特許第6918561号(P6918561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 美和ロック株式会社の特許一覧

特許6918561建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵
<>
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000002
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000003
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000004
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000005
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000006
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000007
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000008
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000009
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000010
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000011
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000012
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000013
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000014
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000015
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000016
  • 特許6918561-建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918561
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵
(51)【国際特許分類】
   E05B 19/08 20060101AFI20210729BHJP
   E05B 29/06 20060101ALN20210729BHJP
【FI】
   E05B19/08
   !E05B29/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-85871(P2017-85871)
(22)【出願日】2017年4月25日
(65)【公開番号】特開2018-184738(P2018-184738A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2020年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】河合 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 英樹
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−144398(JP,A)
【文献】 特開昭53−98638(JP,A)
【文献】 特開2014−152593(JP,A)
【文献】 特開2000−96889(JP,A)
【文献】 特開昭62−194374(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0041575(US,A1)
【文献】 中国実用新案第201354541(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 19/02
E05B 19/06−19/08
E05B 29/02−29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒体と、この外筒体に回動自在に嵌合する内筒体と、この内筒体に中心軸線方向に組み込まれていると共に、タンブラーバネのバネ力に抗して半径方向にスライド自在であり、かつ合鍵のブレードに形成され大小のタンブラー用誘導刻みに対応して係合する被誘導部分を有する複数枚の可動障害子を備え、前記ブレードを前記内筒の鍵穴に完全挿入すると、前記複数枚の可動障害子がそれぞれ位置変位し、該内筒を回転することができる建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵であって
前記タンブラー用誘導刻みは、前記ブレードの平面部の一側上面にブレード幅方向に形成された楔状窪みの第1刻みと、この第1刻みのほぼ裏側位置に相当する前記ブレードの平面部の一側下面に形成された楔状窪みの第2刻みとを有し、しかも、前記第1刻みと第2刻みの中心部を通るブレード幅方向の切断端面の断面形状は、傾斜状稜線部が存在する略山形形状である建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵
【請求項2】
請求項1の建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵に於いて、タンブラー用誘導刻みの第2刻みの斜辺の長さは、第1刻みの斜辺の長さとは異なることを特徴とする建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵
【請求項3】
請求項1の建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵に於いて、タンブラー用誘導刻みの第2刻みの斜辺の長さは、第1刻みの斜辺の長さと略同じであることを特徴とする建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵
【請求項4】
請求項1の建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵に於いて、タンブラー用誘導刻みは、第2刻みの斜辺の長さが第1刻みの斜辺の長さとは異なるものと、第2刻みの斜辺の長さが第1刻みの斜辺の長さと略同じものの二種類が、ブレードの側面部の縁部に間隔を有して存在することを特徴とする建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵のいずれかに於いて、タンブラー用誘導刻みは、一方の側面部の縁部に形成された一群のものと、他方の側面部の縁部に形成された一群のものとがあり、かつ、前記一群の隣同士のタンブラー用誘導刻みの断面形状の頂点の位置が異なるものが含まれ、しかも、鍵は180度回転させて使用することができるリバーシブルであることを特徴とする建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、「錠本体と鍵本体(キープレート)との組み合わせから成る錠装置(キー装置)」が記載されている。その中で、第3図に記載の鍵本体(キープレート)は、その両側部の上下の縁部にそれぞれ形成された一群の刻み同士の間隔(ピッチ)を不均等にすることにより、「鍵違いの増大化」を図るものである。
【0003】
しかしながら、特許文献1の一群の刻みは、それぞれ鍵本体(キープレート)の側部の端面から鍵幅方向に切欠されているので、刻みを構成する谷の底面、すなわち、幅広の平坦面と直交する谷の底面は、紙面に向かって直線状(垂直面)である。それ故に、より多くの「鍵違いの増大化」を図ることができない、リバーシブルキーの場合には力学的に変形し易い、谷の底面にゴミが付着する等の解決すべき問題点があった。
【0004】
なお、特許文献2の図8乃至図10には、ワーク台上に鍵材をセットし、円板状の回転刃を鍵材の側面部に押し付けながらタンブラー用誘導刻み(リバーシブルキー)を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−203166号公報
【特許文献2】特開平9−144398号公報の図8乃至図10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主たる課題は、特許文献1の問題点に鑑み、「鍵違いの増大化」、「ブレードの剛性的機能の維持」及び「ブレードの刻み部分に対するゴミの非付着性」の各課題を全て達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵は、外筒体と、この外筒体に回動自在に嵌合する内筒体と、この内筒体に中心軸線方向に組み込まれていると共に、タンブラーバネのバネ力に抗して半径方向にスライド自在であり、かつ合鍵のブレードに形成され大小のタンブラー用誘導刻みに対応して係合する被誘導部分を有する複数枚の可動障害子を備え、前記ブレードを前記内筒の鍵穴に完全