特許第6918556号(P6918556)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918556
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】車輪モジュール及び台車
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20210729BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20210729BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20210729BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   B60K7/00
   B62B3/00 B
   H02K7/116
   H02K7/14 C
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-79886(P2017-79886)
(22)【出願日】2017年4月13日
(65)【公開番号】特開2018-52479(P2018-52479A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2018年10月5日
【審判番号】不服2020-7384(P2020-7384/J1)
【審判請求日】2020年6月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-188853(P2016-188853)
(32)【優先日】2016年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】古崎 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】小山 高延
【合議体】
【審判長】 佐々木 一浩
【審判官】 島田 信一
【審判官】 氏原 康宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−173068(JP,A)
【文献】 特開2009−286296(JP,A)
【文献】 特開2012−214147(JP,A)
【文献】 実公平6−28942(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K7/00,B62B3/00,H02K7/14,7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一輪のタイヤが取り付けられるホイールと、
ステータと、
前記ステータに対して回転軸を中心に回転することで、前記ホイールを回転させるロータと、
前記ホイールの内側に配置され、前記ステータを保持する保持部材と、
前記保持部材を支持する支持部材と
を備え、
前記支持部材は、一つの該支持部材によって前記保持部材を介して前記タイヤ、前記ホイール、前記ステータおよび前記ロータを含むモジュールを支持し、
前記保持部材は、前記回転軸の軸方向における一方の側に、前記回転軸に沿って延出し、前記回転軸を包囲する筒状の部分を有する固定部を有しており、当該固定部が前記支持部材に固定されて支持されており、
前記支持部材と前記固定部との固定は、前記支持部材の一部に設けられた貫通孔に前記固定部の筒状の部分が貫通して挿嵌されることによる固定と、前記固定部の筒状の部分に連なる部分に前記支持部材がネジ止めされることによる固定とから行われ、
前記保持部材は、前記ステータの前記回転軸の軸方向における一方の側にのみ配置されている、
車輪モジュール。
【請求項2】
前記保持部材は、当該保持部材に取り付けられた第1のベアリングを介して、前記ホイールを回転自在に支持しており、
前記ステータは、当該ステータに取り付けられた第2のベアリングを介して、前記ホイールを回転自在に支持しており、
前記第1のベアリングは、前記第2のベアリングと比べて大きい径を有する、
請求項1に記載の車輪モジュール。
【請求項3】
前記ロータは、前記ステータの外側に配置されている、
請求項1又は2に記載の車輪モジュール。
【請求項4】
前記ホイールは、前記軸方向における一方の側に開口部を有し、他方の側に底部を有する有底円筒状に形成されており、
前記第1のベアリングは、シールベアリングであり、前記開口部に取り付けられて、前記ホイールの内側の空間を密閉している、
請求項に記載の車輪モジュール。
【請求項5】
前記タイヤは、前記ホイールに対して、前記軸方向における他方の側に着脱可能に取り付けられる、
請求項1〜のいずれか一つに記載の車輪モジュール。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一つに記載の車輪モジュールを備える、台車。
【請求項7】
前記タイヤの直径が、100〜300mmである、
請求項に記載の台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪モジュール及び台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動自転車等の駆動装置として用いられる車輪装置として、車輪が有する回転軸の両端を支持する両持ち軸構造を有する車輪装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−278234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術における車輪装置をそのまま片持ち軸構造とした場合には、装置の剛性が不足することがあり得る。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、片持ち軸構造でも剛性を確保することができる車輪モジュール及び台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る車輪モジュールは、一輪のタイヤが取り付けられるホイールと、ステータと、前記ステータに対して回転軸を中心に回転することで、前記ホイールを回転させるロータと、前記ホイールの内側に配置され、前記ステータを保持する保持部材と、前記保持部材を支持する支持部材とを備え、前記支持部材は、該支持部材のみによって前記保持部材を介して前記タイヤ、前記ホイール、前記ステータおよび前記ロータを含むモジュールの全体を支持し、前記保持部材は、前記回転軸の軸方向における一方の側に、前記回転軸に沿って延出し、前記回転軸を包囲する筒状の部分を有する固定部を有しており、当該固定部が前記支持部材に固定されて支持されている。前記支持部材と前記固定部との固定は、前記支持部材の一部に設けられた貫通孔に前記固定部の筒状の部分が貫通して挿嵌されることによる固定と、前記固定部の筒状の部分に連なる部分に前記支持部材がネジ止めされることによる固定とから行われる。