(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、飛行機などの乗り物には、着地時などに受ける衝撃を緩和するために、ダンパが備えられている。ダンパには、オイルによる抵抗力を利用したオイルダンパや、部材同士の摩擦力を利用した摩擦ダンパなどがあるが、オイルを取り扱うことができないような場所では摩擦ダンパが使用されることがある。
【0003】
このような摩擦ダンパとして、摺動部材と、摺動部材を収納する収納部と、摺動部材との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段を備えた摩擦ダンパが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の摩擦ダンパは、板状の摺動部材と、該摺動部材を収納する四角筒状の収納部とを備え、収納部には、摺動部材との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段が備えられている。摩擦発生手段は、板状の摺動部材の表面及び裏面にそれぞれ当接する複数の摩擦部材と、収納部の内側に設けられ複数の摩擦部材のそれぞれを摺動部材に押し付ける複数の付勢部材と、摩擦力を調整する調整手段とを備えている。
【0005】
調整手段は、摺動部材の表面側の付勢部材に対向して収納部に形成されたねじ孔と、収納部の外側からねじ孔にねじ込むことで摩擦部材を摺動部材に対して垂直方向に押し付けるボルトとを備えており、ボルトのねじ込み量を調整することで、摩擦部材を摺動部材に対して垂直方向に押し付ける付勢力によって作用する摩擦力が調整される。摩擦ダンパの両端を結ぶ直線に対して真っすぐに衝撃力が入力された場合に、調整された付勢力が作用し、所定の摩擦力が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、乗り物への衝撃力が摩擦ダンパに入力される際、摩擦ダンパの取付場所によって、摩擦ダンパの両端部を結ぶ直線に対して衝撃力が真っすぐに入力されずに傾いて入力されることがある。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の摩擦ダンパによれば、調整手段が摺動部材の表面側にのみに配置されており、一方向からしか付勢力を調整できないため、衝撃力が異なった傾きで入力される場合に、所定の摩擦力を得ることが難しい。
【0009】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、取付場所によらず所定の摩擦力を得ることができるダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]上記目的を達成するため、本発明のダンパは、
直線状に延びる摺動部材と、該摺動部材を収納する収納部とを備え、該収納部に前記摺動部材との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段を備えているダンパであって、
前記摩擦発生手段は、前記摺動部材の外側面と、該外側面に当接する複数の当接部材と、前記収納部に設けられ前記複数の当接部材のそれぞれに前記摺動部材の軸線に向かって付勢力を作用させることで前記複数の当接部材のそれぞれを前記摺動部材に押し付ける複数の付勢手段とを備え、
前記摺動部材の横断面において、前記複数の付勢手段のうち少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから前記複数の当接部材のそれぞれに作用する前記付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、前記複数の当接部材と前記複数の付勢手段とが配置されていることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、ダンパに衝撃力が入力される際、摺動部材が収納部に収納されて、摩擦発生手段によって摺動部材との間に摩擦力が発生する。摩擦発生手段は、摺動部材の外側面に当接する複数の当接部材のそれぞれを、収納部に設けられた複数の付勢手段で摺動部材に押し付けて付勢力を作用させることで、複数の方向から当接部材と摺動部材の間に摩擦力を発生させることができる。さらに、複数の当接部材と複数の付勢手段とは、摺動部材の横断面において、少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから複数の当接部材のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、配置されているので、一方向のみだけではなく、いずれの方向に対しても付勢力を作用させることができる。このため、乗り物への衝撃力がダンパに入力される際に、ダンパの両端部を結ぶ直線に対して衝撃力がいずれの方向に傾いて入力された場合であっても、摺動部材の横断面において、入力が逃げて摩擦力が小さくなる位置での付勢手段の付勢力を大きくすることで摩擦力を大きくし、摩擦発生手段全体として所定の摩擦力にすることができる。結果、ダンパの取付場所によらず所定の摩擦力に調整することができる。
