(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸体と、前記基層と、前記表層と、を有し、前記軸体の外周に前記基層が形成され、前記基層の外周に前記表層が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電部材。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る電子写真機器用帯電部材は、感光ドラムなどの被帯電体を帯電させるものであれば、特に形状が限定されるものではない。例えば、ロール状、ブレード状などの形状のものが適用可能である。
図1には、ロール状の帯電部材(帯電ロール)の一実施形態を示している。
図2には、ブレード状の帯電部材(帯電ブレード)の一実施形態を示している。
【0015】
図1に示すように、帯電ロール10は、軸体12と、軸体12の外周に形成された基層14と、基層14の外周に形成された表層16と、を備える。基層14は、帯電ロール10のベースとなる層である。表層16は、帯電ロール10の表面に現れる層となっている。
【0016】
図2に示すように、帯電ブレード20は、基層24と、基層24の面上に形成された表層26と、を備える。基層24は、帯電ブレード20のベースとなる層である。表層26は、帯電ブレード20の表面に現れる層となっている。
【0017】
以下、帯電ロール10を例に挙げて説明する。帯電ブレード20の基層24、表層26は、帯電ロール10の基層14、表層16と同様の材料構成となる。
【0018】
基層14は、以下の(a)〜(d)を含有する導電性ゴム組成物の架橋体である。基層14は、導電性ゴム弾性体からなる。
(a)架橋性ゴム
(b)架橋剤
(c)特定のイオン導電剤
(d)カーボンブラック
【0019】
(a)架橋性ゴムは、(b)架橋剤を用いて架橋可能なゴムである。未架橋の架橋性ゴムを架橋することにより、架橋ゴムが得られる。架橋ゴムは、基層14のベースポリマーを構成する。架橋性ゴムは、極性ゴムであってもよいし、非極性ゴムであってもよい。導電性に優れるなどの観点から、架橋性ゴムは極性ゴムがより好ましい。
【0020】
極性ゴムは、極性基を有するゴムであり、極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などを挙げることができる。極性ゴムとしては、具体的には、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2−クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などを挙げることができる。
【0021】
極性ゴムのうちでは、上記導電性ゴム組成物の体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)が好ましい。
【0022】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。
【0023】
ウレタンゴムとしては、分子内にエーテル結合を有するポリエーテル型のウレタンゴムなどを挙げることができる。ポリエーテル型のウレタンゴムは、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとジイソシアネートとの反応により製造できる。ポリエーテルとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0024】
非極性ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などを挙げることができる。
【0025】
(b)架橋剤は、(a)架橋性ゴムを架橋する架橋剤である。(b)架橋剤としては、(a)架橋性ゴムを架橋する架橋剤であれば特に限定されるものではない。(b)架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0026】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0027】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0028】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−メチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、6−イソプロピルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネート、5,8−ジメチルキノキサリン−2,3−ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0029】
(b)架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2−エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2−メルカプトベンゾチアゾール塩、2−メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
【0030】
上記導電性ゴム組成物において、(b)架橋剤の含有量は、基層14の硬さや架橋度などを考慮し、(a)架橋性ゴム100質量部に対して0.5〜7.0質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは1.0〜5.0質量部の範囲内である。
