【実施例1】
【0019】
図1は本発明のシステムの全体構成を示す機能ブロック図である。
入出庫管理システム12は、WMSと呼ばれ、図示しない倉庫管理に必要な様々のデータを使用して適当な作業単位ごとに連携制御システム14に作業依頼データ34を送信する。入出庫管理システム12の機能は既知のもので説明は省略する。自動機制御システム22は、WCSと呼ばれ、倉庫内の全ての自動機の動作を制御するもので、この機能も既知のもので説明は省略する。連携制御システム14は作業者と自動機を制御するためのコンピュータで演算処理装置16と記憶装置18とを備えている。演算処理装置16中の各手段が記憶装置18に記憶されたデータ等を使用して、作業者端末20や自動機制御システム22に送信するデータを生成する。
【0020】
なお、以下の実施例では、連携制御システム14が作業依頼データ34を入出庫管理システム12から受け取って処理をする例を説明する。しかし、連携制御システム14の内部に、括弧で示したような作業依頼データ生成手段13を設けることもできる。この作業依頼データ生成手段13は、倉庫管理に必要なデータを取得して、自動的に以下に説明するような作業依頼データ34を生成することができる。
【0021】
従来は、入出庫管理システム12から作業指示データ40が直接作業者端末20に渡されていた。本発明では、連携制御システム14が作業指示データ40を生成して作業者端末20に送信する。また、必要な様々な自動機制御データ44を生成して自動機制御システム22に向けて出力して、作業者を支援するように制御する。
【0022】
図の例では、連携制御システム14は、入出庫管理システム12から作業依頼データ34を受信する。そして、連携制御システム14は、この作業依頼データ34に基づいて次の処理を行う。即ち、連携制御システム14の作業依頼データ解析手段23は、作業をする作業者と自動機のタイムスケジュールを生成する。
【0023】
連携制御システム14の作業者管理手段24は、作業依頼データ34と作業スケジュールデータ36を使用して、作業者に対して作業内容を伝える作業指示データ40を生成する。また、自動機管理手段26は、自動機に対して作業内容を伝える自動機制御データ44を生成する。生成された作業指示データ40は優先順に作業指示キュー42に並べられる。また、生成された自動機制御データ44は優先順に自動機制御キュー46に並べられる。この優先度は、後で説明する作業スケジュールデータに含まれた作業終了時刻により決定される。
【0024】
図2は作業依頼データ34の具体例説明図である。
作業依頼データ34は、例えば、この
図2に示すようなデータを含んでいる。作業コード52は作業依頼データ34毎にそれぞれを区別するコードである。作業種別54では、搬入、搬出、検品等の表示をする。在庫ロケーション58は物品の保管場所である。移動元ロケーション60も移動先ロケーション62も在庫ロケーション58と同様のロケーションコードで区別する。在庫ロケーション58で作業する場合には、在庫ロケーション58は移動元ロケーション60である。作業した物品を自動機で運搬する場合には、運搬先が移動先ロケーション62である。
【0025】
作業種別に応じて、表示される項目が選択される。入庫作業では移動元ロケーション60と在庫ロケーション58を表示する。出庫作業では在庫ロケーション58と移動先ロケーション62を表示する。
【0026】
作業依頼データ34は、具体的には例えば、下記のような内容になる。
例1 物品Aを1個出荷する作業依頼の前に、物品Aを在庫ロケーション58XからYへ移動する。
例2 物品Aを在庫ロケーション58Yから移動先ロケーション62(出庫場所)へ移動する。
例3 物品Aが10個乗ったパレット10個を移動元ロケーション60(入荷場所) から移動先ロケーション62(格納先)に移動する(1パレットずつ運搬10回)。
例4 在庫ロケーション58Yで物品ABCDをピックアップして、移動先ロケーション62(出庫場所)へ移動させる。
【0027】
図3は作業スケジュールデータ36と自動機スケジュールデータ38の例を示す説明図である。
このデータは作業毎の作業の予定である。作業スケジュールデータ36は作業開始時刻68と作業終了時刻70と必要時間72と制限時刻74とを含む。制限時刻74はタイムリミットであるが、少し余裕を持たせて作業終了時刻70を決定する。このように予定した作業終了時刻70により作業の優先順が決められる。自動機スケジュールデータ38は、移動開始時刻76と移動経路78と移動終了時刻80とを含む。自動機は、複数の作業を兼務するとき、複数回発進と停止を繰り返す場合がある。それぞれ走行経路が指定され、移動のスケジュールが予定されている。
