(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918669
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】無線給電装置およびこれを用いた搬送システム、ならびに無線給電装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/05 20160101AFI20210729BHJP
B60L 50/40 20190101ALI20210729BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20210729BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20210729BHJP
H02J 50/50 20160101ALI20210729BHJP
【FI】
H02J50/05
B60L50/40
B60M7/00 X
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/50
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-190771(P2017-190771)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-68580(P2019-68580A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉野 正芳
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】北林 智
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 基照
【審査官】
杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−324306(JP,A)
【文献】
特開2000−251029(JP,A)
【文献】
特開2009−201211(JP,A)
【文献】
特開2012−010546(JP,A)
【文献】
特開2012−147632(JP,A)
【文献】
特開2013−074659(JP,A)
【文献】
特開2017−034919(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0038902(US,A1)
【文献】
国際公開第2016/204250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 50/50
B60M 7/00
H02J 7/00
H02J 50/05
H02J 50/40
H03H 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電電極部材(13)と、
前記送電電極部材(13)と対向して、前記送電電極部材(13)との間の静電容量を用いた電界結合によって前記送電電極部材(13)から無線で電力を受け取る受電電極部材(14)と、
前記送電電極部材(13)に印加する高周波の電力を生成する高周波生成部(31)と、
前記送電電極部材(13)に接続され、インピーダンスの異なる1つ以上の整合回路(42〜44)を有する切替整合器(32)と、
前記高周波生成部(31)と前記切替整合器(32)との間に設けられ、前記受電電極部材(14)の数によって変化する前記送電電極部材(13)からの反射波に基づいて、前記高周波生成部(31)から出力される高周波と前記送電電極部材(13)における発振との整合を検出する検出回路部(33)と、
前記検出回路部(33)で検出した整合に基づいて、前記切替整合器(32)の前記整合回路(42〜44)を切り替える制御部(34)と、
を備える無線給電装置。
【請求項2】
前記切替整合器(32)は、1つ以上の前記整合回路(42〜44)と前記送電電極部材(13)との接続を切り替えることにより、段階的にインピーダンスを変更する請求項1記載の無線給電装置。
【請求項3】
前記制御部(34)は、前記高周波生成部(31)を停止した後、前記切替整合器(32)の前記整合回路(42〜44)と前記送電電極部材(13)との接続を切り替え、その後に前記高周波生成部(31)を再起動する請求項1または2記載の無線給電装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項記載の無線給電装置(12)と、
前記受電電極部材(14)を有する移動体(11)と、を備える搬送システムであって、
前記送電電極部材(13)は、前記移動体(11)と対向して、線状に延びる板状に形成され、