【0031】
(c)特定のイオン導電剤は、下記一般式(1)で示される第四級アンモニウム塩である。
【化2】
ただし、R
1およびR
2はアリル基であり、R
3はメチル基またはエチル基であり、R
4は炭素数6〜8の直鎖アルキル基である。X
−は、フッ素原子を有するスルホネートアニオンまたはフッ素原子を有するビス(スルホニル)イミドアニオンである。
【0032】
X
−におけるフッ素原子を有するスルホネートアニオンとしては、トリフルオロメタンスルホネート(TF)、ペンタフルオロエタンスルホネート、ヘプタフルオロプロパンスルホネートなどのパーフルオロアルカンスルホネートを挙げることができる。また、X
−におけるフッ素原子を有するビス(スルホニル)イミドアニオンとしては、N,N−ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、N,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、N,N−ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N−ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミド、N,N−ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドなどのパーフルオロビス(スルホニル)イミドを挙げることができる。これらは、(c)特定のイオン導電剤のアニオンとして1種単独で含まれていてもよいし、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。これらのうちでは、イオン解離しやすいなどの観点から、TF、FSI、TFSIなどが好ましい。
【0033】
上記導電性ゴム組成物において、(c)特定のイオン導電剤の含有量は、導電性やイオン導電剤のブリードを考慮し、(a)架橋性ゴム100質量部に対し0.1〜10質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3〜5.0質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5〜3.0質量部の範囲内である。
【0034】
(d)カーボンブラックは、基層14における電子導電剤として用いられるものである。(d)カーボンブラックは、比表面積が特定範囲にあるものを好ましく用いることができる。(d)カーボンブラックの比表面積は、40〜300m
2/gの範囲内が好ましい。より好ましくは42〜240m
2/gの範囲内である。(d)カーボンブラックの比表面積は、窒素吸着法により測定することができる。
【0035】
上記導電性ゴム組成物において、(d)カーボンブラックの含有量は、基層14の硬さや導電性を考慮し、(a)架橋性ゴム100質量部に対して5〜40質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは10〜30質量部の範囲内である。
【0036】
上記導電性ゴム組成物は、必要に応じて、(d)カーボンブラック以外の電子導電剤、滑剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、反応助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などの各種添加剤を1種または2種以上含有していても良い。
【0037】
基層14の厚さは、特に限定されるものではないが、帯電ロール10としては、好ましくは0.1〜10mmの範囲内、より好ましくは0.5〜5mmの範囲内、さらに好ましくは1〜3mmの範囲内である。
【0038】
基層14の体積抵抗率としては、特に限定されるものではないが、帯電ロール10としては、好ましくは10
2〜10
10Ω・cm、より好ましくは10
3〜10
9Ω・cm、さらに好ましくは10
4〜10
8Ω・cmの範囲内である。
【0039】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
【0040】
表層16は、ロール表面の保護層などとして機能し得る。表層16は、主材料として、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、これらの変性体などのポリマー成分が含まれることが好ましい。変性体における変性基としては、例えば、N−メトキシメチル基、シリコーン基、フッ素基などを挙げることができる。これらのポリマー成分は、表層材料として1種単独で含まれていてもよいし、2種以上組み合わされて含まれていてもよい。表層16のポリマー成分は、架橋されていてもよい。
【0041】
表層16には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c−TiO
2、c−ZnO、c−SnO
2(c−は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。また、表面粗さを確保するため、粗さ形成用粒子を添加してもよい。
【0042】
