特許第6918404号(P6918404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6918404沓摺り用カバーおよびこれを用いた既設沓摺りの改修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918404
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】沓摺り用カバーおよびこれを用いた既設沓摺りの改修方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/70 20060101AFI20210729BHJP
   E06B 1/34 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   E06B1/70 F
   E06B1/34 A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-78796(P2017-78796)
(22)【出願日】2017年4月12日
(65)【公開番号】特開2018-178513(P2018-178513A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000150006
【氏名又は名称】日本総合住生活株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597053522
【氏名又は名称】リフォジュール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】特許業務法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 忠文
(72)【発明者】
【氏名】安田 太郎
【審査官】 鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−098583(JP,A)
【文献】 実開平01−177387(JP,U)
【文献】 特開2011−163096(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0003162(KR,A)
【文献】 特開2011−122340(JP,A)
【文献】 特開平10−246071(JP,A)
【文献】 特開平11−287069(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0130826(US,A1)
【文献】 実開昭59−092187(JP,U)
【文献】 特開2004−107877(JP,A)
【文献】 実開昭57−135692(JP,U)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0010620(KR,A)
【文献】 特開2002−038822(JP,A)
【文献】 実開昭49−119041(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00−1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内側から室外側に向かって順に、室内見付け面、主沓摺り面、立上り面、副沓摺り面および室外見付け面を有する既設沓摺りの表面を覆う沓摺り用カバーであって、
前記室内見付け面および前記主沓摺り面を覆う断面「L」字状の第1カバー部材と、
前記副沓摺り面および前記室外見付け面を覆う断面「L」字状の第2カバー部材と、
前記立上り面および前記副沓摺り面を覆う断面「L」字状の第3カバー部材と、を備え、
前記第2カバー部材と前記第3カバー部材とは、前記副沓摺り面上において見込み方向にオーバーラップすることを特徴とする沓摺り用カバー。
【請求項2】
前記室内側は、浴室であり、
前記第2カバー部材は、前記副沓摺り面を覆う第2カバー本体を有し、
前記第3カバー部材は、前記副沓摺り面を覆う第3カバー本体を有すると共に、前記第3カバー本体が、前記第2カバー本体の上側に位置することを特徴とする請求項1に記載の沓摺り用カバー。
【請求項3】
前記第2カバー本体と前記第3カバー本体とは、重畳した状態で相互に接着され、
前記第3カバー本体の室外側の端部には、余剰の接着剤を受容する接着剤受容溝が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の沓摺り用カバー。
【請求項4】
前記室内側は、浴室であり、
前記第1カバー部材は、前記立上り面側の端面が前記立上り面に当接し、
前記第3カバー部材は、前記主沓摺り面側の端面が前記第1カバー部材の端部上側に当接することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の沓摺り用カバー。
【請求項5】
