【課題を解決するための手段】
【0011】
アンテナに関しては、この課題は本発明に従い、請求項1の特徴によって解決される。方法に関しては、この課題は本発明に従い、請求項7の特徴によって解決され、機器に関しては、この課題は本発明に従い、請求項8の特徴によって解決される。有利な実施形態と発展形態は従属請求項の対象である。
【0012】
アンテナは、誘導式情報伝達および/またはエネルギ伝達の際に使用するために適していて、特に設けられおよび/または形成されている。その際、アンテナは例えば補聴器、特に聴取補助器の構成部品である。アンテナはフィルム状で、好ましくはまとまりのあるアンテナ本体を有し、このアンテナ本体はコイルコア部分と、この中央コイルコア部分の両側に配置されたアンテナ部分とを有する。その際、中央コイルコア部分は第1コイル(主コイル)を支持している。外側アンテナ部分は好ましくは平らである。さらに、外側アンテナ部分はそれぞれ、中央コイルコア部分に接しかつ第2コイル(副コイル)を支持する端側コイルコア部分を有する。第1コイルと第2コイルは例えば異なる巻線数を有する。
【0013】
外側アンテナ部分は中央コイルコア部分に対して曲げられている。従って、第1コイルと両第2コイルは異なる空間方向に向いている。換言すると、第1コイルと両第2コイルのコイル軸線は折り曲げられている。中央コイルコア部分と各外側アンテナ部分の間の角度は例えば80〜130°、特に85〜110°である。しかし、端側コイルコア部分がU字形を形成しつつ、中央コイルコア部分に対して垂直に向いているときわめて有利である。それによって、外側アンテナ部分はそれぞれU字形のU字脚部分を形成し、中央コイルコア部分はU字形のU字連結部分を形成している。その際、U字連結部分は縦方向に延在し、U字脚部分は横方向に延在している。フィルム状の両外側アンテナ部分は、互いに離隔された平行な平面内を延在している。
【0014】
この場合、情報伝達とは特に、信号の伝達またはデータの伝達であると理解される。このデータは例えば調節データあるいは聴取補助器によって検知された音響または信号技術的に加工された音響信号に関する情報を含むデータである。エネルギ伝達の際に受け取ったエネルギは好ましくは、エネルギ貯蔵器、特にバッテリの充電のために供される。
【0015】
この場合、フィルム状の物体とは、この物体の一方向の寸法が、この一方向に対して垂直に向いた平面内の物体の寸法と比較して小さい物体であると理解される。換言すると、アンテナ本体は平たい。この場合、平面状に形成された側はそれぞれ幅広面と呼ばれる。
【0016】
両外側アンテナ部分または中央コイルコア部分に向いた中央コイルコア部分の幅広面と両外側アンテナ部分の幅広面は、以下においてそれぞれの部分の内面とも呼び、他方の幅広面は外面と呼ぶ。アンテナ本体によって少なくとも部分的に取り囲まれた範囲は内側範囲を形成している。
【0017】
さらに、中央コイルコア部分に対する外側アンテナ部分の折り曲げ(折り)に基づいておよびアンテナ本体のフィルム状形成、すなわち平面状の形成に基づいて、アンテナ本体の必要スペースが小さくなるので、比較的にコンパクトなアンテナが提供される。従って、このアンテナはわずかな構造スペースしか与えられない装置、特に聴取補助器内にも配置することができる。
【0018】
アンテナ本体は好ましくは強磁性体および/またはフェリ磁性体、特に軟磁性フェライトによって形成され、10
6S/mよりも小さな導電率、好ましくは100S/mよりも小さな導電率と、μ
r>5、好ましくはμ
r>200の透磁性を有する。アンテナ本体は例えばフィルムであるかまたはフィルムによって形成されている。フィルムの厚さ、すなわち幅広面に対して垂直な寸法は例えば25〜700μm、特に70〜300μm、好ましくは100〜250μmである。アンテナ本体は好ましくは撓曲可能であるかまたは折り曲げ可能である。従って、アンテナ本体は平らな形から出発して、両外側アンテナ部分を折り曲げることによって折り曲げ形成可能である。
【0019】
