(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918609
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】直流遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20210729BHJP
H01F 27/42 20060101ALI20210729BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20210729BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
H01H33/59 A
H01F27/42 101
H01F17/04 A
H01H9/54 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-133066(P2017-133066)
(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2019-16515(P2019-16515A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100146950
【弁理士】
【氏名又は名称】南 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
【審査官】
内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−187122(JP,A)
【文献】
特開2016−181686(JP,A)
【文献】
特開2011−243288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/28 − 33/59
H01F 17/00 − 21/12
H01F 27/42
H02H 3/08 − 3/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電路を開閉する接点(20)と、
前記直流電路に流れる電流を限流する限流リアクトル(10A)と、
前記接点を開く引外しコイルを有する引外し装置(30)と、を備え、
前記限流リアクトルが、
磁束を通しやすい材料で作られたコア(13)と、
前記接点(20)と直列に接続され、前記直流電路の電流が流れかつ前記コア(13)に巻かれた主コイル(11)と、
前記主コイル(11)と絶縁されかつ前記主コイルに重ね巻きされて電磁結合している副コイル(12)と、を有し、
前記主コイル(11)に流れる電流の変化率に応じて前記副コイル(12)に電流が流れ、前記副コイル(12)に生じた電流が前記引外しコイルに流れ、前記引外しコイルに流れる電流が所定の値を超えたときに前記接点(20)が開かれることを特徴とする直流遮断器。
【請求項2】
前記限流リアクトルが、巻線の巻始めと巻終わりとが短絡されており、前記主コイルと電磁結合している短絡コイルを備えることを特徴とする請求項1に記載の直流遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電路を流れる電流を遮断する直流遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電路に短絡事故が発生した場合、直流遮断器を迅速に動作させて電流を遮断しなければならない。このため、短絡が起きたときには直流電路を流れる電流をできる限り早く増加させることが望ましい。
一方、短絡が起きたとき、直流電路にあまりにも大きな短絡電流が流れると、そこに接続されている電気機器や直流遮断器自体が破壊されるおそれがある。このため、直流電路が遮断されるまでの間に短絡電流が大きくなり過ぎないように短絡電流を抑制することが望ましい。
【0003】
これらの相反する両方の要求を満たすことができる直流遮断器が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この直流遮断器は、電磁式の引外し装置を備えた接点と、限流リアクトルとが直列に接続されている。
引外し装置は、直流電路に流れる電流が所定の電流値を超えると、接点を開く。接点が開くと電流が遮断される。
この限流リアクトルは、主コイルと短絡コイルが共通のコアに巻かれている。主コイルは、直流電路に挿入されている。短絡コイルは、巻線の巻始めと巻終わりとが短絡されている。主コイルと短絡コイルとは電磁結合している。直流電路に短絡事故が起きたとき、この限流リアクトルは、引外し装置によって接点が開かれる所定の電流値付近まで直流電路の電流を迅速に増加させ、その電流値を超えると電流の増加を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−181686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の直流遮断器は、直流電路を流れる電流が徐々に増加した場合でも、所定の電流値を超えると、接点が開いて電流が遮断される。このため、短絡事故ではなく、例えば複数のサーバが同時に起動した場合のように徐々に電流が増加し、一時的に所定の電流値を超えた場合でも、この直流遮断器は電流を遮断する。
【0006】
本発明の目的は、短絡事故のように電流が急激に増加した場合にのみ電流を遮断することができる直流遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の直流遮断器は、
直流電路を開閉する接点
(20)と、
前記直流電路に流れる電流を限流する限流リアクトル
(10A)と、
前記接点を開く
引外しコイルを有する引外し装置
(30)と、を備
え、
前記限流リアクトルが、
磁束を通しやすい材料で作られたコア(13)と、
前記接点(20)と直列に接続され、前記直流電路の電流が流れかつ前記コア(13)に巻かれた主コイル(11)と、
前記主コイル(11)と絶縁されかつ前記主コイルに重ね巻きされて電磁結合している副コイル(12)と、を有し、
前記主コイル(11)に流れる電流の変化率に応じて前記副コイル(12)に電流が流れ、前記副コイル(12)に生じた電流が前記引外しコイルに流れ、前記引外しコイルに流れる電流が所定の値を超えたときに前記接点(20)が開かれることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、本発明の直流遮断器は、
前記限流リアクトルが、巻線の巻始めと巻終わりとが短絡されており、前記主コイルと電磁結合している短絡コイルを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、短絡事故のように電流が急激に増加した場合にのみ電流を遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る直流遮断器の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1の直流遮断器に含まれる限流リアクトルの磁気回路の構成の一例を示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る直流遮断器の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図3の直流遮断器に含まれる限流リアクトルの磁気回路の構成の一例を示す図である。
