(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁材における前記スペーサ及び前記第2シール材の並設方向の長さを、前記スペーサの前記並設方向の長さ及び前記第2シール材の前記並設方向の長さのいずれよりも短くした、
請求項1又は2に記載の複層ガラス。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る複層ガラスの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建物の開口部に設けられる複層ガラスに関する。ここで、「建物」とは、その具体的な構造や種類は任意であり、例えば、戸建て住宅、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル、商業施設、及び公共施設等を含む概念である。また、「建物の開口部」とは、建物の躯体の一部分(例えば、壁、天井、床等)に形成された開口部である。複層ガラスは、建物の内部と外部とを仕切ったり、建物の部屋同士や階層同士を仕切るためのガラスであり、例えば、窓ガラス、建物の壁部、床部、天井部等を含む概念であるが、実施の形態では、窓ガラスとして説明する。
【0021】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0022】
(構成)
最初に、実施の形態に係る複層ガラスの構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る複層ガラスを概念的に示す図であり、(a)は正面図、(b)はA−A矢視断面図である。以下の説明では、
図1のX方向を複層ガラスの左右方向(−X方向を複層ガラスの左方向、+X方向を複層ガラスの右方向)、
図1のY方向を複層ガラスの前後方向(+Y方向を複層ガラスの前方向(建物の屋外側の方向)、−Y方向を複層ガラスの後方向(建物の屋内側の方向))、
図1のZ方向を複層ガラスの上下方向(+Z方向を複層ガラスの上方向、−Z方向を複層ガラスの下方向)と称する。
【0023】
この複層ガラス1は、上述のように窓ガラスであり、建物の壁に形成された縦長の長方形状の開口部(図示省略)に図示しない枠体(例えば、アルミサッシ等)を介して設けられており、
図1に示すように、第1ガラス板10、第2ガラス板20、第1封着部31、第2封着部32、第3封着部33、及び第4封着部34を備えている。なお、これら第1封着部31、第2封着部32、第3封着部33、第4封着部34を特に区別する必要のないときは、単に「封着部30」と総称する。
【0024】
ここで、複層ガラス1の各構成要素の設置方法については、実施の形態では、以下の通りに設置されている。すなわち、まず、第1ガラス板10及び第2ガラス板20が相互に間隔(以下、「ガラス間隔」と称する)を隔てて前後方向(Y方向)に対向配置されている。具体的には、
図1(b)に示すように、第1ガラス板10が複層ガラス1の前方側に配置され、第2ガラス板20が複層ガラス1の後方側に配置されている。このガラス間隔の長さについては、実施の形態では、所望の断熱性能が得られる長さに設定されており、例えば、6mm〜24mm程度に設定されている。また、第1封着部31、第2封着部32、第3封着部33、及び第4封着部34は、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の周縁部(以下、「周縁部」と称する)に設けられている。具体的には、
図1(a)に示すように、第1封着部31が周縁部の下方部分の略全長にわたって設けられ、第2封着部32が周縁部の左方部分の略全長にわたって設けられ、第3封着部33が周縁部の上方部分の略全長にわたって設けられ、第4封着部34が周縁部の右方部分の略全長にわたって設けられている。また、
図1(a)に示すように、ガラス基板と、第1封着部31、第2封着部32、第3封着部33、及び第4封着部34とに囲まれた密閉空間2(以下、「中空層2」と称する)が形成されている。この中空層2の具体的な形成方法については任意であるが、例えば、具体的には、第1ガラス板10又は第2ガラス板20に設けられた給気口(図示省略)からガス(例えば、希ガス等)が給気された後に給気口を蓋部(図示省略)で封止することにより、加圧状態の密閉空間として形成することで、複層ガラス1の熱貫流を抑制できる。
【0025】
(構成−第1ガラス板、第2ガラス板)
まず、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の構成について説明する。第1ガラス板10及び第2ガラス板20は、複層ガラス1の基本構造体であり、例えば公知の窓ガラス用のガラス板を用いて構成されおり、具体的には、
図1及び後述する
図2に示すように、第1ガラス板10が網10a入りの強化ガラス板を用いて構成されており、第2ガラス板20が強化ガラス板を用いて構成されている。なお、これら「第1ガラス板10」及び「第2ガラス板20」は、特許請求の範囲の「一対のガラス板」に対応する。
【0026】
