(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタ及び前記フィルタ切替機構は、前記可動体の揺動中心位置に対する前記光学素子の撮像部側とは反対側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
前記可動体は、前記振れ補正用駆動機構と撮像部と前記フィルタ切替機構とに接続されるフレキシブル配線基板を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の振れ補正機能付き光学ユニット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、光学モジュールには用途に応じて種々の機能を備えることが要求されるが、光学モジュール自体の小型化も要求されており、各機構を組み込むことは容易ではない。特に、光学モジュールを移動可能に支持した振れ補正機能付きの光学ユニットにおいては、光路にフィルタ切替装置を配置することで光学モジュール自体の重量が増加して移動制御が難しくなるとともに、重量バランスの調整が難しくなるため、フィルタ切替装置を組み込むことが一層難しいものとなっている。また、光学モジュールの重量が増加することで、振れ補正に伴う光学ユニットの消費電力も増加する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、フィルタ切替機能を備えた振れ補正機能付き光学ユニットの小型化を図り、消費電力の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットは、固定体と、光学素子を有する可動体と、前記固定体に対して前記可動体を揺動可能に支持する揺動支持機構と、前記可動体を揺動させる振れ補正用駆動機構とを備え、前記可動体は、フィルタと、前記フィルタの有無を切り替えるフィルタ切替機構とを備え、前記揺動支持機構は、前記光学素子の光軸方向に対して直交する方向から見たときに、前記振れ補正用駆動機構と重なる位置に配置され、前記フィルタ及び前記フィルタ切替機構は、前記光学素子の被写体側に配置されている。
【0008】
この振れ補正機能付き光学ユニットにおいては、フィルタの有無を切り替えるフィルタ切替機構を有しているので、振れ補正の効果を有しながら、フィルタの有無を選択して所望の映像を撮影できる。
また、フィルタ切替機構を除く可動体の重心位置が可動体の揺動中心位置(揺動支点)より撮像部側にある場合、フィルタ切替機構を用いて可動体の重心位置を揺動中心位置と同じ、または近づけることができるので、別途の重心調整用の部材を用いることなく可動体を構成できる。したがって、可動体の重量の増加を抑制でき、揺動に必要なトルクを抑制できるので、可動体の揺動時の消費電力を低減できる。
なお、撮像部と光学素子との間にフィルタ及びフィルタ切替機構を配置する構成では、フィルタ切替機構等を配置するために、撮像部と光学素子との間に光軸方向に大きなスペースが必要となり、可動体の光軸方向の全長が大きくなる。また、例えば、フィルタ切替機構を除く可動体の重心位置が可動体の揺動中心位置と同じ位置にある場合、撮像部と光学素子との間にフィルタ切替機構を配置することで、可動体の重心位置が撮像部側に移動する。この場合、移動した重心位置を可動体の揺動中心位置に戻すために、揺動中心位置よりも被写体側に重心調整用の部材を配置することが必要になる。その結果、可動体は、単にフィルタとフィルタ切替機構のスペース分大きくなるのではなく、重心調整用の部材を設ける分、余計に大きくなる。このため、撮像部と光学素子との間にフィルタやフィルタ切替機構を配置する構成では、可動体が大型化し、可動体の重量が増加することで、揺動に必要なトルクが大きくなり、可動体の揺動時の消費電力が増加する。これと比較して、本発明の振れ補正機能付き光学ユニットでは、光学素子の被写体側にフィルタ及びフィルタ切替機構を配置するので、可動体の大きさを小さく形成できる。したがって、可動体の揺動時の消費電力の低減が可能となると共に、光学ユニットの小型化を図ることができる。
【0009】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの好ましい実施形態において、前記フィルタ及び前記フィルタ切替機構は、前記可動体の揺動中心位置に対する前記光学素子の撮像部側とは反対側に配置されるとよい。
【0010】
可動体の重心位置と可動体の揺動中心位置とを同じ、または近づけることができるので、可動体の揺動に必要なトルクを低減できる。したがって、可動体の揺動時における消費電力を低減できる。
