特許第6918863号(P6918863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6918863アンテナおよびこのアンテナを有する機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918863
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】アンテナおよびこのアンテナを有する機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20210729BHJP
   H01Q 1/44 20060101ALI20210729BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20210729BHJP
   H01Q 7/06 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   H04R25/00 N
   H01Q1/44
   H01Q1/38
   H01Q7/06
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-106989(P2019-106989)
(22)【出願日】2019年6月7日
(65)【公開番号】特開2019-213201(P2019-213201A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年7月12日
(31)【優先権主張番号】10 2018 209 189.7
(32)【優先日】2018年6月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508115093
【氏名又は名称】シバントス ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ニクレス
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ジュデクム
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−159664(JP,A)
【文献】 特開2009−296107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
H01Q 1/38
H01Q 1/44
H01Q 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状のアンテナ本体(24)を備え、このアンテナ本体が第1コイル(28)を支持する中央コイルコア部分(26)と、この中央コイルコア部分(26)の両側に配置された外側アンテナ部分(30)とを有する、誘導式情報伝達および/またはエネルギ伝達のためのアンテナ(18)、特に聴取補助器のアンテナにおいて、
前記外側アンテナ部分(30)がそれぞれ、前記中央コイルコア部分(26)に接しかつ第2コイル(34)を支持する端側コイルコア部分(32)を有し、前記外側アンテナ部分(30)が前記中央コイルコア部分(26)に対して曲げられていることを特徴とするアンテナ(18)。
【請求項2】
前記外側アンテナ部分(30)の各々が特に欠円状のフランジ部分(36)を有し、このフランジ部分が前記中央コイルコア部分(26)とは反対側の前記端側コイルコア部分(32)の端面に接していることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ(18)。
【請求項3】
フィルム状のシールド(44)を備え、このシールドがそれぞれ、前記中央コイルコア部分(26)寄りの前記両外側アンテナ部分(30)の側におよび前記外側アンテナ部分(30)寄りの前記中央コイルコア部分(26)の側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ(18)。
【請求項4】
前記シールド(44)が前記アンテナ本体(24)よりも大きいかまたは同じ大きさであり、かつこのアンテナ本体を覆っていることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ(18)。
【請求項5】
前記アンテナ本体(24)が、特に撓曲可能なプリント配線板(50)に組み込まれ、
前記アンテナ本体(24)の両側の幅広面に、第1巻線層(52)と第2巻線層(54)が配置され、
この第1巻線層(52)と第2巻線層(54)がそれぞれプリント配線(56)を有し、このプリント配線によって前記第1コイル(28)の巻線と前記第2コイル(34)の巻線が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のアンテナ(18)。
【請求項6】
前記アンテナ本体(24)とは反対側の前記第1巻線層(52)の幅広面または前記アンテナ本体(24)とは反対側の前記第2巻線層(54)の幅広面に配置された第3巻線層(66)と第4巻線層(68)を備え、この第3巻線層(66)のプリント配線(56)によっておよび前記第4巻線層(68)のプリント配線(56)によって第3コイル(64)が形成され、この第3コイルが前記第1コイル(28)に対してまたは前記第2コイル(34)の一つに対して同心的に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ(18)。