【0012】
[2]また、本発明のダンパにおいて、
前記複数の付勢手段及び前記複数の当接部材のそれぞれは、前記摺動部材の横断面において、前記軸線の周りに回転対称性を有するように配置されていることが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、付勢手段が軸線のまわりに回転対称性を有するように配置されているので、衝撃力の入力がいずれの方向に傾いても、付勢力を大きくしたい位置又は付勢力を大きくしたい位置に近い位置に付勢手段が配置され、付勢手段の付勢力の調整を行い易くすることができる。
【0014】
[3]また、本発明のダンパにおいて、
前記複数の付勢手段及び前記複数の当接部材のそれぞれは、前記摺動部材の長手方向について同じ位置に配置されていることが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、付勢手段の付勢力の調整を、摺動部材の長手方向における付勢力の作用の違いを考慮せずに、摺動部材の長手方向の同じ位置のみで容易に行うことができる。
【0016】
[4]また、本発明のダンパにおいて、
前記摺動部材は筒状であり、
前記収納部の内側には、該収納部の軸線に沿って延び少なくとも前記摩擦発生手段が配置される前記収納部の内側に位置するとともに前記摺動部材の内周面を摺動可能に支持する内筒が備えられていることが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、付勢手段の付勢力を受ける摺動部材を内側から内筒で摺動可能に支持するので、摺動部材が内側に逃げずに大きな付勢力でも受けるようにすることができる。
【0018】
[5]また、本発明のダンパにおいて、
前記収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、
前記摺動部材は、角筒状のピストンロッドであり、
前記摩擦発生手段は、前記角筒状の前記外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されていることが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、摺動部材は、角筒状のピストンロッドであるので、ピストンロッド及びシリンダを容易に構成することができる。さらに、摩擦発生手段は、角筒状の外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されているので、外側面に摩擦発生手段の当接部材が当接する面積を確保しやすくできる。
【0020】
[6]また、本発明のダンパにおいて、
前記収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、
前記摺動部材は、角柱状のピストンロッドであり、
前記摩擦発生手段は、前記角柱状の前記外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されていることが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、収納部は、筒状又は有底筒状のシリンダであり、摺動部材は、角柱状のピストンロッドであるので、ピストンロッド及びシリンダを容易に構成することができる。さらに、摩擦発生手段は、角柱状の外側面を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されているので、外側面に摩擦発生手段の当接部材が当接する面積を確保しやすくできる。
【0022】
[7]また、本発明のダンパにおいて、
前記摩擦発生手段は、前記収納部の前記摺動部材挿入側の端部に設けられており、
前記収納部の表面から径方向外側に突出する台座部と、
該台座部の外端面から内周面に貫通し、前記当接部材が摺動可能に設けられるとともに前記外端面側に前記付勢手段が設けられる貫通孔とを備えていることが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、摩擦発生手段を、収納部の摺動部材挿入側の端部に設けることで、限られた摺動部材のストロークで、摩擦を発生させるストロークを最大限にすることができる。さらに、収納部の表面から径方向外側に突出する台座部に、外端面から内摺面に貫通する貫通孔を形成し、該貫通孔に当接部材を設けて外端面側に付勢手段を設けるので構成を簡単にすることができる。
【0024】
[8]また、本発明のダンパにおいて、
前記付勢手段は、前記貫通孔に設けられた雌ねじ部と、該雌ねじ部に螺合される雄ねじ部と、該雄ねじ部と前記当接部材との間で前記貫通孔に収納されるとともに圧縮されることで反発力が大きくなる第1弾性部材であることが好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、貫通孔に設けた雌ねじ部に雄ねじ部を螺合し、雄ねじ部によって第1弾性部材を圧縮し、当接部材を付勢するので、付勢力の調整を容易に行うことができる。
