(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施例にかかる内視鏡管理システム1の概略構成を示す。内視鏡管理システム1では、内視鏡を使用する複数の医療施設2a、2b、2c(特に区別しない場合には「医療施設2」と呼ぶ)と、故障した内視鏡を修理する修理センター3とが、インターネットなどのネットワーク4を介して通信可能に接続している。
【0012】
医療施設2では、内視鏡検査が日々実施され、実施された検査に関する情報が、検査ごとにデータベースに記録される。データベース化される検査情報には、基本情報として、検査日時、担当医師、検査種別、処置内容、使用した内視鏡の識別情報(内視鏡ID)が含まれる。内視鏡管理システム1において、医療施設2は、検査情報のうち少なくとも基本情報を、修理センター3に提供する。たとえば医療施設2は毎日、1日の業務終了後に、1日分の検査情報を修理センター3に提供してもよい。医療施設2は、内視鏡が故障した場合には、内視鏡の故障に関する情報(故障情報)を修理センター3に提供する。故障情報は、検査情報とともに修理センター3に提供されてよい。修理センター3は、各医療施設2から検査情報および故障情報を収集して、内視鏡の故障率を算出する統計処理を実施する。
【0013】
図2は、医療施設2の概略構成を示す。検査室には、内視鏡6が接続される処理装置11と、表示装置12とが設けられる。医局には、医師や看護師などが操作する端末装置13が設けられる。ここでは1つの検査室のみを示すが、複数の検査室が設けられてよい。医療施設サーバ10は、施設内におけるデータや情報を管理し、ローカルエリアネットワーク(LAN)15によって処理装置11および端末装置13と通信可能に接続する。通信モジュール14は、外部のネットワーク4と接続し、医療施設サーバ10は、通信モジュール14を介して、修理センター3との間で通信する。
【0014】
検査中、処理装置11は、内視鏡6が取得した画像データを表示装置12にリアルタイム表示し、医師により内視鏡6のレリーズスイッチが押されたタイミングで検査画像を取得して、検査画像データを医療施設サーバ10に送信する。医療施設サーバ10は、検査ごとに画像データを蓄積する。
【0015】
端末装置13はパーソナルコンピュータやタブレットなどの情報処理装置である。医師は、検査終了後、端末装置13を用いて検査レポートの情報を入力する。実施例では看護師が、故障した内視鏡6に関する情報を入力するために、端末装置13を利用する。
【0016】
図3は、故障した内視鏡の情報入力画面の一例を示す。ユーザは、端末装置13に故障情報入力画面を表示させる。ユーザは、故障した内視鏡を修理センター3に送る前に、内視鏡の故障の状況を修理センター3に知らせるために、故障情報入力画面に所定の故障情報を入力する。医療施設サーバ10は、入力された故障情報を修理センター3に送信し、修理センター3が故障情報を受け付けると、故障内視鏡の修理センター3への送り方や、修理予定に関する情報などを、医療施設サーバ10に送信する。
【0017】
故障情報入力画面は、「スコープ型番」、「シリアル番号」、「故障理由」、「故障パーツ」、「検査情報」の各入力項目によって構成される。
「スコープ型番」は、故障した内視鏡の型番を入力する項目であり、内視鏡の型番は、内視鏡の種類を示す情報である。「シリアル番号」は、故障した内視鏡のシリアル番号を入力する項目であり、シリアル番号は、内視鏡を一意に識別する情報であることから、内視鏡IDとも呼ばれる。
【0018】
