特許第6918787号(P6918787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918787
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】消臭方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/22 20060101AFI20210729BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20210729BHJP
【FI】
   A61L9/22
   A23L5/20
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-514124(P2018-514124)
(86)(22)【出願日】2017年2月3日
(86)【国際出願番号】JP2017004094
(87)【国際公開番号】WO2017187702
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2019年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2016-91836(P2016-91836)
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】西川 和男
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3159569(JP,U)
【文献】 特開2011−064364(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102884378(CN,A)
【文献】 特開2015−043753(JP,A)
【文献】 特開2002−085544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
A23L 5/00
F25D
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品に含まれる臭い成分のうち炭素の二重結合および不飽和結合を有する物質と硫化物とを分解するように、前記食品に与える正イオンおよび負イオンを発生させるイオン発生装置と、正イオンおよび負イオンを吹き出す送風装置と、正イオンおよび負イオンを吹き出す気流の向きを、上方向または下方向と、左方向または右方向との少なくともいずれか一方で変えるルーバーとを備え、外気に晒された状態で食品売り場に設置された陳列台と別体に設けられている消臭装置を、前記陳列台に配置し、当該陳列台に陳列されている前記食品に前記イオン発生装置によって発生した正イオンおよび負イオンを前記ルーバーの向きを調整することにより照射する正負イオン照射工程を含んでいることを特徴とする消臭方法。
【請求項2】
スチレン系の材料で形成された容器に接した食品に含まれる臭い成分のうちスチレンを分解するように、前記食品に与える正イオンおよび負イオンを発生させるイオン発生装置と、正イオンおよび負イオンを吹き出す送風装置と、正イオンおよび負イオンを吹き出す気流の向きを、上方向または下方向と、左方向または右方向との少なくともいずれか一方で変えるルーバーとを備え、外気に晒された状態で食品売り場に設置された陳列台と別体に設けられている消臭装置を、前記陳列台に配置し、当該陳列台に前記容器に載置された状態で陳列されている前記食品に前記イオン発生装置によって発生した正イオンおよび負イオンを前記ルーバーの向きを調整することにより照射する正負イオン照射工程を含んでいることを特徴とする消臭方法。
【請求項3】
前記正イオンはH(HO)(nは自然数)を主体とするイオンであり、
前記負イオンはO(HO)(mは自然数)を主体とするイオンであることを特徴とする請求項1または2に記載の消臭方法。
【請求項4】
分解すべき臭い成分を含む消臭対象物に当たるように空気の流れを発生させる前記送風装置による送風工程を含み、
前記正負イオン照射工程と前記送風工程とは同時に行われ、
前記正負イオン照射工程において、前記消臭対象物に対して前記空気の流れの風上側で、正イオンおよび負イオンを発生させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の消臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や食品用の容器が有する特有の臭いをイオンにより低減する消臭方法および消臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラズマ放電により空気中の酸素および水蒸気を電離して発生させたイオンが消臭効果を有することを利用して、室内の消臭および脱臭を行うことが開示されている。
【0003】
