(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(d)の含有量が、前記(a)〜(c)の合計100質量部に対し50〜100質量部の範囲内であることを特徴とする請求項2または3に記載の電子写真機器用導電性ロール。
前記保護層と前記導電性ゴム弾性体層との間には、フェノール樹脂を含む接着層が設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子写真機器用導電性ロール。
前記保護層における電子導電剤の含有量が、前記(a)〜(c)の合計100質量部に対し7.5〜15質量部の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の電子写真機器用導電性ロール。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールの外観斜視図(a)および径方向断面図(A−A線断面図)(b)である。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用導電性ロール(以下、単に導電性ロール10ということがある)は、芯金からなる軸体12と、軸体12の外周に形成された保護層14と、保護層14の外周に形成された導電性ゴム弾性体層16と、を備える。導電性ロール10において、保護層14は、軸体12と導電性ゴム弾性体層16の両方に接している。
【0017】
軸体12は、一般に導電性を有するものであればよく、この点から材料が限定されることはないが、コストや加工性などから、本発明においては、鉄またはステンレスを母材とするものが用いられる。軸体12は、母材のみで構成されていてもよいし、母材の表面にめっきなどによって形成される金属層を1層あるいは2層以上有する構成であってもよい。この場合の金属層は、防錆性を高める、保護層14との密着性を高めるなどの観点から形成される。コストの観点では、軸体12は母材のみで構成されるほうが好ましいが、防錆性に優れる、保護層14との密着性に優れるなどの観点から、軸体12は母材の表面に金属層を1層あるいは2層以上有する構成が好ましい。
【0018】
母材の表面に形成される金属層は、導電性を有する金属からなる。このような金属層の金属としては、ニッケルなどが挙げられる。そして、施工性、密着性等の観点から、母材の表面に形成される金属層は、めっきによって形成されることが好ましい。めっきには、無電解めっきと電解メッキがあるが、膜厚の均一性に優れる、ピンホール等の欠陥が少ないなどの観点から、無電解めっきが好ましい。
【0019】
母材の表面に形成される金属層の厚みは、防錆性に優れる、保護層14との密着性に優れるなどの観点から、比較的厚いほうが好ましい(具体的には、10μm以上である)が、その分、コストが高くなるため、コストの観点から、3μm以下であることが好ましい。
【0020】
軸体12の形状は、軸体12を構成できる形状であれば特に限定されるものではなく、中実体よりなる丸棒状であってもよいし、内部を中空にくり抜かれた円筒状であってもよい。
【0021】
導電性ゴム弾性体層16は、ハロゲン原子を含むゴムを含有する。ハロゲン原子を含むゴムは、導電性ゴム弾性体層16の主成分として含まれることが好ましい。ハロゲン原子を含むゴムとしては、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴム、塩素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムなどが挙げられる。導電性ゴム弾性体層16は、ゴム成分以外に、導電性を高めるための導電剤(電子導電剤、イオン導電剤)を含むことができる。また、ゴム成分以外に、増量剤、補強剤、加工助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤などの添加剤を1種または2種以上含むことができる。
【0022】
電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズなどが挙げられる。イオン導電剤としては、第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。
【0023】
導電性ゴム弾性体層16の厚さは、特に限定されるものではないが、通常、0.1〜10mm程度に形成され、好ましくは1〜5mmである。導電性ゴム弾性体層16は、導電性に優れるなどの観点から、体積固有抵抗率が1.0×10
5〜5.0×10
8Ω・cmの範囲内であることが好ましい。導電性ゴム弾性体層16は、ソリッド状の非発泡体であってもよいし、スポンジ状等の発泡体であってもよい。
【0024】
