(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918356
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】立体駐車装置の緊急連絡装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20210729BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
E04H6/18 601F
E04H6/42 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-166930(P2017-166930)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-44413(P2019-44413A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228523
【氏名又は名称】日本ケーブル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】大庭 一彦
(72)【発明者】
【氏名】伊波 泰
【審査官】
伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−101525(JP,A)
【文献】
特開2017−89165(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3154098(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00 − 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体駐車装置の入出庫階内部に備えられた非常釦と、前記入出庫階の扉の閉状態を検出する扉閉検出器と、該扉閉検出器が扉の閉じたことを検出した状態で前記非常釦が操作された場合において、前記入出庫階内部で点灯する室内灯と、前記立体駐車装置の外部で発光する警報灯と、前記立体駐車装置の外部で音声を発するスピーカーと、を備えたことを特徴とする立体駐車装置の緊急連絡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体駐車装置の緊急連絡装置に関し、詳しくは駐車装置内部に人が閉じこめられた場合の緊急連絡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体駐車装置は、スペースの少ない土地に多数の車両を効率よく駐車できる駐車設備として住宅密集地等において広く利用されており、利用する土地の広狭や経済性などを考慮した種々の構造のものが提供されている。一般的に立体駐車装置には、一箇所または複数箇所に入出庫スペースが設けられており、駐車する車両は自走により入出庫スペースへの出入りを行う。入出庫スペースと駐車スペースとの間には、車両を搬送する搬送装置を備えており、入出庫スペースにおいて搬送装置上に車両を搭載し、所定の駐車スペースへと車両を搬送して格納する。入出庫スペースの入出庫口には、外部との空間を遮断する扉が設けられており、立体駐車装置が動作するときには扉を閉鎖して人が装置内へ進入しないようになっている。立体駐車装置外部の扉近傍には立体駐車装置の運転を操作する運転操作盤が設けられており、これを駐車装置の管理人あるいは車両の運転者自身が操作することにより、扉の開閉や搬送装置の動作が行われる。
【0003】
近年、立体駐車装置は、商業施設での利用に加えてオフィスビルやマンション等の集合住宅に併設されて利用されることも多く、この場合には、駐車装置の管理人が常駐することなく、特定の利用者自身が立体駐車装置の運転操作を行うことが多い。しかしながら、このように専門の管理人の操作によらず、利用者自身の操作により立体駐車装置を動作させる場合には、利用者の注意不足や確認不足により、立体駐車装置内に他の人が取り残された状態で扉が閉じられてしまう可能性がある。例えば、出庫時には利用者が車両を運転して入出庫スペースから退出し、この後、立体駐車装置の運転操作を行うため、他の人が立体駐車装置内に取り残されることはほとんどない。これに対して入庫時には、同乗者を乗せたまま入出庫スペースに進入し、この後同乗者の退出を確認しないまま運転操作を行うと、同乗者が立体駐車装置内に閉じこめられてしまうといった可能性がある。
【0004】