粗さ形成用粒子は、表層16に表面凹凸を形成する。粗さ形成用粒子としては、樹脂粒子、シリカ粒子などを挙げることができる。樹脂粒子としては、ウレタン粒子、シリコーン粒子、アクリル粒子などを挙げることができる。粗さ形成用粒子の平均粒子径は、3〜50μmの範囲内であることが好ましい。粗さ形成用粒子の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用い、メジアン径により算出することができる。
【0043】
表層16の厚さは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01〜100μmの範囲内、より好ましくは0.1〜20μmの範囲内、さらに好ましくは0.3〜10μmの範囲内である。表層16の体積抵抗率は、好ましくは、10
7〜10
12Ω・cm、より好ましくは、10
8〜10
11Ω・cm、さらに好ましくは、10
9〜10
10Ω・cmの範囲内である。
【0044】
帯電ロール10は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、上記導電性ゴム組成物を注入して、加熱・硬化させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に上記導電性ゴム組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に基層14を形成する。次いで、形成した基層14の外周に表層形成用組成物を塗工し、必要に応じて紫外線照射や熱処理を行うことにより、表層16を形成する。これにより、帯電ロール10を製造することができる。
【0045】
表層形成用組成物は、上記主材料、導電剤、必要に応じて含有されるその他の添加剤を含有するものからなる。その他の添加剤としては、ポリマー成分の架橋剤、レベリング剤、表面改質剤などを挙げることができる。表層形成用組成物は、粘度を調整するなどの観点から、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン(MIBK)、THF、DMFなどの有機溶剤や、メタノール、エタノールなどの水溶性溶剤などの溶剤を適宜含んでいても良い。塗工方法としては、ロールコーティング法や、ディッピング法、スプレーコート法などの各種コーティング法を適用することができる。
【0046】
以上の構成の帯電ロール10によれば、基層14が、(a)極性ゴム、(b)架橋剤、(c)特定のイオン導電剤、(d)カーボンブラック、を含有する導電性ゴム組成物の架橋体であることで、(c)特定のイオン導電剤のブリードによる画像不具合が抑えられるとともに優れた帯電性が維持できる。これは、以下の機構によるものと推察される。
【0047】
上記一般式(1)で示される特定のイオン導電剤は、アニオンとして、フッ素原子を有するスルホネートアニオンまたはフッ素原子を有するビス(スルホニル)イミドアニオンを有する。このアニオンは、構造中にフッ素基を含んでいるため、アニオン自体の塩基性が小さく、カチオンと比較的弱いイオン結合を形成する。そのため、(c)特定のイオン導電剤は、(a)極性ゴム中でイオンに解離しやすくなっている。これにより、(c)特定のイオン導電剤の比誘電率の値が大きくなって基層14の荷電性能を高くできるだけでなく、カチオンの自由度が高くなり、2つのアリル基を有するカチオンが高分子量化しやすくなる。
【0048】
(c)特定のイオン導電剤のカチオンは、下記の一般式(2)のように示すことができる。mは0または1であり、nは5〜7の整数である。
【化3】
【0049】
(c)特定のイオン導電剤のカチオンは、2つのアリル基を有することで、基層14の(a)極性ゴムの架橋時に、ラジカル存在下(架橋剤存在下)で、下記の式(3)に示すように高分子量化する。この際、(a)極性ゴムと結合を形成する。これにより、(c)特定のイオン導電剤のカチオンは、下記の式(3)に示す構造で、(a)極性ゴムの高分子骨格内に取り込まれ固定化される。このとき、2つのアリル基を有するカチオンであっても、基層14の(a)極性ゴムの架橋時に(a)極性ゴムと結合を形成しないものも存在する。(a)極性ゴムと結合を形成していないカチオンは、カチオンにおける直鎖アルキル基と基層中の(d)カーボンブラックとの相互作用により(d)カーボンブラックに吸着される。これにより、(c)特定のイオン導電剤のブリードが抑えられ、画像不具合が抑えられる。
【0050】
【化4】
ただし、lは、繰り返し単位の数であり、任意の正の整数である。
【0051】
(c)特定のイオン導電剤のカチオンは、表面電荷密度が高いほど、(d)カーボンブラックに吸着しやすい。表面電荷密度は、カチオンのアルキル基の鎖が長いほど小さい。すなわち、カチオンのアルキル基の鎖が長いほど、(d)カーボンブラックに吸着しにくくなる。一方で、カチオンのアルキル基の鎖が短いと、アニオンとの相互作用が強くなり、イオン解離しにくくなって導電性が低下する。mが1よりも大きい整数であると、nが5〜7の整数であっても、カチオンと(d)カーボンブラックの相互作用が小さくなり、(c)特定のイオン導電剤のブリードが十分に抑えられない。nが7よりも大きい整数であると、mが0または1であっても、カチオンと(d)カーボンブラックの相互作用が小さくなり、(c)特定のイオン導電剤のブリードが十分に抑えられない。nが5よりも小さい整数であると、mが0または1であっても、カチオンとアニオンの相互作用が強くなり、イオン解離しにくくなって導電性が満足しない。したがって、上記の一般式(2)(3)のmは0または1であり、nは5〜7の整数である。
【0052】
