(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信制御回路は、前記送信波を生成するための波形生成用クロックを、前記異なる遅延時間に適応して、複数の前記送信波生成回路の夫々に独立かつ動的に異なるタイミングで供給する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波診断装置。
前記送信制御回路は、前記データ及び前記設定用クロックを、受信期間と送信期間との間に設けられるブランク期間に、前記データ及び前記設定用クロックを前記送信波生成回路の夫々に供給する、
請求項6に記載の超音波診断装置。
前記所定数のブロックのうち互いに隣接しないブロックの集まりを2つのグループに分類し、一方のグループを第1のブロックグループとし、他方のグループを第2のブロックグループとするとき、
前記送信制御回路は、前記設定用クロックの位相が、前記第1のブロックグループと前記第2のブロックグループとの間で、互いに180度異なるように、前記設定用クロックを前記送信波生成回路に供給する、
請求項8に記載の超音波診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
(全体構成)
図1は、第1の実施形態の超音波診断装置1の構成例を示すブロック図である。超音波診断装置1は、超音波プローブ10と装置本体20を有する。
【0011】
超音波プローブ10は、複数の振動素子13(
図2参照)を有している。振動素子13は、装置本体20から出力される電気信号としての送信波を超音波の送信波に変換して、被検体に印加する。また、振動素子13は、被検体から反射されてくる超音波信号を電気信号としての受信信号に変換して、装置本体20に送出する。超音波プローブ10は、プローブケーブル11とコネクタ12によって、装置本体20に着脱可能となっている。
【0012】
実施形態の超音波プローブ10は、複数の振動素子13が直線状に配列される1次元アレイプローブでもよいし、複数の振動素子13が面状に配列される2次元アレイプローブでもよい。
【0013】
装置本体20は、送信回路30、送信電源40、スキャン制御回路50、受信回路60、信号/画像処理回路70、ホストプロセッサ80、入力デバイス82、ディスプレイ84、及びメモリ回路86を有する。
【0014】
送信回路30は、送信波を生成し、所定の電圧に増幅した後、超音波プローブ10の各振動素子13に増幅された送信波を供給する。送信回路30の、詳細な構成及び動作については後述する。
【0015】
送信電源40は、送信波を生成するための電源を送信回路30に供給する。スキャン制御回路50は、被検体の体内の所定範囲をスキャンするために、送信及び受信に関する超音波ビームの走査方向や焦点位置等の情報を、送信回路30、受信回路60、及び信号/画像処理回路70に出力する。
【0016】
受信回路60は、プリアンプ、アナログデジタル変換器、受信遅延回路、及び加算器を内蔵する。プリアンプは、超音波プローブ10の各振動素子13から出力される受信信号を所定の電圧に増幅する。アナログデジタル変換器は増幅された受信信号をデジタル量に変換する。受信遅延回路は、デジタル量に変換された受信信号を、振動素子毎に異なる遅延量で遅延させる。遅延量は、スキャン制御回路50から指示される受信超音波ビームの走査方向や受信焦点位置などの情報に基づいて求められる。加算器は、振動素子毎に異なる遅延量で遅延された受信信号を整相加算する。
【0017】
受信遅延回路と加算器によって、所定の方向を指向する受信ビームが形成されることになるため、受信遅延回路と加算器とを併せて、ビーム形成器と呼ぶ場合がある。また、加算器の出力信号は、形成された受信ビームで受信した受信信号ということもできる。
【0018】
信号/画像処理回路70は、受信回路60から出力される受信信号に対して、動作モードに応じた信号処理や画像処理を行う。
【0019】
例えば、Bモードでは、受信信号に対して、振幅検波、対数圧縮等の信号処理を行って、反射波の振幅情報を取得する。また、例えば、カラードップラモードでは、受信信号に対して、MTIフィルタや自己相関等の信号処理を行って、血流等の速度の平均値や分散に関する情報やパワー情報を取得する。また、例えば、ドプラモードでは、フーリエ変換等の信号処理によって、指定された方向や位置における血流等の速度情報を取得する。