第1コイルと各第2コイルが互いに独立して切換え可能(活性化可能)である、すなわち同じ電流方向の電流を供給可能であると有利である。そのために、第1コイルと第2コイルが1つの電流源または電圧源に接続されていると合目的である。すなわち、第1コイル、個々の第2コイルまたはこれらのコイルの組合せがその都度予定された電流方向に切換え可能である。例えば第1作動方法では、第1コイルと両第2コイルが同時期に切換えられる。この場合、コイルによって発生する磁場が構造的に重なるように、すなわち第1コイルによって発生した磁場のN極が一方の第2コイルによって発生した磁場のS極に隣接して配置され、第1コイルによって発生した磁場のS極が他方の第2コイルによって発生した磁場のN極に隣接して配置されるように、電流方向が選択される。従って、電流はコイルを同じ方向に流れる。コイルをこのように切換える場合およびアンテナ本体がU字形の場合、アンテナは比較的に大きな端面を有するフェライトロッドのように作用する。この場合、発生した磁気的なダイポールモーメントは外側アンテナ部分に対してほぼ垂直に向いている。
【0020】
例えば第2作動方法では、両第2コイルの一方だけが切換えられる。アンテナ本体がU字形の場合、発生した磁気的なダイポールモーメントは外側アンテナ部分に対して垂直ではなく、外側アンテナ部分の垂線に対して角度をなして傾斜している。
【0021】
要約すると、送信空間方向またはアンテナによって発生する磁気的なダイポールモーメントの方向は、アンテナに対して一定(固定)ではなく、コイルの切換えに応じて空間的に異なるように向けられる。換言すると、アンテナの放射特性はコイルの切換えに応じて調節可能でありかつ調節される。換言すると、アンテナによって発生する磁場は回転させられる。従って、第2コイルの一方、第2コイルの両方および/または第1コイルの活性化、特に通電により、アンテナと受信器の間でできるだけ強い誘導結合が達成されるように、磁気的なダイポールモーメントの方向が調節される。受信器が例えばコイルであると、アンテナによって発生した磁気的なダイポールモーメントがコイル軸線に対してできるだけ平行に延びるようにまたは受信器の受信面に対してできるだけ垂直に延びるように、第1コイルと第2コイルが通電される。
【0022】
その際、アンテナのために必要な構造スペースが比較的に小さいので有利である。さらに、アンテナは比較的に簡単に、それによって低コストで製造可能である。
【0023】
情報伝達および/またはエネルギ伝達のために、アンテナはそれによって発生したダイポールモーメントに基づいて受信器に(磁気的に)誘導結合されている。この受信器は特に第2アンテナまたはコイルである。受信器は特に、例えば遠隔操作部または特に体に身につける中継ステーションのような付属品である。
【0024】
送信空間方向に対して受信器を回転させると、磁気的な誘導結合の強さが変化する。特に磁気的な誘導結合が比較的に弱いときに、コイルの切換え(制御)を変更することによって、換言するとコイルの電流強さおよび/または電流方向を変更することによって、送信空間方向の配向を変えることが本発明に係るアンテナによって可能になるので有利である。その際、送信空間方向は好ましくは受信器の変更された空間方向に対応して適合させられる。例えば、受信器がコイルとして形成されている場合、磁気的なダイポールモーメントは受信器のコイル軸線に対して平行に向けられる。磁気的なダイポールモーメントが受信器に対応して完全に調節できない場合にも、例えば受信器がアンテナに対して比較的に大きく回転しているとき、特にアンテナに対して90°回転しているときに、磁気的なダイポールモーメントの空間的な配向の変更に基づいて、磁気的なダイポールモーメントの大部分を磁気的な結合に役立てることができる。要約すると、磁気的なダイポールモーメントの空間的な配向の変更によって、十分な情報伝達が実現されるように、磁気的な誘導結合を調節することができかつ調節される。
【0025】
例えば、受信器を備えた装置、特に付属品あるいはアンテナを有する機器、特に聴取補助器は、評価ユニット(信号処理ユニット)を備えている。この評価ユニットは例えばチャネル推定アルゴリズムのような適切なアルゴリズムによってあるいはいわゆるBER評価(ビット誤り率評価)によって、誘導結合の強さを決定するので、場合によっては決定の結果に依存してコイルの切換えまたは制御がアンテナと受信器の間の十分な伝達品質のために変更される。
【0026】
