(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918574
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】スプレー用組成物及びそれを用いたスプレー製剤
(51)【国際特許分類】
A61L 9/14 20060101AFI20210729BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20210729BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20210729BHJP
A61K 8/26 20060101ALI20210729BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20210729BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20210729BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20210729BHJP
C09D 101/02 20060101ALI20210729BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20210729BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20210729BHJP
A01M 99/00 20060101ALI20210729BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
A61L9/14
A61K8/73
A61K8/25
A61K8/26
A61K8/81
A61Q13/00
A61K8/02
C09D101/02
C09D7/61
C09D7/65
A01M99/00
A61L2/18
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-102276(P2017-102276)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-196550(P2018-196550A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴史
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−025130(JP,A)
【文献】
特開2016−065116(JP,A)
【文献】
特開2016−210129(JP,A)
【文献】
特表2007−531791(JP,A)
【文献】
特開2002−095522(JP,A)
【文献】
特開2012−197544(JP,A)
【文献】
特開2016−017161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00−12/14
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
C09D 1/00−10/00、
101/00−201/10
A01M 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)〜(D):
(A)最大繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバー
(B)ゼオライト、シリカ、珪藻土、タルク、アクリル系架橋物及びアクリル-スチレン系架橋物よりなる群から選ばれる1種または2種以上の粉体
(C)機能性物質
(D)溶媒
を含有し、
成分(A)の含有量が2質量%〜5質量%、成分(B)の含有量が1質量%〜10質量%及び成分(C)の含有量が0.5質量%〜15質量%であることを特徴とするスプレー用組成物。
【請求項2】
成分(C)機能性物質が、防虫成分、殺虫成分、抗菌成分、消臭成分、脱臭成分、香料、保湿成分からなる群から選ばれる1種または2種以上である請求項1項に記載のスプレー用組成物。
【請求項3】
成分(D)が、極性溶媒である請求項1項又は2項に記載のスプレー用組成物。
【請求項4】
請求項1項〜3項の何れかに記載のスプレー用組成物を噴霧装置に収容することを特徴とするスプレー製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト状に噴射でき、塗布面でゲル状となるスプレー用組成物およびそれを用いたスプレー製剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香剤、消臭剤、脱臭剤、防虫剤等にはゲル状の薬剤が用いられている。これらはあらかじめ容器内にゲル状の消臭剤等を充填して密封し、使用時に開封することにより数か月の長時間にわたって効果が発揮される。一方で、芳香剤、消臭剤などのスプレー製品も提案されており、これらのスプレー製品は、液状の組成物をスプレー装置に充填することにより製品化されている。スプレー製品として望まれる特性としては、通常のスプレー容器を使用して広い環境条件(温度や湿度等)でスプレー可能なこと、スプレーの液滴が使用する用途に応じて好適な大きさになること、噴霧ムラが生じないこと等が挙げられる。