【0028】
図2で説明した作業依頼データ34と
図3で説明した作業スケジュールデータ36とが、作業者向けの作業指示データ40に含まれる。また、
図2で説明した作業依頼データ34と
図3で説明した自動機スケジュールデータ38が自動機向けの自動機制御データ44に含まれる。それぞれのデータは作業コード52によりリンクしている。これらのデータの具体的構造は
図5を用いて説明する。まず、
図4を用いて連携制御システム14の概略動作を説明する。
【0029】
図4は連携制御システム14の概略動作を示すフローチャートである。
まず、
図4(a)のフローチャートで、連携制御システム14は、ステップS11で入出庫管理システム12から作業依頼データ34を受信する。ステップS12では、作業指示データ40を生成する。ステップS13では、作業スケジュールデータ36を参照して、作業終了時刻70を読み取る。そして、ステップS14において、作業指示キュー42中で、作業指示データ40を作業終了時刻70の順に配列する。これらの処理を作業者管理手段24が実行する。
【0030】
なお、作業スケジュールデータ36と自動機スケジュールデータ38とは、作業依頼データ34の作成時に入出庫管理システム12で作成されてもよいし、作業指示データの作成時に連携制御システム14が作成してもよい。ステップS15では、自動機制御データ44を生成する。次のステップS16では作業スケジュールデータ36を参照して、作業終了時刻70を読み取る。そして、ステップS17において、自動機制御キュー46中で、自動機制御データ44を作業終了時刻70の順に配列する。これらの処理を自動機管理手段26が実行する。
【0031】
なお、作業者の作業終了と同時にその作業による物品を自動機が運搬する場合には、自動機スケジュールデータ38中の移動開始時刻76と作業終了時刻70とが一致しあるいはごく近似しているから、移動開始時刻76の順に配列してもよい。さらに、既に作業指示キュー42に配列した作業指示データ40の作業終了時刻70が変更になった場合には、ステップS18からステップS19に移行して作業指示キュー42や自動機制御キュー46中のデータの再配列をする。この処理を割付最適化手段32(
図1)が実行する。
【0032】
図5は、作業指示キュー42と自動機制御キュー46の例を示す説明図である。
図4(b)のフローチャートの説明をここで行う。上記のように、作業指示データ40や自動機制御データ44は、作業終了時刻70を基準にキューに自動的に並べられている。いずれかの作業者がステップS21で連携制御システム14に対して作業終了通知をしたとする。作業終了通知は作業者端末20から連携制御システム14送信される。このとき、ステップS22で、作業者から新たな作業指示要請通知が受信されたかを判断する。
【0033】
作業指示要請通知が受信された場合には、ステップS23に進み、作業割付手段30が作業指示キュー42を読み取る。そして、ステップS24で作業指示キュー42中の先頭に配列された作業指示データ40を読み出して作業者端末20に送信する。この作業に自動機の支援がある場合には、ステップS25からステップS26に移行して、自動機制御キュー46から該当する自動機の自動機制御データ44を読み出して送信する。
【0034】
図6は作業指示データ40の具体例説明図である。
作業者は作業者端末20(
図1)でこの作業指示データ40を受信する。作業者は受信した作業指示データ40に従って作業を進める。作業者コード82は作業者を区別するための識別データである。指定作業場所84は作業コード52で指定された作業を開始する場所を示す識別データである。自動機コード86は、作業コード52で指定された作業中に作業者が利用することができる自動機の識別データである。作業者は作業コード52から
図2に示した作業内容を確認して、指定作業場所で作業を開始することができる。
【0035】
図7は自動機制御データ44の具体例説明図である。
自動機に対しては、図のように、移動経路78と積載物品88とが通知される。移動経路78は、移動元ロケーションと移動先ロケーションと、どの経路を辿って移動するか等を指定するデータである。積載物品88は、どの物品を積載して移動するかを示すデータである。作業者が自動機に物品を乗せて作業者の終了報告をすると、自動機はその物品を移動先ロケーションに運ぶ。積載物品88は、複数の作業者からそれぞれ何種類かの物品を受け取って運ぶ場合にはその全ての物品のリストか含まれる。
【0036】
図8は作業者状態情報48の具体例説明図である。