また、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の具体的な形状及び大きさについては任意であるが、実施の形態では、
図1に示すように、まず、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の各々の正面形状が開口部と略同じ大きさの形状(具体的には、縦長の長方形状)となるように形成されている。また、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の左右方向(X方向)の長さ(幅)、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の前後方向(Y方向)の長さ(高さ)、及び第1ガラス板10及び第2ガラス板20の上下方向(Z方向)の長さ(厚さ)が、それぞれ略同一になるように形成されている。また、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の前後方向(Y方向)の長さについては、所定の強度が得られる長さに設定されており、具体的には、ガラス板の材質に応じて異なり得ることから、実験結果等に基づいて設定され、一例として、6mm〜10mm程度に設定されている。
【0027】
また、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、
図1(b)及び後述する
図2に示すように、第1ガラス板10又は第2ガラス板20には、被覆膜11又は防錆部12が設けられている。
【0028】
被覆膜11は、複層ガラス1の断熱性能及び遮熱性能を高めるための膜材である。この被覆膜11は、例えば断熱性及び遮熱性を有する公知のガラス用の膜材(一例として、放射伝熱が低い特殊金属製の膜材(いわゆるLow−E膜)等)を用いて構成されている。また、この被覆膜11は、
図1(b)に示すように、第2ガラス板20の側面のうち第1ガラス板10に対向する側面の略全体を覆うように配置されており、第2ガラス板20に対して接着剤等によって接続されている。このような被覆膜11により、建物の屋外側又は屋内側のいずれか一方からの熱が複層ガラス1を介して建物の屋外側又は屋内側のいずれか他方に伝わることを抑制でき、複層ガラス1の断熱性能及び遮熱性能を向上させることができる。
【0029】
防錆部12は、第1ガラス板10に含まれる網10aが錆びることを防止するための防錆手段である。この防錆部12は、例えば公知の防錆用の膜材(一例として、ブチルテープ等)を用いて構成されており、後述する
図2に示すように、第1ガラス板10の縁端部を覆うように配置され、第1ガラス板10に対して接続されている(一例として、ブチルテープの場合には、当該ブチルテープの粘着力により固定されている)。このような防錆部12により、第1ガラス板10に含まれる網10aが錆びることを防止できると共に、第1ガラス板10の縁端部を保護することができ、第1ガラス板10の耐久性を維持することが可能となる。
【0030】
(構成−第1封着部、第2封着部、第3封着部、第4封着部)
次に、第1封着部31、第2封着部32、第3封着部33、及び第4封着部34の構成について説明する。
図2は、
図1の複層ガラス1における第1封着部31周辺の拡大図である。ただし、これら第1封着部31、第2封着部32、第3封着部33、及び第4封着部34の各々の構成はそれぞれ略同一であるので、以下では、第1封着部31の構成のみについて説明することとする。
【0031】
第1封着部31は、第1ガラス板10及び第2ガラス板20同士を封着する封着手段であり、
図2に示すように、スペーサ40、第1シール材50、第2シール材60、及び絶縁材70を備えている。
【0032】
(構成−第1封着部、第2封着部、第3封着部、第4封着部−スペーサ)
スペーサ40は、ガラス間隔を保持するためのものである。このスペーサ40は、例えば公知の窓ガラス用のスペーサ(一例として、金属製(アルミニウム製等)のスペーサ等)を用いて構成されており、Y−Z平面に沿った断面の外形形状が六角形状に形成され、周縁部の下方部分の略全長にわたって設けられている。
【0033】
また、このスペーサ40のY−Z平面に沿った断面の大きさについては、実施の形態では、
図2に示すように、スペーサ40の前後方向(Y方向)の長さがガラス間隔の長さよりも若干短い長さ(例えば、6mm〜10mm程度)に設定されている。また、スペーサ40の上下方向(Z方向)の長さが第1封着部31の上下方向(Z方向)の長さの半分程度の長さ(例えば、6mm程度)に設定されている。
【0034】
また、このスペーサ40の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、