【0003】
ところで、近年、スプレー可能なゲル状の組成物が数多く提案されている(特許文献1〜3)。例えば、特許文献1には、増粘剤として変成ポリアルキレンオキサイド、アクリル酸重合物部分ナトリウム塩化物、カルボキシビニルポリマー等を使用した特定の粘度を有する噴霧型消臭組成物が開示されている。しかし、この噴霧型消臭組成物は、噴霧後は高い粘性を有するものの、垂直面や傾斜面へ付着させた際の液垂れについては十分ではなかった。
【0004】
そして、垂直面や傾斜面での液垂れを解消するために、例えば、特許文献2には、平均重合度(DP)が100以下、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下、セルロースII型結晶成分の分率が0.4以下で、かつ、平均粒子径が2μm以下であるセルロース微粒子と、液状分散媒体とを含有する組成物であって、その組成物中のセルロース濃度が0.1〜5.0重量%であり、かつ、その組成物のコーン・プレート型回転粘度計を用いて測定する少なくとも1×10
−3S
−1〜1×10
2S
−1を含むずり速度領域で25℃で測定した粘度−ずり応力曲線における粘度の最大値(ηmax)が、ηmax≧1×10
3 mPa・sであることを特徴とするスプレー剤用組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、最大繊維径が1000nm以下で、数平均繊維径が2〜150nmのセルロース繊維であって、そのセルロースが、セルロースI型結晶構造を有するとともに、セルロース分子中のグルコースユニットのC6位の水酸基が選択的に酸化されてアルデヒド基およびカルボキシル基に変性され、上記カルボキシル基を0.6〜2.0mmol/gおよび上記アルデヒド基を0.05〜0.3mmol/g有する、セルロース繊維、水及び消臭剤、香料等の機能性添加剤を含有することを特徴とするスプレー状組成物について開示されている。
【0006】
しかし、上記特許文献2〜3に記載されたスプレー可能なゲル状組成物を用いて噴霧塗布した場合は、使用に伴うゲル状の塗膜の収縮程度が小さいため使用終点が視認し難く、また終点到達後は塗布面から除去する必要があるが、乾燥後は、塗膜が塗布面にこびり付いてしまい、剥がすのが困難であるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−104255号公報
【特許文献2】特開2003−73229号公報
【特許文献3】特開2010−37200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、通常はゲル状であるが、噴霧装置等を用いて噴霧することが可能であり、噴霧後は再びゲル状となってその形状が安定に保たれ、かつ、経時的な収縮が明瞭に認識でき、乾燥しても塗布面から剥がし易い塗膜を形成し得るスプレー用組成物およびそれを用いたスプレー製剤の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバーと特定の粉体とを組み合わせて得られたスプレー用組成物が、噴霧圧によって直ちに噴霧可能な粘度にまで低下し、噴霧後は再び安定なゲル状の塗膜を形成して垂直面や傾斜面でも液垂れを起こさず、さらに、形成された塗膜は経時的な収縮の程度が大きく、乾燥後も容易に剥がせることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
以下の成分(A)〜(D):
(A)最大繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバー
(B)ゼオライト、シリカ、珪藻土、タルク、アクリル系架橋物及びアクリル-スチレン系架橋物よりなる群から選ばれる1種または2種以上の粉体
(C)機能性物質
(D)溶媒
を含有することを特徴とするスプレー用組成物である。
【0011】
また、本発明は、上記スプレー用組成物を噴霧装置に収容することを特徴とするスプレー製剤である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスプレー用組成物は、ゲル状の組成物でありながらも、噴霧する際には、その噴霧圧により直ちに液化するため、良好に噴霧塗布することができ、噴霧ムラも生じにくいものである。また、本発明のスプレー用組成物は、噴霧後は、再度ゲル化するため定着性が良好であり、垂直面や傾斜面での液垂れが発生せず、さらに、形成された塗膜は、経時的な収縮が明瞭に認識可能で、乾燥後にも容易に剥がすことができるというものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明のスプレー用組成物を詳しく説明する。本発明のスプレー用組成物(以下、「本発明組成物」という)は、最大繊維径が100nm以下のセルロースナノファイバー、特定の粉体、機能性物質及び溶媒を含むものである。