前記保持部材は、前記ステータの前記回転軸の軸方向における一方の側にのみ配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、片持ち軸構造でも剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る車輪モジュールを備えた台車の外観を示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る車輪モジュールの外観を示す斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る車輪モジュールの構成を示す分解斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る車輪モジュールの回転軸に沿った断面図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る車輪モジュールにおけるタイヤの着脱を示す斜視図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る車輪モジュールの構成を示す分解斜視図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る車輪モジュールの回転軸に沿った断面図である。
図8図8は、第3の実施形態に係る車輪モジュールの構成を示す分解斜視図である。
図9図9は、第3の実施形態に係る車輪モジュールの回転軸に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係る車輪モジュール及び台車について説明する。なお、以下の説明で参照する各図面において、各要素の寸法の関係や比率等は実物と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一の役割を果たす構成要素には同一の符号が付されている。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る車輪モジュールを備えた台車100の外観を示す斜視図である。例えば、図1に示すように、台車100は、荷台110と、取っ手120と、車輪モジュール200とを有する。荷台110は、厚板状に形成された部材であり、表面に荷物が載せられる。取っ手120は、利用者が台車100を移動する際に把持するための湾曲した棒状の部材であり、荷台110の上面に取り付けられている。車輪モジュール200は、図示していない電源から供給される駆動電流によって回転する車輪であり、荷台110の裏面に取り付けられている。
【0011】
ここで、車輪モジュール200は、台車100の移動機構として用いられる。例えば、車輪モジュール200は、利用者が荷台110に荷物を載せて運搬する際の補助用に駆動されたり、台車100が他の台車に追従して自走する機能を有する場合に、他の台車との間の距離に応じて駆動されたりする。なお、車輪モジュール200は、台車100に前輪として備えられてもよいし、後輪として備えられてもよいし、前輪及び後輪の両方として備えられてもよい。
【0012】
図2は、第1の実施形態に係る車輪モジュール200の外観を示す斜視図である。例えば、図2に示すように、車輪モジュール200は、車輪部210と、支持部材220と、ブレーキ部230とを有する。車輪部210は、図示していない電源から供給される駆動電流によって駆動され、回転軸を中心に回転する。支持部材220は、台車100における荷台110の裏面に取り付けられ、車輪部210を支持する。ブレーキ部230は、図示していない制御機構や利用者等による制御に応じて、車輪部210の回転を停止又は解放する。
【0013】
ここで、支持部材220は、車輪部210の軸方向における一方の側から車輪部210の回転軸を支持している。すなわち、本実施形態に係る車輪モジュール200は、片持ち軸構造を有している。本実施形態に係る車輪モジュール200は、以下で説明するように、このような片持ち軸構造でも剛性を確保することができるように構成されている。
【0014】
なお、本実施形態では、車輪モジュール200は、台車100が有する荷台110の裏面における端部付近に取り付けられ、車輪部210が支持部材220の外側に配置される場合の例を説明する。このため、以下の説明では、車輪モジュール200の回転軸の軸方向において、台車100の内側に近い側を「奥側」と称し、台車100の外側に近い側を「手前側」と称する。
【0015】
図3は、第1の実施形態に係る車輪モジュール200の構成を示す分解斜視図である。また、図4は、第1の実施形態に係る車輪モジュール200の回転軸に沿った断面図である。例えば、図3及び4に示すように、車輪モジュール200では、回転軸の軸方向に沿って、車輪部210の奥側に支持部材220が配置され、支持部材220の奥側にブレーキ部230が配置されている。
【0016】
車輪部210は、タイヤ211と、ホイール212と、駆動部213とを有する。
【0017】
タイヤ211は、ゴム等で形成された弾力性を有する円筒状の部材である。ここで、例えば、タイヤ211の直径は100〜300mmである。
【0018】
ホイール212は、奥側に開口部を有し、手前側に底部を有する有底円筒状に形成されており、外周側にタイヤ211が取り付けられている。具体的には、ホイール212は、第1のホイール部材212aと、第2のホイール部材212bとを有する。各ホイール部材は、軸方向に沿って隣接して配置されており、第1のホイール部材212aが奥側に配置され、第2のホイール部材212bが手前側に配置されている。
【0019】
第1のホイール部材212aは、奥側及び手前側それぞれに開口部を有する概略円筒状に形成されている。また、第2のホイール部材212bは、奥側に開口部を有し、手前側に底部を有する有底円筒状に形成されている。ここで、第1のホイール部材212aにおける手前側の開口部と、第2のホイール部材212bにおける奥側の開口部との間には、ゴム等で形成されたOリング212cが密着した状態で配置されている。これにより、ホイール212は、開口部を除いた部分が密閉された状態となっている。
【0020】
そして、第1のホイール部材212aは、環状に形成された第1のプレート219が奥側から押し当てられた状態で、第1のプレート219を介して、ボルト214によって第2のホイール部材212bに固定されている。これにより、第1のホイール部材212aと第2のホイール部材212bとが、連結されて固定された状態となる。さらに、第2のホイール部材212bには、環状に形成された第2のプレート215が、手前側から押し当てられた状態で、ボルト216によって固定されている。
【0021】
ここで、第1のプレート219及び第2のプレート215は、それぞれ、タイヤ211の内周より大きい径を有するように形成されている。これにより、タイヤ211は、第1のプレート219と第2のプレート215との間に内周端が挟まれることで、ホイール212に固定される。