図2に示すように、スペーサ40は、中空状体にて形成されており、スペーサ40の内部に乾燥剤41が収容されていると共に、スペーサ40の中空層2側の側部に貫通孔42が少なくとも1つ以上形成されている。この貫通孔42の具体的な構成については任意であるが、例えば、0.2mm×0.7mmの貫通孔42を2mm間隔で設けてもよい。また、乾燥剤41の具体的な大きさについては任意であるが、例えば、中空層2に充填されたガスを吸着することを抑制できるように設定されることが望ましく、一例として、細孔径3Å程度に設定されてもよい(この場合には、見かけの平均粒子径は、0.5mm〜5mmに設定されることが望ましい)。このような構成により、例えば、複層ガラス1を製造する過程や複層ガラス1を使用している過程において、中空層2に入り込んだ水分を貫通孔42を介して乾燥剤41により吸着することができる。よって、中空層2の内部に結露等が発生することを抑制でき、複層ガラス1の機能性や意匠性を維持することができる。ただし、このような構成に限られず、例えば、乾燥剤41を収容することや貫通孔42を形成することを省略したり、あるいは、中実状体や矩形状体に形成されてもよい。
【0035】
(構成−第1封着部、第2封着部、第3封着部、第4封着部−第1シール材)
第1シール材50は、スペーサ40と第1ガラス板10又は第2ガラス板20の各々とを封止するためのシール材である。
図2に示すように、この第1シール材50は、スペーサ40と第1ガラス板10又は第2ガラス板20の各々との相互間に設けられていると共に、周縁部の下方部分の略全長にわたって設けられている。
【0036】
また、第1シール材50のY−Z平面に沿った断面の大きさについては、実施の形態では、
図2に示すように、第1シール材50の前後方向(Y方向)の長さがスペーサ40の前後方向(Y方向)の長さよりも短く、且つ、スペーサ40と第1ガラス板10又は第2ガラス板20の各々との間隔と略同一の長さ(例えば、0.02mm〜0.2mm程度)に設定されている。また、第1シール材50の上下方向(Z方向)の長さがスペーサ40の上下方向(Z方向)の長さと略同一に設定されている。これにより、スペーサ40と第1ガラス板10又は第2ガラス板20の各々との相互間の隙間を塞ぐことができる。
【0037】
また、第1シール材50の材質については、実施の形態では、粘着性が比較的高く、且つ液体や気体を透過させにくい材質にて形成されており、例えば、ブチル系の樹脂材等が該当する。これにより、例えば、複層ガラス1を使用している過程において、中空層2内に水分が第1シール材50を介して入り込むことを抑制できると共に、中空層2に充填されたガスが第1シール材50を介して外部に漏れることを抑制できる。
【0038】
(構成−第1封着部、第2封着部、第3封着部、第4封着部−第2シール材)
第2シール材60は、第1ガラス板10及び第2ガラス板20を接続するためのシール材である。
図2に示すように、この第2シール材60は、スペーサ40よりも複層ガラス1の外側の位置(
図2では、スペーサ40よりも下方側の位置)に設けられていると共に、周縁部の下方部分の略全長にわたって設けられている。
【0039】
また、第2シール材60のY−Z平面に沿った断面の大きさについては、実施の形態では、
図2に示すように、第2シール材60の前後方向(Y方向)の長さがガラス間隔の長さと同一に設定されており、第2シール材60の上下方向(Z方向)の長さが第1封着部31の上下方向(Z方向)の長さの半分程度の長さに設定されている。これにより、第2シール材60によってスペーサ40及び第1シール材50を覆うことができ、スペーサ40及び第1シール材50が外部に露出することを回避できる。
【0040】
また、第2シール材60の材質については、実施の形態では、接着性が比較的高く、且つ膨潤性が比較的低い材質にて形成されており、例えば、シリコーン系やポリサルファイド系の樹脂材等が該当する。これにより、第1ガラス板10及び第2ガラス板20を強固に接続することができると共に、湿度や温度が高い環境下における第2シール材60の膨潤を抑制できる。
【0041】
(構成−第1封着部、第2封着部、第3封着部、第4封着部−絶縁材)
絶縁材70は、第2シール材60に加えられた負荷力が少なくともスペーサ40を介して第1シール材50に伝えられることを抑制するためのものである。ここで、「負荷力」とは、第2シール材60に作用する力を意味し、例えば、風圧や中空層2の内圧の変化によって第1ガラス板10又は第2ガラス板20が面外変形することに伴って第2シール材60に作用する力等が該当する。この絶縁材70は、例えば薄厚の略板状体であり、
図2に示すように、スペーサ40と第2シール材60との相互間及び第1シール材50と第2シール材60との相互間に設けられていると共に、周縁部の下方部分の略全長にわたって設けられている。
【0042】
また、絶縁材70のY−Z平面に沿った断面の大きさについては、実施の形態では、
図2に示すように、絶縁材70の前後方向(Y方向)の長さがガラス間隔の長さと略同一の長さに設定されている。また、絶縁材70の上下方向(Z方向)の長さ(つまり、絶縁材70におけるスペーサ40及び第2シール材60の並設方向の長さ)がスペーサ40の上下方向(Z方向)の長さ(つまり、スペーサ40の上記並設方向の長さ)及び第2シール材60の上下方向(Z方向)の長さ(つまり、第2シール材60の上記並設方向の長さ)のいずれよりも短い長さ(例えば、0.01mm〜2mm程度)に設定されている。これにより、絶縁材70の上下方向(Z方向)の長さをスペーサ40の上下方向(Z方向)の長さ又は第2シール材60の上下方向(Z方向)の長さよりも長くした場合に比べて、第2シール材60に加えられた負荷力に伴ってスペーサ40が移動する移動量を抑えることができることから、第1シール材50に伝えられる負荷力を抑えることができる。また、封着部30の上下方向(Z方向)の長さも抑制できるので、第1ガラス板10又は第2ガラス板20の相互間の空間のうち、封着部30が設置される部分以外の部分(いわゆるビジョン部)の大きさを維持又は増大できることから、複層ガラス1の機能性や意匠性を維持又は増大できる。