検査一覧表示ボタン20は、医療施設2において実施済の検査一覧を表示するためのボタンである。ユーザが検査一覧表示ボタン20を操作すると、医療施設サーバ10が、実施済の検査リストを端末装置13に提供する。端末装置13は実施済検査リストを表示し、ユーザがリストの中から内視鏡が故障した検査を選択すると、端末装置13が「検査情報」の欄に、選択された検査情報の項目を表示する。なお医療施設サーバ10は検査情報に紐付づけて、使用した(故障した)内視鏡6の情報を管理しているため、ユーザが検査リストから一つの検査を選択すると、「スコープ型番」、「シリアル番号」、「検査情報」の各項目に、情報が自動入力されるようにしてもよい。このように「スコープ型番」、「シリアル番号」、「検査情報」が、医療施設サーバ10で管理している検査情報の内容から自動入力できる場合には、故障情報入力画面は、最初に検査一覧から検査をユーザに選択させた後に、「故障理由」と「故障パーツ」を入力させる構成となっていてよい。
【0019】
「故障理由」は、内視鏡が故障した理由を入力する項目である。また「故障パーツ」は故障したパーツ(部品)を入力する項目である。
図3に示す例では、この2つの入力項目が、フリーテキスト入力を受け付け可能なように示されているが、複数の選択肢を記されたプルダウンメニューの中から、ユーザが選択するように構成されてもよい。この場合、医療施設サーバ10は、スコープ型番に対して、故障パーツの選択肢、および各パーツの故障理由の選択肢をデータベースとして保持する。
【0020】
「スコープ型番」が検査情報から自動入力されるように構成されている場合、内視鏡の型番が特定されることで、医療施設サーバ10は、故障パーツの選択肢を自動で提供できる。たとえば医療施設サーバ10は、故障パーツの選択肢として「湾曲ゴム」、「送水路」、「ケーブルレンズ」、「ハンドル」などを提供してよい。またユーザが故障パーツの選択肢の中からパーツを選択すると、医療施設サーバ10は、選択されたパーツに対応付けられた故障理由の選択肢を自動で提供してよい。
図3に示す故障情報入力画面では、ユーザが複数のパーツ選択肢の中から「湾曲ゴム」を選択し、また「湾曲ゴム」を選択したことで提供される複数の故障理由の中から「処置具を強く入れすぎた」をユーザが選択した状態が示される。
【0021】
ユーザが登録ボタン21を操作すると、医療施設サーバ10が、入力された故障情報を受け付ける。上記したように医療施設2において、医療施設サーバ10は、1日の業務終了後に、1日分の複数の検査情報をまとめて修理センター3に送信する。そこでユーザが登録ボタン21を操作すると、医療施設サーバ10は、入力された故障情報を記憶しておき、1日分の検査情報を修理センター3に送信するタイミングで、あわせて故障情報を修理センター3に送信してよい。
【0022】
図4は、修理センターにおけるセンターサーバの構成を示す。センターサーバ30は、処理部40および記録部100を備える。処理部40は、医療施設サーバ10から情報を取得する取得部50、検査数算出部70、故障率算出部72および出力処理部74を備える。取得部50は、検査情報取得部52、故障情報取得部54、検査予定取得部56を有する。記録部100は、検査情報記録部102、故障情報記録部104、検査数記録部106、故障率記録部108、ガイダンス保持部110、スコープランク保持部112および医師ランク保持部114を備える。
【0023】
これらの構成はハードウエア的には、任意のプロセッサ、メモリ、補助記憶装置、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。センターサーバ30は、内視鏡の型番ごと、さらには当該内視鏡のパーツごとに、故障率を導出する機能をもつ。
【0024】
検査情報取得部52は、各医療施設2における医療施設サーバ10から、検査情報を取得する。上記した例では医療施設サーバ10が、一日分の検査情報をまとめて送信することを説明したが、検査情報が作成されるたびに送信される場合には、検査情報取得部52は、その都度検査情報を取得する。ここで検査情報には、検査日時、担当医師、検査種別、処置内容、使用した内視鏡の識別情報(内視鏡ID)などの基本情報が含まれ、患者の個人情報などは含まれないことが好ましい。検査情報取得部52は、取得した検査情報を検査情報記録部102に記録する。検査情報記録部102は、複数の医療施設2における検査情報を蓄積し、多数の検査情報を記録する。
