(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918360
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】クリップ装置
(51)【国際特許分類】
C25D 17/08 20060101AFI20210729BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
C25D17/08 G
C25D17/06 A
C25D17/08 R
C25D17/08 J
C25D17/08 E
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-44894(P2018-44894)
(22)【出願日】2018年3月13日
(65)【公開番号】特開2019-157194(P2019-157194A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】508171228
【氏名又は名称】株式会社エリアデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】川崎 美智雄
【審査官】
岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−031438(JP,A)
【文献】
特開平06−306691(JP,A)
【文献】
特開2005−200669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/08
F16B 2/00 − 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ装置の各槽を移動するワークを吊下するためのクリップ装置において、
前記メッキ装置の各槽に沿って移動する陰極バーに一端が固定されて吊下される吊下ロッドを具備する吊下部と、該吊下部の所定の位置に回動支点を有する一対のクリップアームとによって構成され、
前記クリップアームは、前記回動支点の上方に位置し、前記陰極バーの移動方し、前記ワークを保持するためのワーク保持部とを具備し、
前記吊下ロッドの前記回動支点の下方側に延出した部分を、前記クリップアームの開閉方向のぶれを防止するストッパとしたことを特徴とするクリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをクリップしてメッキ装置内の各槽内を移動させるワークのクリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2000−178796号公報)は、被メッキ処理物を摺動自在なハンガーを介し吊持してエンドレスの搬送手段によって搬送するハンガーレールと、該ハンガーレールに祖って併設された搬送間隔調整装置とを設け、前記ハンガーレールに吊持されたハンガー及び被メッキ処理物を前記搬送間隔調整装置によって持ち上げると共に、前記搬送手段の搬送速度よりも早い速度で搬送方向へ移動させ、先行したハンガーの被メッキ処理物と当該被メッキ処理物との間隔を制御装置を介して所望の間隔にして前記持ち上げたハンガーを効果冴えて前記ハンガーレールに移し替え、隣接するハンガーにおける被メッキ処理部を所望の一定間隔で連続的にハンガーレールで搬送させる搬送方法を開示する。
【0003】
この特許文献1において、ハンガーは、金属製の本体の左右方向の端部に、起立して延出された係止片が設けられ、本体後方にはタイミングベルトを固着するブロックをボルト等で固定する膨出部が設けられ、本体前方にはハンガー持ち上げ用の部材を嵌装させる所要巾の間隔を形成する係止部材がボルト等で固定され、前記本体から垂設される2本の脚部の間には、横架材が固着され、この横架材の左右方向の両端部にボルト孔が設けられ、ボルト等で吊持部材がそれぞれ垂下されて固定され、前記両吊持部材にはそれぞれクランプ部材が設けられ、このクランプ部材と前記吊持部材との下端部で、プリント基板を挟持することが開示されている。
【0004】
特許文献2(特開2006−117979号公報)は、横幅サイズが大小異なる矩形の基板製品の上部両端側を確実に支持できるようにし、薄い基板製品を液中搬送しながらメッキする場合に該基板製品の両端側が液抵抗などによって折り曲げられるのを防止するためのワークハンガーを開示する。
【0005】
特許文献2に開示されるワークハンガーは、水平な陰極バーに沿って移動自在に支持される支持部と、この支持部の下方に接続的に設けられた横長基板部と、この横長基板部に水平方向に所定間隔をおいて取り付けられ、矩形の基板製品の上部を着脱自在に挟持して、基板製品を水平方向に向けられた横長の垂直姿勢に吊り下げ支持する複数の挟持用クランプから成り、前記横長基板部の両端側に取り付けられる前記挟持用クランプを、前記横長基板部の端部から離間される水平方向にスライド移動され且つスライド移動位置で該横長基板部に固定されるスライド可動クランプとして構成したことを特徴とするものである。