【0043】
また、絶縁材70の材質については、実施の形態では、第2シール材60に加えられた負荷力がスペーサ40に伝わりにくい材質にて形成されており、例えば、表面に撥水処理を施したシリカ粉、アルミナ、炭酸カルシウム(撥水性材料、防湿性材料)や、ボンドブレーカー(一例として、ポリエチレンシート)等が該当する。特に、絶縁材70を、撥水表面を有するシリカ粉等にて形成することにより、絶縁材70に撥水機能又は防湿機能を付加でき、封着部30の撥水性又は防湿性を向上させることができる。
【0044】
また、絶縁材70の具体的な構成については任意であるが、実施の形態では、絶縁材70を、第1シール材50又は第2シール材60と同色としており、例えば、第1シール材50又は第2シール材60が黒色である場合には、絶縁材70を黒色としてもよい。これにより、絶縁材70を第1シール材50及び第2シール材60と異なる色にした場合に比べて、絶縁材70と第1シール材50又は第2シール材60との意匠の調和を図ることができ、封着部30の意匠性を維持することが可能となる。
【0045】
以上のような複層ガラス1により、絶縁材70によって第2シール材60に加えられた負荷力がスペーサ40を介して第1シール材50に伝えられることを抑制できる。よって、第2シール材60をスペーサ40又は第1シール材50と直接接触するように設けた場合に比べて、封着部30の透湿抵抗性を維持でき、複層ガラス1の耐久性を維持することが可能となる。特に、絶縁材70をスペーサ40と第2シール材60との相互間及び第1シール材50と第2シール材60との相互間に設けているので、第2シール材60に加えられた負荷力が第1シール材50に直接伝えられることを抑制でき、絶縁材70をスペーサ40と第2シール材60との相互間だけに設けた場合に比べて、封着部30の透湿抵抗性を一層維持できる。また、第1封着部31及び第3封着部33を第1ガラス板10及び第2ガラス板20のうち少なくとも短手側の部分(つまり、周縁部の上方部分及び下方部分)に設けているので、第1封着部31及び第3封着部33の透湿抵抗性を一層維持できる。すなわち、例えば、風圧等によって第1ガラス板10及び第2ガラス板20の略全体が面外変形した場合には、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の長手側の部分よりも第1ガラス板10及び第2ガラス板20の短手側の部分に対して、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の面外のたわみ角が大きくなり、そのたわみ角に伴う変形量も大きいことから、応力が大きくなりやすい。このため、第2封着部32及び第4封着部34の各々の第2シール材60に加えられる負荷力よりも第1封着部31及び第3封着部33の各々の第2シール材60に加えられる負荷力が大きくなるが、このような場合においても、第1封着部31及び第3封着部33の各々の絶縁材70によって負荷力が第1封着部31及び第3封着部33の各々の第1シール材50に伝えられることを抑制できる。よって、第1封着部31及び第3封着部33の透湿抵抗性を一層維持できる。
【0046】
(複層ガラスの作用)
次に、このように構成された複層ガラス1の作用について説明する。なお、複層ガラス1における第1封着部31から第4封着部34の各々の作用はそれぞれ略同一であるので、以下では、特に第1封着部31の作用に着目して説明することとする。
【0047】
すなわち、例えば、第1ガラス板10の主側面(第1ガラス板10の側面のうち、面積が最も大きな側面)に風圧が加えられると、風圧によって第1ガラス板10が後方(−Y方向)に向けて面外変形する。この場合において、第1ガラス板10の面外変形に伴って第1封着部31の第2シール材60に負荷力が加えられると、第1封着部31の絶縁材70及び第1封着部31のスペーサ40を介して第1封着部31の第1シール材50に伝達されることにより、当該第1シール材50に引張変形が生じる。ここで、上記第1封着部31の第1シール材50に伝えられる力が第1封着部31の絶縁材70によって抑制されるので、第2シール材60をスペーサ40又は第1シール材50と直接接触するように設けた場合に比べて、第1封着部31の第1シール材50の変形量を小さくすることができる。よって、このような一連の作用が繰り返し行われたとしても、第1封着部31の第1シール材50が疲労劣化することを抑制できるので、第1封着部31の透湿抵抗性を維持でき、複層ガラス1の耐久性を維持することが可能となる。
【0048】
(試験結果)