保護層14は、芯金からなる軸体12の外周表面を覆って、水や酸素、ハロゲンイオン、水素イオン等が軸体12の外周表面に接触するのを保護(抑制)するものである。また、軸体12と導電性ゴム弾性体層16の間を接着するものとしても機能する。保護層14は、下記(a)〜(c)を溶融混合して得られた材料を含む組成物の架橋体からなる。
(a)マレイミド基を2個以上有する多官能マレイミド化合物
(b)ベンゾオキサジン化合物
(c)エポキシ樹脂
【0025】
本発明で用いられる多官能マレイミド化合物は、マレイミド基を2個以上有する化合物であり、下記一般式(1)で示すことができる。
【化1】
式(1)中、R
1はk価の有機基であり、R
2,R
3は水素原子または1価の有機基である。有機基は、CおよびHのみから構成される炭化水素基であってもよいし、CおよびHの他にN,O,Sなどのヘテロ原子やハロゲン原子を含む基であってもよい。kは、2以上の整数であり、2〜10の整数が好ましい。R
2,R
3は、互いに同一の基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0026】
式(1)中、R
1としては、アルキレン基、アリーレン基などが挙げられる。アルキレン基は、炭素数1〜20のものが挙げられる。アルキレン基は、鎖状アルキレン基、環状アルキレン基が挙げられる。鎖状アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。アリーレン基は、炭素数1〜20のものが挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基、メチルフェニレン基などが挙げられる。
【0027】
式(1)中、R
2,R
3の有機基としては、炭素数1〜20の、アルキル基またはアリール基が挙げられる。アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基などである。アリール基は、フェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基などである。
【0028】
このような多官能マレイミド化合物としては、例えば、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−[1,3−(2−メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’−(1,4−フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4−マレイミドフェニルスルホン、ビス(4−マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4−ビス(4−マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−(マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンゼン]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンゼン]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンゼン]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−α,α−ジメチルベンゼン]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンゼン]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンゼン]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンゼン]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)−3,5−ジメチル−α,α−ジメチルベンゼン]ベンゼンなどを挙げることができる。
【0029】
また、多官能マレイミド化合物としては、上記する非重合体だけでなく、下記一般式(2)(3)で示す重合体も挙げることができる。
【0032】
式(2)(3)において、n,mは、繰り返し単位数を示し、平均値で0〜10である。式(2)(3)において、メチレン基は芳香環の2位または3位に結合する基であり、Rはメチレン基が結合していない任意の位置に1または2以上結合する置換基である。Rとしては、炭素数1〜20の、アルキル基、アリール基などが挙げられる。
【0033】