【0025】
故障情報取得部54は、各医療施設2における医療施設サーバ10から、故障情報を取得する。上記した例では医療施設サーバ10が、検査情報とあわせて故障情報を送信することを説明したが、故障情報が作成されるたびに送信される場合には、故障情報取得部54は、その都度故障情報を取得する。ここで故障情報には、
図3に示すように、
・スコープ型番
・シリアル番号
・故障理由
・故障パーツ
・検査情報
が含まれる。検査情報には、病院名、実施医、検査日、故障した内視鏡が使用された検査の検査種別および処置内容、が含まれる。故障情報取得部54は、取得した故障情報を故障情報記録部104に記録する。故障情報記録部104は、故障した内視鏡ごとに、スコープ型番、シリアル番号、故障理由、故障パーツ、検査情報を含む故障情報を記録する。
【0026】
実施例では、修理センター3におけるセンターサーバ30が、複数の医療施設2からの検査情報および故障情報を集約する例を示すが、単一の医療施設2からの検査情報および故障情報を集約するものであってもよい。なお単一の医療施設2からの検査情報および故障情報を集約する場合には、センターサーバ30として示す機能は、当該医療施設2における医療施設サーバ10の機能として実現されてよい。
【0027】
実施例では、内視鏡の型番ごとに様々な統計処理が実施されることを前提とする。したがって特に言及しない場合であっても、以下に示す検査数や故障数、故障率などの算出は、型番ごとに実施されるものであることに留意されたい。
【0028】
検査数算出部70は、内視鏡の型番ごとに、検査情報記録部102に記録された検査情報をもとに、実施された処置内容の検査数を算出する。ここでは検査数算出部70が、検査情報記録部102に記録された検査情報を、検査種別と処置内容との組合せによって分類して、組合せごとの検査数を算出する。検査種別は、上部内視鏡検査であるか、下部内視鏡検査であるかの種別である。処置内容は、生検用組織採取、異物摘出、内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)などを含む。なお、型番で特定される内視鏡が、どのような種別の検査で使用され、どのような処置に使用されるかは、検査情報記録部102に記録された検査情報を参照して、検査数算出部70が特定してよいし、またメーカーによって提供される内視鏡マスターテーブルに、内視鏡型番に対応付けて、使用可能な検査種別および処置内容が記録されていてもよい。
【0029】
この例でいえば、上部内視鏡検査に関して、検査数算出部70は、(上部内視鏡検査、生検用組織採取)の組合せをもつ検査数、(上部内視鏡検査、異物摘出)の組合せをもつ検査数、(上部内視鏡検査、内視鏡的ポリープ切除術)の組合せをもつ検査数を、内視鏡の型番ごとにそれぞれ算出する。同様に検査数算出部70は、下部内視鏡検査に関しても、各処置内容を実施した検査数を、内視鏡の型番ごとに算出する。検査数算出部70は、日々検査数を算出して、検査情報記録部102の記録内容を更新する。
【0030】
故障率算出部72は、故障情報記録部104に記録された故障情報の数と、検査数記録部106に記録された検査数とにもとづいて、処置内容ごとの内視鏡の故障率を、内視鏡の型番ごとに算出する。故障率算出部72は、故障情報に含まれる検査情報から、故障情報を検査種別と処置内容との組合せによって分類して、組合せごとの故障数を算出する。つまり上部内視鏡検査に関していえば、故障率算出部72は、(上部内視鏡検査、生検用組織採取)の組合せをもつ故障数、(上部内視鏡検査、異物摘出)の組合せをもつ故障数、(上部内視鏡検査、内視鏡的ポリープ切除術)の組合せをもつ故障数をそれぞれ算出する。これにより故障率算出部72は、(検査種別、処置内容)の組合せごとの故障数を算出し、組合せごとの内視鏡の検査数で除算することで、故障率を算出する。故障率算出部72は、算出した故障率を故障率記録部108に記録する。故障率算出部72が、内視鏡が使用された検査での検査種別および処置内容の組合せごとに故障率を算出することで、内視鏡が故障しやすい検査種別および処置内容の組合せを特定できる。
