(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918497
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】骨整復用鉗子及び骨プレート保持鉗子
(51)【国際特許分類】
A61B 17/28 20060101AFI20210729BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
A61B17/28
A61B17/56
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-575935(P2016-575935)
(86)(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公表番号】特表2017-524435(P2017-524435A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】US2015036608
(87)【国際公開番号】WO2016003671
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2018年6月11日
【審判番号】不服2020-3541(P2020-3541/J1)
【審判請求日】2020年3月16日
(31)【優先権主張番号】14/320,558
(32)【優先日】2014年6月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ハシュミ・アダム
(72)【発明者】
【氏名】ダウニー・デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ルイ・エリック
【合議体】
【審判長】
千壽 哲郎
【審判官】
内藤 真徳
【審判官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
特表平6−500961(JP,A)
【文献】
米国特許第5219354(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0046363(US,A1)
【文献】
特表2013−526926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28 - 17/295
A61B 17/17
A61B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉗子であって、
近位端から骨の外表面の輪郭に一致するように形成された湾曲壁を有する遠位端まで延びる第1のアームと、
近位端から遠位端まで延び、枢動点において前記第1のアームと連結された第2のアームであって、前記第2のアームの遠位端が大径先端部を含み、前記第2のアームの遠位部分が作動形態において前記大径先端部のみが骨プレートと接触するように選択された曲率の軸を含む、第2のアームと、
第1の取り付け点において前記第1のアームの内側表面に連結され、前記第2のアームの方向に湾曲した第1の板ばねと、
第2の取り付け点において前記第1のアームの内側表面に連結される第2の板ばねであって、前記第2の板ばねは前記第2のアームの方向に湾曲して前記第2のアームと当接する遠位部分を備え、前記第1及び第2のアームの互いに対する所望の運動範囲が得られるように前記第2の板ばねの遠位部分の長さが選択される、第2の板ばねと、
前記第2のアームの内側表面に連結され、内部を貫通して延びるスイッチ開口部を有するスイッチであって、前記スイッチ開口部が前記第1の板ばねを受容することにより、前記第1及び第2のアームが把持形態へと径方向に圧縮される際に、前記第1及び第2のアームを互いに対して所望の位置に維持するラチェット機構を構成する、スイッチと、を有する、鉗子。
【請求項2】
前記第1の板ばねの側壁が、前記スイッチ開口部と係合して前記ラチェット機構を構成する複数の傾斜壁を有する、請求項1に記載の鉗子。
【請求項3】
前記第1の板ばねの横の壁の当接要素と、