このようなことから従来、立体駐車装置内の人の存在を確認する方法として、光電センサにより人を検知する技術(例えば、特許文献1参照)、撮像装置により画像を撮像しこれを画像処理して検知する技術(例えば、特許文献2参照)、マイクロ波を照射してドップラーセンサにより検知する技術(例えば、特許文献3参照)、等が知られており、これらにより人の存在が検知されると立体駐車装置の運転ができないようにしている。また、駐車場内で生じる音を集音し、この音を判定することにより駐車場内に人が閉じ込められていることを検知する技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−59839号公報
【特許文献2】特開2002−167996号公報
【特許文献3】特開平9−228679号公報
【特許文献4】特開平6−257315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来提案された技術は、各種センサを極力死角のないように配置して人の存在を検知するようにしたものであるが、センサの故障や検知不良等により人の存在を検知できない状態となる事態も少なからず想定され、この場合には、前述したように人が立体駐車装置内部に閉じ込められてしまう可能性がある。そして、このような場合には、立体駐車装置内部からは立体駐車装置の運転を行うことができないため、次の利用者等が運転操作盤を操作するまでは扉が開かないという事態を生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、立体駐車装置内部に人が閉じ込められてしまった場合に、速やかに救出することのできる立体駐車装置の緊急連絡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、立体駐車装置の入出庫階内部に備えられた非常釦と、前記入出庫階の扉の閉状態を検出する扉閉検出器と、該扉閉検出器が扉の閉じたことを検出した状態で前記非常釦が操作された場合において、前記入出庫階内部で点灯する室内灯と、前記立体駐車装置の外部で発光する警報灯と、前記立体駐車装置の外部で音声を発するスピーカーと、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、立体駐車装置の内部に取り残された人は、外部の人に閉じ込められたことを知らせることができ、また、照明の灯った入出庫階内部で待機することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び
図2は、立体駐車装置の概略を示す側面図及び正面図であり、本説明においては、具体例としてエレベータ式立体駐車装置を示して説明を行う。立体駐車装置10の内部には、中央を上下に貫通する昇降路11が形成されており、この昇降路11を昇降可能に昇降リフト12を設けている。昇降リフト12は、車両19を搭載する搬器13の四隅にワイヤロープ14を連結し、このワイヤロープ14を立体駐車装置10の上部に設けた巻き上げ装置(図示せず)により、巻き上げ又は繰り出しすることにより搬器13を昇降駆動するようにしたものである。
【0012】
昇降路11の両側方には、複数の駐車室17が上下多段に形成されており、各駐車室17には、それぞれ車両19を搭載するためのパレット18を備えている。この立体駐車装置10においては、地上1階部分を車両19の入出庫階15としており、車両19の入退出方向16は、搬器13の長手方向に対して直交する方向に設定されている。車両19が格納されていない何れかの駐車室17にある空のパレット18は、搬器13上へスライド(横行)させられた後、搬器13とともに入出庫階15に降下して停止する。入出庫階15の下方には、パレット18を旋回して向きを変えるパレット旋回装置20を備えており、入出庫階15に到着したパレット18は、このパレット旋回装置20により90°旋回させられて、その長手方向が車両19の入退出方向16となるように方向転換して待機する。
【0013】
車両19の入庫時には、車両19が自走してパレット18上へと乗り込んだ後、車両19及びパレット18は、パレット旋回装置20により90°旋回させられて搬器13上に載置される。そしてこの後搬器13は、元の駐車室17の位置、すなわち、パレット18を取り出して空になった駐車室17まで車両19及びパレット18を搬送し、この後パレット18ごと車両19を横行させて格納する。車両19の出庫時は、これと逆の動作であり、車両19が格納された駐車室17まで空の搬器13が移動した後、駐車室17からパレット18および車両19を搬器13上へ横行させる。この後、搬器13が下降して入出庫階15に到着すると、車両19及びパレット18がパレット旋回装置20により90°旋回させられ、運転者が車両19に乗り込んで車両19を運転して立体駐車装置10から退出する。
【0014】
