(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アームと、前記アームの基端側が固定される回動軸と、前記回動軸を回動可能に支持する軸受と、前記軸受を保持する軸受保持部材と、前記回動軸の外周側に配置される磁性流体シール装置と、前記磁性流体シール装置を保持するシール保持部材と、弾性体で形成される回転止め部材とを備え、
前記磁性流体シール装置は、磁石と、環状に形成されるとともに内周面が前記回動軸の外周面に対向するポールピースと、前記ポールピースの内周面と前記回動軸の外周面との間に保持される磁性流体と、前記磁石および前記ポールピースを保持するハウジングと、前記ハウジングに対する前記回動軸の相対回動が可能となるように前記回動軸の外周面と前記ハウジングとの間に配置される第2の軸受とを備え、
前記シール保持部材は、前記軸受に対して前記回動軸が傾いたときに前記回動軸の傾きに追従して前記ハウジングが傾くように前記ハウジングを保持し、
前記回転止め部材は、前記ハウジングおよび前記軸受保持部材に連結され、前記回動軸と前記ハウジングとの共回りを防止することを特徴とする産業用ロボット。
互いに回動可能に連結される複数のアーム部からなるアームと、前記アームの先端側に回動可能に連結されるハンドと、前記アーム部または前記ハンドが固定される回動軸と、前記回動軸を回動可能に支持する軸受と、前記軸受を保持する軸受保持部材と、前記回動軸の外周側に配置される磁性流体シール装置と、前記磁性流体シール装置を保持するシール保持部材と、弾性体で形成される回転止め部材とを備え、
前記磁性流体シール装置は、磁石と、環状に形成されるとともに内周面が前記回動軸の外周面に対向するポールピースと、前記ポールピースの内周面と前記回動軸の外周面との間に保持される磁性流体と、前記磁石および前記ポールピースを保持するハウジングと、前記ハウジングに対する前記回動軸の相対回動が可能となるように前記回動軸の外周面と前記ハウジングとの間に配置される第2の軸受とを備え、
前記シール保持部材は、前記軸受に対して前記回動軸が傾いたときに前記回動軸の傾きに追従して前記ハウジングが傾くように前記ハウジングを保持し、
前記回転止め部材は、前記ハウジングおよび前記軸受保持部材に連結され、前記回動軸と前記ハウジングとの共回りを防止することを特徴とする産業用ロボット。
【背景技術】
【0002】
従来、真空中で基板を搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、基板が搭載されるハンドと、ハンドが先端側に連結されるアームと、アームの基端側が連結される本体部と、本体部を昇降させる昇降機構とを備えている。アームは、第1アーム部と第2アーム部との2個のアーム部によって構成されている。本体部は、アームの基端側が固定される中空回動軸と、中空回動軸が連結される出力軸を有する減速機と、中空回動軸の外周側に配置される略円筒状の保持部材とを備えている。減速機のケース体は、保持部材に固定され、保持部材は、本体部のフレームに固定されている。
【0003】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、本体部において、中空回動軸の外周面と保持部材の内周面との間に、中空回動軸を回動可能に支持する軸受が配置されている。軸受は、中空回動軸の軸方向において所定の間隔をあけた状態で2箇所に配置されている。また、中空回動軸の外周面と保持部材の内周面との間には、真空領域への空気の流出を防ぐ磁性流体シールが配置されている。保持部材の外周側には、真空領域への空気の流出を防ぐためのベローズが配置されている。ベローズの上端は、本体部および昇降機構が収容されるケース体の上端部に固定され、ベローズの下端は、保持部材の下端部に固定されている。
【0004】
