励起光の波長(λ
ex):333 nm)の冷却による変化を測定した。ポリマーP-Si の結果を
図5に、ポリマーP-Hの結果を
図6に示す。加熱により変化した発光スペクトルは、再度冷却しても、
図1に示す加熱前の発光スペクトルに戻らなかった。また、加熱および冷却後に得られた配向性ガラス状態であるポリマーP-Si およびポリマーP-H は、室温でも白色光を発光した。
【0137】
試験例4:ポリマーP-Si およびポリマーP-H の発光スペクトルの機械的刺激による変化
試験例3で得られた配向性ガラス状態のポリマーP-Si の膜およびポリマーP-H の膜を、乳鉢を用いてすり潰して(即ち、機械的刺激を加えて)、ガラス状態のポリマーP-Si およびポリマーP-H を調製した。得られたガラス状態のポリマーP-Si およびポリマーP-H の室温での発光スペクトル(励起光の波長(λ
ex):333 nm)を測定した。ポリマーP-Si の結果を
図7に、ポリマーP-H の結果を
図8に示す。
【0138】
なお、
図7の実線が試験例1で測定した加熱前のポリマーP-Si の室温での発光スペクトルであり、点線が試験例3で測定した加熱後(150℃)のポリマーP-Si の発光スペクトルであり、破線が試験例4で測定した機械的刺激後のポリマーP-Si の室温での発光スペクトルである。また、
図8の実線が試験例1で測定した加熱前のポリマーP-H の室温での発光スペクトルであり、点線が試験例3で測定した加熱後(110℃)のポリマーP-H の発光スペクトルであり、破線が試験例4で測定した機械的刺激後のポリマーP-H の室温での発光スペクトルである。
【0139】
図7および8で示されるように、配向性ガラス状態であるポリマーP-Si およびポリマーP-H を、すり潰し(機械的刺激)によってガラス状態に戻すことによって、それらの発光が、白色光から深青色光に可逆的に変化した。
【0140】
試験例5:ポリマーP-Si およびポリマーP-H の偏光発光スペクトル
(a)ガラス板の洗浄および乾燥
ガラス板を、下記手順で洗浄および乾燥した。
(1) 超音波洗浄(中性洗剤): 30 分
(2) 流水洗浄: 30 分
(3) 超音波洗浄(純水): 30 分
(4) 流水洗浄: 30 分
(5) 超音波洗浄(2-プロパノール): 30 分
(6) 乾燥: 60 ℃
【0141】
(b)配向膜処理
2.5 重量%のポリアミド酸溶液(N−メチルピロリドン : γ-ブチロラクトンの体積比 = 1:2)を調製し、1 μm のメンブランフィルターで不溶分を除去した後、上記のようにして洗浄および乾燥したガラス板上に、スピンコーター(スピンコーター回転数および秒数、第1段階:300 rpm, 3 秒;第2段階:3000 rpm, 30秒)を用いて、ポリアミド酸の薄膜を製膜した。次いで、オーブン中で100℃で 1 時間、250℃で 2 時間加熱処理を行い、ポリアミド酸をイミド化させ、ポリイミドの薄膜を得た。
【0142】
(c)ラビング処理
上記のように形成したガラス板上のポリイミド膜表面を、脱脂綿を用いて同一方向に30回、手でこすった。
【0143】
(d)洗浄・乾燥
上記のようにラビング処理したガラス板上のポリイミド膜表面から、下記手順で付着物(繊維やポリイミドの切削屑)を除去した。
(1) 超音波洗浄(2-プロパノール): 10 分
(2) 乾燥: 60 ℃(オーブン)
【0144】
(e)偏光発光スペクトルの測定
上記のような処理を施したポリイミド膜付ガラス板上に、ポリマーP-Si またはポリマーP-H の膜(厚さ:1 μm)を作製し、ポリマーP-Si およびポリマーP-H の室温での偏光発光スペクトル(励起光の波長(λ
ex):333 nm)を測定した。詳しくは、F-7000蛍光分光光度計に、ラビング処理の方向(=ポリマーP-Si またはポリマーP-H のビフェニル構造の長軸の配向方向)対して平行または垂直となるように偏光子を設置し、ポリマーP-Si およびポリマーP-H の偏光発光スペクトルを測定した。
【0145】
ポリマーP-Si の室温での偏光発光スペクトルを
図9に、ポリマーP-H の室温での偏光発光スペクトルを
図10に示す。なお、
図9および10ではいずれも、実線がビフェニル構造の長軸の配向方向に平行な偏光発光スペクトルであり、点線がビフェニル構造の長軸の配向方向に垂直な偏光発光スペクトルである。
図9および10に示されるように、ガラス状態であるポリマーP-Si およびポリマーP-H は、偏光を発光した。