有利な発展形態では、両外側アンテナ部分の各々が特に欠円状のフランジ部分を備えている。このフランジ部分は、端側コイルコア部分の自由端側に、すなわち中央コイルコア部分の反対側および/または中央コイルコア部分から離れた端側コイルコア部分の端面に接している。換言すると、外側アンテナ部分はその端側コイルコア部分の自由端側から出発して、特に欠円状に拡張している。この場合、端側コイルコア部分とフランジ部分は共通の1つの平面内に延在している。換言すると、欠円状の拡張部の場合、外側アンテナ部分はマッシュルームの形をしている。その代わりに、拡張部は長方形、T字状、円状またはリング状でもよい。フランジ範囲によって、有効アンテナ面積が拡大または増大させられるので有利である。
【0027】
きわめて有利な発展形態では、アンテナが好ましくは一体のフィルム状シールドを備えている。このシールドはそれぞれ、中央コイルコア部分の方に向いた、両外側アンテナ部分の側におよび外側アンテナ部分の方に向いた、中央コイルコア部分の側に配置されている。換言すると、シールドは外側アンテナ部分と中央コイルコア部分のそれぞれの内面に配置されている。
【0028】
発展形態では、シールドはアンテナ本体よりも大きいかまたは同じであり、アンテナ本体を覆っている。換言すると、シールドは、外側アンテナ部分または中央コイルコア部分に対して平行な平面内において、外側アンテナ部分または中央コイルコア部分の寸法よりも大きいかまたは等しい寸法を有する。
【0029】
シールドは好ましくは10
6S/mよりも大きな導電率を有する。シールドはさらに、μ
r<1000、特にμ
r<100、好ましくはμ
r<2の(磁気的な)透過性を有する。シールドは反磁性体(0≦μ
r≦1)または常磁性体(μ
r>1)、特に銅によって形成されているかまたは反磁性体または常磁性体を含んでいる。シールドの厚さは、アンテナによって発生する磁場によるシールドの浸透が回避されるように選定されている。例えば、シールドはその材料の磁場の侵入深さの0.25〜1.5倍の厚さを有する。
【0030】
アンテナ本体の透過性は好ましくはシールドの透過性よりも大きく、シールドの材料の導電性がアンテナ本体の導電性よりも大きいと合目的である。磁場は特に、レンツの法則に従ってシールドの表面に誘導された電流と逆磁場とに基づいて、シールドに侵入しないで、シールドから外に押しのけられる。磁場はアンテナ本体内に押し込まれ、それによって実質的にアンテナ本体内で広がる。すなわち、シールドに基づいて、内側範囲への磁場の広がりが回避される。これに基づいて、アンテナ本体の効果的な透過性とアンテナの感度が高められるので有利である。
【0031】
アンテナの感度と品質は、シールドと相対的なアンテナ本体の形成、特に寸法の形成によって、作動に従って発生する要求に適合可能である。例えばシールドよりも小さな外側アンテナ部分は、アンテナの改善された品質を生じ、感度は少しだけしか低下しないので有利である。特に、磁力線が内側範囲から離れるように案内されるかまたは内側範囲内への磁力線の侵入が回避される。シールドに対して縮小した外側アンテナ部分とは、シールド上への外側アンテナ部分の投影が、シールドによって完全に覆われていることであると理解される。
【0032】
コイルの適切な切換えまたは操作制御によって実現可能である、アンテナによって発生する磁気的なダイポールモーメントの空間的な配向は、アンテナの形成、特に中央コイルコア部分と各外側アンテナ部分の間の角度、フランジ部分の形状およびシールドの形状に左右される。作動中、アンテナと受信器の間で、典型的な回転または比較的に頻繁に発生する回転が予定または予想される場合には、アンテナは好ましくはそれを支持する装置、例えば聴取補助器内に次のように配置されている。すなわち、このような回転が、アンテナの形成、ひいては実現可能な空間的な配向を考慮して、磁気的なダイポールモーメントの適切な変更によって、できるだけ相殺可能であるか相殺され、誘導結合ができるだけ強いかまたは維持されるように配置されている。例えば人の頭の回転は一般的に頻繁におよび/または頭の傾斜よりも大きな角度で発生する。このような回転時に、聴取補助器のアンテナと付属品の受信器の間のできるだけ良好な(強い)誘導結合が磁気的なダイポールモーメントの空間的な配向を適切に適合させることによってこの回転にとって可能であるように、アンテナが聴取補助器内に配置されていると有利である。