(d)カーボンブラックは、比表面積が大きいほど、(c)特定のイオン導電剤のカチオンを吸着しやすくなる。一方で、比表面積が大きいほど、凝集しやすく、導電性が低下する。したがって、(c)特定のイオン導電剤のブリードを抑える効果と帯電性とのバランスに優れる観点から、(d)カーボンブラックの比表面積は、40〜300m
2/gの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、42〜240m
2/gの範囲内である。
【0053】
表層16は、トナー付着防止に優れる、柔軟で被帯電体を傷つけにくいなどの観点から、ポリアミド、ポリウレタン、アクリル樹脂から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。この場合、一般にはイオン導電剤が表層16を通過しやすい傾向にあるが、このような表層16であっても本発明によれば(c)特定のイオン導電剤のブリードを抑える効果に優れる。このとき、表層16のポリマー成分が架橋されていると、架橋されていない場合よりも(c)特定のイオン導電剤のブリードを抑えやすい。
【0054】
本発明に係る帯電ロールの構成としては、
図1に示す構成に限定されるものではない。例えば、
図1に示す帯電ロール10において、軸体12と基層14との間に他の弾性体層を備えた構成であってもよい。この場合、他の弾性体層は、帯電ロールのベースとなる層であり、基層14が帯電ロールの抵抗調整を行う抵抗調整層などとして機能する。他の弾性体層は、例えば、基層14を構成する材料として挙げられた材料のいずれかにより構成することができる。また、例えば、
図1に示す帯電ロール10において、基層14と表層16との間に他の弾性体層を備えた構成であってもよい。この場合、基層14が帯電ロールのベースとなる層であり、他の弾性体層は、帯電ロールの抵抗調整を行う抵抗調整層などとして機能する。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。なお、実施例は、軸体の外周に基層と表層とがこの順に積層された2層構造の帯電ロールを例に挙げるものであるが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0056】
<イオン導電剤<1>:ジアリル/C1/C6・TFSIの調製>
ジアリルメチルアミン150mmol、n−ヘキシルブロミド180mmol、アセトニトリル50gを混合し、105℃で24時間反応させた。その後、反応液を室温まで冷却し、ヘキサンを添加して未反応分を抽出除去し、残液をエバポレーターを用いて減圧下で濃縮し、ジアリルヘキシルメチルアンモニウム・ブロミドを得た。次いで、得られたジアリルヘキシルメチルアンモニウム・ブロミドとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムとを水系溶媒に添加し、室温で4時間攪拌することにより、ジアリルヘキシルメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを調製した。
【0057】
<イオン導電剤<2>:ジアリル/C1/C8・TFSIの調製>
n−ヘキシルブロミドに代えてn−オクチルブロミドを用いた以外はイオン導電剤<1>の調製と同様にして、ジアリルオクチルメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを調製した。
【0058】
<イオン導電剤<3>:ジアリル/C2/C6・TFSIの調製>
n−ヘキシルアミン500mmolと25wt%水酸化ナトリウム水溶液384g(水酸化ナトリウムとして2400mmol)を混合し、80℃まで加熱した。その後、アリルクロライド1200mmolを2時間かけて滴下し、追加で80℃で2時間撹拌した。得られた液から油層のみ取り出し、余分なアリルクロライドを減圧留去することでジアリルヘキシルアミンを得た。次いで、得られたジアリルヘキシルアミンとエチルブロミドとを有機溶媒中で反応させることにより、ジアリルヘキシルエチルアンモニウム・ブロミドを得た。次いで、得られたジアリルヘキシルエチルアンモニウム・ブロミドとビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムとを水系溶媒に添加し、室温で4時間攪拌することにより、ジアリルヘキシルエチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを調製した。
【0059】
<イオン導電剤<4>:ジアリル/C1/C9・TFSIの調製>
n−ヘキシルブロミドに代えてn−ノニルブロミドを用いた以外はイオン導電剤<1>の調製と同様にして、ジアリルノニルメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを調製した。
【0060】
<イオン導電剤<5>:ジアリル/C1/C5・TFSIの調製>
n−ヘキシルブロミドに代えてn−ペンチルブロミドを用いた以外はイオン導電剤<1>の調製と同様にして、ジアリルペンチルメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを調製した。
【0061】
<イオン導電剤<6>:ジアリル/C3/C6・TFSIの調製>
エチルブロミドに代えてn−プロピルブロミドを用いた以外はイオン導電剤<3>の調製と同様にして、ジアリルヘキシルプロピルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを調製した。