【0014】
本発明組成物で使用されるセルロースナノファイバー(以下、「成分(A)のセルロースナノファイバー」という)は、その最大繊維径が100nm以下であり、好ましくは、最大繊維径が30nm以下である。セルロースファイバーの最大繊維径が100nmより大きいものを用いた場合には、セルロースファイバーが沈降するため均一なゲル状とはならない可能性がある。
【0015】
ここで、成分(A)のセルロースナノファイバーの最大繊維径は、具体的には以下の方法で測定される。すなわち、微細セルロースに水を加えて、その濃度が0.05質量%〜0.1質量%の分散体を調製し、その分散体を親水化処理済みのカーボン膜被覆グリッド上にキャストして、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察する。得られた画像内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し20本以上の繊維が交差するよう、試料および倍率等を調節する。画像を得た後、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為な軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目視で読み取っていく。このようにして、最低3枚の重複しない表面部分の画像を電子顕微鏡で撮影し、各々2つの軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取る。したがって、最低20本×2×3=120本の繊維径の情報が得られる。このようにして得られた繊維径のデータにより、最大繊維径を求める。
【0016】
また、上記成分(A)のセルロースナノファイバーの製造方法としては、例えば、セルロースを分散させた分散液に次亜ハロゲン酸等の共酸化剤を添加して酸化反応を行い、その後、精製及び微細化処理により得ることができるが、具体的には、特開2010−37200号公報に記載の方法により製造することができる。なお、成分(A)のセルロースナノファイバーとして、入手のしやすさから、例えば、市販品のレオクリスタ(第一工業製薬社製)を用いてもよい。
【0017】
さらに、成分(A)のセルロースナノファイバーの配合量としては、本発明組成物全体に対して、0.1質量%〜15質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましく、2質量%〜5質量%が特に好ましい。成分(A)のセルロースナノファイバーの配合量が15質量%より多いと粘度が高くなるため製造が困難になり、0.1質量%より少ないと流動性が大きくなり、斜面等にスプレー塗布するとゲルが滑り落ちてしまうことがある。
【0018】
本発明組成物は、ゼオライト、シリカ、珪藻土、タルク、アクリル系架橋物及びアクリル-スチレン系架橋物よりなる群から選ばれる1種または2種以上の粉体(以下、「成分(B)の粉体」という)を配合するものである。この成分(B)の粉体の中でも、経時的な収縮の視認性が良好で、乾燥後の塗膜の剥離性に優れ、かつ、消臭効果も有するという点で、ゼオライトが好ましい。
【0019】
上記成分(B)の粉体の平均粒子径は、特に限定されないが0.001〜100μmが好ましく、0.01〜50μmがより好ましい。また、上記アクリル系架橋物及びアクリル-スチレン系架橋物としては、平均粒子径が1〜20μmの真球状微粒子のものを使用するのが好ましい。なお平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布計により測定することができる。
【0020】
上記成分(B)の粉体の配合量としては、本発明組成物全体に対して0.1質量%〜25質量%が好ましく、1質量%〜15質量%がより好ましく、5質量%〜10質量%が更に好ましい。成分(B)の粉体の配合量が25質量%より多いとスプレー組成物の物理的特性が損なわれることがあり、1質量%より少ないと剥離性が困難な場合がある。他方、成分(B)の粉体の配合量が、上記1質量%〜25質量%の範囲であると、液垂れ防止や収縮視認性の点で好ましい。
【0021】
本発明組成物に用いられる機能性物質(以下、「成分(C)の機能性物質」という)としては、特に限定されないが、例えば、防虫成分、殺虫成分、抗菌成分、消臭成分、脱臭成分、香料、保湿成分等が挙げられる。これらは、本発明組成物の利用分野、要求性能に応じて、単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0022】
防虫成分及び、殺虫成分としては、エンペントリン、トランスフルスリン、アレスリン、フェノトリン、エミネンス、プロフルトリン等のピレスロイド系防虫・殺虫成分、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳、2−フェノキシエタノール等が例示でき、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