前記制御部(34)は、前記送電電極部材(13)から電力を受け取る前記移動体(11)の数によって変化する前記高周波生成部(31)から出力される高周波と前記送電電極部材(13)における発振との整合に基づいて、前記切替整合器(32)の前記整合回路(42〜44)を切り替える搬送システム。
【請求項5】
電界共鳴を利用して送電電極部材から移動体の受電電極部材へ無線で電力を供給する無線給電システムの制御方法であって、
前記送電電極部材に対向する前記移動体の台数を初期値として設定する工程と、
設定した前記初期値にあわせて、前記送電電極部材に接続されている整合回路のインピーダンスを設定する工程と、
前記送電電極部材に印加する高周波を生成する高周波生成部の出力と前記送電電極部材の発振とが整合しているか否かを検出する工程と、
前記高周波生成部の出力と前記送電電極部材の発振とが整合していないとき、前記初期値を増減する工程と、
前記初期値を増減しても前記高周波生成部の出力と前記送電電極部材の発振とが整合しないとき、前記高周波生成部を停止する工程と、
を含む無線給電装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線給電装置およびこれを用いた搬送システム、ならびに無線給電装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電界共鳴を利用した無線給電装置の場合、送電から受電までの整合が電力の伝達効率に大きな影響を与える。仮に送電電極から電力を受け取る受電電極の数が一定であれば、この受電電極の数にあわせた整合回路を設定することにより、電力の伝達効率の最適化が図られる。一方、送電電極から数が変化する複数の対象物へ電力を伝達する場合、対象物の数が変化すると整合にも変化が生じる。
例えば、送電電極から電力を受け取る対象物の数、つまり受電電極の数が変化する場合、送電電極から電力を受け取る受電電極の数を検出する必要がある。そして、検出した受電電極の数にあわせた整合回路の制御が必要となる。この場合、送電電極への進入側および送電電極からの退出側にそれぞれ対象物を検出する光学的な装置を設け、送電電極から電力を受け取る対象物の数を検出することが考えられる。これにより、整合回路は、光学的に検出された対象物の数に基づいて制御される。
【0003】
しかしながら、光学的に対象物の数を特定する場合、送電電極にあわせて対象物が進入および退出するために特定の進入口および退出口を設ける必要がある。また、電力の伝達を必要としない機器や物体が送電電極に進入すると、これらの機器や物体が誤って検出され、送電電極から電力を受け取る対象物の数を特定できないおそれがある。その結果、対象物の数に合わせた整合回路の制御が困難となり、電力の伝達効率の低下を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2014/002190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、対象となる受電電極部材の数を光学的に検出することなく、高周波生成部から出力される高周波と送電電極部材における発振との整合を図り、伝達効率を向上する無線給電装置およびこれを用いた搬送システム、ならびに無線給電装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1または請求項5記載の発明では、制御部は、検出回路部で検出した整合に基づいて、切替整合器の整合回路を切り替える。すなわち、検出回路部は、高周波の電力を生成する高周波生成部と、送電電極部材に接続されている切替整合器との間に設けられている。検出回路部は、受電電極部材の数によって変化する送電電極部材からの反射波に基づいて、高周波生成部から発振される高周波と送電電極部材における発振との整合を検出する。制御部は、検出回路部で整合を検出することにより、これらが整合しているとき、切替整合器において適切な整合回路が選択されていると判断する。一方、制御部は、検出回路部で整合が検出されないとき、切替整合器において適切な整合回路が選択されていないと判断して、整合回路を切り替える。これにより、制御部は、検出回路部で検出した、高周波生成部から発振される高周波と送電電極部材における発振との整合から、これらの整合が図られる適切な整合回路を選択する。したがって、光学的な手段に依存することなく、受電電極部材の数に合わせた整合を図ることができ、伝達効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態による無線給電装置の概略的な構成を示す模式図
【
図2】一実施形態による無線給電装置を適用した搬送システムの構成を示す模式図
【
図3】一実施形態による無線給電装置を適用した搬送システムを示す模式図
【
図4】一実施形態による無線給電装置の切替整合器の電気的な回路構成を示す概略図
【
図5】一実施形態による無線給電装置の検出回路部の電気的な回路構成を示す概略図
【
図6】一実施形態による無線給電装置の検出回路部の電気的な回路構成を示す概略図