前記第2の板ばねを貫通して延び、内部を通じて前記第1の板ばねを受容するサイズに構成された細長いスロットであって、前記第1の板ばねの前記当接要素における幅が前記細長いスロットの幅よりも大きいことにより、前記第2の板ばねに対する前記第1の板ばねの運動が制限される、細長いスロットと、を更に有する、請求項1に記載の鉗子。
【請求項4】
前記第1の取り付け点が、前記第2の取り付け点よりも遠位に配置されている、請求項1に記載の鉗子。
【請求項5】
前記スイッチは、折り畳み形態と、前記スイッチが前記第1のアームの方向に向けられる拡張形態との間で動くことができる、請求項1に記載の鉗子。
【請求項6】
前記第1のアームの前記遠位端が、骨の外表面の輪郭に一致するように形成された湾曲壁を有する、請求項1に記載の鉗子。
【請求項7】
前記湾曲壁の骨接触面が、摩擦を高めるための表面処理部を有する、請求項6に記載の鉗子。
【請求項8】
前記第2のアームの前記遠位端は、前記骨プレートが配置された表面の反対側の骨の外表面上に前記第1のアームの前記遠位端が配置される際に、前記骨プレートを貫通して延びるプレート穴内に受容されるようなサイズに構成されたボール先端部を有する、請求項6に記載の鉗子。
【請求項9】
鉗子であって、
近位端から骨の外表面の輪郭に一致するように形成された湾曲壁を有する遠位端まで延びる第1のアームと、
前記第1のアームと運動可能に連結された第2のアームであって、前記第2のアームの遠位端が大径先端部を含み、前記第2のアームの遠位部分が作動形態において前記大径先端部のみが骨プレートと接触するように選択された曲率の軸を含む、第2のアームと、
第1の取り付け点において前記第1のアームの内側表面に連結され、前記第2のアームの方向に湾曲した第1の板ばねと、
第2の取り付け点において前記第1のアームの前記内側表面に連結される第2の板ばねであって、前記第2の板ばねは前記第2のアームの方向に湾曲して前記第2のアームと当接する遠位部分を備え、前記第1及び第2のアームの互いに対する所望の運動範囲が得られるように前記第2の板ばねの遠位部分の長さが選択される、第2の板ばねと、
前記第2のアームの内側表面に連結され、内部を貫通して延びるスイッチ開口部を有するスイッチであって、前記スイッチ開口部がそれを通じて前記第2の板ばねを受容することにより、前記第1及び第2のアームが把持形態へと径方向に圧縮される際に、前記第1及び第2のアームの位置を維持するラチェットを構成する、スイッチと、を有する、鉗子。
【請求項10】
前記第1及び第2の板ばねは、前記鉗子を、前記第1及び第2のアームの遠位端同士が第1の間隔だけ互いから離間した径方向の拡張形態に向かって付勢する、請求項9に記載の鉗子。
【請求項11】
前記第1の取り付け点が、前記第2の取り付け点よりも遠位に位置する、請求項9に記載の鉗子。
【請求項12】
前記第1のアームの遠位端が、骨の外表面の輪郭に一致するように形成された湾曲壁を有する、請求項9に記載の鉗子。
【請求項13】
前記湾曲壁の骨接触面が、摩擦を高めるための表面処理部を有する、請求項12に記載の鉗子。
【請求項14】
前記第2のアームの遠位端は、前記骨プレートが配置された表面の反対側の骨の外表面上に前記第1のアームの前記遠位端が配置される際に前記骨プレートを貫通して延びるプレート穴内に受容されるようなサイズに構成されたボール先端部を有する、請求項12に記載の鉗子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、手の骨折を固定するための鉗子、骨折した骨を整復する方法、及び骨プレートを骨と仮結合するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨固定術においては、骨片同士のアラインメントを矯正し、永久的固定装置が骨に適用されるまでの間、骨片同士を矯正されたアラインメントで保持する目的でクランプが一般的に用いられている。典型的な骨整復用クランプは、一般的に、骨折部位に隣接して形成された切開を通じて、又は標的領域に隣接した複数の所定の位置に形成された複数の開口部を通じて骨折部位に挿入される。