(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
[課題等]
従来技術例の飛行体利用劣化診断システムにおける課題等について補足説明する。
【0017】
図23は、実施の形態に対する比較例の飛行体利用劣化診断システムの第1構成例として、人によって目視画像確認作業等で劣化箇所を診断する方式の場合における、対象物5の空撮の例を示す。対象物5は、所定の建築物やインフラ設備等の劣化診断対象構造物である。本例では、対象物5の側壁面を診断対象領域とする場合を示す。この方式では、対象物5の周囲空間における所定のルート上において、ドローン91等の飛行体を自律航行させる。計算機92等の制御装置から、無線通信での制御に基づいて、ドローン91を、設定されたルート上で自律航行させる。ドローン91の航行に伴い、ドローン91に搭載のカメラによって、対象物5の表面の所定の領域(診断対象領域)を連続的に撮影する。カメラは、所定の撮影設定及び撮影制御がされる。所定の撮影設定は、カメラの撮影方向、撮影タイミング、及び撮影条件等の設定である。撮影方向は、ドローン91及びカメラの位置から撮影箇所への方向である。撮影タイミングは、例えば所定の時間間隔での静止画の連続撮影のタイミング(あるいは所定のフレームレートでの動画の撮影タイミングと捉えてもよい)である。撮影条件は、公知の各種のカメラパラメータ(焦点距離等)の設定値で規定される条件である。上記ルート及び撮影設定は、予め、対象物5の所定の領域を撮影及び診断するために設定される。
【0018】
上記空撮により、時空間の系列で連続する複数の画像である連続画像901が得られる。計算機92は、ドローン91から、連続画像901による画像群を含むデータ(診断データと記載する場合がある)を得る。ユーザである診断者は、その診断データの画像群について、目視画像確認作業等によって、対象物5の劣化箇所902等を検出する診断作業を行う。人が大量の空撮画像から劣化箇所を発見することには、手間や時間、コストを有する。このような診断作業を支援、あるいは自動化し、コスト等を低減したい。そのために、他の比較例の飛行体利用劣化診断システムとして、以下が挙げられる。
【0019】
図24は、比較例の飛行体利用劣化診断システムの第2構成例として、計算機92によって診断作業を支援あるいは自動化する方式の場合における、対象物5の空撮の例を示す。
図24の(A)は、対象物5に関する過去の日時での空撮時の状況を、(B)は、同じ対象物5に関する現在の日時での空撮時の状況を示す。いずれも、ドローン91のルート設定が同じとする。この比較例の診断システムの方式では、以下のように、計算機92によって、現在の空撮画像と過去の空撮画像との比較に基づいて劣化箇所等を自動的に診断、検出する診断処理を行う。
【0020】
(A)の過去の診断及び空撮の日時に、計算機92は、ドローン91から、連続画像901Aによる画像群を含むデータ(参照データと記載する場合がある)を得る。計算機92は、参照データを保存し、診断処理を行い、診断結果情報を保存する。また、その後、(B)の現在の診断及び空撮の日時に、計算機92は、ドローン91から、連続画像901Bによる画像群を含むデータ(診断データ)を得る。計算機92は、診断データを保存し、診断処理を行い、診断結果情報を保存する。
【0021】
上記空撮及び診断は、対象物5に応じた所定の日時毎に行われる。例えば、劣化状態を診断する目的の場合に、その目的に応じた年単位や月単位等の所定の時間単位の計画で、上記空撮等が行われる。これにより、その時間単位の日時毎に、連続画像や診断結果情報等が得られ、DB等に蓄積、保存される。
【0022】
また、計算機92は、各空撮時、ドローン91から、空撮画像データや撮影設定情報だけでなく、各種のセンサのセンサデータ等も取得する。センサデータとしては、GPS等に基づいた位置情報、電子コンパスやジャイロセンサや加速度センサ等に基づいた、方位、速度、加速度等の情報が挙げられる。診断の際にはそれらの情報も利用する。
【0023】
計算機92は、ある診断日時での対象物5の診断処理の際、現在の診断データの画像群(診断画像群)と、それに対応する過去の参照データの画像群(参照画像群)とを比較して、劣化箇所等を判定、検出する。その際、計算機92は、過去の画像群と現在の画像群とで、同じ撮影箇所を含んだ、画像内容が対応している画像同士を、比較対象画像として対応付け(マッチングと記載する場合がある)を行う。即ち、計算機92は、候補となる過去と現在の画像群から、各々1枚以上の画像を選択して、選択した画像の組を、比較対象画像として対応付ける。計算機92は、比較対象画像における過去と現在の画像同士において、画像レベルでの画像解析処理を行って画像内容を比較して、両者の差異、差分を判定する。これにより、計算機92は、空撮画像から、対象物5の表面の領域における劣化、異常、変化等の状態の箇所(劣化箇所と総称する)を判定、検出する。
【0024】
また、計算機92は、例えば、劣化等の種類(例えばひび割れ、さび、腐食、剥離等)やその劣化度合い等を所定の処理によって判定する。計算機92は、例えば、劣化度合いが閾値よりも大きい劣化箇所を検出する。計算機92は、検出した劣化箇所等を含む診断結果情報を、DB等に格納し、画面でユーザに対して出力する。ユーザは、画面で、劣化箇所を含んだ画像等を確認する。
【0025】
上記比較例の診断システムでは、過去と現在の大量の空撮画像を対応付け及び比較する処理が必要である。しかし、このような対応付け処理及び比較処理を含む処理自体に難しさがあり、診断処理の効率や精度の点で課題がある。計算機92は、過去及び現在の各画像群から、対応付ける画像同士を選択する必要がある。そのためには、同じ箇所を含んでいるか等の画像内容の判断が必要であり、その判断には、画像レベルの画像解析処理が必要である。そのような処理を、過去及び現在の多数の画像について行う必要がある。大量の画像データの処理に時間を要する。その結果、診断処理に長時間を要し、効率が良くない。空撮後にすぐに診断結果を得ることも難しい。
【0026】
また、基本的に、各診断日時には、同じ対象物5の同じ領域を空撮するように、ルートや撮影設定等が制御される。しかし、その時の状況の違いから、過去及び現在の空撮画像の間には、同じ箇所を対象とした画像同士であっても、画像内容に揺れやずれ等の違いが生じる。その違いが大きいほど、画像同士の対応付け及び比較が難しくなり、診断の精度を上げにくくなる。
【0027】
各日時の状況の違いの例として、設定ルート上におけるドローン91の実際の航行ルートには揺れやずれが生じ得る。例えば、時期や天候等に応じて、風速等の状態が異なる。そのため、ドローン91の位置や速度や向きには揺れやずれが生じる。これにより、空撮画像内容にも違いが生じる。航行開始時点から所定時間経過後の同じ時点でも、ドローン91及びカメラが同じ位置等の状態になるとは限らないため、画像内容には違いが生じる。単純に同じ時点の画像同士を対応付ければよいというものではない。また、設定ルートに伴う、カメラの撮影設定(撮影方向、撮影タイミング、及び撮影条件等)に基づいて、実際の撮影時には、太陽光や影等の影響から、対象物5の領域における光の状態が異なる。そのため、過去と現在の空撮画像内容には、鮮明さ等で違いが生じる。
【0028】
図25は、上記比較例の診断システムで、過去と現在の画像群の対応付け、及び画像同士の比較の処理に関する難しさについて示す説明図である。
図25の(A)は、過去の日時の参照データの画像群と、現在の日時の診断データの画像群との対応付け、及び比較の例を示す。横方向を時系列とした連続画像を示す。各四角は1枚の画像を示す。星マークは、対象物5の領域におけるある同じ箇所の例を説明用に示す。上記のように、対応付け処理は、画像レベルのマッチング処理であり、処理が難しい。計算機92は、過去の画像群と現在の画像群とで、同じ箇所を含む各々1枚以上の画像同士を、比較対象画像として対応付ける。本例では、過去の3枚の画像と現在の2枚の画像とが対応付けできる場合を示す。計算機92は、対応付け後の比較対象画像において、過去の画像と現在の画像とで、1枚ずつ、比較処理を行う。比較処理によって、過去と現在との差分に基づいて、劣化箇所が判定、検出される。
【0029】
図25の(B)、(C)は、比較対象画像の例を示す。
図25の(B)は、過去の日時(例えば2016年1月1日)の1枚の画像内容の例を簡略的に示す。
図25の(C)は、同じ対象物5の同じ箇所に関する、現在の日時(例えば2017年1月1日)の1枚の画像内容の例を示す。両画像では、空撮時のドローン91及びカメラの位置、撮影方向等に違いがあるため、画像内容には違いがある。点905は、壁面におけるある同じ位置を示す。現在の画像では、劣化箇所906(例えばひび割れ)を有し、破線枠で示す。過去の画像で、劣化箇所906に対応する箇所907を破線枠で示す。対応付け及び比較処理では、このような画像同士を対応付けて画像内容を比較する必要がある。比較処理では、劣化箇所906と箇所907との差分から、劣化箇所906を検出できる。上記過去と現在の画像群において違いが大きいほど、対応付け及び比較の処理が難しい。
【0030】
上記比較例の診断システムに対し、実施の形態の診断システムでは、上記過去と現在の画像の対応付け及び比較を含む診断処理を容易化、効率化し、診断の精度を高める工夫を有する。
【0031】
(実施の形態)
図1〜
図14を用いて、本発明の実施の形態の飛行体利用劣化診断システムについて説明する。
【0032】
[概要]
(1) 実施の形態の診断システムは、飛行体利用劣化診断及び劣化箇所可視化システムである。本診断システムは、比較例の第2構成例の方式を基本とする。即ち、本診断システムは、過去及び現在の対象物に関する飛行体の空撮による連続画像に基づいて、計算機によって診断処理を行うことで、劣化箇所を自動的に判定、検出する機能(劣化診断機能)を有する。本診断システムは、診断結果情報を、DBに格納し、ユーザである診断者に対して画面で可視化して表示する。本診断システムでは、診断処理のためのデータ処理方法、画像間の対応付け及び比較処理方法等に工夫を有する。これにより、ユーザは、診断作業を効率的に行うことができ、診断を低コストで実現できる。
【0033】
本診断システムでは、前提として、処理対象の画像(2次元画像)は、飛行体のカメラによって空撮された連続画像であり、航行及び撮影の時空間の系列上の複数枚の静止画による画像群である。本診断システムでは、現在の診断データの診断画像群と、過去の参照データの参照画像群との対応付け及び比較に基づいて、劣化箇所を検出する診断処理を行う。前述の比較例の診断システムでは、対応付け及び比較を含む診断処理の際に、画像レベルのマッチング方式を用いている。それに対し、実施の形態の診断システムは、対応付け及び比較を含む診断処理の際に、平面マッチング方式を用いる(後述の