続いて、複層ガラス1に関する透湿試験の試験結果について説明する。ここで、「透湿試験」とは、繰返し変形が与えられた後の複層ガラス1の透湿係数を測定する試験である。
【0049】
まず、この透湿試験に用いられる試験設備(図示省略)の概要について説明する。この試験設備は、載荷装置、収容カップ、及び吸湿材を備えている(いずれも図示省略)。このうち、載荷装置は、後述する試験体に対して繰返し変形を与えるための装置であり、例えば公知のアクチュエータ等を用いて構成されている。収容カップは、後述する試験体や吸湿材を収容するカップであり、例えば公知の透湿試験用のカップ等を用いて構成されている。また、吸湿材は、収容カップ内の水分を吸着するものであり、例えば公知の透湿試験用の吸湿材等を用いて構成されている。
【0050】
次に、この透湿試験の試験対象について説明する。
図3は、試験体の概要を示す断面図であり、(a)は第1試験体81を示す図であり、(b)は第2試験体82を示す図である。この試験対象は、収容カップに収容可能な大きさで形成されており、本発明の実施の形態に係る複層ガラスの構成を用いて構成されたものであり、具体的には、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の周縁部の一部(例えば、当該周縁部の下方部分等)に設けられた1つの封着部30を備えるもの(以下、「第1試験体81」と称する)と、第1試験体81と同一の形状及び大きさであって、封着部30の絶縁材70を省略して第2シール材60をスペーサ40と直接接触するように設けたことを除いては第1試験体81と同一の構成であるもの(以下、「第2試験体82」と称する)との2種類を用いた。また、第1試験体81及び第2試験体82の各構成要素の具体的な長さについては、
図3に示すように、以下に示す通りに設定されている。すなわち、まず、第1ガラス板10及び第2ガラス板20については、左右方向(X方向)の長さ=50mm、前後方向(Y方向)の長さG1=6mm、上下方向(Z方向)の長さG2=100mmに設定されている。また、スペーサ40については、左右方向(X方向)の長さ=50mm、前後方向(Y方向)の長さS1=12.0mm、上下方向(Z方向)の長さS2=5.2mmに設定されている。また、第1シール材50については、左右方向(X方向)の長さ=50mm、前後方向(Y方向)の長さPS1=0.05mm、上下方向(Z方向)の長さPS2=5.2mmに設定されている。また、第2シール材60については、左右方向(X方向)の長さ=50mm、前後方向(Y方向)の長さSS1=12.1mm、上下方向(Z方向)の長さSS2=6mmに設定されている。また、絶縁材70については、左右方向(X方向)の長さ=50mm、前後方向(Y方向)の長さI1=12.1mm、上下方向(Z方向)の長さI2=0.04mmに設定されている(ただし、第1試験体81に限られる)。
【0051】
また、透湿試験の試験方法については、以下に示す通りに行われる。すなわち、まず、各試験体の透湿係数を測定する(以下、「第1測定工程」と称する)。第1測定工程の具体的な内容については任意であるが、例えば、試験体及び吸湿材を入れた収容カップを恒温恒湿室内(例えば、温度=65℃、湿度=79.85%RHの室内)に所定時間(例えば、72〜168時間等)静置し、その後収容カップの質量変化を測定し、当該測定結果に基づいて試験体の透湿係数を算出する。ここで、第1測定工程の測定方法については任意であるが、例えば、「JIS Z0208」又は「JIS A 1324」に規定されている方法に準拠して測定してもよい。また、試験体及び吸湿材の収容方法については、例えば、吸湿材が試験体のみを介して収容カップの外部から水分を吸着できるように、図示しない蓋部を用いて収容カップの開口部の一部を塞ぐことが好ましい。次に、各試験体に繰り返し変形を与える(以下、「第1負荷工程」と称する)。この第1負荷工程の具体的な内容について任意であるが、例えば、各試験体のうち第1ガラス板10又は第2ガラス板20のいずれか一方を固定した状態で、各試験体のうち第1ガラス板10又は第2ガラス板20のいずれか他方が面外変形するように、載荷装置によって当該第1ガラス板10又は第2ガラス板20のいずれか他方に対して繰返し変形を与える。なお、この第1負荷工程では、25年相当の累積負荷を与える風が毎年均一に作用することを想定した繰り返し変形を各試験体に与えるものとする。次いで、第1負荷工程が終了した後に、第1測定工程と同様の方法により、各試験体の透湿係数を測定する(以下、「第2測定工程」と称する)。次に、第2負荷工程と同様の方法により、各試験体に繰り返し変形を与える(以下、「第2負荷工程」と称する)。この第2負荷工程では、さらに25年相当の累積負荷を与える風が毎年均一に作用することを想定した繰り返し変形を各試験体に与えるものとする。そして、第2負荷工程が終了した後に、第1測定工程と同様の方法により、各試験体の透湿係数を測定する(以下、「第3測定工程」と称する)。
【0052】
続いて、この透湿試験の試験結果の詳細について説明する。
図4は、透湿試験の試験結果を示すグラフであって、第1試験体の試験結果と、第2試験体の試験結果とを示すグラフであり、横軸は疲労年数、縦軸は透湿係数を示す。まず、第1試験体の試験結果については、