このような骨クランプは、一般的に、滑らずに容易に骨を把持することができるように先が尖った骨接点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらのクランプは骨上で滑ってしまう場合があり、目的とする手術の全体にわたって外科医が鉗子のクランプ圧を手で維持する必要が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、近位端から遠位端まで延びる第1のアームと、近位端から遠位端まで延び、枢動点において前記第1のアームと連結された第2のアームと、を、第1の取り付け点において前記第1のアームの内側表面に連結され、前記第2のアームの方向に湾曲した第1の板ばねと、前記第2のアームの内側表面に連結され、内部を貫通して延びるスイッチ開口部を有するスイッチであって、前記スイッチ開口部が前記第1の板ばねを受容することにより前記第1及び第2のアームが把持形態へと径方向に圧縮される際に前記第1及び第2のアームを互いに対して所望の位置に維持するラチェット機構を構成する、スイッチと、を有する鉗子に関する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態について以下に具体例を挙げ、添付の図面を参照して説明する。
【
図1】本発明の例示的な一実施形態に基づく骨プレート保持鉗子の斜視図を示す。
【
図2】
図1の骨プレート保持鉗子の第1の側面図を示す。
【
図3】
図1の骨プレート保持鉗子の第2の側面図を示す。
【
図4】
図1の骨プレート保持鉗子の第1の板ばねの部分拡大図を示す。
【
図5】本発明の第2の実施形態に基づく骨整復用鉗子の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
例示的な各実施形態は、以下の説明文及び添付の図面を参照して更に理解することができる。尚、添付の図面において、類似の要素は同じ参照番号で示されている。第1の実施形態は、骨プレートを骨上の所望の位置に仮ロックするための装置及び方法に関するものである。より詳細には、例示的なプレート保持鉗子は、互いに枢動可能に取り付けられ、その第1及び第2の遠位端が互いから第1の間隔だけ離間した拡張形態と、第1及び第2の遠位端が互いに近づけられてその間に骨及び骨プレートを把持する圧縮形態との間で動くことが可能な第1及び第2のアームを有する。第1のアームの近位部分は、鉗子に圧縮力が加えられるまでの間、鉗子を拡張形態に維持する第1及び第2の板ばねを有する。第2の板ばねは、ラチェット係合により第2のアームの近位部分に形成されたスイッチを通じて摺動可能に受容される。第1のアームの第1の遠位端は、骨プレートの位置に対向する骨の外周の一部にわたって延びるように形成された、湾曲部分を有する。第2の遠位端は骨プレートを貫通して延びるプレート穴を通じて受容されるように形成された、ボール先端部を有する。作動形態では、第1及び第2のアームが圧縮されるにしたがって、第2の板ばねが、スイッチを貫通して延びる開口部内に近位方向に滑り込む。第2の板ばねは、第2の板ばねがスイッチから遠位方向に動いて外れることを防止するように形成された、複数の傾斜ラチェット壁を有する。これにより、第1及び第2のアームが圧縮される際、ラチェット機構が、第1及び第2の遠位端の間に配置された骨及び骨プレートの摩擦係合を維持し、外科医が常に圧縮する必要がない。第2の実施形態では、骨整復用鉗子に、プレート保持鉗子とほぼ同じラチェット機構が設けられる。骨整復用鉗子は、第1の遠位端において骨の外表面と係合するように形成された湾曲部分を有し、第2の遠位端においてこれを通じて骨内へとドリル装置を案内するように構成されたドリルガイドカニューレを有する。第2の実施形態の例示的な一方法によれば、骨折した骨の骨片同士は仮アラインメントされる。骨整復用鉗子は骨上に配置され、ラチェット動作によって圧縮されて、鉗子が外科医によって解放された後においても、鉗子、ひいては骨片同士を所望の向きに維持する。次いで、ドリル装置をカニューレに挿通し、所望の位置に骨を貫通して骨穴を形成する。次いで、ガイドワイヤ、骨ねじ又は骨ピンをこの穴に挿通して骨片同士を互いに固定することができる。本明細書で使用するところの「近位」なる用語は、作動形態において外科医又は他の使用者に近づく方向を指し、「遠位」なる用語は、作動形態において患者の標的骨に近づく方向を指す。