【0031】
実施例の故障率算出部72は、さらにパーツごとの故障率を算出する。内視鏡は、複数のパーツによって構成されるが、故障率算出部72が、故障情報に含まれる故障パーツ情報を利用してパーツごとの故障率を算出することで、どのパーツが故障しやすいかを特定できるようになる。故障率記録部108は、内視鏡の型番ごとに算出されたパーツごとの故障率を記録する。
【0032】
さらに故障率算出部72は、パーツおよび故障理由の組合せごとの故障率を算出してよい。たとえば、あるパーツが故障しやすいことが特定された場合、故障理由を特定できていなければ、当該パーツが故障しやすいことが判明しただけで、故障させないための対策をとりづらい。そこで実施例の故障率算出部72は、パーツおよび故障理由の組合せごとに故障率を算出して、どのパーツが故障しやすく、さらにどのような理由で故障しているのかを特定できるようにする。故障率記録部108は、パーツおよび故障理由の組合せごとの故障率を記録する。
【0033】
図5は、故障率記録部108の記録内容の一例を示す。
図5に示す例は、スコープ型番が「ABC−100」の内視鏡であって、「上部内視鏡検査」において「生検用組織採取」に使用された内視鏡についての記録内容である。この組合せの検査数が120000、そのうち内視鏡が故障した検査数が2400であり、故障率が2%(=2400/120000)であることが算出されている。
【0034】
図5に示す例では、「湾曲ゴム」が「処置具を強く入れすぎた」ために故障した数が1200であり、1%の故障率を示していることが記録されている。なお「湾曲ゴム」を「たわみ状態で捻った」ために故障した数は240であり、0.2%の故障率を示している。他のパーツおよび故障理由の組合せに対する故障率も算出されているが、この例では、「処置具を強く入れすぎた」ために「湾曲ゴム」が故障することが非常に多いことを示す故障率が記録されている。
【0035】
以上のようにして、故障率記録部108は、内視鏡の種類ごとに、検査種別および処置内容の組合せにおける故障率、さらにはパーツおよび故障理由の組合せにおける故障率を記録する。実施例では、センターサーバ30が、算出された故障率を利用して、検査開始前の医師に対して、有用なガイダンスを行う機能をもつ。なお後述するが、医療施設サーバ10が、故障率等の情報をセンターサーバ30から受け渡されて、ガイダンス機能を実施してもよい。
【0036】
ガイダンス機能を実現するために、ガイダンス保持部110は、内視鏡の種類ごとに、パーツの故障理由に対応したガイダンスデータを保持している。ガイダンスデータは、たとえば内視鏡の使い方を説明するための動画データであり、故障率の高い検査種別および処置内容の組合せの検査が実施される前に、検査室の表示装置12に再生表示することで、医師に、あらためて正しい内視鏡の取扱方法を知らしめるためのものである。なおガイダンスデータは、内視鏡の取扱方法を読み上げる音声データであってもよい。
【0037】
医療施設2において、検査の開始前、処理装置11には、医療施設サーバ10から、これから行われる検査の検査種別、処置内容を示すオーダ情報が送信される。処理装置11は、オーダ情報を表示装置12に表示し、看護師または医師が、表示されているオーダ情報がこれから実施する検査の情報であることを確認する。看護師は処理装置11に、検査種別および処置内容に適合した内視鏡6を接続する。接続した内視鏡6の型番およびシリアル番号は、医療施設サーバ10に送信される。
【0038】