図7等)。
【0034】
この平面マッチング方式では、対応付け及び比較処理の際に、画像レベルではなく、画像から検出した平面レベルで対応付け及び比較を行う。本診断システムは、現在と過去の画像の各々から平面検出を行い、検出した平面を用いて対応付けを行い、対応付けられた画像同士において、現在と過去の平面同士で比較を行う。本診断システムは、平面同士の比較による差分から、劣化箇所を判定、検出する。平面マッチング方式を用いることで、過去及び現在の大量の画像群の対応付け及び比較を含む診断処理を容易化、効率化し、計算処理負荷を低くし、より高速に劣化箇所を検出可能とする。
【0035】
(2) また、本診断システムは、診断処理で画像から検出した劣化箇所を、対象物3次元モデルを含む空間内に位置付けるように可視化した画面をユーザに提供する機能を有する。その際、本診断システムは、画像内の劣化箇所を表す2次元座標情報を、対象物3次元モデル上の3次元座標情報に変換(2次元から3次元への対応付け、座標変換)する処理を行う(後述の
図9等)。この変換は、公知のSFM(Structure for motion)処理等を用いる。本診断システムは、変換の際、連続画像の最低2枚の複数の画像の各々における劣化箇所を表す2次元座標(x,y)から、透視変換行列を用いて、対象物3次元モデル上の3次元座標(X,Y,Z)を算出する。透視変換行列は、予め、SFM処理等を用いて計算される。
【0036】
比較例の診断システムでは、診断者または計算機が空撮画像から劣化箇所を検出できたとしても、その劣化箇所を含む画像からは、その劣化箇所が対象物を含む空間内でどの位置にあるか等がよくわからない場合がある。それに対し、本診断システムでは、ユーザは、画面で、劣化箇所が対象物を含む空間内でどの位置にあるのか等をわかりやすく認識できる。ユーザは、効率的かつ直感的に、劣化箇所等を発見することができる。
【0037】
(3) 更に、本診断システムでは、上記平面マッチング方式の診断機能や、劣化箇所可視化機能に加え、変形例として各種の追加機能を提供し、併用することができる。その追加機能の方式として、後述のルート設定方式、カメラ調整方式、段階的対応付け方式、部分的SFM処理方式、等がある。ユーザは、本診断システムのユーザ設定に基づいて、各追加機能を利用可能である。これにより、基本機能の診断処理に関して、更に計算時間短縮や診断精度向上を実現する。
【0038】
[飛行体利用劣化診断システム(1)]
図1は、実施の形態の飛行体利用劣化診断システムである診断システムの全体の構成を示す。診断システムは、ドローン1である飛行体と、計算機システム100とを備え、それらが無線通信で接続されている。計算機システム100は、例えば、PC2と、サーバ3とを有し、それらが通信網を介して接続されている。PC2は、ドローン制御装置であり、個々のユーザ(診断者)が使用するクライアント端末装置である。サーバ3は、例えば事業者のクラウドコンピューティングシステムやデータセンタ等におけるサーバ装置であり、PC2と連携する計算処理装置である。
【0039】
対象物5は、診断対象構造物及びカメラ4の被写体である。対象物5は、例として、建築物やインフラ設備等である。建築物は、一般的なビルや住宅、公共建築物等を含む。インフラ設備は、例えば、電力設備(火力発電、風力発電、水力発電等の設備)、道路交通設備、通信設備、橋梁、等が挙げられる。対象物5の表面における所定の領域が診断対象領域及び撮影対象領域である。予め、設定として、その所定の領域を空撮できるように、ドローン1の航行のルート、日時、及びカメラ4の撮影設定情報等が設定される。
【0040】
ドローン1は、PC2からの無線通信での遠隔制御に基づいて自律航行を行う飛行体である。なお、変形例としては、ユーザがPC2からドローン1の航行を操縦する形態も可能である。ドローン1は、所定の対象物の周囲空間において、設定されたルート上を自律航行する。ドローン1は、カメラ4や各種のセンサを搭載している。ドローン1は、ルート上の航行時に、カメラ4によって対象物5を空撮する。ドローン1は、撮影時の撮影画像データ、センサデータ等を、無線通信でPC2へ送信する。
【0041】
ドローン1の公知のセンサ群では、センサデータとして、ドローン1及びカメラ4の位置、方位(向き)、速度、加速度等が検出可能である。位置は、3次元座標(X,Y,Z)を含む。位置は、例えばGPS、高度センサ、あるいは他の測位システムに基づいて、緯度、経度、高度(地表からの高さ)として得られる。なお、GPSを用いる場合、十分な測位精度を前提とする。
【0042】
カメラ4では、撮影設定情報として、撮影方向、撮影タイミング、撮影条件(カメラパラメータ)等を含む。撮影方向は、ドローン1及びカメラ4の位置を基準として対象物5の撮影箇所を向く方向である。撮影タイミングは、連続的な複数の画像(静止画)を撮像するタイミングである。撮影条件は、レンズの焦点距離や画角等、公知のカメラパラメータの設定値で規定される。
【0043】
PC2は、ドローン1の航行制御、及びカメラ4の撮影制御を無線通信で行う。PC2は、公知の航行制御パラメータや、撮影設定情報等を、ドローン1へ送信する。ユーザである診断者は、PC2を操作して、本診断システムを利用する。ユーザは、PC2の画面で、本診断システムに対する指示入力やユーザ設定を行い、設定状態や診断結果情報等を確認できる。なお、サーバ3に対し、複数のユーザの複数のPC2等が同様に接続されてもよい。
【0044】
PC2は、ドローン制御機能21、診断クライアントプログラム22、記憶部23等を有する。ドローン制御機能21は、ドローン1の航行及びカメラ4の撮影を制御する公知の機能である。診断クライアントプログラム22は、飛行体利用劣化診断及び劣化箇所可視化ソフトウェア200のうちのクライアントプログラムである。PC2の診断クライアントプログラム22は、サーバ3の診断サーバプログラム32とクライアントサーバ通信で連携して処理を行う。診断クライアントプログラム22は、ドローン制御機能21を制御する。診断クライアントプログラム22は、特に、ドローン1との連携、及び画面表示処理を担当する。
【0045】
PC2の記憶部23には、診断クライアントプログラム22等が処理に用いる各種のデータ/情報が記憶される。記憶部23には、ドローン1から取得される撮影画像データ、センサデータ、ドローン1に設定する撮影設定情報、等が記憶される。記憶部23には、サーバ3から取得される各データも記憶される。
【0046】
サーバ3は、診断サーバプログラム32、DB33等を有する。診断サーバプログラム32は、飛行体利用劣化診断及び劣化箇所可視化ソフトウェア200のうちのサーバプログラムである。診断サーバプログラム32は、特に、診断処理等、計算処理負荷が高い処理を担当する。診断サーバプログラム32は、診断クライアントプログラム22からの要求に応じて、所定の処理を実行し、処理結果情報を応答する。
【0047】
サーバ3のDB33には、診断サーバプログラム32及び診断クライアントプログラム22が処理に用いる各種のデータが記憶される。DB33は、DBサーバ等で実現されてもよい。DB33には、PC2から取得される各データの他に、対象物データ、診断結果情報等が格納される。対象物データは、対象物5に関する基本情報や対象物3次元モデルデータ等を含むデータである。対象物3次元モデルデータは、任意の形式のデータであり、例えば既存のCADシステム等で作成されたデータを利用可能である。あるいは、対象物3次元モデルデータは、空撮画像に基づいて公知のSFM処理を用いて3次元構造を復元した結果として得られるデータを用いてもよい。診断結果情報は、飛行体利用劣化診断及び劣化箇所可視化ソフトウェア200の診断処理結果であり、劣化箇所を含む画像、対象物3次元モデル上に劣化箇所を位置付けた情報等を含む。
【0048】
飛行体利用劣化診断及び劣化箇所可視化ソフトウェア200は、劣化診断機能、及び劣化箇所可視化機能を含む各機能を実現する。劣化診断機能は、現在と過去の空撮画像の対応付け及び比較に基づいて診断処理を行って、対象物5の劣化箇所を検出する機能である。この診断処理では、特に、平面マッチング方式を用いる。劣化箇所可視化機能は、劣化診断機能によって検出した画像内の劣化箇所を、対象物3次元モデル上に位置付けるように可視化する画面を提供する機能である。
【0049】
計算機システム100の実装構成は、上記に限らず可能である。例えば、PC2とサーバ3とが1つの装置として統合されている形態でもよいし、機能毎に複数の装置に分離されている形態でもよい。ドローン制御装置とPC2とが分離されている形態でもよい。飛行体については、公知のドローンやUAVを適用できるが、本診断システムのために特有の機能を追加実装した専用の飛行体を利用してもよい。
【0050】
[飛行体利用劣化診断システム(2)]
図2は、本診断システムのドローン1及び計算機システム100の概略的な機能ブロック構成を示す。
【0051】
ドローン1は、プロペラ駆動部11、航行制御部12、センサ13、ジンバル14、カメラ4、画像記憶部15、無線通信部16、バッテリ17等を有する。プロペラ駆動部11は、複数のプロペラを駆動する。航行制御部12は、PC2の航行制御部102からの航行制御情報に従って、ドローン1の航行を制御する。そのために、航行制御部12は、センサ13の検出情報を用いながら、プロペラ駆動部11を駆動制御する。センサ13は、公知のGPS受信器、電子コンパス、ジャイロセンサ、加速度センサ等のセンサ群であり、所定のセンサデータを出力する。ジンバル14は、カメラ4を保持する公知の機構であり、航行時にカメラ4がぶれずに一定の状態になるように自動的に維持する。カメラ4は、PC2の撮影制御部104からの撮影制御情報及び撮影設定情報に従って、対象物5を空撮し、撮影画像データを出力する。画像記憶部15は、撮影画像データ等を記憶する。無線通信部16は、無線通信インタフェース装置を含み、所定の無線通信インタフェースで、計算機システム2と無線通信を行う。バッテリ17は、各部へ電力を供給する。
【0052】
計算機システム100は、GUI部101、航行制御部102、撮影制御部104、記憶部105、無線通信部106、診断部107、可視化部108を有する。
【0053】