【0022】
駆動部213は、ホイール212の内側に配置されており、図示していない電源から供給される駆動電流によって駆動されて、回転軸を中心にホイール212を回転させる。具体的には、駆動部213は、ステータ213aと、ロータ213bと、回転シャフト213cと、遊星歯車機構213dと、筐体213eとを有する。
【0023】
ステータ213aとロータ213bとはインナーロータ型のモータを構成しており、図示していない電源から供給される駆動電流によって、回転軸を中心にロータ213bが回転する。ロータ213bの回転によって発生した回転力は、後述する回転シャフト213c及び遊星歯車機構213dを介してホイール212に伝達される。
【0024】
ステータ213aは、図示していない電源から供給される駆動電流によって、回転軸を中心にロータ213bを回転させる。具体的には、ステータ213aは、中空の円筒状に形成されたステータ基部の内周面に複数の突極が周方向に並べて配置された構成を有しており、各突極にコイルが巻回されている。
【0025】
ロータ213bは、ステータ213aの内側に配置されており、ステータ213aに対して回転軸を中心に回転することで、ホイール212を回転させる。具体的には、ロータ213bは、円柱状に形成された基部の外周面に沿って複数の磁石が周方向に並べて配置された構成を有しており、各磁石が、ステータ213aの各コイルと対向するように配置されている。これにより、ロータ213bは、ステータ213aのコイルに駆動電流が流れた際にコイルに発生する電磁力によって、回転軸を中心に回転する。
【0026】
回転シャフト213cは、軸心が回転軸と一致するように配置され、ロータ213bの中心を貫通した状態で、当該ロータ213bに固定されている。ここで、回転シャフト213cは、ロータ213bの奥側に配置された第3のベアリング213fと、ロータ213bの手前側に配置された第4のベアリング213gとを介して、筐体213eによって回転自在に支持されている。これにより、回転シャフト213cは、ロータ213bの回転に応じて、回転軸を中心に回転する。
【0027】
遊星歯車機構213dは、3つの遊星歯車213d−1と、3つの遊星歯車213d−1を囲むように配置された内歯車213d−2とを有している。3つの遊星歯車213d−1は、それぞれ、回転シャフト213cにおける手前側の端部に形成された太陽歯車213d−3に噛合している。また、内歯車213d−2は、3つの遊星歯車213d−1それぞれに噛合し、かつ、第2のホイール部材212bの内周面に固定されている。これにより、ロータ213bの回転に応じて回転シャフト213cが回転すると、回転シャフト213cに形成されている太陽歯車213d−3と噛合している3つの遊星歯車213d−1がそれぞれ回転する。そして、内歯車213d−2はホイール212にネジにて固定されていることから、3つの遊星歯車213d−1が回転することで、各遊星歯車に噛合している内歯車213d−2が回転し、内歯車213d−2の回転とともに、ホイール212が回転する。この結果、ロータ213bの回転によって発生した回転力が、回転速度が減速されながらホイール212に伝達されることになる。
【0028】
筐体213eは、ホイール212の内側に配置され、ステータ213aを保持する保持部材であり、ステータ213a、ロータ213b、回転シャフト213c、及び遊星歯車機構213dを収容する。具体的には、筐体213eは、第1の筐体部材213e−1と、第2の筐体部材213e−2と、第3の筐体部材213e−3とを有する。各筐体部材は、軸方向に沿って隣接して配置されており、第1の筐体部材213e−1が第2の筐体部材213e−2の奥側に配置され、第2の筐体部材213e−2が第3の筐体部材213e−3の奥側に配置されている。
【0029】
ここで、第1の筐体部材213e−1は、奥側に底部を有し、手前側に開口部を有する有底円筒状に形成されている。また、第2の筐体部材213e−2は、奥側に開口部を有し、手前側に底部を有する有底円筒状に形成されている。そして、第1の筐体部材213e−1及び第2の筐体部材213e−2は、内側にステータ213a、ロータ213b及び回転シャフト213cを収容し、かつ、互いの開口部が対向した状態で、ネジ213e−4によって第1の筐体部材213e−1が第2の筐体部材213e−2に固定されている。また、第3の筐体部材213e−3は、円盤状に形成されており、第2の筐体部材213e−2との間に遊星歯車機構213dを挟み込むように収容した状態で、ネジ213e−5によって第2の筐体部材213e−2に固定されている。
【0030】
そして、筐体213eは、奥側の端部に取り付けられた第1のベアリング217及び手前側の端部に取り付けられた第2のベアリング218を介して、ホイール212を回転自在に支持している。具体的には、第1の筐体部材213e−1が、奥側の端部に取り付けられた第1のベアリング217を介して、第1のホイール部材212aを回転自在に支持しており、第3の筐体部材213e−3が、手前側の端部に取り付けられた第2のベアリング218を介して、第2のホイール部材212bを回転自在に支持している。
【0031】
ここで、本実施形態では、第1のベアリング217は、第2のベアリング218と比べて大きい径を有する。また、第1のベアリング217は、シールベアリングであり、ホイール212の開口部に取り付けられている。前述したように、ホイール212は、回転軸の軸方向における一方の側に開口部を有し、他方の側に底部を有する有底円筒状に形成されており、開口部を除いた部分が密閉された状態となっている。そのため、ホイール212の開口部にシールベアリングである第1のベアリング217を取り付けることによって、ホイール212と筐体213eとの間の空間を密閉することができる。
【0032】
また、第1の筐体部材213e−1及び第2の筐体部材213e−2それぞれの底部には、回転軸が通る位置に貫通孔が形成されており、回転シャフト213cが、各筐体部材の貫通孔を通って両端部が延出するように配置されている。具体的には、回転シャフト213cにおける奥側の端部が、第1の筐体部材213e−1の貫通孔を通って、支持部材220を介してブレーキ部230に達する位置まで延出している。また、回転シャフト213cにおける手前側の端部が、第2の筐体部材213e−2の貫通孔を通って、当該端部に形成された太陽歯車213d−3が遊星歯車機構213dの3つの遊星歯車213d−1に噛合する位置まで延出している。これにより、前述したように、ロータ213bの回転によって発生した回転力が、回転シャフト213c及び遊星歯車機構213dを介してホイール212に伝達されることになる。この結果、ロータ213bの回転に応じて、回転軸を中心にホイール212が回転することになる。
【0033】