また、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、アームとハンドとの連結部(関節部)、および、第1アーム部と第2アーム部との連結部(関節部)は、減速機と中空回動軸とを備えている。アームとハンドとの連結部では、中空回動軸の上端にハンドが固定され、第1アーム部と第2アーム部との連結部では、中空回動軸の上端に第2アーム部が固定されている。中空回動軸の下端は、減速機の出力軸に固定されている。減速機の出力軸は、減速機の出力軸と減速機のケース体との間に配置される軸受に回動可能に支持されている。すなわち、中空回動軸は、減速機の出力軸を介して軸受に回動可能に支持されている。減速機のケース体は、保持部材に固定されている。アームとハンドとの連結部では、保持部材は、アームの先端側(具体的には、第2アーム部の先端側)に固定され、第1アーム部と第2アーム部との連結部では、保持部材は、第1アーム部の先端側に固定されている。中空回動軸の外周面と保持部材の内周面との間には、真空領域への空気の流出を防ぐ磁性流体シールが配置されている。
【0005】
なお、磁性流体シールは、たとえば、磁石と、中空回動軸の軸方向で磁石を挟むように配置されるポールピースとを備えている。磁石およびポールピースは、磁性流体シールのハウジングを介して保持部材に固定されている。ポールピースは、円環状に形成されており、ポールピースの内周面は、所定の隙間を介して中空回動軸の外周面に対向している。また、中空回動軸は、磁性部材で形成されており、ポールピースの内周面と中空回動軸の外周面との間の隙間には、磁性流体が保持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、基板の搬送時等にアームやハンドに過剰な負荷が作用すると、中空回動軸を支持する軸受に対して中空回動軸が傾くおそれがある。また、中空回動軸が傾くと、磁性流体シールのポールピースの内周面と中空回動軸の外周面との間の隙間が変動して、ポールピースの内周面と中空回動軸の外周面との間で磁性流体を保持することができなくなり、磁性流体シールが機能を果たさなくなるおそれがある。また、特許文献1に記載の産業用ロボットでは、産業用ロボットの動作時にハンド等が産業用ロボットの周辺の構造物等に衝突すると、特にアームとハンドとの連結部や第1アーム部と第2アーム部との連結部において、中空回動軸が衝撃を受けて、中空回動軸を支持する軸受に対して中空回動軸が瞬間的に大きく傾くおそれがある。また、中空回動軸が瞬間的に大きく傾くと、磁性流体シールが衝撃を受けて、磁性流体シールが損傷するおそれがある。
【0008】
なお、特許文献1に記載の産業用ロボットにおいて、剛性の高い軸受を使用したり、2箇所に配置される軸受の間隔を広くしたりすることで、回動中心軸の傾きを抑制することも可能であるが、この場合には、軸受が高価になって産業用ロボットが高価になったり、本体部が大型化して産業用ロボットが大型化したりする。
【0009】
そこで、本発明の課題は、アームの基端側等が固定される回動軸の外周側に配置される磁性流体シール装置を備える産業用ロボットにおいて、回動軸を回動可能に支持する軸受に対して回動軸が傾いたとしても、磁性流体シール装置の機能を維持することが可能な産業用ロボットを提供することにある。また、本発明の課題は、アームの基端側等が固定される回動軸の外周側に配置される磁性流体シール装置を備える産業用ロボットにおいて、回動軸が衝撃を受けて、回動軸を回動可能に支持する軸受に対して瞬間的に大きく傾いたとしても、磁性流体シール装置の損傷を防止することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、アームと、アームの基端側が固定される回動軸と、回動軸を回動可能に支持する軸受と、軸受を保持する軸受保持部材と、回動軸の外周側に配置される磁性流体シール装置と、磁性流体シール装置を保持するシール保持部材と
、弾性体で形成される回転止め部材とを備え、磁性流体シール装置は、磁石と、環状に形成されるとともに内周面が回動軸の外周面に対向するポールピースと、ポールピースの内周面と回動軸の外周面との間に保持される磁性流体と、磁石およびポールピースを保持するハウジングと、ハウジングに対する回動軸の相対回動が可能となるように回動軸の外周面とハウジングとの間に配置される第2の軸受とを備え、シール保持部材は、軸受に対して回動軸が傾いたときに回動軸の傾きに追従してハウジングが傾くようにハウジングを保持し
、回転止め部材は、ハウジングおよび軸受保持部材に連結され、回動軸とハウジングとの共回りを防止することを特徴とする。
【0011】
また、上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、互いに回動可能に連結される複数のアーム部からなるアームと、アームの先端側に回動可能に連結されるハンドと、アーム部またはハンドが固定される回動軸と、回動軸を回動可能に支持する軸受と、軸受を保持する軸受保持部材と、回動軸の外周側に配置される磁性流体シール装置と、磁性流体シール装置を保持するシール保持部材と