GUI部101は、ユーザに対するGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース)となる画面を構成し、ディスプレイに表示する。ユーザは、画面に対し、ユーザ設定や指示入力が可能であり、設定状態や診断結果情報等を確認可能である。ユーザ設定としては、本診断システムが提供する各機能に関する利用有無等の設定や、機能毎の制御用の閾値等の設定が可能である。また、ルート設定として、ドローン1の航行の基本的なルート(発着点を含む)や、空撮及び診断の日時を含むスケジュール等が設定可能である。また、撮影設定として、カメラ4の基本的なカメラパラメータ等の設定が可能である。
【0054】
航行制御部102は、ルート等の設定に基づいて、ドローン1の航行を制御する。航行制御部102は、無線通信を通じて、ドローン1へ航行制御情報を送信し、ドローン1から航行状態を表すセンサデータ等を受信する。
【0055】
撮影制御部104は、撮影設定情報に基づいて、カメラ4の撮影を制御する。撮影制御部104は、無線通信を通じて、ドローン1へ撮影設定情報に基づいた撮影制御情報を送信し、ドローン1からは撮影画像データ等を受信する。
【0056】
記憶部105は、診断データ記憶部105A、参照データ記憶部105Bを含む。診断データ記憶部105Aは、現在の空撮時の診断画像群等を格納する。参照データ記憶部105Bは、過去の空撮時の参照画像群等を格納する。記憶部105の各画像データには、撮影時の日時、センサデータ、撮影設定情報等も関連付けられた状態で情報管理される。記憶部105には、その他、ユーザ設定情報や、
図1の対象物データ、診断結果情報等も記憶される。
【0057】
無線通信部106は、無線通信インタフェース装置を含み、所定の無線通信インタフェースで、ドローン1と無線通信を行う。
【0058】
診断部107は、現在の診断データ及び過去の参照データを入力として、診断処理を行い、診断結果情報を出力する。診断部107は、マッチング部107A、比較部107B、変換部107C、SFM処理部107Dを含む。マッチング部107Aは、診断データの診断画像群と、参照データの参照画像群とで、対応付け処理を行う。マッチング部107Aは、特に、平面マッチング方式の対応付け処理を行う。比較部107Bは、対応付け後の比較対象画像において、過去の画像と現在の画像とを比較して、差分を判定することで、劣化、異常、変化等の状態の箇所(劣化箇所)を検出する。比較部107Bは、特に、平面マッチング方式の比較処理を行う。また、比較部107Bは、劣化等の種類や劣化度合い等を判定する。
【0059】
変換部107Cは、画像から検出された劣化箇所を、対象物3次元モデル上に位置付ける処理として、劣化箇所を表す2次元座標情報を対象物3次元モデル上の3次元座標情報へ変換する座標変換処理を行う。変換部107Cは、その変換の際に、SFM処理部107DのSFM処理を用いる。
【0060】
SFM処理部107Dは、公知のSFM処理を行う。SFM処理部107Dは、入力の複数の画像に対し、SFM処理を施して、3次元構造を復元し、結果情報を出力する。SFM処理では、連続する最低2枚の複数の画像から、画像内の特徴点の2次元座標に基づいて、対象物5の表面の3次元構造(複数の特徴点の3次元座標で表される)及び視点位置(カメラ4位置)を復元する。
【0061】
可視化部108は、診断部107の診断結果情報に基づいて、画面で劣化箇所等を可視化する処理を行う。可視化部108は、劣化箇所を対象物3次元モデル上に位置付けた画面を提供する。可視化部108は、画面に対するユーザの入力操作に応じて、劣化箇所の画像や情報を表示する。
【0062】
[飛行体利用劣化診断システム(3)]
図3は、本診断システムの計算機システム100におけるハードウェアやプログラムやデータの構成例を示す。計算機システム100は、演算部111、入力部112、表示部113、無線通信部106、プログラム記憶部114、データ記憶部115、等を有し、それらがバス等で接続されている。
【0063】
演算部111は、CPU、ROM、RAM等で構成され、プログラム記憶部114から読み出したプログラムに従って処理を行うことで、診断部107等の各処理部を実現する。入力部112は、例えばキーボードやマウス等の入力機器を含み、ユーザによる入力を受け付ける。表示部113は、ユーザに対して画面を表示する。プリンタ等の他の出力機器を有してもよい。
【0064】
プログラム記憶部114は、不揮発性メモリ等で構成され、診断システムの機能を実現するためのプログラムが格納されている。プログラムは、2次元画像劣化診断プログラム401、2次元画像劣化箇所3次元位置付けプログラム402、3次元モデル作成プログラム403、ルート設定プログラム404、カメラ調整プログラム405等を含む。
【0065】
2次元画像劣化診断プログラム401は、過去及び現在の画像群の対応付け及び比較を含む診断処理(
図2でのマッチング部107A、比較部107B)を実現するプログラムであり、平面マッチング方式の処理を実現するプログラムを含む。
【0066】
2次元画像劣化箇所3次元位置付けプログラム402は、画像から検出された劣化箇所を対象物3次元モデル上に位置付ける座標変換処理等(
図2での変換部107C)を実現するプログラムである。このプログラムは、劣化箇所を表す2次元座標から対象物の3次元座標へ変換する際の2次元座標の選び方を処理するプログラムを含む。
【0067】
3次元モデル作成プログラム403は、連続画像から対象物3次元モデル上の3次元構造を復元するSFM処理等(
図2でのSFM処理部107D)を実現するプログラムである。なお、3次元モデル作成プログラム403(SFM処理部107D)としては、外部のプログラムを利用してもよい。例えば、サーバ3とは別にSFM処理用の外部サーバが存在し、サーバ3がその外部サーバと通信し連携して機能を実現してもよい。
【0068】
ルート設定プログラム404は、ドローン1のルート等を設定する処理を実現するプログラムである。基本的なルートの設定の仕方については特に限定しない。実際にドローン1を操縦して得たデータに基づいてルートを設定する方式でもよいし、操縦せずに設定画面で対象物3次元モデルに基づいて手動でルートを設定する方式でもよい。
【0069】
カメラ調整プログラム405は、カメラ4のカメラパラメータを含む撮影設定情報を設定及び調整する処理を実現するプログラムである。
【0070】
計算機システム100は、無線通信に基づいて、ドローン1から、撮影画像データ151やセンサデータ152(位置、方位、速度、加速度等)を取得し、データ記憶部115に格納する。
【0071】
データ記憶部115は、バッファメモリ、ストレージ装置、DBサーバ等で構成でき、処理に用いる各種のデータ/情報が格納される。各種のデータ/情報の記憶部やDBは、別々の記憶装置やDBサーバ等で構成されてもよい。データ記憶部115は、診断データ記憶部105A、参照データ記憶部105B、3次元モデル記憶部105C、診断結果情報記憶部105Dを含む。診断データ記憶部105Aは、診断画像DB161、診断センサデータDB162を含む。診断画像DB161には、診断対象の画像群(診断画像群)が時系列で整理されて格納される。診断センサデータDB162には、診断画像群に関係付けられるセンサデータ群が時系列で整理されて格納される。参照データ記憶部105Bは、参照画像DB171、参照センサデータDB172を含む。診断画像DB171には、比較対象として参照する画像群(参照画像群)が時系列で整理されて格納される。参照診断センサデータDB172には、参照画像群に関係付けられるセンサデータ群が時系列で整理されて格納される。
【0072】
なお、最新の日時の診断データの発生に応じて、その最新の診断データが診断データ記憶部105Aに格納される。その際に既に格納されていたその前の日時の診断データについては順次に参照データ記憶部105Bに移動されて参照データとなる。
【0073】
3次元モデル記憶部105Cには、対象物3次元モデルデータ181、復元3次元構造データ182、等が記憶される。対象物3次元モデルデータ181は、対象物5に関する現在及び過去の3次元モデルデータであり、CAD等のデータを利用できる。復元3次元構造データ182は、SFM処理によって復元された3次元構造データである。
【0074】
診断結果情報記憶部105Dには、診断結果情報が格納される。診断結果情報は、検出された劣化箇所を表す2次元座標情報及び対応する空撮画像と、対象物3次元モデル上に位置付けられた劣化箇所を表す3次元座標情報とを含む。
【0075】
計算機システム100(PC2またはサーバ3)は、診断時には、ドローン1から取得した診断画像群やセンサデータ等の診断データを診断データ記憶部105Aに一旦格納する。計算機システム100は、診断データ記憶部105Aから適宜必要な分の診断データを、処理用のメモリ(演算部111のメモリまたは他のメモリ)に読み出す。また、計算機システム100は、参照データ記憶部105Bから、診断データと同じ対象物5に関する参照画像群やセンサデータ等の参照データのうちの適宜必要な分のデータを、メモリに読み出す。また、計算機システム100は、3次元モデル記憶部105Cから、対象物3次元モデルデータ181をメモリに読み出す。計算機システム100は、メモリに読み出した各データを用いて診断処理等を行う。
【0076】
計算機システム100は、診断処理の際、診断画像群に基づいて、SFM処理を用いた変換処理によって、劣化箇所を含む対象物の3次元構造を復元し、復元3次元構造データ182として記憶する。計算機システム100は、その復元3次元構造データ182を用いて、劣化箇所を対象物3次元モデル上に位置付ける。
【0077】
PC2とサーバ3の処理分担の構成例としては以下である。PC2は、ドローン1から撮影画像データ151やセンサデータ152を取得し、それらのデータと共に処理要求をサーバ3へ送信する。サーバ3は、その処理要求に応じて、
図2の診断部107の診断処理を行って、劣化箇所を検出し、劣化箇所を対象物3次元モデル上に位置付ける変換を行う。可視化部108は、その対象物3次元モデル上の劣化箇所を可視化する画面の画面データを生成する。サーバ3は、そのような診断結果情報を含む画面データを、PC2へ送信する。PC2は、その画面データに基づいて画面を表示する。
【0078】
[飛行体利用劣化診断システム(4)]
図4は、実施の形態における概要として、対象物5の周囲の空撮、及び過去と現在の空撮画像の対応付け及び比較処理について示す。
【0079】