【
図5】大きな電圧が印加されたとき、限流リアクトルの主コイルに流れる電流の時間経過の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る直流遮断器について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態を説明する全図において、共通の構成要素には同一の符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る直流遮断器1の構成の一例を示す。
直流遮断器1は、限流リアクトル10Aと、接点20と、引外し装置30と、ダイオードD1とを有する。
端子T1と端子T2の間に、端子T1と端子T2をそれぞれ正側と負側として直流電圧(例えば380V)が印加される。端子T3と端子T4の間には負荷が接続される。
端子T1と端子T3の間は直流電路の一部を形成する。限流リアクトル10Aと接点20とは、端子T1と端子T3との間に直列に挿入される。
【0015】
接点20は、一端が端子T1に接続される。接点20は、直流電路を開閉する。
限流リアクトル10Aは、主コイル11と、副コイル12とを有する。本実施形態では、主コイル11は一端Aが接点20の他端に接続され、他端Bが端子T3に接続される。主コイル11には直流電路の電流が流れる。主コイル11は、直流電路に流れる電流を限流する。すなわち、主コイル11は、正常時はほとんど損失無く電流を流すが、電流が急激に増加したとき、この電流の増加を抑制する。
【0016】
副コイル12は、主コイル11と電磁結合している。主コイル11に流れる電流が変化すると、相互誘導により主コイル11の電流の変化に応じた電流(すなわち、直流電路に流れる電流の変化率に応じた電流)が副コイル12に生じる。
引外し装置30は、例えば引外しコイルを有する。引外しコイルの一端と他端は、副コイル12の一端Cと他端Dにそれぞれ接続されている。引外しコイルには副コイル12に生じた電流が流れる。引外しコイルはその電流によって生じる磁力によりその電流が所定の値を超えたときに接点20を開く。従って、引外し装置30は、直流電路に流れる電流の変化率が所定の大きさを超えたときに接点20を開く。
ダイオードD1は、アノードとカソードがそれぞれ主コイル11の他端B(端子T3側)と一端A(接点20側)に接続される。接点20が開くと、主コイル11は逆起電力を生じる。ダイオードD1は、主コイル11とダイオードD1で形成される閉回路で逆起電力によって生じる電流をループさせる。
【0017】
図2は、
図1の直流遮断器1に含まれる限流リアクトル10Aの磁気回路の構成の一例を示す。
限流リアクトル10Aは、コア13を持つ。コア13は、ヨークY1と、ヨークY2と、脚部P1と、脚部P2とを有する。ヨークY1とヨークY2は対向している。脚部P1は、ヨークY1の左の端部とヨークY2の左の端部を連結する。脚部P2は、ヨークY1の右の端部とヨークY2の右の端部を連結する。
主コイル11と副コイル12は、それぞれ脚部P1と脚部P2に巻かれている。なお、主コイル11と副コイル12は、脚部P1と脚部P2のいずれか一方に重ね巻きされていてもよい。
【0018】
コア13は、鉄のような磁束を通しやすい材料で作られている。ただし、コア13は、磁束を通しやすい材料であれば、鉄以外の材料で作られていてもよい。
コア13は1つ以上のギャップ(隙間)を有していてもよい。コア13にギャップがあると、漏れ磁束が増加し、コア13は磁気飽和しにくくなる。
【0019】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る直流遮断器2の構成の一例を示す。
図4は、
図3の直流遮断器2に含まれる限流リアクトル10Bの磁気回路の構成の一例を示す。
直流遮断器2は、限流リアクトル10Bの構成が第1の実施形態に係る限流リアクトル10Aと異なる。それ以外の点では、第2の実施形態に係る直流遮断器2は、第1の実施形態に係る直流遮断器1と同一である。
限流リアクトル10Bは、主コイル11と、副コイル12と、コア13と、短絡コイル14とを有する。
コア13は、
図2の第1の実施形態に係るコア13と同一である。限流リアクトル10Bは、主コイル11と副コイル12がコア13に重ね巻きされている点、および短絡コイル14を有する点が第1の実施形態に係る限流リアクトル10Aと異なる。
短絡コイル14は、巻線の巻始めと巻終わりとが短絡されている。主コイル11と短絡コイル14とは電磁結合している。
【0020】
図5は、大きな電圧が印加されたとき、限流リアクトル10Aと限流リアクトル10Bの主コイル11に流れる電流の時間経過の一例を示す。
限流リアクトル10Aでは、電流が徐々に増加する。限流リアクトル10Aは、時間が経過すると、コア13が磁気飽和し、過大な電流が流れる。このため、直流遮断器1は、引外し装置30の動作が遅いと、直流電路に過大な電流が流れるおそれがある。
一方、限流リアクトル10Bでは、初期に急速に電流が増加するが、ある電流値を超えると電流の増加が抑制される。従って、直流電路に短絡事故が起きたとき、直流遮断器2の引外し装置30は、事故直後に急速に増加する電流に応答して接点20を開くことができる。そして、直流遮断器2は引外し装置30の動作が遅くても直流電路に過大な電流が流れることはない。
また、副コイル12を主コイル11の上に重ね巻きすることにより、副コイル12は主コイル11に流れる電流の変化に応じてより効率的に電流を生じさせることができる。
【0021】
なお、上述した実施形態では、限流リアクトル10Aと限流リアクトル10Bを示したが、これらは例示であって限定するものではない。これら以外にも様々な構成の限流リアクトルを用いて本発明を実施することができる。また、矩形状のコア13を示したが、これに限らず、コア13として、環状のコア、EIコア、EEコア、UUコア等の様々な形状のものを用いて本発明を実施することができる。
【0022】
また、上述した実施形態では、直流遮断器1,2を直流給電線の正側に挿入する例を示したが、直流遮断器1,2を直流給電線の負側、または正側と負側の両方に挿入することもできる。
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、短絡事故のように電流が急激に増加した場合にのみ電流を遮断することができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、設計または製造上の都合やその他の要因によって必要となる様々な修正や組み合わせは、請求項に記載されている発明や発明の実施形態に記載されている具体例に対応する発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1,2…直流遮断器、10A,10B…限流リアクトル、11…主コイル、12…副コイル、13…コア、14…短絡コイル、20…接点、30…引外し装置、D1,D2…ダイオード