このとき医療施設サーバ10は、検査室において、これから行われる検査の検査種別、処置内容とともに、使用される内視鏡6の種類(型番)情報を、センターサーバ30に送信する。センターサーバ30において、検査予定取得部56が、これから行われる検査の種別、処置内容および使用される内視鏡の種類を取得し、出力処理部74に供給する。
【0039】
出力処理部74は、故障率記録部108に記録された検査種別、処置内容および内視鏡の種類の組合せに対応する故障率にもとづいて、ガイダンス保持部110に記録されたガイダンスデータの出力有無を定める。具体的に出力処理部74は、検査予定取得部56が取得した検査の種別、処置内容、内視鏡の種類の組合せに対して算出された故障率を、故障率記録部108から読み出す。出力処理部74は、読み出した故障率が所定の閾値以上であるか、下回っているかを判定する。たとえば所定の閾値が「1%」とすると、出力処理部74は、故障率記録部108から読み出した故障率が1%以上であれば、内視鏡故障率の高い検査であることを判断して、ガイダンスデータを出力することを決定し、故障率が1%未満であれば、ガイダンスデータを出力しないことを決定する。
【0040】
この例では出力処理部74は、検査の種別、処置内容、内視鏡の種類の組合せに対して算出された故障率を、所定の閾値と比較したが、検査の種別、処置内容、内視鏡の種類の組合せの中で、さらにパーツおよび故障理由の組合せにおける故障率を、所定の閾値と比較してもよい。出力処理部74は、故障率が所定の閾値を超えたパーツおよび故障理由の組合せに対して、ガイダンス保持部110から、パーツおよび故障理由の組合せに対応したガイダンスデータを読み出し、医療施設サーバ10に供給する。
【0041】
なお出力処理部74は、検査の種別、処置内容、内視鏡の種類の組合せに対して算出された故障率が所定の閾値以上である場合に、パーツおよび故障理由の組合せの中で最高となる故障率を示すパーツおよび故障理由に対応するガイダンスデータをガイダンス保持部110から読み出してもよい。出力処理部74は、読み出したガイダンスデータを、医療施設サーバ10に送信する。
【0042】
医療施設サーバ10は、ガイダンスデータを受信すると、検査室において検査が開始される前に、検査室の処理装置11に転送する。たとえば「ABC−100」の内視鏡を、上部内視鏡検査の生検用組織採取で使用する検査においては、
図5に示すように、「湾曲ゴム」および「処置具を強く入れすぎた」に対応したガイダンスデータが医療施設サーバ10に送信される。このガイダンスデータは、処置具である生検鉗子をやさしく挿入する手順を撮影したビデオデータである。
【0043】
処理装置11は、ガイダンスデータを表示装置12に再生表示し、これにより検査室にいる医師は、故障率の高い内視鏡の適切な取扱方法のガイダンスを受けることができる。内視鏡管理システム1は、医師が内視鏡6を使用する前に、故障の発生を低減させる取扱方法を示すガイダンスを提供することで、故障率低減の契機を与えられるようになる。
【0044】
以上のように、内視鏡管理システム1では、複数の医療施設からの検査情報および故障情報から、故障の発生しやすい内視鏡の処置内容、また故障するパーツおよび故障理由を特定することで、医療施設2への有用なフィードバック、つまり故障理由に応じたガイダンスの提供を可能とする。以下では、よりガイダンスの効果を高めるために、個々の医師に対して、ガイダンスを提供するケースを示す。
【0045】
<ケースA>
過去の故障に関する蓄積データをもとに解析したところ、担当医の検査経験が少ないほど、相対的に内視鏡6を故障させやすい傾向があることが分かっている。そこでケースAでは、実績検査数の少ない医師に対して、出力処理部74が、ガイダンスデータを提供する。
【0046】
検査数算出部70は、検査情報記録部102に記録された検査情報をもとに、処置内容ごとの検査数を、医師ごとに算出する。なお上記したように、この算出処理は、内視鏡の型番ごとに行われる。検査情報記録部102に記録された検査情報には、検査日時、担当医師、検査種別、処置内容、使用した内視鏡の識別情報(内視鏡ID)などの基本情報が含まれており、検査数算出部70は、担当医師ごとに、検査種別、処置内容、使用した内視鏡の型番の組合せに対応する検査数を算出する。