図4の(A)は、過去の空撮時(例えば2016年1月)における対象物5の周囲のルート及び連続画像401等を示す。本例では、対象物5として建築物の側壁面等を診断対象領域とする。本例では、ドローン1が対象物5の上空から斜め下を見るような方向で側壁面等を空撮する。なお、ドローン1は、所定のルールを満たす飛行可能空間内のルートを航行する。建築物の壁面には一般に所定の構造や壁面デザイン(例えば窓や柱等に応じたデザイン)を有する。ルート上の各点は、ドローン1及びカメラ4の位置及び撮像時点を示す。なお、ドローン1の位置とカメラ4の位置は概略的に同じとする。各点から出た一点鎖線矢印は、カメラ4の撮影方向を示す。一点鎖線矢印の先の点が撮影箇所を示し、画像の中心点を示す。この空撮によって、ドローン1から連続画像401が得られ、参照データの参照画像群として保存される。
【0080】
図4の(B)は、同様に、同じ対象物5に関する、現在の空撮時(例えば2017年1月)におけるルート及び連続画像402等を示す。設定ルートは、(A),(B)で同じであるが、実際のドローン1の航行軌跡は、設定ルートに対して揺れやずれがある。対象物5の側壁面の一部に劣化箇所403が生じている例を示す。この空撮によって、ドローン1から連続画像402が得られ、診断データの診断画像群として保存される。空撮の日時に応じて、風や光の状況が異なるので、各連続画像の画像内容にも違いが生じる。
【0081】
計算機システム100の計算機(PC2及びサーバ3)は、現在の診断データの診断画像群と過去の参照データの参照画像群とを入力し、対応付け及び比較を行うことで、劣化箇所を検出する。計算機は、その際、平面マッチング方式を用いて、各画像内の平面同士の対応付け及び比較を行う。これにより、対応付け及び比較の処理を容易化、効率化する。計算機は、診断処理の結果、例えば劣化箇所403を検出できる。計算機は、検出した劣化箇所403を対象物5の3次元モデル上に位置付けるように可視化した画面を提供する。
【0082】
また、本診断システムでは、後述のルート設定方式、カメラ調整方式、段階的対応付け方式、部分的SFM処理方式等を、追加機能として併用できる。これらの追加機能を併用することで、更に効率化ができる。
【0083】
[DBデータ/情報]
計算機システム100のDB33等に取得、格納される、参照データ及び診断データ等の各種のデータ/情報として、以下を含む。
【0084】
(a)撮影時間情報: 空撮の日時、及び時系列の各撮像時点の情報。例えば、年月月日分秒。
【0085】
(b)位置情報: ドローン1及びカメラ4の位置情報。例えば、GPSに基づいて測定される、緯度、経度、高度(地表からの高さ)を有する。位置は、対象物3次元モデルを含む3次元空間内の3次元座標(X,Y,Z)で表せる。高さ位置(Z)については、別のセンサ(高さセンサ)を用いてもよい。GPS以外の測位システムを用いてもよい。
【0086】
(c)カメラ撮影方向: カメラ4の撮影方向。ドローン1及びカメラ4の位置から撮影箇所へ向く方位。ドローン1のジンバル14の制御に基づいて、カメラ撮影方向が制御可能である。
【0087】
(d)カメラパラメータ(撮影条件): カメラ4の基本機能として設定可能な各種パラメータ。例えば、絞り、レンズ、シャッター、フラッシュ等の設定値。焦点距離、画角等。
【0088】
(e)劣化箇所情報及び劣化可能性推定値: 劣化箇所情報は、劣化箇所に関する画像内の2次元座標情報、及び対象物3次元モデル上の3次元座標情報を含む。劣化箇所情報は、劣化箇所を表す1つ以上の特徴点(変化点)、及びその集まりによる2次元領域としてもよい。劣化箇所情報は、劣化可能性推定値を含む。診断処理では、劣化箇所の3次元座標の位置における、劣化発生可能性が推定され、確率値で表現される。また、劣化箇所情報は、劣化種類及び劣化度合い等の情報を含んでもよい。
【0089】
[処理フロー]
図5は、本診断システムの計算機システム100の計算機(PC2及びサーバ3)の基本処理フローを示す。
図5は、ステップS1〜S9を有する。以下、ステップの順に説明する。なお、このフローは、ドローン1の航行及び空撮と共にリアルタイムで診断処理等を行う方式の場合のフローである。これに限らず、ドローン1の航行及び空撮を一旦行った後に、撮影画像データ等を取得して診断処理を行う方式としてもよい。
【0090】
(S1) 計算機は、ユーザの入力操作に基づいて、設定画面を表示し、基本設定を行う。基本設定として、対象物5(対象物3次元モデルデータ)の診断対象領域、診断の日時、ルート、撮影設定情報等が設定される。
【0091】
(S2) 診断日時に、PC2からの制御に基づいて、ドローン1をルート上で自律航行させ、カメラ4によって対象物5の領域を空撮させる。ドローン1は、その際の撮影画像データやセンサデータを、PC2へ送信する。PC2は、それらのデータを診断データとして取得する。
【0092】
(S3) 計算機の
図2の診断部107は、診断データを入力し、診断データと同じ対象物5に関する参照データを参照して入力する。具体的には、例えば、PC2は、サーバ3へ、診断データ(診断画像群及び診断センサデータ)を送信する。サーバ3は、その診断データを入力し、DB33から同じ対象物5に関する過去の参照データ(参照画像群及び参照センサデータ)を読み出す。この際、現在の診断日時から所定時間前の診断日時の参照データが候補として参照される。所定時間は、予め、対象物5等に応じて診断日時のスケジュールと共に設定されている。例えば、1年前、半年前、1月前、1周間前等、任意に設定可能である。
【0093】
(S4) 診断部107は、入力された診断データ及び参照データについて、診断処理を行って、劣化箇所を判定、検出する。マッチング部107Aは、診断画像群と参照画像群とで、対応付け処理を、平面マッチング方式で行い、比較対象画像を得る。その際、マッチング部107Aは、画像から平面を検出し、検出した平面を用いて対応付けを行う。比較部107Bは、比較対象画像における過去の画像と現在の画像とで、画像内容を比較して、劣化等の状態の劣化箇所を判定、検出する。その際、比較部107Bは、画像から検出された平面同士で比較する。また、比較部107Bは、劣化種類や劣化度合い等を判定してもよい。
【0094】
(S5) 診断部107は、診断データの2次元画像から劣化箇所を検出した場合、検出した劣化箇所を表す2次元座標情報等を、診断結果情報の一部として保存する。
【0095】
(S6) 診断部107は、検出した劣化箇所を、対象物3次元モデル上へ位置付ける処理を行う。そのために、変換部107Cは、劣化箇所を表す2次元座標情報を、対象物3次元モデル上の3次元座標情報へ変換する座標変換処理を行う。その際、診断部107は、SFM処理部107Dを用いてSFM処理を行わせる。SFM処理部107Dは、事前に連続画像に対してSFM処理を行って3次元構造を復元し、透視変換行列Pを得る。変換部107Cは、診断画像群における劣化箇所が含まれている連続する最低2枚の画像から、透視変換行列Pに基づいて、劣化箇所の位置を表す3次元座標へ変換する。
【0096】
(S7) 診断部107は、S6で得られた劣化箇所の3次元座標情報、及び復元3次元構造データ182等を、診断結果情報の一部として保存する。
【0097】
(S8) 診断部107は、診断データの診断画像群の入力が終了したかどうか(連続入力画像がまだあるかどうか)を確認し、終了の場合(Y)にはS9へ進み、終了ではない場合(N)にはS2へ戻って同様に繰り返す。
【0098】
(S9) 可視化部108は、劣化箇所可視化処理を行う。可視化部108は、診断結果情報を用いて、劣化箇所を対象物3次元モデル上に位置付けた画面データ(例えばWebページデータ)を構成する。サーバ3は、その画面データをPC2へ送信する。PC2は、その画面データに基づいて、ディスプレイに画面を表示する。ユーザは、その画面で、対象物3次元モデル上の劣化箇所等を確認できる。
【0099】
[診断処理−平面マッチング方式(1)]
図6は、診断部107の診断処理(S4)における平面マッチング処理を含む処理フローを示す。
図6は、ステップS41〜S43を有する。
【0100】
(S41) 診断部107は、入力の診断画像群及び参照画像群の各画像内から、平面部を検出する(後述の
図7)。この平面検出処理は、画像内から特徴点やエッジ線を検出する処理を基本として実現できる。画像内の画素毎に色を有し、概略的に同じ色を持つ連続する領域を、平面(平面部)として検出できる。
【0101】
(S42) 診断部107のマッチング部107Aは、検出された平面部を用いて、診断画像群と参照画像群とで対応付けを行い、比較対象画像を得る。この際には、例えば各画像の平面を比較し、概略的に同じ平面を持つ画像同士を対応付けることができる。
【0102】
(S43) 診断部107の比較部107Bは、対応付けられた比較対象画像において、過去の画像の平面と現在の画像の平面とで、平面レベルでの比較を行う。画像内に複数の平面を含む場合、平面毎に比較が行われる。診断部107は、この平面比較で、過去と現在の差分を判定、抽出することで、劣化箇所を検出する。この結果、診断部107は、画像内の劣化箇所を表す2次元座標情報を得る。なお、この2次元座標情報は、代表的な1つの特徴点の情報としてもよいし、劣化箇所を含む領域の形状や大きさに応じて、複数の特徴点から成る情報としてもよい。
【0103】
上記対応付け及び比較処理は、画像レベルの処理ではなく、平面レベルの処理であるため、比較的容易であり、診断処理の効率化が実現でき、また、誤検出も低減できる。
【0104】
また、上記平面マッチング方式を用いる場合、その後、変換部107Cでの座標変換処理の際には、平面部の情報を用いて平面レベルでの処理が行われる。
【0105】
[診断処理−平面マッチング方式(2)]
図7は、上記診断処理における平面マッチング方式について示す。
図7の上側には、参照画像及び診断画像の例を示す。第1例において、診断画像601及び参照画像602は、同じ対象物5の同じ箇所(例:
図4の建築物の側壁面)を空撮した画像である。第1例では、所定の壁面デザインとして、線で区切られた複数の平面領域を含む場合である。撮影時の状況が異なることから、2つの画像の内容には違いがある。本例では、診断画像601内に、ひび割れのような劣化箇所701がある。
【0106】
第2例において、同様に、診断画像603及び参照画像604は、同じ対象物5の同じ箇所(例:側壁面から出た立体構造物)を空撮した画像である。本例では、診断画像603内に、ひび割れのような劣化箇所702がある。
【0107】