挿入すると、前記複数枚の可動障害子がそれぞれ位置変位し、該内筒を回転することができる建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵であって、前記タンブラー用誘導刻みは、前記ブレードの平面部の一側上面にブレード幅方向に形成された楔状窪みの第1刻みと、この第1刻みのほぼ裏側位置に相当する前記ブレードの平面部の一側下面に形成された楔状窪みの第2刻みとを有し、しかも、前記第1刻みと第2刻みの中心部を通るブレード幅方向の切断端面の断面形状は、傾斜状稜線部が存在する略山形形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
(a)請求項1に記載の発明は、タンブラー用誘導刻みの鍵幅方向の切断端面の断面形状は、ほぼ山形形状なので、その傾斜状稜線部が錠前の可動障害子の被誘導部分と摺接する。したがって、例えば鍵の挿入時及び引き抜き時に可動障害子との摩擦抵抗を少なくすることができるので、鍵の操作性が良い。また前記誘導刻みの鍵幅方向の切断端面の断面形状はほぼ山形形状なので、その傾斜状稜線部にはゴミが付着しないと共に、傾斜状稜線部(実体部分)が存在するから、誘導刻みの底を一側上面から反対側の一側下面に直線状に切欠した非山形状の誘導刻みに比してより強靭であるという効果がある。また、実施形態によっては、鍵違いが多くなるという効果がある。
(b)請求項2に記載の発明は、タンブラー用誘導刻みの第2刻みの斜辺の長さは、第1刻みの斜辺の長さとは異なるので、鍵違いが多くなるという効果がある。
(c)請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明と同一の効果がある。
(d)請求項4に記載の発明は、タンブラー用誘導刻みは、第2刻みの斜辺の長さが第1刻みの斜辺の長さとは異なるものと、第2刻みの斜辺の長さが第1刻みの斜辺の長さと略同じものの二種類が、ブレードの側面部の縁部に間隔を有して存在するので、より一層鍵違いが多くなる。付言すると、鍵違いの増大化を図ることができる。
(e)請求項5に記載の発明は、一方の側面部の縁部に形成された一群のものと、他方の側面部の縁部に形成された一群のものとがあり、かつ、前記一群の隣同士のタンブラー用誘導刻みの断面形状の頂点の位置が異なるものが含まれ、しかも、鍵は180度回転させて使用することができるリバーシブルであることを特徴とするので、内筒の鍵穴にブレードを差し込む際、その方向性が限定されない。特に、ディスクタンブラー錠の内筒に組み込まれた二分割の可動障害子の被誘導部分が、例えば「ハの字状」或いは「楔状」の格好で鍵のタンブラー用誘導刻みの楔状窪みの第1刻み及び第2刻みを待ち構えているディスクタンブラー錠用の鍵に適合する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1乃至図14は本発明の第1実施形態の鍵の構成を説明するための各説明図。図15及び図16は本発明の第2実施形態の鍵の構成を説明するための各説明図。
図1】鍵の使用態様の一例を示す外観斜視図。
図2図1で示したタンブラー錠Xの概略縦断面図。
図3】鍵Yの挿入方向Aに直交する面で切断した概略縦断面図。
図4】タンブラー錠の可動障害子を横にした状態の正面図。
図5】鍵の正面図。
図6】鍵の平面図。
図7図5の7−7線の箇所を参照にした特徴部分を示す説明図(タンブラー用誘導刻みの鍵幅方向の切断端面の断面形状)
図8図5の8−8線の箇所を参照にした特徴部分を示す説明図(タンブラー用誘導刻みの鍵幅方向の切断端面の断面形状)
図9】断面山形形状の構成の説明図。
図10】鍵をキー孔(内筒の鍵穴)に挿入した説明図。
図11図7の鍵の断面箇所の山形形状誘導部分と二分割の可動障害子の被誘導部分との摺接状態示す説明図。
図12図8の鍵の断面箇所の山形形状誘導部分と二分割の可動障害子の被誘導部分との摺接状態示す説明図。
図13】内筒体が相対回動する旨の説明図(図7の鍵の断面箇所を含む)。
図14】内筒体が相対回動する旨の説明図(図8の鍵の断面箇所を含む)。
図15】本発明の第2実施形態の鍵の正面図