このようなイオンを発生するイオン発生装置は、すでに実用化されており、空気中に正イオンであるH+(H)n(nは自然数)および負イオンであるO(HO)(mは自然数)を発生する。この正イオンおよび負イオンは、水素イオン(H)または酸素イオン(O)の周囲に複数の水分子が付随した、いわゆる、クラスターイオンの形態をなしている。空気中に放出された正イオンと負イオンとが化学反応すると、活性物質としての過酸化水素水Hまたは水酸基ラジカル・OHとなる。これらの活性物質が浮遊粒子または浮遊細菌から水素を抜き取る酸化反応を行うことにより、浮遊粒子を不活性化できること、または浮遊細菌を殺菌できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特許公報「特許第5230150号(2013年7月10日発行)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スーパーマーケット、デパート等の食品売り場では、生魚、調理済み食品(惣菜、揚げ物等)、パンといった食品が陳列されている。特に、客が所望の数量だけ購入できるようにした食品は、パッケージに封止されることなく、オープンスペースにおいて陳列されることがある。このような食品は、外気に晒されるために劣化が早いことから、通常、所定の時間が経過すると、売り場から撤収される。また、このような食品は、特有の食品臭を発するために蠅等の虫を誘引しやすいので、食品臭を低減することが望まれていた。
【0006】
また、食品を載置するトレーのような容器は、通常、発泡スチロールが用いられることが多く、スチレン系の特有の臭いを発する。この臭いが食品に移ると、食品の風味が損なわれることがある。また、上記のような容器そのものの臭いも特有であり、人によっては不快に感じることもある。
【0007】
特許文献1には、イオンが室内の消臭および脱臭に効果があることが開示されている。しかしながら、特許文献1には、食品、食品に接する容器、あるいは容器そのものの臭いを低減することについては明らかにされていない。
【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、食品の臭い、食品に移った容器の臭い、あるいは食品用の容器の臭いを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る消臭方法は、食品に含まれる臭い成分のうち炭素の二重結合および不飽和結合を有する物質と硫化物とを分解するように、前記食品に与える正イオンおよび負イオンを発生させるイオン発生装置と、正イオンおよび負イオンを吹き出す送風装置と、正イオンおよび負イオンを吹き出す気流の向きを、上方向または下方向と、左方向または右方向との少なくともいずれか一方で変えるルーバーとを備え、外気に晒された状態で食品売り場に設置された陳列台と別体に設けられている消臭装置を、前記陳列台に配置し、当該陳列台に陳列されている前記食品に前記イオン発生装置によって発生した正イオンおよび負イオンを前記ルーバーの向きを調整することにより照射する正負イオン照射工程を含んでいる。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係る消臭方法は、スチレン系の材料で形成された容器に接した食品に含まれる臭い成分のうちスチレンを分解するように、前記食品に与える正イオンおよび負イオンを発生させるイオン発生装置と、正イオンおよび負イオンを吹き出す送風装置と、正イオンおよび負イオンを吹き出す気流の向きを、上方向または下方向と、左方向または右方向との少なくともいずれか一方で変えるルーバーとを備え、外気に晒された状態で食品売り場に設置された陳列台と別体に設けられている消臭装置を、前記陳列台に配置し、当該陳列台に前記容器に載置された状態で陳列されている前記食品に前記イオン発生装置によって発生した正イオンおよび負イオンを前記ルーバーの向きを調整することにより照射する正負イオン照射工程を含んでいる。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る消臭装置は、食品に含まれる臭い成分のうち炭素の二重結合および不飽和結合を有する物質と硫化物とを分解するように、前記食品に与える正イオンおよび負イオンを発生させるイオン発生装置を備えている。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係る消臭装置は、容器または当該容器に接した食品に含まれる臭い成分のうちスチレンを分解するように、前記容器または前記食品に与える正イオンおよび負イオンを発生させるイオン発生装置を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、食品の臭い、食品に移った容器の臭い、あるいは食品用の容器の臭いを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態1〜4に係る消臭装置のシステム構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1および2に係る消臭装置の外観構成を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態1に係る消臭装置の使用状態を示す斜視図である。
図4】実施形態1に係る消臭装置の他の使用状態を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態2に係る消臭装置の冷蔵庫における使用状態を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態3に係る消臭装置の物品保管室における使用状態を示す斜視図である。
図7】(a)は実施形態1〜3に係る消臭装置の消臭効果を検証するための実施形態4に係る試験に用いる消臭装置の側面図であり、(b)は当該消臭装置の斜視図である。
図8】(a)〜(d)は上記試験に用いる濃縮ガスの作製の手順を示す斜視図である。
図9】(a)〜(d)はイオンを作用させる被検体およびイオンを作用させない試験のそれぞれについての上記試験の手順を示す斜視図である。