支持部材220は、台車100における荷台110の裏面に取り付けられ、車輪部210を支持する。具体的には、支持部材220は、支持台221と、ブラケット222とを有する。支持台221は、厚板状に形成された部材であり、上側の面が台車100の荷台110の裏面に取り付けられる。また、支持台221の下側の面には、ブラケット222が固定されている。ブラケット222は、略L字状に湾曲した形状を有する棒状の部材であり、上側の端部が、支持台221の下側の面に固定され、下側の端部が、回転軸と略直交するように配置されている。なお、支持部材220の形状及び構成は、ここで説明したものに限られず、下側の端部が回転軸と交差するように配置されていれば、他の形状及び構成を有していてもよい。
【0034】
そして、このような構成のもと、本実施形態では、上述したように筐体213eは、第1の筐体部材213e−1と、第2の筐体部材213e−2と、第3の筐体部材213e−3とを有し、それぞれがネジ等により固定されている。このように一体的に固定された筐体213eが、ステータ213a、ロータ213b、回転シャフト213c、遊星歯車機構213d等の回転運動に係る要部を支持することになる。また、筐体213eが、奥側に、回転軸に沿って延出する固定部213hを有しており、当該固定部213hが支持部材220に固定されて支持されている。このように、ステータ213a及びロータ213bを収容する筐体213eを固定部213hによって支持部材220に固定することによって、本実施形態に係る車輪モジュール200のような片持ち軸構造でも剛性を確保することができるようになる。また、両持ち軸構造に対して、片持ち軸構造とした場合には、例えば図4に示すように、車輪モジュール200の回転軸方向における片側のみでブラケット222を構成することが可能となる。このようにすることで、例えば、台車100等のように荷台を有する装置に車輪モジュール200を用いる場合に、荷台の内側に全ての車輪モジュールが収まるように各車輪モジュールを配置することも可能である。
【0035】
具体的には、固定部213hは、円筒状に形成されており、第1の筐体部材213e−1における第1のベアリング217が取り付けられた奥側の端部から、回転軸に沿って奥側に延出するように設けられている。ここで、固定部213hは、第1の筐体部材213e−1と一体形成されている。そして、固定部213hは、支持部材220のブラケット222における下側の端部に形成された貫通孔223に挿嵌されて、固定されている。そして、このように固定部213hがブラケット222の貫通孔223に嵌合した状態で、ブラケット222が、ボルト224によって、第1の筐体部材213e−1の奥側の端部に固定されている。これにより、筐体213e及び固定部213hが、支持部材220に固定されて支持されることになる。
【0036】
このような構成では、筐体213eが、第1のベアリング217が配置された奥側の端部で支持されることになるため、例えば、台車100が段差を乗り越える際や、石畳や砂利道等の凹凸のある面を走行する場合に、第2のベアリング218と比べて、第1のベアリング217により大きな負荷がかかることになる。そこで、本実施形態では、第1のベアリング217は、第2のベアリング218と比べて大きい径を有するものとしている。これにより、片持ち軸構造における支点部分の剛性を高めることが可能になる。加えて、このように支持部材220に近い第1のベアリング217を大径とすることで、第1のベアリング217の内径側から回転軸となる回転シャフト213cをブレーキ部230まで延伸させることが可能となる。また、駆動部213やブレーキ部230、図示しない制御機構等を接続する各種ケーブルを引き出しやすくする効果も得られる。
【0037】
なお、固定部213hを含む筐体213eの材料としては、車輪モジュール200に加えられる加重の大きさに応じて適切な材料が用いられる。また、固定部213hは、筐体213eの材料に応じて、固定部213hに要求される強度を実現することが可能な太さ及び長さに形成される。ここで、例えば、固定部213hを含む筐体213eは、アルミニウムを材料として、ダイキャストによって作製される。または、固定部213hを含む筐体213eは、より高い強度が要求される場合には、例えば、鉄やチタン等によって作製される。または、固定部213hを含む筐体213eは、炭素繊維カーボン樹脂によって作製した場合、軽量化に有利である。
【0038】
そして、固定部213hは、中心軸に沿って貫通孔を有するように形成されている。ここで、固定部213hが有する貫通孔は、第1の筐体部材213e−1の貫通孔と連続するように形成されており、回転シャフト213cにおける奥側の端部が、各貫通孔を通るように配置されている。これにより、回転シャフト213cにおける奥側の端部は、第1の筐体部材213e−1の貫通孔及び固定部213hの貫通孔を通って、支持部材220のブラケット222に形成された貫通孔223から奥側に延出するように配置される。そして、ブラケット222の貫通孔223から延出した回転シャフト213cの奥側の端部は、ブレーキ部230の内側に挿入された状態で配置される。
【0039】
ブレーキ部230は、図示していない制御機構や利用者等による制御に応じて、車輪モジュール200の回転を停止又は解放する。具体的には、ブレーキ部230は、内蔵しているブレーキ機構によって、ブラケット222の貫通孔223から延出した回転シャフト213cの奥側の端部に作用することで、車輪部210の回転を停止又は解放する。
【0040】
上述したように、第1の実施形態では、ステータ213a及びロータ213bを収容する筐体213eが、第1の筐体部材213e−1と、第2の筐体部材213e−2と、第3の筐体部材213e−3とを有し、それぞれがネジ等により一体的に固定されている。また、筐体213eは、回転軸の軸方向における一方の側に、回転軸に沿って延出する固定部213hを有しており、当該固定部213hが支持部材220に固定されて支持されている。このような構成によれば、ステータ213a及びロータ213bを収容する筐体213eが、固定部213hを介して支持部材220に固定される。これにより、片持ち軸構造でも剛性を確保することができる。
【0041】
また、第1の実施形態では、筐体213eは、回転軸の軸方向における一方の端部に取り付けられた第1のベアリング217及び他方の端部に取り付けられた第2のベアリング218を介して、ホイール212を回転自在に支持しており、第1のベアリング217は、第2のベアリング218と比べて大きい径を有する。これにより、片持ち軸構造における支点部分の剛性を高めることができる。
【0042】
また、第1の実施形態では、ホイール212が、回転軸の軸方向における一方の側に開口部を有し、他方の側に底部を有する有底円筒状に形成されており、第1のベアリング217は、シールベアリングであり、ホイール212の開口部に取り付けられて、ホイール212と筐体213eとの間の空間を密閉している。これにより、1つのシールベアリングでホイール212内の防水を実現することができ、回転ロスを低減することができる。