図16】タンブラー用誘導刻みの断面形状及び表側の斜辺の長さと裏側の斜辺の長さが同一である旨を示す説明図 (15の16−16線の切断端面の断面形状)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、錠本体と鍵本体との結合からなる錠装置ではなく、「鍵自体」に特徴がある「鍵」の発明である。したがって、鍵自体の構成を詳しく説明する。なお、錠前の構成に関しては、本発明の「鍵」に最も適合する一実施形態について説明するものの、本発明の「鍵」は、好ましくは建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵であり、具体的には「外筒体と、この外筒体に回動自在に嵌合する内筒体と、この内筒体に組み込まれていると共に、タンブラーバネのバネ力に抗して半径方向にスライド自在であり、かつブレードに形成され大小のタンブラー用誘導刻みに対応して係合する被誘導部分を有する二分割の複数枚の可動障害子を備え、前記ブレードを前記内筒の鍵穴に完全挿入すると、前記二分割の複数枚の可動障害子がそれぞれ位置変位し、該内筒を回転することができる建具用ディスクタンブラー錠」に適用されるものである。
【0011】
さて、本発明の「鍵」は、「鍵違いの増大化」、「ブレードの剛性的機能の維持」及び「ブレードの刻み部分に対するゴミの非付着性」の各課題を全て達成するものである。そして、前記各課題を達成するために、ブレードの軸方向(挿入方向)に形成した複数(例えば6個乃至10個)の各コード(実施形態では切欠状のタンブラー用誘導刻み)の断面形状、隣同士のコードの間隔、各コードの鍵幅方向における断面山形形状の頂点の位置(側端面からの切込みの深さ)、各コードの鍵幅方向における切断端面の断面山形形状の左右の斜辺の長さ等に工夫を凝らしている。
【0012】
そこで、本発明の「鍵」の典型的な実施形態は、図5乃至図9に示している。これらの図に於いて、図5は鍵の正面図で、一方、図9はその要部(ブレード)を示す。図9は鍵YのブレードBの軸方向(挿入方向)に形成した複数(例えば6個)の各コードの隣同士のコードの間隔、各コードの鍵幅方向における断面山形形状の頂点の位置(側端面からの切込みの深さ)、各コードの鍵幅方向における切断端面の断面山形形状の斜辺の長さがそれぞれ異なる旨の概略説明図であり、さらに、図6乃至図8と共に、鍵Yは、180度回転させて使用することができるリバーシブルであることを示している。
【0013】
ここで、まず図9を参照にして説明する。この図に於いて、ブレードBの幅広の平面部71に直交する両側面部72の一方の縁部(図面上方)には、大きさがそれぞれ異なる切欠状のタンブラー用誘導刻み73が合計6個、鍵の挿入方向にそれぞれ異なる間隔P1乃至P5で、一群のコードとして形成されている。一方、両側面部72の他方の縁部(図面下方)にも、大きさがそれぞれ異なる切欠状のタンブラー用誘導刻みが合計6個、鍵の挿入方向にそれぞれ異なる間隔P1乃至P5で、他の一群のコードとして形成されている。
図9は鍵の正面図の一部拡大図なので、ここでは説明の便宜上、タンブラー用誘導刻み73a、73bの斜辺の長さに関係なく、正面図で見える上方の一群のコード(上方縁部の誘導刻み)に符号73bを付し、これに対して、正面図で見える下方の一群のコード(下方縁部の誘導刻み)に符号73aを付して両方を区別する。なぜならば、この実施形態のタンブラー用誘導刻み73a、73bの断面形状における一方の斜辺の長さと他方の長さが異なるものを含んでいるからである(図7図8を参照)。
【0014】
次に、図6図5の正面図に対する平面図、図7はタンブラー用誘導刻みの切断端面の断面形状及び表側の斜辺の長さと裏側の斜辺の長さが相違する旨(特徴部分)を示す説明図(図5の7−7線の箇所)、図8図7と同様にタンブラー用誘導刻みの切断端面の断面形状及び表側の斜辺の長さと裏側の斜辺の長さが相違する旨(特徴部分)を示す説明図(図5の8−8線の箇所)である。これらの図は、本発明の鍵Yの一つの特徴事項を示している。
【0015】
これらの図から明らかなように、本発明の建具用ディスクタンブラー錠に適合する鍵Yは、ブレードBの側面部72に切欠状のタンブラー用誘導刻みが形成されており、前記切欠状のタンブラー用誘導刻み73は、前記ブレードBの平面部71の一側上面71aにブレード幅方向(鍵幅方向)に形成された楔状窪みの第1刻み73aと、この第1刻みのほぼ裏側位置に相当する前記ブレードの平面部71の一側下面71bに形成された楔状窪みの第2刻み73bであり、しかも、前記第1刻み73aと第2刻み73bの中心部を通るブレード幅方向の縁部の切断端面の断面形状は、傾斜状稜線部(実体部分)が存在する略山形形状(或いは屋根形状)である。
【0016】
第1実施形態の鍵Yでは、例えば図7及び図8で示すように、鍵幅方向の断面箇所によって、略山形形状(或いは屋根形状)の両斜辺の長さが相違する。例えば図7では、短い方の傾斜面73bの長さに対して、その反対側の長い方の傾斜面73aは、略2倍の長さである。また図8では、短い方の傾斜面73bの長さに対して、その反対側の長い方の傾斜面73aは略5倍である。これらの各図は、前記第1刻み73aと第2刻み73bの中心部を通るブレード幅方向の縁部の切断端面の断面形状は、傾斜状稜線部(実体部分)が存在する略山形形状であるものの、その断面箇所によって、略山形形状の両斜辺の長さが相違する旨を示し、実施形態では合計6の異なる山形断面形状となり、各山形断面形状の頂点或いは斜辺の長さがそれぞれ異なるように構成することにより、「鍵違いの増大化」を図っている。
