(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判別部は、前記照射位置の移動量に対して前記特徴画素の移動量が大きくなるにしたがい、前記X線の照射経路中における、前記X線検出器からより離れた位置に前記特徴画素の発生原因があると判別する請求項2に記載のX線画像診断装置。
前記生成部は、前記記憶部に記憶された前記キズの位置座標に基づき、X線画像診断装置内のいずれの位置に当該キズが存在するかを示すキズマップを生成する請求項9に記載のX線画像診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るX線画像診断装置1を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0010】
(第1実施形態)
まず、
図1に基づいてX線画像診断装置1の全体構成について説明する。
図1は、X線画像診断装置1の構成例を示す図である。この
図1に示すようにX線画像診断装置1は、複数の位置から乳房の撮影が可能な装置であり、乳房撮影装置100と、情報処理装置200と、入力回路300と、ディスプレイ400と、曝射ボタン500と、高電圧発生器600とを備えて構成されている。また、ここでは、水平面上の座標を示す軸をX軸、Y軸とし、鉛直上方をZ軸とする。
【0011】
乳房撮影装置100は、限定された角度範囲内における複数の方向から被検体の乳房をX線撮影する装置である。情報処理装置200は、例えばコンピュータで構成されており、X線画像診断装置1の全体を制御したり、乳房撮影装置100内の異物などの情報を取得したりする。これら乳房撮影装置100と情報処理装置200の詳細は後述する。
【0012】
入力回路300は、検査モードなどの設定を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等によって実現される。入力回路300は、情報処理装置200に接続され、検査者から受け取った入力操作を電気信号に変換し、情報処理装置200に出力する。
【0013】
ディスプレイ400は、X線画像及び各種の情報を表示するための、液晶表示装置などによって実現される。より詳細には、ディスプレイ400は、情報処理装置200に接続され、情報処理装置200で処理された画像などを輝度信号に変換し画面に表示する。
【0014】
曝射ボタン500は、X線の照射タイミングを情報処理装置200に指示するためのスイッチであり、検査者は手で、この曝射ボタン500を操作する。曝射ボタン500は、情報処理装置200に接続され、検査者にスイッチが押されると、曝射開始信号を情報処理装置200に出力する。
【0015】
高電圧発生器600は、管電圧とフィラメント電流とを出力する。この高電圧発生器600は、情報処理装置200と、乳房撮影装置100に接続され、情報処理装置200が出力する撮影条件信号に従い、管電圧、及びフィラメント電流を乳房撮影装置100に供給する。
【0016】
次に、乳房撮影装置100の詳細を説明する。乳房撮影装置100は、トモシンセス撮影、バイオプシの位置決め撮影が可能な装置であり、基台102と、スタンド104と、アーム106と、支持軸108と、支持板110と、照射装置112と、回転モーター122と、撮影台124と、圧迫板126と、昇降モーター128と、昇降機構130と、X線検出器132と、画像生成回路134とを備えて構成されている。ここで、乳房トモシンセシス撮影とは、限定された角度内の複数の方向から圧迫された状態の乳房を撮影したX線画を用いて、3次元に再構成した断層画像を得る撮影技術である。また、乳房のバイオプシは、乳房内の病変組織を針により採取し、顕微鏡で病変組織を観察、診断する臨床検査の一つである。このバイオプシの位置決め撮影では、病変組織の位置決めを行うために、複数の方向から乳房の撮影が行われる。
【0017】
基台102は、乳房撮影装置100全体を載置する。スタンド104は、基台102上に立設され、アーム106を支持している。支持軸108は、一端がスタンド104に固定され、他端で支持板110を固定支持している。すなわち、アーム106は、支持軸108が貫通する穴部を有し、この穴部を介して回転可能に、スタンド104に支持されている。このアーム106の上端部には照射装置112が設けられている。
【0018】
照射装置112は、X線を被検体に向けて照射する。すなわち、この照射装置112は、支持軸108を回転中心とするアーム106の回転に応じて、X線の照射方向を変更しつつX線を被検体に照射する。この照射装置112は、X線管114と、X線可動絞り116と、複数のビームフィルタ118と、変更モーター120とを備えて構成されている。
【0019】
X線管114は、X線を発生する。より詳細には、X線管114は、高電圧発生器600に接続され、高電圧発生器600から供給された管電圧とフィラメント電流に応じたX線を出力する。すなわち、X線管114は、情報処理装置200から高電圧発生器600に入力された撮影条件信号に基づき、X線を発生する。より詳細には、X線管114は、供給される管電圧が高くなるに従い、短波長側に波長のピークがシフトしたより高エネルギ−のX線を発生する。また、X線量はフィラメント電流に比例する。このため、被検体の厚みなどに応じて、管電圧及びフィラメント電流は調整される。なお、X線管114においてX線を発生する焦点は、所謂、小焦点が用いられている。
【0020】
X線可動絞り116は、鉛などで構成される羽状の絞りを有している。X線可動絞り116は、X線管114の出射口に配置され、X線管114が発生したX線の照射範囲の絞りを移動させることで限定する。これにより、被検体に照射されるX線が限定されるので、被検体の不必要な被曝及びその部分からのX線の散乱線を低減させることができる。
【0021】
ビームフィルタ118は、例えば長方形状の板であり、銅、アルミなどで構成されている。ここでは、複数種類のビームフィルタ118が用いられている。これらのビームフィルタ118は、X線可動絞り116の出射口に配置され、X線の波長スペクトルをより細やかに変更する。例えば、ビームフィルタ118は、被検体の大きさや厚みに合わせて変更される。このように、管電圧の変更によるX線の波長調整に加えて、ビームフィルタ118を用いたより細かな波長調整を行うことができる。このため、照射装置112は、ビームフィルタ118を用いることで、被検体の乳房撮影により適した波長のX線を照射可能である。
【0022】
変更モーター120は、変更機構を介して撮影に用いるビームフィルタ118を変更する。より詳細には、変更モーター120は、情報処理装置200に接続され、情報処理装置200が出力する変更信号に従い、ビームフィルタ118を変更する。すなわち、検査者が入力回路を介して入力した選択信号が情報処理装置200に出力され、選択信号に基づく変更信号が情報処理装置200から変更モーター120に入力される。これにより、撮影に用いられるビームフィルタ118は、検査者が選択したビームフィルタ118に変更される。
【0023】
回転モーター122は、支持軸108を回転中心としてアーム106を回転させる。すなわち、支持軸108がトモシンセシス撮影やバイオプシにおける位置決め撮影におけるX線管114の回転中心軸となる。より詳細には、回転モーター122は、情報処理装置200に接続され、情報処理装置200が出力する回転信号に従い、アーム106を回転させる。これにより、アーム106の上端部に設けられた照射装置112の照射位置が変更され、異なる方向から被検体の乳房にX線の照射を自動的に行うことができる。
【0024】
支持板110は、上述のように、支持軸108を介してスタンド104に固定支持されている。この支持板110の下側端部には撮影台124が設けられている。撮影台124は、被検体の乳房を支持する台であり、乳房が載せられる支持面を有する。また、支持板110は、撮影台124の上方に配置された圧迫板126を上下方向へ移動可能に支持している。圧迫板126は、撮影台124に対して平行に対向するとともに、撮影台124に支持される被検体の乳房を圧迫する。乳房は圧迫されることで乳腺などの重なりが減じられ、診断により適したX線画像の撮像が可能になる。
【0025】
昇降モーター128は、支持軸108の端部に設けられており、昇降機構130を介して、圧迫板126を上下に昇降させる。より詳細には、昇降モーター128は、情報処理装置200に接続され、情報処理装置200が出力する昇降信号に従い、圧迫板126を昇降させる。このように、昇降モーター128が、圧迫板126を撮影台124に接近する方向に移動させた場合に、撮影台124上に支持されている被検体の乳房は圧迫される。
【0026】
撮影台124の内部には、X線検出器132と、画像生成回路134とが設けられている。X線検出器132は、検出面に照射されたX線を検出するための平面検出器(FPD:Flat Panel Detector)により構成されている。FPDはイメージセンサを有しており、イメージセンサには、光導電膜や蛍光体と共にCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)や、CCD(Charge Coupled Device)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)などが組み合わせて利用されている。
【0027】