【0043】
また、第1の実施形態では、タイヤ211が、第1のプレート219と第2のプレート215との間に内周端が挟まれることで、第1のホイール部材212a及び第2のホイール部材212bに固定されている。これにより、タイヤ211は、ホイール212に対して、軸方向における他方の側に着脱可能に取り付けられることになる。
【0044】
図5は、第1の実施形態に係る車輪モジュール200におけるタイヤ211の着脱を示す斜視図である。両持ち軸の場合、タイヤを交換する場合は車輪モジュールごと一旦取り外さなければいけないため手間がかかる。しかしながら、例えば、図5に示すように、本実施形態では、ホイール212の手前側に取り付けられている第2のプレート215を取り外すことで、タイヤ211を手前側に着脱することが可能となっている。これにより、台車100に車輪モジュール200が取り付けられた状態でも、タイヤ211を容易に交換することができる。
【0045】
なお、本実施形態において、ロータ213bの内部に複数の直線状の磁石が周方向に並べて埋め込まれた埋込磁石型(IPM:Interior Permanent Magnet)モータの構成を有するようにすれば、車輪モジュール200として必要なトルクが得やすくなり、磁石をロータ213bで確実に保持することができ、また、モータの回転中に遠心力で磁石が離散することを防ぐことができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、車輪モジュール200が、ステータ213aの内側にロータ213bが配置された、いわゆるインナーロータ型のモータの構成を有する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、車輪モジュール200は、ロータの内側にステータが配置されるアウターロータ型のモータの構成を有していてもよい。
【0047】
そこで、以下では、第2及び第3の実施形態として、車輪モジュールが、アウターロータ型のモータの構成を有する場合の例を説明する。なお、以下で説明する実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1の実施形態で説明した構成要素と同じ役割を果たす構成要素については詳細な説明を省略する。
【0048】
(第2の実施形態)
まず、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、車輪モジュールが、第1の実施形態で説明したインナーロータ型のモータの代わりに、アウターロータ型のモータを備える場合の例である。
【0049】
図6は、本実施形態に係る車輪モジュール1200の構成を示す分解斜視図である。また、図7は、本実施形態に係る車輪モジュール1200の回転軸に沿った断面図である。例えば、図6及び7に示すように、車輪モジュール1200では、回転軸の軸方向に沿って、車輪部1210の奥側に支持部材220が配置され、支持部材220の奥側にブレーキ部230が配置されている。
【0050】
車輪部1210は、タイヤ211と、ホイール212と、駆動部1213とを有する。なお、本実施形態に係る車輪部1210は、第1の実施形態で説明した車輪部210と比べて、駆動部1213の構成が異なっている。
【0051】
駆動部1213は、ホイール212の内側に配置されており、図示していない電源から供給される駆動電流によって駆動されて、回転軸を中心にホイール212を回転させる。具体的には、駆動部1213は、ステータ1213aと、ロータ1213bと、回転シャフト1213cと、遊星歯車機構213dと、筐体213eとを有する。なお、本実施形態に係る駆動部1213では、第1の実施形態で説明した駆動部213と比べて、ステータ1213a、ロータ1213b、及び回転シャフト1213cの構成が異なっている。
【0052】
ステータ1213aとロータ1213bとはアウターロータ型のモータを構成しており、図示していない電源から供給される駆動電流によって、回転軸を中心にロータ1213bが回転する。ロータ1213bの回転によって発生した回転力は、後述する回転シャフト1213c及び遊星歯車機構213dを介してホイール212に伝達される。
【0053】
ステータ1213aは、図示していない電源から供給される駆動電流によって、回転軸を中心にロータ1213bを回転させる。具体的には、ステータ1213aは、中空の円筒状に形成されたステータ基部の外周面に複数の突極が周方向に並べて配置された構成を有しており、各突極にコイルが巻回されている。
【0054】
ロータ1213bは、ステータ1213aの外側に配置されており、ステータ1213aに対して回転軸を中心に回転することで、ホイール212を回転させる。具体的には、ロータ1213bは、中空の有底円筒状に形成されたロータフレーム1213b−1と、ロータフレーム1213b−1の内周面に沿って周方向に並べて配置された複数の磁石1213b−2を有しており、各磁石が、ステータ1213aの各コイルと対向するように配置されている。これにより、ロータ1213bは、ステータ1213aのコイルに駆動電流が流れた際にコイルに発生する電磁力によって、回転軸を中心に回転する。
【0055】
回転シャフト1213cは、軸心が回転軸と一致するように配置され、ロータフレーム1213b−1の底部に形成された貫通孔を貫通した状態で、ロータ1213bに固定されている。ここで、回転シャフト1213cは、ステータ1213aの奥側に配置された第3のベアリング213fと、ステータ1213aの手前側に配置された第4のベアリング213gとを介して、筐体213eによって回転自在に支持されている。これにより、回転シャフト1213cは、ロータ1213bの回転に応じて、回転軸を中心に回転する。
【0056】
そして、このような構成のもと、本実施形態では、筐体213eが、第1の筐体部材213e−1と、第2の筐体部材213e−2と、第3の筐体部材213e−3とを有し、それぞれがネジ等により固定されている。このように一体的に固定された筐体213eが、ステータ1213a、ロータ1213b、回転シャフト1213c、遊星歯車機構213d等の回転運動に係る要部を支持することになる。また、筐体213eが、奥側に、回転軸に沿って延出する固定部213hを有しており、当該固定部213hが支持部材220に固定されて支持されている。このように、ステータ1213a及びロータ1213bを収容する筐体213eを固定部213hによって支持部材220に固定することによって、本実施形態に係る車輪モジュール1200のような片持ち軸構造でも剛性を確保することができるようになる。また、両持ち軸構造に対して、片持ち軸構造とした場合には、例えば図7に示すように、車輪モジュール1200の回転軸方向における片側のみでブラケット222を構成することが可能となる。このようにすることで、例えば、台車100等のように荷台を有する装置に車輪モジュール1200を用いる場合に、荷台の内側に全ての車輪モジュールが収まるように各車輪モジュールを配置することも可能である。
