特許第6918477号(P6918477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918477
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】製版装置
(51)【国際特許分類】
   B41C 1/055 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
   B41C1/055 511
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-239289(P2016-239289)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2018-94747(P2018-94747A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】木野戸 伸一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 博史
(72)【発明者】
【氏名】杉田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】高松 奎大
【審査官】 中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−081753(JP,U)
【文献】 特開平09−070944(JP,A)
【文献】 特開平11−188832(JP,A)
【文献】 特開2010−173181(JP,A)
【文献】 特開2000−168220(JP,A)
【文献】 米国特許第05765477(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41C 1/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体にマスタが張設された枠張りマスタにおける前記マスタの下側に配置され、前記マスタに穿孔するサーマルヘッドと、
前記マスタへの穿孔時における前記サーマルヘッドの前記マスタへの接触部より低い位置に配置され、前記枠体を支持する支持部と、
前記サーマルヘッドを前記支持部より下方に下降させる下降機構とを備え、
前記下降機構は、前記サーマルヘッドに前記マスタを押圧するプラテンローラの上昇に連動して前記サーマルヘッドを下降させることを特徴とする製版装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体にマスタが張設された枠張りマスタを製版する製版装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像パターンが穿孔されたスクリーン版の穿孔部分からインクを押し出して印刷媒体に転写することで画像を形成するスクリーン印刷が知られている。
【0003】
スクリーン印刷におけるスクリーン版として、例えば、枠張りマスタが用いられる。枠張りマスタは、メッシュ状の紗と熱溶融性フィルムとからなるマスタが枠体に張設されたものである。
【0004】
枠張りマスタは、製版装置により製版される(例えば、特許文献1参照)。製版装置は、枠張りマスタのマスタにサーマルヘッドで加熱穿孔して穿孔画像を形成することにより製版する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−173181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
枠張りマスタを製版する際、製版装置には、ユーザにより枠張りマスタがセットされる。この際、枠張りマスタの枠体がサーマルヘッドに接触し、サーマルヘッドが破損するおそれがある。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、サーマルヘッドの破損を低減できる製版装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る製版装置の第1の特徴は、枠体にマスタが張設された枠張りマスタにおける前記マスタの下側に配置され、前記マスタに穿孔するサーマルヘッドと、前記マスタへの穿孔時における前記サーマルヘッドの前記マスタへの接触部より低い位置に配置され、前記枠体を支持する支持部と、前記サーマルヘッドを前記支持部より下方に下降させる下降機構とを備えることにある。
【0009】
本発明に係る製版装置の第2の特徴は、前記下降機構は、前記サーマルヘッドに前記マスタを押圧するプラテンローラの上昇に連動して前記サーマルヘッドを下降させることにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る製版装置の第1の特徴によれば、下降機構により、サーマルヘッドが支持部より下方に下降可能である。このため、枠張りマスタを製版装置にセットする際に、サーマルヘッドを支持部より下方に退避させることで、枠体がサーマルヘッドに接触することを防止できる。この結果、サーマルヘッドの破損を低減できる。
【0011】
本発明に係る製版装置の第2の特徴によれば、下降機構は、プラテンローラの上昇に連動してサーマルヘッドを下降させる。これにより、サーマルヘッドを下降させるための独立した操作が不要であるので、良好な操作性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る製版装置の全体斜視図である。
図2図1に示す製版装置の一部を断面とした側面図である。
図3図1に示す製版装置の要部平面図である。
図4図1に示す製版装置の要部正面図である。