【0026】
[9]また、本発明のダンパにおいて、
前記収納部の内側に、ばね座が設けられ、
該ばね座に、前記摺動部材を伸び方向に付勢する第2弾性部材が設けられていることが好ましい。
【0027】
かかる構成によれば、摺動部材が第2弾性部材によっても付勢されるので、より大きな衝撃力に対応することができる。
【0028】
[10]また、本発明のダンパにおいて、
直線状に延びる摺動部材と、該摺動部材を収納する収納部とを備え、該摺動部材に前記収納部との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段を備えているダンパであって、
前記摩擦発生手段は、前記収納部の内周面と、該内周面に当接する複数の当接部材と、前記摺動部材に設けられ前記複数の当接部材のそれぞれに前記内周面に向かって付勢力を作用させることで前記複数の当接部材のそれぞれを前記内周面に押し付ける付勢手段とを備え、
前記摺動部材の横断面において、前記複数の付勢手段のうち少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから前記複数の当接部材のそれぞれに作用する前記付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、前記複数の当接部材と前記複数の付勢手段とが配置されていることが好ましい。
【0029】
かかる構成によれば、ダンパに衝撃力が入力される際、摺動部材が収納部に収納されて、摩擦発生手段によって摺動部材との間に摩擦力が発生する。摩擦発生手段は、収納部の内周面に当接する複数の当接部材のそれぞれを、摺動部材に設けられた複数の付勢手段で収納部の内周面に押し付けて付勢力を作用させることで、複数の方向から当接部材と内周面の間に摩擦力を発生させることができる。さらに、複数の当接部材と複数の付勢手段とは、摺動部材の横断面において、少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから複数の当接部材のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、配置されているので、一方向のみだけではなく、いずれの方向に対しても付勢力を作用させることができる。このため、乗り物への衝撃力がダンパに入力される際に、ダンパの両端部を結ぶ直線に対して衝撃力がいずれの方向に傾いて入力された場合であっても、摺動部材の横断面においてそのままであれば摩擦力が小さくなるような位置で、付勢手段の付勢力を大きくすることで摩擦力を大きくし、摩擦発生手段全体として所定の摩擦力にすることができる。結果、ダンパの取付場所によらず所定の摩擦力に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るダンパ10は、例えば遊園地のアトラクション等に使用される乗り物1に備えられている。乗り物1には、内部にダンパ10を介して板状の基部2が備えられている。詳細には、乗り物1は、外側を構成する本体部3と、該本体部3に設けられダンパ10の一端を揺動可能に支持する第1支持部4と、基部2に設けられダンパ10の他端を揺動可能に支持する第2支持部5と、複数のダンパ10に支持される基部2と、基部2に設けられ乗員を支持するシート部6とを備えている。
【0032】
乗り物1は、急発進時や急停止時に衝撃力を受ける。この衝撃力は、ダンパ10によって吸収される。なお、実施形態では、乗り物1を遊園地のアトラクション等で使用される乗り物1としたが、これに限定されず、乗り物1は、自動車、特殊車両、飛行機等、衝撃を吸収する必要があるものであれば他の乗り物1であっても差し支えない。
【0033】
次にダンパ10の構成について説明する。
図1及び
図2に示すように、ダンパ10は、直線状に延びる摺動部材11と、該摺動部材11を収納する収納部20とを備え、該収納部20に摺動部材11との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段30を備えている。
【0034】
摺動部材11は、角筒状のピストンロッドであり、端部には第1支持部4に取付けられる第1取付部12が設けられている。第1取付部12は、摺動部材11の端部から該摺動部材11の軸方向に突出する板状の部材であり、その中心部に第1貫通孔13が形成されている。第1支持部4に設けられた軸が第1貫通孔13に通されることで、第1取付部12が第1支持部4に支持される。
【0035】
収納部20は、有底筒状のシリンダであり、底部21には第2支持部5に取付けられる第2取付部22が設けられている。第2取付部22は、底部21から収納部20の軸方向に突出する板状の部材であり、その中心部に第2貫通孔23が形成されている。第2支持部5に設けられた軸が第2貫通孔23に通されることで、第2取付部22が第2支持部5に支持される。