【
図7】一実施形態による無線給電装置において、整合出力と、高周波生成部と送電電極部材との間の整合との関係を説明する概略図
【
図8】一実施形態による無線給電装置による処理の流れを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、無線給電装置の一実施形態について図面に基づいて説明する。
まず、無線給電装置を適用した搬送システムについて説明する。
図2および
図3に示すように、搬送システム10は、移動体11および無線給電装置12を備える。無線給電装置12は、送電電極部材13および受電電極部材14を備えている。送電電極部材13は、例えば工場や倉庫など、搬送システム10を用いる設備15に設けられている。移動体11は、図示しない設備に設定されている走行路16に沿って移動する。移動体11は、
図2に示すように整流回路部21、バッテリ22、制御部23および駆動部24を有している。整流回路部21は、受電電極部材14で受け取った高周波を直流に整流する。バッテリ22は、例えばリチウムイオン電池などの二次電池で構成され、整流回路部21で整流された電力を貯える。制御部23は、バッテリ22への充電を制御するとともに、駆動部24で発生する駆動力を制御する。駆動部24は、モータ25および車輪26を有しており、モータ25によって車輪26を回転駆動する。移動体11は、駆動部24で発生する駆動力によって走行路16に沿って移動する。移動体11は、
図3に示すように送電電極部材13と反対側の端面に荷物などを搭載する荷台27を有している。
【0009】
本実施形態の搬送システム10の場合、送電電極部材13は、移動体11が移動する走行路16の一部に設けられている。移動体11は、走行路16に沿って走行する際に、走行路16の一部に設けられた送電電極部材13と対向することにより、送電電極部材13から駆動用の電源となる電力を受け取る。移動体11は、受電電極部材14で受け取った電力を、整流回路部21で整流した後、バッテリ22に貯える。送電電極部材13の全長は、1台の移動体11の全長よりも長く設定されている。送電電極部材13の全長を延長することにより、2台以上の移動体11が送電電極部材13から同時に電力を受け取ることができる。
【0010】
無線給電装置12を構成する送電電極部材13は、一対の並列するレール状に設けられている。送電電極部材13は、直線状に限らず、設備15の構造に応じた曲線状や屈曲状であってもよい。送電電極部材13は、例えばアルミニウム、銅あるいは鉄などの材料で形成され、板状である。無線給電装置12を構成する受電電極部材14は、移動体11に設けられている。受電電極部材14は、送電電極部材13と同様に導電性の材料で形成されている。受電電極部材14は、一対の送電電極部材13に対応して移動体11に一対設けられている。受電電極部材14は、送電電極部材13と対向している。この場合、送電電極部材13と受電電極部材14とは、所定の間隔を形成しつつ非接触で対向している。
【0011】
このように、送電電極部材13と受電電極部材14との間に隙間を形成することにより、これらの間には誘電体となる空気が満たされる。これにより、送電電極部材13と受電電極部材14との間には、静電的な容量が確保される。そのため、送電電極部材13から受電電極部材14には、電界結合を利用して無線による電力の供給が行なわれる。
【0012】
次に本実施形態の無線給電装置12について詳細に説明する。
図1に示すように無線給電装置12は、上述した送電電極部材13および受電電極部材14に加え、高周波生成部31、切替整合器32、検出回路部33および制御部34を備えている。高周波生成部31、検出回路部33および制御部34は、制御盤35として構成されている。送電電極部材13は、高周波生成部31に接続している。高周波生成部31は、高周波を生成するE級インバータによって構成され、生成した高周波の電力を送電電極部材13に印加する。高周波生成部31は、制御用電源36および主電源37に接続している。高周波生成部31は、制御用電源36から得られた電力によって制御されるとともに、主電源37から得られた電力を用いて高周波を生成する。なお、高周波生成部31は、E級インバータに限らず、高周波を生成可能であれば任意の構成とすることができる。
【0013】
切替整合器32は、送電電極部材13に接続されている。切替整合器32は、
図4に示すように整合回路群41を有している。整合回路群41は、コイルおよびコンデンサを含み、特定のインピーダンスに設定されたLC回路である。本実施形態のように無線給電装置12を搬送システム10に適用する場合、整合回路群41を構成する整合回路の数は、送電電極部材13から電力を受け取り可能な移動体11の台数にあわせて設定される。