、弾性体で形成される回転止め部材とを備え、磁性流体シール装置は、磁石と、環状に形成されるとともに内周面が回動軸の外周面に対向するポールピースと、ポールピースの内周面と回動軸の外周面との間に保持される磁性流体と、磁石およびポールピースを保持するハウジングと、ハウジングに対する回動軸の相対回動が可能となるように回動軸の外周面とハウジングとの間に配置される第2の軸受とを備え、シール保持部材は、軸受に対して回動軸が傾いたときに回動軸の傾きに追従してハウジングが傾くようにハウジングを保持し
、回転止め部材は、ハウジングおよび軸受保持部材に連結され、回動軸とハウジングとの共回りを防止することを特徴とする。
【0012】
本発明の産業用ロボットでは、磁性流体シール装置のハウジングと回動軸の外周面との間に第2の軸受が配置されている。また、本発明では、磁性流体シール装置を保持するシール保持部材は、軸受に対して回動軸が傾いたときに回動軸の傾きに追従してハウジングが傾くようにハウジングを保持している。そのため、本発明では、軸受に対して回動軸が傾いても、ハウジングに保持されるポールピースの内周面と回動軸の外周面との隙間の変動量を抑制することが可能になる。したがって、本発明では、軸受に対して回動軸が傾いたとしても、ポールピースの内周面と回動軸の外周面との間で磁性流体を適切に保持することが可能になり、その結果、磁性流体シール装置の機能を維持することが可能になる。
【0013】
また、本発明では、磁性流体シール装置を保持するシール保持部材は、軸受に対して回動軸が傾いたときに回動軸の傾きに追従してハウジングが傾くようにハウジングを保持しているため、回動軸が衝撃を受けて軸受に対して瞬間的に大きく傾いても、磁性流体シール装置は衝撃を受けにくくなる。したがって、本発明では、回動軸が衝撃を受けて軸受に対して瞬間的に大きく傾いたとしても、磁性流体シール装置の損傷を防止することが可能になる。
また、本発明では、産業用ロボットは、回動軸とハウジングとの共回りを防止する回転止め部材を備え、回転止め部材は、弾性体で形成され、ハウジングおよび軸受保持部材に連結されているため、軸受に対して回動軸が傾いたときに回動軸の傾きに追従してハウジングが傾くようにシール保持部材にハウジングが保持されていても、回動軸とハウジングとの共回りを防止することが可能になる。
【0014】
本発明において、シール保持部材は、たとえば、回動軸の外周側を覆うように配置されるベローズであり、ハウジングは、ベローズの一端に固定されている。この場合には、軸受に対して回動軸が傾いたときに回動軸の傾きに追従してハウジングが傾くようにベローズが変形する。また、回動軸が衝撃を受けて軸受に対して瞬間的に大きく傾いたときに回動軸の傾きに追従してハウジングが傾くようにベローズが変形するため、磁性流体シール装置は衝撃を受けにくくなる。
【0015】
本発明において、産業用ロボットは、回動軸が連結される出力軸を有する減速機を備え、軸受は、減速機に内蔵され減速機の一部を構成するとともに出力軸を回動可能に支持し、軸受保持部材は、減速機のケース体であることが好ましい。このように構成すると、軸受が内蔵された市販の標準的な減速機をそのまま産業用ロボットに使用することが可能になる。したがって、産業用ロボットの組立工程を簡素化することが可能になるとともに、産業用ロボットのコストを低減することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、アームの基端側等が固定される回動軸の外周側に配置される磁性流体シール装置を備える産業用ロボットにおいて、回動軸を回動可能に支持する軸受に対して回動軸が傾いたとしても、磁性流体シール装置の機能を維持することが可能になる。また、本発明では、アームの基端側等が固定される回動軸の外周側に配置される磁性流体シール装置を備える産業用ロボットにおいて、回動軸が衝撃を受けて、回動軸を回動可能に支持する軸受に対して瞬間的に大きく傾いたとしても、磁性流体シール装置の損傷を防止することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(産業用ロボットの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