【0036】
図4及び
図5に示すように、摩擦発生手段30は、収納部20の摺動部材11挿入側の端部に設けられており、収納部20の表面から径方向外側に突出する8つの台座部31を備えている。摩擦発生手段30を、収納部20の摺動部材11挿入側の端部に設けることで、限られた摺動部材11のストロークで、摩擦を発生させるストロークを最大限にすることができる。さらに、収納部20の表面から傾方向外側に突出する台座部31に、外端面34から内周面に貫通する貫通孔35を形成し、該貫通孔35に当接部材32を設けて外端面34側に付勢手段33を設けるので構成を簡単にすることができる。
【0037】
次にダンパ10の摺動部材11の状態について説明する。
図3Aは摺動部材11が収納部20に収納された状態であり、摺動部材11の端部と収納部20の端部が面一になっており、ダンパ10が全体として最も縮んだ状態である。
図3Bは摺動部材11が収納部20から最も出ており、ダンパ10が全体として最も伸びた状態である。
【0038】
次にダンパ10の構成について詳細に説明する。
図2、
図4及び
図6に示すように、摺動部材11は筒状であり、端部に蓋部14が設けられている。摺動部材11の内側には、蓋部14から摺動部材11の挿入側の端部近傍まで該摺動部材11の軸線に沿って第1の内筒15が延びている。
【0039】
収納部20は、筒状であり、端部に底部21が設けられている。収納部20の内側には、底部21から収納部20の開口端部近傍まで該収納部20の軸線に沿って第2の内筒24が延びている。第2の内筒24は、摺動部材11の内周面16を摺動可能に支持している。この第2の内筒24の内側に、第1の内筒15が摺動可能に挿入されている。
【0040】
摺動部材11の先端部の内周面16には、第2の内筒24を案内するガイド部18が設けられている。第2の内筒24の先端部の内周面27には、第1の内筒15を案内するガイド部28が設けられている。
【0041】
付勢手段33の付勢力を受ける摺動部材11を内側から第2の内筒24で摺動可能に支持するので、摺動部材11が内側に逃げずに大きな付勢力でも受けるようにすることができる。
【0042】
収納部20の内側に配置された第2の内筒24の内側の底部21にばね座25が設けられている。該ばね座25には、第1の内筒15に当接することで摺動部材11を伸び方向に付勢する第2弾性部材26が設けられている。この構成により、摺動部材11が第2弾性部材26によっても付勢されるので、より大きな衝撃力にも対応することができる。
【0043】
なお、実施形態では、第2の内筒24は、底部21から収納部20の開口端部近傍まで延びるように形成されているが、これに限定されず、第2の内筒24は該収納部20の軸線に沿って延び少なくとも摩擦発生手段30が配置される収納部20の内側に位置するとともに摺動部材11の内周面16を摺動可能に支持していればよい。また、底部21は収納部20の端部に設けたが、これに限定されず、第2の内筒24を支持できれば底部21は、収納部20の長手方向の途中に設けても差し支えない。さらに実施形態では、摺動部材11を角筒状としたが、これに限定されず、中実の角柱としてもよく、この場合は、収納部20の内側から第2の内筒24を取り除くことで摺動部材11を収納部20に収納することができ、構造を簡単にすることができる。
【0044】
次に摩擦発生手段30について説明する。
図4から
図6に示すように、摩擦発生手段30は、摺動部材11の角筒状の外側面17を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されている。
【0045】
摩擦発生手段30は、摺動部材11の外側面17と、該外側面17に当接する複数の当接部材32と、収納部20から突出する台座部31に設けられ複数の当接部材32のそれぞれに摺動部材11の軸線に向かって付勢力を作用させることで複数の当接部材32のそれぞれを摺動部材11に押し付ける複数の付勢手段33とを備えている。
【0046】
複数の付勢手段33及び複数の当接部材32のそれぞれは、摺動部材11の長手方向について同じ位置に配置されている。このような構成にすることで、付勢手段33の付勢力の調整を、摺動部材11の長手方向における付勢力の作用の違いを考慮せずに、摺動部材11の長手方向の同じ位置のみで容易に行うことができる。また、摩擦発生手段30は、角柱状又は角筒状の外側面17を構成する複数の平面のそれぞれに対して配置されているので、外側面17に摩擦発生手段30の当接部材32が当接する面積を確保しやすくできる。
【0047】
なお、実施形態では、複数の付勢手段33及び複数の当接部材32のそれぞれは、摺動部材11の長手方向について同じ位置に配置したが、これに限定されず、複数の付勢手段33及び複数の当接部材32のそれぞれを、摺動方向11の長手方向にずらして配置してもよく、この場合は長手方向の位置の違いによる付勢力の作用の違いも考慮した摩擦力の調整が可能となる。
【0048】