【0007】
図1〜4に示されるように、本発明の第1の例示的実施形態に基づく骨プレート保持鉗子100は、それぞれ近位端105,107から遠位端109,110にまで延びる第1及び第2のアーム102,104を有している。アーム同士は、例えば止めねじ108によって枢動点106において互いに枢動可能に連結される。当業者によれば理解されるように、第1及び第2のアーム102,104の近位端105,107はそれぞれ、その把持を助けるために径方向外側に広がった指ループ103を有している。枢動点106の近位にそれぞれ位置する第1及び第2のアーム102,104の近位部分112,114は、その把持を更に助けるために表面処理が施されている。一実施形態では、この表面処理部は、第1及び第2の近位部分112,114にエッチングされた複数の凹部116を含み得る。凹部116は、第1及び第2の近位部分112,114の長手方向軸118に対して直交するように配列することができる。しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、凹部116は軸118に対して任意の角度で延在し得る点に留意されたい。第1及び第2の近位部分112,114は、枢動点106から近位端105,107にまで湾曲した凸状の経路を辿る。
【0008】
第1のアーム102は、第1のアーム102の内側表面に連結された第1の端部122から第2の自由端124にまで延びる第1の板ばね120を更に有している。第1の板ばね120の第1の端部122は、これを通じて第1のロックピン126を受容する開口部(図には示されていない)を有している。詳細には、第1のアームのピン開口部128が、第1のロックピン126を受容するために第1のアーム102に形成されている。第1のロックピン126は、第1のアームのピン開口部128を通じ、第1の板ばね120の第1の端部122を貫通して延びる開口部内に延びて、第1の板ばね120を第1のアーム102に対してロックしている。下記により詳細に述べるように、第1の板ばね120は、第1の板ばね120から横方向に延びてやはり第1のアーム102に連結された第2の板ばね150と摺動可能に係合する突起129を更に有している。
【0009】
第1の板ばね120の第1の側壁は、作動形態においてスイッチ140と係合してラチェットを構成する複数のラチェット面130を有している。
図4に示されているように、ラチェット面130は、第1の板ばね120の本体から遠ざかる方向に傾斜した複数の第1の壁132、及び第1の板ばね120に対してほぼ直交して延びる複数の第2の壁134を有している。
【0010】
第2の板ばね150は、第1のアーム102の内側表面に連結された第1の端部152から自由端154にまで延びている。ロックねじ180が、第2の板ばね150を貫通して延びる開口部(図には示されていない)を通じ、第1のアーム102を貫通して延びる開口部182内に挿入されている。別の実施形態では、ロックねじ180は、リベット、ピン、又は他のロック機構であってよい。当業者によれば理解されるように、ロックねじ180は鉗子100の分解及びそれに続く滅菌を可能とするように鉗子100から取り外すことができる。第2の板ばね150は、第1のアーム102の方向に湾曲した第1の部分156及び第2のアーム104の方向に湾曲した第2の部分158を有している。当業者によれば理解されるように、第2の部分158の長さは第1及び第2のアーム102,104の互いに対する所望の運動範囲がそれぞれ得られるように選択される。第2の部分158は、第2の板ばね150の長手方向軸と整列した、第2の部分158を貫通して延びる細長い開口部159を更に有している。作動形態では、第1の板ばね120は開口部159を通じて延び、突起129が開口部159の周囲の壁と係合することによって、第2の板ばね150を通じた第1の板ばね120の運動範囲を制限する。第1の板ばね120が