より詳細には、X線検出器132は、情報処理装置200に接続され、情報処理装置200から入力される例えば蓄積信号、及び照射時間信号に従い制御される。例えば、CMOSイメージセンサでは、蓄積信号に従い、各画素を構成するフォトダイオード(PD:Photodiode)は、X線がX線管114から照射されている間、蛍光膜により変換された光を検出し、X線量に応じた電荷を蓄える。そして、照射時間信号に従い、これらの各画素は、照射時間の終了に応じて、蓄えた電荷を電圧に変換し、増幅器で増幅された電圧信号をアナログの画像信号として出力する。
【0028】
画像生成回路134は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。より詳細には、画像生成回路134は、X線検出器132と情報処理装置200とに接続され、X線検出器132から入力されるアナログの画像信号を、デジタルの画像信号に変換する。画像生成回路134は、このデジタルの画像信号をX線画像の画像信号として、情報処理装置200に出力する。
【0029】
また、本実施形態のX線画像診断装置1は、通常撮影モードと、検査モードと、を有している。通常撮影モードでは、撮影台124に載置された被検体の乳房を圧迫板126で圧迫した状態で、トモシンセス撮影やバイオプシの位置決め撮影などが行われる。
【0030】
一方、検査モードでは、被検体の乳房を撮影台124に載置せずに、予め定められた複数の照射位置から照射したX線が撮像される。これらの被検体を撮影台124に載置せず撮像されたX線画像に基づき、後述する乳房撮影装置100内の異物、キズ、欠陥画素の検出などが行われる。
【0031】
ここで、異物は、乳房撮影装置100内に付着する埃、ゴミなどであり、画像診断の妨げとなる物質である。異物は、検出されると、清掃により取り除かれる。
【0032】
キズは、ビームフィルタ118、圧迫板126、撮影台124、及びX線検出器132の表面に生じた裂け目などであり、画像診断の妨げとなる箇所を意味する。キズは、検出されると、修繕やユニットの取り替えなどにより取り除かれる。
【0033】
欠陥画素は、X線検出器132内の各画素に同一のX線量を照射した場合に、特徴画素値を出力する画素を意味する。ここでの特徴画素値は、他の画素が出力する画素値と異なる画素値を意味する。換言すると、欠陥画素は、X線検出機器内の各画素に同一のX線量を照射した場合に、他の画素が出力する画素値と著しく異なる画素値を出力する画素を意味する。また、本実施形態では、欠陥画素の位置を欠陥点と呼ぶ。欠陥画素は、例えば画素を構成するフォトダイオードの動作不良や配線不良などにより生じる。このため、欠陥画素は、X線を受光しても、所定の値よりも小さな値の画像信号を出力したり、大きな値の画像信号を出力したり、画像信号を出力しなかったりする。後述のように、欠陥画素の画素値は補正される。
【0034】
なお、乳腺とは、乳房内の組織である。乳房は主に乳腺と脂肪からなる。腫瘤とは、乳房内にある、乳腺や脂肪とは少し違う組成物でできたかたまりである。腫瘤には、その形状、濃度、辺縁(まわりの縁取り方)などにより、良性か悪性かが診断される。石灰化は、血管や乳管、または病変の一部などが変化し、石のようにX線画像に撮像される。石灰化は、その形態や乳房内での分布の仕方などにより、良性か悪性かが診断される。
【0035】
次に、
図2に基づき、乳房撮影装置100における複数の照射位置について説明する。
図2は、アーム106が支持軸108を回転中心として回転している状態を示す図である。ここでは、支持軸108の中心を点で示している。この
図2に示すように、情報処理装置200が出力する回転信号に従い、回転モーター122が、アーム106を回転させる。これにより、情報処理装置200は、アーム106の端部に設けられた照射装置112の位置変更を行う。検査モードでは、例えば角度−θ、0、θ度中の複数の角度において、照射装置112からX線が照射される。
【0036】
次に、
図3に基づき情報処理装置200の構成を説明する。
図3は、第1実施形態に係る情報処理装置200の構成を示すブロック図である。この情報処理装置200は、第1記憶回路202と、制御回路204と、第2記憶回路206と、処理回路208とを備えている。
【0037】
第1記憶回路202は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。第1記憶回路202は、制御回路204及び処理回路208にて行われる各処理機能をコンピュータによって実行可能なプログラム形態で、記憶している。また、X線画像診断装置1で用いられる各種のデータを記憶する。
【0038】
制御回路204は、プログラムを第1記憶回路202から読み出し、実行することで各プログラムに対応する各制御機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の制御回路204は、各処理機能を有することとなる。なお、
図3においては単一の制御回路204にて各処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路204を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各処理機能を実現しても構わない。
【0039】
より詳細には、制御回路204は、撮影制御機能210と、回転制御機能212と、変更制御機能214と、昇降制御機能216とを備えて構成されているとともに、乳房撮影装置100の変更モーター120と、回転モーター122と、昇降モーター128と、X線検出器132と、画像生成回路134と、処理回路208と、入力回路300と、ディスプレイ400と、曝射ボタン500と、高電圧発生器600となどに接続され、X線画像撮影装置の全体を制御する。
【0040】
撮影制御機能210は、X線画像診断装置1の全体の撮影タイミングなどを制御するとともに、各機能を制御する。すなわち、撮影制御機能210は、処理回路208の制御も行う。
【0041】
回転制御機能212は、上述のように、撮影制御機能210の制御に従い、回転モーター122の制御を行う。より詳細には、撮影制御機能210が指示する撮影位置に、照射装置112が位置するように回転モーター122の回転制御を行う。
【0042】
変更制御機能214は、撮影制御機能210の制御に従い、変更モーター120の制御を行う。より詳細には、撮影制御機能210が指示するビームフィルタ118が、照射装置112の照射するX線が透過する位置に配置されるように、ビームフィルタ118の変更制御を行う。
【0043】
昇降制御機能216は、撮影制御機能210の制御に従い、昇降モーター128の昇降制御を行う。より詳細には、撮影制御機能210が指示する位置に圧迫板126が位置するように、圧迫板126の昇降制御を行う。この場合、昇降制御機能216は、被検体の乳房にかかる圧力が所定範囲になるように、昇降モーター128の負荷制御を行う。
【0044】
第2記憶回路206は、上述の異物、キズ、及び欠陥点に関する情報を記憶する。この第2記憶回路206は、磁気的もしくは光学的記録媒体または半導体メモリなどの、読み取り可能な記録媒体を含んだ構成を有する。すなわち、第2記憶回路206は、異物テーブル218と、キズテーブル220と、欠陥点テーブル222とを備えて構成される。異物テーブル218は、総合ゴミテーブルであり、異物の位置座標、及び発生の日時を少なくとも記憶する。キズテーブル220は、キズの位置座標、及び発生の日時を少なくとも記憶する。欠陥点テーブル222は、欠陥点の位置座標、及び発生の日時を少なくとも記憶する。
【0045】
処理回路208は、プログラムを第1記憶回路202から読み出し、実行することで各プログラムに対応する各制御機能を実現するプロセッサである。すなわち、処理回路208は、画像処理機能224と、取得機能226と、特徴画素検出機能228と、判別機能230と、座標変換機能231とを備えて構成されている。
【0046】
画像処理機能224は、画像生成回路134に接続され、X線画像に前処理を施す。例えば、この画像処理機能224は、シェーディング補正処理、感度補正処理、欠陥点補正処理などを前処理としてX線画像に施す。シェーディング補正処理は、X線画像の画素値を補正する処理であって、照射装置112とX線検出器132との配置により生じるX線の強度分布のばらつきを補正する処理である。これにより、照射装置112からX線検出器132に照射されるX線の強度が均一でなくても、強度を均一にしたX線を照射した場合と同等なX線画像を得ることが可能である。
【0047】
感度補正処理は、X線画像の画素値を補正する処理であって、X線検出器132における各画素の感度を均一化する処理である。この感度補正処理により、X線検出器132内の画素感度が不均一であっても、感度が均一な画素で撮像されたX線画像と同等のX線画像を得ることができる。
【0048】
欠陥点補正処理は、欠陥点テーブル222の情報を用いて、欠陥画素の周辺における画素値で欠陥画素の画素値を補正する処理である。例えば、欠陥点補正処理は、欠陥画素から所定範囲内における画素値の平均値を、欠陥画素の画素値とする処理である。これにより、欠陥画素の画素値は、欠陥画素から所定範囲内における画素が受光するX線量の平均値に比例した値と同等になる。
【0049】
また、画像処理機能224は被検体の乳房の断層画像を再構成する機能を有する。すなわち、通常撮影モードにおいて、画像処理機能224は、照射角度の異なる複数のX線画像に基づき、乳房断層画像の再構成を行う。ここでのX線画像には、上述の前処理が施されている。