前記第1カバー部材は、上面に滑止め用の凹凸部を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の沓摺り用カバー。
【請求項6】
前記凹凸部は、見付け方向に延びる複数の凸条および/または見付け方向に延びる複数の凹条によって構成され、
前記各凸条および/または前記各凹条は、前記第1カバー部材を前記主沓摺り面の見込み寸法に合わせて切断するときの墨出し線を兼ねていることを特徴とする請求項5に記載の沓摺り用カバー。
【請求項7】
前記第1カバー部材、前記第2カバー部材および前記第3カバー部材は、いずれも合成樹脂の形材で形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の沓摺り用カバー。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の沓摺り用カバーを用いた既設沓摺りの改修方法であって、
前記第1カバー部材を前記室内見付け面および前記主沓摺り面に接着する第1施工工程と、
前記第2カバー部材を前記副沓摺り面および前記室外見付け面に接着する第2施工工程と、
前記第3カバー部材を前記立上り面および前記第2カバー部材の上面に接着する第3施工工程と、を備えたことを特徴とする既設沓摺りの改修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室出入口等に設けられた既設沓摺りを覆う沓摺り用カバーおよびこれを用いた既設沓摺りの改修方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の既設沓摺りの改修方法として、既設沓摺りに対し2つの新沓摺り板を、接着剤や両面テープ等で被着するものが知られている(特許文献1参照)。この2つの新沓摺り板は、ステンレス板等を、既設沓摺りの寸法に合わせて屈曲加工したものであり、見込み方向の中間に段部を有する沓摺りに対し、この段部で重なるように配設されている。室外側の新沓摺り板は、段部から脱衣室側の見付け面を覆い、室内側の新沓摺り板は、段部から浴室側の見付け面を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−177387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、既設沓摺りは、その寸法(特に見込み方向の寸法)がまちまちであるため、上記従来の構成では、各種既設沓摺りの寸法に合わせて、新沓摺り板を複数種用意する必要があった。すなわち、室外側の新沓摺り板は、段部から脱衣室側の見付け面までの寸法に合わせて、また室内側の新沓摺り板は、段部から浴室側の見付け面までの寸法に合わせて、それぞれ寸法の異なる複数種のものを用意する必要があった。よって、制作費用が高くなってしまうという問題が生じた。
これに対し、扁平な樹脂板を用意し、これを、現場加工で既設沓摺りの各面に合わせて加工し、各面に貼り付けることも考えられる。しかしながら、かかる場合、既設沓摺りの面の数だけ、加工処理(特に相互の接合部を考慮した加工処理)および貼付け処理を行う必要があり、既設沓摺りの改修作業が煩雑になってしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は、各種既設沓摺りの寸法に合わせて複数種用意する必要がなく、且つ既設沓摺りの改修作業を簡易化することができる沓摺り用カバーおよびこれを用いた既設沓摺りの改修方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の沓摺り用カバーは、室内側から室外側に向かって順に、室内見付け面、主沓摺り面、立上り面、副沓摺り面および室外見付け面を有する既設沓摺りの表面を覆う沓摺り用カバーであって、室内見付け面および主沓摺り面を覆う断面「L」字状の第1カバー部材と、副沓摺り面および室外見付け面を覆う断面「L」字状の第2カバー部材と、立上り面および副沓摺り面を覆う断面「L」字状の第3カバー部材と、を備え、第2カバー部材と第3カバー部材とは、副沓摺り面上において見込み方向にオーバーラップすることを特徴とする。

【0007】
本発明の既設沓摺りの改修方法は、上記の沓摺り用カバーを用いた既設沓摺りの改修方法であって、第1カバー部材を室内見付け面および主沓摺り面に接着する第1施工工程と、第2カバー部材を副沓摺り面および室外見付け面に接着する第2施工工程と、第3カバー部材を立上り面および第2カバー部材の上面に接着する第3施工工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、それぞれが2面を覆う3つのカバー部材によって構成されているため、各面に樹脂板を取り付けるのに比べ、既設沓摺りの改修作業を簡易化することができる。また、各カバー部材の各部の寸法を現場加工(切断加工)で調整することで、寸法の異なる沓摺りに対し容易に対応することができる。さらに、第2カバー部材と第3カバー部材とが、副沓摺り面上において、オーバーラップする構成であるため、見込み方向の寸法が異なる複数種の副沓摺り面に対し、このオーバーラップ寸法を変えることで、対応することができる。これらのように、各種既設沓摺りの寸法に合わせてカバー部材を複数種用意する必要がなく、且つ改修作業を簡易化することができる。