図1に示されるように開口部159内に完全に挿入される際、第1及び第2のアーム102,104の互いに向かう運動が、突起129と開口部159の端部157との係合によって第1及び第2のアーム102,104の更なる圧縮が妨げられるまで突起129を開口部159に沿って遠位方向に滑らせる。
【0011】
第1及び第2のアーム102,104の運動はそれぞれ、第2のアーム104の内側表面上に配置され、第1のアーム102に向かう向きを有するスイッチ140によって更に制限される。スイッチ140は、スイッチ140を貫通して延び、第2のアーム104を貫通して延びる開口部142と整列するように構成された開口部(図には示されていない)を有している。ピン144が、開口部142及びスイッチ140の開口部(図には示されていない)を通じて延びている。スイッチ140は、
図2に示されるように、第2のアーム104に対して面一となるように収容された第1の位置から第1のアーム102に向かう向きとなる第2の位置へと回転させることが可能である。詳細には、第2のアーム104の内側表面は、第1の位置においてスイッチ140をその内部に収容するように形成された凹部190を有している。スイッチ140は、スイッチ140を貫通して延び、これを通じて第1の板ばね120を受容するような向きを有する開口部146を有することで、スイッチ140を第2の位置に維持する。開口部146は、第1及び第2のアーム102,104が第1及び第2のアーム102,104の所望の相対位置を維持するために径方向に圧縮される際に第1の板ばね120のラチェット面130と係合するように構成されている。詳細には、開口部146の第1の壁(図には示されていない)には、第1の壁132がそれを通過して滑って第2の壁134とロックするように係合することができる向きを有する傾斜壁が形成されている。当業者によれば理解されるように、このような構成により、鉗子100が閉じた形態となった後で開くことが防止される。したがって、鉗子100は目的とする手術が完了するまでの間、ロックされた形態に維持される。その後、スイッチ140を引き戻すことで鉗子をロック解除して開くことができるようになる。例示的な一方法によれば、下記により詳細に述べるように、鉗子100は、目的とする手術の必要に応じてロック形態とロック解除形態との間で何度でも動かすことができる。
【0012】
第1のアーム102の遠位端109は、骨の外表面にまたがるような形状を有する湾曲した骨係合部分160を有している。詳細には、第1のアーム102の所定長さの遠位部分は、方向Aに向かって湾曲した傾斜壁162と、方向Bに向かってそこから遠位方向に延びる湾曲部分164とを有し、傾斜壁162は頂点163において湾曲部分164と接続している。頂点163の外側壁に沿った曲率は、例えば、鉗子100が骨上に配置される際に腱に対するクリアランスを形成するように選択される。湾曲部分164の骨接触面は、骨の把持を促すように形成された1つ以上の鋸歯状要素166を有している。鋸歯状要素166は、湾曲部分164の厚みの小さい部分を画定する陥凹部分168上に設けられる。一実施形態では、鋸歯状要素166は、鉗子100の長手方向軸118に対して直交して延びる複数の細長い切欠き部として形成される。別の実施形態では、切欠き部は、軸118に対して任意の適当な角度で延びる。更なる別の実施形態では、鋸歯状要素166は、作動形態において骨と係合する向きを有する複数の棘状要素として形成することができる。更に別の実施形態では、湾曲部分164は鋸歯形成されずともよい。陥凹部分168が骨に対する収容面を与える一方で湾曲部分164は骨の周囲を支持する。湾曲部分166の長さ及び曲率は、例示的方法に関してより詳細に述べるように、中手骨の把持を可能とするように選択される。詳細には、湾曲部分166の曲率は、標的中手骨の外表面の曲率とほぼ一致するように選択される。例示的な一実施形態では湾曲部分166の曲率は9mmであるが、これは骨の標的部分(例えば指節骨の標的部分)の曲率に最も近く一致することが見出されている。あるいは、湾曲面164には非円形の曲率(例えば楕円状)を形成してもよく、又は更には平坦とすることもできる。別の実施形態では、湾曲部分166は、長手方向軸118に平行な軸に沿って延びるほぼ直線状とされる。別の実施形態では、遠位端109は実質的に鈍端としてもよく、更なる一実施形態では、遠位端109は軟組織を標的部位へと貫通するその挿入を助けるように鋭端とされる。