【0047】
以下、実績検査数の少ない医師Aが、スコープ型番が「DEF−150」の内視鏡を使用して、上部内視鏡検査で生検用組織採取を行う場合について説明する。検査数記録部106には、スコープ型番が「DEF−150」の内視鏡を使用して、「上部内視鏡検査」において「生検用組織採取」を行った検査の数(総検査数)が記録されており、また医師Aが「DEF−150」の内視鏡を使用して、上部内視鏡検査で生検用組織採取を行った検査数も記録されている。たとえば、総検査数が20万、医師Aの検査数が50であるとする。
【0048】
また故障率記録部108には、スコープ型番が「DEF−150」の内視鏡が「上部内視鏡検査」の「生検用組織採取」に使用されたときの故障率が記録されている。総検査数が20万であり、故障数が1200である場合、故障率記録部108には、故障率が0.6%と記録されている。
【0049】
出力処理部74は、医師Aの検査数が所定の基準を満たしているか否かを判断して、医師Aによる検査開始前に、ガイダンスデータを提供するか否かを決定する。具体的に出力処理部74は、医師Aが「DEF−150」の内視鏡を用いて生検用組織採取を行った上部内視鏡検査の実績回数(50回)が多いか少ないかを判断し、少ないと判断した場合に、「DEF−150」の内視鏡を用いて生検用組織採取を行う際に注意するべき手順を撮影したビデオデータを、ガイダンスデータとして提供することを決定する。
【0050】
出力処理部74は、医師Aの実績回数(50回)を、所定の閾値Nと比較する。この閾値Nは、たとえば全国の医師による検査の平均回数であってもよいが、最低検査回数として一意に設定された回数であってもよい。なお同じ型番の内視鏡6を使用する場合であっても、実施する処置内容によって、故障率は異なってくる。そのため故障率が高い処置を実施する場合と、故障率が低い処置を実施する場合とでは、故障率が高い処置を実施するときの方が、ガイダンスデータを提供する効果は高い。
【0051】
図6は、スコープランク保持部112に保持される補正係数kを示す。スコープランク保持部112は、スコープランクを故障率に応じて定義し、スコープランクごとの補正係数kを設定する。
【0052】
出力処理部74は、医師Aの実績回数を、所定の閾値Nと補正係数kとの乗算値と比較する。上記した例で、「DEF−150」の内視鏡を上部内視鏡検査で生検用組織採取に使用したときの故障率が0.6%と導き出されている場合、この使用状態におけるスコープランクは3であり、補正係数kは0.9と導出できる。したがって、出力処理部74は、医師Aの実績回数(50回)を、N×0.9の乗算値と比較し、50回<N×0.9である場合に、ガイダンス保持部110からガイダンスデータを読み出して、医師Aの検査前に提供する。
【0053】
<ケースB>
ケースBは、検査担当医が過去に内視鏡6を故障させたことがある状況を前提とする。ケースBでは、故障の再発防止の目的で、過去に故障させた医師に対して、出力処理部74が、ガイダンスデータを提供する。
【0054】
検査数算出部70は、検査情報記録部102に記録された検査情報をもとに、処置内容ごとの検査数を、医師ごとに算出する。この算出処理は、内視鏡の型番ごとに行われる。検査情報記録部102に記録された検査情報には、検査日時、担当医師、検査種別、処置内容、使用した内視鏡の識別情報(内視鏡ID)などの基本情報が含まれており、検査数算出部70は、担当医師ごとに、検査種別、処置内容、使用した内視鏡の型番の組合せごとの検査数を算出して、検査数記録部106に記録しておく。
【0055】