【0011】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの好ましい実施形態において、前記振れ補正用駆動機構は、磁石と、前記磁石の磁界内で電磁力を作用させるコイルとを有する磁気駆動機構であり、前記磁石は前記固定体に設けられ、前記コイルは前記可動体に設けられる。
【0012】
磁石を固定体に設けて磁石よりも軽量のコイルを可動体に設けることで、コイルを固定体に設けて磁石を可動体に設けた場合と比較して、可動体の重量を低減できる。したがって、可動体の揺動に必要なトルクを低減できるので、さらに揺動時の消費電力を低減できる。
【0013】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの好ましい実施形態において、前記可動体は、前記振れ補正用駆動機構と撮像部と前記フィルタ切替機構とに接続されるフレキシブル配線基板を備えるとよい。
【0014】
一つのフレキシブル配線基板により、振れ補正用駆動機構(コイル)への給電と、撮像部(撮像素子)への給電と、フィルタ切替機構への給電とが可能である。このため、それぞれに個別のフレキシブル配線基板を接続する構成と比較して、可動体の揺動時におけるフレキシブル配線基板の応力による揺動抵抗トルクの発生を抑制できる。したがって、揺動時に必要な電力を低減でき、消費電力の低減を図ることができる。また、フレキシブル配線基板の数を少なくできるので、製造コストを低減できる。
【0015】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの好ましい実施形態において、前記可動体は、重心位置調整部材を備えるとよい。
【0016】
重心位置調整部材により、可動体の重心位置を細かく調整できるので、可動体の重心位置を揺動中心位置と同じ位置に配置できる。したがって、可動体の揺動に必要なトルクを低減できるので、さらに揺動時の消費電力を低減できる。
【0017】
本発明の振れ補正機能付き光学ユニットの好ましい実施形態において、前記フィルタは、赤外線カットフィルタであるとよい。
【0018】
光学素子の光路に赤外線カットフィルタ(IRフィルタ)を出し入れ可能とすることで、明所において撮像部に所定以上の赤外線が入射される場合には赤外線カットフィルタを光路に挿入して赤外線の入射を減少させ、適切な波長の光量を撮像部に入力できる。一方で、暗所においては、赤外線カットフィルタを光路から外すことで、撮像部に赤外線を入射できる。したがって、赤外線カットフィルタの有無を切り替えることで、明所に加えて暗所においても鮮明な映像の撮影が可能となり、昼夜における撮影が可能となる。
なお、フィルタは、赤外線カットフィルタと反射防止フィルタとを組み合わせたフィルタとしてもよい。また、フィルタには、赤外線カットフィルタの他にも、反射防止フィルタ、NDフィルタ、偏光フィルタ等の種々のフィルタが含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、フィルタ切替機能を備えた振れ補正機能付き光学ユニットの小型化を図ることができ、消費電力の低減を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る振れ補正機能付き光学ユニットの実施形態について図面を参照しながら説明する。
以下の説明では、互いに直交する3方向を各々X軸方向、Y軸方向、Z軸方向とし、静置状態においては、Z軸方向に光軸L(レンズ光軸/光学素子の光軸)が配置されるものとする。また、各方向の振れのうち、X軸周りの回転は、いわゆるピッチング(縦揺れ)に相当し、Y軸周りの回転は、いわゆるヨーイング(横揺れ)に相当し、Z軸周りの回転は、いわゆるローリングに相当する。また、X軸方向の一方側には+Xを付し、他方側には−Xを付し、Y軸方向の一方側には+Yを付し、他方側には−Yを付し、Z軸方向の一方側(被写体側/光軸方向前側)には+Zを付し、他方側(被写体側とは反対側/光軸方向後側)には−Zを付して説明する。また、
図1〜
図8では、Z軸の一方+Z側を上方に向けて配置した状態を静置状態とする。以下では、特に断らない限り、この静置状態で説明する。
【0022】
[第1実施形態]
(振れ補正機能付き光学ユニット101の概略構成)
図1は振れ補正機能付き光学ユニット(以下、光学ユニットと省略する。)101の組立状態の外観を示す斜視図である。
図2は光学ユニット101を光軸L方向に沿って分解した分解斜視図である。
図3は光学ユニット101の後述する可動体20の分解斜視図である。
図4は光学ユニット101の後述するカバー枠120とジンバル機構(揺動支持機構)30の−Z側から見た斜視図である。
図5は光学ユニット101の光軸Lを通るY‐Z平面での縦断面図である。
図6は光学ユニット101の後述するジンバル機構30と振れ補正用駆動機構40付近のX‐Y平面での横断面図である。
【0023】