図5図1に示す製版装置に枠張りマスタをセットする際の製版部の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0014】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る製版装置の全体斜視図である。図2は、図1に示す製版装置の一部を断面とした側面図である。図3は、図1に示す製版装置の要部平面図である。図4は、図1に示す製版装置の要部正面図である。なお、以下の説明において、図1の矢印で示す上下左右前後を上下左右前後方向とする。
【0016】
図1図4に示すように、本実施の形態に係る製版装置1は、筐体2と、製版部3と、ガイド部材4A,4Bと、スライダ5A,5Bと、移動式位置決め部材6と、ガイドシャフト7A,7Bとを備える。
【0017】
筐体2は、製版装置1の各部を収納する。筐体2は、上側が開口した箱状に形成されている。
【0018】
製版部3は、枠張りマスタ11を製版する。枠張りマスタ11は、矩形の枠体12にマスタ13を張設したものである。枠体12は、例えば、アルミニウム合金からなる。マスタ13は、シルク、合成樹脂、ステンレス等からなる縦糸と横糸とが編み上げられて形成されたメッシュ状の紗に、熱可塑性樹脂からなる熱溶融性フィルムが接着剤により接着されて形成されている。枠張りマスタ11は、枠体12の下面より上側に張設されている。
【0019】
製版部3は、プラテンローラ21と、プラテンカバー22と、サーマルヘッド23と、ヘッドベース24と、サーマルヘッド昇降機構(請求項の下降機構に相当)25とを備える。
【0020】
プラテンローラ21は、サーマルヘッド23に枠張りマスタ11のマスタ13を上側から押圧する。プラテンローラ21は、左右方向に細長い円柱形状に形成されている。プラテンローラ21は、図示しないバネによりサーマルヘッド23側に押圧付勢されている。
【0021】
プラテンカバー22は、プラテンローラ21を覆うとともに、プラテンローラ21を回転可能に保持する。プラテンカバー22は、スライダ5A,5Bに、回動軸26A,26Bを中心として回動可能に取り付けられている。
【0022】
サーマルヘッド23は、枠張りマスタ11のマスタ13に穿孔画像を形成する。サーマルヘッド23は、製版装置1にセットされた枠張りマスタ11のマスタ13の下側に配置されている。サーマルヘッド23は、主走査方向(左右方向)に沿って配置された複数の発熱素子(図示せず)を有し、マスタ13の下面に接触して発熱素子によりマスタ13に加熱穿孔する。
【0023】
ヘッドベース24は、サーマルヘッド23を支持する。ヘッドベース24は、左右方向に細長い板状に形成されている。
【0024】
サーマルヘッド昇降機構25は、サーマルヘッド23を昇降させる機構である。サーマルヘッド昇降機構25は、アーム31A,31Bと、歯車32A,32B,33A,33Bとを備える。
【0025】
アーム31A,31Bは、ヘッドベース24を保持する。アーム31Aにヘッドベース24の右端が固定され、アーム31Bにヘッドベース24の左端が固定されている。アーム31A,31Bは、それぞれスライダ5A,5Bに、回動軸34A,34Bを中心として回動可能に取り付けられている。
【0026】
歯車32A,32Bは、プラテンカバー22の回動とともに、回動軸26A,26Bを中心として回動する。歯車32A,32Bは、それぞれプラテンカバー22の右側面、左側面に取り付けられている。歯車32A,32Bは、それぞれ歯車33A,33Bと歯合されている。
【0027】
歯車33A,33Bは、歯車32A,32Bの回動に応じて、回動軸34A,34Bを中心として回動し、アーム31A,31Bを回動させる。歯車33A,33Bは、それぞれアーム31A,31Bの前端部に取り付けられている。
【0028】
プラテンカバー22が持ち上げられると、歯車32A,32Bが図2における時計回り方向に回動し、それに伴って歯車33A,33Bが反時計回り方向に回動するとともにアーム31A,31Bが反時計回り方向に回動する。これにより、プラテンカバー22が開かれることによるプラテンローラ21の上昇に連動して、サーマルヘッド23が後述する支持面4aよりも下方に下降するようになっている。
【0029】
ガイド部材4A,4Bは、枠張りマスタ11の前端部において、枠体12を支持する。ガイド部材4A,4Bは、左右方向に互いに離間して配置されている。ガイド部材4A,4Bは、上向きの水平面である支持面(請求項の支持部に相当)4aで枠体12を支持する。ガイド部材4A,4Bの支持面4a上には、枠張りマスタ11の前端の位置を規制する位置決め部4bが配置されている。
【0030】
ガイド部材4A,4Bの支持面4aは、製版位置にあるサーマルヘッド23のマスタ13への接触部(サーマルヘッド23の上面)より低い位置に配置されている。ここで、サーマルヘッド23の製版位置は、マスタ13への穿孔時における位置であり、図1図4に示すサーマルヘッド23の位置である。すなわち、サーマルヘッド23の製版位置は、サーマルヘッド23を支持するヘッドベース24の上面が水平であるときのサーマルヘッド23の位置である。
【0031】
スライダ5A,5Bは、製版部3を前後方向に移動させるために、ガイドシャフト7A,7Bに沿って前後方向に移動するものである。スライダ5A,5Bは、左右方向に互いに離間して配置されている。スライダ5A,5Bは、図示しない駆動機構により前後方向に移動可能になっている。スライダ5A,5Bには、プラテンカバー22が接続されるとともに、それぞれアーム31A,31Bが接続されている。これにより、スライダ5A,5Bとともに製版部3が前後方向に移動するようになっている。
【0032】
移動式位置決め部材6は、枠張りマスタ11の後端部において、枠体12を支持する。移動式位置決め部材6は、ガイドシャフト7A,7Bに沿って前後方向に移動可能になっている。移動式位置決め部材6は、枠体搭載部41と、スライダ42A,42Bとを備える。