図10】(a)〜(d)は焼き鳥の臭い成分となる化合物にイオンを作用させる被検体およびイオンを作用させない被検体のそれぞれについての各化合物の検出結果を示すロクマトグラムである。
図11】(a)〜(d)は生魚の臭い成分となる化合物にイオンを作用させる被検体およびイオンを作用させない被検体のそれぞれについての各化合物の検出結果を示すロクマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔消臭装置〕
本発明の実施形態1〜4に共通して使用する消臭装置10(10A〜10C)のシステム構成について、図1に基づいて説明する。また、実施形態1および2に共通して使用する消臭装置10(10A)の外観構成について、図2に基づいて説明する。図1は、消臭装置10のシステム構成を示すブロック図である。図2は、消臭装置10の外観構成を示す斜視図である。
【0016】
図1に示すように、消臭装置10は、正イオンおよび負イオンを発生するイオン発生装置1と、正イオンおよび負イオンを外部に送り出す送風装置2と、イオン発生装置1および送風装置2を制御する制御部3とを備えている。また、図2に示すように、消臭装置10は、筐体4を備えており、筐体4の内部に、イオン発生装置1、送風装置2および制御部3が収納されている。筐体4は、吹出口41と、第1ルーバー42と、第2ルーバー43と、操作部44と、吸気口45とを有している。
【0017】
吹出口41は、イオン発生装置1が発生した正イオンおよび負イオンを、送風装置2で生じた排気流(風)とともに筐体4の外部に排出する(吹き出す)ために設けられた開口である。吹き出し口41は、筐体4の前面に水平方向に長い形状で形成されている。
【0018】
第1ルーバー42は、吹出口41からの排気流を上方向または下方向に向けるルーバーである。第1ルーバー42は、吹出口41の長手方向のほぼ全体にわたる長さを有している板状の部材であり、吹出口41を横切るように配置されている。また、第1ルーバー42は、筐体4に対して回動自在となるように支持されており、手動によって向きが変えられる。
【0019】
第2ルーバー43は、吹出口41からの排気流を右方向または左方向に向けるルーバーであり、複数設けられている。第2ルーバー43は、吹出口41の長手方向に所定の間隔をおいて配置されるとともに、回動自在となるように筐体4に上下で支持されており、手動によって向きが変えられる。また、左側の3つの第2ルーバー43は連動するように互いに結合されており、右側の3つの第2ルーバー43は連動するように互いに結合されている。これにより、左側の3つの第2ルーバー43と、右側の3つの第2ルーバー43とは、個別に回動して異なる向きにすることができる。
【0020】
操作部44は、ユーザが操作するための各種の操作ボタン、動作状態を表示する表示ランプ等を有する部分である。操作部44は、筐体4の前面における右側に配置されている。
【0021】
吸気口45は、筐体4の内部へ外気を取り入れるために設けられた開口である。吸気口45は、筐体4の上面に形成された多数のスリット状の穴によって構成されている。
【0022】
イオン発生装置1は、高電圧パルスを発生する高電圧発生回路11と、正イオン発生部12と、負イオン発生部13とを有する。正イオン発生部12は、図示しない誘電電極および放電電極を含み、高電圧発生回路11が発生した正電圧パルスの印加により、正イオンを発生する。負イオン発生部13は、図示しない誘電電極および放電電極を含み、高電圧発生回路11が発生した負電圧パルスの印加により、負イオンを発生する。
【0023】
上述のイオン発生装置1の構成は、あくまでも一例であり、所望の濃度の正イオンおよび負イオンを発生可能な装置であれば、特に上記の構成に限定されない。
【0024】
正イオン発生部12が発生する正イオンは、H(HO)(mは任意の自然数)を主体とするイオンである。負イオン発生部13が発生する負イオンは、O(HO)(nは任意の自然数)を主体とするイオンである。
【0025】
正イオンおよび負イオンが空気中に同時に存在すると、下記の式(1)〜式(3)に示すように化学反応して、活性酸素種である水酸基ラジカル(・OH)が効率的に生成されると考えられる。ここで、式(1)〜式(3)におけるm、n、m’およびn’は、それぞれ任意の自然数である。
【0026】
(HO)+O(HO)
→・OH+1/2O+(m+n)HO …(1)
(HO)+H(HO)m’+O(HO)+O(HO)n’
→2・OH+O+(m+m’+n+n’)HO …(2)
(HO)+O(HO)
→3・OH+(m+n−1)HO …(3)
なお、正イオンのみまたは負イオンのみを空気中に放出した場合には、水酸基ラジカルは顕著には生成されない。したがって、正イオンおよび負イオンを同時に放出することで、水分子とクラスターとを形成し、安定化した正イオンと負イオンとが相互反応し、水酸基ラジカルの生成が顕著になると考えられる。
【0027】
送風装置2は、筐体4の吸気口43から取り込まれた空気を吹出口41から吹き出す空気の流れ(風路)を生成する装置であり、ファンによって構成されている。正イオン発生部12および負イオン発生部13は、上記の風路に向けてそれぞれ正イオンおよび負イオンを発生する。
【0028】
制御部3は、操作部44によって受け付けられたユーザの操作(指示)に応じて、イオン発生装置1および送風装置2の動作を制御する。制御部3は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現されてもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現されてもよい。