【0020】
さらに、信号/画像処理回路70は、信号処理された受信信号を、ビーム方向や距離(深さ)に応じてスキャン変換し、さらに所定の画像処理を施して、ディスプレイ84に表示させるための表示用データ、即ち、超音波画像を生成する。
【0021】
ホストプロセッサ80は、例えば、CPU等を備えて構成され、メモリ回路86に保存される所定のプログラムをCPUが実行することにより、装置本体20の動作を全体的に制御する。入力デバイス82は、例えば、キーボード、マウス、ジョイスティック、トラックボール等のユーザ操作デバイスである。ディスプレイ84がタッチパネルを備えている場合は、このタッチパネルも入力デバイス82に含まれる。
【0022】
ディスプレイ84は、例えば、液晶パネル等で構成される表示装置である。ディスプレイ84は、信号/画像処理回路70で生成された各種の超音波画像を表示する他、ユーザインタフェースに関するデータや情報等も表示する。メモリ回路86は、装置本体20で使用する種々のデータやプログラムを記憶する。
【0023】
(送信回路の構成及び動作)
次に、実施形態の送信回路30の構成と動作について、より詳しく説明する。
図2は、第1の実施形態の送信回路30の細部構成例を示すブロック図である。送信回路30は、複数のチャネルを介して超音波プローブ10の複数の振動素子13に送信波を供給する。
【0024】
ここで、「チャネル」とは、送信回路30が有する送信波生成の経路、或いは、装置本体20から超音波プローブ10に送信波を伝送する経路のことである。したがって、送信回路30は、チャネル数に対応する数の複数の送信波生成回路100を有している。
【0025】
なお、チャネル数と、装置本体20に接続される超音波プローブ10の振動素子13の素子数とは必ずしも一致する必要はない。例えば、2Dアレイプローブのように素子数が多い場合は、2Dアレイプローブ内で所定数の素子をグループ化し(即ち、サブアレイ化し)、各サブアレイに対して、各チャネルを夫々割り当てる構成が考えられる。この場合、チャネル数よりも素子数の方が多い。また、超音波プローブ10はコネクタを介して他のプローブと交換可能である。したがって、チャネル数よりも少ない素子数を有するプローブが装置本体20に接続される場合もある。ただし、以下の説明では、
図2に示すように、チャネル数と素子数が一致する例、即ち、素子数がmであり、チャネル数もm(CH1〜CHm)である例を用いて説明する。
【0026】
各送信波生成回路100の内部構成は、どのチャネルも同じであり、それぞれ、設定回路104、波形生成回路103、デジタルアナログ変換回路102(以下、DAC102と呼ぶ)、及び送信増幅器101を有している。
【0027】
上記の各回路(104、103、102)、及び送信増幅器101を制御するため、送信回路30は送信制御回路200を有している。送信制御回路200は、さらにその内部構成として、送信増幅器イネーブル制御回路201、クロック制御回路202、及び設定制御回路203を有している。
【0028】
図2に示す送信回路30内の上記各構成の動作について、
図3乃至
図5を参照して説明する。
【0029】
図3は、超音波プローブ10の夫々の振動素子13から送信される各送信波、即ち、夫々の送信波生成回路100から出力される各送信波のタイミング関係を模式的に示す図である。
図3の上段に示すように、送信波群(全ての素子の送信波の集合)は、所定のパルス繰り返し周期で繰り返し送信される。送信波群の後に受信期間が設けられ、受信期間と送信波群との間には、受信も送信もしないブランク期間が設けられている。
【0030】
各送信波は、パルス繰り返し周期に同期した信号の基準位置(
図2では、中央に上から下に垂直に延びる矢印線で図示)から、素子間で異なる遅延時間で遅延されて送信される。
図2では、この遅延時間を、td1、td2、td3、・・・、tdm、と表記している。これらの遅延時間は、送信ビームの走査方向、及び送信ビームの焦点位置に応じて定まるものであり、通常、素子間で異なる値となる。したがって、各チャネルから出力される送信波の位置は、互いに異なることになる。なお、送信波は、所定のパルス長τを有する送信パルスであり、パルス長τ等の送信波の波形に関するパラメータは、動作モードに応じて変化しうるが、各チャネル間では、通常同一となる。