【0009】
この場合、室内側は、浴室であり、第2カバー部材は、副沓摺り面を覆う第2カバー本体を有し、第3カバー部材は、副沓摺り面を覆う第3カバー本体を有すると共に、第3カバー本体が、第2カバー本体の上側に位置することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、上側となる第3カバー部材のカバー本体の室外側端部が、水返しとなる立上り面より室外側に位置するため、その部分が水に触れ難く、第2カバー部材と第3カバー部材との接合部分の水密性を向上させることができる。
【0011】
この場合、第2カバー本体と第3カバー本体とは、重畳した状態で相互に接着され、第3カバー本体の室外側の端部には、余剰の接着剤を受容する接着剤受容溝が設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第2カバー本体と第3カバー本体とを接着するときに、余剰の接着剤が、第3カバー本体の室外側の端部に設けられた接着剤受容溝に入り込む。このため、第3カバー本体の室外側の端から接着剤がはみ出すことがない。したがって、はみ出した接着剤の拭取り作業を省略することができ、施工性を向上させることができる。また、接着剤受容溝に入り込んだ接着剤は、シール材としても機能し、第2カバー部材と第3カバー部材との接合部分における水密性を向上されることができる。
【0013】
一方、室内側は、浴室であり、第1カバー部材は、立上り面側の端面が立上り面に当接し、第3カバー部材は、主沓摺り面側の端面が第1カバー部材の端部上側に当接することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、主沓摺り面と立上り面とが成す入隅部において、第1カバー部材の端部上側に第3カバー部材の端が乗る接合形態となる。このため、第3カバー部材を立上り面に接着する時の余剰の接着剤が、その端に回り込み易く、第1カバー部材と第3カバー部材との接合部分の水密性を向上させることができる。
【0015】
また、第1カバー部材は、上面に滑止め用の凹凸部を有していることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第1カバー部材の上面に滑止め用の凹凸部を設けたことで、第1カバー部材の上面に載せた足が滑ってしまうのを防止することができる。
【0017】
この場合、凹凸部は、見付け方向に延びる複数の凸条および/または見付け方向に延びる複数の凹条によって構成され、各凸条および/または各凹条は、第1カバー部材を主沓摺り面の見込み寸法に合わせて切断するときの墨出し線を兼ねていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第1カバー部材を主沓摺り面の見込み寸法に合わせて切断するとき、凸条や凹条に倣って切断するようにすれば、墨出し線を描くことなく簡単なマーキングのみで、第1カバー部材を精度良く切断することができる。したがって、第1カバー部材の施工性を向上させることができる。
【0019】
この場合、第1カバー部材、第2カバー部材および第3カバー部材は、いずれも合成樹脂の形材で形成されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、これらカバー部材の原材(定尺もの)を、現場合わせで切断することで、見付け方向の寸法が異なる複数種の既設沓摺りに対し、これに対応する各カバー部材を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】改修対象となる既設沓摺りを示した側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る沓摺り用カバーを示した側面図である。
図3】第1カバー部材を示した側面図(a)および平面図(b)である。
図4】第2カバー部材を示した側面図(a)および平面図(b)である。
図5】第3カバー部材を示した側面図(a)および平面図(b)である。
図6】既設沓摺りの改修作業を示した説明図である。
図7】寸法が異なる沓摺りに対する沓摺り用カバーの取付け方を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る沓摺り用カバーおよびこれを用いた既設沓摺りの改修方法について説明する。この沓摺り用カバーは、既設沓摺り(既設の沓摺り)の表面を覆うものであり、既設沓摺りの表面に取り付け、既設沓摺りを改修するためのものである。ここでは、浴室の出入口に設けられた人研ぎ(人造大理石研ぎ出し)の既設沓摺りを改修対象とし、この既設沓摺りの外観を変えるべく、沓摺り用カバーを化粧材として既設沓摺りの表面に取り付けるものを例示する。ここで、沓摺り用カバーについて説明する前に、改修対象となる既設沓摺りについて説明する。