【0017】
付言すると、タンブラー用誘導刻み73の第2刻み73bの斜辺の長さは、第1刻み73aの斜辺の長さよりも短い(異なる刻みである)もの同士の組み合わせである。
しかしながら、本発明の第2実施形態の鍵Y1は、図15及び図16で示すように、タンブラー用誘導刻み73の第2刻み73bの斜辺の長さは、第1刻73aみの斜辺の長さと略同じ(同等の刻みである)ものも含まれるので、好ましい実施形態としては、タンブラー用誘導刻み73は、第2刻み73bの斜辺の長さが第1刻み73aの斜辺の長さよりも短いもの(異なる刻み)と、第2刻み73bの斜辺の長さが第1刻み73aの斜辺の長さと略同じもの(同等の刻み)の二種類が、ブレードの側面部の縁部に不均等の間隔を有して、又は所定の間隔(均等間隔)を有して存在する。そして、最適な実施形態のタンブラー用誘導刻み73は、一方の側面部の縁部に形成された一群のものと、他方の側面部の縁部に形成された一群のものとがあり、かつ、前記一群の隣同士のタンブラー用誘導刻みの断面形状の頂点Pの位置が異なるものが含まれ、しかも、鍵Y1(Y)は180度回転させて使用することができるリバーシブルである。
【0018】
次に図1乃至図4は、本発明の「鍵(Y、Y1)」の適用に相応しい錠前、特に、ディスクタンブラー錠X(以下、ここでは「タンブラー錠」という。)を示す各説明図である。図1は本発明のタンブラー錠Xを扉1の壁部1aに取り付け、それと共に合鍵Yを示した外観斜視図である。まずこの図1に於いて、Xはタンブラー錠で、このタンブラー錠Xは合鍵Yの操作力により、複数の部材を組み合わせて形成された内筒体3が長筒状の外筒体2に対して相対回動する。
【0019】
実施形態では、扉1(例えば、住宅の扉)の壁部1aにタンブラー錠Xが水平状態に固着され、前記内筒体3を構成する錠先端部4に化粧カバー5が外嵌合している。
【0020】
図1で示すように、キー孔(鍵穴)6を有する錠先端部4及び化粧カバー5は、壁部1aの外壁面から突出している。また内筒体3を構成する錠後端部7は、外筒体2あるいは内筒体3の軸線0上に位置するテールピース(出力片)8を有している。なお、符号Aは合鍵Yの挿入方向である。
【0021】
次に、図2図1で示したタンブラー錠Xの中心軸線0を含む面で切断した概略縦断面図である。一方、図3は合鍵Yの挿入方向Aに直交する面で切断した概略縦断面図である。図2及び図3を参照してタンブラー錠Xの基本的な構成部材を説明する。
【0022】
まず、本発明の建具用ディスクタンブラー錠Xは、内筒体の中心軸方向に所定間隔を有して二列状態に配設された二分割の左右或いは上下の可動障害子Zを有する点、また本発明の建具用ディスクタンブラー錠の鍵Yは、前記二分割の可動障害子Zのブレート用嵌挿孔を形成する各対向面に設けた傾斜状の各被誘導部分に対応する鍵幅方向の切断端面の断面が、ほぼ山形のタンブラー用誘導刻みである点に特徴がある。
【0023】
前述したように、2は長筒状の外筒体で、この外筒体の内周面2aには、該外筒体2の母線に沿ってロックカム溝11が形成されている(図2参照)。一対のロックカム溝11は外筒体の母線に沿って、かつ外筒体2或いは内筒体3の中心軸線0を基準にして上下或いは左右の中心部に対称に形成されている。
【0024】
図3で示すように、左右のロッキングバー12は、外筒体2の各ロックカム溝11に対して係脱する外側の尖頭部12aと、この尖頭部に連設形成された内側の係合板部分12bとから成り、内筒体3の外周端部に形成された該内筒体の長手方向の解錠切欠13に適宜に組み込まれている。そして、図2で示すように、例えば内筒体3の錠先端部4側(後方)に配設された前側の付勢バネ14と、錠後端部7側(前方)に配設された後側の付勢バネ14により、各ロッキングバー12は内筒体3の半径外方向にそれぞれ常時付勢されている。したがって、各ロッキングバー12は、常態では、それぞれ複数の付勢バネ14、14により、各外側の尖頭部12aが外筒体2の各ロックカム溝11、11に係合している。
【0025】