抗菌成分としては、特に他の必須成分に影響を与えにくい点で有機化合物系が望ましく、さらにpHの値からは中性から弱酸性のものが望ましい。具体的には、フェノール系化合物、ピリジン系化合物、チアゾリン系化合物、イミダゾール系化合物が好ましく、特に2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、パラクロメタキシレノール等が好ましく、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
消臭成分及び脱臭成分としては、植物抽出物、クエン酸、活性炭、備長炭、アルミノケイ酸亜鉛、シリカゲル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
香料としては、例えば、麝香、霊猫香、竜延香等の動物性香料、アビエス油、アクジョン油、アルモンド油、アンゲリカルート油、ページル油、ベルガモット油、パーチ油、ボアバローズ油、カヤブチ油、ガナンガ油、カプシカム油、キャラウェー油、カルダモン油、カシア油、セロリー油、シナモン油、シトロネラ油、コニャック油、コリアンダー油、クミン油、樟脳油、ジル油、エストゴラン油、ユーカリ油、フェンネル油、ガーリック油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、ホップ油、レモン油、レモングラス油、ナツメグ油、マンダリン油、ハッカ油、オレンジ油、セージ油、スターアニス油、テレピン油等の植物性香料を挙げることができる。この香料として、合成香料又は抽出香料等の人工香料を用いることもでき、例えば、ピネン、リモネン等の炭化水素系香料、リナロール、ゲラニオール、シトロネロール、メントール、ボルネオール、ベンジルアルコール、アニスアルコール、βフェネチルアルコール等のアルコール系香料、アネトール、オイゲノール等のフェノール系香料、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、シンナミックアルデヒド等のアルデヒド系香料、カルボン、メントン、樟脳、アセトフェノン、イオノン等のケトン系香料、γ―ブチルラクトン、クマリン、シネオール等のラクトン系香料、オクチルアセテート、ベンジルアセテート、シンナミルアセテート、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル等のエステル系香料等が挙げられる。さらに、上記香料の2種以上を混合した調合香料も使用することができる。
【0026】
上記成分(C)の機能性物質の配合量としては、本発明組成物全体の0.1質量%〜15質量%が好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましく、1質量%〜5質量%が更に好ましい。成分(C)の機能性物質の配合量が15質量%より多いとスプレー組成物の物理特性に影響を与えることがあり、0.1質量%より少ないと機能性物質自体の効果が発現しにくくなる場合がある。
【0027】
本発明組成物における溶媒(「以下、成分(D)の溶媒という」)としては、極性溶媒が好ましく、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキサイド等が挙げられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いることができる。なお、上記溶媒の中でも、揮発性の溶媒が好ましい。揮発性の溶媒とは、常温常圧下(25℃、1atm程度)において順次気化する溶媒をさし、具体的には25℃における蒸気圧が1×10
−7Pa以上の溶媒である。具体的には、水及びアルコール類が好ましく、アルコール類としては、エタノールが好ましい。
【0028】
本発明組成物は、上記成分(A)〜(D)を含むものであるが、本発明組成物の効果を損なわない範囲でこれら以外のその他の成分を含んでも良い。その他の成分としては、例えば、上記成分(C)の機能性物質等を溶解、分散させるための界面活性剤が挙げられ、具体的には、非イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
【0029】
また、上記界面活性剤以外のその他の成分として、増粘剤、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸・アルカリ等のpH調整成分、消泡剤、乳化剤等が挙げられる。
【0030】
本発明組成物は、上記成分(A)〜(C)及び必要に応じて上記その他の成分を、種々の分散機で成分(D)の溶媒中に分散することにより調製される。成分(A)のセルロースナノファイバーは、乳化安定剤としての働きもあるため、香料などの油性成分を配合するときには、あらかじめ成分(A)のセルロースナノファイバーの分散体と油性成分を、常法の乳化乃至は可溶化方法に従い調製することができる。その際に、上記した界面活性剤等を併用しても良い。
【0031】