【0050】
取得機能226は、制御回路204及び第1記憶回路202に接続され、制御回路204が出力する制御信号に基づき、乳房撮影装置100の撮影状態に関するシステム情報を取得する。すなわち、取得機能226は、撮影に用いられているビームフィルタ118の種別と、アーム106の角度と、圧迫板126の位置とを取得する。また、取得機能226は、システム情報をX線画像に関連づけて第1記憶回路202に記憶する。
【0051】
また、取得機能226は、ビームフィルタ118表面上の位置座標を演算し、予め第1記憶回路202に記憶する。これらの位置座標は、後述するようにビームフィルタ118表面上の異物などの位置座標を詳細演算する場合に、判別機能230により用いられる。例えば、検査モードでのアーム106の回転角度−θ、0、θ(
図2)は、予め定められている。このため、取得機能226は、検査モードで用いられる角度−θ、0、θ毎に、ビームフィルタ118表面上の位置座標を予め演算し、第1記憶回路202に記憶する。同様に、取得機能226は、回転角度−θ、0、θ(
図2)の照射装置112の照射位置の位置座標を予め演算し、第1記憶回路202に記憶する。
【0052】
特徴画素検出機能228は、画像処理機能224で前処理されたX線画像から特徴画素を検出し、判別機能230に特徴画素の位置座標を出力する。すなわち、この特徴画素検出機能228は、検査モードにおいて取得されたX線画像内の画素値が他の画素値と異なる特徴画素を検出する。例えば、特徴画素検出機能228は、所定値以下の画素、つまり暗い画素を特徴画素として検出する。より詳細には、特徴画素検出機能228は、画像処理機能224で前処理を行ったX線画像における画素値の標準偏差σの演算を行う。そして、特徴画素検出機能228は、X線画像の平均画素値よりも標準偏差σの3倍以上小さい画素値を所定値として取得する。このように、特徴画素検出機能228は、X線画像内の画素値が他の画素値と統計的に異なる特徴的な画素を特徴画素として検出可能である。
【0053】
判別機能230は、複数の照射条件により生成されたX線画像間における特徴画素の変化に基づき、特徴画素の発生原因を判別する。すなわち、判別機能230は、特徴画素検出機能228で検出された特徴画素の情報を取得するとともに、特徴画素が検出されたX線画像に関連づけられたシステム情報を第1記憶回路202から取得する。そして、判別機能230は、特徴画素の情報とシステム情報とに基づき、特徴画素の発生原因を判別する。
【0054】
より詳細には、
図2を参照にしつつ
図4乃至
図6に基づき、判別機能230について説明する。
図4は、
図2で示したアーム106が支持軸108を回転中心として回転している状態を簡略化して示す図である。ここでは、特徴画素の発生原因が存在する箇所T10、T12、T14、T16、T18と、X線画像中での特徴画素の位置T10A、T10B、T12A、T12B、T14A、T14B、T16A、T16B、T18Bと、を示す。また、照射装置112が照射するX線の中で、これらT10、T12、T14、T16、T18を透過するX線を線分で示している。
図4中でのA、Bは、照射装置112の2箇所の照射位置を示している。
【0055】
図4(a)は、特徴画素の発生原因T10がX線検出器132にある場合を示す図であり、
図4(b)は、特徴画素の発生原因T12が撮影台124にある場合を示す図であり、
図4(c)は、特徴画素の発生原因T14が圧迫板126にある場合を示す図であり、
図4(d)は、特徴画素の発生原因T16がビームフィルタ118f1にある場合を示す図であり、
図4(e)は、特徴画素の発生原因T18がビームフィルタ118f1にある場合を示す図である。なお、
図4(e)は、照射位置をBに固定した状態で、ビームフィルタ118f1、f2を変更している。すなわち、
図4(a)〜(d)では、照射条件として、照射位置をA、Bの2箇所の位置に変更している。また、
図4(e)では、照射条件として、ビームフィルタ118f1をビームフィルタ118f2に変更している。ここでは、T10はX線検出器132の欠陥画素の位置を示し、T12は撮影台124上の異物を示し、T14は圧迫板126上の異物を示し、T16及びT18はビームフィルタ118f1上の異物の位置を示している。なお、T12、T14、T16、及びT18はキズでもよい。
【0056】
この
図4(a)に示す例では、X線検出器132内の欠陥画素T10が特徴画素値を出力している。ここで、T10Aは、照射装置112が位置AからX線を照射している場合の特徴画素値の位置を示しており、T10Bは、照射装置112が位置Bから線を照射している場合の特徴画素値の位置を示している。このように、照射装置112の位置A、Bを変更しても、特徴画素値を出力する欠陥画素T10の位置は変化しないので、特徴画素の位置T10A、T10Bは変化しない。
【0057】
一方で、
図4(b)〜(d)では、照射経路中に異物T12、T14、T16が存在している。このような場合、照射装置112の照射位置A、Bを変更すると、異物T12、T14、T16を透過したX線が照射される位置は、必ず変化する。すなわち、照射位置Aである場合に、異物T12、T14、T16を透過したX線が照射される位置が特徴画素T12A、T14A、T16Aの位置となる。一方、照射位置Bである場合に、異物T12、T14、T16を透過したX線が照射される位置が特徴画素T12B、T14B、T16Bの位置になる。
【0058】
ここで、異物T12、T14、T16を透過したX線のX線量は、異物T12、T14、T16で吸収されている。このため、異物T12、T14、T16を透過したX線が照射される位置に存在する画素が出力する画素値は、他の画素値よりも小さくなる。換言すると、異物T12、T14、T16を透過したX線が照射される位置に存在する画素が、特徴画素として検出される。
【0059】
このように、照射経路中に異物T12、T14、T16が存在する場合には、照射装置112の照射位置A、Bを変更すれば、特徴画素の位置が、位置T12A、T14A、T16Aから位置T12B、T14B、T16Bに変化する。一方で、欠陥画素T10が特徴画素値を出力している場合には、照射装置112の照射位置を変更しても、特徴画素の位置T10A、T10Bは変化しない。
【0060】
このため、判別機能230は、複数の照射位置A、Bにより生成されたX線画像間において、特徴画素の位置が変化する場合に、X線の照射経路中に特徴画素の発生原因があると判別する。この場合の発生原因は、異物T12、T14、T16である。例えば、
図4(b)では、複数の照射位置A、Bにより生成されたX線画像間において、特徴画素の位置がT12AからT12Bへと変化する場合に、X線の照射経路中に特徴画素の発生原因T12があると判別される。
【0061】
また、判別機能230は、複数の照射位置A、Bにより生成されたX線画像間において、特徴画素の位置T10A、T10Bが変化しない場合に、X線検出器132に特徴画素の発生原因T10があると判別する。例えば、
図4(a)では、複数の照射位置A、Bにより生成されたX線画像間において、特徴画素の位置T10AとT10Bとが変化しない場合に、X線検出器132に特徴画素の発生原因T10があると判別される。この場合、欠陥画素T10が特徴画素の発生原因であり、T10Aの位置座標はT10Bの位置座標と等しい。
【0062】
また、
図4(e)に示すようには、ビームフィルタ118f1上に異物T18が存在する場合、異物T18を透過したX線が照射される位置に存在する画素が出力する画素値は、他の画素値よりも小さくなる。このため、異物T18を透過したX線が照射される位置に存在する画素は特徴画素T18Bとして検出される。一方で、ビームフィルタ118f2を用いた場合には、特徴画素の発生原因は存在しないので、特徴画素は検出されない。
【0063】
このため、判別機能230は、ビームフィルタ118f1、f2の変更に応じて生成されたX線画像間において、特徴画素の発生に変化が生じる場合に、ビームフィルタ118f1、f2に特徴画素の発生原因があると判別する。すなわち、判別機能230は、ビームフィルタ118f1をf2に変更することで、特徴画素が検出されなくなった場合に、ビームフィルタ118f1に特徴画素の発生原因T18があると判別する。一方で、判別機能230は、ビームフィルタ118f2をf1に変更することで、特徴画素が検出された場合に、ビームフィルタ118f1に特徴画素の発生原因T18があると判別する。このように、判別機能230は、複数の照射条件により生成されたX線画像間における特徴画素の変化に基づき、特徴画素の発生原因を判別する。
【0064】
また、
図4(b)、(c)に示すように、照射装置112の照射位置がAからBに移動した場合の特徴画素の移動量は、それぞれD12、D14である。また、ここでの移動量は、D12<D14の関係にある。すなわち、発生原因であるT12、及びT14がX線検出器132から離れるに従い、移動量D12、D14は大きくなる。すなわち、照射位置の移動量に対して特徴画素の移動量が大きくなるにしたがい、X線の照射経路中において、X線検出器132からより離れた位置に特徴画素の発生原因があることになる。
【0065】
このため、判別機能230は、照射位置の移動量に対して特徴画素の移動量が大きくなるにしたがい、X線の照射経路中における、X線検出器132からより離れた位置に特徴画素の発生原因があると判別する。つまり、特徴画素の移動量に基づき、特徴画素の発生原因があるユニットを判別できる。ただし、ビームフィルタ118は、照射装置112と共に移動するため、特徴画素の移動量に基づき、ビームフィルタ118の位置を判別することはできない。このため、