【0029】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について、図1図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0030】
本実施形態では、消臭装置10が焼き鳥の消臭に利用される例(消臭方法)について説明する。図3は、実施形態1に係る消臭装置10の使用状態を示す斜視図である。
【0031】
図3に示すように、消臭装置10は陳列ケース100上に配置されている。陳列ケース100は、スーパーマーケット、デパート等の店舗の食品売り場に設置される食品陳列用のケースである。この陳列ケース100は、最も高い位置に設けられた平坦部101と、平坦部101より低い位置にある複数段の載置台102とを有している。
【0032】
載置台102には、複数のトレーT1が載置されており、各トレーT1上には、消臭対象食品(消臭対象物)としての焼き鳥F1が外気に晒された状態で並べられている。トレーT1は、発泡スチロールのようなスチレン系の材料で形成されている。消臭装置10は、平坦部101上に、吹出口41を載置台102側に向けるように配置されている。
【0033】
上記のような陳列環境において、消臭装置10は、焼き鳥F1に対して空気の流れの風上側で、イオン発生装置1に正イオンおよび負イオンを発生させる(正負イオン照射工程)。また、消臭装置10は、送風装置2により、焼き鳥F1に当たるように空気の流れを発生させることにより(送風工程)、イオン発生装置1で発生した正イオンおよび負イオンを含む空気を吹出口41から載置台102上の焼き鳥F1に吹きかける(照射する)。正イオンおよび負イオンの発生と、送風とは同時に行われる。また、図2に示す第1ルーバー42および第2ルーバー43の向きを適宜調整することにより、陳列された焼き鳥F1の全てに消臭装置10から吹き出された空気が触れるようにする。これにより、焼き鳥F1が発する臭いの成分のうちの、炭素の二重結合および不飽和結合を有する物質(実施形態4参照)と硫化物とが分解されるとともに、トレーT1が発する主な臭い成分であるスチレンとが分解される。
【0034】
続いて、消臭装置10が生魚の消臭に利用される例(消臭方法)について説明する。図4は、実施形態1に係る消臭装置10の他の使用状態を示す斜視図である。
【0035】
図4に示すように、消臭装置10は冷蔵ケース200上に配置されている。冷蔵ケース200は、スーパーマーケット、デパート等の店舗の食品売り場に設置される食品陳列用のケースである。冷蔵ケース200は、平坦な陳列面201と、陳列面201の周囲を囲う壁部202と、陳列面201の下側に設けられた本体部203とを有している。壁部202は、本体部203の内部で発生した冷気を陳列面201に向けて放射する多数の冷気放射口(図示せず)を有している。
【0036】
陳列面201には、トレーT2が載置されており、トレーT2上には、消臭対象食品としての生魚F2が外気に晒された状態で並べられている。トレーT2は、発泡スチロールのようなスチレン系の材料で形成されている。消臭装置10は、陳列面201上に、吹出口41をトレーT2側に向けるように配置されている。
【0037】
上記のような陳列環境において、消臭装置10は、生魚F2に対して空気の流れの風上側で、イオン発生装置1に正イオンおよび負イオンを発生させる(正負イオン照射工程)。また、消臭装置10は、送風装置2により、生魚F2に当たるように空気の流れを発生させることにより(送風工程)、イオン発生装置1で発生した正イオンおよび負イオンを含む空気を吹出口41から陳列面201上の生魚F2に吹きかける(照射する)。正イオンおよび負イオンの発生と、送風とは同時に行われる。また、図2に示す第1ルーバー42および第2ルーバー43の向きを適宜調整することにより、陳列された生魚F2の全てに消臭装置10から吹き出された空気が触れるようにする。これにより、生魚F2が発する臭いの成分のうちの、炭素の二重結合および不飽和結合を有する物質(実施形態4参照)と硫化物とが分解されるとともに、トレーT2が発する主な臭い成分であるスチレンとが分解される。
【0038】
このように、本実施形態における、消臭装置10を用いた消臭方法では、焼き鳥F1および生魚F2に正イオンおよび負イオンを含む空気を吹きかける。これにより、焼き鳥F1および生魚F2は、正イオンおよび負イオンの作用によって上記のような臭い成分が低減される。それゆえ、焼き鳥F1および生魚F2が発する臭いによって蠅などを誘引することがなくなる。したがって、消臭対象食品の衛生状態を良好に維持することができる。
【0039】
また、スチレンも分解されるので、トレーT1,T2からそれぞれ焼き鳥F1および生魚F2に付着したスチレン臭も低減される。したがって、焼き鳥F1および生魚F2の風味がスチレン臭によって損なわれることを回避できる。
【0040】
なお、正イオンおよび負イオンを与える消臭対象食品について、本実施形態では焼き鳥F1および生魚F2を例示したが、焼き鳥F1および生魚F2には限定されない。例えば、当該消臭対象食品としては、焼き物、揚げ物、惣菜類、パン、漬け物などが挙げられる。
【0041】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、図1図2および図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0042】