【0033】
例えば第1コイルおよび/または第2コイルは巻回機械によって、折り曲げ可能なフィルムによって形成されたまだ折り曲げられていないアンテナ本体の周りに巻かれ、コイルは例えばボンドによって電気的な端子に連結される。続いて例えば、銅フィルムとして形成されたシールドがアンテナ本体上に配置され、アンテナ本体と銅フィルムが折り曲げられる。アンテナ本体は代替的に、既に曲げられた剛性のあるフェリコアによって形成されている。その際、第1コイルは巻回機械によって取付けられる。第2コイルは予備巻回され、続いて端側コイルコア部分に嵌め込まれる。外側アンテナ部分がフランジ部分を備えている場合には、このフランジ部分を経て端側コイルコア部分に第2コイルを嵌め込むことができるように、フランジ部分が形成されている。
【0034】
適切な発展形態に従って、代替的におよび有利に、アンテナ本体がプリント配線板に組み込まれている。シールドはアンテナの製作の途中で、内側範囲の方向に向くように設けられたプリント配線板の側に接着される。
【0035】
他の代替実施形態では、シールドとアンテナ本体が好ましくは撓曲可能なプリント配線板に組み込まれている。場合によっては、アンテナ本体の両側の幅広面に、第1巻線層と第2巻線層が配置されている。換言すると、アンテナ本体、第1巻線層および第2巻線層は上下に積層されている。アンテナ本体と巻線層は特にプリント配線板の層を形成している。例えばプリント配線板の製作の途中で、この層が基板上にまたは層の一つに接着またははり合わせられる。
【0036】
プリント配線板はそれぞれ、第1コイルの巻線と第2コイルの巻線を形成する或る数のプリント配線を備えている。プリント配線は縦方向または横方向に対してほぼ垂直に延在している。両巻線層のプリント配線はコイルを形成しつつスルーホール(ビア)によって互いに電気的に(電着で)連結されている。このスルーホールはアンテナ本体の幅広面に対して垂直に延在している。プリント配線は例えばプリント配線板の製作の途中でエッチングによってまたはリソグラフィ法によって巻線層に形成される。
【0037】
シールドがプリント配線板の銅層によって形成され、そして内側範囲の方に向いたアンテナ本体の側と、アンテナ本体とは反対側の第1巻線層の幅広面に配置されていると合目的である。製作の途中で、アンテナ本体および/または巻線層が例えばはり合わせによってまたは代替的にコーティングによって被覆形成される。例えばアンテナ本体および/または巻線層は層の1つにまたは支持構造体上に被着される。
【0038】
例えば巻線層は中央コイルコア部分と端側コイルコア部分の範囲にのみ形成されている。代替的に、巻線層はアンテナ本体を完全に、すなわちアンテナ本体の全範囲にわたって覆っている。
【0039】
プリント配線板の幅広面に対して垂直な寸法(厚さ)は例えば75〜850μm、特に120〜450μm、好ましくは150〜400μmである。その際、プリント配線板に組み込まれたアンテナ本体の厚さは例えば25〜700μm、特に70〜300μm、好ましくは100〜250μmである。
【0040】
外側アンテナ部分上に配置されたシールドの内面の特に中央に、ゼロ磁場の範囲が形成されていると有利である。ここに、アンテナを有する機器の電気的または電子的な機器構成要素が接続可能であると有利である。例えば、電子的な機器構成要素は充電チップの形をした充電電子機器、無線システムチップおよび/またはエネルギ貯蔵器のための端子である。その際、電子的な機器構成要素は好ましくは、内側範囲の方に向いた、プリント配線板の部分のプリント配線板側(プリント配線板面)の中央に配置されている。このプリント配線板の部分には外側アンテナ部分が組み込まれている。それによって、電子的な機器構成要素は実質的にゼロ磁場に配置され、磁場によって妨害されないかまたは少ししか妨害されない。このような電子的な機器構成要素は作動時のアンテナのSN比を妨害しないかまたは比較的に少ししか妨害しない。すなわち、アンテナと電子的な機器構成要素は比較的に小さな誘導妨害を有する。電子的な機器構成要素はさらに、例えばリフローはんだ付けによって、プリント配線板に簡単かつ低コストで取付け可能である。