本発明で用いられるベンゾオキサジン化合物は、分子内にベンゾオキサジン環を有する化合物である。ベンゾオキサジン化合物としては、特に限定されるものではないが、保護層14の架橋性、硬化性などの観点から、1分子内に2個以上のベンゾオキサジン環を有する化合物が好ましい。ベンゾオキサジン化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型ベンゾオキサジン化合物、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン化合物などのように、ビスフェノール化合物とアミン化合物(例えば、アニリン等)とホルムアルデヒドの反応によって得られるFa型ベンゾオキサジン化合物や、ジアミノジフェニルメタン型ベンゾオキサジン化合物などのように、フェニルジアミン化合物とフェノール化合物とホルムアルデヒドの反応によって得られるPd型ベンゾオキサジン化合物が挙げられる。これらは市販品として入手可能なものを使用可能である。これらは、非重合体である。Fa型ベンゾオキサジン化合物とPd型ベンゾオキサジン化合物のうちでは、耐熱性により優れるなどの観点から、Pd型ベンゾオキサジン化合物が好ましい。
【0034】
例えば、Fa型ベンゾオキサジン化合物であるビスフェノールF型ベンゾオキサジン化合物は、以下の式(4)のような構造を有する。これは、ビスフェノールFとアニリンとホルムアルデヒドの反応によって得られるものである。
【化4】
【0035】
例えば、Pd型ベンゾオキサジン化合物は、以下の式(5)のような構造を有する。これは、4,4’−メチレンジアニリンとフェノールとホルムアルデヒドの反応によって得られるものである。
【化5】
【0036】
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、金属からなる軸体12への保護層14の密着性を高いものとすることができる。本発明で用いられるエポキシ樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル類、グリシジルアミン類、複素環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂などが挙げられる。ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂としては、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン等が挙げられる。グリシジルエステル類としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等が挙げられる。グリシジルアミン類としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルP−アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリン等が挙げられる。複素環式エポキシ樹脂としては、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。臭素化エポキシ樹脂としては、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールF型エポキシ樹脂、ブロム化クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0037】
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、3官能のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。これにより、架橋度が大きくなるため、保護層14の耐熱性が向上する。そうすると、フェノール樹脂を含む接着層を形成することができる。本発明で用いられるエポキシ樹脂は、3官能のエポキシ樹脂のみで構成されていてもよいし、3官能のエポキシ樹脂と2官能または1官能のエポキシ樹脂との組み合わせで構成されていてもよい。
【0038】
保護層14は、必要に応じて、シリカ粒子や導電剤などを含んでいてもよい。また、レベリング剤、酸化防止剤、加工剤、安定剤などを含んでいてもよい。
【0039】
(d)シリカ粒子は、分散性、均一性などの観点から、ナノオーダーサイズのナノ粒子であることが好ましい。より具体的には、一次粒子径が5〜30nmの範囲内のものが好ましい。保護層14において、(d)シリカ粒子の含有量は、(a)〜(c)の合計100質量部に対し50〜100質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは50〜80質量部の範囲内である。
【0040】