次に内筒体3は、中心部にキー孔6を有する錠先端部4と、出力突起片としてのテールピース8を中心部に有する錠後端部7と、この錠後端部7と前記錠先端部4との間に設けられ、かつ該軸線方向と直交する複数の仕切板(或いは仕切り部)16によって区画形成される複数のタンブラー収容部27並びに複数のタンブラーバネ用収容部28、不番の仕切板用スロット、可動障害子用の一対の板状案内部10,10、軸線方向の解錠切欠13等を有すると共に、断面弧状の上下或いは左右の分割体を複数の仕切板等を介して長筒状に形成された内筒本体15と、この内筒本体に中心軸線方向に沿って列状に併設されていると共に、該軸線方向と直交し、かつ前記タンブラー収容部27及びタンブラーバネ収容部28を形成する複数の円形或いはトラック形状の仕切板16と、前記内筒本体15の一端開口27aから差し込まれた前記仕切板16の連結孔18を貫通して前記錠先端部4及び錠後端部7に架設された一対の所定長の連結棒19とから成る。内筒体3の具体的構成は、本発明の特定要件ではないので、割愛する。
【0026】
なお、図2に於いて、符号26は環状の防御プレートで、この防御プレート26は適宜に焼き入れされていると共に、その中心部にキー孔6と一致する不番の中心孔、その中心部寄りの部位に前述したガイド棒用の不番の挿通孔等が適宜に形成されている。
【0027】
ここで初期位置を示す図3を説明する。この図3を基準にすると、内筒本体15は、ハッチングで示した左右の段差状実体部分15a、15aを除き、上方外周の開口側の一端部が幅広く、一方、下方外周の開口或いは非開口の他端部が幅狭であり、内筒体3(内筒本体15)の中心軸線Oを通る垂直線V上に位置する可動障害子用の上下の板状案内部10,10を基準にすると、左右一対のタンブラー収容部27、27を有している。
これらのタンブラー収容部27には、その一端開口27aから左右一対の可動障害子Zが適宜に組み込まれる。図2で示すように、7枚(分割の可動障害子Zは、全部で14枚)の可動障害子Zは、複数のトラック形状或いは円形の仕切板16を介して中心軸線O方向に列状に配設されている。
【0028】
しかして、13は内筒本体15の上下部或いは左右部に対称的に形成された一対の解錠切欠で、これらの解錠切欠13は前述した上下或いは左右の実体部分15a、15aの中央部に半径内方向に向かって形成され、一対のロッキングバー12の尖端部12aをそれぞれ嵌合案内する。28はタンブラー収容部27内の適宜箇所(図3では、左右の実体部分15a、15aの段差状下端部分)に形成されたバネ端支持面を有する左右一対のタンブラーバネ収容部で、これらのタンブラーバネ収容部28は、左右の段差状実体部分15a、15aの内側に対向して垂直方向或いは水平方向に一対設けられている。
【0029】
次に図2参照にして錠後端部7側の構成を説明する。前述したように、錠後端部7はテールピース8を有するが、該テールピース8は、外筒体2の後端部に設けられたワッシヤーリング31a、ストッパーリング31b等の止め具31を介して外筒体2の後端部内に回動自在に嵌合するテールプラグ32の中心部に取付けられている。
【0030】
錠後端部7を構成するテールプラグ32は、錠先端部4と同様に連結棒19の後端部を支持する後支持孔33を一対有している。連結棒19は、内筒本体15に組み込まれた後述の可動障害子Z及び仕切板16を貫通した状態で、その先端部は前支持孔25に、一方、後端部は後支持孔33に支持されている。
【0031】
次に図4を参照にして、二分割の可動障害子Zの構成を説明する。なお、図面上方の他方の可動障害子Zの構成は、図面下方の一方のそれと同一なので、同一の符号を付して重複する説明を割愛する。図4は可動障害子Zの横にした状態の正面図(又は背面図)である。
【0032】
この図4を基準にすると、右側の大きな弧状に形成された右端部(ここでは「一端部41a」とする)は、外筒体2の内周面2aの曲率に対応して形成されているので、タンブラーバネ42に付勢されている状態(施錠状態)では、例えば外筒体2の内周面2aに圧接する。左側の小さな弧状端面を有する突起状の左端部(ここでは「突起状他端部41b」とする)は、タンブラーバネ収容部27と下方の板状案内部10の間の収納部30内に位置する。この突起状他端部41bの内端部側(図面上は上端部)41cに傾斜状の他方の被誘導部分bが形成されている。この図4では現れないが、前記他方の被誘導部分bの裏側(背面)に、傾斜状の一方の被誘導部分aが形成されている。そして、前記内端部側(図面上は上端部)41cに対する外端部(図面上は下端部)41dに単数又は複数のロッキングバー12の係合板部分12b用の受け入れ凹所48が形成されている。また左端部の横倒れ状凹所は、タンブラーバネ42用の端部を支持するバネ支持端部49である。さらに、46は連結棒19用貫通孔で、この連結棒19用貫通孔46は、可動障害子Zがタンブラーバネ42のバネ力に抗して図面上左側にスライドすることから、長孔矩形状に形成されている。
【0033】