図4(e)に示したように、ビームフィルタ118f1、118f2を入れ替えてX線を照射することにより、どのビームフィルタに特徴画素の発生原因があるのかを特定できるようにしているのである。
【0066】
また、通常であれば、照射位置Aと、Bとを結ぶ線分と、X線検出器132の検出面とは、平行である。さらに、X線検出器132の検出面と、撮影台124の支持面、及び圧迫板126は平行であるので、照射位置Aと、Bとを結ぶ線分と、X線検出器132の検出面と、撮影台124の支持面と、圧迫板126の圧迫面とはほぼ平行になる。この場合、例えば
図4(b)において、照射位置A、Bと特徴画素の発生原因T12とを結ぶ三角形と、発生原因T12と特徴画素の位置T12A、T12Bを結ぶ三角形は相似形になる。このため、発生原因T12が撮影台124の支持面の何れに位置しても、移動量はほぼ同じ値になる。この場合には、移動量に基づき、X線の検出面からの高さを一意に求めることが可能である。
【0067】
例えば、
図2に示すように、アーム106を−θとした位置を照射位置Aとし、アーム106をθとした位置を照射位置Bとすると照射位置Aと、Bとを結ぶ線分と、X線検出器132の検出面、撮影台124の支持面、及び圧迫板126の圧迫面は平行になる。
【0068】
図5は、特徴画素の移動量とユニットの位置との関係を示す図である。ここでは、照射位置Aと、照射位置Bとを結ぶ線分がX線撮影器の検出面と平行である場合について図示している。すなわち、移動量に基づき、X線検出器132の検出面からの高さを一意に求めることができる。また、X線検出器132の検出面を、Z軸の原点として示している。
【0069】
図5中で、B100で示す四角形の範囲は撮影台124下の高さの範囲を示している。すなわち、X線検出器132の検出面から撮影台124の支持面までの範囲を示している。また、B200で示す直線は撮影台124表面の高さを示している。さらにまた、B300で示す四角形の範囲は圧迫板126の圧迫面表面の昇降範囲を示している。
【0070】
この
図5に示すように、乳房撮影装置100における圧迫板126、撮影台124の高さの範囲は予め定められている。これにより、特徴画素の発生原因が存在する高さに相当するユニットに、特徴画素の発生原因が存在すると判別することができる。このため、判別機能230は、X線画像間における特徴画素の移動量に基づき、圧迫板126、撮影台124、撮影台124下、X線検出器132の検出面のいずれに、特徴画素の発生原因が存在するかを判別可能である。
【0071】
より詳細には、判別機能230は、移動量が0である場合には、発生原因がX線検出器132の「検出面」、すなわちX線検出器132の画素にあると判別する。また、判別機能230は、移動量が「撮影台下」と示す範囲にある場合に、発生原因がX線検出器132の検出面と撮影台124表面との間あると判別する。同様に、移動量が「撮影台」と示す範囲にある場合に、発生原因が撮影台124の表面にあると判別する。同様に、移動量が「圧迫板」と示す範囲ある場合に、発生原因が圧迫板126の圧迫面表面にあると判別する。このように、移動量を求めるだけで、異常画素の発生原因が存在するユニットを判別可能である。
【0072】
一方で、移動量が「エラー」と示す範囲にある場合には、発生原因の位置の検出エラーであると判別する。このように予め、特徴画素の移動量の範囲を算出して定義しておくことで、ユニットの判別処理と、判別のエラー処理とを行うことが可能となる。
【0073】
次に、
図4を参照にしつつ
図6に基づき、判別機能230における位置座標の演算機能について説明する。
図6は、照射装置112の位置座標と、特徴画素座標とを示す図である。ここでは、位置を三次元の座標で示している。
【0074】
図6(a)は、特徴画素の発生原因が撮影台124の支持面又は圧迫板126の圧迫面表面にある場合を示す図である。つまり、
図4(b)、(c)と同様の図である。ここで、L100は、照射装置112の照射位置座標(xa1、ya1、za1)と特徴画素の位置座標(xa2、ya2、za2)と結ぶ線分を示しており、L200は、照射装置112の照射位置座標(xb1、yb1、zb1)と特徴画素の位置座標(xb2、yb2、zb2)と結ぶ線分を示している。
【0075】
図6(b)は、特徴画素の発生原因がビームフィルタ118f1の表面上にある場合を示す図である。つまり、
図4(e)の左図と同様の図である。ここで、L300は、照射装置112の照射位置座標(xa1、ya1、za1)と特徴画素の位置座標(xa3、ya3、za3)と結ぶ線分を示している。
【0076】
この
図6(a)に示すように、線分L100と線分L200の交点が、特徴画素の発生原因T20の位置座標(xT20、yT20、zT20)になる。このため、判別機能230は、照射装置112の位置と対応する特徴画素の位置との組み合わせに基づき、異物の位置座標を判別することが可能である。ただし、例えば
図4(d)に示すように、特徴画素の発生原因がビームフィルタ118の表面上にある場合には、ビームフィルタ118はX線管114とともに移動するため、照射装置112の位置と対応する特徴画素の位置との組み合わせに基づき異物の位置座標を判別することはできない。
【0077】
このため、
図6(b)に示すように、判別機能230は、第1記憶回路202に記憶されるビームフィルタ118f1における表面の位置座標を取得する。そして、判別機能230は、このビームフィルタ118表面の位置座標と線分L300との交点を特徴画素の発生原因T22の位置座標(xT22、yT22、zT22)として演算する。すなわち、ビームフィルタ118f1の表面と線分L300との交点が特徴画素の発生原因T22の位置として演算される。このように、判別機能230は、ビームフィルタ118表面の位置座標と、照射装置112の照射位置座標(xa1、ya1、za1)及び特徴画素の座標(xa3、ya3、za3)を結ぶ線分との組み合わせに基づき、異物の位置座標を判別することが可能である。
【0078】
図2及び
図3を参照にしつつ、
図6に基づき座標変換機能231について説明する。座標変換機能231は、異物の三次元の位置座標を、XY面上の二次元の位置座標に変換する。ここでは、二次元の位置座標の原点を、例えばアーム106の回転が0度の場合のX線管114の中心位置とする。すなわち、X線管114の中心位置における二次元の位置座標は(0、0)である。また、アーム106の回転角が0度の場合におけるX線管114の中心位置の三次元座標を例えば(Xc1、Yc1、Zc1)とする。これにより、座標変換機能231は、圧迫板126、撮影台124、及びX線検出器132上の異物の三次元の位置座標(X、Y、Z)を二次元の位置座標((X-Xc1)、(Y-Yc1))に変換する。
【0079】
ビームフィルタ118の場合には、アーム106の回転により、ビームフィルタ118上における異物の三次元の位置座標が変化する。このため、ビームフィルタ118の場合には、アーム106の回転角度の情報も用いて、アーム106の回転角度が0度の場合における二次元の位置座標に変換する。
【0080】
より具体的には、座標変換機能231は、アーム106の角度及び回転中心108からビームフィルタ118までの距離の情報を用いて、例えば三次元の位置座標(xT22、yT22、zT22)をアーム106の回転角度が0度の場合における二次元の位置座標(xF22、yF22)に変換する。この場合にも、二次元の位置座標の原点を、例えばアーム106の回転が0度の場合のX線管114の中心位置とする。このように、ビームフィルタ118、圧迫板126、撮影台124、及びX線検出器132上の異物の三次元の位置座標を二次元の位置座標に変換することで、後述するように異物の座標をマップ(例えば
図17、
図19)上に示す場合に、操作者は異物の位置を容易に理解可能となる。
【0081】
また、座標変換機能231は、アーム106の角度に基づき、二次元の位置座標を三次元の位置座標に変換する。例えば、座標変換部231は、アーム106の角度、及び回転中心108からビームフィルタ118までの距離に基づき、二次元座標を三次元の位置座標に変換する。ここで、回転中心108からビームフィルタ118までの距離は固定値であり、アーム106の角度も取得可能である。これにより、例えばアーム106の角度が0度以外のマップなどに、ビームフィルタ118上における異物の位置座標を提示可能となる。
【0082】
次に、
図7に基づき照射条件の一例を説明する。
図7は、ビームフィルタ118f1、f2、f3を変更すると共に、照射装置112の照射位置A、B、Cを変更する例を示す図である。ここでは、制御回路204の撮影制御機能210は、照射条件としてビームフィルタ118f1、f2、f3の変更を設定し、照射条件として複数の照射位置A、B、Cを設定している。この照射条件では、ビームフィルタ118f1、f2、f3ごとに3箇所の照射位置A、B、CからX線の照射が行なわれる。例えば、照射装置112の照射位置A、B、Cに対応するアーム106の角度(
図2)は、−θ、0、θである。
【0083】
以上が第1実施形態に係るX線画像診断装置1の構成の説明であるが、以下に第1実施形態に係るX線画像診断装置1における撮影制御の一連の流れを説明する。
【0084】
図8は、X線画像診断装置1の検査モードにおける撮影制御の一連の流れを示したフローチャートを示す図である。ここでは、