図5は、実施形態2に係る消臭装置10の冷蔵庫300における使用状態を示す斜視図である。
【0043】
図5に示すように、冷蔵庫300は、冷蔵室301内に消臭庫302を有している。消臭庫302は、箱状の容器であり、前面が開閉自在となるように設けられている。また、消臭庫302内には消臭装置10Aが配置されている。
【0044】
消臭装置10Aは、図1および図2に示すように、実施形態1の消臭装置10と同等の機能を有している。また、消臭装置10Aは、狭い冷蔵室301に設けられた消臭庫302の限られたスペースを占有しないように小型に構成されるとともに、消臭庫302の奥側に配置されている。また、消臭庫302の内部が密閉状態を形成できれば、消臭庫302内に十分な量の正イオンおよび負イオンを充満させることができる。このような環境で使用される消臭装置10Aは、広い範囲に正イオンおよび負イオンを拡散させる実施形態1の消臭装置10と比べて、イオン発生能力が低くてもよく、小型化が可能である。
【0045】
上記のように構成される冷蔵室301において消臭対象食品F3を消臭するには、消臭庫302内に消臭対象食品F3を配置し、消臭庫302内を密閉状態にしておく。この状態で、消臭装置10Aは、イオン発生装置1で発生した正イオンおよび負イオンを含む空気を吹出口41から放出する。これにより、正イオンおよび負イオンが消臭対象食品F3に直接照射されるだけでなく、消臭庫302内には、正イオンおよび負イオンが充満する。それゆえ、消臭対象食品F3に十分に正イオンおよび負イオンを作用させることができる。この結果、消臭対象食品F3の臭い成分が低減される。
【0046】
消臭対象食品F3は、生肉、生魚(切り身や刺身を含む)、ソーセージ、ハム、半調理食品、惣菜類等であり、発泡スチロールのようなスチレン系の材料で形成されたトレーに乗せられてラップで封止された状態で店舗に陳列された食品である。ユーザは、このような消臭対象食品F3を自宅等に持ち帰り、包装を解いた状態の消臭対象食品F3を消臭庫302内に入れて消臭を行う。これにより、消臭対象食品F3が店舗でしばらく陳列された状態で特有の食品臭を発していても、食品臭の基となる臭い成分を低減することができる。また、消臭対象食品F3に付着したトレーの臭い成分(スチレン)も併せて低減することができる。したがって、調理前に上記のようにして消臭対象食品F3の消臭を行うことで、トレー臭によって料理の風味が損なわれることを回避できる。
【0047】
なお、本実施形態では、消臭庫302を冷蔵庫300内に設ける例について説明した。これに限らず、消臭庫302と同様に構成される消臭庫を単体で設け、当該消臭庫を用いて消臭対象食品F3の消臭を行ってもよい。
【0048】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、図1および図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、実施形態1および2にて説明した構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0049】
図6は、実施形態3に係る消臭装置10Bの物品保管室400における使用状態を示す斜視図である。
【0050】
図6に示すように、物品保管室400の天井には、消臭装置10Bが取り付けられ、物品保管室400の床の上には保管棚410が設置されている。
【0051】
消臭装置10Bは、図1に示すように、実施形態1の消臭装置10と同等の機能を有している。なお、操作部44については、消臭装置10Bの本体に設けられておらず、リモコン操作機(図示せず)による遠隔操作ができるように構成されている。また、消臭装置10Bは、筐体5を有しており、筐体5の下部には、イオン発生装置1で発生した正イオンおよび負イオンを含む空気を下方に向けて吹き出す吹出口51が設けられている。吹出口51は、図示はしないが円環状に形成されている。また、吹出口51には、図示しないルーバーが設けられており、当該ルーバーの角度の調整によって、物品保管室400の広い範囲にわたって正イオンおよび負イオンを含む空気を拡散させることができる。
【0052】
保管棚410は、上下に間隔をおいて複数段(図示する構成では2段)の棚部411が設けられている。棚部411は、消臭装置10Bから吹き出される正イオンおよび負イオンを下段の棚部411に行き渡らせるように、上下方向に開放された部分を有するように構成されることが好ましい。棚部411は、具体的には、メッシュ状に形成された構造、複数のパイプが平行に配置された構造などのように構成されることが好ましい。
【0053】
保管棚410の棚部411上には、複数のトレー群TGが載置されている。各トレー群TGは、複数のトレーT3が積み重ねられて構成されている。トレーT3は、発泡スチロールのようなスチレン系の材料で形成されている。
【0054】
上記のような保管環境において、消臭装置10Bは、イオン発生装置1で発生した正イオンおよび負イオンを含む空気を吹出口51から下方に吹き出す。これにより、正イオンおよび負イオンが、保管棚410に載置されたトレー群TGに直接吹き付けられる。また、物品保管室400が密閉状態であれば、消臭装置10Bから放出された正イオンおよび負イオンは、物品保管室400内に充満することでトレー群TGに満遍なく触れる。この結果、トレー群TGの各トレーT3が発する臭いの成分、すなわちスチレンが分解される。よって、物品保管室400内におけるトレーT3の臭いが低減されるので、物品保管室400内に便宜上で衣類などの他の物品を保管しても、その物品にトレーT3の臭いが移ることを回避できる。