図1に示す光学ユニット101は、携帯端末、ドライブレコーダー、無人ヘリコプター等に搭載される撮像装置等の光学機器(図示略)に組み込まれる薄型カメラであって、光学機器のシャーシ(機器本体)に支持された状態で搭載される。この種の光学ユニット101では、撮影時に光学機器に手振れ等の振れが発生すると、撮像画像に乱れが発生する。そこで、本実施形態の光学ユニット101においては、Z軸方向に沿って光軸Lが延在する光学モジュール(光学素子)210を備えた可動体20を、ジャイロスコープ等の振れ検出センサ(図示略)によって振れを検出した結果に基づいて揺動させ、ピッチング及びヨーイングを補正できるようにしている。
【0024】
図1〜
図6において、本実施形態の光学ユニット101は、固定体10と、光学モジュール210を備える可動体20と、固定体10に対して可動体20を揺動可能に支持された状態とする揺動支持機構としてのジンバル機構30と、可動体20を揺動させる振れ補正用駆動機構40とを備える。また、
図6に示すように、可動体20は、固定体10に対してジンバル機構30を介して光軸L方向と交差する第1軸線R1周りに揺動可能に支持されているとともに、光軸L方向および第1軸線R1方向に交差する第2軸線R2周りに揺動可能に支持されている。そして、光学ユニット101においては、これらの光軸Lに対して直交する2つの軸線(第1軸線R1および第2軸線R2)周りに可動体20を揺動させることで、ピッチングとヨーイングを補正する。
【0025】
なお、本実施形態の光学ユニット101では、固定体10は、光軸L方向(+Z方向)から見たときに、正方形をなしている。また、
図6に示すように、第1軸線R1および第2軸線R2は、光軸L方向に直交している。そして、第1軸線R1と第2軸線R2とは直交し、X軸及びY軸に対して45°の角度に配置されている。
【0026】
(固定体10の構成)
図2及び
図5等に示すように、固定体10は、可動体20の周りを囲む角筒状の第1ケース110と、第1ケース110の上(Z軸方向の一方側+Z)に固定されたカバー枠120と、第1ケース110の下(Z軸方向の他端側−Z)に配置された第2ケース130とを有している。
本実施形態では、第1ケース110は、四方に配置された側板部111により矩形筒状に形成されている。カバー枠120は、第1ケース110のZ軸方向の一方側+Zの端部から径方向内側に張り出した矩形枠形状に形成されている。そして、カバー枠120の中央部には円形の開口窓121が形成されており、開口窓121を通して被写体からの光を光学モジュール210に導くようになっている。また、第2ケース130は、上方を開放した矩形の箱状に形成されており、底部に光学モジュール210に接続されたフレキシブル配線基板71,72を外部に引き出すための開口部131が形成されている。この開口部131は、第2ケース130に対してZ軸方向の他方側−Zから重なる底板140によって覆われており、開口部131から引き出されたフレキシブル配線基板71,72は、第2ケース130と底板140との間から外部に引き出されるようになっている。
【0027】
また、固定体10には、
図5等に示すように、第1ケース110と第2ケース130との間に、可動体20のZ軸方向の他方側−Zへの可動範囲を規定する矩形枠状のストッパ部材150が設けられている。ストッパ部材150は、第1ケース110と第2ケース130とをZ方向で重ねた際に、第1ケース110と第2ケース130との間に挟まった状態に保持される。
【0028】
(可動体20の構成)
図2及び
図3等に示すように、可動体20は、レンズ211等の光学素子を備えた光学モジュール210と、光学モジュール210を保持するホルダフレーム220と、フィルタ切替機構230とを有している。
光学モジュール210は、
図5に示すように、レンズ211や撮像素子(撮像部)212、フォーカシング駆動用のアクチュエータ(図示せず)等を保持するレンズホルダ213を有しており、このレンズホルダ213を介してホルダフレーム220に保持されている。
【0029】
ホルダフレーム220は、
図5に示すように可動体20の外周部分を構成しており、概ね、レンズホルダ213を内側に保持する筒状のホルダ保持部221と、このホルダ保持部221の下端部(Z軸方向の他方側−Zの端部)でフランジ状に拡径する肉厚のベース部222とを有している。ベース部222の外周部上には、ホルダ保持部221よりも径方向外側に、後述する振れ補正用駆動機構40を構成する4つのコイル42をそれぞれ保持するコイル保持部223が設けられており、これらコイル保持部223とホルダ保持部221との間には、後述するジンバル機構30の可動枠310が配置される可動枠配置空間240が形成されている。また、コイル保持部223には、コイル保持部223にコイル42が保持された状態で、コイル42の外面(磁石41と対向する面)から更に外方に向けて突出する突出部224が設けられており、その突出部224が磁石41と対向している。したがって、外力によって、可動体20がX軸方向またはY軸方向に変位した際、コイル保持部223の突出部224が磁石41に当接し、コイル42と磁石41とが接触することを防止する。