【0013】
第2のアーム104の遠位端110は、方向Aに遠位端109から遠ざかる方向に湾曲した湾曲本体170を有している。本体170の曲率は、閉じた形態において、遠位端110の大径ボール先端部172が湾曲部分166に隣接して位置するように選択される。詳細には、湾曲本体170は、作動形態においてボール先端部172のみが骨プレートと接触する一方で本体170の近位部分は骨プレートから角度をなして離れ、したがって骨プレートの可視化を妨げないように曲率の軸に沿って湾曲している。ボール先端部172は、骨プレート(図には示されていない)の骨プレート穴(図には示されていない)を通じて受容されるようにサイズ調整される。詳細には、ボール先端部172は、鋸歯形成面166が骨の反対側の骨の部分と接触して骨上の骨プレートの位置を維持する間に骨プレート穴を通じて少なくとも部分的に受容され得る。別の実施形態では、ボール先端部172は骨の把持を助けるためにその骨対向面上に形成された棘状要素(図には示されていない)を有する。更なる別の実施形態では、先端部172は円錐状であり、鈍端又は鋭端化された先端部の一方で終端する。
【0014】
図2の側面図に示されるように、第1及び第2のアーム102,104の所定長さの遠位部分はそれぞれ、遠位端109,110が、第1及び第2のアーム102,104の近位部分を含む平面から横方向にオフセットした平面内に位置するように湾曲してよい。この構成により、標的治療領域に対する視野を妨げることなく外科医又は他の使用者が鉗子100を操作することが可能となる。また、第1及び第2のアーム102,104の所定長さの遠位部分は第1及び第2のアーム102,104の近位部分と同じ平面に沿って延びてもよく、これにより、遠位端109,110は第1及び第2のアーム102,104の近位部分から横方向にオフセットしない。第1及び第2のアーム102,104の所定長さの遠位部分(すなわち止めねじ106の遠位)の幅は、それぞれほぼ均一である。別の実施形態では、第1のアーム102の遠位部分の幅は、作動形態において骨の把持を助けるように大きくなっている。
【0015】
本発明に基づく例示的な一方法では、鉗子100を、第1の板ばね120がスイッチ140の開口部146内に少なくとも部分的に受容されるようにして組み立てる。好ましい一実施形態では、第1の板ばね120を、少なくとも1つの第1の傾斜壁132が開口部146内にロックして受容されるように挿入する。この構成では、遠位端109,110はそれぞれ、把持しようとする骨及び骨プレートを合わせた幅よりも少なくとも大きい間隔だけ互いから径方向に離間する。その後、骨プレート(図には示されていない)を骨上の標的位置に配置し、ボール先端部172が骨プレートの骨プレート穴内に受容されるようにして鉗子100を配置する。次いで指ループ103に手で圧縮力を加えると第1の板ばね120がスイッチ140の開口部146内へと近位方向に動き、遠位端109,110がそれぞれ互いに向かって動く。鉗子100が圧縮される際、外科医が鋸歯形成面166を整列させることで骨プレートがそこを覆って取り付けられた骨表面の反対側の骨の標的部分上へのその配置を確実とすることができる。鉗子100は、骨プレートの骨上での位置を維持するのに充分な圧力で、ボール先端部172及び骨係合部分160が骨及び骨プレート上に圧縮により受容されるまで圧縮される。外科医が鉗子を離した後にもラチェットが鉗子100を骨及び骨プレート上の定位置に維持するため、外科医の手が自由となって目的とする骨固定手術が容易となる。次いで1つ以上の骨固定要素(例えば骨ねじ、骨ピンなど)を骨プレートを通じて骨内に挿入することができる。次に鉗子100を骨プレート及び骨から取り外すことができる。必要に応じて、更なる骨固定要素を、それまでボール先端部172が入っていた骨プレート穴を通じて挿入することができる。
【0016】