【0055】
なお、本実施形態では、消臭装置10Bおよび保管棚410を物品保管室400に設置する例について説明した。しかしながら、消臭装置10Bおよび保管棚410を設置する場所は物品保管室400に限定されない。例えば、消臭装置10Bおよび保管棚410をトラックのコンテナ内に設置してもよい。コンテナには各種の物品が収納されるので、トレーT3をコンテナ内に収納して運搬しているときに、消臭装置10Bを作動させる。このようにしてコンテナ内におけるトレーT3の臭いを低減することにより、コンテナ内に収納される他の物品にトレーT3の臭いが移ることを回避できる。
【0056】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4について、図1図7図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、実施形態1および2にて説明した構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0057】
本実施形態では、実施形態1〜3で説明した上記の臭い成分が分解されることを検証するための試験について説明する。
【0058】
図7の(a)は、実施形態1〜3に係る消臭装置の消臭効果を検証するための実施形態4に係る試験に用いる消臭装置10Cの側面図であり、図7の(b)は、当該消臭装置10Cの斜視図である。図8の(a)〜(d)は、上記試験に用いる濃縮ガスの作製の手順を示す斜視図である。図9の(a)〜(d)は、イオンを作用させる被検体TO1およびイオンを作用させない被検体TO2のそれぞれについての試験の手順を示す斜視図である。
【0059】
本試験では、図7の(a)および(b)に示す消臭装置10Cとして、シャープ株式会社製のイオン発生装置(A209AK)を用いた。
【0060】
消臭装置10Cは、基板(図示せず)を収納する筺体6と、放電により正イオンを発生する針状電極61と、放電により負イオンを発生する針状電極62と、筺体6の外部で針状電極61および62を保護する電極保護部63とを備えている。針状電極61および62は、先端部が筺体6の外部に突出するように基板に保持されている。消臭装置10Cは、図1に示す消臭装置10における送風装置2、制御部3および操作部44を備えておらず、イオン発生装置1のみで構成されている。
【0061】
図1に示す正イオン発生部12が針状電極61に相当し、負イオン発生部13が針状電極62に相当する。また、図1に示す高電圧発生回路11は、上記の基板上に実装されている。針状電極61は、高電圧発生回路11から正の高電圧パルスが印加されることにより、先端でコロナ放電を発生して、正イオンを発生する。針状電極62は、高電圧発生回路11から負の高電圧パルスが印加されることにより、先端でコロナ放電を発生して、負イオンを発生する。
【0062】
試験に先立って、濃縮ガスを作製する。濃縮ガスの作製において、加熱脱着装置(MARKES社製 UNITY SERIES 2)と、内部捕集装置(TENAX)とを用い、捕集温度−15℃でガスの捕集を行い、かつ脱離温度250℃で捕集したガスの離脱を行った。
【0063】
図8の(a)に示すように、気体収集用のバッグB1(100L)に試験食品Fを配置し、ボンベエアをバッグB1のいっぱいまで充填した後、30分間静置した。次に、図8の(b)に示すように、バッグB1内のガスを気体採取用の2本のガス捕集管G1にそれぞれ70L吸引して、試験食品Fから発生する揮発性有機化合物を捕集した。そして、図8の(c)に示すように、これらのガス捕集管G1を250℃に加熱しながらボンベエアをそれぞれ7L程度通気し、捕集した揮発性有機化合物を別のバッグB2(20L)に追い出した。これにより、図8の(d)に示すように、約10倍の濃度を有する濃縮ガスを作製した。また、試験食品Fとして焼き鳥(たれ付き,5本)および生魚(真イワシ,8尾)を用いて試験を行った。
【0064】
続いて、上記のように作製した濃縮ガスを用いた試験について説明する。図9の(a)に示すように、試験には、濃縮ガスに対してイオンを作用させる「イオンあり」の被検体TO1(Test Object 1)と、濃縮ガスに対してイオンを作用させない「イオンなし」の被検体TO2(Test Object 2)とを用意した。被検体TO1および被検体TO2のそれぞれは、気体採取用のバッグB3(10L)に消臭装置10Cを封入した状態で、バッグB3内の空気を抜いた後、バッグB3内に濃縮ガスを充填したものである。試験は、被検体TO1および被検体TO2に対して同時に実施した。
【0065】
試験に先立って、図9の(b)に示すように、初期濃度確認用として、消臭装置10Cの電源を投入する前に、捕集装置D(上述の内部捕集装置)を用いて、被検体TO1および被検体TO2のバッグB3内のガスをガス捕集管G2に1Lまたは2L吸引した。
【0066】
図9の(c)に示すように、被検体TO1の消臭装置10Cの電源を投入し、被検体TO2の消臭装置10Cの電源を投入しない状態で、所定時間静置した。その後、図9の(d)に示すように、被検体TO1および被検体TO2のそれぞれのバッグB3内のガスをガス捕集管G3に1Lまたは2L吸引した。図9の(c)に示す静置状態の持続時間は、焼き鳥については4時間であり、 生魚については4時間および8時間である。被検体TO1および被検体TO2のそれぞれにおいてバッグB3内のガスをガス捕集管G3に捕集し、ガスクロマトグラフ質量分析法による定性分析を行った。