なお、本実施形態では、ホルダフレーム220が合成樹脂により形成されており、ホルダ保持部221、ベース部222、コイル保持部223が一体に形成されている。
【0030】
また、可動体20に設けられた撮像素子212やフォーカシング駆動用のアクチュエータ等は、信号出力(通信)用のフレキシブル配線基板71に接続されている。撮像素子212は、ジャイロスコープやキャパシタ等の電子部品が実装された実装基板214に実装されており、実装基板214に前述したフレキシブル配線基板71が接続されている。なお、実装基板214に接続されたフレキシブル配線基板71は、外部に引き回される部分が2本に分割されている。一方、振れ補正用駆動機構40を構成するコイル42は、給電用のフレキシブル配線基板72に接続されている。これらのフレキシブル配線基板71,72は、光学機器の本体側に設けられた上位の制御部等に電気的に接続される。
【0031】
なお、これらのフレキシブル配線基板71,72は、
図5に示すように、レンズホルダ213の下方(Z軸方向の他方側−Z)で複数回湾曲された後に外部に引き出されるようになっている。
図1に示すように、コイル42に接続されたフレキシブル配線基板72は、光学モジュール210に接続されたフレキシブル配線基板71の2本に分割された部分の間に配置されており、2つのフレキシブル配線基板71,72は外部への引き出し方向が揃えられている。また、フレキシブル配線基板71,72は、いずれも可撓性を有しており、振れ補正用駆動機構40によるホルダフレーム220及びこのホルダフレーム220に保持されている光学モジュール210の動きを阻害しないようになっている。
【0032】
(振れ補正用駆動機構40の構成)
振れ補正用駆動機構40は、
図5及び
図6等に示すように、板状の磁石41と、磁石41の磁界内で電磁力を作用させるコイル42とを利用した磁気駆動機構である。本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、磁石41とコイル42との組み合わせが、可動体20(ホルダフレーム220)の周方向に90°ずつ間隔をおいて4組設けられる。また、
図5及び
図6に示すように、各磁石41は第1ケース110に保持され、各コイル42はホルダフレーム220に保持されており、本実施形態では、第1ケース110とホルダフレーム220との間に振れ補正用駆動機構40が構成されている。
【0033】
磁石41は、第1ケース110の周方向に90°ずつ間隔をおいて配置された4つの各側板部111の内面にそれぞれ保持されている。各側板部111はX軸方向の一方側+X、他方側−X、Y軸方向の一方側+X、他方側−Yにそれぞれ配置されている。このため、第1ケース110とホルダフレーム220との間では、X軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側−X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側−Yのいずれにおいても、磁石41とコイル42とが対向している。
【0034】
本実施形態において、4つの磁石41は、外面側及び内面側が異なる極に着磁されている。また、磁石41は、光軸L方向(Z軸方向)に2つに分離して着磁されており、コイル42側(内面側)に位置する磁極411、412が光軸L方向で異なるように着磁されている(
図3及び
図5参照)。したがって、両磁極411、412を分離する着磁分極線413は、光軸Lと直交する方向に沿って配置されている。X軸方向の一方側+X及びX軸方向の他方側−Xにそれぞれ配置されている2つの磁石41は、着磁分極線413がY軸方向に沿って配置され、Y軸方向の一方側+Y及びY軸方向の他方側−Yに配置されている2つの磁石41は、着磁分極線413がX軸方向に沿って配置される。
【0035】
なお、4つの磁石41は、外面側および内面側に対する着磁パターンが同一である。このため、周方向で隣り合う磁石41同士が吸着し合うことがないので、組み立て等が容易である。また、第1ケース110は磁性材料から構成されており、磁石41に対するヨークとして機能する。
【0036】