【0031】
チャネル毎の遅延時間は、例えば、スキャン制御回路50から供給される送信ビームの走査方向や送信ビームの焦点位置に基づいて、送信回路30の設定制御回路203で算出される。或いは、送信ビームの走査方向や送信ビームの焦点位置に基づいて、スキャン制御回路50がチャネル毎の遅延時間を算出し、算出した遅延時間を設定制御回路203が受信するようにしても良い。
【0032】
設定制御回路203は、算出した(或いは受信した)遅延時間を、夫々の送信波生成回路100の設定回路104に送出する。設定回路104は、受けとった遅延時間を一時的に保持する。また、送信波波形に関するパラメータも設定制御回路203からから設定回路104に送出され、各設定回路104は、これを保持する。
【0033】
設定回路104の次段にある波形生成回路103は、設定回路104に保持されている遅延時間や、送信波波形に関するパラメータに基づいて、基準位置から遅延した送信波をデジタル値として生成する。送信波(デジタル値)の生成は、クロック制御回路202から出力される波形生成用クロックに基づいて、ほぼリアルタイムに生成される。
【0034】
波形生成回路103に次段にあるDAC102は、波形生成回路103で生成された送信波(デジタル値)を、アナログ波形の送信波に変換する。この変換も、クロック制御回路202から出力される波形生成用クロックに基づいて、ほぼリアルタイムに行われる。
【0035】
DAC102の次段にある送信増幅器101は、DAC102で変換されたアナログ波形の送信波を、所定の電圧に増幅する。増幅された送信波は、超音波プローブ10の各振動素子13に送られて超音波信号となり、超音波プローブ10から被検体に送信される。
【0036】
実施形態の超音波診断装置1は、夫々の送信波生成回路100で生成される送信波を、チャネル毎に、独立かつ動的に異なるタイミングで制御している点に特徴がある。上述したように、各送信波の遅延時間は、送信ビームの方向及びフォーカス位置に応じて、各チャネル間で異なる値となる。つまり、各送信波の送信時間は、各チャネル間で異なる。
【0037】
そこで、実施形態の超音波診断装置1は、異なる遅延時間に適応させて送信波を生成するように、送信波生成回路100の各構成の夫々を、
図4及び
図5に示すように、チャネル毎に独立かつ動的に異なるタイミングで制御するようにしている。
【0038】
図4は、送信増幅器101のイネーブル期間と、DAC102のイネーブル期間を、異なる遅延時間に適応させて、チャネル毎に独立かつ動的に異なるタイミングで制御している例を示すタイミングチャートである。
【0039】
図4のタイミングチャートにおいて、ハッチングで示している期間が、送信増幅器101、及びDAC102のイネーブル期間に相当する。各チャネルのイネーブル期間は、各チャネルの送信波の送信期間(即ち、送信波のパルス長)の前後に所定のマージンを持たせた期間となっており、各チャネルの送信波の送信期間とほぼ一致している。言い換えると、各チャネルにおいて、送信波を生成し増幅するのに必要な期間だけ、送信増幅器101、及びDAC102をイネーブルにしている。
言い換えると、送信制御回路200は、送信増幅器101のイネーブル期間の開始タイミングを送信パルスの夫々の前端の直前に設定し、送信増幅器101のイネーブル期間の終了タイミングを送信パルスの夫々の後端の直後に設定するように、送信増幅器101のイネーブル期間を制御している。
同様に、送信制御回路200は、DAC102のイネーブル期間の開始タイミングを送信パルスの夫々の前端の直前に設定し、DAC102のイネーブル期間の終了タイミングを送信パルスの夫々の後端の直後に設定するように、DAC102のイネーブル期間を制御している。
【0040】
送信増幅器101がイネーブルされていない期間(つまり、ディセーブル期間)は、イネーブル期間に比べて、送信増幅器101の消費電力は大幅に低減される。同様に、DAC102がイネーブルされていない期間(つまり、ディセーブル期間)は、イネーブル期間に比べて、DAC102の消費電力は大幅に低減される。