図4に示す切替整合器32は、4台の移動体11にあわせて3つの整合回路42、整合回路43、整合回路44を有している。整合回路42は、コイル421、コンデンサ422およびスイッチ423を有している。同様に、整合回路43は、コイル431、コンデンサ432およびスイッチ433を有している。整合回路44は、コイル441、コンデンサ442およびスイッチ443を有している。スイッチ423、スイッチ433およびスイッチ443は、機械的なスイッチでもよく、スイッチング素子などの電子的なスイッチでもよい。スイッチ423、スイッチ433およびスイッチ443は、制御部34によってオンまたはオフが制御される。
【0014】
例えば、送電電極部材13と対向する移動体11の数が1台のとき、整合回路42のスイッチ423、整合回路43のスイッチ433、および整合回路44のスイッチ443はすべてオフされる。これに対し、送電電極部材13と対向する移動体11の数が2台のとき、整合回路42のスイッチ423がオンされる。また、送電電極部材13と対向する移動体11の数が3台のとき、整合回路43のスイッチ433がオンされる。さらに、送電電極部材13と対向する移動体11の数が4台のとき、整合回路44のスイッチ443がオンされる。このように、切替整合器32は、整合回路42のスイッチ423、整合回路43のスイッチ433および整合回路44のスイッチ443をオンまたはオフすることにより、送電電極部材13と対向する移動体11の数に合わせてインピーダンスを変更する。なお、上記の切替整合器32の構成は一例であり、整合回路群41の構成、移動体11および整合回路42〜44の数、ならびに移動体11にあわせて組み合わせる整合回路42〜44などは、いずれも任意に変更することができる。
【0015】
検出回路部33は、
図1に示すように高周波生成部31と切替整合器32との間に設けられている。検出回路部33は、
図5に示すような回路構成、または
図6に示すような回路構成を有している。検出回路部33は、高周波生成部31から出力される高周波と、送電電極部材13における高周波の発振との整合を検出する。具体的には、検出回路部33は、受電電極部材14の数すなわち移動体11の数によって整合が変化する送電電極部材13からの反射波の出力に基づいて、高周波生成部31と送電電極部材13との間の整合を検出する。以下、反射波の出力は、「整合出力」という。
【0016】
図7に示すように、整合出力は、高周波生成部31と送電電極部材13との整合の有無によって変化する。すなわち、整合出力は、高周波生成部31と送電電極部材13とが整合しているとき、低出力P1となる。一方、整合出力は、高周波生成部31と送電電極部材13とが整合していないとき、低出力P1よりも大きな高出力P2となる。例えば、送電電極部材13から電力を受け取る移動体11の数と切替整合器32の整合回路42〜44のインピーダンスとが整合しているとき、整合出力は低出力P1となる。検出回路部33は、この整合出力を検出することにより、高周波生成部31から出力される高周波と送電電極部材13における高周波の発振とが整合しているか否か、すなわち切替整合器32の整合回路42〜44のインピーダンスと移動体11の数とが整合しているか否かを検出する。検出回路部33は、検出した整合出力を制御部34へ出力する。
【0017】
制御部34は、CPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータで構成されている。制御部34は、ROMに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、ソフトウェア的に切替整合器32を制御する。なお、制御部34は、ハードウェア的またはソフトウェアとハードウェアとの協働によって切替整合器32を制御してもよい。制御部34は、検出回路部33で検出された整合出力に基づいて、切替整合器32の整合回路42のスイッチ423、整合回路43のスイッチ433、整合回路44のスイッチ443を切り替える。
【0018】
次に、上記の構成による無線給電装置12における制御部34の処理の流れを
図8に基づいて説明する。
処理が開始されると、制御部34は、送電電極部材13から電力を受け取る受電電極部材14の数を初期値Numに初期化する(S101)。この場合、受電電極部材14の数は、移動体11の数に一致する。すなわち、制御部34は、走行路16を走行する移動体11のうち、充電のために送電電極部材13から電力を受け取る移動体11の数を初期値Numと設定する。この初期値Numは、送電電極部材13から電力を受け取り可能な移動体11の数にあわせて任意に設定される。本実施形態のように送電電極部材13から4台の移動体11に電力を供給する場合、制御部34は初期値NumをNum=1またはNum=2などのように設定する。制御部34は、移動体11の数の初期値Numにあわせて、切替整合器32における整合回路42〜44を初期値Numに設定する(S102)。すなわち、制御部34は、切替整合器32における整合回路42〜44のインピーダンスを、S101で設定した移動体11の数の初期値Numに合わせる。