コイル42は、磁心(コア)を有しない空芯コイルであり、前述したように、ホルダフレーム220に保持されている。また、コイル42は、それぞれホルダフレーム220のX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側−X、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側−Yに保持されている。このうち、ホルダフレーム220のX軸方向の一方側+X、X軸方向の他方側−Xに配置される両コイル42は、巻き線によってX軸方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。また、Y軸方向の一方側+Y、およびY軸方向の他方側−Yに配置される両コイル42は、巻き線によってY軸方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。したがって、いずれのコイル42も光軸L方向に直交する方向をコイルの軸心方向とする環状に形成されている。また、これら4つのコイル42は、同じ平面形状、同じ厚さ(高さ)寸法に形成される。
【0037】
なお、4つのコイル42のうち、X軸方向をコイルの軸心方向とする2つのコイル42は、Y軸方向に延びる矩形状に形成される。また、Y軸方向をコイルの軸心方向とする2つのコイル42は、X軸方向に延びる矩形状に形成される。そして、いずれのコイル42も、上下に配置される長辺部が、各磁石41の磁極411,412に対峙する有効辺として利用され、このコイル42が励磁されていない状態では、両有効辺は、対向する磁石41の着磁分極線413と平行で、着磁分極線413から上下に等しい距離に配置される。
【0038】
(ジンバル機構30の構成)
本実施形態の光学ユニット101では、ピッチング方向およびヨーイング方向の振れを補正するため、可動体20を光軸L方向に交差する第1軸線R1周りに揺動可能に支持するとともに、光軸L方向および第1軸線R1に交差する第2軸線R2周りに揺動可能に支持する。このため、固定体10と可動体20との間には、ジンバル機構(揺動支持機構)30が構成されている。
【0039】
本実施形態では、ジンバル機構30が矩形の可動枠310を有しており、可動枠310は、
図5及び
図6等に示すように、ホルダフレーム220の可動枠配置空間240内に配置され、固定体10のカバー枠120の下面(Z軸方向の他方側−Zの面)と可動体20のホルダフレーム220との間に配置されている。
本実施形態において、可動枠310はバネ性を有する金属材料等で構成されており、
図4及び
図6等に示すように、周方向に90°間隔をおいて配置された4つの角部321と、各角部321を連結する連結部322とを有する矩形形状に形成されている。可動枠310の4つの角部321の内側にはそれぞれ球体311が固定されている。また、各連結部322は、各々の延在方向およびZ軸方向に対して直交する方向に湾曲した蛇行形状を有している。したがって、可動枠310は、外部から衝撃が加わった際に、衝撃を吸収可能なバネ性を有している。
【0040】
一方、カバー枠120の下面(−Z側の面)には、
図4に示すように、光軸L周り4つの角部のうち、第1軸線R1が延在する方向の対角に位置する2箇所の角部に、Z軸方向の他方側−Zに向けて開口する溝部122がそれぞれ形成されている。そして、各溝部122には、接点用ばね330がそれぞれ取り付けられており、
図6に示すように、これら接点用ばね330に可動枠310の4つの球体311のうち、第1軸線R1が延在する方向の対角に位置する2つの球体311がそれぞれ支持されている。
また、ホルダフレーム220のベース部222の上面には、
図6に示したように、第2軸線R2が延在する方向の対角に位置する2箇所の角部に、Z軸方向の一方側+Zに向けて開口する溝部225がそれぞれ形成されている。各溝部225には、接点用ばね330がそれぞれ取り付けられ、これら接点用ばね330に可動枠310の4つの球体311のうち、第2軸線R2が延在する方向の対角に位置する2つの球体311がそれぞれ支持されている。
【0041】
具体的には、各接点用ばね330は、弾性変形可能なステンレス鋼等の金属からなる板材をプレス成型することにより縦断面U字状となるように屈曲形成されており、可動枠310に設けられた球体311との接触点に径方向内側から外側に向けて弾性的な荷重(弾性力)を作用させる。つまり、可動枠310の4箇所の角部321に設けられた各球体311は、固定体10のカバー枠120又は可動体20のホルダフレーム220に取り付けられた各接点用ばね330に、径方向外側から弾性的に接触させられている。
【0042】
この場合、
図6に示すように、カバー枠120に固定された接点用ばね330は、第1軸線R1方向で対をなすように対向し、可動枠310の球体311との間で第1揺動支点を構成する。一方、ホルダフレーム220に固定された接点用ばね330は、第2軸線R2方向で対をなすように対向し、可動枠310の球体311との間で第2揺動支点を構成する。したがって、可動体20の揺動中心位置(揺動支点)35は、これらの第1揺動支点と第2揺動支点とが組み合わされた第1軸線R1と第2軸線R2との交点に配置される。