【0006】
特許文献3(特開2017−31438号公報)に開示されるサクションめっき装置は、一対のアームと、一対のアームの先端にお互いに対向して設けられた電極部を具備し、前記一対のアームが、コンベアから延出するロッドに設けられた回動支点に支持部を介して回転可能に支持されるクリップを具備する。このクリップは、クリップ開閉コロが開閉レールに沿って移動し内側方向に付勢されることによって前記電極部が開き、またクリップ開閉コロが開閉レールに沿って移動し内側への付勢が解除されることによってスプリング力によってワークを挟持するようになっているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−178796号公報
【特許文献2】特開2006−117979号公報
【特許文献3】特開2017−31438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されるようなシート状のワークを保持してメッキ装置の各槽内を順次搬送する従来のクリップにおいては、ワークにある程度の強度がある場合にはさほど影響がなかったが、ワークが薄い場合には液抵抗などのよって折れ曲がるという不具合があった。このため、特許文献2に開示されるハンガーでは、ワークが薄い場合の折れ曲がり等の不具合を解決するために、横幅サイズが大小異なる基板製品の横幅方向の上部両端側を各自に支持できるようにしたものである。また、特許文献3では、自動によりクリップを開閉する機構が開示されている。
【0009】
特に特許文献3に開示される自動によってワークがクリップされる構造では、クリップを開閉するためのクリップの両側からかかる力のバランスが不均衡になった場合、あるいは、力点から伝わる力のタイミングに時間差が生じた場合、クリップが支点を中心に左右へのぶれるという不具合が生じることから、クリップ接触面がずれてしまい、ワークを掴み損ねたり、ワークを傷つけたりするという不具合が生じる。
【0010】
このため、本発明は、薄いワークでも安定して挟持することできるクリップ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明は、メッキ装置の各槽を移動するワークを吊下するためのクリップ装置において、前記メッキ装置の各槽に沿って移動する陰極バーに一端が固定されて吊下される吊下部と、該吊下部の所定の位置に回動支点を有する一対のクリップアームとによって構成され、前記クリップアームは、前記回動支点の上方に位置し、前記陰極バーの移動方向に沿って延出するレールに当接する回転ローラと、前記回動支点の下方に位置し、前記ワークを保持するためのワーク保持部とを具備し、前記回動支点の下方側に延出した部分を、前記クリップアームの開閉方向のぶれを防止するストッパーとしたことにある。さらに、前記一対のクリップアームは、クリップアームの閉方向にスプリング等の付勢手段によって付勢されていることが望ましい。
【0012】
これによって、前記クリップアームは、前記レールの幅が狭くなった場合に、前記回転ローラがレールに沿って移動し、前記一対のクリップアームの上端を狭める方向に移動するため、前記回動支点を支点として前記クリップアームの下方に位置する前記ワーク保持部が開くことになる。また、前記レールの幅が広がった場合には、前記回転ローラが一対のクリップアームを付勢する力が解除されるので付勢手段によってクリップアームの上端が開き、これに伴ってクリップアームの下方に位置するワーク保持部が閉じるので、ワークをクリップすることができるものである。
【0013】
また、前記吊下部の前記回動支点の下方側に所定長さ延出した部分をクリップアームの開閉方向のぶれを防止するストッパーとしたことから、クリップアーム全体が開閉方向に傾斜することを防止することができるものである。例えば、オーバースイング等によってクリップアーム全体が右側に傾斜しようとした場合、左側のクリップアームが、ストッパによって傾斜が防止され、所定の位置に保持されるため、右側のクリップアームが傾斜したとしても、右側のクリップアームの傾斜が解除された場合に、右側クリップアームが左側クリップアームに合致するので、傾斜しずれたままクリップすることがないため、確実にワークを保持することができるものである。
【0014】