摺動部材11の横断面において、複数の付勢手段33のうち少なくとも一対の付勢手段33のそれぞれから複数の当接部材32のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、複数の当接部材32と複数の付勢手段33とが配置されている。詳細には、複数の付勢手段33及び複数の当接部材32のそれぞれは、摺動部材11の横断面において、摺動部材11の軸線の周りに回転対称性を有するように配置されている。
【0049】
具体例として、
図5に示す3つの付勢手段33を便宜上、付勢手段33a、33b、33cとして示し、付勢手段33a、33b、33cのそれぞれから3つの当接部材32に作用する付勢力のベクトルをそれぞれベクトルa、ベクトルb、ベクトルcとして説明する。
【0050】
一対の付勢手段33a及び付勢手段33bのそれぞれから2つの当接部材32のそれぞれに作用するベクトルa及びベクトルbについて説明すると、ベクトルaとベクトルbの成す角は90°であり、ベクトルaとベクトルbの内積は、|ベクトルa|・|ベクトルb|cos90°で示され、内積の値は0となる。
【0051】
一対の付勢手段33a及び付勢手段33cのそれぞれから2つの当接部材32のそれぞれに作用するベクトルa及びベクトルcについて説明すると、ベクトルaとベクトルcの成す角は180°であり、ベクトルaとベクトルcの内積は、|ベクトルa|・|ベクトルc|cos180°で示され、内積の値は負となる。
【0052】
このように少なくとも一対の付勢手段33のそれぞれから複数の当接部材32のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの成す角が90°や180°でもよく、ベクトルの内積が0又は負になる位置に付勢部材33及び当接部材32がそれぞれ配置されていればよい。
【0053】
また、摩擦発生手段30は、複数の台座部31と、該複数の台座部31の外端面34から内周面に貫通し、当接部材が摺動可能に設けられるとともに外端面34側に付勢手段33が設けられる貫通孔35とを備えている。
【0054】
次に付勢手段33について説明する。
付勢手段33は、貫通孔35に設けられた雌ねじ部36と、該雌ねじ部36に螺合される雄ねじ部37と、該雄ねじ部37と当接部材32との間で貫通孔35に収納されるとともに圧縮されることで反発力が大きくなる第1弾性部材38である。
【0055】
かかる構成によれば、貫通孔35に設けた雌ねじ部36に雄ねじ部37を螺合し、雄ねじ部37によって第1弾性部材38を圧縮し、当接部材32を付勢するので、付勢力の調整を容易に行うことができる。
【0056】
なお、第1弾性部材38は、圧縮ばねであることが好ましいが、これに限定されず、ゴム、板ばね等、圧縮されることで反発力が大きくなる部材であれば他の一般的な部材であっても差し支えない。
【0057】
次に以上に述べたダンパ10の作用について説明する。
図7Aはダンパ10が伸びた状態であり、第1取付部12の第1貫通孔13と第2取付部22の第2貫通孔23を結ぶ直線Lに対して、ダンパ10への衝撃力が矢印(1)のように傾斜角θで傾斜して入力される。
図7Bに示すように、ダンパ10が所定の摩擦力を得て衝撃力を吸収し、摺動部材11が収納部20に収納されてダンパ10が縮む。
【0058】
図8Aに示すように、調整前の摩擦発生手段30の横断面において、図上部の付勢手段33及び図下部の付勢手段33の雄ねじ部36のねじ込み量が同じ場合には、図上部の当接部材32が受ける矢印(2)の垂直抗力が、図下部の当接部材32が受ける矢印(3)の垂直抗力よりも大きくなり、摩擦発生手段30は所定の摩擦力を得ることができない。
【0059】
そこで、摩擦発生手段30の調整を行う。
図8Bに示すように、図下部の付勢部材32の雄ねじ部37を矢印(4)のようにねじ込み、図下部の付勢手段33の付勢力による当接部材32が受ける垂直抗力を矢印(5)のように大きくし、摩擦発生手段30全体の摩擦力を調整することで、所定の摩擦力を得る。
【0060】
ダンパ10に衝撃力が入力される際、摺動部材11が収納部20に収納されて、摩擦発生手段30によって摺動部材11との間に摩擦力が発生するが、摩擦発生手段30は、摺動部材11の外側面17に当接する複数の当接部材32のそれぞれを、収納部20に設けられた複数の付勢手段33で摺動部材11に押し付けて付勢力を作用させることで、複数の方向から当接部材32と摺動部材11の間に摩擦力を発生させることができる。
【0061】
さらに、複数の当接部材32と複数の付勢手段33とは、摺動部材11の横断面において、少なくとも一対の付勢手段33のそれぞれから複数の当接部材32のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、配置されているので、一方向のみだけではなく、いずれの方向に対しても付勢力を作用させることができる。
【0062】