比較例の診断システムの場合、このような画像に対し、画像レベルの対応付け及び比較を行う。各画像内には、対象物5の表面の構造やデザインに応じて、色が異なる平面(平面部)が含まれている。平面マッチング方式では、このような平面を検出して利用する。診断部107は、画像内から特徴点やエッジ線を検出し、色が概略的に同じ領域を、平面として検出する。本例では、例えば、ある診断画像603からは、3つの平面部(平面p11〜p13とする)が検出されている。また、ある参照画像604からは、3つの平面部(平面p21〜p23とする)が検出されている。
【0108】
診断部107は、画像から検出した平面を用いて、画像同士の対応付け及び比較を行う(平面レベルマッチング)。診断部107は、まず、平面を用いて、過去の1枚以上の画像と、現在の1枚以上の画像とを比較対象画像として対応付ける。次に、診断部107は、比較対象画像の画像間において、各画像内の各平面を用いて、平面同士を比較する。例えば、診断画像603の平面p11〜p13と、診断画像604の平面p21〜p23とが比較される。診断部107は、平面の位置関係や形状の類似性から、例えば平面p11と平面p21が対応していると推測し、平面p11と平面p21とを比較対象平面として対応付ける。同様に、推測に基づいて、平面p12と平面p22とを対応付け、平面p13と平面p23とを対応付ける。そして、診断部107は、それぞれの比較対象平面について、平面同士を比較して、両者の差分を判定することで、劣化箇所を検出する。例えば、平面p12と平面p22との比較から、劣化箇所702が検出できる。なお、劣化箇所が複数の平面にまたがっている場合には、それぞれの比較対象平面からそれぞれの劣化箇所として検出でき、それらの劣化箇所を1つに統合することで、検出できる。診断部107は、画像内の劣化箇所702を表す2次元座標を得る。
【0109】
上記平面レベルマッチングは、従来の画像レベルマッチングに比べて、画像解析処理等が容易であり、処理負荷が低い。そのため、診断処理を効率化できる。
【0110】
[劣化箇所検出処理]
診断部107は、上記画像から劣化箇所を検出する際に、以下のような処理を行ってもよい。診断部107は、劣化箇所702の劣化種類や劣化度合いを所定の処理によって判定してもよい。例えば、劣化種類として、ひび割れ、さび、腐食、剥離等を定義する。例えば、ひび割れの検出の場合、ひび割れの位置や領域、ひび割れの領域のサイズ、ひび割れの線の数、長さ、幅等が算出される。それらの定量化した数値に基づいて、ひび割れの劣化度合いが判定される。例えば、ひび割れに関する基準閾値との比較に基づいて、劣化度合いがいくつかのレベルとして判定される。
【0111】
[変換処理]
図8は、診断部107の変換部107Cの変換処理(S6)のフローを示す。
図8は、ステップS61〜S63を有する。
【0112】
(S61) 変換部107Cは、診断画像群に基づいて、劣化箇所が検出された画像(診断画像)として、連続する最低2枚の画像を入力する(後述の
図9)。なお、最低2枚の画像が無い場合には変換ができないので、本処理フローは不成立とする。
【0113】
(S62) 変換部107Cは、入力された連続画像における1枚目の画像内における劣化箇所を表す2次元座標(x1,y1)と、2枚目の画像内における対応する劣化箇所を表す2次元座標(x2,y2)とから、公知の透視変換行列Pを用いた座標変換によって、対応する3次元座標(X1,Y1,Z1)を得る。透視変換行列Pは、予め、別のSFM処理によって得られる。変換で得られた3次元座標は、対象物3次元モデルを含む空間内における劣化箇所の位置を表している。3枚以上の連続画像がある場合にも同様の処理で実現可能であり、その場合には変換精度を高めることができる。
【0114】
(S63) 変換部107Cは、得られた3次元座標を、対象物3次元モデル上の劣化箇所位置として位置付ける。この位置付けは、情報処理上では関連付け処理として実現できる(後述の
図12)。また、変換部107Cは、対象物3次元モデル上の劣化箇所を、可視化の際の表現として所定の色や図像で強調表示するための劣化箇所画像を設定する。
【0115】
[座標変換]
図9は、上記変換処理の概要として、劣化箇所を含む2枚の連続画像から3次元座標情報を得る座標変換を示す。カメラ4を含む空間の3次元座標系を(X,Y,Z)で示す。Oはカメラ位置を示す。画像内の2次元座標系を(x,y)で示す。
【0116】
連続する2枚の2次元画像として、第1画像g1、第2画像g2を有する。第1画像g1内の2次元座標系において、劣化箇所に対応する特徴点f1(黒丸で示す)を有する。特徴点f1の2次元座標(x1,y1)を示す。同様に、第2画像g2内に、特徴点f2を有し、特徴点f2の2次元座標(x2,y2)を示す。ここでは、説明を単純化して、画像内に1つの特徴点を含む場合を示すが、複数の特徴点を含む場合にも同様である。変換部107Cは、特徴点f1から特徴点f2への特徴点対応付けを行う。
【0117】
対象物を含む3次元空間内の劣化箇所に対応する特徴点を、特徴点F1とする。特徴点F1の3次元座標(X1,Y1,Z1)を示す。変換部107Cは、2枚の画像g1,g2から、透視変換行列Pを用いて座標変換を行うことで、3次元空間内の劣化箇所の特徴点F1の3次元座標(X1,Y1,Z1)が得られる。
【0118】
[変換処理−平面変換方式(1)]
前述の座標変換(
図8,
図9)の際に、2次元座標の選び方を工夫することで、効率化ができる。変形例の診断システムでは、その工夫として、下記の平面変換方式を用いる。この平面変換方式では、前述の平面マッチング方式の平面情報を利用して、2次元座標を選択する。これにより、変換処理を効率化できる。
【0119】
図10は、変形例として、変換処理の際に平面変換方式を適用する場合の処理フローを示す。
図10は、ステップS71〜S76を有する。
【0120】
(S71) 変換部107Cは、劣化箇所が検出された連続画像における最低2枚の画像を入力する。
【0121】
(S72) 変換部107Cは、入力の連続画像における、前述の平面検出で検出された各平面の情報を入力する。
【0122】
(S73) 変換部107Cは、ある診断画像(第1画像)における劣化箇所(特徴点)が検出された平面(第1平面)と、その第1画像の第1平面に対応付けられる第2画像の第2平面とを参照する。例えば、
図7では、比較対象平面における平面p12と平面p22が相当する。
【0123】
(S74) 変換部107Cは、対応付けられる平面同士(第1平面、第2平面)において、平面変換係数を計算する。
【0124】
(S75) 変換部107Cは、平面変換係数を用いて、第1画像の第1平面の劣化箇所の2次元座標(x1,y1)と、対応付けられる第2画像の第2平面の劣化箇所の2次元座標(x2,y2)とを算出する。
【0125】
(S76) 変換部107Cは、透視変換行列Pを用いて、2次元座標(x1,y1)及び2次元座標(x2,y2)から、劣化箇所の3次元座標(X1,Y1,Z1)を算出する。
【0126】
[変換処理−平面変換方式(2)]
図11は、上記平面変換方式での座標変換計算を示す。連続画像における、劣化箇所を含む第1画像内の第1平面p101と、第2画像内の第2平面p102とを示す。第1平面p101と第2平面p102は、平面マッチングによって対応付け及び比較される比較対象平面である。第1平面p101内には、劣化箇所を表す特徴点f1の第1座標(x1,y1)を有する。第2平面p102内に、特徴点f1に対応する特徴点f2の第2座標(x2,y2)を有する。計算機システム100は、第1平面p101から第2平面p102への平面変換係数Cを算出する。計算機システム100は、平面変換係数Cを用いた座標計算によって、特徴点f1の第1座標(x1,y1)から、特徴点f2の第2座標(x2,y2)を算出する。
【0127】
前述のように、劣化箇所の2次元座標から3次元座標への座標変換を行うが、その際には、
図9のように、複数の視点の2次元座標情報が必要である。この際、複数の視点の情報を揃えるために、画像レベルでの対応付け処理が必要である。その処理の際、特徴点の対応付けの誤りが発生し得る。その誤りが発生した場合、対象物3次元モデルへの位置付けの精度の低下に影響する。そこで、この変形例では、平面変換方式として、劣化箇所(特徴点)の2次元座標を計算する方式を用いる。この平面変換方式では、画像レベルでの特徴点対応付け処理が不要である。これにより、対象物3次元モデルへの位置付けの精度を高めることができる。
【0128】
[劣化箇所情報]
図12は、診断結果情報のうちの劣化箇所情報に関するデータ格納構成例を示す。DBのテーブル(表)に、劣化箇所情報が格納される。過去の参照データ、及び現在の診断データで同様の構造でデータが管理される。図示省略するが、撮像日時等の情報を用いて時系列でデータが管理される。
【0129】
図12の(A)の表は、2次元画像データ表を示す。この表には、2次元画像の処理から得られた2次元情報が格納される。この表は、列として、画像ファイル、画像サイズ、劣化箇所ID、劣化箇所2次元座標を有する。画像ファイルは、連続画像における各々の静止画の画像を示す。画像サイズは、画像の縦横の画素数等で表される。劣化箇所IDは、その画像内で検出された劣化箇所(劣化発生可能性が高い箇所)に関する識別子を示す。劣化箇所2次元座標は、その画像内の劣化箇所の位置を表す2次元座標(x,y)を示す。
【0130】
図12の(B)は、3次元モデルデータ表を示す。この表には、前述の2次元から3次元への位置付けの変換によって得られた3次元情報が格納される。この表は、列として、劣化箇所ID、劣化箇所3次元座標(X,Y,Z)、対応2次元画像ファイルを有する。劣化箇所IDは、2次元画像データ表の劣化箇所IDに基づいて生成されている。劣化箇所3次元座標(X,Y,Z)は、対象物3次元モデル上に位置付けられた劣化箇所の3次元座標である。対応2次元画像ファイルは、この劣化箇所に対応する2次元画像(劣化箇所を含む画像)のファイルを示し、2次元画像データ表の画像ファイルに関連付けられている。
【0131】
[劣化箇所可視化機能]
図13は、2次元から3次元への劣化箇所の位置付けを行う劣化箇所可視化機能及びその画面例について示す。
【0132】
図13の(A)は、診断画像1301の例として、対象物5の側壁の立体構造部分1302の一部から劣化箇所1303が検出された場合を示す。劣化箇所1303の2次元座標(x1,y1)を有する。計算機システム100の変換部107Cは、前述のように、診断画像1301の劣化箇所1303の2次元座標(x1,y1)から、対象物3次元モデル上の3次元座標(X1,Y1,Z1)への変換処理を行う。そして、可視化部108は、変換情報に基づいて、対象物3次元モデル上に劣化箇所を位置付けて可視化する画面を生成する。