【0057】
具体的には、固定部213hは、円筒状に形成されており、第1の筐体部材213e−1における第1のベアリング217が取り付けられた奥側の端部から、回転軸に沿って奥側に延出するように設けられている。ここで、固定部213hは、第1の筐体部材213e−1と一体形成されている。そして、固定部213hは、支持部材220のブラケット222における下側の端部に形成された貫通孔223に挿嵌されて、固定されている。そして、このように固定部213hがブラケット222の貫通孔223に嵌合した状態で、ブラケット222が、ボルト224によって、第1の筐体部材213e−1の奥側の端部に固定されている。これにより、筐体213e及び固定部213hが、支持部材220に固定されて支持されることになる。
【0058】
このような構成では、筐体213eが、第1のベアリング217が配置された奥側の端部で支持されることになるため、例えば、台車100が段差を乗り越える際や、石畳や砂利道等の凹凸のある面を走行する場合に、第2のベアリング218と比べて、第1のベアリング217により大きな負荷がかかることになる。そこで、本実施形態では、第1のベアリング217は、第2のベアリング218と比べて大きい径を有するものとしている。これにより、片持ち軸構造における支点部分の剛性を高めることが可能になる。加えて、このように支持部材220に近い第1のベアリング217を大径とすることで、第1のベアリング217の内径側から回転軸となる回転シャフト1213cをブレーキ部230まで延伸させることが可能となる。また、駆動部1213やブレーキ部230、図示しない制御機構等を接続する各種ケーブルを引き出しやすくする効果も得られる。
【0059】
なお、固定部213hを含む筐体213eの材料としては、車輪モジュール1200に加えられる加重の大きさに応じて適切な材料が用いられる。また、固定部213hは、筐体213eの材料に応じて、固定部213hに要求される強度を実現することが可能な太さ及び長さに形成される。ここで、例えば、固定部213hを含む筐体213eは、アルミニウムを材料として、ダイキャストによって作製される。または、固定部213hを含む筐体213eは、より高い強度が要求される場合には、例えば、鉄やチタン等によって作製される。または、固定部213hを含む筐体213eは、炭素繊維カーボン樹脂によって作製した場合、軽量化に有利である。
【0060】
そして、固定部213hは、中心軸に沿って貫通孔を有するように形成されている。ここで、固定部213hが有する貫通孔は、第1の筐体部材213e−1の貫通孔と連続するように形成されており、回転シャフト1213cにおける奥側の端部が、各貫通孔を通るように配置されている。これにより、回転シャフト1213cにおける奥側の端部は、第1の筐体部材213e−1の貫通孔及び固定部213hの貫通孔を通って、支持部材220のブラケット222に形成された貫通孔223から奥側に延出するように配置される。そして、ブラケット222の貫通孔223から延出した回転シャフト1213cの奥側の端部は、ブレーキ部230の内側に挿入された状態で配置される。
【0061】
上述したように、第2の実施形態では、ステータ1213a及びロータ1213bを収容する筐体213eが、第1の筐体部材213e−1と、第2の筐体部材213e−2と、第3の筐体部材213e−3とを有し、それぞれがネジ等により一体的に固定されている。また、筐体213eは、回転軸の軸方向における一方の側に、回転軸に沿って延出する固定部213hを有しており、当該固定部213hが支持部材220に固定されて支持されている。このような構成によれば、ステータ1213a及びロータ1213bを収容する筐体213eが、固定部213hを介して支持部材220に固定される。これにより、片持ち軸構造でも剛性を確保することができる。
【0062】
また、第2の実施形態では、筐体213eは、回転軸の軸方向における一方の端部に取り付けられた第1のベアリング217及び他方の端部に取り付けられた第2のベアリング218を介して、ホイール212を回転自在に支持しており、第1のベアリング217は、第2のベアリング218と比べて大きい径を有する。これにより、片持ち軸構造における支点部分の剛性を高めることができる。
【0063】
また、第2の実施形態では、ホイール212が、回転軸の軸方向における一方の側に開口部を有し、他方の側に底部を有する有底円筒状に形成されており、第1のベアリング217は、シールベアリングであり、ホイール212の開口部に取り付けられて、ホイール212と筐体213eとの間の空間を密閉している。これにより、1つのシールベアリングでホイール212内の防水を実現することができ、回転ロスを低減することができる。
【0064】
さらに、第2の実施形態では、アウターロータ型のモータを用いることによって、インナーロータ型のモータを用いる場合と比べて、ロータの径を大きくすることができるため、トルクを得やすい。また、第2の実施形態では、アウターロータ型のモータを用いることによって、インナーロータ型のモータを用いる場合と比べて、モータの容積が同じであれば、電流を削減することが可能である。
【0065】
なお、本実施形態において、ロータ1213bの内部に複数の直線状の磁石が周方向に並べて埋め込まれた埋込磁石型(IPM:Interior Permanent Magnet)モータの構成を有するようにすれば、車輪モジュール200として必要なトルクが得やすくなり、また、通電時に繰り返し生じる吸引反発力によって磁石が剥がれ落ちるおそれを軽減することができ、磁石をロータ1213bで確実に保持することができる。
【0066】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、車輪モジュールが、アウターロータ型のモータを備え、かつ、モータの回転力を歯車機構を介さずに直接ホイールに伝達する、いわゆるダイレクトドライブの構成を備える場合の例である。
【0067】
図8は、第3の実施形態に係る車輪モジュール2200の構成を示す分解斜視図である。また、図9は、第3の実施形態に係る車輪モジュール2200の回転軸に沿った断面図である。例えば、図8及び9に示すように、車輪モジュール2200では、回転軸の軸方向に沿って、車輪部2210の奥側に支持部材220が配置され、支持部材220の奥側にブレーキ部230が配置されている。
【0068】
車輪部2210は、タイヤ211と、ホイール212と、駆動部2213とを有する。なお、本実施形態に係る車輪部1210は、第1の実施形態で説明した車輪部210と比べて、駆動部2213の構成が異なっている。
【0069】