図2は、
図1のE部の内部構造を説明するための断面図である。
【0021】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ用のガラス基板(図示省略、以下、「基板」とする。)を搬送するためのロボットである。このロボット1は、比較的大型の基板の搬送に適したロボットである。ロボット1は、有機ELディスプレイの製造システムに組み込まれて使用される。
【0022】
この製造システムは、たとえば、中心に配置されるトランスファーチャンバーと、トランスファーチャンバーを囲むように配置される複数のプロセスチャンバーとを備えており、トランスファーチャンバーおよびプロセスチャンバーの内部は、真空になっている。トランスファーチャンバーの内部には、ロボット1の一部が配置されている。ロボット1を構成する後述のフォーク部11がプロセスチャンバー内に入り込むことで、ロボット1は、基板を搬送する。すなわち、ロボット1は、真空中で基板を搬送する。
【0023】
ロボット1は、基板が搭載されるハンド3と、ハンド3が先端側に回動可能に連結されるアーム4と、アーム4の基端側が回動可能に連結される本体部5とを備えている。また、ロボット1は、本体部5を昇降させる昇降機構(図示省略)を備えている。この昇降機構および本体部5は、略有底円筒状のケース体7の中に収容されている。ケース体7の上端には、円板状に形成されたフランジ8が固定されている。フランジ8の中心には、本体部5の上端側部分が配置される貫通孔が形成されている。
【0024】
ハンド3およびアーム4は、本体部5の上側に配置されている。また、ハンド3およびアーム4は、フランジ8の上側に配置されている。上述のように、ロボット1の一部は、トランスファーチャンバーの内部に配置されている。具体的には、ロボット1の、フランジ8の下端面よりも上側の部分がトランスファーチャンバーの内部に配置されている。すなわち、ロボット1の、フランジ8の下端面よりも上側の部分は、真空領域VRの中に配置されており、ハンド3およびアーム4は、真空中に配置されている。一方、ロボット1の、フランジ8の下端面よりも下側の部分は、大気領域ARの中(大気中)に配置されている。
【0025】
ハンド3は、アーム4に連結される基部10と、基板が搭載される4本のフォーク部11とを備えている。フォーク部11は、直線状に形成されている。4本のフォーク部11のうちの2本のフォーク部11は、互いに所定の間隔をあけた状態で平行に配置されている。この2本のフォーク部11は、基部10から水平方向の一方側へ突出するように基部10に固定されている。残りの2本のフォーク部11は、基部10から水平方向の一方側へ突出する2本のフォーク部11と反対側に向かって基部10から突出するように基部10に固定されている。
【0026】
アーム4は、第1アーム部13と第2アーム部14との2個のアーム部によって構成されている。第1アーム部13の基端側は、本体部5に連結されている。第1アーム部13の先端側には、第2アーム部14の基端側が回動可能に連結されている。すなわち、第1アーム部13と第2アーム部14とは互いに回動可能に連結されている。第2アーム部14の先端側には、ハンド3が回動可能に連結されている。
【0027】
(本体部の構成)
図3は、
図2のF部の拡大図である。
【0028】
本体部5は、アーム4の基端側(すなわち、第1アーム部13の基端側)が固定される回動軸15と、回動軸15を回転させるモータ(図示省略)と、このモータの回転を減速して第1アーム部13に伝達する減速機16と、本体部5の本体フレーム17とを備えている。また、本体部5は、回動軸15の外周側に配置される磁性流体シール装置18と、回動軸15の外周側を覆うように配置されるベローズ19とを備えている。さらに、本体部5は、磁性流体シール装置18を構成する後述のハウジング31と回動軸15との共回りを防止する回転止め部材20を備えている。
【0029】
本体フレーム17は、たとえば、上端が開口する底付きの筒状に形成されている。回動軸15は、略円筒状に形成されている。また、回動軸15は、磁性部材で形成されている。回動軸15の上端には、第1アーム部13の基端側の下面が固定されている。回動軸15の一部は、フランジ8に形成される貫通孔の中に配置されている。なお、本形態の回動軸15は、上下方向に分割される略円筒状の3個の軸部が互いに固定されることで形成されている。