【0041】
有利な実施形態では、アンテナが第3巻線層と第4巻線層を備えている。この第3巻線層と第4巻線層はアンテナ本体とは反対側の第1巻線層の幅広面にまたはアンテナ本体とは反対側の第2巻線層の幅広面に配置されている。その際、第3巻線層が第1巻線層とシールドの間に配置されていると合目的である。第1巻線層および第2巻線層と同様に、第3巻線層と第4巻線層はプリント配線を備えている。第3巻線層のプリント配線によっておよび第4巻線層のプリント配線によって、第3コイルが形成されている。この第3コイルは第1コイルに対してまたは第2コイルに対して同心的に配置されている。換言すると、第3コイルは他の第1コイルまたは他の第2コイルである。同様に例えば、第1コイルまたは両第2コイルに対して同心的に配置された第3コイルが3つ形成されている。その際、コイルは好ましくは互いに独立して切換えまたは操作制御可能である。これにより、コイルの切換え(通電、操作制御)時に、アンテナの送信空間方向が正確に調節可能であるかまたは調節される。代替的に、第3コイルは1つの巻線を形成しつつ、第1コイルまたは第2コイルに電着される。
【0042】
代替的にまたは追加して、1個または複数の他の第1コイルが中央コイルコア部分によって支持されている。この場合、他の第1コイルは縦方向またはコイル縦方向に並べて配置されている。代替的にまたは追加して、1個または複数の他の第2コイルが一方または両方の端側コイルコア部分によって支持されている。この場合、他の第2コイルは横方向またはコイル縦方向に並べて配置されている。この場合、コイルが同様に互いに独立して切換え可能であるので、コイルの切換え時にアンテナの送信空間方向が正確に調節可能であるかまたは調節される。
【0043】
製作の途中でのコイルの(電気的な)接触が比較的に簡単であるので有利である。従って、特に接触のための付加的な作業ステップが不要であり、プリント配線板の形成(レイアウト)状態で一緒に考慮される。それに基づいてさらに、コイルの接触がはんだパッドを必要としないので、必要スペースが狭くなるので有利である。
【0044】
同様に、プリント配線板は例えば、第1コイルおよび第3コイルに対してまたは第2コイルおよび第3コイルに対して同心的に配置された他のコイルを形成するための他の巻線層を備えている。
【0045】
撓曲可能なプリント配線板の場合、このプリント配線板、ひいてはそれに組み込まれたアンテナ本体を、組立てまたは製作の途中で曲げる(折り曲げる)ことができる。さらに、シールドとアンテナ本体が特に可撓性のプリント配線板に組み込まれている場合には、アンテナが比較的に安定するように形成され、それによって比較的に少ないコストで機器内に組立てることができるので有利である。
【0046】
シールドとアンテナ本体を組み込む代わりに、シールドだけをプリント配線板に組み込むことができる。その際、プリント配線板が内側範囲の方に向いたアンテナ本体とコイルの側に配置されていると合目的である。
【0047】
有利な実施形態では、機器が上述のいろいろなアンテナの一つを備えている。アンテナは特に、無線誘導式情報伝達および/またはエネルギ伝達のために役立つ。アンテナは、フィルム状アンテナ本体の中央コイルコア部分の周りに巻かれた第1コイルと、この第1コイルに対して特に90°の角度をなして、それぞれフィルム状アンテナ本体の端側コイルコア部分の周りに巻かれた第2コイルとを備えている。
【0048】
機器は例えば血圧測定器、血糖測定器または脈拍数測定器のようなセンサ(センサ装置)あるいは身につけられるコンピュータシステム(ウェアラブルコンピュータ、ウェアラブルズ)あるいは身につけられるセンサシステムまたはアクチュエータシステム(ボティエリアネットワーク)である。機器は特に、ヘッドホンまたはヘッドセットのような補聴器であり、好ましくは機器は聴取補助器である。聴取補助器は例えばカナル内レシーバ型聴取補助器(RIC聴取補助器)、耳内型聴取補助器(ITE聴取補助器)、カナル内型聴取補助器(ITC)、完全カナル内型聴取補助器(CIC)または耳介の後部に装着される耳後部型聴取補助器(BTE聴取補助器)である。聴取補助器は(両耳型)聴取補助器システムの一部であってもよい。この場合、人の各耳に、このような聴取補助器が付設される。