【0043】
このように、接点用ばね330に可動枠310の各球体311が揺動可能に接触していることにより、固定体10のカバー枠120に対して、可動体20のホルダフレーム220が揺動可能に支持されている。また、このように構成したジンバル機構30において、各接点用ばね330の付勢力は等しく設定される。なお、本実施形態では、振れ補正用駆動機構40に磁気駆動機構が用いられていることから、ジンバル機構30に用いた可動枠310、接点用ばね330はいずれも、非磁性材料からなる。
【0044】
また、本実施形態において、可動枠310は、コイル保持部223と同じ高さ位置(Z軸方向における同一の位置)に配置されている。このため、光軸L方向に対して直交する方向から見たとき、ジンバル機構30が振れ補正用駆動機構40と重なる位置に配置されている。特に本実施形態では、
図5に示すように、光軸L方向に対して直交する方向から見たときに、ジンバル機構30が、振れ補正用駆動機構40のZ軸方向の中心位置と重なる位置に配置されている。より詳細には、振れ補正用駆動機構40の無励磁状態においては、ジンバル機構30が、Z軸方向において磁石41の着磁分極線413と同じ高さ位置に設けられている。したがって、ジンバル機構30の第1揺動支点及び第2揺動支点は、Z軸方向において振れ補正用駆動機構40の中心位置と重なる位置に配置され、可動体20の揺動中心位置35も振れ補正用駆動機構40の中心位置と重なる位置に配置されている。
【0045】
なお、固定体10のカバー枠120と可動体20のホルダフレーム220との間には、これらのカバー枠120とホルダフレーム220との双方に接続され、振れ補正用駆動機構40が停止状態にあるときの可動体20の姿勢を規定する板状バネ510が設けられている。板状バネ510は、金属板を所定形状に加工したバネ部材であり、
図2に示すように、その外周部を構成する固定体側連結部511と、内周部を構成する円環状の可動体側連結部512と、これら固定体側連結部511と可動体側連結部512の間を連結する板バネ状のアーム部513とを有している。
【0046】
固定体側連結部511は、固定体10のカバー枠120の下面(Z軸方向の他方側−Zの面)に重ねた状態でカバー枠120に形成された4箇所の凸部125によって位置決めされ、接着等により固定される。また、図示は省略するが、可動体側連結部512は、可動体20のホルダフレーム220のホルダ保持部221に形成された4箇所の突起部226により位置決めされ、接着等により固定される。
【0047】
(フィルタ切替機構230の構成)
フィルタ切替機構230は、液晶を利用した電子フィルタ(フィルタ)231を備える電子フィルタ機構により構成される。本実施形態の電子フィルタ231は、例えば印加する駆動電圧を変化させることにより光の透過率を調整可能な可変フィルタ(NDフィルタ)である。このため、フィルタ切替機構230は、機械的な駆動機構を有さず、光の透過量(諧調)、すなわち本発明でいうフィルタの有無を電子的に切り替えることができる。
【0048】
本実施形態の光学ユニット101では、フィルタ切替機構230は可動体20のレンズホルダ213の上端部に固定されており、電子フィルタ231がレンズ(光学素子)211よりも被写体側(Z軸方向の一方側+Z)に配置されている。また、電子フィルタ231及びフィルタ切替機構230は、Z軸方向において、可動体20の揺動中心位置(揺動支点)35に対する光学モジュール210の撮像素子(撮像部)212側とは反対側に配置されている。なお、図示は省略するが、電子フィルタ231は、コイル42が接続された給電用のフレキシブル配線基板72に接続されており、このフレキシブル配線基板72を介して適切な駆動電圧を印加することができる。
【0049】
光学モジュール210においては、撮像素子212側に実装基板214等が配置されており、フィルタ切替機構230を除く可動体20の重心位置が可動体20の揺動中心位置(揺動支点)35より撮像素子212側(Z軸方向の他方側の−Z)にある。このため、フィルタ切替機構230を光学モジュール210の被写体側に配置することで、フィルタ切替機構230を用いて可動体20の重心位置を揺動中心位置35と同じ、または近づけることができる。なお、フィルタ切替機構230の他にも、さらにウエイト(重心位置調整部材)を使用して、可動体20の重心位置を調整することも可能である。
【0050】
(作用効果)
以上のように構成した振れ補正機能付き光学ユニット101においては、ピッチング及びヨーイングに対して、ジンバル機構(揺動支持機構)30及び振れ補正用駆動機構40により、第1軸線R1又は第2軸線R2周りに可動体20を揺動することにより振れを補正できる。また、光学ユニット101はフィルタ切替機構230を有しているので、振れ補正の効果を有しながら、フィルタの有無を選択して、すなわち、この場合は電子フィルタ231の光の透過率を変調して、所望の光量による映像を撮影できる。