図3は、入出庫階15の平面図である。入出庫階15の出入り口には、引き戸式の扉22を備えており、扉22近傍の外壁には、運転操作盤21を備えている。運転操作盤21には、入出庫を選択する釦類やタッチパネル等を備えており、利用者が運転操作盤21を操作することにより立体駐車装置10が作動する。入庫時には、利用者は車両19を扉22の前方で車両19を停車させ、運転操作盤21を操作すると扉22が開いて車両19の進入が可能になる。次いで、利用者が車両19を運転して入出庫階15の所定位置に車両19を停車させた後、利用者が退出して運転操作盤21を操作すると、扉22が閉じた後にパレット旋回装置20および搬器13が動作して所定の駐車室17に車両19が格納される。出庫時は、立体駐車装置10の扉22は閉じられた状態であり、この状態で利用者は車両19が格納された駐車室17の指定や装置の運転開始等の操作を運転操作盤21にて行う。車両19が駐車室17から運搬されて入出庫階15にて出庫可能な状態になると、扉22が自動的に開いた後、利用者が内部へ入構し車両19を運転して退出する。その後利用者は、一旦車両19を停車させ、運転操作盤21を操作して扉22を閉じる。
【0015】
このような立体駐車装置10の構成において、入出庫階15の内部壁面には非常釦23および室内灯30を備え、入出庫階15またはピット24内には、自動通報器25、回線接続器26、および各機器へ電力を供給するバッテリー27を備えている。また、立体駐車装置10の外部には、回線接続器26に接続されたアンテナ28を備えるとともに、扉22の開閉位置には扉閉検出器29を備え、また、運転操作盤21付近には、警報灯31およびスピーカー32を備えている。このような構成により、入出庫階15内に人が閉じ込められたときには以下のように動作する。
【0016】
非常釦23は照光式の釦であって、扉22が閉じられて入出庫階15内が暗くなってもこれを認識することができる。そして、入出庫階15内に閉じ込められた人が扉22が閉じた状態、すなわち扉閉検出器29が扉22の閉状態を検出した状態で非常釦23を操作すると、室内灯30が点灯するとともに立体駐車装置10の外部に備えた警報灯31が発光し、また、スピーカー32からは、立体駐車装置10内に人がいる旨の音声が発せられる。これにより、内部に閉じ込められた人は、室内灯30の照明により入出庫階15内が明るい状態で安心して待機することができ、また、立体駐車装置10の外部に人がいた場合には、この人に立体駐車装置10内に人がいることを速やかに知らせることができる。
【0017】
一方、上記のように非常釦23が操作されると、同時に非常釦23の信号が自動通報器25へ入力され、また、扉閉検出器29は、扉22が閉じられていることを検出して、この信号が自動通報器25へ入力される。自動通報器25には、管理センターや保守点検員等の緊急連絡先の電子メールアドレスや、閉じ込められたことを示す送信内容等が設定されており、自動通報器25に非常釦23および扉閉検出器29からの信号が共に入力されると、自動通報器25は設定された電子メールの送信先等の信号を回線接続器26へ発信する。この信号により回線接続器26は、携帯電話回線やインターネット回線等の通信回線にアンテナ28を介して接続するとともに、緊急連絡先へ電子メールを送信する。保守点検員等は、この電子メールをパーソナルコンピューターや携帯端末等により受信し、直ちに当該立体駐車装置10へ出動したり、管理センターからの遠隔操作にて立体駐車装置10に扉22を開放し、立体駐車装置10内に閉じ込められた人を救出する。
【0018】
このように、本発明の立体駐車装置10の緊急連絡装置は、立体駐車装置10内に閉じ込められた人が非常釦23を操作することにより、立体駐車装置10外部の人が閉じ込められた人の存在を感知することができ、閉じ込められた人を速やかに開放することができる。また、非常釦23を操作により、閉じ込められたことが自動的に緊急連絡先へ送信されるので、緊急連絡の操作が容易に行えるとともに、緊急連絡先は速やかにこの状態、すなわち人が閉じ込められた状態を察知することができる。また、上記のように構成された各機器類は、バッテリー27により電力が供給されて動作するので、例えば停電時であっても各機器類の動作が可能であり、さらに安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0019】
10 立体駐車装置
11 昇降路
12 昇降リフト
13 搬器
14 ワイヤロープ
15 入出庫階
16 入退出方向
17 駐車室
18 パレット
19 車両
20 パレット旋回装置
21 運転操作盤
22 扉
23 非常釦
24 ピット
25 自動通報器
26 回線接続器
27 バッテリー
28 アンテナ
29 扉閉検出器
30 室内灯
31 警報灯
32 スピーカー