次に、図5乃至図9に戻って本発明の合鍵Yの構成について補足説明をする。これらの図に於いて、Yは合鍵、Bはブレード(差し込み部分)、71は平面部、71aは平面部の一側上面、71bは平面部の一側下面、72は側面部、72aは一方の側面、72bは他方の側面である。
【0034】
この実施形態の合鍵としての鍵Yは、内周面に母線に沿ってロックカム溝11を有する外筒体2と、この外筒体に回動自在に嵌合すると共に、中心軸線Oに沿って形成されたキー孔6及び半径方向の解錠切欠13を有する内筒体3と、この内筒体の母線に沿って延在し、前記ロックカム溝11と係合する方向に付勢されたロッキングバー12と、前記内筒体3の各仕切り部16の間にそれぞれ位置すると共に、タンブラーバネ42のバネ力に抗して半径方向にスライド自在であり、かつ合鍵YのブレードBに形成され大小のタンブラー用誘導刻み73に対応して係合する被誘導部分を有する複数枚の可動障害子Zを備えたシリンダー錠用の鍵であって、前記可動障害子Zは、対向状態に二分割され、その内端部側の各対向面の一部に傾斜状に形成された前記被誘導部分(a、b)を有し、一方、前記合鍵のYの前記タンブラー用誘導刻み73は、前記ブレードBの平面部71の一側上面71aに側面部72からブレード幅方向(鍵幅方向)に形成された楔状窪みの第1刻み73aと、この第1刻み73aのほぼ裏側位置に相当する前記平面部71の一側下面71bに形成された楔状窪みの第2刻み73bであり、前記合鍵YのブレードBを前記キー孔6に挿入すると、前記二分割の可動障害子Zは、それぞれ前記タンブラーバネ42のバネ力に抗して、かつ一対の連結棒19にそれぞれ同じ方向に案内されると共に、該可動障害子Zの被誘導部分a、bが前記合鍵のタンブラー用誘導刻み73に係合し、これにより二分割された可動障害子Zの外端部側の各解錠用受け入れ凹所48が、前記ロッキングバー12の内端部側の係合板部分12bと一致し、以て、合鍵Yと共に内筒体3を解錠方向へ回動させた時、前記ロックカム溝11と前記ロッキングバー12との間に生じる楔作用により、内筒体3が外筒体2に対して相対回動する(図13図14参照)。
【0035】
図7は、図5の7−7線の箇所のタンブラー用誘導刻み73の切断端面の断面形状、及び表側の斜辺の長さと裏側の斜辺の長さが相違する旨(特徴部分)を示す説明図である。実施形態のタンブラー用誘導刻み73は、例えば図5で示すように、ブレード(差し込み部分)Bの側面部72である両側面72a、72bにそれぞれブレードの差し込み方向に深さが異なる大小の誘導刻み73がそれぞれ形成されているが、図5の状態で合鍵Yをひっくり返した場合、前記側面部72である両側面72a、72bにもそれぞれブレードBの差し込み方向に深さが異なる大小の誘導刻み73がそれぞれ形成されている。
【0036】
したがって、図7で示すようにタンブラー用誘導刻み73の断面形状はほぼ山形状であり、上下の山形状誘導刻み73の各稜線部(刃先に見える部分)P、Pは、内筒体2の中心軸線Oを通る垂直線Vから回転対称の状態で外れている。したがって、タンブラー用誘導刻み73の第2刻み73bの斜辺の長さL2は、第1刻み73aの斜辺の長さL1よりも短い。
【0037】
ところで、深さが異なる大小の誘導刻み73は、可動障害子Zの配列位置に対応してブレードBの挿入方向に表と裏にそれぞれ合計5乃至7程度形成されているが、もちろん、大小のタンブラー用誘導刻み73の数は可動障害子Zのそれに対応するのが望ましい。なお、合鍵のYのブレードBの平面視上の中央部部分に回転対称にブレードの挿入方向に沿って直線状に長溝74が形成されている。
【0038】
なお、本発明の鍵Y、Y1が適用することができる錠前は、タンブラーが直線移動するタイプのもの、例えば特開昭62−194374公報、実公平6−28616号公報、特開2000−96889号公報等のみならず、例えば実開昭55−128848号公報、特開平9−144398号公報等に記載されている振り子式の原理を用いたもの(レバー式タンブラー錠)にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、錠前や建具の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
X…タンブラー錠、
Z…二分割の可動障害子、
a、b…被誘導部、
Y、Y1…合鍵、
B…ブレード、
P1〜P5…間隔(ピッチ)、
P…切断端面の断面形状の頂点の位置、
71…平面部、
72…側面部、
73…タンブラー用誘導刻み、
73a…第1刻み、
L1…第1刻みの斜辺の長さ、
73b…第2刻み、
L2…第2刻みの斜辺の長さ、
74…直線状長溝、
1…扉、
2…外筒体、
3…内筒体、
11…ロックカム溝、
12…ロッキングバー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16