【0133】
図13の(B)は、その可視化画面の構成例を示す。この画面では、背景上に所定の設定視点からみた対象物3次元モデル1311が表示されている。対象物5を表す対象物3次元モデル1311は3次元点群として表現される。画面での視点や拡大縮小率等は、ユーザ操作によって変更可能である。対象物3次元モデル1311の周囲には、対象物5の基本情報、ルートや発着点等を表示してもよい。そして、対象物3次元モデル1311の表面上に、劣化箇所1313の3次元座標(X1,Y1,Z1)が位置付けられている。劣化箇所は、2次元領域として表される場合には、サイズ等の情報も有する。劣化箇所は、前述の変換処理による画像として強調表示される。このように、本画面で、ユーザは、対象物5の全体のうちどこに劣化箇所があるか等をわかりやすく確認できる。例えば、対象物5の表面の構造が複雑で、似たような構造の箇所を多く有する場合、画像からは劣化箇所が認識しにくいが、3次元モデル上に位置付けることで劣化箇所が認識しやすい。
【0134】
図13の(C)は、(B)の画面から遷移する他の可視化画面の構成例を示す。ユーザは、(B)の画面で、劣化箇所の詳細を確認したい場合、その劣化箇所を選択操作(例えばクリック、タップ等)する。これにより、可視化部108は、(C)のような画面を構成して表示する。なお、(B)の画面から(C)の画面を全体表示するように遷移してもよいし、(B)の画面上に(C)の画面を重ねて表示してもよい。また、所定のユーザ操作で(C)の画面から(B)の画面へ戻ることができる。(C)の画面では、劣化箇所を中心に拡大表示し、劣化箇所に関する各種情報(診断日時、対象物名称、劣化種類、劣化度合い等)を併せて表示する。また、所定のユーザ操作に基づいて、劣化箇所を含む2次元画像(診断画像群の一部)を関連付けて表示するようにしてもよい。また、(B)や(C)の画面では、劣化箇所を強調表示する。例えば、劣化箇所を含む2次元領域を、劣化種類や劣化度合いに応じて色を付けた枠で強調表示してもよい。また、(C)の画面では、所定のユーザ操作に基づいて、劣化箇所に関する現在及び過去の画像を比較表示することもできる(下記)。
【0135】
図14は、他の可視化画面例として、画像比較表示画面を示す。
図13の(B)や(C)の画面から、所定のユーザ操作に基づいて、劣化箇所を指定し、
図14の画面へ遷移できる。可視化部108は、ユーザが指定した劣化箇所に関して、この画面で、過去及び現在の時系列で画像比較表示を行う。この画面では、時系列を選択可能なバー1401等のGUI部品と、現在の画像1402と、過去の画像1403とを表示する。最初、指定された劣化箇所に関して、現在の画像1402(劣化箇所を含む診断画像)が表示される。例えば、現在日時が2017年1月である。また、現在の日時から所定時間(例えば1年)前の過去の日時に、対応する参照データの参照画像が存在する場合、過去の画像1403が表示される。また、対応するデータが存在する場合、ユーザは、バー1401において、比較対象とする過去及び現在の2つの日時を任意に変更できる。変更後の2つの日時の画像が、現在の画像1402及び過去の画像1403として表示される。各画像には、劣化度合い等の情報を併せて表示してもよい。
【0136】
他の画面表示例としては、3つ以上の日時の複数の画像を比較表示してもよいし、同じ領域で複数の画像を切り替えながらアニメーション表示してもよい。
【0137】
上記のように、劣化可視化機能では、ユーザは、画面で、検出された劣化箇所について、対象物3次元モデル上の位置と共に、対応する画像内容を見て詳細を確認できる。ユーザは、過去から現在への時系列で、劣化箇所の発生や進行に伴う劣化度合い等の変化の状態をわかりやすく確認できる。そのため、点検補修作業の計画等にも寄与できる。
【0138】
[劣化箇所可視化機能−変形例]
劣化箇所可視化機能及び画面に関する変形例として以下も可能である。可視化部108は、まず、
図13の(B)のような画面で、対象物3次元モデルを表示し、劣化箇所(診断結果情報)については表示しない。ユーザは、対象物5の構造に関する知見や過去の劣化発生実績に基づいて、画面で対象物3次元モデル上の所望の箇所を選択操作する。例えば、対象物5が橋である場合で、橋の構造上、予め、劣化が発生する可能性が高いとわかっている箇所がある場合に、その箇所が選択される。可視化部108は、選択された箇所(点または領域)に関して、過去の参照データ及び現在の診断データが存在する場合、その部分に関する診断結果情報を参照する。可視化部108は、その診断結果情報から、劣化箇所を対象物3次元モデル上に位置付けた画面、あるいは過去と現在の画像の比較表示画面等を生成して表示する。
【0139】
他の変形例として以下としてもよい。計算機システム100は、ドローン1から空撮画像等を取得した後、診断処理をすぐには実行しない。可視化部108は、画面に、対象物3次元モデルを表示する。ユーザは、その画面で、診断処理対象とする所望の箇所(点または領域)を選択操作する。計算機システム100は、選択指定された箇所に関して、対応する過去の参照データ及び現在の診断データの存在を確認して読み出す。計算機システム100は、読み出したデータを用いて、選択された箇所に関する診断処理を実行する。可視化部108は、診断結果情報から、劣化箇所を対象物3次元モデル上に位置付けた画面、あるいは過去と現在の画像の比較表示画面等を生成して表示する。
【0140】
上記変形例の場合、一部の画像データを対象に診断処理を行うので、対象物5の全領域の診断はできないが、短い処理時間で診断ができる。
【0141】
[効果等]
上記のように、実施の形態の飛行体利用劣化診断システムによれば、過去と現在の空撮画像を比較して対象物の劣化等の状態を診断する際に、診断の効率や精度を高めることができる。本診断システムによれば、飛行体の空撮画像に基づいた劣化診断の作業を支援して効率化を図ることができ、更には劣化診断の自動化を図ることができる。本診断システムによれば、人による目視の画像確認等の作業を低減でき、低コストで劣化診断を実現できる。本診断システムによれば、画面で対象物3次元モデル上に劣化箇所等を可視化でき、診断者は劣化箇所等をわかりやすく認識でき、点検補修等の作業も容易になる。
【0142】
[変形例(1)]
実施の形態の変形例の診断システムとして以下が挙げられる。変形例として、前述の診断部107で、平面マッチング方式(または画像レベルマッチング方式)で過去と現在の画像群の対応付け及び比較処理を含む診断処理(
図5のS4、
図6)を行う際に、公知の機械学習を適用してもよい。機械学習方式としては、深層学習方式を適用してもよい。例えば、
図7のような平面レベルの対応付け及び比較処理を、機械学習で行うことにより、自動的に劣化箇所を検出できる。診断部107は、入力の診断画像群及び参照画像群の各画像について、機械学習(例えば深層学習)処理を施すことで、劣化箇所を検出する。機械学習を用いる場合、予め、機械学習の教師情報として、劣化箇所を含む画像等が入力されて学習が行われる。
【0143】
[変形例(2)]
前述の実施の形態では、空撮時に撮影画像データを得ると共に診断処理を開始し、診断画像群と参照画像群とで同様の処理を適用する方式としたが、これに限らず可能である。変形例として、予め、診断日時よりも事前の処理として、参照データの画像群について、平面マッチング方式の平面検出等の処理を行い、その処理結果情報をDBに格納しておく。これにより、診断日時の診断処理の際には、診断データに対し、参照データの処理結果情報を読み出して処理を行えばよいので、全体処理時間を短縮できる。
【0144】
[変形例(3)]
前述の過去及び現在の画像群について、平面マッチング方式の対応付け及び比較処理を適用しようとする際に、画像によっては平面検出等が難しい場合がある。例えば、対象物5の表面の構造が複雑な場合に、ノイズが多くなり、全く平面が検出できない場合や、細かい多数の平面しか検出できない場合があり得る。変形例の診断システムでは、入力画像が、そのように平面が検出しにくい画像である場合に、例外として扱い、平面マッチング処理を適用せずに、画像レベルマッチング処理等の他の処理を適用して対処する。
【0145】
[変形例(4)]
前述の診断処理では、対応付けられた画像同士を比較して、両者の差分から劣化箇所を検出する。その際、処理方式にも依るが、一般にはノイズを伴う。診断精度を高めるためには、そのノイズの低減が有効である。そこで、変形例の診断システムでは、2段階のノイズ除去処理を適用する。計算機システム100は、第1段階として、比較対象画像の画像データ全体に対し、所定のノイズ除去処理、例えば所定のフィルタ処理を適用する。計算機システム100は、第1段階のノイズ除去処理後、その画像に残っているノイズ部分に関するノイズ度合いを、所定の評価処理で評価する。計算機システム100は、その評価で得たノイズ度合いと、所定の閾値とを比較し、ノイズ度合いが閾値を越えるノイズ部分を含む画像について、第2段階のノイズ除去処理を適用する。第2段階のノイズ除去処は、例えば第1段階とは別の所定のフィルタ処理等である。これにより、診断処理の際に劣化箇所の誤検出を低減できる。
【0146】
[変形例(5)−ルート設定方式]
変形例として、追加機能におけるルート設定方式について説明する。このルート設定方式の機能では、過去のルート及び参照データ等に基づいて、現在及び未来の診断のためのドローン1の好適なルート、診断日時、撮影設定情報等を自動的に生成し、事前設定する。好適なルート、診断日時、及び撮影設定情報とは、過去の画像内容に対して現在の画像内容の揺れやずれ等が低減されるようなルート、診断日時、及び撮影設定情報である。具体的には、対象物5の環境における光や風の状況、時期や天候等を考慮して、診断対象領域がなるべく鮮明に写るように、ルート、診断日時、及び撮影設定情報が設定される。言い換えると、過去の設定ルートに基づいて、所定の補正によって、現在の好適なルートが生成される。この機能によって事前設定されたルート、診断日時、及び撮影設定情報に従って実際に空撮を行わせる。これにより、過去と現在の画像内容の違いが小さく、同じ診断対象領域が鮮明に写った診断画像群が得られやすくなる。そのため、対応付け及び比較処理を容易化でき、診断精度を高めることができる。
【0147】
図15は、上記ルート設定方式の機能について、対象物5の周囲のルート及び撮影設定情報等の例を示す。