駆動部2213は、ホイール212の内側に配置されており、図示していない電源から供給される駆動電流によって駆動されて、回転軸を中心にホイール212を回転させる。具体的には、駆動部2213は、ステータ2213aと、ロータ2213bと、回転シャフト2213cと、保持部材2213eとを有する。なお、本実施形態に係る駆動部2213は、第1の実施形態で説明した駆動部213と比べて、ステータ2213a、ロータ2213b、及び回転シャフト2213cの構成が異なっており、かつ、筐体213eの代わりに保持部材2213eを有する点が異なっている。
【0070】
ステータ2213aとロータ2213bとはアウターロータ型のモータを構成しており、図示していない電源から供給される駆動電流によって、回転軸を中心にロータ2213bが回転する。ロータ2213bの回転によって発生した回転力は、後述する回転シャフト2213cを介してホイール212に直接伝達される。
【0071】
ステータ2213aは、図示していない電源から供給される駆動電流によって、回転軸を中心にロータ2213bを回転させる。具体的には、ステータ2213aは、中空の円筒状に形成されたステータ基部2213a−1と、ステータ基部2213a−1の外周面に固定されたステータコア2213a−2とを有している。ステータコア2213a−2は、ステータ基部2213a−1の外周面に沿って周方向に並べて配置された複数の突極を有しており、各突極にコイルが巻回されている。
【0072】
ロータ2213bは、ステータ2213aの外側に配置されており、ステータ2213aに対して回転軸を中心に回転することで、ホイール212を回転させる。具体的には、ロータ2213bは、第2のホイール部材212bの内周面に沿って周方向に並べて配置された複数の磁石を有しており、各磁石が、ステータ2213aの各コイルと対向するように配置されている。すなわち、本実施形態では、第2のホイール部材212bがロータフレームを兼ねた構成となっている。これにより、ロータ2213bは、ステータ2213aのコイルに駆動電流が流れた際にコイルに発生する電磁力によって、回転軸を中心に回転する。
【0073】
回転シャフト2213cは、軸心が回転軸と一致するように配置され、手前側の端部が第2のホイール部材212bに固定されている。また、回転シャフト2213cは、ステータ2213aに取り付けられた第2のベアリング(第3のベアリング213f、第4のベアリング213g)を介して、ステータ2213aによって回転自在に支持されている。具体的には、回転シャフト2213cは、ステータ2213aの内周面の奥側に取り付けられた第3のベアリング213fと、ステータ2213aの内周面の手前側に取り付けられた第4のベアリング213gとを介して、ステータ2213aによって回転自在に支持されている。これにより、回転シャフト2213cは、ロータ2213bの回転に応じて、回転軸を中心に回転し、ロータ2213bの回転によって発生した回転力が、歯車機構を介さずに、ホイール212に直接伝達されることになる。
【0074】
保持部材2213eは、ホイール212の内側に配置され、ステータ2213aを保持している。具体的には、保持部材2213eは、ステータ2213aの奥側に配置されており、手前側の端部がステータ2213aのステータ基部2213a−1に一体的に固定されている。
【0075】
そして、保持部材2213eは、当該保持部材2213eの奥側の端部に取り付けられた第1のベアリング217を介して、ホイール212(第1のホイール部材212a)の奥側の端部を回転自在に支持している。また、保持部材2213eは、ステータ2213aを保持することで、ステータ2213aに取り付けられた第3のベアリング213f及び第4のベアリング213gを介して、回転シャフト2213cを回転自在に支持している。これにより、保持部材2213eは、回転シャフト2213cに固定されたホイール212(第2のホイール部材212b)の手前側の端部を回転自在に支持している。
【0076】
ここで、本実施形態では、第1のベアリング217は、ステータ2213aに取り付けられた第3のベアリング213f及び第4のベアリング213gと比べて大きい径を有する。また、第1のベアリング217は、シールベアリングであり、ホイール212の開口部に取り付けられている。前述したように、ホイール212は、回転軸の軸方向における一方の側に開口部を有し、他方の側に底部を有する有底円筒状に形成されており、開口部を除いた部分が密閉された状態となっている。そのため、ホイール212の開口部にシールベアリングである第1のベアリング217を取り付けることによって、ホイール212の内側の空間を密閉することができる。
【0077】
また、保持部材2213eには、回転軸が通る位置に貫通孔が形成されており、回転シャフト2213cにおける奥側の端部が、保持部材2213eの貫通孔を通って、支持部材220を介してブレーキ部230に達する位置まで延出している。また、回転シャフト2213cにおける手前側の端部が、第2のホイール部材212bに達する位置まで延出して、第2のホイール部材212bに固定されている。これにより、前述したように、ロータ2213bの回転によって発生した回転力が、回転シャフト2213cを介してホイール212に直接伝達されることになる。この結果、ロータ2213bの回転に応じて、回転軸を中心にホイール212が回転することになる。
【0078】
そして、このような構成のもと、本実施形態では、上述したように保持部材2213eは、ステータ2213aのステータ基部2213a−1に一体的に固定されている。これにより、保持部材2213eは、ステータ2213a、ロータ2213b、回転シャフト2213c等の回転運動に係る要部を支持することになる。また、保持部材2213eは、奥側に、回転軸に沿って延出する固定部213hを有しており、当該固定部213hが支持部材220に固定されて支持されている。このように、ステータ2213aを保持する保持部材2213eを固定部213hによって支持部材220に固定することによって、本実施形態に係る車輪モジュール2200のような片持ち軸構造でも剛性を確保することができるようになる。また、両持ち軸構造に対して、片持ち軸構造とした場合には、例えば図9に示すように、車輪モジュール2200の回転軸方向における片側のみでブラケット222を構成することが可能となる。このようにすることで、例えば、台車100等のように荷台を有する装置に車輪モジュール2200を用いる場合に、荷台の内側に全ての車輪モジュールが収まるように各車輪モジュールを配置することも可能である。
【0079】
具体的には、固定部213hは、円筒状に形成されており、保持部材2213eにおける第1のベアリング217が取り付けられた奥側の端部から、回転軸に沿って奥側に延出するように設けられている。ここで、固定部213hは、保持部材2213eと一体形成されている。そして、固定部213hは、支持部材220のブラケット222における下側の端部に形成された貫通孔223に挿嵌されて、固定されている。そして、このように固定部213hがブラケット222の貫通孔223に嵌合した状態で、ブラケット222が、ボルト224によって、保持部材2213eの奥側の端部に固定されている。これにより、保持部材2213e及び固定部213hが、支持部材220に固定されて支持されることになる。