この例示的な方法は、湾曲部分164を骨上に直接配置することを想定したものであるが、この方法は湾曲部分164が皮膚の外側に配置される実施形態も含むことを意図している点に留意されたい。詳細には、この実施形態では、湾曲部分164が身体の外側に残り、骨プレート部位の反対側に位置する皮膚上に置かれる一方でボール先端部172をプレート穴を通じて挿入することができる。
【0017】
図5〜7は、本発明の別の実施形態に基づく鉗子200を示している。下記により詳細に述べるように、鉗子100がプレート保持鉗子であるのに対して、鉗子200は整復用鉗子である。鉗子200は、下記に述べる点以外は鉗子100とほぼ同様であり、類似の要素は類似の参照符号によって示されている。鉗子200は遠位端209,210の構成において鉗子100と異なっている。第1のアーム202の第1の遠位端209は、鉗子100の傾斜壁162及び湾曲部分164とほぼ同様に形成された傾斜壁162及び湾曲部分164を有している。第1の遠位端209は、作動形態において骨と接触するように形成された尖った先端部212で終端している。湾曲面164と同様、湾曲面264も骨の曲率に一致するように湾曲している。しかしながら、湾曲面164が作動形態において骨と係合するように形成されているのに対して、鉗子の先端部212のみが骨と直接接触している。
【0018】
第2の遠位端210は、湾曲本体170及び湾曲本体170に取り付けられた円筒要素280を有している。要素280は、第1及び第2のアーム202,204が把持形態となるように互いに合わせられる際に、長手方向軸118に直交して延びる向きを有する通路軸284に沿った通路282がそれを通じて延びる円筒状のチューブとして形成されている。要素280は、円形の断面を有する第1の端部286から第1及び第2のほぼ鋭端の骨接触先端部289,290を有する第2の端部288にまで延びている。詳細には、第2の端部288は、第1及び第2の骨接触先端部289,290を画定する、第2の端部288を通じて延びる2個の切欠き部292を有することができる。作動形態において、ドリル器具を通路282に挿通して骨固定要素(例えば骨ねじ、骨ピンなど)用の通孔を予め穿孔しておくことができる。
【0019】
本発明に基づく例示的な一方法によれば骨片化するか又は他の形で損傷した骨を、矯正されたアラインメントとすることができる。次いで、鉗子200を、遠位端209,210が骨の互いに反対側の骨片と接して配置されるように操作する。第1及び第2のアーム202,204を、骨に加えられる圧力が骨を矯正されたアラインメントに一時的に維持するのに充分となるまで骨上に圧縮する。次いで、ドリル器具のドリルチップを通路282に挿通して第1及び第2の骨片を貫通する通孔を穿孔することができる。穿孔される通孔は、それを通じてキルシュナー鋼線及び骨ねじの一方を受容するようにサイズ調整することができる。キルシュナー鋼線及び骨ねじは、骨から鉗子200を取り外す前又はその後で穿孔された通孔を通じて挿入することができる。
【0020】
当業者であれば、本発明の広義の範囲から逸脱することなく、開示される実施形態の様々な改変及び変更を行い得る点は認識されるであろう。それらの一部のものは上記で検討したものであり、その他のものは当業者には自明であろう。
【0021】
〔実施の態様〕
(1) 鉗子であって、
近位端から遠位端まで延びる第1のアームと、
近位端から遠位端まで延び、枢動点において前記第1のアームと連結された第2のアームと、
第1の取り付け点において前記第1のアームの内側表面に連結され、前記第2のアームの方向に湾曲した第1の板ばねと、
前記第2のアームの内側表面に連結され、内部を貫通して延びるスイッチ開口部を有するスイッチであって、前記スイッチ開口部が前記第1の板ばねを受容することにより、前記第1及び第2のアームが把持形態へと径方向に圧縮される際に、前記第1及び第2のアームを互いに対して所望の位置に維持するラチェット機構を構成する、スイッチと、を有する、鉗子。
(2) 前記第1の板ばねの側壁が、前記スイッチ開口部と係合して前記ラチェット機構を構成する複数の傾斜壁を有する、実施態様1に記載の鉗子。
(3) 第2の取り付け点において前記第1のアームの前記内側表面に連結された第2の板ばねを更に有する、実施態様1に記載の鉗子。