【0023】
図1は、改修対象となる既設沓摺り1を示した側面図である。図1に示すように、既設沓摺り1は、戸当り付きの沓摺りであり、室内側から室外側に向かって順に、室内見付け面2a、主沓摺り面2b、戸当り面3a(立上り面)、副沓摺り面3bおよび室外見付け面3cを有している。具体的には、既設沓摺り1は、室内見付け面2aおよび主沓摺り面2bを有する室内側の沓摺り本体2と、沓摺り本体2に対し見込み方向に連なり、戸当り面3a、副沓摺り面3bおよび室外見付け面3cを有する室外側の戸当り部3と、で一体に構成されている。
【0024】
また、既設沓摺り1は、浴室の出入口に配設されたものであるため、室内側が浴室であり、室外側が脱衣室である。これに対し、主沓摺り面2bは、室内側(浴室側)に下り傾斜となる水勾配となっており、また、戸当り面3aは、室内側からの水の侵入を防ぐ水返しを兼ねている。なお、本実施形態では、浴室の出入り口に設けられたドアDが浴室側に開く内開きの構造であるため、戸当り面3aが、上記ドアDが突き当たる戸当りとして機能するが、上記ドアDが脱衣室側に開く外開きの構造である場合、戸当り面3aは、戸当りとして機能せず、単なる水返しとして機能する。なお、符号4は、沓摺り本体2の下面とその設置面との間に水が入り込まないようにするためのシール材である。
【0025】
図2は、既設沓摺り1に取り付けた沓摺り用カバー10を示した側面図である。図2に示すように、沓摺り用カバー10は、合成樹脂の形材で形成された3つの「L」字状部材で構成されている。具体的には、沓摺り用カバー10は、室内見付け面2aおよび主沓摺り面2bを覆う第1カバー部材11と、副沓摺り面3bおよび室外見付け面3cを覆う第2カバー部材12と、戸当り面3aおよび副沓摺り面3bを覆うと共に、副沓摺り面3b上において第2カバー部材12とオーバーラップする第3カバー部材13と、を備えている。すなわち、第1カバー部材11が、沓摺り本体2の表面を覆う「沓摺り本体カバー」を構成し、第2カバー部材12および第3カバー部材13が、戸当り部3の表面を被覆する「戸当り部カバー」を構成している。
【0026】
図3は、第1カバー部材11を示した側面図および平面図である。図2および図3に示すように、第1カバー部材11は、室内見付け面2aに倣って形成され、室内見付け面2aを覆う室内見付け面被覆部21と、主沓摺り面2bに倣って形成され、主沓摺り面2bを覆う主沓摺り面被覆部22(第1カバー本体)と、で一体に構成されている。室内見付け面被覆部21は、その先端部が既設沓摺り1の下面よりも下に来るように、形成されている。
【0027】
主沓摺り面被覆部22は、主沓摺り面2bに倣って傾斜しており、その表面(第1カバー部材11の上面)が水勾配となっている。また、主沓摺り面被覆部22の表面には、滑止め用の凹凸部22aが形成されている。そして、凹凸部22aは、見付け方向に延びる複数の凸条と、見付け方向に延びる複数の凹条とで構成され、当該複数の凸条と複数の凹条とにより、見込み方向に断面波状を為している。さらに、主沓摺り面被覆部22は、先端側で上記ドアDに引っかからないように、先端側の領域E1が、基端側の領域E2より薄厚になっている(図3参照)。なお、主沓摺り面被覆部22は、現場加工によって見込み寸法を調整可能に構成されており、既設沓摺り1の改修作業時において寸法合わせが可能となっている。主沓摺り面被覆部22は、その戸当り面3a側の端面が、戸当り面3aに当接するように加工される。
【0028】
図4は、第2カバー部材12を示した側面図および平面図である。図2および図4に示すように、第2カバー部材12は、副沓摺り面3bに倣って形成され、副沓摺り面3bを覆う副沓摺り面被覆部31(第2カバー本体)と、室外見付け面3cに倣って形成され、室外見付け面3cを覆う室外見付け面被覆部32と、で一体に構成されている。室外見付け面被覆部32は、その先端部が既設沓摺り1の下面よりも下に来るように、形成されている。
【0029】
図5は、第3カバー部材13を示した側面図および平面図である。図2および図5に示すように、第3カバー部材13は、戸当り面3aに倣って形成され、戸当り面3aを覆う戸当り面被覆部41と、副沓摺り面3bに倣って形成され、副沓摺り面3bを覆う副沓摺り面被覆部42(第3カバー本体)と、で一体に構成されている。なお、戸当り面被覆部41は、現場加工によって高さ寸法を調整可能に構成されており、既設沓摺り1の改修作業時において寸法合わせが可能となっている。戸当り面被覆部41は、その主沓摺り面2b側の端面が、主沓摺り面被覆部22の端部上側に当接するように加工される。
【0030】