【0080】
このような構成では、保持部材2213eが、第1のベアリング217が配置された奥側の端部で支持されることになるため、例えば、台車100が段差を乗り越える際や、石畳や砂利道等の凹凸のある面を走行する場合に、第2のベアリング218と比べて、第1のベアリング217により大きな負荷がかかることになる。そこで、本実施形態では、第1のベアリング217は、第3のベアリング213f及び第4のベアリング213gと比べて大きい径を有するものとしている。これにより、片持ち軸構造における支点部分の剛性を高めることが可能になる。加えて、このように支持部材220に近い第1のベアリング217を大径とすることで、第1のベアリング217の内径側から回転軸となる回転シャフト2213cをブレーキ部230まで延伸させることが可能となる。また、駆動部213やブレーキ部230、図示しない制御機構等を接続する各種ケーブルを引き出しやすくする効果も得られる。
【0081】
なお、固定部213hを含む保持部材2213eの材料としては、車輪モジュール2200に加えられる加重の大きさに応じて適切な材料が用いられる。また、固定部213hは、保持部材2213eの材料に応じて、固定部213hに要求される強度を実現することが可能な太さ及び長さに形成される。ここで、例えば、固定部213hを含む保持部材2213eは、アルミニウムを材料として、ダイキャストによって作製される。または、固定部213hを含む保持部材2213eは、より高い強度が要求される場合には、例えば、鉄やチタン等によって作製される。または、固定部213hを含む保持部材2213eは、炭素繊維カーボン樹脂によって作製した場合、軽量化に有利である。
【0082】
そして、固定部213hは、中心軸に沿って貫通孔を有するように形成されている。ここで、固定部213hが有する貫通孔は、保持部材2213eの貫通孔と連続するように形成されており、回転シャフト2213cにおける奥側の端部が、各貫通孔を通るように配置されている。これにより、回転シャフト2213cにおける奥側の端部は、保持部材2213eの貫通孔及び固定部213hの貫通孔を通って、支持部材220のブラケット222に形成された貫通孔223から奥側に延出するように配置される。そして、ブラケット222の貫通孔223から延出した回転シャフト2213cの奥側の端部は、ブレーキ部230の内側に挿入された状態で配置される。
【0083】
上述したように、第3の実施形態では、ステータ2213aを保持する保持部材2213eが、ステータ2213aのステータ基部2213a−1に一体的に固定されている。また、保持部材2213eは、回転軸の軸方向における一方の側に、回転軸に沿って延出する固定部213hを有しており、当該固定部213hが支持部材220に固定されて支持されている。このような構成によれば、ステータ2213aを保持する保持部材2213eが、固定部213hを介して支持部材220に固定される。これにより、片持ち軸構造でも剛性を確保することができる。
【0084】
また、第3の実施形態では、保持部材2213eは、回転軸の軸方向における一方の端部に取り付けられた第1のベアリング217、及び、ステータ2213aに取り付けられた第3のベアリング213f及び第4のベアリング213gを介して、ホイール212を回転自在に支持しており、第1のベアリング217は、第3のベアリング213f及び第4のベアリング213gと比べて大きい径を有する。これにより、片持ち軸構造における支点部分の剛性を高めることができる。
【0085】
また、第3の実施形態では、ホイール212が、回転軸の軸方向における一方の側に開口部を有し、他方の側に底部を有する有底円筒状に形成されており、第1のベアリング217は、シールベアリングであり、ホイール212の開口部に取り付けられて、ホイール212の内側の空間を密閉している。これにより、1つのシールベアリングでホイール212内の防水を実現することができ、回転ロスを低減することができる。
【0086】
さらに、第3の実施形態では、アウターロータ型のモータを用いることによって、インナーロータ型のモータを用いる場合と比べて、ロータ2213bの外径を大きくできるため、トルクを得やすい。また、第3の実施形態では、モータの回転力を歯車機構を介さずに直接ホイール212に伝達する、いわゆるダイレクトドライブの構成を備えるため、歯車機構を用いる場合と比べて、部品点数を少なくすることができ、組み立てが容易になる。また、第3の実施形態では、歯車機構を用いる場合と比べて、モータの回転速度が低くなり、また、減速機自体の騒音が無くなるため車輪モジュール2200の動作音が静穏になる。また、第3の実施形態では、第2のホイール部材212bがロータフレームを兼ねた構成となっているため、ホイール212とロータフレームとを1つの部品で実現することができ、部品点数をさらに少なくすることができる。
【0087】
なお、上述した実施形態では、車輪モジュール200、1200及び2200が台車100の車輪として用いられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、上述した実施形態で説明した車輪モジュール200、1200及び2200は、ベビーカーや車椅子、スクータ、ショッピングカート、ゴルフカート等の乗用又は運搬用の移動装置の車輪として用いることも可能である。また、例えば、車輪で移動する方式の各種のロボットで用いることも可能である。ここでいう各種のロボットは、例えば、屋内を清掃する清掃用のロボットや、ホテルや催し会場等で利用者を案内するロボット、病院等で患者の移動やカルテの運搬等を支援するロボット等、自立型あるいは操作型のロボット等である。
【0088】
また、上述した実施形態では、4輪の台車に車輪モジュール(200、1200、2200)が適用される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、上述した実施形態で説明した車輪モジュールは、6輪やそれよりも多い数の車輪を有する台車にも同様に適用することが可能である。なお、例えば、6輪の台車に適用される場合には、車輪モジュールは、前輪と後輪の間に設けられる中央部の2つの車輪として用いられるのが好ましい。
【0089】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
100 台車
200 車輪モジュール
210 車輪部
211 タイヤ
212 ホイール
213 駆動部
213a ステータ
213b ロータ
213c 回転シャフト
213e 筐体
217 第1のベアリング
218 第2のベアリング
220 支持部材
230 ブレーキ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9