導電剤としては、電子導電剤、イオン導電剤などが挙げられる。電子導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、導電性酸化チタン、導電性酸化亜鉛、導電性酸化スズなどが挙げられる。イオン導電剤としては、第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤などが挙げられる。保護層14において、電子導電剤の含有量は、(a)〜(c)の合計100質量部に対し7.5〜15質量部の範囲内であることが好ましい。
【0041】
保護層14は、保護層形成用組成物を用いて形成することができる。保護層形成用組成物は、上記(a)〜(c)を溶融混合して得られた材料および上記(a)〜(c)を溶融混合して得られた材料を溶解する低沸点溶媒を含む。低沸点溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサンなどが挙げられる。保護層形成用組成物は、必要に応じて、上記シリカ粒子、上記導電剤、レベリング剤、酸化防止剤、加工剤、硬化促進剤、安定剤などを含んでいてもよい。
【0042】
硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタイミダゾール等のイミダゾール類;トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等のアミン類;トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩類;1,8−ジアザービシクロ(5,4,0)ウンデセン−7及びその誘導体;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オレイン酸錫、ナフテン酸マンガン、テフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト等の有機金属塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は単独で用いても2種以上を併用してもよく、また必要に応じて有機過酸化物やアゾ化合物等を併用することもできる。
【0043】
保護層形成用組成物は、次のようにして調製することができる。まず、上記(a)〜(c)を溶融混合する。上記(a)〜(c)の溶融混合は、少なくとも(a)〜(c)を配合し、これを加熱混合することにより行うことができる。この際、必要に応じて、上記シリカ粒子、上記導電剤、レベリング剤、酸化防止剤、加工剤、安定剤などを一緒に配合して加熱混合してもよい。ただし、硬化促進剤は、この溶融混合時には配合しない。多官能マレイミド化合物やエポキシ樹脂の架橋反応を進行させないためである。
【0044】
溶融混合時の加熱温度は、上記(a)〜(c)の混合物が溶融する温度以上であればよい。例えば100℃以上の温度とすることができる。また、150℃以上の温度とすることができる。また、その加熱温度は、400℃以下が好ましい。より好ましくは200℃以下である。加熱混合の時間は、特に限定されるものではないが、(a)〜(c)の混合物が溶融状態になってから0.1〜10分程度であればよい。加熱混合手段としては、ニーダー、二軸押出機などの混合機が挙げられる。(a)〜(c)の溶融混合状態が形成された後は、例えば5〜100℃の環境下などで自然冷却するか、例えば−20〜80℃の冷媒を用いて強制冷却することによって冷却することで、固体状の材料が得られる。固体状の材料は、粉砕機を用いて粉砕し、ドライ状態で保存することができる。
【0045】
次いで、上記(a)〜(c)を溶融混合して得られた材料を上記低沸点溶媒に溶解させる。この際、所定の温度に加熱してもよいし、常温下で行ってもよい。溶解に際し、加熱を行う場合、その加熱温度は上記低沸点溶媒の沸点よりも低い温度であり、100℃以下であることが好ましい。より好ましくは80℃以下である。硬化促進剤は、上記(a)〜(c)を溶融混合して得られた材料を上記低沸点溶媒に溶解させた後、その溶液に添加するとよい。以上により、保護層形成用組成物を調製することができる。
【0046】
(a)の多官能マレイミド化合物は、一般に低沸点の汎用有機溶媒への溶解性が悪い。しかし、本発明のように、(a)〜(c)を溶融混合すると、得られた材料は、上記低沸点溶媒に溶解することができる。これは、(a)〜(c)の溶融混合時に、(a)と(b)が反応して溶解性の高い化合物に変化しているためと推察される。(b)は、加熱によって開環反応が起こり、フェノール基を有する分子となる。これにより生じたフェノール基が(a)の不飽和結合と反応し、結合を形成する。こうして得られた化合物が、溶解性の高いものと推察される。得られた材料は、その溶解性から、未架橋の材料である。
【0047】