また、第3カバー部材13の副沓摺り面被覆部42は、第2カバー部材12の副沓摺り面被覆部31の上側に位置し、副沓摺り面3b上において、第2カバー部材12の副沓摺り面被覆部31と重畳する。すなわち、第3カバー部材13の副沓摺り面被覆部42と第2カバー部材12の副沓摺り面被覆部31とは、副沓摺り面3b上において見込み方向にオーバーラップする。本沓摺り用カバー10では、このオーバーラップ寸法を調整することで、見込み寸法の異なる各種副沓摺り面3bに対応できるようになっている。すなわち、第2カバー部材12と第3カバー部材13とから成る「戸当り部カバー」は、副沓摺り面被覆部31、42同士のオーバーラップ寸法を調整することで、見込み寸法が調整自在となっている。
【0031】
第2カバー部材12および第3カバー部材13を既設沓摺り1に取り付けるとき、第2カバー部材12の副沓摺り面被覆部31と第3カバー部材13の副沓摺り面被覆部42とは、重畳した状態で相互に接着される。これに係り、副沓摺り面被覆部42の室外側の端部裏面には、余剰の接着剤を受容する接着剤受容溝42aが設けられている。接着剤受容溝42aは、当該端部裏面において見付け方向に延在して形成されており、第2カバー部材12および第3カバー部材13を既設沓摺り1に接着したときに生じた余剰の接着剤が、この部分からはみ出すのを防止している。
【0032】
次に図6を参照して、既設沓摺り1の改修作業(改修方法)について説明する。この既設沓摺り1の改修作業は、接着剤によって、沓摺り用カバー10を既設沓摺り1に取り付ける(接着する)ものである。
【0033】
図6(a)に示すように、既設沓摺り1の改修動作では、まず、各カバー部材11、12,13(原材)を、現場加工で、既設沓摺り1の各寸法に合わせて加工する(寸法合わせ)。
【0034】
具体的には、第1カバー部材11の主沓摺り面被覆部22を、主沓摺り面2bの見込み寸法に合わせて加工し、主沓摺り面被覆部22の見込み寸法を調整する。また、第3カバー部材13の戸当り面被覆部41を、戸当り面3aの高さ寸法に合わせて加工し、戸当り面被覆部42の高さ寸法を調整する。このとき、主沓摺り面被覆部22の戸当り面3a側の端面が戸当り面3aに当接し、戸当り面被覆部41の主沓摺り面2b側の端面が、主沓摺り面被覆部22の端部上側に当接するように、主沓摺り面被覆部22および戸当り面被覆部41を加工する。
さらに、各カバー部材11、12、13を、既設沓摺り1の見付け寸法に合わせて加工し、各カバー部材11、12、13の見付け寸法を調整する(図示省略)。このとき、各カバー部材11、12、13における見付け方向端部を、既設沓摺り1の見付け方向端部の形状に合わせて加工することが好ましい。
【0035】
各カバー部材11、12、13を加工したら、図6(b)に示すように、第1カバー部材11を沓摺り本体2に接着する(第1施工工程)。すなわち、第1カバー部材11における室内見付け面被覆部21および主沓摺り面被覆部22の裏面に接着剤を塗布し、室内見付け面被覆部21を室内見付け面2aに、主沓摺り面被覆部22を主沓摺り面2bに貼り付ける。
【0036】
第1カバー部材11を沓摺り本体2に接着したら、次に、図6(c)に示すように、第2カバー部材12を戸当り部3に接着する(第2施工工程)。すなわち、第2カバー部材12における副沓摺り面被覆部31および室外見付け面被覆部32の裏面に接着剤を塗布し、副沓摺り面被覆部31を副沓摺り面3bに、室外見付け面被覆部32を室外見付け面3cに貼り付ける。
【0037】
第2カバー部材12を戸当り部3に接着したら、最後に、図6(d)に示すように、第3カバー部材13を、第2カバー部材12の上から戸当り部3に接着する(第3施工工程)。すなわち、第3カバー部材13における戸当り面被覆部41および副沓摺り面被覆部42の裏面に接着剤を塗布し、戸当り面被覆部41を戸当り面3aの表面に、副沓摺り面被覆部42を第2カバー部材12の上面(副沓摺り面被覆部31の表面)に貼り付ける。これにより、第2カバー部材12の副沓摺り面被覆部31と第3カバー部材13の副沓摺り面被覆部42とが、重畳した状態で相互に接着される。これらによって、既設沓摺り1の表面が沓摺り用カバー10に覆われ、本改修作業を終了する。
【0038】
以上、上記実施形態によれば、それぞれが2面を覆う3つのカバー部材11、12、13によって構成されているため、各面に樹脂板を取り付けるのに比べ、既設沓摺り1の改修作業を簡易化することができる。また、各カバー部材11、12、13の各部の寸法を現場加工(切断加工)で調整することで、寸法の異なる沓摺りに対し容易に対応することができる。さらに、第2カバー部材12と第3カバー部材13とが、副沓摺り面3b上において、オーバーラップする構成であるため、図7に示すように、見込み方向の寸法が異なる複数種の副沓摺り面3bに対し、このオーバーラップ寸法を変えることで、対応することができる。これらのように、各種既設沓摺りの寸法に合わせてカバー部材11、12、13を複数種用意する必要がなく、且つ改修作業を簡易化することができる。
【0039】