さらに、前記ストッパと左右のクリップアームの間のクリアランスは、0.2mm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、一対のクリップアーム(クリップアーム全体)が、左右のレールのアンバランスや回転ローラへの力のタイミングの差などから、クリップアームがオーバスイング等によって左右のぶれが生じても、一方の側のクリップアームがストッパによって所定の位置に保持されるので、一対のクリップアームがずれた状態でワークを挟むことがなくなる、このため、本発明によれば、シート状の薄物ワークを確実に搬送できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係るクリップ装置の閉じた状態を示した概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係るクリップ装置の開いた状態を示した概略構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例に係るクリップ装置のストッパの効果を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について、図面により説明する。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例に係るクリップ装置1は、例えば
図1乃至
図3に示すように、メッキ装置の各槽を移動するワークを吊下するためのものであって、前記メッキ装置の各槽に沿って移動する陰極バー2に一端が固定されて吊下される吊下部3と、この吊下部3の所定の位置に回動支点4A,5Aを有する一対のクリップアーム4,5とによって構成される。
【0019】
前記吊下部3は、前記陰極バー2に固定部6を介して固定されると共に鉛直方向下方に延出する吊下ロッド3Aと、この吊下ロッド3Aの所定位置に固定され、前記吊下前記回動支点4A,5Aが設けられる支点プレート3Bとによって構成される。前記吊下ロッド3Aは、前記支点プレート3Bが固定される位置の下方に、所定の長さで延出すると共に所定の幅を有するストッパ3Cを具備する。
【0020】
前記クリップアーム4,5は、前記回動支点4A,5Aの上方に延出する力点部4B,5Bと、前記回動支点4A,5Aの下方に延出する作用部4C,5Cとによって構成され、作用部4C,5Cの先端近傍には、ワークをクリップするためのワーク保持部4D,5Dが設けられる。このワーク保持部4D,5Dはワークに陰極を印加するための電極部も兼ねるもので、前記作用部4C,5Cの先端にお互いが対向して設けられるものである。
【0021】
前記クリップアーム4,5の力点部4B,5Bは、その上端部に回転ローラ4E,5Eが設けられ、それぞれワークの搬送方向に沿って設けられたレール7,8に当接するようになっている。また、前記力点部4B,5Bと前記吊下部3の吊下ロッド3Aとの間には、それぞれ前記力点部4B,5Bを外側に付勢する方向、言い換えると前記作用部4C,5Cによってワークをクリップする方向に付勢するスプリング9,10が設けられる。
【0022】
また、前記ストッパ3Cは、前記クリップアーム4,5の作用部4C,5Cの間の隙間に対応した幅及び長さを有するものであり、その幅はストッパ3Cとクリップアーム4,5のそれぞれとの間のクリアランスが0.1mm以下となるように設定されるものである。
【0023】
図1は、前記回転ローラ4E,5Eがレール7,8にそれぞれ力が加わらない程度の当接しているか、すこし離れている状態を示している。このように、力点部4B,5Bに前記吊下ロッド3A側に付勢力が働かないことから、スプリング9,10によって力点部4B,5Bが外側方向に付勢されるため、作用部4C,5Cが閉じる方向に付勢され、前記ワーク保持部4D,5Dによってワークがクリップされるものである。
【0024】
図2は、前記回転ローラ4E,5Eがレール7,8によって回転ローラ4E,5Eがお互い接近する方向に付勢されている状態を示している。このように、力点部4B,5Bが内側方向にスプリング9,10の付勢力に抗して付勢されるため、作用部4C,5Cが開く方向に付勢され、前記ワーク保持部4D,5Dによってワークが開放されるものである。
【0025】
図3は、レール7によって前記回転ローラ4Eにかかる付勢力F1と、レール8によって前記回転ローラ5Eにかかる付勢力F2とのバランスが崩れた場合、例えばF1>F2の場合を示している。このように、F1がF2よりも大きい場合には、クリップアーム4,5は全体として時計方向に傾斜するが、図面右側のクリップアーム5は、ストッパ3Cによって時計方向への傾斜が阻止されるため、正しい位置を保持することができる。このため、レール7,8によって回転ローラ4E,5Eにかかる付勢力F1及びF2が解除された場合に、ストッパ3Cによって正しい位置に保持される右側のクリップアート5に向かって左側のクリップアーム4が移動することができるので、
図1に示す状態に戻ることができる。これによって、ワーク保持部4D,5Dによってワークを確実のクリップすることができるものである。
【符号の説明】
【0026】
1 クリップ装置
2 陰極バー
3 吊下部
3A 吊下ロッド
3B 支点プレート
3C ストッパ
4,5 クリップアーム
4A,5A 回動支点
4B,5B 力点部
4C,5C 作用部
4D,5D ワーク保持部
4E,5E 回転ローラ
6 固定部
7,8 レール
9,10 スプリング