このように、(a)〜(c)を溶融混合することで、得られた材料は低沸点の汎用有機溶媒に溶解することができる。そして、これにより、保護層14を形成するための前駆体となる均一の塗布用液を形成することができ、この塗布用液において溶解性の低い(a)の析出が抑えられるため、これによって形成される保護層14のバリア性が高いものとなる。また、(b)は、加熱によってフェノール基を形成し、(c)の架橋剤として機能するものであるが、(a)〜(c)を溶融混合することで(a)と結合を形成している。このため、硬化後に保護層14においてエポキシ樹脂とビスマレイミド樹脂の相互侵入高分子網目(IPN構造)が形成される。これにより、保護層14の化学的安定性が向上するため、バリア性が向上する。このように、エポキシ樹脂単独の膜やフェノール樹脂単独の膜、フェノール樹脂を架橋剤としたエポキシ樹脂の膜などと比較して、バリア性が高いものとなり、水や酸素、ハロゲンイオン、水素イオン等が軸体12の外周表面に接触するのを保護(抑制)する効果に優れる。
【0048】
上記(a)の配合量は、特に限定されるものではないが、(a)(b)(c)の合計100質量部に対し、50〜90質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは50〜80質量部の範囲内、さらに好ましくは55〜75質量部の範囲内である。また、上記(b)の配合量は、特に限定されるものではないが、(a)(b)(c)の合計100質量部に対し、10〜40質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは10〜30質量部の範囲内、さらに好ましくは10〜25質量部の範囲内である。また、上記(c)の配合量は、特に限定されるものではないが、(a)(b)(c)の合計100質量部に対し、1.0〜30質量部の範囲内が好ましい。より好ましくは5.0〜30質量部の範囲内、さらに好ましくは10〜30質量部の範囲内である。
【0049】
導電性ロール10は、軸体12の外周に保護層14を形成し、保護層14の外周に導電性ゴム弾性体層16を形成することにより作製することができる。
【0050】
保護層14は、上記保護層形成用組成物を軸体12の外周に塗布した後、所定の熱処理を行うことにより、形成することができる。保護層14を形成する際の熱処理は、上記(a)〜(c)を溶融混合して得られた材料が架橋する温度、すなわち、エポキシ樹脂およびビスマレイミド樹脂の両方が架橋する温度に加熱することによって行われる。上記低沸点溶媒は、上記架橋反応が進行する前に塗膜から留去される。熱処理における加熱温度は、150〜250℃が好ましい。また、加熱時間は30〜60分が好ましい。
【0051】
導電性ゴム弾性体層16は、導電性ゴム弾性体層16を形成するための導電性ゴム組成物を層状に成形することにより形成することができる。導電性ゴム組成物の成形は、押出成形あるいは型成形により行うことができる。導電性ゴム組成物は、押出成形時あるいは型成形時の加熱等により、架橋・硬化される。
【0052】
導電性ゴム組成物は、上記ハロゲン原子を含むゴムを含む。また、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、架橋促進剤、上記導電剤(電子導電剤、イオン導電剤)、増量剤、補強剤、加工助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤などの添加剤を1種または2種以上含むことができる。導電性ゴム組成物は、これらを混練することにより調製することができる。
【0053】
以上の構成の導電性ロール10によれば、芯金からなる軸体12の外周に上記(a)〜(c)を溶融混合して得られた材料を含む組成物の架橋体からなる保護層14が設けられていることから、エポキシ樹脂による軸体12と保護層14の接着性の向上、エポキシ樹脂とビスマレイミド樹脂のIPN構造による化学的安定性の向上などにより、導電性ゴム弾性体層16に含まれるハロゲン原子によって軸体12に錆が発生するのを抑えることができる。
【0054】
そして、上記(a)〜(c)を溶融混合して得られた材料を含む組成物がさらに(d)シリカ粒子を含むと、保護層14のバリア性が向上し、軸体12の防錆性が向上する。この際、(d)の一次粒子径が5〜30nmの範囲内であると、保護層14のバリア性が向上し、軸体12の防錆性が向上する。また、(d)の含有量が上記(a)〜(c)の合計100質量部に対し50〜100質量部の範囲内であると、軸体12に対する保護層14の接着性と軸体12の防錆性の向上効果とのバランスに優れる。また、保護層14が電子導電剤を含むと、軸体12と導電性ゴム弾性体層16の間の接着性が向上する。
【0055】
上記導電性ロール10は、軸体12と、軸体12の外周に形成された保護層14と、保護層14の外周に形成された導電性ゴム弾性体層16と、を備えるものであるが、本発明に係る電子写真機器用導電性ロールは、この構成に限定されるものではない。例えば、保護層14と導電性ゴム弾性体層16の間に接着層を有するものであってもよい。