【0030】
減速機16は、径方向の中心に貫通孔が形成された中空減速機である。この減速機16は、減速機16の貫通孔の軸中心と回動軸15の軸中心とが一致するように配置されている。本形態の減速機16は、偏心揺動型減速機(RV減速機)である。減速機16は、入力歯車21と、入力歯車21を回転可能に支持する軸受22と、回動軸15が連結される出力軸23と、出力軸23を回動可能に支持する軸受24と、これらの構成が収容されるケース体25とを備えている。減速機16の内周側には、円筒状に形成される筒部材26が配置されている。なお、減速機16は、RV減速機以外の減速機であっても良い。
【0031】
ケース体25は、本体フレーム17に固定されている。軸受22は、たとえば、玉軸受であり、軸受22の内輪は、入力歯車21に固定され、軸受22の外輪は、ケース体25に固定されている。軸受22は、上下方向において所定の間隔をあけた状態で2箇所に配置されている。入力歯車21には、プーリおよびベルトを介して、回動軸15を回転させるモータが連結されている。筒部材26は、入力歯車21の内周側に配置されている。筒部材26の下端部は、ケース体25に固定されている。
【0032】
出力軸23の上端には、回動軸15の下端が固定されている。この出力軸23には、入力歯車21に入力された動力が減速されて伝達される。軸受24は、たとえば、玉軸受であり、軸受24の外輪は、出力軸23に固定され、軸受24の内輪は、ケース体25に固定されている。軸受24は、上下方向において所定の間隔をあけた状態で2箇所に配置されている。上述のように、軸受24は、出力軸23を回動可能に支持し、出力軸23には、回動軸15が固定されている。すなわち、軸受24は、回動軸15を回動可能に支持している。この軸受24は、減速機16に内蔵されており、減速機16の一部を構成している。なお、本形態のケース体25は、軸受24を保持する軸受保持部材である。
【0033】
磁性流体シール装置18は、真空領域VRへの空気の流出を防ぐために設けられている。この磁性流体シール装置18は、回動軸15の下端側部分の外周側に配置されている。また、磁性流体シール装置18は、本体フレーム17の上端部の内周側に配置されている。また、磁性流体シール装置18は、減速機16よりも上側に配置されている。
【0034】
磁性流体シール装置18は、
図3に示すように、複数の磁石28と、環状に形成されるとともに内周面が回動軸15の外周面に対向する複数のポールピース29と、ポールピース29の内周面と回動軸15の外周面との間に保持される磁性流体30と、複数の磁石28およびポールピース29を保持するハウジング31と、ハウジング31に対する回動軸15の相対回動が可能となるように回動軸15の外周面とハウジング31との間に配置される第2の軸受としての軸受32とを備えている。なお、
図2では、磁石28、ポールピース29および磁性流体30の図示を省略している。
【0035】
磁石28は、永久磁石である。この磁石28は、たとえば、円環状に形成されており、回動軸15を囲むように配置されている。また、磁石28は、上面の磁極と下面の磁極とが異なる磁極となるように着磁されている。ポールピース29は、磁性鋼板等の磁性部材によって構成されている。このポールピース29は、複数の磁石28のそれぞれを上下方向(回動軸15の軸方向)で挟むように配置されている。また、ポールピース29は、たとえば、円環状に形成されており、回動軸15を囲むように配置されている。ポールピース29の内周面と回動軸15の外周面との間には一定の隙間が形成されている。磁石28の作用によって、磁石28とポールピース29と回動軸15とを通過する磁路が形成されており、ポールピース29の内周面と回動軸15の外周面との間の隙間には、上述のように、磁性流体30が保持されている。
【0036】
ハウジング31は、鍔部31aを有する鍔付きの略円筒状に形成されている。このハウジング31は、略円筒状に形成されるハウジング31の軸中心と回動軸15の軸中心とが一致するように配置されている。複数の磁石28およびポールピース29は、ハウジング31の上端側の内周面に固定されている。ハウジング31の上端には、磁石28およびポールピース29を上側から覆う円環状のカバー部31bが形成されている。軸受32は、磁石28およびポールピース29よりも下側に配置されている。この軸受32は、たとえば、玉軸受であり、軸受32の外輪は、ハウジング31の下端側の内周面に固定され、軸受32の内輪は、回動軸15の外周面に固定されている。