図15の(A)は、過去のある日時に設定された、基本ルート及び撮影設定情報を示す。この基本ルート及び撮影設定情報は、例えば対象物5の側壁面の診断対象領域をカバーするように設定される。基本ルート上、ドローン1及びカメラ4の位置(3次元座標)及び撮像時点毎に、撮影方向、及び撮影条件等が設定される。
【0148】
図15の(B)は、(A)の基本ルート、撮影設定情報、及び実際に空撮した結果の参照データに基づいて、ルート設定機能を用いて生成した好適なルート(補正ルート)及び撮影設定情報等を示す。
【0149】
本ルート設定方式では、好適なルートを設定する際、空間的な情報(ルート上の位置等)を決定する部分については、過去のルート、及びそのルート上の実際の航行結果情報に基づいて決定される。好適なルートにおける時間的な情報(診断日時、ルート上の撮像時点等)を決定する部分については、過去のルートの時間情報に基づいて、時期や天候、太陽光の日当たりや影、風向きや風速、ドローン1と対象物5との位置関係、カメラ4の撮影方向、等を考慮して決定される。
【0150】
計算機システム100は、風や光の状況を考慮した補正計算によって、基本ルート及び撮影設定情報を補正することで、補正ルート及び撮影設定情報を得る。計算機システム100は、時期や天候等に応じた、風向きや風速、太陽光の向きや光量、対象物5とドローン1との位置関係等を考慮して、補正計算を行う。補正計算によって、ルート上の位置、撮像時点、撮影方向、及び撮影条件等が補正される。
【0151】
本機能の補正例としては、以下が挙げられる。
・光が当たりやすい時期や天候に合わせて、おすすめ診断日時を設定する。
・相対的に光が当たりにくい領域について、撮影方向や撮影条件を補正する。
・風向き等に合わせて、撮像時点及び時間間隔を補正する。
【0152】
また、計算機システム100は、(A)の基本ルートの空撮時の参照画像群から、風や光の状況を考慮した画像内容を判断し、例えば、診断対象領域からのずれ等が大きい箇所や、鮮明さが不足する箇所等を検出してもよい。また、計算機システム100は、例えば、診断日時に、センサを用いて、風速、風向き、温度等を計測し、その計測値を考慮して、ルート及び撮影設定情報を補正してもよい。
【0153】
本機能によれば、好適なルート等の設定によって、時間的に異なる画像の画像内容の違いを低減し、対応付け及び比較処理を容易にし、診断精度を高めることができる。
【0154】
なお、実施の形態の診断システムでは、ユーザが、ドローン1の基本ルートを設定し、診断日時には、そのルート上を自律航行させる。診断日時にユーザがドローン1を操縦する必要は無い。また、ルートは、所定のルールを守るように設定される。ルールの例としては、航行が許容される所定の時期や時間帯、場所がある。また、飛行体の航行時の高さ、飛行体の重さ等に制限がある。また、飛行体と対象物との間に所定の距離が確保される。飛行体の下に多数の人がいる場合には飛行不可とされる。
【0155】
[ルート設定処理]
図16は、計算機システム100のルート設定機能の処理フローを示す。
図16は、ステップS101〜S105を有する。
【0156】
(S101) 計算機システム100は、設定画面でのユーザ操作に基づいて、ルート設定機能のルート設定が指示された場合、過去のルート設定情報、参照データ、診断結果情報等を読み出して入力する。参照データは、参照画像群、参照センサデータ、撮影情報等を含む。撮影情報は、診断及び空撮の日時、撮影タイミング(ルート上の撮像時点)、カメラ4の撮影設定情報、等を含む。
【0157】
(S102) 計算機システム100は、入力データである過去の日時の設定ルート及び参照データ等に基づいて、現在の日時の診断のための空間的に好適なルートを生成する。空間的に好適なルートとは、対象物5の診断対象領域を、ずれ等が少なく空撮できるルートである。過去の実績の航行ルートは、設定ルートに対してずれ等がある。計算機システム100は、その差を低減するように、好適なルートを生成する。
【0158】
(S103) 計算機システム100は、入力データである過去の日時の撮影情報等に基づいて、現在の日時の診断のためのカメラ4の好適な撮影設定情報を生成する。好適な撮影設定情報とは、対象物5の診断対象領域を、ずれ等が少なく撮影できる撮影方向、撮影タイミング、撮影条件等である。
【0159】
(S104) 計算機システム100は、入力データである過去の日時の診断結果情報等に基づいて、現在の日時の診断のための、好適な診断日時を生成し、おすすめ診断日時とする。好適な診断日時とは、対象物5の診断対象領域を、なるべく鮮明に撮影できる時期や時間帯である。
【0160】
(S105) 計算機システム100は、上記生成したルート、診断日時、撮影設定情報等の各情報を、設定画面に表示してユーザに対し確認を行う。ユーザは、設定画面で各情報を確認し、採用する場合には、確定ボタンを押す。ユーザは、提示された情報を一部修正して採用することもできる。これにより、計算機システム100は、現在または未来の診断のための好適なルート、診断日時、撮影設定情報等を事前設定する。
【0161】
[変形例(6)−カメラ調整方式]
変形例として、追加機能うち、カメラ調整方式の機能について説明する。このカメラ調整方式の機能では、ドローン1のルートに従って航行中に、リアルタイムでカメラ4の撮影設定を調整するように撮影制御を行う。この調整は、過去の画像に対する現在の画像内容の揺れやずれ等が低減されるように撮影設定を変更することである。具体的には、空撮時に、ルート上の所定の撮像時点毎に、現在と過去の画像で重複度合いがなるべく大きくなるように、カメラ4の撮影方向、撮影タイミング、撮影条件等を補正する。
【0162】
図17は、変形例におけるカメラ調整方式として、空撮中のカメラ調整の例について示す。この機能では、ドローン1の空撮時に、所定の時間間隔の制御時点毎に、対象物5の診断対象領域を、過去の画像に対してなるべくずれ等が少なく撮影できるように、リアルタイムでカメラ4の撮影方向等を調整する。これにより、現在の診断日時の空撮画像の内容を、過去の参照画像の内容になるべく近付ける。これにより、診断処理の際に、対応付け及び比較処理が容易化され、診断精度を高めることができる。
【0163】
具体的に、計算機システム100は、所定の時間間隔の制御時点(例えば時点t1,t2,t3)毎に、現在の画像と過去の画像とで重複度合いを計算する。現在の画像と過去の画像とで重複する領域を斜線領域で示す。計算機システム100は、制御時点間で、重複度合いがなるべく大きくなるように、カメラ4の撮影方向等の撮影設定情報をリアルタイムで調整する。例えば、時点t1の状態に基づいて、次の時点t2の撮影設定情報を調整するように調整処理が行われる。
【0164】
この方式におけるカメラ4の調整処理(補正処理)は、撮像時点毎ではなく、それよりも粗い所定の時間間隔の制御時点毎に行うことで、処理負荷を低くして実現する。また、この方式では、所定の時間間隔の画像毎に補正処理を行っているが、その際、後述のグループ分け設定を用いて、グループ毎(例えばグループ内の代表画像毎)に調整処理を行うようにしてもよい。また、変形例として、カメラ4の撮影設定情報だけでなく、ドローン1の航行パラメータを調整することで、同様の目的を実現するようにしてもよい。
【0165】
[カメラ調整処理]
図18は、上記カメラ調整機能の処理フローを示す。
図18は、ステップS201〜S205を有する。
【0166】
(S201) 計算機システム100は、設定に基づいて診断日時にドローン1による空撮を行わせる。計算機システム100は、ドローン1(カメラ4)からリアルタイムで空撮画像データを受信、入力する。計算機システム100は、入力の診断画像群の時系列の連続画像から所定の時間間隔の制御時点毎に1枚ずつ画像(抽出診断画像とする)を順次に抽出する。
【0167】
(S202) 計算機システム100は、入力の診断画像群の抽出診断画像に基づいて、対応する参照画像群を参照し、各画像の撮影情報を用いた対応付けによって、参照画像群から画像(抽出参照画像とする)を抽出する。計算機システム100は、抽出参照画像と抽出診断画像とを比較対象画像として対応付ける。
【0168】
(S203) 計算機システム100は、上記対応付けた比較対象画像において、過去の画像と現在の画像との重複度合いを重複率として計算する。また、計算機システム100は、両画像のずれ等の方向(
図17、ずれ方向)を計算する。ずれ方向は、例えば両画像の中心点を結ぶベクトルとして得られる。なお、重複率に限らず、重複面積等を計算するようにしてもよい。
【0169】
また、計算機システム100は、両画像の重複率を計算する際に、前述の平面マッチング処理を用いてもよい。この場合、各画像内の平面同士での重複率を計算する。これにより、調整処理を効率化できる。
【0170】
(S204) 計算機システム100は、上記重複率及びずれ方向に基づいて、所定時間間隔の制御時点間の撮影設定情報の調整のための調整量を計算する。ここでは、カメラ4の撮影方向を調整する場合とする。計算機システム100は、現時点のカメラ4の撮影方向(例えば
図17の撮影方向1701)から、次の時点の撮影方向(例えば撮影方向1702)への調整量を計算する。この際、計算機システム100は、調整量として、両画像の重複率を高める方向(ずれ方向に対する反対方向)へ移動させるための画素数を計算する。そして、計算機システム100は、その移動画素数に対応したカメラ4の撮影方向の調整量を計算する。
【0171】
(S205) 計算機システム100は、上記で得た調整量に従って、次の時点のためのカメラ4の撮影設定情報を変更するようにリアルタイムで制御する。上記のような処理が時点毎に同様に繰り返される。
【0172】
[変形例(7)−段階的対応付け方式]
変形例として、追加機能のうち、段階的対応付け方式の機能について説明する。前述のように、基本的に対応付け及び比較処理は難しく、処理負荷が高い。過去と現在の画像内容において類似度合いが高い画像同士でないと、対応付けが難しい。この変形例の段階的対応付け方式では、過去と現在の画像群の対応付け処理に関して、グループ分けを用いて、例えば2段階で実現する。
【0173】
計算機システム100の計算機は、予め、対象物3次元モデルデータの3次元構造、ルート、撮影設定情報(例えばカメラ撮影方向)等の情報に基づいて、対象物5を含む空間全体を、複数のグループ(空間部とも記載する)に分ける。グループは、時空間における大まかな区分の空間部に相当する。グループ分けの仕方は特に限定しない。例えば、建築物の構造部分や壁面部分等に応じてグループ分けしてもよい。例えば、カメラ撮影方向(またはドローン1の進行方向)の類似性に応じてグループ分けしてもよい。
【0174】