なお、送信増幅器101がイネーブルされている期間(即ち、イネーブル期間)とは、送信増幅器101に送信波が入力されたときに、入力された送信波を直ちに増幅して出力することができる期間のことである。イネーブル期間以外の期間がディセーブル期間である。ディセーブル期間中は、送信増幅器101に送信波が入力されても、その送信波を増幅せず、また出力もしない。
同様に、DAC102がイネーブルされている期間(即ち、イネーブル期間)とは、DAC102にデジタルデータが入力されたときに、デジタル信号を直ちにアナログ信号に変換して出力することができる期間のことであり、イネーブル期間以外の期間がディセーブル期間である。ディセーブル期間中は、DAC102にデジタル信号が入力されても、デジタル/アナログ変換は行われない。
【0041】
図5は、送信波を生成するための波形生成用クロックの配信期間を、異なる遅延時間に適応させて、チャネル毎に独立かつ動的に異なるタイミングで制御している例を示すタイミングチャートである。
図5のタイミングチャートにおいて、ハッチングで示している期間が、波形生成用クロックの配信期間に相当する。
図5においても、各チャネルにおける配信期間は、各チャネルの送信波の送信期間の前後に所定のマージンを持たせた期間となっており、各チャネルの送信波の送信期間とほぼ一致している。つまり、各チャネルにおいて、送信波を生成するのに必要な期間だけ、波形生成用クロックを配信している。このため、送信波生成回路100に配信する波形生成用クロックが、チャネル毎の分散されることになり、波形生成用クロックに起因して生じるノイズが低減されることになる。また、波形生成用クロックを生成する回路の消費電力も低減されることになる。
【0042】
図6は、実施形態の超音波診断装置1との比較のために、従来の送信回路の構成例を示すブロック図である。従来の送信回路では、
図6に示すように、各チャネルに対する制御は全て共通に行っている。例えば、送信増幅器イネーブル制御回路からは、各チャネルの送信増幅器に対して、イネーブルのための制御信号を共通のタイミングで(即ち、同じ制御信号を同じ制御ラインで)配信している。同様に、各チャネルのデジタルアナログ変換器(DAC)に対しても、制御信号(例えば、イネーブル信号)を共通のタイミングで(即ち、同じ制御信号を同じ制御ラインで)配信している。また、各チャネルの波形生成回路や設定回路に対しても、共通のタイミングをもつ波形生成用クロックを配信している。
【0043】
図7は、従来の送信回路における、送信増幅器のイネーブル期間と、DACのイネーブル期間のタイミングを示すタイミングチャートである。前述したように、従来の送信回路では、送信増幅器やDACのイネーブルを制御する信号は、各チャネル間で共通となっている。このため、各チャネル間で送信波の送信タイミングが異なっているにもかかわらず、最も短い遅延時間をもつ送信波から最も長い遅延時間をもつ送信波までの全体をカバーする範囲を、送信増幅器やDACの共通のイネーブル期間とせざるを得ない。このため、送信増幅器やDACの消費電力は大きくなる。
【0044】
図8は、実施形態の送信回路30の消費電力と、従来の送信回路の消費電力との差異を概念的に説明する図である。
【0045】
実施形態の送信回路30は、前述したように(
図4参照)、各チャネルの遅延時間に適応して、独立かつ動的に、送信増幅器101及びDAC102のイネーブル期間を制御している。このため、送信増幅器101及びDAC102に関する合計消費電力は、遅延時間がチャネル間で異なっていることに起因して、分散されることになる。即ち、全チャネルの合計消費電力の最大値は、
図8の下から2段目に示すように、イネーブル期間が重なっているチャネルの数(
図8の例では、3チャネル)の合計消費電力に過ぎない。
【0046】
これに対して、従来の送信回路では、
図7に示したように、最も短い遅延時間をもつ送信波から最も長い遅延時間をもつ送信波までの全体をカバーする範囲をイネーブル期間としている。このため、
図8の最下段に示すように、従来構成の送信回路の最大消費電力は、全チャネルの消費電力を合計した大きな電力となる。しかも、この最大消費電力を、最も短い遅延時間をもつ送信波から最も長い遅延時間をもつ送信波まで、継続して供給し続ける必要がある。