【0037】
ベローズ19は、真空領域VRへの空気の流出を防ぐために設けられている。このベローズ19は、伸縮可能な円筒状に形成されている。ベローズ19の一端(下端)は、ハウジング31の鍔部31aの上面に固定されている。すなわち、ハウジング31は、ベローズ19の一端に固定されている。また、ベローズ19の他端(上端)は、フランジ8に固定されている。上述のように、ケース体7の中には、本体部5を昇降させる昇降機構が収容されており、本体部5が昇降すると、ベローズ19が伸縮する。なお、鍔部31aの上面とベローズ19の下端面との間には、鍔部31aの上面とベローズ19の下端面との間からの空気の流出を防ぐためのOリング33が配置されている。
【0038】
上述のように、ハウジング31は、ベローズ19の下端に固定されており、磁性流体シール装置18は、ベローズ19にぶら下がった状態で、ベローズ19に保持されている。また、ハウジング31は、ベローズ19を介してフランジ8に連結されている。本形態では、アーム4に過剰な負荷が作用して軸受24に対して回動軸15がわずかに傾いたときに、回動軸15の傾きに追従してハウジング31が傾くようにベローズ19が変形する。すなわち、ベローズ19は、軸受24に対して回動軸15が傾いたときに、回動軸15の傾きに追従してハウジング31が傾くようにハウジング31を保持している。本形態のベローズ19は、磁性流体シール装置18を保持するシール保持部材である。
【0039】
回転止め部材20は、略L形状に形成されるバネ部材である。すなわち、回転止め部材20は、弾性体によって形成されている。具体的には、回転止め部材20は、2枚の板バネ35、36と、2枚の板バネ35、36を接続するブロック状の接続部材37とを備えている。板バネ35、36は、平板状に形成されている。板バネ35は、板バネ35の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置され、板バネ36は、板バネ36の厚さ方向と回動軸15の径方向とが一致するように配置されている。
【0040】
回動軸15の径方向における板バネ35の内側部分は、ハウジング31の鍔部31aに固定され、板バネ36の下端部分は、本体フレーム17の内周側に固定されている。回動軸15の径方向における板バネ35の外側部分と板バネ36の上端部分とは接続部材37に固定されている。すなわち、略L形状に形成される回転止め部材20の一端は、ハウジング31に連結され、回転止め部材20の他端は、本体フレーム17に連結されている。また、回転止め部材20の他端は、本体フレーム17を介してケース体25にも連結されている。
【0041】
回転止め部材20は、回動軸15の周方向へのハウジング31の動きを規制する。一方、回転止め部材20は、アーム4に過剰な負荷が作用して軸受24に対して回動軸15が傾くときに、回動軸15の傾きに追従するハウジング31の動きに支障がでないように、回動軸15の径方向および上下方向へ変形する。なお、回転止め部材20は、略L形状に形成される1枚の板バネであっても良い。また、回転止め部材20は、板バネ以外のバネ部材によって構成されていても良い。
【0042】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、磁性流体シール装置18のハウジング31の内周面と回動軸15の外周面との間に軸受32が配置されている。また、本形態では、ハウジング31がベローズ19の下端に固定されており、アーム4に過剰な負荷が作用して軸受24に対して回動軸15が傾いたときに、回動軸15の傾きに追従してハウジング31が傾くようにベローズ19が変形する。そのため、本形態では、軸受24に対して回動軸15が傾いても、ハウジング31に保持されるポールピース29の内周面と回動軸15の外周面との隙間の変動量を抑制することが可能になる。したがって、本形態では、軸受24に対して回動軸15が傾いたとしても、ポールピース29の内周面と回動軸15の外周面との間で磁性流体30を適切に保持することが可能になり、その結果、磁性流体シール装置18の機能を維持することが可能になる。