このため、乗り物1への衝撃力がダンパ10に入力される際に、ダンパ10の両端部を結ぶ直線Lに対して衝撃力がいずれの方向に傾いて入力された場合であっても、摺動部材11の横断面において、入力が逃げて摩擦力が小さくなる位置での付勢手段33の付勢力を大きくすることで摩擦力を大きくし、摩擦発生手段30全体として所定の摩擦力にすることができる。結果、ダンパ10の取付場所によらず所定の摩擦力に調整することができる。
【0063】
さらに、付勢手段33が軸線のまわりに回転対称性を有するように配置されているので、衝撃力の入力がいずれの方向に傾いても、付勢力を大きくしたい位置又は付勢力を大きくしたい位置に近い位置に付勢手段33が配置され、付勢手段33の付勢力の調整を行い易くすることができる。
【0064】
次に第1実施形態の別態様について説明する。
図9に示すように、摺動部材11の外形は正八角形であり、摺動部材11の横断面において、摺動部材11の外側面17のうち、一対の付勢手段33のそれぞれから2つの当接部材32のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの成す角が180°になる位置に2つの付勢手段33が配置され、これら2つの付勢手段33に隣接するようにさらに2つの付勢手段33が配置されている。
【0065】
図10に示すように、摺動部材11の外形は円形であり、摺動部材11の横断面において、3つの付勢部材11が回転対称に配置され、当接部材32の摺動部材11との当接面が円弧上に形成されている。
【0066】
なお、
図5に示す実施形態では、複数の付勢手段33及び複数の当接部材32のそれぞれを、摺動部材11の軸線の周りに回転対称性を有するように配置したが、これに限定されず、複数の付勢手段33のうち少なくとも一対の付勢手段33のそれぞれから複数の当接部材32のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、複数の当接部材32と複数の付勢手段33とが配置されていれば、摺動部材11の軸線の周りに回転対称性を有さずに不均一に配置してもよい。さらには、摺動部材11の外形を円形にして、付勢手段33の数を3つ、4つ等にしてもよい。
【0067】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態を説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略し、符号を流用するものとする。
本発明の第2実施形態に係るダンパ10は、直線状に延びる摺動部材11と、該摺動部材11を収納する収納部20とを備え、該摺動部材11に収納部20との間に摩擦力を発生させる摩擦発生手段30を備えている。
【0068】
摩擦発生手段30は、収納部11の内周面29と、該内周面29に当接する複数の当接部材と、摺動部材11に設けられ複数の当接部材のそれぞれに内周面29に向かって付勢力を作用させることで複数の当接部材のそれぞれを内周面29に押し付ける付勢手段とを備えている。摺動部材11の横断面において、複数の付勢手段のうち少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから複数の当接部材のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、複数の当接部材と複数の付勢手段とが配置されている。
【0069】
かかる構成によれば、ダンパ10に衝撃力が入力される際、摺動部材11が収納部20に収納されて、摩擦発生手段によって摺動部材11との間に摩擦力が発生する。摩擦発生手段は、収納部20の内周面29に当接する複数の当接部材のそれぞれを、摺動部材11に設けられた複数の付勢手段で収納部20の内周面に押し付けて付勢力を作用させることで、複数の方向から当接部材と内周面29の間に摩擦力を発生させることができる。
【0070】
さらに、複数の当接部材と複数の付勢手段とは、摺動部材11の横断面において、少なくとも一対の付勢手段のそれぞれから複数の当接部材のそれぞれに作用する付勢力のベクトルの内積が0又は負になるように、配置されているので、一方向のみだけではなく、いずれの方向に対しても付勢力を作用させることができる。
【0071】
このため、乗り物1への衝撃力がダンパ10に入力される際に、ダンパ10の両端部を結ぶ直線に対して衝撃力がいずれの方向に傾いて入力された場合であっても、摺動部材11の横断面においてそのままであれば摩擦力が小さくなるような位置で、付勢手段の付勢力を大きくすることで摩擦力を大きくし、摩擦発生手段全体として所定の摩擦力にすることができる。結果、ダンパ10の取付場所によらず所定の摩擦力に調整することができる。
【0072】
なお、第1実施形態では、摺動部材11を横断面正八角形としたがこれに限定されず、三角形、四角形などでもよく、当接部材32の当接面を平面して、摺動部材11の外側面17を構成する平面のそれぞれに当接部材を当接させれば、多角形であればいずれであってもよい。さらには、摺動部材11は円柱であってもよく、この場合は、当接部材32の当接面を円柱の表面に沿う形状にすればよい。