【0047】
上述したように、実施形態の超音波診断装置1によれば、複数のチャネル毎に、送信波生成回路100の夫々を、独立かつ動的に異なるタイミングで制御することによって、送信回路30の消費電力を低減することが可能となる。例えば、チャネル毎に異なる遅延時間に適応して、チャネル毎に、送信増幅器101及びDAC102のイネーブル期間を独立かつ動的に異なるタイミングで制御することによって、送信回路30の消費電力を低減することが可能となる。
【0048】
また、実施形態の超音波診断装置1によれば、送信波を生成するための波形生成用クロックを、チャネル毎に異なる遅延時間に適応して、各チャネルの送信波生成回路の夫々に独立かつ動的に異なるタイミングで供給することによって、波形生成用クロックに起因するノイズの発生を低減することができる。
【0049】
さらに、実施形態の超音波診断装置1によれば、装置本体20に接続される超音波プローブ10の素子数に応じて、送信回路30の消費電力を制御することができる。例えば、送信回路30のチャネル数(送信波生成回路100の数)がNであり、装置本体20に接続された超音波プローブ10の素子数が(N−64)の場合を想定する。超音波プローブ10の素子数は、例えば、接続された超音波プローブ10の識別情報(ID)を装置本体20がコネクタ12を介して取得することができる。
【0050】
この場合、実施形態の超音波診断装置1は、送信回路30をチャネル毎に制御することが可能であるため、接続された超音波プローブ10にとって不必要な64チャネル分の送信波生成回路100の送信増幅器101やDAC102を非送信にする(イネーブルにしない)ように制御し、或いは、非送信の制御に加えて、64チャネル分の送信波生成回路100への波形生成用クロック、データ、及び設定用クロックの配信を停止する制御を行うことによって、送信回路30の消費電力を必要最小限に抑制することができる。
特に、2次元アレイプローブは1次元アレイプローブに比べて振動素子数が大幅に多くなっており、これに伴ってチャネル数も多くなり、消費電力も増加する。本実施形態の超音波診断装置1は2次元アレイプローブにも適用可能であり、1次元アレイプローブの使用時のみならず、2次元アレイプローブの使用時においても消費電力やノイズを低減することが可能である。
【0051】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態の送信回路30の細部構成例を示すブロック図である。第2の実施形態の送信回路30は、第1の実施形態の構成に加えて、ブロック毎に、データ設定のタイミングを制御することができる構成を有している。データの設定は、主に、設定制御回路203が行う。
【0052】
なお、第2の実施形態においても、第1の実施形態(
図2)と同様に、送信増幅器イネーブル制御回路201からの各チャネルの送信増幅器101に対するイネーブル制御や、クロック制御回路202からの各DAC102へのイネーブル制御及び各チャネルへの波形生成用クロックの配信は、チャネル毎に独立に行われるが、図が煩雑となるため、
図9では、これらの制御ラインの図示を省略している。
【0053】
設定制御回路203が設定するデータは、遅延時間、及び送信パルス長等の送信波形に関するパラメータ等である。第2の実施形態では、これらのデータを、ブロック毎に独立したタイミングで設定する。また、設定制御回路203は、データの設定に使用する設定用クロックの位相を、ブロック毎に異なる位相となるように制御している。
【0054】
図10は、「ブロック」の概念を説明する図である。本明細書で使用するブロックという用語は、
図10に示すように、印刷基板を所定数で分割した空間的な分割領域を意味している。
図10に示す例では、1つの印刷基板を、ブロックAからブロックDの4つのブロックに分割している。これらのブロックのうち、ブロックAとブロックCは、印刷基板の中心点に対して点対称に配置されており、互いに隣接していない。ブロックAとブロックCとを第1のブロックグループと呼ぶものとする。同様に、ブロックBとブロックDも、印刷基板の中心点に対して点対称に配置されており、互いに隣接していない。ブロックBとブロックDとを第2のブロックグループと呼ぶものとする。言い換えると、所定数のブロックのうち互いに隣接しないブロックの集まりを2つのグループに分類し、一方のグループを第1のブロックグループと呼び、他方のグループを第2のブロックグループと呼ぶ。