【0043】
また、本形態では、ハウジング31がベローズ19の下端に固定されており、軸受24に対して回動軸15が傾いたときに、回動軸15の傾きに追従してハウジング31が傾くようにベローズ19が変形するため、ロボット1の動作中にハンド3等がロボット1の周辺の構造物等に衝突して回動軸15が衝撃を受け、軸受24に対して回動軸15が瞬間的に大きく傾いても、磁性流体シール装置18は衝撃を受けにくい。したがって、本形態では、回動軸15が衝撃を受けて軸受24に対して瞬間的に大きく傾いたとしても、磁性流体シール装置18の損傷を防止することが可能になる。
【0044】
本形態では、本体部5は、ハウジング31と回動軸15との共回りを防止する回転止め部材20を備えており、回転止め部材20は、回動軸15の周方向へのハウジング31の動きを規制している。そのため、本形態では、ベローズ19のねじれを防止してベローズ19の疲労破壊を防止することが可能になる。また、本形態では、軸受24に対して回動軸15が傾くときに、回動軸15の傾きに追従するハウジング31の動きに支障がでないように、回動軸15の径方向および上下方向へ回転止め部材20が変形するため、回動軸15とハウジング31との共回りを防止しつつ、軸受24に対して回動軸15が傾いたときに回動軸15の傾きにハウジング31を追従させることが可能になる。
【0045】
本形態では、回動軸15を回動可能に支持する軸受24は、減速機16に内蔵されており、減速機16の一部を構成している。そのため、本形態では、市販の標準的な減速機16をそのままロボット1に使用することが可能になる。したがって、本形態では、ロボット1の組立工程を簡素化することが可能になるとともに、ロボット1のコストを低減することが可能になる。
【0046】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0047】
上述した形態において、ロボット1は、本体部5を昇降させる昇降機構を備えていなくても良い。この場合には、本体部5は、ベローズ19を備えていなくても良い。本体部5がベローズ19を備えていない場合には、たとえば、
図4に示すように、本体部5は、ハウジング31の鍔部31aの上面に接触するOリング40と、鍔部31aの下面に接触するOリング41と、鍔部31aの上面に対向配置されOリング40を押し潰す円環状のシール接触部42aと鍔部31aの下面に対向配置されOリング41を押し潰す円環状のシール接触部42bとを有するシール接触部材42とを備えていても良い。
【0048】
この場合には、シール接触部材42は、フランジ8に固定されている。また、磁性流体シール装置18は、2個のOリング40、41に保持されている。また、この場合には、アーム4に過剰な負荷が作用して軸受24に対して回動軸15が傾いたときに、回動軸15の傾きに追従してハウジング31が傾くようにOリング40、41が変形する。すなわち、Oリング40、41は、軸受24に対して回動軸15が傾いたときに回動軸15の傾きに追従してハウジング31が傾くようにハウジング31を保持している。この場合のOリング40、41は、磁性流体シール装置18を保持するシール保持部材である。
【0049】
この場合であっても、上述した形態と同様に、軸受24に対して回動軸15が傾いても、ハウジング31に保持されるポールピース29の内周面と回動軸15の外周面との隙間の変動量を抑制することが可能になるため、ポールピース29の内周面と回動軸15の外周面との間で磁性流体30を適切に保持することが可能になる。したがって、軸受24に対して回動軸15が傾いたとしても、磁性流体シール装置18の機能を維持することが可能になる。また、この場合であっても、上述した形態と同様に、ハンド3等がロボット1の周辺の構造物等に衝突して回動軸15が衝撃を受け、軸受24に対して回動軸15が瞬間的に大きく傾いても、磁性流体シール装置18は衝撃を受けにくいため、磁性流体シール装置18の損傷を防止することが可能になる。
【0050】