図7に示したように、複数のビームフィルタ118f1、f2、f3ごとに複数の照射位置A、B、CからX線の照射が行なわれる場合について説明する。
【0085】
ステップS100は、撮影制御機能210に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から撮影制御機能210に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、撮影制御機能210が実現されるステップである。ステップS100では、撮影制御機能210が照射条件に基づき、撮影に用いるビームフィルタ118f1を選択する。
【0086】
ステップS102は、変更制御機能214に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から変更制御機能214に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、変更制御機能214が実現されるステップである。ステップS102では、変更制御機能214が、撮影制御機能210の制御にしたがい、選択されたビームフィルタ118f1に変更するように変更モーター120の制御を行う。
【0087】
ステップS104は、撮影制御機能210に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から撮影制御機能210に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、撮影制御機能210が実現されるステップである。ステップS104では、撮影制御機能210が照射条件に基づき、照射装置112の最初の照射位置Aを選択する。
【0088】
ステップS106は、回転制御機能212に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から回転制御機能212に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、回転制御機能212が実現されるステップである。ステップS106では、回転制御機能212は、撮影制御機能210の制御にしたがい、アーム106に設置された照射装置112が選択された位置Aに移動するまで、アーム106を回転させる制御を回転モーター122に行う。
【0089】
ステップS108は、撮影制御機能210に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から撮影制御機能210に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、撮影制御機能210が実現されるステップである。ステップS108では、撮影制御機能210が高電圧発生器600に管電圧及びフィラメント電流を供給させると共に、X線検出器132に電荷の蓄積を行う制御を行う。続いて、撮影制御機能210が、高電圧発生器600に管電圧及びフィラメント電流の供給を停止させ、画像生成回路134にX線画像の生成制御を行う。
【0090】
ステップS110は、取得機能226に対応するステップである。処理回路208が第1記憶回路202から取得機能226に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、取得機能226が実現されるステップである。ステップS110では、取得機能226が、ビームフィルタ118の種類としてビームフィルタ118f1、アーム106の回転角度−θ、及び圧迫板126の位置をシステム情報として取得し、ステップS108で生成されたX線画像と関連付けて、X線画像と共に第1記憶回路202に記憶する。
【0091】
ステップS112は、撮影制御機能210に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から撮影制御機能210に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、撮影制御機能210が実現されるステップである。ステップS112では、撮影制御機能210が照射条件に基づく全ての照射位置A、B、Cで照射を行ったか否かを判別する。全ての照射位置A、B、Cでの撮影が終わっていない場合には(ステップS112:NO)、上述したステップS104の処理に戻り、次の照射位置を選択する。一方、全ての照射位置A、B、Cでの撮影が終わっている場合には(ステップS112:YES)、ステップS114の処理に進む。
【0092】
ステップS114は、撮影制御機能210に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から撮影制御機能210に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、撮影制御機能210が実現されるステップである。ステップS114では、撮影制御機能210が照射条件に基づく全てのビームフィルタ118f1、f2、f3で照射を行ったか否かを判別する。全てのビームフィルタ118f1、f2、f3での撮影が終わっていない場合には(ステップS114:NO)、上述したステップS100の処理に戻り、次のビームフィルタを選択する。一方、全てのビームフィルタ118f1、f2、f3での撮影が終わっている場合には(ステップS114:YES)、ステップS116の処理に進む。
【0093】
ステップS116は、画像処理機能224に対応するステップである。処理回路208が第1記憶回路202から画像処理機能224に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、画像処理機能224が実現されるステップである。ステップS116では、画像処理機能224が撮像された全てのX線画像に所定の前処理を施す。
【0094】
ステップS118は、特徴画素検出機能228に対応するステップである。処理回路208が第1記憶回路202から特徴画素検出機能228に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、特徴画素検出機能228が実現されるステップである。ステップS118では、ステップS116で前処理が施された全X線画像から特徴画素を検出する。そして、特徴画素検出機能228は、検出した特徴画素の位置情報を、第1記憶回路202に記憶されるシステム情報と関連づけて記憶し、一連の処理を終了する。
【0095】
このように、撮影制御機能210の制御に従い、照射条件で設定されたビームフィルタ118ごとに、照射条件で設定された全ての照射位置からX線の照射を行なう。続いて、照射されたX線に基づくX線画像を生成する。そして、前処理が施された全X線画像から特徴画素を検出し、特徴画素の位置とシステム情報を関連づけて記憶する。これにより、特徴画素の位置情報と、この特徴画素を有するX線画像と、このX線画像の撮影時のシステム情報とが関連づけられ、第1記憶回路202に記憶される。
【0096】
次に、
図9に基づきビームフィルタ118f1、f2、f3に異物、或いはキズがあるか否かを判別する処理の流れの一例を説明する。
図9は、ビームフィルタ118f1、f2、f3に特徴画素の発生原因があるか否かを判別する判別機能230のアルゴリズムの一例を説明するフローチャートを示す図である。
【0097】
ここでは、
図8で検出した特徴画素に関する情報を用いて、ビームフィルタ118に特徴画素の発生原因があるか否かを判別する一例を説明する。処理回路208が第1記憶回路202から判別機能230に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、
図9のフロ−チャートの各ステップを実行することで判別機能230を実現する。
【0098】
ステップS200では、判別機能230が、照射条件にしたがいX線が照射された照射位置A、B、Cの中から、任意の照射位置を選択する。ここでは、最初の照射位置Aを選択する。
【0099】
ステップS202はでは、判別機能230が、選択された照射位置Aにおいて撮像された全てのX線画像、X線画像に関連づけられたシステム情報、及びX線画像に関連づけられた特徴画素の位置情報を第1記憶回路202から取得する。ステップS204では、判別機能230が、選択された照射位置Aで撮像された全てのX線画像を選択する。
【0100】
ステップS206では、判別機能230が選択したX線画像の二値化を行う。具体的には、判別機能230は、特徴画素が関連づけられたX線画像において、特徴画素の位置に対応する画素に例えば定数10.0を割り振る。一方で、特徴画素でない画素には、例えば0.0を割り振る。また、特徴画素が関連づけられていないX線画像には、全画素に0.0を割り振る。これにより、選択された全X線画像は、特徴画素には10.0が割り振られ、それ以外の画素には0.0が割り振られた二値化画像に変換される。すなわち、特徴画素を選択する際に用いた所定のしきい値以下の画素には10.0が割り振られ、それ以外の画素には0.0が割り振られる。
【0101】
ステップS208では、判別機能230が、同一座標の画素の値を二値化した全画像を通して比較する。この場合、画像を構成する全画素の座標に関して、この比較を行う。全画素の座標に関して、この比較を行った後に、同じ照射位置で撮影された異なるビームフィルタに対応する画像の同一座標の画素値の中で一つでも異なる値が存在した場合(ステップS208:YES)、その座標をビームフィルタ118上の異物に基づく、特徴画素の座標と判別し、ステップS210に進む。