作業者状態情報48は、作業者の直近の状態を示すデータである。作業開始予定時刻92と作業終了予定時刻94とは作業スケジュールデータ36の作業開始時刻68と作業終了時刻70と同じである。予定通りに作業が進むと作業開始時刻68と作業終了時刻70も同様の内容になる。様々な事情により予定が変更になった場合には、作業開始時刻68と作業終了時刻70とが記録される。
【0037】
作業者現在位置情報90は、例えば、作業者が保持するIDカード等をロケーションにある読み取り装置にかざして取得される。このほかに、作業者の保持する端末装置から発する無線やビーコンやICタグで、作業者の現在位置情報を自動的に認識することもできる。カメラで撮影した画像で認識することもできる。作業者がスキャナ等で作業対象の物品のタグ等をスキャンしたら自動的に作業開始時刻68が記録される。
【0038】
作業者が自動機に物品を乗せ終えて、自動機のスタート指示をすると作業終了時刻70が記録される。また、あるいは、作業者の保持する端末装置に作業完了情報を入力したとき作業終了時刻70が記録される。同時に上記の作業終了通知が作業者端末20から連携制御システム14に向けて送信される。
【0039】
図9は自動機状態情報50の具体例説明図である。
自動機コード86により指定された自動機は、1種類あるいは複数種類の作業を作業コード52で指定される。同一の作業者の複数種類の作業による物品を乗せる場合と、それぞれ別々の作業者の作業による複数の物品を乗せる場合とがある。自動機現在位置情報96は直近の自動機の位置である。自動機現在位置情報96は作業者の作業者現在位置情報90と同様の自動処理により取得できる。この例では移動経路78を移動して、移動開始予定時刻98と移動終了予定時刻99が設定されていたが、実際には移動開始時刻76と移動終了時刻80のとおりになったという状態が表示されている。
【0040】
自動機状態情報50に含まれたこのほかのデータは、
図3に示した自動機スケジュールデータ38と
図7に示した自動機制御データ44と同様のものである。この例では複数種類の作業コード52による複数種類の移動指示が含まれている。作業者状態情報48と同様に、移動開始時刻76と移動終了時刻80とは作業後の実績値が記録される。
【実施例2】
【0041】
図10は、具体的な作業者の作業と自動機の移動の連携説明図である。
上記の説明では、作業者が作業者端末20から連携制御システム14に作業指示の要請通知があったときに作業者に作業指示データ40を送信し、自動機に自動機制御データ44を送信するようにした。予定通りに作業を進めるには、作業スケジュールデータ36の作業開始時刻68が、その作業者が余裕をもってその作業に取りかかれるように設定されていればよい。また、ほぼ同時に自動機に自動機制御データ44を送信すれば、自動機も最適なタイミングで移動を開始できる。
【0042】
しかし、作業状態監視手段28が作業者状態情報48や自動機状態情報50を取得していれば、作業スケジュールデータ36や自動機スケジュールデータ38を見直しできる。その結果から常にこれらのスケジュールデータを更新して最適化しておけば、作業者による作業指示の要請通知の有無にかかわらず、自動機を独立に制御できる。即ち、自動機スケジュールデータ38の移動開始時刻76により優先度を決めて自動機制御データ44を自動機制御キュー46中に配列しておく。そして、移動開始時刻76が近づいたときに、無条件に自動機に対して自動機制御データ44を送信するとよい。このような方法により、以下のような自動機の最適化制御が可能になる。
【0043】
図10(a)の例では、作業者が作業を開始する前に、自動機が作業場所に到着して待機している。自動機の移動経路と移動先を自動機制御データ44(
図7)が示すとおりに設定し、その作業の開始予定時刻前に到着するように設定して自動機に送信する。自動機は自律制御により、作業者の作業場所に近い位置に停止して作業者の作業開始を待つ。
【0044】
作業者が自動機に作業対象の物品を乗せ終えると、作業者は作業社端末20を操作してスタート指示を出す。自動機はその後自動機制御データ44で指定された移動経路78を辿って指定された移動先まで物品を運搬する。自動機は、ひとつの作業で一往復したり、片道だけ移動したり、複数回行き来することもある。同じ作業者がピクアップした物品の量が多いときには複数回に分けて運搬することができる。
【0045】
図10(b)は複数の作業者がピックアップした物品を順に積んで、指定された移動先に運ぶ処理の例である。同じトラックに積載する複数の物品を複数の作業者が手分けしてピックアップするような場合には、1台の自動機が順番に複数の物品を受け取って移動することができる。
【0046】