【0062】
導電性ゴム組成物のイオン導電剤以外の材料として、以下の材料を準備した。
・架橋性ゴム
ヒドリンゴム:ECO、日本ゼオン社製「HydrinT3106」
ニトリルゴム:NBR、日本ゼオン社製「NipolDN302」
・架橋剤
過酸化物:日油製「パークミルD40」
・カーボンブラック
カーボンブラック<1>:東海カーボン製「シーストSO」、比表面積42m
2/g
カーボンブラック<2>:東海カーボン製「シースト9」、比表面積142m
2/g
カーボンブラック<3>:キャボット製「BLACK PEARLS 880」、比表面積240m
2/g
・ステアリン酸(加工助剤)[日本油脂(株)製、「ステアリン酸さくら」]
・酸化亜鉛(反応助剤)[堺化学工業(株)製、「酸化亜鉛2種」]
・ハイドロタルサイト(反応助剤)[協和化学工業製「DHT4A」]
【0063】
(実施例1)
<導電性ゴム組成物の調製>
ヒドリンゴム100質量部に対し、カーボンブラック<1>20質量部、イオン導電剤<1>1質量部、架橋剤3質量部、ステアリン酸0.7質量部、酸化亜鉛5質量部、ハイドロタルサイト2質量部を配合し、これらを攪拌機により撹拌、混合して、実施例1に係る導電性ゴム組成物を調製した。
【0064】
<基層の作製>
成形金型に芯金(直径6mm)をセットし、上記導電性ゴム組成物を注入し、170℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚さ1.75mmの導電性ゴム弾性体からなる基層を形成した。
【0065】
<表層の作製>
N−メトキシメチル化ナイロン(ナガセケムテックス社製、「EF30T」)100質量部と、導電性酸化スズ(三菱マテリアル社製、「S−2000」)60質量部と、ウレタン粒子(根上工業製「アートパールC600」、平均粒子径10μm)30質量部と、クエン酸(架橋剤)1質量部と、メタノール300質量部とを混合して、表層形成用組成物を調製した。次いで、基層の表面に表層形成用組成物をロールコートし、120℃で50分加熱して、基層の外周に、厚さ10μmの表層を形成した。これにより、実施例1に係る帯電ロールを作製した。
【0066】
(実施例2〜3)
導電性ゴム組成物の調製においてイオン導電剤を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0067】
(実施例4〜5)
導電性ゴム組成物の調製においてカーボンブラックを変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0068】
(実施例6)
導電性ゴム組成物の調製において架橋性ゴムを変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0069】
(実施例7〜8)
表層形成用組成物の調製においてポリマーを変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
・ポリウレタン:三井化学製「タケラックW6061」
・アクリル樹脂:根上工業製「パラクロンプレコート200」
【0070】
(比較例1〜3)
導電性ゴム組成物の調製においてイオン導電剤を変更した以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0071】
(比較例4)
導電性ゴム組成物の調製においてカーボンブラックを配合しなかった以外は実施例1と同様にして、帯電ロールを作製した。
【0072】
作製した各帯電ロールについて、ブリードの評価、帯電量の評価を行った。評価結果と導電性ゴム組成物の配合組成(質量部)、表層形成用組成物の配合組成(質量部)を以下の表に示す。
【0073】
(ブリードの評価)
評価機として京セラ製「ECOSYS P5026cdw」を用い、ドラムユニットに作製した帯電ロールをセットし、32.5℃×85%RH環境に12時間放置した。その後、23℃×53%RH環境にてハーフトーン画像を出力した。出力画像の20枚以内に帯電ロールからイオン導電剤がブリードしたことに起因するドラムピッチの白スジが消失した場合を「○」、出力画像の20枚以上でもドラムピッチの白スジが消失しない場合を「×」とした。
【0074】
(帯電量の評価)
評価機として京セラ製「ECOSYS P5026cdw」を用い、ドラムユニットに作製した帯電ロールをセットし、10℃×10%RH環境にて1200V印加した際の帯電量を測定した。帯電量が300V超であった場合を「○」、帯電量が300V以下であった場合を「×」とした。
【0075】
【表1】
【0076】
表1によれば、本願請求項1を満足する構成において、イオン導電剤のブリードによる画像不具合が抑えられるとともに優れた帯電性が維持できることがわかる。比較例のように、特定のイオン導電剤とカーボンブラックを併用していない場合には、上記効果を奏しない。そして、実施例1〜3、比較例1〜3によれば、上記一般式(1)において、R
3が炭素数3以上であると、R
4が炭素数6〜8の直鎖アルキル基であってもイオン導電剤のブリードが抑えられず、R
4が炭素数9以上であると、R
3が炭素数1〜2であってもイオン導電剤のブリードが抑えられず、R
4が炭素数5以下であると、帯電性を満足しないことがわかる。
【0077】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。