【0102】
ステップS210では、判別機能230は、照射装置112の位置座標と特徴画素の座標とを結ぶ線分と、ビームフィルタ118の表面上の位置座標の交点を異物の位置座標として演算する。この場合、判別機能230は、第1記憶回路202からビームフィルタ118の表面上の位置座標を取得する。続いて、判別機能230は、異物の三次元の位置座標を取得する。更に続いて、座標変換機能231は、異物の三次元の位置座標を二次元の位置座標に変換する。そして、判別機能230は、異物の二次元位置座標と、異物の存在するビームフィルタ118の種類と、特徴画素を含むX線画像が撮影された日時とを、異物テーブル218に記憶し、一連の処理を終了する。
【0103】
一方で、ステップS208において、全座標における比較処理を行っても、同一座標の画素値の中で一つも異なる値が存在しない場合(ステップS208:NO)、判別機能230は、ビームフィルタ118に特徴画素の発生原因がないと判別し、ステップS210の処理をスキップし、一連の処理を終了する。
【0104】
このように、ビームフィルタ118の変更に応じて生成されたX線画像間において、特徴画素の発生に変化が生じるか否かを判別する。特徴画素の発生に変化が生じる場合に、ビームフィルタ118に特徴画素の発生原因があると判別する。一方で、特徴画素の発生に変化が生じない場合に、ビームフィルタ118に特徴画素の発生原因がないと判別する。
【0105】
次に、
図10に基づき、X線の照射経路中に特徴画素の発生原因があるか否かを判別する処理について説明する。
図10は、X線の照射経路中に特徴画素の発生原因があるか否かを判別する判別機能230のアルゴリズムの一例を説明するフローチャートを示す図である。ここでは、
図8で検出した特徴画素に関する情報、及び
図9で判別した異物などの存在するビームフィルタ118の情報を用いて判別処理を行う。処理回路208が第1記憶回路202から判別機能230に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、
図10のフロ−チャートの各ステップを実行することで判別機能230を実現する。
【0106】
ステップS300では、判別機能230は、異物などのあるビームフィルタ118で撮像したX線画像に関する情報を除き、第1記憶回路202からX線画像、特徴画素の位置情報、及びシステム情報を取得する。ステップS302では、判別機能230は、複数の照射位置により生成されたX線画像間における特徴画素の位置を抽出する。
【0107】
ステップS304では、判別機能230は、抽出した特徴画素の位置が異なる照射位置で撮影したX線画像間で変化するか否かを判別する。特徴画素の位置が変化しない場合(ステップS304:No)に、X線検出器132に特徴画素の発生原因があると判別し、ステップS306の処理に進む。
なお、異なる画像間で特徴画素の位置が移動する範囲は、照射位置の移動範囲に応じて決まるので、移動範囲内にある各画像の特徴画素の位置の変化を検出するようにしても良い。これにより、1つの画像に複数の異物がある場合でも、同じ異物に対応する特徴画素を特定して位置の変化を検出することが可能になる。
【0108】
ステップS306では、判別機能230は、抽出した特徴画素の座標、特徴画素が撮像された日時、及びユニット名としてX線検出器132を第2記憶回路206の欠陥点テーブル222に記憶する。
【0109】
一方で、ステップS304において、特徴画素の位置がX線画像間で変化する場合(ステップS304:Yes)に、X線の照射経路中に特徴画素の発生原因があると判別する。そして、ステップS308の処理に進む。
【0110】
ステップS308では、判別機能230は、特徴画素の移動量に対応する、特徴画素の発生原因があるZ軸方向の高さを取得する。高さは、
図4および
図6で説明した方法により求める。ステップS310では、判別機能230は、取得した高さに相当するユニットに特徴画素の発生原因が存在すると判別する。すなわち、特徴画素の発生原因がどのユニットに存在するか判別する。ユニットを特定する方法としては、高さを用いずに、移動量と対応するユニットの対応関係を記憶しておき、その対応関係に基づいて移動量からユニットを判別するようにしても良い。
【0111】
ステップS306の処理が終了した場合、及びテップS310の処理が終了した場合には、ステップS312では、判別機能230が、異常画素の発生原因があるユニットをディスプレイ400に表示させる。そして、一連の処理を終了する。表示は、発生原因があるユニット名や、装置上の発生原因があるユニットを識別可能な図などで表示する。
【0112】
このように、複数の照射位置により生成されたX線画像間において、特徴画素の位置が変化する場合に、X線の照射経路中に特徴画素の発生原因があると判別する。一方で、複数の照射位置により生成されたX線画像間において、特徴画素の位置が変化しない場合に、X線検出器132に特徴画素の発生原因があると判別する。また、X線の照射経路中に特徴画素の発生原因があると判別した場合に、発生原因の存在する移動量に基づき、発生原因の存在するユニットを判別する。
【0113】
以上のように、本実施形態においては、判別機能230が複数の照射条件により生成されたX線画像間における特徴画素の変化に基づき、特徴画素の発生原因を判別することとした。これにより、特徴画素の発生原因である異物などが存在する場所を判別することが可能になり、異物などの処理をより効率的に行うことが可能である。
【0114】
また、判別機能230が、照射装置112の複数の照射位置により生成されたX線画像間において、特徴画素の位置が変化する場合に、X線の照射経路中に特徴画素の発生原因があると判別することとした。これにより、異物などが存在する場所がX線の照射経路中にあると判別され、X線の照射経路中にある異物などの処理をより効率的に行うことが可能である。
【0115】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態においては、ビームフィルタ118f1、f2、f3ごとに照射位置A、B、Cを変更したが、第2実施形態においては、照射位置A、B、Cごとにビームフィルタ118f1、f2、f3を変更するようにしている。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。X線画像診断装置1の全体構成は第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0116】
次に、
図11に基づき照射条件の一例を説明する。
図11は、照射装置112の照射位置A、B、Cごとに、ビームフィルタ118f1、f2、f3を変更する例を示す図である。
【0117】
ここでは、制御回路204の撮影制御機能210は、照射条件として複数の照射位置A、B、Cを設定し、照射条件としてビームフィルタ118f1、f2、f3の変更を設定している。この照射条件では、3箇所の照射位置A、B、Cごとにビームフィルタ118f1、f2、f3を変更しつつX線の照射が行なわれる。
【0118】
図12に基づき、第2実施形態に係るX線画像診断装置1における撮影制御の一連の流れを説明する。
図12は、第2実施形態に係る撮影制御の一連の流れを示したフローチャートを示す図である。ここでは、
図11に示したように、複数の照射位置A、B、Cごとに複数のビームフィルf1、f2、f3を変更しつつ、X線の照射が行なわれる場合について説明する。また、ここでは、
図9で説明したビームフィルタ118f1、f2、f3に特徴画素の発生原因があるか否かを判別する判別機能230のアルゴリズムを用いる。
【0119】
この
図12に示すように、ステップS400は、撮影制御機能210に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から撮影制御機能210に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、撮影制御機能210が実現されるステップである。ステップS400では、撮影制御機能210が照射条件に基づき、照射装置112の照射位置Aを選択する。
【0120】
ステップS402は、回転制御機能212に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から回転制御機能212に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、回転制御機能212が実現されるステップである。ステップS402では、回転制御機能212は、撮影制御機能210の制御にしたがい、アーム106に設置された照射装置112が選択された位置Aに移動するまで、アーム106を回転させる制御を回転モーター122に行う。
【0121】
ステップS404は、撮影制御機能210に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から撮影制御機能210に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、撮影制御機能210が実現されるステップである。ステップS404では、撮影制御機能210が照射条件に基づき、撮影に用いるビームフィルタ118f1を選択する。
【0122】