これから医師Bが、スコープ型番が「GHI−80」の内視鏡を使用して、上部内視鏡検査で生検用組織採取を行う場合について説明する。医師Bは、過去にスコープ型番が「GHI−80」の内視鏡を使用して、上部内視鏡検査で生検用組織採取を行った際に、内視鏡を故障させた経験がある。故障率算出部72は、医師Bが「GHI−80」の内視鏡を使用して、上部内視鏡検査で生検用組織採取を行ったときの故障率を算出して、故障率記録部108に記録する。たとえば医師Bによる「GHI−80」の内視鏡を用いて生検用組織採取を行った上部内視鏡検査の実績回数が500回、医師Bによる故障数が4回であるとき、故障率は0.8%(=4/500)として算出され、故障率記録部108に記録される。
【0056】
図7は、医師ランク保持部114に保持される医師ランクを示す。医師ランク保持部114は、医師ランクを故障率に応じて定義する。医師Bは、「GHI−80」の内視鏡を用いて生検用組織採取を行う上部内視鏡検査に関し、故障率が0.8%であるため、医師ランクが4と設定される。
【0057】
出力処理部74は、医師Bの医師ランクを、所定のランク閾値と比較する。このランク閾値は、たとえば3であってよい。出力処理部74は、医師ランク値(4)が所定の閾値以上であれば、ガイダンス保持部110からガイダンスデータを読み出して、医師Bの検査前に提供する。つまり医師ランクが低ければ、検査前に、ガイダンス動画を見てもらい、故障を発生させない適切な内視鏡の取扱手順を確認させる。
【0058】
なお出力処理部74は、スコープランクと医師ランクとを比較して、スコープランクの方が低い(スコープランク値が大きい)場合に、ガイダンス保持部110からガイダンスデータを読み出して、医師Bに提供してもよい。
【0059】
出力処理部74は、過去に医師Bが故障させたパーツおよび故障理由に対応するガイダンスデータを医師Bに提供するのが好ましい。たとえば医師Bが複数回、「GHI−80」の型番の内視鏡を故障させている場合には、パーツおよび故障理由の最も多い組合せに対応するガイダンスデータを提供してもよく、また直近のパーツおよび故障理由に対応するガイダンスデータを提供してもよい。
【0060】
<ケースC>
ケースCでは、検査担当医Cの検査にかかる平均時間が所定時間よりも長い場合に、出力処理部74は、検査担当医Cが、検査種別および処置内容の組合せに不慣れであると判断する。このとき出力処理部74は、内視鏡の適切な(効率的な)使用手順を撮影したガイダンスデータをガイダンス保持部110から読み出して、医師Cに提供する。ケースCでは、出力処理部74が、検査担当医Cの検査時間の平均値を、医療施設2から取得する必要がある。
【0061】
<ケースD>
ケースDでは、検査担当医Dが久しぶりに検査を行う場合に、出力処理部74は、検査担当医Dにブランクがあることを判断して、内視鏡の適切な(効率的な)使用手順を撮影したガイダンスデータをガイダンス保持部110から読み出して、医師Dに提供する。ケースDでは、出力処理部74が、検査担当医Dの検査ブランク期間を、医療施設2から取得する必要がある。ガイダンス提供のための基準となるブランク期間については、ブランク後に故障をさせた他医師の平均ブランク期間をもとに算出されてよい。
【0062】
以上、本発明を複数の実施例をもとに説明した。これらの実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0063】
実施例では、センターサーバ30がガイダンス機能を提供したが、医療施設サーバ10が、故障率記録部108に記録された情報をセンターサーバ30から受け渡されて、出力処理部74の機能を備えることで、ガイダンス機能を提供できるようにしてもよい。
【0064】
また実施例では、故障率等の条件が成立した場合に、出力処理部74がガイダンスデータを提供することとしたが、一度ガイダンスデータを提供した後、しばらくの期間(たとえば1ヶ月)は、ガイダンスデータを提供しないようにしてよい。なお、この期間に、内視鏡6を故障させた場合には、出力処理部74は、その直後の同一検査に関して、必ずガイダンスデータを提供するようにすることが好ましい。