【0033】
枠体搭載部41は、枠体12の後端部を支持する部分である。枠体搭載部41は、左右方向に細長い形状に形成されている。枠体搭載部41は、上向きの水平面である支持面41aを有し、支持面41aで枠体12を支持する。支持面41aは、ガイド部材4A,4Bの支持面4aと同じ高さに配置されている。これにより、製版装置1にセットされた枠張りマスタ11のマスタ13が水平になる。また、枠体搭載部41は、支持面41aに直交する位置決め面41bを有し、位置決め面41bで枠張りマスタ11の後端の位置を規制する。
【0034】
スライダ42A,42Bは、枠体搭載部41を支持するとともに、ガイドシャフト7A,7Bに沿って前後方向に移動する部分である。スライダ42A,42Bは、それぞれ枠体搭載部41の右端部、左端部に接続されている。
【0035】
ガイドシャフト7A,7Bは、スライダ5A,5Bおよび移動式位置決め部材6の前後方向の移動をガイドする。ガイドシャフト7A,7Bは、前後方向に延びる長尺状に形成され、筐体2内において互いに左右方向に離間して設置されている。
【0036】
次に、製版装置1の作用について説明する。
【0037】
製版装置1で枠張りマスタ11を製版する際、ユーザにより枠張りマスタ11が製版装置1にセットされる。枠張りマスタ11のセットが行われる前の状態では、サーマルヘッド23は製版位置にあり、プラテンカバー22は閉じられている。
【0038】
枠張りマスタ11が製版装置1にセットされる際、まず、ユーザによりプラテンカバー22が持ち上げられる。これにより、プラテンカバー22が図2における時計回り方向に回動するとともに、歯車32A,32Bが時計回り方向に回動する。それと同時に、歯車33A,33Bが反時計回り方向に回動するとともにアーム31A,31Bが反時計回り方向に回動する。これにより、サーマルヘッド23が製版位置から下降する。
【0039】
プラテンカバー22が所定の位置まで持ち上げられると、サーマルヘッド23が退避位置へ下降する。サーマルヘッド23の退避位置は、図5に示すサーマルヘッド23の位置である。サーマルヘッド23の退避位置は、ガイド部材4A,4Bの支持面4aおよび移動式位置決め部材6の支持面41aよりも下方にある。
【0040】
図5のように、プラテンカバー22が開かれ、サーマルヘッド23が退避位置に退避した状態になった後、ユーザにより、ガイド部材4A,4Bの支持面4aおよび移動式位置決め部材6の支持面41aに枠張りマスタ11が載せられる。
【0041】
ここで、本実施の形態とは異なり、プラテンカバー22が開かれてもサーマルヘッド23が下降せずに製版位置に配置されたまま枠張りマスタ11のセットが行われる場合、サーマルヘッド23に枠張りマスタ11の枠体12が接触するおそれがある。すなわち、サーマルヘッド23が製版位置にある場合、ガイド部材4A,4Bの支持面4aよりも上にサーマルヘッド23が突出しているため、支持面4aに枠体12を載せる際に枠体12がサーマルヘッド23に接触するおそれがある。枠体12がサーマルヘッド23に接触すると、サーマルヘッド23が破損するおそれがある。
【0042】
これに対し、製版装置1では、ガイド部材4A,4Bの支持面4aに枠体12を載せる際にはサーマルヘッド23が退避位置に退避しているので、枠体12のサーマルヘッド23への接触が防止される。
【0043】
ガイド部材4A,4Bの支持面4aおよび移動式位置決め部材6の支持面41aに枠張りマスタ11が載せられると、ユーザによりプラテンカバー22が閉じられる。この際、プラテンカバー22が図2図5における反時計回り方向に回動するとともに、歯車32A,32Bが反時計回り方向に回動する。それと同時に、歯車33A,33Bが時計回り方向に回動するとともにアーム31A,31Bが時計回り方向に回動し、サーマルヘッド23が退避位置から上昇して製版位置に配置される。これにより、枠張りマスタ11のセットが終了となる。
【0044】
枠張りマスタ11のセットが終了した後、製版部3がマスタ13の前端部から後側へ向かって移動しつつ、サーマルヘッド23によりマスタ13に穿孔画像を形成する。これにより、枠張りマスタ11が製版される。
【0045】
以上説明したように、製版装置1では、サーマルヘッド昇降機構25により、サーマルヘッド23がガイド部材4A,4Bの支持面4aよりも下方に下降可能である。このため、枠張りマスタ11を製版装置1にセットする際に、サーマルヘッド23を支持面4aより下方の退避位置に退避させることで、枠体12がサーマルヘッド23に接触することを防止できる。この結果、サーマルヘッド23の破損を低減できる。
【0046】
また、製版装置1では、サーマルヘッド昇降機構25は、プラテンカバー22が開かれることによるプラテンローラ21の上昇に連動して、サーマルヘッド23を下降させる。これにより、サーマルヘッド23を下降させるための独立した操作が不要であるので、良好な操作性を実現できる。
【0047】
なお、上述した実施の形態では、プラテンローラ21の上昇に連動してサーマルヘッド23を下降させる構成を示したが、プラテンローラ21の上昇とは独立してサーマルヘッド23を下降させる構成でもよい。
【0048】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 製版装置
2 筐体
3 製版部
4A,4B ガイド部材
4a 支持面
5A,5B スライダ
6 移動式位置決め部材
7A,7B ガイドシャフト
11 枠張りマスタ
12 枠体
13 マスタ
21 プラテンローラ
22 プラテンカバー
23 サーマルヘッド
24 ヘッドベース
25 サーマルヘッド昇降機構
31A,31B アーム
32A,32B,33A,33B 歯車
41 枠体搭載部
41a 支持面
42A,42B スライダ
図1
図2
図3
図4
図5