ステップS406は、変更制御機能214に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から変更制御機能214に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、変更制御機能214が実現されるステップである。ステップS406では、変更制御機能214が、撮影制御機能210の制御にしたがい、選択されたビームフィルタ118f1に変更するように変更モーター120の制御を行う。
【0123】
ステップS108、ステップS110は、
図8と同様の処理を行う。すなわち、X線画像を生成し、システム情報と関連付けて第1記憶回路202に記憶する。
【0124】
ステップS408は、撮影制御機能210に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から撮影制御機能210に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、撮影制御機能210が実現されるステップである。ステップS408では、撮影制御機能210が照射条件に基づく全てのビームフィルタ118f1、f2、f3で照射を行ったか否かを判別する。全てのビームフィルタ118f1、f2、f3での撮影が終わっていない場合には(ステップS408:NO)、上述のステップS404の処理に戻り、次のビームフィルタ118を選択する。一方、全てのビームフィルタ118f1、f2、f3での撮影が終わっている場合には(ステップS408:YES)、ステップS116の処理に進む。
【0125】
ステップS116〜ステップS118は、
図8と同様の処理を行う。すなわち、画像処理機能224が同一の照射位置で撮像された全てのX線画像に所定の前処理を施し、特徴画素検出機能228が前処理の施された全X線画像から特徴画素を検出する。
【0126】
ステップS410は、処理回路208が第1記憶回路202から判別機能230に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、
図9のフロ−チャートの各ステップを実行することで判別機能230を実現する。ここで、異物の存在するビームフィルタ118が判別された場合、上述のテップS404でのビームフィルタ118の選択から、異物の存在するビームフィルタ118を除く。すなわち、異物の存在するビームフィルタ118は、検査モード中のX線撮像には用いられなくなる。
【0127】
ステップS412は、撮影制御機能210に対応するステップである。制御回路204が第1記憶回路202から撮影制御機能210に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、撮影制御機能210が実現されるステップである。ステップS412では、撮影制御機能210が照射条件に基づく全ての照射位置A、B、Cで照射を行ったか否かを判別する。全ての照射位置A、B、Cでの撮影が終わっていない場合には(ステップS412:NO)、上述のステップS400の処理に戻り、次の照射位置を選択する。一方、全ての照射位置A、B、Cでの撮影が終わっている場合には(ステップS412:YES)、一連の処理を終了する。
【0128】
このように、撮影制御機能210の制御に従い、照射条件で設定された全ての照射位置ごとに照射条件で設定されたビームフィルタ118を変更しつつ、X線の照射を行なう。続いて、照射されたX線に基づくX線画像を生成する。そして、前処理が施された全X線画像から特徴画素を検出し、特徴画素の位置とシステム情報を関連づけて記憶する。これにより、特徴画素の位置情報と、この特徴画素を有するX線画像と、このX線画像の撮影時のシステム情報とが関連づけられ、記憶される。また、照射位置Aでの撮像が終了すると、ビームフィルタ118f1、f2、f3に特徴画素の発生原因があるか否かを判別する。ビームフィルタ118f1、f2、f3のいずれかに特徴画素の発生原因がある場合には、以後の検査モード内の撮影ではそのビームフィルタ118を用いないので検査モード時の撮像を効率化できる。
【0129】
以上のように、本実施形態においては、照射位置A、B、Cごとにビームフィルタ118f1、f2、f3を変更することした。これにより、照射位置Aにおける撮影が終了したタイミングで、ビームフィルタ118f1、f2、f3に特徴画素の発生原因を判別することが可能であり、判別処理をより効率的に行うことができる。
【0130】
(第3実施形態)
上述した第1実施形態においては、判別機能230が、異常画素の発生原因があるユニットをディスプレイ400に表示させていたが、本実施形態においては、生成機能232が生成した異物マップ、キズマップ、異物及びキズの混合マップ、及び欠陥点マップをディスプレイ400に表示させるようにしている。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0131】
図13は、第3実施形態に係る情報処理装置200の構成を示すブロック図である。生成機能232を更に備えることで、第1実施形態に係る情報処理装置200と相違する。また、判別機能230が異物テーブル218に基づき、異物とキズとを判別する機能を更に有することで、第1実施形態に係る情報処理装置200と相違する。
【0132】
生成機能232は、異物マップ、キズマップ、異物及びキズの混合マップ、及び欠陥点マップを生成する。すなわち、生成機能232は、第2記憶回路206の異物テーブル218に記憶された異物の位置座標に基づき、X線画像診断装置1内のいずれの位置に異物が存在するかを示す異物マップを生成する。同様に、生成機能232は、第2記憶回路206のキズテーブル220に記憶されたキズの位置座標に基づき、X線画像診断装置1内のいずれの位置にキズが存在するかを示すキズマップを生成する。また、生成機能232は、第2記憶回路206の異物テーブル218及びキズテーブル220に記憶されたキズの位置座標に基づき、X線画像診断装置1内のいずれの位置に異物及びキズが存在するかを示す異物及びキズの混合マップを生成する。さらにまた、生成機能232は、第2記憶回路206の欠陥点テーブル222に記憶された欠陥点の位置座標に基づき、線検出器のいずれの位置に欠陥点に対応する撮像素子が存在するかを示す欠陥点マップを生成する。より詳細には、生成機能232は、制御回路204と、ディスプレイ400とに接続され、制御回路204の撮影制御機能210の制御に従い、これらの異物マップ、キズマップ、及び欠陥点マップを、ディスプレイ400に表示させる。
【0133】
次に、
図14に基づき、判別機能230が行うキズ判別の一例を説明する。
図14は、異物テーブル218とキズテーブル220の一例を示す図である。
図14の異物テーブル1は、判別機能230が、異物に関する情報を記憶したテーブルを示す図である。ここでは、判別機能230で判別した異物或いはキズは、まだ異物とキズとの区別されていないため、一律に異物として総合的に記憶されている。また、上述の様に、位置座標は、座標変換機能231により変換された異物の二次元の位置座標が記憶されている。
異物の番号は、記憶された異物毎に振られる番号である。ここでは、NO.1から4まで番号が振られている。また、発生日時は、特徴画素が発生した日時を示している。撮影枚数は、異物が記憶された後の撮影枚数を示している。ユニット名は、特徴画素の発生原因が存在する乳房撮影装置100のユニットを示している。
【0134】
ところで、照射位置を変更してX線画像を撮影しても、異物であるかキズで有るかを判別するのは困難である。一方で、キズが生じている場合には、修理や部材の取り替えが必要となる。また、通常の乳房撮影装置100では、撮影が行われる度に、清掃が行われる。このため、異物であれば、所定枚数の撮影が行われると消える可能性が高い。一方で、キズである場合には、清掃で消えることはない。
【0135】
このため、本実施形態に係る判別機能230は、異物が異物テーブル218に記憶された後に、所定回数のX線画像が撮像されても同一座標に異物が存在する場合に、異物はキズであると判別する。
【0136】
この
図14に示すキズテーブルは、判別機能230が、異物をキズとして判別した後に、異物テーブル218に記憶される情報をキズテーブル220に記憶したものである。異物の番号として、NO.1が記憶されている。このように、異物テーブル218に記憶されたNO.1の異物が、キズとして判別された後にキズテーブル220に記憶され直されている。他の各記載要素は、異物テーブル218と同様である。
図14に示す異物テーブル2は、NO.1の異物を除いた後の異物テーブル1を示している。各記載要素は、異物テーブル1と同様である。
【0137】
図15は、欠陥テーブルの一例を示す図である。この
図15に示す欠陥テーブルは、欠陥画素の位置座標と、発生日時とを記憶したテーブルを示す図である。すなわち、判別機能230が、特徴画素の発生原因をX線検出器132と判別し、欠陥画素の位置座標と、発生日時とを記憶したテーブルである。
図14に示す異物テーブル218と同様に、異物の番号は、記憶された異物毎に振られる番号である。ここでは、NO.5から8まで番号が振られている。また、位置座標は、特徴画素の位置座標を示している。発生日時は、特徴画素を含むX線画像が撮像された日時を示している。ユニット名は、特徴画素の発生原因が存在する乳房撮影装置100のユニットを示している。
【0138】
次に、
図16乃至
図20に基づき、生成機能232が生成した異物マップ、キズマップ、異物及びキズ混合マップ、及び欠陥点マップの例を説明する。上述のように、異物マップ、キズマップ、異物及びキズ混合マップ、及び欠陥点マップは、ディスプレイ400に表示される。