斯くして得られる本発明組成物は、高いチクソトロピー性を有しているため、スプレー製剤とした際、スプレー噴霧時には低粘度化して良好な噴霧を実施できるが、噴霧後は液滴が被覆表面に定着するまでに粘度が回復するため、表面へ定着した後の液垂れが極めて起こり難い。また、本発明組成物は、高温においても粘度低下が起こらず温度安定性に優れており、水溶性高分子特有のべたつき感が無く、噴霧塗布後の展延性にも優れた性質を有している。さらに、本発明組成物は、成分(D)の溶媒の蒸発に伴い均一(相似形)に収縮するため、終点が明確に分かるものであり、収縮後は、塗布面から容易に剥がすことができ、塗布面に残渣が付着することを軽減することができる。特に、本発明組成物を垂直面や天井面に噴霧した場合は、収縮後に重力により自然に落下するため、塗布面に残渣が残らない。
【0032】
また、本発明組成物は、噴霧装置に収容することによりスプレー製剤とすることができる。上記噴霧装置としては、本発明組成物を容易に充填でき、噴霧を可能とし、スプレー剤として機能するものであれば特に限定されないが、例えば、ポンプ式噴霧器、トリガー式噴霧器、エアゾール式噴霧器等を挙げることができる。
【0033】
本発明組成物は、噴霧装置内でゲル状であるため、噴霧装置を傾けたりしても母液の流動が起こらず、全方位で噴霧が可能である。例えば、極端な場合、逆さまにしてもスプレーすることができ、スプレー製剤として良好に機能することができる。
【0034】
そして、噴霧した後は、噴霧面に付着し、流動性がなく、特に垂直面や天面に噴霧した場合でも液垂れが起こりにくく、成分(C)の機能性物質の機能を発揮することができる。噴霧面に噴霧する量は、特に限定されないが、例えば、0.6〜9.0g好ましくは1.2〜6.0g、更に好ましくは、1.8〜3.0gである。市販のトリガー式噴霧器により噴霧する場合は1ストローク〜15ストローク、好ましくは2ストローク〜10ストローク、更に好ましくは3ストローク〜5ストロークである。
【0035】
また、具体的な噴霧面としては、窓ガラス、鏡、台所、トイレ、ふろ場等のタイルの壁面、ごみ箱の内側面、蓋の裏側、トイレのタンク等が挙げられる。上記スプレー製剤は、消臭剤、芳香剤、防虫剤、殺虫剤、抗菌剤等として利用することができる。
【実施例】
【0036】
次に、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
実 施 例 1
スプレー用芳香剤:
下記表1の成分を常温で混合し、本発明品1〜6及び比較品1〜6を得た。これらを市販のトリガー式噴霧器に充填し、以下の試験を行った。結果を併せて表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
試 験 例 1
(液だれ性試験)
本発明品1〜6及び比較品1〜6を、斜め45度にしたPE板の上面に3回噴霧して、24時間後、ゲルの垂れ具合を目視にて確認し、下記の基準で評価した。
◎:全く垂れていない
○:10mm以内に垂れが収まっている
△:10mmより長く50mm以内に垂れが収まっている
×:50mmを超えて垂れている
【0040】
(収縮性試験)
本発明品1〜6及び比較品1〜6を、斜め45度にしたPE板の上面に3回噴霧して、24時間後、ゲルの収縮具合を目視にて確認し、下記の基準で評価した。
◎:収縮しているのが非常によく分かる
○:収縮しているのがよく分かる
△:収縮しているのが分かる
×:収縮しているのがわからない
【0041】
(剥がれ性試験)
本発明品1〜6及び比較品1〜6を、斜め45度にしたPE板の上面に3回噴霧して、24時間後、乾燥した塗布膜を手で剥がしてみて、剥がし易さを下記の基準で評価した。
◎:非常に剥がしやすい
○:剥がしやすい
△:なんとか剥がせる
×:剥がしにくい
【0042】
以上の結果より、本発明品1〜6は、液だれ性、収縮性、剥がれ性の全ての点で比較品1〜6より優れたものであることが確認された。
【0043】
実 施 例 2
スプレー用芳香消臭剤:
下記表2の成分を常温で混合し、本発明品7〜12を得た。これらを市販のトリガー式噴霧器に充填し、上記同様の試験方法にて試験を行った。結果を併せて表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
以上の結果より、本発明品7〜12は、液だれ性、収縮性、剥がれ性の全てにおいて、優れていることが確認された。
【0046】
実 施 例 3
スプレー用脱臭剤:
セルロースナノファイバー2g、ゼオライト5g、活性炭5g及び水88gを常温で混合しスプレー用脱臭剤を作成し、市販のトリガー式噴霧器に充填した。このスプレー用脱臭剤をゴミ箱のふたの裏の中心部分に5回スプレーしたところ、ふたの裏の中心部にやや盛り上がるようにゲルが形成され、約1週間消臭効果が持続した。1週間後にゲルは収縮し、ゴミ箱のふたの裏からごみ箱の中に自然落下していることが確認された。また、液だれ性および収縮性を上記同様の試験方法により試験したところ、何れも◎であった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のスプレー用組成物は、噴霧後に液垂れを発生せず、塗膜の乾燥後は容易に剥がすことができるため、スプレー型化粧品、スプレー型芳香剤などのトイレタリー用品用基材として広く好適に利用できる。