図4に示すように、疲労年数=0年から50年にわたって、透湿係数=25g・cm/cm
2・h程度であった。一方、第2試験体の試験結果については、
図4に示すように、疲労年数=0年から25年にわたっては、透湿係数=23g・cm/cm
2・h程度であるが、疲労年数=50年を経過すると、透湿係数=41g・cm/cm
2・h程度であり、第1試験体に比べて透湿係数=16g・cm/cm
2・h程度高かった。
【0053】
これら第1試験体の試験結果及び第2試験体の試験結果から、第1試験体が第2試験体に比べて疲労年数に伴う透湿係数の変動が小さいことが判り、封着部30に絶縁材70を設けることの有効性が確認できた。
【0054】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、封着部30が、スペーサ40と第1ガラス板10及び第2ガラス板20の各々との相互間に設けられた第1シール材50と、スペーサ40よりも当該複層ガラス1の外側の位置に設けられた第2シール材60と、少なくともスペーサ40と第2シール材60との相互間に設けられた絶縁材70とを備えたので、絶縁材70によって第2シール材60に加えられた負荷力がスペーサ40を介して第1シール材50に伝えられることを抑制できる。よって、第2シール材60をスペーサ40と直接接触するように設けた場合に比べて、封着部30の透湿抵抗性を維持でき、複層ガラス1の耐久性を維持することが可能となる。
【0055】
また、絶縁材70をスペーサ40と第2シール材60との相互間及び第1シール材50と当該第2シール材60との相互間に設けたので、第2シール材60に加えられた負荷力が第1シール材50に直接伝えられることを抑制でき、絶縁材70をスペーサ40と第2シール材60との相互間だけに設けた場合に比べて、封着部30の透湿抵抗性を一層維持できる。
【0056】
また、絶縁材70のスペーサ40及び第2シール材60の並設方向の長さを、スペーサ40の上記並設方向の長さ及び第2シール材60の上記並設方向の長さのいずれよりも短くしたので、絶縁材70の上記並設方向の長さをスペーサ40の上記並設方向の長さ又は第2シール材60の上記並設方向の長さよりも長くした場合に比べて、第2シール材60に加えられた負荷力に伴ってスペーサ40が移動する移動量を抑えることができることから、第1シール材50に伝えられる負荷力を抑えることができる。また、封着部30の上記並設方向の長さも抑制できるので、第1ガラス板10又は第2ガラス板20の相互間の空間のうち、封着部30が設置される部分以外の部分(いわゆるビジョン部)の大きさを維持又は増大できることから、複層ガラス1の機能性や意匠性を維持又は増大できる。
【0057】
また、絶縁材70を、撥水性材料又は防湿性材料にて形成したので、絶縁材70に撥水機能又は防湿機能を付加でき、封着部30の撥水性又は防湿性を向上させることができる。
【0058】
また、絶縁材70を、第1シール材50又は第2シール材60と同色にしたので、絶縁材70を第1シール材50及び第2シール材60と異なる色にした場合に比べて、絶縁材70と第1シール材50又は第2シール材60との意匠の調和を図ることができ、封着部30の意匠性を維持することが可能となる。
【0059】
また、第1ガラス板10及び第2ガラス板20を略長方形状に形成し、封着部30を、第1ガラス板10及び第2ガラス板20のうち少なくとも短手側の部分に設けたので、封着部30の透湿抵抗性を一層維持できる。すなわち、例えば、風圧等によって第1ガラス板10及び第2ガラス板20の略全体が面外変形した場合には、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の長手側の部分よりも第1ガラス板10及び第2ガラス板20の短手側の部分に対して、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の面外のたわみ角が大きくなり、そのたわみ角に伴う変形量も大きいことから、応力が大きくなりやすい。このため、上記長手側の部分に封着部30を設けた場合の当該封着部30の第2シール材60に加えられる負荷力よりも上記短手側の部分に設けた封着部30の第2シール材60に加えられる負荷力が大きくなるが、このような場合においても、上記短手側の部分に設けた封着部30の絶縁材70によって負荷力が当該封着部30の第1シール材50に伝えられることを抑制できる。よって、上記短手側の部分に設けた封着部30の透湿抵抗性を一層維持できる。
【0060】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0061】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0062】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0063】
(ガラス板について)