【0019】
制御部34は、検出回路部33から出力される整合出力を取得する(S103)。そして、制御部34は、取得した整合出力が低出力P1であるか否かを判断する(S104)。制御部34は、取得した整合出力が低出力P1であると判断したとき(S104:Yes)、S103へリターンし、整合出力の取得を継続する。すなわち、検出回路部33から出力された整合出力が低出力P1であるとき、S101で設定した移動体11の数の初期値NumとS102で設定した切替整合器32における整合回路42〜44の初期値Numとは整合している。そのため、切替整合器32において設定されている整合回路42〜44は、充電の対象として送電電極部材13と対向する移動体11の数に合致したものとなっている。したがって、制御部34は、整合出力に変化が生じるまで整合出力の監視を継続する。例えば、送電電極部材13に新たな移動体11が進入し、送電電極部材13から電力を受け取る移動体11の数が変化すると、整合出力に変化が生じる。制御部34は、この整合出力の変化まで待機する。
【0020】
一方、制御部34は、S103で取得した整合出力が低出力P1でないと判断したとき(S104:No)、切替整合器32における整合回路42〜44を設定値Num+1に変更する(S105)。すなわち、制御部34は、移動体11の数と切替整合器32の整合回路42〜44とが整合しておらず、取得した整合出力が高出力P2であると判断する。そこで、制御部34は、切替整合器32における整合回路42〜44を、初期値Numよりも1つ大きなNum+1にあわせて切り替える。言い換えると、制御部34は、切替整合器32における整合回路42〜44を、移動体11の数Num+1に対応するインピーダンスとなる整合回路42〜44に切り替える。そして、制御部34は、切替整合器32における整合回路42〜44を切り替えた後、検出回路部33から出力される整合出力を取得し(S106)、取得した整合出力が低出力P1であるか否かを判断する(S107)。
【0021】
制御部34は、取得した整合出力が低出力P1であると判断したとき(S107:Yes)、整合回路42〜44の初期値NumをNum=Num+1に更新する(S108)。すなわち、S102で設定した整合回路42〜44の初期値Numは、S101で設定した移動体11の数の初期値Numに一致していなかったことになる。つまり、S101で設定した移動体11の数の初期値Numに一致する整合回路42〜44の初期値は、Num+1であったことになる。そこで、制御部34は、整合回路42〜44の初期値Numを、Num=Num+1に更新する。そして、制御部34は、更新した初期値Numを用いてS102以降の処理を継続する。
【0022】
制御部34は、S106で取得した整合出力が低出力P1でないと判断したとき(S107:No)、切替整合器32における整合回路42〜44を設定値Num−1に変更する(S109)。すなわち、制御部34は、移動体11の数と切替整合器32の整合回路42〜44とが整合しておらず、取得した整合出力が高出力P2であると判断する。そこで、制御部34は、切替整合器32における整合回路42〜44を、初期値Numよりも1つ小さなNum−1にあわせて切り替える。言い換えると、制御部34は、切替整合器32における整合回路42〜44を、移動体11の数Num−1に対応するインピーダンスの整合回路42〜44に切り替える。そして、制御部34は、切替整合器32における整合回路42〜44を切り替えた後、検出回路部33から出力される整合出力を取得し(S110)、取得した整合出力が低出力P1であるか否かを判断する(S111)。
【0023】
制御部34は、S111で取得した整合出力が低出力P1であると判断したとき(S111:Yes)、整合回路42〜44の初期値NumをNum=Num−1に更新する(S112)。すなわち、S102で設定した整合回路42〜44の初期値Numは、S101で設定した移動体11の数の初期値Numに一致していなかったことになる。つまり、S101で設定した移動体11の数の初期値Numに一致する整合回路42〜44の初期値は、Num−1であったことになる。そこで、制御部34は、整合回路42〜44の初期値Numを、Num=Num−1に更新する。そして、制御部34は、更新した初期値Numを用いてS102以降の処理を継続する。
【0024】
制御部34は、S110で取得した整合出力が低出力P1でないと判断したとき(S111:No)、高周波生成部31からの高周波の生成を停止する(S113)。すなわち、制御部34は、移動体11の数と切替整合器32の整合回路42〜44とが整合しておらず、取得した整合出力が高出力P2であると判断する。このように、Num±1であっても整合がないとき、制御部34は、初期値Numの設定に誤りがあるか、または機器の短絡などを想定する。したがって、制御部34は、高周波生成部31を停止し、初期値Numの再設定および機器の点検を促す。