図10(c)は、作業者のピックアップした物品が1台の自動機で乗せきらない場合に、もう一台の自動機が適切なタイミングで作業場所に到着する。追加の物品をそのもう一台の自動機に乗せて運搬させる。2台の自動機はそれぞれ自立制御されるので、作業者は運搬を意識することなくピックアップ作業が続けられる。
【0047】
上記のように、本発明では、自動機は作業者の作業とは非同期に別個独立に制御される。従来は作業者の要求や指示に従って自動機を移動させていたが、それでは、上記の
図10(b)や(c)のような自動機制御は難しい。また、作業者が自動機の制御を意識すると、自動機の効率的な運用が図れない。一方、自動機を独立に画一的に制御すると、
図10(b)のような制御はきわめて難しい。
【0048】
そこで、倉庫管理のために順次生成される作業依頼データ34を受け入れて、作業者の作業と自動機の制御とを必要に応じて適切に連携させる本発明の連携制御システム14が有効に機能する。特に、例えば、入庫処理や集中する時間帯がある。このとき入庫物品の受け入れスペースを早く空けないと続いて到着するトラックの入庫処理に遅れが生じる。また、出庫処理が集中する時間帯がある。この場合には出庫スペースをフルに有効に活用して物品の配送車への積載作業の効率化を図る必要がある。
【0049】
物品を運搬して入庫処理を済ませた配送車が今度は別の物品を積載して出発することがある。この場合も、配送車の倉庫入り口での待機時間を最小にしなけれならない。割付最適化手段32は、作業スケジュールデータ36と作業者状態情報48を解析して、作業者を適正配置し、その作業者の作業を効率よく支援するように自動機を運行させる。さら、自動機の移動経路と移動時刻の調整により移動中の渋滞を防止して、計画通りの正確な作業の進行を確保することができる。
【0050】
以上の
図10のように、作業者と自動機とは独自に制御されるが、自動機は作業者の作業が最大効率でできるように制御される。即ち、自動機は、
図10(a)に示すように、作業者による呼び出し等の処理無しで、自動機は作業者の作業開始予定時刻92前に作業場所に到着するように移動終了時刻80が設定される。
【0051】
このとき、渋滞調整が必要ならば、作業開始予定時刻92前の一定期間内で、他に支障が無い範囲で移動終了時刻80を前後させる。従って、作業者の指示で自動機を呼ぶ場合に比べて、自動機の移動タイミングに自由度があり、かつ、最適化できる。例えば、出庫作業では、同じ場所からピックアップする物品の量に応じてタイムスケジュールを計算し、例えば、複数台の自動機で物品を運搬をさせるように計画することができる。
【0052】
図11は倉庫の自動機移動経路の一例を示す説明図である。
L1〜L28は物品を保管する棚(在庫ロケーション)を示す。A1〜A4は入庫物品を受け入れる入庫エリア、X1〜X4は出庫物品を集積する出庫エリアである。図中の矢印は、自動機の移動方向で、M1、M2、M3は物品を入庫エリアから保管棚に移動させる場合の自動機の移動経路である。また、N1、N2、N3は、保管棚から出庫エリアに移動させる場合の自動機の移動経路である。
【0053】
この図でせわかるように、自動機の移動経路には、一方通行の部分と双方向通行の部分とが混在する。広い通路も狭い通路もある。図の例では、入庫エリアと出庫エリアを別々に設けたが、物品を受け入れてからそのトラックに入れ替わりに新たな物品を積み込むことも多く、入庫エリアと出庫エリアとが隣接する場合もある。これらを全て条件に入れて自動機の移動経路と時間を選択する。
【0054】
ある自動機に移動経路78(移動元と移動先と走行経路)と起動開始時刻が指定されると、その自動機は自律制御により移動する。従って、例えば、指定された経路で渋滞が発生すると全体として倉庫管理の能率が低下する。そこで、割付最適化手段32は、同じ移動経路を移動する他の全ての自動機の自動制御スケジュールデータと自動機状態情報50とを参照する。
【0055】
こうして、渋滞の発生を予測する。渋滞が発生すると全ての作業のスケジュールに狂いが生じるおそれがある。既存のWCSにこの調整機能を付与することができる。また、連携制御システム14にこの調整機能を付与することもできる。例えば、各自動機の移動タイミングを、移動経路78上でシフトさせる。例えば、同一経路を同じ時間帯に使用する自動機の数が一定以上の場合には、キュー配列を変更する。渋滞を避けて迂回する経路を自動機制御データ44に含めてもよい。緊急の出荷等のために新たな作業者指示データや自動機制御データ44を優先的に割り込みさせる。作業者と自動機とを独立に制御するので、作業者の作業の遅れが発生しないように、連携システム側でフレキシブルに自動機を制御することができる。