【0051】
また、光学ユニット101では、別途の重心調整用部材を用いることなく可動体20の重心位置と揺動中心位置35とを同じ、または近づけることができるので、フィルタ切替機構230と重心位置調整部材とを両方有する場合と比較して、可動体20の重量の増加を抑制でき、揺動に必要なトルクを抑制できる。したがって、可動体20の揺動時の消費電力を低減できる。
【0052】
また、本実施形態の光学ユニット101では、フィルタ切替機構230が駆動機構を有しないので、比較的小型・軽量であり、可動体20の重心位置の調整を行いやすく、また可動体20自体を比較的小型・軽量に構成できる。さらに、フィルタの切替に際して可動体20を振動させることがないので、振れ補正時の可動体20の揺動を邪魔することもなく、高精度に振れを補正できる。
【0053】
[他の実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態の光学ユニットの可動体部分を模式的に表した正面図であり、主にフィルタ切替機構260を示す説明図である。なお、第2実施形態および後述する第3実施形態の基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、対応する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0054】
図1等に示す第1実施形態の光学ユニット101では、電子制御可能な電子フィルタ(いわゆるNDフィルタ)231を備える電子フィルタ機構によりフィルタ切替機構230を構成したが、第2実施形態では、
図7の模式図に示すように、機械的な駆動機構により、フィルタ261の有無を切り替え可能なフィルタ切替機構260を構成する。
より具体的には、
図7に示すフィルタ切替機構260では、例えばフィルタ261を赤外線カットフィルタ(IRフィルタ)により構成し、このフィルタ261を光軸L方向と直交する方向に直進移動させ、光路に対して出し入れ可能とするスライド駆動機構265を有する。
【0055】
図7に示すように、スライド駆動機構265は、フィルタ261を保持するフィルタホルダ263と、フィルタホルダ263を光路に対して進退移動させるアクチュエータ264とを備える。例えば、アクチュエータ264に回転軸を有するモータを用いることで、スライド駆動機構265は、モータの回転運動を直線運動に変換するラック・ピニオン機構等により構成できる。
図7では、フィルタホルダ263は2つの開口部611,612を有しており、一方の開口部611にフィルタ261が固定され、他方の開口部612にダミーフィルタ262が固定されている。アクチュエータ264は、前述したように、例えば回転軸を有するモータ等で構成されるが、
図7では、フィルタ261を光学モジュール210の光路に配置した状態でアクチュエータ264を逆転(
図7では左回転、反時計回り)させることにより、フィルタ261を光路から退避させてダミーフィルタ262を光路上に配置することができる。また、フィルタ261を光路から退避させた状態でアクチュエータ264を正転(
図7では右回転、時計回り)させることにより、ダミーフィルタ262を光路から退避させてフィルタ261を光路に進入させることができる。
【0056】
なお、フィルタ261には、赤外線カットフィルタと反射防止フィルタとを組み合わせたフィルタを用いることもできるし、反射防止フィルタ、NDフィルタ、偏光フィルタ等の種々のフィルタを用いることもできる。また、ダミーフィルタ262には、光学モジュール210の保護のための単なるガラス板(カバーガラス)や、フィルタ261と同様に、反射防止フィルタ等の他のフィルタを用いることもでき、フィルタホルダ263の開口部611,612に異なる機能を有する2つのフィルタを取り付けることで、2つのフィルタを切り替えることにしてもよい。
【0057】
本実施形態では、図示は省略するが、フィルタ切替機構260はホルダ保持部221に固定され、光学モジュール210の被写体側に配置される。このうち比較的軽量のフィルタ261を有するフィルタホルダ263は、光学モジュール210よりも被写体側に配置される。また、フィルタホルダ263よりも重量の大きなアクチュエータ264は、フィルタホルダ263よりも撮像素子212側に配置されるが、可動体20の揺動中心位置35よりも被写体側に配置される。このように、アクチュエータ264を揺動中心位置35よりも被写体側に配置することで、可動体20の重心位置を揺動中心位置35と同じ、または近づけることができる。
【0058】