【0056】
図2は、本発明の他の実施形態に係る電子写真機器用導電性ロールの径方向断面図である。
【0057】
図2に示すように、本発明の他の実施形態に係る電子写真機器用導電性ロール(以下、単に導電性ロール20ということがある)は、芯金からなる軸体12と、軸体12の外周に形成された保護層14と、保護層14の外周に形成された接着層18と、接着層18の外周に形成された導電性ゴム弾性体層16と、を備える。導電性ロール20において、保護層14は、軸体12と接着層18の両方に接している。接着層18は、保護層14と導電性ゴム弾性体層16の両方に接している。
【0058】
導電性ロール20は、導電性ロール10と比較して、接着層18の有無のみが相違し、これ以外については導電性ロール10と同様であるため、その説明を省略する。
【0059】
接着層18は、保護層14と導電性ゴム弾性体層16の間を接着するものである。接着層18は、接着成分を含む接着剤組成物を用いて形成することができる。より具体的には、軸体12の外周に形成した保護層14の外周に接着剤組成物を塗布した後、必要により乾燥、硬化、架橋処理を行うことにより、保護層14の外周に接着層18を形成することができる。この場合、導電性ゴム弾性体層16は、接着層18の外周、あるいは、保護層14の外周に塗布した接着剤組成物の外周に、導電性ゴム組成物を成形する。
【0060】
接着剤組成物の接着成分としては、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリウレタン系接着剤、スチレン−ブタジエン系接着剤、天然ゴム系接着剤などが挙げられる。接着剤成分としては、これらのうちの1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
接着剤組成物の接着成分は、導電性ゴム弾性体層16の加硫時の熱や圧力などで硬化して接着層18として機能できるなどの観点から、加硫接着剤であることが好ましい。加硫接着剤としては、上記の接着成分から、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ニトリルゴム系接着剤などが挙げられる。これらのうちでは、導電性ゴム弾性体層16を形成するゴムと保護層14の接着性などの観点から、フェノール樹脂系接着剤が好ましい。
【0062】
接着剤組成物には、必要に応じて、導電性を付与するための導電剤(電子導電剤、イオン導電剤)を含めることができる。導電剤としては、保護層14において記載したものと同じものを挙げることができる。また、接着剤組成物には、必要に応じて、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、加硫助剤(架橋助剤)、増量剤、補強剤、加工助剤、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤などの添加剤を1種または2種以上含めることができる。
【0063】
接着剤組成物は、塗布性を考慮して、溶剤を用いて粘度調整することができる。溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが挙げられる。
【0064】
接着層18の厚さは、特に限定されるものではないが、接着層18の体積固有抵抗率の影響が大きくなるなどの観点から、100μm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以下である。また、接着力に優れるなどの観点から、1μm以上であることが好ましい。より好ましくは5μm以上である。接着層18の体積固有抵抗率は、特に限定されるものではないが、導電性に優れるなどの観点から、1.0×10
2〜5.0×10
5Ω・cmの範囲内であることが好ましい。
【0065】
以上の構成の導電性ロール20によれば、保護層14と導電性ゴム弾性体層16の間に接着層18を有することで、軸体12と導電性ゴム弾性体層16の間の接着性が向上する。接着層18がフェノール樹脂を含むと、特にその接着性に優れる。そして、接着層18が電子導電剤を含むと、軸体12と導電性ゴム弾性体層16の間の接着性が向上する。
【0066】
導電性ロール10においては、保護層14は軸体12と導電性ゴム弾性体層16の両方に接して設けられているが、本発明においては、密着性が十分に確保されるのであれば、軸体12と保護層14の間や、保護層14と導電性ゴム弾性体層16の間に、接着層18以外の他の層を1層以上備えていてもよい。導電性ロール20においても同様で、軸体12と保護層14の間や、保護層14と接着層18の間に、他の層を1層以上備えていてもよい。
【0067】