また、第3カバー部材13の副沓摺り面被覆部42が、第2カバー部材12の副沓摺り面被覆部31の上側となる構成であるため、上側となる第3カバー部材13の副沓摺り面被覆部42の室内側端部が、水返しとなる戸当り面3aより室外側に位置する構成となり、その部分が水に触れ難い。これによって、第2カバー部材12と第3カバー部材13との接合部分の水密性を向上させることができる。
【0040】
さらに、第3カバー部材13の副沓摺り面被覆部42における室外側の端部に、接着剤受容溝42aを設けたことで、当該副沓摺り面被覆部42と第2カバー部材12の副沓摺り面被覆部31とを接着するときに、余剰の接着剤が接着剤受容溝42aに入り込む。そのため、第3カバー部材13の副沓摺り面被覆部42の室外側の端から接着剤がはみ出すことがない。したがって、はみ出した接着剤の拭取り作業を省略することができ、施工性を向上させることができる。また、接着剤受容溝42aに入り込んだ接着剤は、シール材としても機能し、第2カバー部材12と第3カバー部材13との接合部分における水密性を向上されることができる。
【0041】
またさらに、第1カバー部材11の戸当り面3a側の端面が戸当り面3aに当接し、第3カバー部材13の主沓摺り面2b側の端面が第1カバー部材11の端部上側に当接する構成であるため、主沓摺り面2bと戸当り面3aとが成す入隅部において、第1カバー部材11の端部上側に第3カバー部材13の端が乗る接合形態となる。このため、第3カバー部材13を戸当り面3aに接着する時の余剰の接着剤が、その端に回り込み易く、第1カバー部材11と第3カバー部材13との接合部分の水密性を向上させることができる。
【0042】
また、第1カバー部材11の上面に滑止め用の凹凸部22aを設けたことで、この部分に載せた足が滑ってしまうのを防止することができる。
【0043】
さらに、凹凸部22aを、墨出し線を兼ねる複数の凸条および複数の凹条によって構成したことで、第1カバー部材11を主沓摺り面2bの見込み寸法に合わせて切断するとき、凸条や凹条に倣って切断するようにすれば、墨出し線を描くことなく簡単なマーキングのみで、第1カバー部材11を精度良く切断することができる。したがって、第1カバー部材11の施工性を向上させることができる。
【0044】
またさらに、各カバー部材11、12、13を合成樹脂の形材で形成してことにより、これら各カバー部材11、12、13の原材(定尺もの)を、現場合わせで切断することで、見付け方向の寸法が異なる複数種の既設沓摺り1に対し、これに対応する各カバー部材11、12、13を容易に形成することができる。
【0045】
また、合成樹脂製の沓摺り用カバー10で、人研ぎの既設沓摺り1を覆う構成であるため、既設沓摺り1の見た目を改善することができる。特に、人研ぎ等の石材の既設沓摺り1は、冷たい(温度が低い)イメージをあり、見た目上において冷たい印象を与える。これに対し、石材の既設沓摺り1を、合成樹脂製の沓摺り用カバー10で覆うことで、見た目上の冷たい印象を改善することができる。
【0046】
なお、上記実施形態においては、複数の凸条と複数の凹条とから成る断面波状の凹凸部22aを採用したが、複数の凸条のみから成る凹凸部22aを採用する構成であっても良いし、複数の凹条のみから成る凹凸部22aを採用する構成であっても良い。
【0047】
また、上記実施形態においては、第3カバー部材13を上にして、第2カバー部材12と第3カバー部材13とを重畳させる構成であったが、第2カバー部材12を上にして、第2カバー部材12と第3カバー部材13とを重畳させる構成であっても良い。かかる場合、接着剤受容溝42aは、第3カバー部材13の表面側に形成される。
【0048】
さらに、上記実施形態においては、既設沓摺り1の外観を変えることを目的として、沓摺り用カバー10を既設沓摺り1に被覆する構成であったが、これに限るものではない。例えば、破損した既設沓摺り1の改修を目的として、沓摺り用カバー10を既設沓摺り1に被覆する構成であっても良い。
【0049】
またさらに、上記実施形態においては、各カバー部材11、12、13を、合成樹脂の形材で形成したが、これに限るものではない。例えば、各カバー部材11、12、13を、金属材料やゴム材料等で形成しても良い。
【0050】
また、上記実施形態においては、接着剤によって、沓摺り用カバー10(各カバー部材11、12、13)を既設沓摺り1に取り付ける構成であったが、両面テープによって、沓摺り用カバー10(各カバー部材11、12、13)を既設沓摺り1に取り付ける構成であっても良い。
【符号の説明】
【0051】
1:既設沓摺り、 2a:室内見付け面、 2b:主沓摺り面、 3a:戸当り面、 3b:副沓摺り面、 3c:室外見付け面、 10:沓摺り用カバー、 11:第1カバー部材、 12:第2カバー部材、 13:第3カバー部材、 22a:凹凸部、 31:副沓摺り面被覆部、 32:副沓摺り面被覆部、 42a:接着剤受容溝
図1
図2
図3
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図5
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図7