(4) 前記第1の板ばねの横の壁の当接要素と、
前記第2の板ばねを貫通して延び、内部を通じて前記第1の板ばねを受容するサイズに構成された細長いスロットであって、前記第1の板ばねの前記当接要素における幅が前記細長いスロットの幅よりも大きいことにより、前記第2の板ばねに対する前記第1の板ばねの運動が制限される、細長いスロットと、を更に有する、実施態様3に記載の鉗子。
(5) 前記第1の取り付け点が、前記第2の取り付け点よりも遠位に配置されている、実施態様3に記載の鉗子。
【0022】
(6) 前記スイッチは、折り畳み形態と、前記スイッチが前記第1のアームの方向に向けられる拡張形態との間で動くことができる、実施態様1に記載の鉗子。
(7) 前記第1のアームの前記遠位端が、骨の外表面の輪郭に一致するように形成された湾曲壁を有する、実施態様1に記載の鉗子。
(8) 前記湾曲壁の骨接触面が、摩擦を高めるための表面処理部を有する、実施態様7に記載の鉗子。
(9) 前記第2のアームの前記遠位端は、骨プレートが配置された表面の反対側の骨の外表面上に前記第1のアームの前記遠位端が配置される際に、前記骨プレートを貫通して延びるプレート穴内に受容されるようなサイズに構成されたボール先端部を有する、実施態様7に記載の鉗子。
(10) 前記第2のアームの前記遠位端が、前記鉗子の長手方向軸に対してオフセットしたカニューレ軸に沿って延びるカニューレ状円筒体を有し、前記カニューレ状円筒体がこれを通じてドリルガイドを受容するようなサイズに構成されている、実施態様7に記載の鉗子。
【0023】
(11) 前記カニューレ状円筒体が、第1及び第2の骨接触先端部を有し、前記第1及び第2の骨接触先端部は、前記湾曲面が骨の第1の部分の反対側の骨の第2の部分と接触する際に前記第1の部分と接触することによって骨折を整復するように構成されている、実施態様10に記載の鉗子。
(12) 鉗子であって、
第1のアームと、
前記第1のアームと運動可能に連結された第2のアームと、
第1の取り付け点において前記第1のアームの内側表面に連結され、前記第2のアームの方向に湾曲した第1の板ばねと、
第2の取り付け点において前記第1のアームの前記内側表面に連結され、前記第2のアームの方向に湾曲した第2の板ばねと、
前記第2のアームの内側表面に連結され、内部を貫通して延びるスイッチ開口部を有するスイッチであって、前記スイッチ開口部がそれを通じて前記第1の板ばねを受容することにより、前記第1及び第2のアームが把持形態へと径方向に圧縮される際に、前記第1及び第2のアームの位置を維持するラチェットを構成する、スイッチと、を有する、鉗子。
(13) 前記第1及び第2の板ばねは、前記鉗子を、前記第1及び第2のアームの遠位端同士が第1の間隔だけ互いから離間した径方向の拡張形態に向かって付勢する、実施態様12に記載の鉗子。
(14) 前記第1の取り付け点が、前記第2の取り付け点よりも遠位に位置する、実施態様12に記載の鉗子。
(15) 前記第1のアームの遠位端が、骨の外表面の輪郭に一致するように形成された湾曲壁を有する、実施態様12に記載の鉗子。
【0024】
(16) 前記湾曲壁の骨接触面が、摩擦を高めるための表面処理部を有する、実施態様15に記載の鉗子。
(17) 前記第2のアームの遠位端は、骨プレートが配置された表面の反対側の骨の外表面上に前記第1のアームの前記遠位端が配置される際に前記骨プレートを貫通して延びるプレート穴内に受容されるようなサイズに構成されたボール先端部を有する、実施態様15に記載の鉗子。
(18) 前記第2のアームの遠位端が、前記鉗子の長手方向軸に対してオフセットしたカニューレ軸に沿って延びるカニューレ状円筒体を有し、前記カニューレ状円筒体がこれを通じてドリルガイドを受容するようなサイズに構成されている、実施態様15に記載の鉗子。
(19) 前記カニューレ状円筒体が、第1及び第2の骨接触先端部を有し、前記第1及び第2の骨接触先端部は、前記湾曲面が骨の第1の部分の反対側の骨の第2の部分と接触する際に前記第1の部分と接触することによって骨折を整復するように構成されている、実施態様18に記載の鉗子。