また、導電性ロール10は、軸体12と、保護層14と、導電性ゴム弾性体層16を1層有するものからなるが、本発明においては、抵抗調整、成分移行防止などの理由で、他の導電性ゴム弾性体層が、保護層14と導電性ゴム弾性体層16の間あるいは導電性ゴム弾性体層16の外周に1層以上設けられていてもよい。さらに、導電性ゴム弾性体層16の外周には、表面を保護する、電気的特性等を付与するなどの理由で、表層が設けられていてもよいし、導電性ゴム弾性体層16の表面に表面改質処理が施されていてもよい。導電性ロール20においても同様で、他の導電性ゴム弾性体層が、接着層18と導電性ゴム弾性体層16の間あるいは導電性ゴム弾性体層16の外周に1層以上設けられていてもよい。また、導電性ロール20においても同様で、導電性ゴム弾性体層16の外周に表層が設けられていてもよいし、導電性ゴム弾性体層16の表面に表面改質処理が施されていてもよい。
【0068】
表層の主材料としては、特に限定されるものではなく、ポリアミド(ナイロン)系、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、フッ素系のポリマーなどを挙げることができる。これらのポリマーは、変性されたものであっても良い。変性基としては、例えば、N−メトキシメチル基、シリコーン基、フッ素基などを挙げることができる。
【0069】
表層には、導電性付与のため、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、c−TiO
2、c−ZnO、c−SnO
2(c−は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。
【0070】
表面改質方法としては、UVや電子線を照射する方法、導電性ゴム弾性体層16の不飽和結合やハロゲンと反応可能な表面改質剤、例えば、イソシアネート基、ヒドロシリル基、アミノ基、ハロゲン基、チオール基などの反応活性基を含む化合物と接触させる方法などを挙げることができる。
【0071】
本発明に係る導電性ロールは、複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器の、帯電ロール、現像ロール、転写ロール、トナー供給ロールなどの導電性ロールとして用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0073】
<保護層形成用材料>
・HR3070:プリンテック製、上記(a)〜(c)の溶融混合物を含む未架橋の粉体
・HR3032:プリンテック製、上記(a)〜(c)の溶融混合物を含む未架橋の粉体
・HR3053:プリンテック製、上記(a)〜(c)の溶融混合物を含む未架橋の粉体
・HR3040:プリンテック製、上記(a)〜(c)の混合物(加熱混練していないもの)を含む未架橋の粉体
・VG3101L:プリンテック製、3官能エポキシ樹脂
・コロイダルシリカ:日産化学工業製「MEK−ST−40」、固形分濃度40質量%、一次粒子径10〜15nm、分散媒:MEK
・カーボンブラック分散液:御国色素株式会社製「#273」、固形分濃度17質量%、平均粒子径d50:0.2μm、分散媒:MEK
【0074】
<接着層形成用材料>
・フェノール系接着剤:東洋科学研究所製「メタロックU−20」、導電剤入り、固形分濃度18〜22質量%、分散媒:MEK
【0075】
<導電性ゴム組成物の調製>
エピクロルヒドリンゴム(ECO)[日本ゼオン製「HydrinT3106」]100質量部と、加硫剤として硫黄[鶴見化学工業(株)製]0.5質量部と、加硫助剤として酸化亜鉛2種[三井金属工業(株)製]5.0質量部及びハイドロタルサイト[協和化学工業(株)製、商品名「DHT4A」]10.0質量部、加硫促進剤A[三新化学工業(株)製、商品名「サンセラーCZ」]1.0質量部、加硫促進剤B[大内新興化学工業(株)製、商品名「アクセルTBT」]1.0質量部、イオン導電剤としてトリブチルエチルアンモニウム・スルホビナート(第4級アンモニウム塩)1.0質量部とを、ニーダーで混練して導電性ゴム組成物を得た。
【0076】
(実施例1)
<保護層形成用組成物の調製>
固形分濃度が30質量%となるようにHR3070をMEKに溶解させることにより、保護層形成用組成物を調製した。
【0077】
<導電性ロールの作製>
鉄製母材(φ8mm)にニッケルめっきを3μm施した芯金(軸体)の外周に保護層形成用組成物を塗布し、十分に乾燥させた後、塗膜を所定の温度で加熱硬化(架橋)させることにより、軸体の外周に保護層(10μm)を形成した。次いで、保護層を形成した軸体をパイプ状成形金型の型内にセットし、導電性ゴム組成物をその型内に注入した後、180℃で30分間加熱することにより、導電性ゴム組成物を加硫・硬化させて、保護層の外周に導電性ゴム弾性体層(3mm)を形成した。以上により、導電性ロールを得た。
【0078】
(実施例2〜3)