【0067】
ここで、定性分析で用いたガスクロマトグラフ質量分析計および分析条件は下記のとおりである。
【0068】
(ガスクロマトグラフ質量分析計)
機種名:Agilent Technologies社製 model 7890N/5975MSD
分離カラム:HP−1 60m×0.25mmφ 膜厚1μm
(分析条件)
カラム温度条件:40℃(5分保持)→5℃/min→100℃→10℃/min→290℃(1.5分保持)
キャリヤーガス:ヘリウム 1.2mL/min
データ取得方法:SCANモード
(測定結果)
測定結果について、以下に説明する。図10の(a)〜(d)は、焼き鳥の臭い成分となる化合物にイオンを作用させる被検体TO1およびイオンを作用させない被検体TO2のそれぞれについての各化合物の検出結果を示すロクマトグラムである。図11の(a)〜(d)は、生魚の臭い成分となる化合物にイオンを作用させる被検体TO1およびイオンを作用させない被検体TO2のそれぞれについての各化合物の検出結果を示すロクマトグラムである。
【0069】
(1)焼き鳥:1回目の測定結果
焼き鳥の1回目の試験において、被検体TO1について、表1の分析結果および図10の(a)〜(c)の下側に示すように、1−ペンテン−3−オール、ジメチルジスルフィドおよび1−オクテン−3オールの3つの化合物の大幅な低減が認められた。これに対し、被検体TO2について、表1の分析結果および図10の(a)〜(c)の上側に示すように、1−ペンテン−3−オール、ジメチルジスルフィドおよび1−オクテン−3オールの3つの化合物の低減はいくらか認められるものの、被検体TO1の低減の程度に比べて小さいものであった。
【0070】
また、被検体TO1について、表2の分析結果および図10の(d)の下側に示すように、スチレンの大幅な低減が認められた。これに対し、被検体TO2について、図10の(d)の上側に示すように、スチレンの低減はわずかしか認められなかった。スチレンの被検体TO2に対する被検体TO1の低減率は8割以上であった。
【0071】
なお、表1において、「TO1 0時間後」における「ピーク面積の割合」は、当該ピーク面積の値を100%とした際の割合を意味している。また、表2において、「半定量値」はスチレンの標準物質を用いた算出した値である。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
(2)焼き鳥:2回目の測定結果
焼き鳥の2回目の試験においては、1回目の試験で低減効果が認められた化合物についての標準品を用いて半定量値の算出を行った。
【0075】
表3に示すように、2回目の試験においても、1回目の試験と同様の化合物について低減が認められ、再現性が確認された。また、ジメチルトリスルフィドおよびリモネンについても低減が認められたため、これらの化合物についても標準物質を用いた半定量値の算出を行った。
【0076】
なお、表3において、「半定量値」は各化合物の標準物質を用いた算出した値である。
【0077】
【表3】
【0078】
(3)生魚:1回目の測定結果
生魚の1回目の試験において、被検体TO1について、4時間静置後および8時間静置後における表4の分析結果に示すように、1−ペンテン−3−オール、スチレンおよび1−オクテン−3オールの3つの化合物の大幅な低減が認められた。これに対し、被検体TO2について、表4の分析結果に示すように、上記の3つの化合物の低減はほとんど認められなかった。また、被検体TO1について、表5の分析結果に示すように、9つの化合物について低減が認められた。図11の(a)〜(d)は、それぞれ、これらの化合物のうち、8時間静置後における、チオ酢酸S−メチル、2−エチルフラン、2−ペンテン−1−オールおよび1−オクテン−3−オールについての被検体TO1(下段)および被検体TO2(上段)の測定結果を示している。
【0079】
【表4】
【0080】
【表5】
【0081】
(4)生魚:2回目の測定結果
生魚の2回目の試験においては、生魚の1回目の試験において低減が認められた表5に示す化合物のうち丸印を付した化合物について標準物質を用いた半定量値を算出した。
【0082】
表6に示すように、2回目の試験においても、被検体TO1については、1回目の試験と同様の化合物について大幅な低減が認められ、再現性が確認された。これに対し、被検体TO2については、これらの化合物が、ほとんど低減していない、あるいはわずかしか低減していないことが確認された。
【0083】
【表6】
【0084】
(試験の総括)
上記の試験において、焼き鳥および生魚が発生したいくつかの被検体TO1の成分について、所定時間の静置後に濃度が大幅に低下しており 、低減の効果が認められた 。低減が認められた化合物は、その構造に不飽和結合を有する化合物と、硫化物とを含んでいた。これらの化合物は、いずれも特有の臭い有すると考えられる。特に、1−ペンテン−3−オールは生臭さの原因物質として知られており、今回の試験に使用 した生魚から高濃度で検出されたことから、魚特有の臭いに寄与していると考えられる。これらの成分の低減により、被検体TO1では、臭いの低減または臭質の変化が予測された。上記成分の低減が認められた化合物の臭質例を表7に示す。
【0085】
【表7】
【0086】