上記実施の形態では、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の各々の正面形状を長方形状に形成されていると説明したが、これに限られず、例えば、長方形状以外の多角形状(一例として、正方形状、五角形状等)、円形状、楕円形状等に形成されてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の各々には、防錆部12が設けられていると説明したが、これに限られない。例えば、防錆部12に代えて、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の各々の縁端部に公知の防錆塗料や公知の防錆油を塗布してもよく、あるいは、第2シール材60によって第1ガラス板10の縁端部を覆うことで防錆処理を行ってもよい。
【0065】
(封着部について)
上記実施の形態では、封着部30の設置数が4つ(第1封着部31から第4封着部34)であると説明したが、これに限られない。
図5は、複層ガラス1の変形例を示す正面図である。例えば、封着部30の設置数が5つ以上であってもよく、一例として、
図5に示すように、第1封着部31と第3封着部33との相互間に第5封着部35が設けられてもよい。また、封着部30の設置数が3つ以下であってもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、第1封着部31、第2封着部32、第3封着部33、及び第4封着部34がすべて同一の構成で形成されていると説明したが、これに限られない。例えば、第1ガラス板10及び第2ガラス板20のうち、長手側に位置する第2封着部32及び第4封着部34は、短手側に位置する第1封着部31及び第3封着部33とは異なる構成(一例として、絶縁材70を省略して、第2シール材60をスペーサ40又は第1シール材50と直接接触するように設ける構成)で形成されてもよい。すなわち、少なくとも第1ガラス板10及び第2ガラス板20の短手側の部分に実施の形態に係る封着部30を設けることで、例えば、風圧等によって第1ガラス板10及び第2ガラス板20の略全体が面外変形した場合には、第1ガラス板10及び第2ガラス板20の長手側の部分よりも第1ガラス板10及び第2ガラス板20の短手側の部分に対して応力が集中しやすいため、上記長手側の部分に設けた封着部30の第2シール材60に加えられる負荷力よりも上記短手側の部分に設けた封着部30の第2シール材60に加えられる負荷力が大きくなるが、このような場合においても、上記短手側の部分に設けた封着部30の絶縁材70によって負荷力が当該封着部30の第1シール材50に伝えられることを抑制できる。
【0067】
(スペーサについて)
上記実施の形態では、スペーサ40がアルミニウムで形成されていると説明したが、これに限られず、例えば、熱伝導率が低い金属(一例として、ステンレス等)や樹脂材(一例として、発泡シリコーン等)で形成されてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、スペーサ40の上下方向(Z方向)の長さが、第1封着部31の上下方向(Z方向)の長さの半分程度の長さに設定されていると説明したが、これに限られず、例えば、第1封着部31の上下方向(Z方向)の長さの半分程度の長さよりも長い長さ(又は当該半分程度の長さよりも短い長さ)に設定されてもよい(なお、第2シール材60の上下方向(Z方向)の長さについても同様とする)。
【0069】
(絶縁材について)
上記実施の形態では、絶縁材70が薄厚の略板状体にて形成されていると説明したが、これに限られず、例えば、空気層や樹脂層(一例として、発泡ポリエチレン等)にて形成されてもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、絶縁材70が、スペーサ40と第2シール材60との相互間及び第1シール材50と第2シール材60との相互間に設けられていると説明したが、これに限られず、例えば、スペーサ40と第2シール材60との相互間のみに設けられてもよい。これにより、スペーサ40の前後方向(Y方向)の長さが第1シール材50の前後方向(Y方向)の長さよりも長いことにより、第2シール材60に加えられる負荷力がスペーサ40を介して第1シール材50に伝えられることが支配的である場合には、当該負荷力が第1シール材50に伝えられることを効果的に抑制でき、封着部30の透湿抵抗性を維持できる。
【0071】
また、上記実施の形態では、絶縁材70の上下方向(Z方向)の長さが、スペーサ40の上下方向(Z方向)の長さ及び第2シール材60の上下方向(Z方向)の長さのいずれよりも短い長さに設定されていると説明したが、これに限られない。例えば、スペーサ40の上下方向(Z方向)の長さ又は第2シール材60の上下方向(Z方向)の長さと同一の長さ、又はそれよりも長い長さに設定されてもよい。
【0072】
また、上記実施の形態では、絶縁材70を、第1シール材50又は第2シール材60と同色に形成していると説明したが、これに限られず、例えば、絶縁材70を、第1シール材50又は第2シール材60と異なる色に形成してもよい。
【0073】
(付記)