以上の手順によって、制御部34は、検出回路部33で検出する整合出力に基づいて、移動体11の数と切替整合器32の整合回路42〜44との整合を図る。
【0025】
以上説明した一実施形態では、制御部34は、検出回路部33で検出した整合出力に基づいて、切替整合器32の整合回路42〜44を切り替える。検出回路部33は、受電電極部材14の数によって変化する送電電極部材13からの整合出力に基づいて、高周波生成部31から発振される高周波と送電電極部材13における発振との整合を検出する。制御部34は、検出回路部33で整合を検出することにより、これらが整合しているとき、切替整合器32において適切な整合回路42〜44が選択されていると判断する。一方、制御部34は、検出回路部33で整合が検出されないとき、切替整合器32において適切な整合回路42〜44が選択されていないと判断して、整合回路42〜44を切り替える。これにより、制御部34は、検出回路部33で検出した、高周波生成部31から発振される高周波と送電電極部材13における発振との整合から、これらの整合が図られる適切な整合回路42〜44を選択する。したがって、光学的な手段に依存することなく、対象となる受電電極部材14の数に合わせて整合を図ることができ、伝達効率を向上することができる。
【0026】
また、一実施形態では、切替整合器32は、インピーダンスの異なる複数の整合回路42〜44を有している。そして、切替整合器32は、1つ以上の整合回路42〜44と送電電極部材13との接続を切り替えることにより、インピーダンスを段階的に変更する。そのため、送電側の切替整合器32でインピーダンスが変更され、受電側においては整合のための処理が不要である。したがって、1つの送電電極部材13に対して1つ以上の受電電極部材14が電力の供給を受ける場合でも、簡単な構成で整合を図ることができる。さらに、一実施形態の場合、高周波生成部31と送電電極部材13との間の整合は、段階的なインピーダンスの変化を含む整合回路42〜44の切り替えで達成される。したがって、連続的に整合を図る場合と比較して、制御を容易にすることができる。
【0027】
一実施形態では、無線給電装置12を搬送システム10に適用している。搬送システム10の場合、充電のために送電電極部材13から電力の供給を受ける移動体11は、その数が刻々と変化する。このように送電電極部材13から電力を受ける移動体11の数が刻々と変化する場合でも、整合出力に基づく整合回路42〜44の切り替えという処理によって、高周波生成部31と送電電極部材13との整合が図られる。送電電極部材13から電力を受ける移動体11の数は、送電電極部材13の全長に相関する整数となり、既知の値となる。そのため、整合回路42〜44の数は、この移動体11の数に合わせて設定される。これにより、移動体11の数によって高周波生成部31と送電電極部材13との整合が変化する場合でも、整合出力に基づいて切替整合器32の整合回路42〜44を切り替えることにより、高周波生成部31と送電電極部材13との整合が容易に図られる。したがって、複雑な処理や構成を必要とすることなく、安全で効率の高い電力の伝達を達成することができる。
【0028】
また、一実施形態の搬送システム10では、整合出力に基づいて移動体11の数にあわせた高周波生成部31と送電電極部材13との整合が図られる。そのため、フォトディテクタなどの光学的な検出装置を必要としない。これにより、設備15に搬送システム10を設置する場合、光学的な検出を起因とする誤検出、および誤検出にともなう整合の破綻が回避される。したがって、人や物体の移動が生じやすい設備においても、それらの影響を排除することができ、安全で効率の高い電力の伝達を達成することができる。
【0029】
(その他の実施形態)
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
上述の一実施形態では、切替整合器32における整合回路42〜44の切り替えは、高周波生成部31を停止することなく行なっている。しかし、
図8に示すS105、S109において整合回路42〜44を変更するとき、その変更の前に高周波生成部31を停止し、変更の後に高周波生成部31を再起動する構成としてもよい。このように整合回路42〜44を切り替えるとき、高周波生成部31を停止するとともに、切り替え後に高周波生成部31を再起動することにより、例えば過渡期における突入電流などの発生が低減される。したがって、さらなる安全性の向上および機器の耐久性の向上を図ることができる。
【0030】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0031】
図面中、10は搬送システム、11は移動体、12は無線給電装置、13は送電電極部材、14は受電電極部材、31は高周波生成部、32は切替整合器、33は検出回路部、34は制御部、42〜44は整合回路を示す。