【0049】
例えば遠隔操作部または人によって携行可能な中継ステーションのような付属品を、機器、特に聴取補助器に付設することができる。この中継ステーションは誘導式情報伝達および/またはエネルギ伝達のために機器に少なくとも一時的に誘導結合される。付属品は例えば上述のいろいろなアンテナの1つを備えている。
【0050】
外側アンテナ部分は例えば機器の他の範囲にわたって、例えば機器全体にわたって延在している。それによって、アンテナはフィルム状形成に基づいて、省スペース的におよび低コストで拡大される。従って、アンテナの帯域または品質および感度を、作動要求に適合させることができる。
【0051】
有利な発展形態では、アンテナは機器構成要素を少なくとも部分的に取り巻いている。従って、機器構成要素はアンテナの内側範囲に配置されている。アンテナを機器構成要素上に直接配置することにより、省スペース的な実施形態が形成される。その結果、アンテナの感度が同じである場合、特に補聴器として形成された機器を小さく形成することができるかあるいは付加的な構成要素を機器内に挿入することができる。
【0052】
外側アンテナ部分、特にそのフランジ部分は例えば機器構成要素の形に合わせられている。従って、フランジ部分は例えば平らではなく、曲がっている。フランジ部分は代替的に、機器構成要素の接触のための切欠きを有していてもよい。
【0053】
機器構成要素は特に、バッテリのようなエネルギ貯蔵器、特に補聴器のエネルギ供給のために役立つリチウムイオン蓄電池である。その際、アンテナが誘導式エネルギ伝達の働きをするので、機器の所定の作動モードではアンテナによって機器のエネルギ貯蔵器の無線(ケーブルレス)充電が可能である。
【0054】
特に機器構成要素がエネルギ貯蔵器として形成されている場合には、機器構成要素はほぼ平行で互いに離隔された端面(端側の面)と、外周範囲を有する。この外周範囲は機器構成要素の端面に対して垂直な周方向の側面によって形成されている。適切な発展形態では、外側アンテナ部分はそれぞれ機器構成要素の端面上に配置され、中央コイルコア部分は機器構成要素の側面を覆っている。その際、外側アンテナ部分はそれぞれの端側端面を少なくとも部分的に、好ましくは少なくとも端面の半分を覆っている。さらに、シールドが機器構成要素の端面を完全に覆っている。
【0055】
その際、機器構成要素の端面が平らではなく、例えば湾曲していると、代替的な実施形態に従って、外側アンテナ部分が端縁に対応して形成され、例えば湾曲している。従って、アンテナは機器構成要素上にきわめて省スペース的に配置されている。
【0056】
シールドに基づいて、機器構成要素寄りの外側アンテナ要素の側から機器構成要素の方への磁力線の伝播が回避される。その際、渦電流損失が作動に起因する交換磁場によって場合によってはおよび少しだけしかシールド内に生じない。その結果、渦電流損失と、この渦電流損失によって引き起こされる機器構成要素の加熱が回避されるのできわめて有利である。それによって、補聴器構成要素の損傷が防止され、寿命が長くなる。機器構成要素が比較的に高い導電性を有する材料、例えば銅によって形成されているかまたはこの材料によって取り囲まれている場合には、アンテナによって発生する磁場が、機器構成要素の表面内の、レンツの法則に従って誘導される電流に基づいておよびそれに伴う逆磁場に基づいて、この表面から外に押しのけられるので、アンテナ本体と機器構成要素の間にシールドを設ける必要はない。
【0057】
さらに例えば、機器構成要素はスリーブ状の外周遮蔽体によって少なくとも部分的に取り囲まれている。換言すると、外周遮蔽体の縦方向の寸法は最大で、機器構成要素の外周範囲の寸法に等しい。その際、外周遮蔽体は特に、外側アンテナ部分の間の中央に配置され、その際必ずしも(電気的に)閉じていなくてもよい。外周遮蔽体は好ましくはシールドの一部であるがしかし、必ずしもこのシールドに(電着)連結されていなくてもよい。外周遮蔽体に基づいて、機器構成要素内への磁力線の侵入が回避されるので、外周遮蔽体内では渦電流損失が場合によってはおよび少ししか引き起こされない。
【0058】
次に、図に基づいて本発明の実施の形態を詳しく説明する。