保護層形成用組成物の調製においてHR3070に代えて表1に記載の成分を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ロールを得た。
【0079】
(実施例4)
保護層形成用組成物の調製において、さらにコロイダルシリカを配合した以外は実施例1と同様にして導電性ロールを得た。
【0080】
(実施例5)
導電性ロールの作製において保護層と導電性ゴム弾性体層の間に接着層を形成した以外は実施例4と同様にして導電性ロールを得た。具体的には、形成した保護層の外周に接着層形成用材料を塗布し、十分に乾燥させた後、軸体をパイプ状成形金型の型内にセットして導電性ゴム弾性体層の成形を行うことにより、保護層の外周に接着層(8μm)を形成し、接着層の外周に導電性ゴム弾性体層(3mm)を形成した。
【0081】
(実施例6)
保護層形成用組成物の調製において、さらにカーボンブラック分散液を配合した以外は実施例5と同様にして導電性ロールを得た。
【0082】
(比較例1)
保護層形成用組成物としてエポキシ樹脂(VG3101L)をそのまま用いた以外は実施例6と同様にして導電性ロールを得た。
【0083】
(比較例2)
保護層形成用組成物の調製においてHR3070に代えてHR3040を用いた以外は実施例6と同様にして導電性ロールを得た。
【0084】
(比較例3)
<接着剤1の調製>
ノボラック型フェノール樹脂60質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂20質量部、カーボンブラック20質量部、MEK400質量部を配合し、室温で攪拌することにより接着剤1を調製した。
【0085】
<導電性ロールの作製>
保護層形成用組成物に代えて接着剤1を用いた以外は実施例1と同様にして、導電性ロールを作製した。
【0086】
作製した各導電性ロールを用い、錆の抑制と接着の評価を行った。評価方法は以下の通りである。その結果を表1に示す。
【0087】
(錆の抑制評価(製品評価))
作製した導電性ロールを50℃×95%RHの湿熱槽に放置し、30日後、軸体における錆の発生状況を目視にて確認した。軸体の外周面に錆が全く発生しなかったものを特に良好「◎」、軸体の外周面に1〜2箇所で錆が発生していたものを良好「○」、軸体の外周面に3〜5箇所で錆が発生していたものを不良「△」、軸体の外周面に6箇所以上で錆が発生していたものを特に不良「×」とした。
【0088】
(錆の抑制評価(塩水噴霧試験))
保護層の耐食性評価用として鉄製母材(φ8mm)にニッケルめっきを3μm施した芯金(軸体)に保護層のみ施工したサンプルを用意した。このサンプルをJIS Z2731記載の中性塩水噴霧試験にて試験し、240h後の錆発生状態を評価した。軸体の外周面に錆が全く発生しなかったものを特に良好「◎」、軸体の外周面に1〜2箇所で点状の錆が発生していたものを良好「○」、軸体の外周面に3〜5箇所で点状の錆が発生していたものを不良「△」、軸体の外周面に6箇所以上で点状の錆が発生していたものを特に不良「×」とした。
【0089】
(接着評価)
作製した導電性ロールを80℃×90%RHの湿熱槽に放置し、30日後、軸体と導電性ゴム弾性体層の間の接着状態を確認した。初期から接着していないものを特に不良「×」、30日以内で剥がれが生じたものを不良「△」、30日後では剥がれが生じていないものの、手で引き剥がすことが容易であったものを良好「○」、30日後では剥がれが生じておらず、また、手で引き剥がすことも容易ではなかったものを特に良好「◎」とした。
【0090】
【表1】
【0091】
比較例1は、芯金からなる軸体とハロゲン原子を含む導電性ゴム弾性体層の間に、有機成分がエポキシ樹脂からなる保護層と接着成分がフェノール樹脂からなる接着層を有するだけなので、接着性は満足するものの、錆の発生が十分に抑えられていない。比較例2は、保護層の形成において上記(a)〜(c)を含む組成物を用いているが、上記(a)〜(c)は溶融混合されておらず、接着性は満足するものの、錆の発生が十分に抑えられていない。比較例3は、芯金からなる軸体とハロゲン原子を含む導電性ゴム弾性体層の間に、フェノール/エポキシ系の接着剤1からなる層が形成されているだけなので、接着性は満足するものの、錆の発生が十分に抑えられていない。
【0092】
これに対し、実施例は、保護層の形成において上記(a)〜(c)を含む組成物を用いており、また、上記(a)〜(c)は溶融混合されている。このため、接着性と錆の抑制をともに満足する結果となった。そして、実施例同士の比較では、シリカ粒子を配合することで、錆の抑制効果が向上することがわかる。また、電子導電剤を配合することで、接着性が向上することがわかる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。