付記1の複層ガラスは、相互に間隔を隔てて対向配置された一対のガラス板と、前記一対のガラス板同士を封着する封着手段とを備えた複層ガラスであって、前記封着手段は、前記間隔を保持するためのスペーサと、前記スペーサと前記一対のガラス板の各々との相互間に設けられた第1シール材であって、当該スペーサと当該一対のガラス板の各々とを封止するための第1シール材と、前記スペーサよりも当該複層ガラスの外側の位置に設けられた第2シール材であって、前記一対のガラス板を接続するための第2シール材と、少なくとも前記スペーサと前記第2シール材との相互間に設けられた絶縁材であって、当該第2シール材に加えられた負荷力が少なくとも当該スペーサを介して当該第1シール材に伝えられることを抑制するための絶縁材と、を備えた。
【0074】
付記2の複層ガラスは、付記1に記載の複層ガラスにおいて、前記絶縁材を前記スペーサと前記第2シール材との相互間及び前記第1シール材と当該第2シール材との相互間に設けることにより、当該第2シール材に加えられた負荷力が当該スペーサを介して当該第1シール材に伝えられ、又は当該第1シール材に直接伝えられることを抑制する。
【0075】
付記3の複層ガラスは、付記1又は2に記載の複層ガラスにおいて、前記絶縁材における前記スペーサ及び前記第2シール材の並設方向の長さを、前記スペーサの前記並設方向の長さ及び前記第2シール材の前記並設方向の長さのいずれよりも短くした。
【0076】
付記4の複層ガラスは、付記1から3のいずれか一項に記載の複層ガラスにおいて、前記絶縁材を、撥水性材料又は防湿性材料にて形成した。
【0077】
付記5の複層ガラスは、付記1から4のいずれか一項に記載の複層ガラスにおいて、前記絶縁材を、前記第1シール材又は前記第2シール材と同色にした。
【0078】
付記6の複層ガラスは、付記1から5のいずれか一項に記載の複層ガラスにおいて、前記一対のガラス板を略長方形状に形成し、前記封着手段を、前記一対のガラス板のうち少なくとも短手側の部分に設けた。
【0079】
(付記の効果)
付記1に記載の複層ガラスによれば、封着手段が、スペーサと一対のガラス板の各々との相互間に設けられた第1シール材と、スペーサよりも当該複層ガラスの外側の位置に設けられた第2シール材と、少なくともスペーサと第2シール材との相互間に設けられた絶縁材とを備えたので、絶縁材によって第2シール材に加えられた負荷力がスペーサを介して第1シール材に伝えられることを抑制できる。よって、第2シール材をスペーサと直接接触するように設けた場合に比べて、封着手段の透湿抵抗性を維持でき、複層ガラスの耐久性を維持することが可能となる。
【0080】
付記2に記載の複層ガラスによれば、絶縁材をスペーサと第2シール材との相互間及び第1シール材と当該第2シール材との相互間に設けたので、第2シール材に加えられた負荷力が第1シール材に直接伝えられることを抑制でき、絶縁材をスペーサと第2シール材との相互間だけに設けた場合に比べて、封着手段の透湿抵抗性を一層維持できる。
【0081】
付記3に記載の複層ガラスによれば、絶縁材のスペーサ及び第2シール材の並設方向の長さを、スペーサの上記並設方向の長さ及び第2シール材の上記並設方向の長さのいずれよりも短くしたので、絶縁材の上記並設方向の長さをスペーサの上記並設方向の長さ又は第2シール材の上記並設方向の長さよりも長くした場合に比べて、第2シール材に加えられた負荷力に伴ってスペーサが移動する移動量を抑えることができることから、第1シール材に伝えられる負荷力を抑えることができる。また、封着手段の上記並設方向の長さも抑制できるので、一対のガラス板の相互間の空間のうち、封着手段が設置される部分以外の部分(いわゆるビジョン部)の大きさを維持又は増大できることから、複層ガラスの機能性や意匠性を維持又は増大できる。
【0082】
付記4に記載の複層ガラスによれば、絶縁材を、撥水性材料又は防湿性材料にて形成したので、絶縁材に撥水機能又は防湿機能を付加でき、封着手段の撥水性又は防湿性を向上させることができる。
【0083】
付記5に記載の複層ガラスによれば、絶縁材を、第1シール材又は第2シール材と同色にしたので、絶縁材を第1シール材及び第2シール材と異なる色にした場合に比べて、絶縁材と第1シール材又は第2シール材との意匠の調和を図ることができ、封着手段の意匠性を維持することが可能となる。
【0084】
付記6に記載の複層ガラスによれば、一対のガラス板を略長方形状に形成し、封着手段を、一対のガラス板のうち少なくとも短手側の部分に設けたので、封着手段の透湿抵抗性を一層維持できる。すなわち、例えば、風圧等によって一対のガラス板の略全体が面外変形した場合には、一対のガラス板の長手側の部分よりも一対のガラス板の短手側の部分に対して、一対のガラス板の面外のたわみ角が大きくなり、そのたわみ角に伴う変形量も大きいことから、応力が大きくなりやすい。このため、上記長手側の部分に封着手段を設けた場合の当該封着手段の第2シール材に加えられる負荷力よりも上記短手側の部分に設けた封着手段の第2シール材に加えられる負荷力が大きくなるが、このような場合においても、上記短手側の部分に設けた封着手段の絶縁材によって負荷力が当該封着手段の第1シール材に伝えられることを抑制できる。よって、上記短手側の部分に設けた封着手段の透湿抵抗性を一層維持できる。