計算機は、前述の対応付け処理の際に、まず、第1対応付けとして、グループ単位での粗い対応付けを行う。計算機は、診断画像群を、グループ分けに対応させて、複数の画像群(画像グループ)に分ける。計算機は、過去のある画像グループと、現在のある画像グループとを、比較対象グループとして対応付ける。第1対応付けは、グループ毎の情報を用いて比較的に容易にできる。
【0175】
次に、第1対応付け後、計算機は、第2対応付けとして、比較対象グループ内の画像単位で対応付けを行う。計算機は、過去と現在の画像グループの間において、画像同士で、前述の平面レベルでのマッチング、または画像レベルのマッチングを行い、比較対象画像を得る。計算機は、グループ内で対応付けられた画像同士で比較処理を行って、劣化箇所を判定、検出する。画像レベルマッチングを用いる場合には、各画像内から検出される複数の特徴点に基づいて対応付けを行う。
【0176】
計算機は、上記2段階の対応付け処理後に、各グループ単位の比較処理後の診断結果情報を接続して1つに統合することで、総合的な診断結果情報を得る。
【0177】
図19は、変形例における、段階的対応付け方式について示す。
図19の(A)は、参照画像群とグループの例を示す。空間内にグループG1,G2,G3等を有する。そのグループに対応させて画像グループが設定される。
図19の(B)は、診断画像群とグループの例を示す。空間内にグループG11,G12,G13等を有する。そのグループに対応させて画像グループが設定される。計算機は、第1対応付けで、画像グループ同士を対応付ける。例えば、グループG1とグループG11とが対応付けられる。計算機は、第2対応付けで、例えば、グループG1内の複数の画像と、グループG11内の複数の画像とで対応付けを、平面マッチング方式等を用いて行う。
【0178】
上記方式によれば、対応付け処理を効率化し、処理時間を短縮できる。上記グループ単位の第1対応付け処理については、更に以下のように行ってもよい。計算機システム100は、予め、参照画像群の複数のグループ(画像グループ)について、以下の処理を行う。計算機システム100は、グループ毎に、複数の画像から、1つの画像(代表画像とする)を選択する。例えば、所定の時間間隔毎の撮像時点の画像が選択される。あるいは、例えば、対象物3次元モデル上で、特定の箇所に対応する画像が選択されてもよい。
図19では、代表画像の例を二重枠の四角で示す。計算機は、参照データにおいて、グループ内の選択した代表画像毎に、詳細情報として、画像内の特徴点の位置座標情報等を記憶する。計算機は、第1対応付け処理の際には、グループ内の代表画像の詳細情報を用いて、診断画像群の画像グループの画像と比較することで、グループ単位での対応付けを行う。
【0179】
[変形例−部分的SFM処理方式]
変形例として、追加機能のうち、部分的SFM処理方式の機能について説明する。この部分的SFM処理方式では、大量の空撮画像データがある場合に、全部の画像にSFM処理を行うのではなく、一部の画像にSFM処理を行う。
【0180】
公知のSFM処理は、複数の2次元画像から対象物の3次元構造(表面の構造を表す特徴点等)及びカメラ位置等を復元する処理である。本診断システムでは、例えば前述の変換の際に、SFM処理を用いて、連続画像の最低2枚の複数の画像(画像内の劣化箇所の2次元座標)から、対象物3次元モデル上の3次元構造(劣化箇所の3次元座標)を復元する。しかし、公知のSFM処理は、比較的処理負荷が高いため、大量の空撮画像データに実行すると、長時間を要し、効率が良くない。
【0181】
そこで、この部分的SFM処理方式では、候補となる多数の空撮画像のうち、選択した一部の画像に対し、SFM処理を実行して、劣化箇所を表す3次元情報(特徴点、3次元座標)を得る。
【0182】
SFM処理対象の選択の仕方としては、予め、対象物5を含む空間全体が複数の空間部(前述のグループとしてもよい)に分けられ、診断画像群がそれに対応させて複数の画像群に分けられる。計算機は、その空間部の画像群を単位として、SFM処理対象として選択する。
【0183】
また、この部分的SFM処理方式では、診断画像群における複数の各々の空間部の画像群に対し、複数のSFM処理を並列的に実行し、複数のSFM処理の結果情報を、1つの結果情報に統合する。上記機能により、診断処理負荷を低くし、処理時間を短縮できる。
【0184】
図20は、変形例における、部分的SFM処理方式について示す。計算機システム100は、例えば、診断画像群について、空間部に対応するグループ単位で選択して、SFM処理を適用する。
図20では、例えば、複数の空間部として、グループG21,G22,G23を有する。グループは予め設定可能である。計算機は、診断画像群を、グループに対応させて、複数の画像群に分ける。計算機は、診断画像群のグループから、SFM処理対象のグループを選択する。本例では、グループG21〜G23のすべてを対象とする。計算機は、選択したグループG21〜G23について、グループ毎にSFM処理を実行する。例えば、SFM処理部107Dは、複数のグループのグループ毎のSFM処理を、並列計算処理で行ってもよい。計算機システム100は、グループ毎のSFM処理結果情報を得た後、1つの情報に統合する。
【0185】
なお、空間部(グループ)の分け方の構成によっては、統合の際に、ずれ等が発生し得る。そのため、予め、好適な空間部(グループ)に分ける設定が望ましい。例えば、空間部(グループ)同士のつながり部分における情報量が少なくなるように設定する。これにより、統合の際に、ずれ等が発生しにくくなり、SFM処理精度を高くできる。
【0186】
[変形例−優先空撮方式]
変形例として、優先空撮方式について説明する。この優先空撮方式では、対象物5のうち、特定の箇所または領域に着目し、その特定の箇所を、優先箇所として、優先的に空撮するように、ルート及びカメラ4の撮影設定情報等を設定及び制御する。例えば、ユーザは、設定画面の対象物3次元モデルにおいて、予め、特定の箇所または領域を、優先箇所として設定する。特定の箇所は、例えば、対象物5の構造の知見や過去の診断の実績から、劣化等の発生可能性が高いとわかっている箇所である。過去の参照データに基づいて、検出済みの劣化箇所を、優先箇所として設定してもよい。
【0187】
図21は、優先空撮方式について示す。本例では、対象物5が橋である。その橋の3次元モデル構造等に基づいて、相対的に劣化(例えば応力集中による亀裂、化学反応による腐食等)の発生可能性が高い箇所が、優先箇所として設定される。本例では、優先箇所2101を示す。計算機システム100は、その優先箇所の設定情報に基づいて、その優先箇所を優先的に空撮するための好適なルートやカメラ4の撮影設定情報を設定する。ここでは、基本的なルートに基づいて、カメラ4の撮影方向や撮影条件を補正する場合を示す。本例では、ルート上で、連続する所定の複数の撮像時点及び位置において、同じ優先箇所を向くように、カメラ4の撮影方向が設定される。実際の空撮時には、その撮影設定情報に従って、カメラ4の撮影方向が制御される。
【0188】
これにより、診断画像群として、その優先箇所を含む複数の画像が得られる。候補として、同じ優先箇所を撮影した複数の画像がある。そのため、計算機システム100は、その優先箇所に関して、対応付け及び比較処理を容易に実現でき、診断精度を高くすることができる。
【0189】
(他の実施の形態)
図22は、本発明の他の実施の形態の診断システムにおける、対象物を含む空撮画像及び対象物3次元モデルについて示す。対象物として、電柱及び電線に適用する場合を示す。この形態では、診断処理において、前述の劣化箇所に相当する状態及び箇所として、対象物(電柱及び電線)とその周囲の他の物体(樹木等)との接触状態の接触箇所を診断、検出する。
【0190】
図22の(A)は、対象物を含む空撮画像の例を示す。本例では、画像内において、道路付近に、2本の電柱を有し、2本の電柱を経由する電線を有する。そして、他の物体として、樹木を有する。電線と樹木とが接触している可能性がある。計算機システム100は、前述の実施の形態と同様の対応付け及び比較処理を含む診断処理に基づいて、このような接触箇所を推定、検出する。計算機システム100は、2次元画像から、接触箇所の候補を検出した場合、2次元情報から対象物3次元モデルへの位置付けを行い、可視化画面を表示する。
【0191】
計算機システム100は、診断処理の際、例えば電線が細いことから、画像から電線が検出しにくい場合がある。また、そのことから、電線と樹木との接触の判定が難しい場合がある。その場合、計算機システム100は、以下のように処理を工夫する。
【0192】
計算機システム100は、過去及び現在の空撮画像から、前述の比較処理、あるいはSFM処理や機械学習等によって、所定の対象物や他の物体を検出し、対象物と他の物体との接触箇所の候補を検出する。計算機システム100は、接触箇所候補の2次元座標から、対象物3次元モデル上の3次元座標を計算し、対象物3次元モデル上に位置付ける。その際、接触箇所候補は、所定の強調表示で可視化される。
【0193】
計算機システム100は、空撮画像から電線を検出できない場合、空撮画像または過去の対象物3次元モデルから付近の2本の電柱を検出し、2本の電柱の3次元座標を得る。計算機システム100は、3次元空間内の2本の電柱からの電線の位置の推定として、2本の電柱の先端部を結ぶ電線を、推定の電線として仮設定する。計算機システム100は、対象物3次元モデル上にその推定の電線を位置付けて表示する。その際、推定の電線は、所定の表現で可視化される。これにより、ユーザは、まず、画面で、その接触箇所候補に関してわかりやすく認識できる。よって、電気設備点検等の計画が立てやすくなる。
【0194】
更に、計算機システム100は、対象物3次元モデル上で、接触箇所候補について、推定の電線と、樹木等の物体との接触判定を行う。計算機システム100は、接触可能性を数値として計算し、ユーザに対して判定結果として表示してもよい。例えば、計算機システム100は、空撮画像から、樹木等の他の物体の高さを概略的に検出し、推定の電線の高さと比較することで、接触状態を判定する。あるいは、計算機システム100は、空撮画像から、樹木等の物体についても、SFM処理等によって3次元構造(特徴点)を復元し、対象物3次元モデル上で、推定の電線と樹木等の物体とを比較して、接触状態を判定してもよい。これにより、ユーザは、画面で、接触箇所候補に関する接触可能性を確認できる。
【0195】
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。