また、光学モジュール210の画角が大きい場合(広角の場合)、図示は省略するが、フィルタ切替機構260は、被写体側のレンズよりも一回り大きい形状となる。つまり、比較的軽量のフィルタ261の直径が画角と同等か、それ以上の直径となり、フィルタホルダ263が光学モジュール210よりも被写体側に配置される。また、フィルタホルダ263よりも重量の大きなアクチュエータ264は、ホルダフレーム220よりも外周側(径方向外側)に配置される。これにより、画角を狭めることなく、フィルタ261の切替が可能となる。さらに、アクチュエータ264は、可動体20の揺動中心位置35よりも被写体側に配置することで、可動体20の重心位置を揺動中心位置35と同じ、または近づけることができる。
【0059】
第2実施形態においても、フィルタ切替機構260を有しているので、振れ補正の効果を有しながら、フィルタ261の有無を選択でき、すなわち、この場合は赤外線カットフィルタの有無を選択できる。明所において、撮像素子(撮像部)212に所定以上の赤外線が入射される場合にはフィルタ261を光路に挿入して赤外線の入射を減少させ、適切な波長の光量を撮像素子212に入力できる。一方で、暗所においては、フィルタ261を光路から外して退避させることで、撮像素子212に赤外線を入射できる。したがって、第2実施形態においては、フィルタ261の有無を切り替えることで、明所に加えて暗所においても鮮明な映像の撮影が可能となり、昼夜における撮影が可能となる。
【0060】
また、第2実施形態においても、フィルタ切替機構260自体を利用して、可動体20の重心位置と揺動中心位置35とを同じ、または近づけることができるので、可動体20の重量の増加を抑制でき、揺動に必要なトルクを抑制できる。したがって、可動体20の揺動時の消費電力を低減できる。
【0061】
なお、第2実施形態では、フィルタ261を直進移動させるスライド駆動機構265によりフィルタ切替機構260を構成していたが、
図8に示す第3実施形態のフィルタ切替機構270のように、フィルタ261を回転移動させる回転駆動機構275によりフィルタ切替機構を構成することもできる。
【0062】
例えば、
図7に示すフィルタ切替機構270では、アクチュエータ264として回転軸を有するモータを用い、このモータの回転運動を利用して、回転軸周りにフィルタホルダ273を直接的に回転移動させる。これにより、フィルタ261を光軸L方向と直交する方向に回転(円弧)移動させ、光学モジュール210の光路に対して出し入れ可能とする。この場合においても、第2実施形態と同様に、フィルタ切替機構270はホルダ保持部221に固定され、光学モジュール210の被写体側に配置される。そして、比較的軽量のフィルタ261を有するフィルタホルダ273が光学モジュール210よりも被写体側に配置される。また、フィルタホルダ273よりも重量の大きなアクチュエータ264は、フィルタホルダ273よりも撮像部212側に配置されるが、可動体20の揺動中心位置35よりも被写体側に配置される。このように、第3実施形態においても、アクチュエータ264を揺動中心位置35よりも被写体側に配置することで、可動体20の重心位置を揺動中心位置と同じ、または近づけることができる。
【0063】
第3実施形態においても、フィルタ切替機構270を有しているので、振れ補正の効果を有しながら、フィルタ261の有無を選択できる。したがって、フィルタ261の有無を切り替えることで、明所に加えて暗所においても鮮明な映像の撮影が可能となり、昼夜における撮影が可能となる。また、フィルタ切替機構270自体を利用して、可動体20の重心位置と揺動中心位置35とを同じ、または近づけることができるので、可動体20の重量の増加を抑制でき、揺動に必要なトルクを抑制できる。したがって、可動体20の揺動時の消費電力を低減できる。
【0064】
なお、第2実施形態及び第3実施形態では、異なる機能を有する2つのフィルタを切り替えるフィルタ切替機構260,270を構成したが、フィルタ切替機構の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、1つのフィルタを光学モジュールの光路に対して出し入れ可能にすることで、フィルタの有無のみを切り替える構成としてもよい。
【0065】
その他、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、ジンバル機構30では、可動枠310に固定した球体311を接点用ばね330、330に接触させる構造としたが、必ずしも球体でなくてもよく、棒状部材等の先端面を球状に形成してなる球状先端面を接点用ばねに接触させる構造としてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、ピッチング及びヨーイングの補正機能を有する光学ユニットについて説明を行ったが、ピッチング及びヨーイングに加えて、ローリングに対する補正機能を有する構造としてもよい。