上述した形態では、本体部5は、減速機16を備えているが、本体部5は、減速機16に代えて、回動軸15の下端に固定されるプーリと、回動軸15を回転させるモータの出力軸に固定されるプーリと、これらのプーリに架け渡されるベルトとを備えていても良い。この場合には、回動軸15を回動可能に支持する軸受は、たとえば、本体フレーム17に保持されるとともに、回動軸15を直接、支持する。この場合の本体フレーム17は、回動軸15を回動可能に支持する軸受を保持する軸受保持部材である。また、上述した形態において、本体部5は、回転止め部材20を備えていなくても良い。この場合には、ベローズ19によって回動軸15とハウジング31との共回りが防止される。
【0051】
上述した形態において、アーム4の内部の圧力が大気圧となっている場合には、第1アーム部13と第2アーム部14との連結部は、アーム4と本体部5の連結部とほぼ同様に構成されても良い。この場合には、第1アーム部13と第2アーム部14との連結部は、
図5に示すように、第2アーム部14(具体的には、第2アーム部14の基端側)が上端に固定される回動軸15と、第2アーム部14に動力を伝達する減速機16と、第1アーム部13の先端側に固定されるとともに減速機16のケース体25が固定されるフレーム57とを備えている。
【0052】
また、この場合には、第1アーム部13と第2アーム部14との連結部は、回動軸15の外周側に配置される磁性流体シール装置18と、回動軸15の外周側を覆うように配置されるベローズ19とを備えている。ベローズ19の上端は、フレーム57に固定されている。上述した形態と同様に、ベローズ19の下端は、ハウジング31の鍔部31aの上面に固定されており、磁性流体シール装置18は、ベローズ19にぶら下がった状態で、ベローズ19に保持されている。
【0053】
図5において、
図2に示す構成と同様の構成については、同一の符号を付している。この場合であっても、第1アーム部13と第2アーム部14との連結部において、上述した形態と同様に、軸受24に対して回動軸15が傾いたとしても、ポールピース29の内周面と回動軸15の外周面との間で磁性流体30を適切に保持することが可能になり、その結果、磁性流体シール装置18の機能を維持することが可能になる。また、第1アーム部13と第2アーム部14との連結部において、回動軸15が衝撃を受けて軸受24に対して瞬間的に大きく傾いたとしても、磁性流体シール装置18の損傷を防止することが可能になる。
【0054】
なお、第1アーム部13と第2アーム部14との連結部では、フレーム57に対して回動軸15が昇降しないため、ベローズ19の長さは短くなっている。したがって、第1アーム部13と第2アーム部14との連結部では、ベローズ19はねじれにくい。そのため、第1アーム部13と第2アーム部14との連結部に、回転止め部材20が設けられていなくても良い。ただし、第1アーム部13と第2アーム部14との連結部に、回転止め部材20が設けられていても良い。
【0055】
また、アーム4の内部の圧力が大気圧となっている場合には、ハンド3とアーム4との連結部(すなわち、ハンド3と第2アーム部14との連結部)が、
図5に示す第1アーム部13と第2アーム部14との連結部と同様に構成されても良い。すなわち、ハンド3とアーム4との連結部は、ハンド3が上端に固定される回動軸15と、ハンド3に動力を伝達する減速機16と、第2アーム部14の先端側に固定されるとともに減速機16のケース体25が固定されるフレーム57と、回動軸15の外周側に配置される磁性流体シール装置18と、回動軸15の外周側を覆うように配置されるベローズ19とを備えていても良い。
【0056】
上述した形態では、アーム4は、1個の第1アーム部13と1個の第2アーム部14とによって構成されているが、上述の特許文献1の
図10に記載されているように、アーム4は、1個の第1アーム部と、第1アーム部に連結される2個の第2アーム部とによって構成されても良い。この場合には、第1アーム部の中心部が回動軸15の上端に固定される。また、上述の特許文献1の
図11に記載されているように、ロボット1は、本体部5に基端側が回動可能に連結される2本のアームを備えていても良い。また、アーム4は、3個以上のアーム部によって構成されていても良い。
【0057】
上述した形態では、ロボット1によって搬送される搬送対象物は有機ELディスプレイ用の基板であるが、ロボット1によって搬送される搬送対象物は、液晶ディスプレイ用のガラス基板であっても良いし、半導体ウエハ等であっても良い。また、上述した形態では、ロボット1は、搬送対象物を搬送するためのロボットであるが、ロボット1は、他の用途で使用されるロボットであっても良い。