【0139】
図16は、生成機能232が生成した異物マップを示す図である。
図16(a)は、ビームフィルタ118上の異物の位置を示す図であり、
図16(b)は、圧迫板126上の異物の位置を示す図であり、
図16(c)は、圧迫板126上の異物の位置を示す図である。このように、ユニット毎に異物の位置を図示する。異物の位置座標が、反映されるので検査者は、異物の位置確認を容易に行うことが可能である。
【0140】
図17は、生成機能232が生成したキズマップを示す図である。この図ではキズの位置座標も図示している。
図17(a)は、ビームフィルタ118上のキズの位置を示す図であり、
図17(b)は、圧迫板126上のキズの位置を示す図であり、
図17(c)は、圧迫板126上のキズの位置を示す図である。このように、ユニット毎にキズの位置を図示する。キズの位置座標が、図面上に反映されるので検査者は、異物の位置確認を容易に行うことが可能である。また、キズの位置座標が表示されるので、キズの位置を正確に把握することが可能である。ここでのアーム106の角度は、0度である。このため、ビームフィルタ118上のキズの位置は、傷テーブル220に記憶された二次元座標が使用されている。
【0141】
図18は、生成機能232が生成した異物及びキズの混合マップを示す図である。
図18(a)は、ビームフィルタ118上の異物及びキズの位置を示す図であり、
図18(b)は、圧迫板126上の異物及びキズの位置を示す図であり、
図18(c)は、圧迫板126上の異物及びキズの位置を示す図である。このように、ユニット毎に異物及びキズの位置を図示する。異物及びキズの位置座標が、図面上に反映されるので検査者は、異物及びキズの位置確認を容易に行うことが可能である。また、異物及びキズの両方が表示されるので、双方の位置確認を容易に行うことが可能である。
【0142】
図19は、生成機能232が生成した異物及びキズの混合マップであり、Z軸方向の高さを反映した図である。高さを反映した画像内に異物及びゴミの位置を図示するので、乳房装置の中での異物及びゴミの位置関係を容易に把握可能である。また、異物及びキズの位置座標が表示されるので、異物及びキズの位置を正確に把握することが可能である。ここでのアーム106の角度は、0度である。このため、ビームフィルタ118上の異物の位置は、異物テーブル218に記憶された二次元座標が使用され、ビームフィルタ118上のキズの位置は、傷テーブル220に記憶された二次元座標が使用されている。
【0143】
図20は、実機模式図に、異物の位置を示した異物マップの図である。この異物マップの図では、異物の位置が強調表示されている。実機模式図内に異物の位置を図示するので、実機との比較をより容易に行うことが可能である。また、異物の位置が強調表示されているので、異物の位置を容易に把握できる。
【0144】
図21は、生成機能232が生成した欠陥点マップを示す図である。このように、X線検出器132の検出面上に欠陥画素の位置を図示する。欠陥画素の位置座標が、図面上に反映されるので検査者は、欠陥画素の位置確認を容易に行うことが可能である。
【0145】
次に、
図22及び
図23に基づき、特徴画素の発生原因がキズであるか否かを判別する処理について説明する。
図22及び
図23は、特徴画素の発生原因がキズであるか否かを判別する判別機能230のアルゴリズムを説明するフローチャートを示す図である。処理回路208が第1記憶回路202から判別機能230に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、
図22及び
図23のフロ−チャートの各ステップを実行することで判別機能230を実現する。
【0146】
ステップS300〜ステップS310までの処理は、第1実施形態の
図10で説明した処理と同様である。すなわち特徴画素が移動しない場合には、欠陥点テーブル222に特徴画素の座標を記憶する。一方で、特徴画素が移動する場合には、撮影台124、及び圧迫板126のいずれのユニットに特徴画素の発生原因である異物が存在するか判別する。
【0147】
ステップS500では、判別機能230は、特徴画素をユニット毎に分類する。ステップS502では、判別機能230は、ユニット毎に分類された特徴画素から特徴画素の発生原因の位置座標を演算する。より詳細には、複数の照射位置と対応する特徴画素の位置との組み合わせに基づき異物の位置座標を演算する。
【0148】
ステップS504では、判別機能230は、特徴画素の発生原因の位置座標、特徴画素の発生時刻、特徴画素の発生原因の存在するユニットを第2記憶回路206の異物テーブル218に記憶する。また、判別機能230は、異物テーブル218に記憶した特徴画素の発生時刻からの撮影枚数を、撮影が行われる度に更新する。
【0149】
上述のステップS306の処理が終了した場合、及びステップS504の処理が終了した場合に、ステップS506では、判別機能230が、異物テーブル218に既に記憶された異物の撮影枚数が所定回数を超えているか否かを判別する。所定枚数を超えている場合(ステップS506:Yes)に、その異物はキズであると判別する。
【0150】
ステップS508では、判別機能230は、キズと判別された異物をキズテーブル220に記憶する。そして、キズと判別した異物の情報を異物テーブル218から削除し、一連の処理を終了する。一方、所定枚数を超えていない場合(ステップS506:Yes)に、ステップS508をスキップし、一連の処理を終了する。
【0151】
次に、
図24に基づき、マップの表示処理の一例について説明する。
図24は、処理回路208における生成機能232のアルゴリズムを説明するフローチャートを示す図である。処理回路208が第1記憶回路202から生成機能232に対応する所定のプログラムを呼び出し実行することにより、
図24のフロ−チャートの各ステップを実行することで判別機能230を実現する。
【0152】
ステップS600では、生成機能232は、第2記憶回路206に記憶される異物テーブル218、キズテーブル220、及び欠陥点テーブル222から特徴画素の発生原因となる位置座標及びユニットの情報を取得する。ステップS602では、生成機能232は、取得した位置座標及びユニットの情報に基づき異物マップ、キズマップ、異物及びキズ混合マップ、及び欠陥点マップを生成する。
【0153】
ステップS604では、生成した異物マップ、キズマップ、異物及びキズ混合マップ、及び欠陥点マップ中の異物、キズ、欠陥画素位置を強調表示する。この場合、マップ上の異物、キズ、欠陥画素位置を、拡大、色づけ、囲み、マーク等を付与する。
【0154】
ステップS606では、強調処理された各マップをディスプレイ400に表示させ、処理を終了する。ディスプレイ400への表示には、強調処理を行っていないマップを表示させても良い。
【0155】
以上のように、本実施形態においては、生成機能232が生成した異物マップ、キズマップ、異物及びキズの混合マップ、及び欠陥点マップをディスプレイ400に表示させることとした。これにより、異物、キズ、及び欠陥画素の位置を、より正確に把握できる。
【0156】
また、本実施形態に係る判別機能230は、異物が異物テーブル218に記憶された後に、所定回数のX線画像が撮像されても同一座標に異物が存在する場合に、異物はキズであると判別することとした。これにより、異物とキズの判別が可能になり、清掃及び修繕をより効率的に行うことができる。
【0157】
なお、第1実施形態における照射装置112は、特許請求の範囲における照射部の一例であり、画像生成回路134は、特許請求の範囲における画像生成部の一例である。第1実施形態における特徴画素検出機能228は、特許請求の範囲における特徴画素検出部の一例である。第1実施形態における判別機能230は、特許請求の範囲における判別部の例である。また、第3実施形態における判別機能230は、特許請求の範囲における判別部の他の例である。第3実施形態における生成機能232は、特許請求の範囲における生成部の一例である。第1実施形態における第2記憶回路206は、特許請求の範囲における記憶部の一例である。第1実施形態におけるディスプレイ400は、特許請求の範囲における表示部の一例である。また、第1実施形態におけるユニットは、特許請求の範囲における機器の一例であり、第3実施形態におけるユニットは、特許請求の範囲における機器の他の例である。
【0158】
上記の説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えばCPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD))、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)などの回路を意味する。プロセッサは第1記憶回路202に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、第1記憶回路202にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1、3、13における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0159】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。