なお、腐敗臭等の臭い成分は、焼き鳥の場合の静置維持時間である4時間と、生魚の場合の静置維持時間である4時間および8時間では分解されることが確認された。これに対し、風味成分(アルコール系およびアルデヒド系)については、上記の静置維持時間では分解されないことが確認された。このような風味成分としては、酢酸エチル(パイナップルに似た芳香を有する)、イソバレルアルデヒド(果物および酒の香り成分)、アセトイン(バターに風味を与える物質の一つ)、n−バレルアルデヒド(果物および酒の香り成分)、乳酸エチル(ナッツ様、乳製品様、果実様の香り)等が挙げられる。これらの風味成分は、いずれも炭素と酸素との二重結合を含むものの、炭素の二重結合を含まない。
【0087】
なお、表6および表7に示すアクロレインは、アルデヒド基を有するが、炭素の二重結合を有する不飽和アルデヒドであり、風味成分とはいえない。
【0088】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る消臭方法は、食品(焼き鳥F1、生魚F2、消臭対象食品F3)に含まれる臭い成分のうち、炭素の二重結合および不飽和結合を有する物質と硫化物とを分解するように、前記食品に正イオンおよび負イオンを照射する正負イオン照射工程を含んでいる。
【0089】
上記の方法によれば、照射された正イオンおよび負イオンからラジカルが生じる。この正イオンおよび負イオンと、ラジカルとの作用により、特に蠅等の虫を誘引しやすい、炭素の二重結合および不飽和結合を有する物質と硫化物とが分解されると推測される。それゆえ、食品臭の拡散を防止することにより、食品に虫が誘引されることを回避して、食品の衛生状態を良好に維持することができる。
【0090】
本発明の態様2に係る消臭方法は、容器(トレーT1〜T3)または当該容器に接した食品(焼き鳥F1、生魚F2、消臭対象食品F3)に含まれる臭い成分のうちスチレンを分解するように、前記容器または前記食品に正イオンおよび負イオンを照射する正負イオン照射工程を含んでいる。
【0091】
上記の方法によれば、照射された正イオンおよび負イオンからラジカルが生じる。この正イオンおよび負イオンと、ラジカルとの作用により、スチレンが分解されると推測される。それゆえ、食品の風味を損ねたり、人に不快感を与えたりしやすいスチレン臭を容器や食品から除くことができる。
【0092】
本発明の態様3に係る消臭方法は、上記態様1または2において、前記正イオンはH(HO)(nは自然数)を主体とするイオンであり、前記負イオンはO(HO)(mは自然数)を主体とするイオンであってもよい。
【0093】
上記の方法によれば、H(HO)とO(HO)とから活性酸素種である水酸基ラジカルが生じる。
【0094】
本発明の態様4に係る消臭方法は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記食品は、外気に晒された状態で食品売り場に陳列されていてもよい。
【0095】
上記の構成によれば、食品が外気に晒された状態で陳列されている食品売り場に虫が誘引されることを回避できる。それゆえ、食品売り場の衛生状態を良好に維持することができる。
【0096】
本発明の態様5に係る消臭方法は、上記態様1から4のいずれかにおいて、分解すべき臭い成分を含む消臭対象物(焼き鳥F1、生魚F2、消臭対象食品F3、トレーT1〜T3)に当たるように空気の流れを発生させる送風工程を含み、前記正負イオン照射工程と前記送風工程とは同時に行われ、前記正負イオン照射工程において、前記消臭対象物に対して前記空気の流れの風上側で、正イオンおよび負イオンを発生させてもよい。
【0097】
上記の方法によれば、風上側で発生した正イオンおよび負イオンが風下側に流されるので、より均一に拡散される。それゆえ、正イオンおよび負イオンを消臭対象物に対して拡散させることにより、複数の消臭対象物に均一に正イオンおよび負イオンを照射することができる。
【0098】
本発明の態様6に係る消臭装置は、食品(焼き鳥F1、生魚F2、消臭対象食品F3)に含まれる臭い成分のうち炭素の二重結合および不飽和結合を有する物質と硫化物とを分解するように、前記食品に与える正イオンおよび負イオンを発生させるイオン発生装置1を備えている。
【0099】
上記の構成によれば、上記態様1に係る消臭方法と同様、食品に虫が誘引されることを回避して、食品の衛生状態を良好に維持することができる。
【0100】
本発明の態様7に係る消臭装置は、容器(トレーT1〜T3)または当該容器に接した食品(焼き鳥F1、生魚F2、消臭対象食品F3)に含まれる臭い成分のうちスチレンを分解するように、前記容器または前記食品に与える正イオンおよび負イオンを発生させるイオン発生装置1を備えている。
【0101】
上記の構成によれば、上記態様2に係る消臭方法と同様、食品の風味を損ねたり、人に不快感を与えたりしやすいスチレン臭を容器や食品から除くことができる。
【0102】
本発明の態様8に係る消臭方法は、上記態様6または7において、前記正イオンはH(HO)(nは自然数)を主体とするイオンであり、前記負イオンはO(HO)(mは自然数)を主体とするイオンであってもよい。
【0103】
上記の構成によれば、H(HO)とO(HO)とから活性酸素種である水酸基ラジカルが生じる。
【0104】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 イオン発生装置
2 送風装置
10,10A〜10C 消臭装置
F1 焼き鳥(食品,消臭対象物)
F2 生魚(食品,消臭対象物)
F3 消臭対象食品(食品,消臭対象物)
T1〜T3 トレー(容器,消臭対象物)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11