【0055】
送信回路30の各チャネルの送信波生成回路100は、例えば、所定数のチャネルが1つの集積回路(例えば、FPGA:Field Programmable Gate Array)として構成され、1つの印刷基板に複数個の集積回路が、4つのブロックに配分されて実装される。
【0056】
この実装上の配分に対応させて、
図9のブロック図では、チャネル1(CH1)からチャネルm(CHm)の送信波生成回路100を、ブロックA(BLa)からブロックD(BLd)の4つのブロックにグループ化している。
【0057】
図11は、第2の実施形態における、データ設定のタイミングの概念を説明する図である。
図11に示すように、データは、ブロック毎に独立して異なるタイミングで設定される。但し、データの内容に関しては、ブロックに関わらず、例えば遅延時間のように、チャネル毎に異なっているものや、パルス長等のようにチャネル間で共通のものがある。
【0058】
データの設定は、受信も送信も行っていないブランク期間に行われる。この際、設定制御回路203から各ブロックに設定するタイミングを、
図11に示すように、各ブロック間で異なるタイミングとしている(例えば、順にシフトさせている)。この結果、データや設定用クロックの伝送期間が、ブロック間で分散されることになり、データや設定用クロックに起因するノイズを低減することができる。
【0059】
さらに、第2の実施形態では、
図11の右下のタイミングチャートに示すように、設定用クロックの位相をブロック間で異なる位相に設定しており、これによってノイズをさらに低減している。
【0060】
例えば、ブロックAとブロックCに含まれる送信波生成回路100に対しては(即ち、第1のブロックグループに対しては)、位相が0度の設定用クロックを用いてデータを設定する。一方、ブロックBとブロックDに含まれる送信波生成回路100に対しては(即ち、第2のブロックグループに対しては)、位相が180度の設定用クロックを用いてデータを設定する。
図10に示したように、例えば、ブロックAは、ブロックBとブロックCに隣接するが、隣接するブロック間では、異なる位相のクロックが使用される。隣接するブロック間で同じ位相のクロック(例えば、同じタイミングで立ち上がるクロック)を用いたい場合、クロックに起因するノイズが増強する可能性がある。これに対して、第2の実施形態では、隣接するブロック間で異なる位相のクロックを使用しているため、クロックに起因するノイズを抑制することができる。
【0061】
一方、ブロックAとブロックCとは、互いに隣接しておらず、空間的に離れた領域となっているため、同じ位相のクロックを使用しても、ノイズが増強する可能性は低い。
【0062】
なお、ブロック数は上述した4に限定されるものではなく、8でも良いし、16でも良い。この場合にも、互いに隣接するブロック間では異なる位相のクロックを使用し、互いに隣接しないブロック間では、同じ位相のクロックを使用すればよい。
【0063】
また、クロックの位相も上述した、0度と180度の2種類に限定されるものではない。例えば、0度、90度、180度、及び270度の4種の位相をもつ設定用クロックを使用することもできる。
【0064】
上述した少なくとも1つの実施形態に係る超音波診断装置1によれば、送信回路の消費電力や、送信回路から発生するノイズを低減することができる。
なお、ここまでは、各実施形態の超音波診断装置1が、超音波プローブ10を含んで構成されるものとして説明してきたが、この構成に限定されない。例えば、超音波診断装置1は、超音波プローブ10に接続可能ではあるものの、超音波診断装置1の構成には超音波プローブ10を含ませない構成としてもよい。つまり、
図1における装置本体20を実施形態の超音波診断装置1としてもよい。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。