【請求項7】
作動時に発生する磁気的なダイポールモーメント(m)の三次元的な配向が、前記アンテナ(18)と相対的な受信器(23)の配向に相応して、前記第2コイル(34)の一方、前記第2コイル(34)の両方および/または前記第1コイル(28)の活性化、特に通電によって調節される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のアンテナ(18)を作動させるための方法。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載のアンテナ(18)を備えた機器(2)、特に補聴器、好ましくは聴取補助器。
【請求項9】
機器構成要素(38)、特にエネルギ貯蔵器を備え、前記アンテナ(18)が前記機器構成要素(38)を少なくとも部分的に取り巻いていることを特徴とする請求項8に記載の機器(2)。
【請求項10】
前記外側アンテナ部分(30)が前記機器構成要素(38)の両側の端面(40)に配置され、
前記中央コイルコア部分(26)が前記機器構成要素(38)の外周範囲(42)に被さっていることを特徴とする請求項9に記載の機器(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状のアンテナ本体を備え、このアンテナ本体がコイルを支持するコイルコア部分を有する、誘導式情報伝達および/またはエネルギ伝達のためのアンテナに関する。本発明はさらに、このアンテナを備えた機器、特に補聴器に関する。補聴器は好ましくは聴取補助器である。
【背景技術】
【0002】
聴力の低下に悩む人は例えば補聴器としての聴取補助器を使用する。その際、周囲の音響または音響信号は、音響または音響信号を電気的な信号(音声信号)に変換する電気機械的な音響変換器を介して検知される。この電気的な信号は増幅回路によって処理され、他の電気機械的な変換器によって、増幅された音響信号に変換される。この音響信号は人に耳道内に案内される。
【0003】
聴取補助器のいろいろな実施形態が知られている。いわゆる「耳後部型機器」は頭と耳介の間に装着される。この場合、増幅された音響信号が音響チューブによって人の耳道内に案内される。聴取補助器の他の実施形態は「耳内型機器」である。この耳内型機器の場合、聴取補助器自体は耳道内に挿入される。その結果、耳道が少なくとも部分的に閉鎖されるので、聴取補助器によって発生した音響信号を除いて、耳道内に他の音響が侵入できないかまたは大きく減衰された音響だけしか耳道内に侵入できない。
【0004】
人が両耳の聴力の低下によって苦しむ場合、このような2個の聴取補助器を備えた聴取補助器システムが使用される。この場合、各耳に、それぞれ1つの聴取補助器が付設される。人が三次元的な聴取を可能にするためにあるいはこの聴取を改善するためには、一方の聴取補助器によって検知された音声信号を他方の聴取補助器に提供することが必要である。その際、両聴取補助器の間の情報伝達はアンテナを用いて無線で行われる。人の頭に基づく伝達情報の減衰は周波数が高まるにつれて増大する。これに基づいて特に、例えば1kHzと300MHzの間の周波数による誘導式情報伝達が用いられる。
【0005】
特許文献1には、無線通信のための、特に聴取補助器のアンテナが開示されている。このアンテナは縦方向に沿って延在し多数の巻線を支持するコイルコアと、コイルコアの端面に設けられた平面状の第1遮蔽体とを備えている。この遮蔽体はコイルコアの縦方向に対して曲げられたフェリ磁性体および/または強磁性体からなっている。アンテナの発展形態では、第1遮蔽体とは反対側の端面に、平面状の第2遮蔽体が配置されている。この第2遮蔽体はコイルコアの縦方向に対して曲げられている。
【0006】
誘導式情報伝達のためのこのようなアンテナは作動時に、磁気的なダイポールモーメントを有する磁場を発生する。その際、このダイポールモーメントはアンテナに対して固定された(送信)空間方向に配向されている。アンテナと、第2聴取補助器または付属品の受信器、特にアンテナまたはコイルとの間における、できる限り強い誘導結合、ひいてはできる限り良好な伝達品質のために、受信器は送信空間方向に対応して配向(方向づけ)しなければならない。この場合特に、受信器の(受信)面が誘導を発生するために送信空間方向に対して垂直に向けられている。
【0007】
聴取補助器または聴取補助器システムの少なくとも1つの聴取補助器と、補聴器を例えば移動電話のような他の装置に接続するための中継ステーションまたは遠隔操作部のような付属品との間で、誘導式に情報が伝達または交換される。その際、聴取補助器は例えば頭の回転に基づいて、付属品に対して回転させることができる。その際、一般的に付属品に固定配置された受信器は同様に動かされるかまたは回転させられる。従って、アンテナから発生した磁場と、特にその磁気的なダイポールモーメントが受信器に対して回転させられるので、誘導結合作用と特に情報伝達作用は、磁気的なダイポールの空間方向に対する受信器の最適な位置と比較して、低下するかまたはそれどころかほぼゼロになる。
【0008】
この問題は、例えばセンサ(センサ装置)、頭に装着されるコンピュータシステム(ウェラブルコンピュータ、ウェラブルズ)、頭に装着されるセンサシステムまたはアクチュエータシステム(ボティエリアネットワーク)の構成要素のような他の機器の場合にも同様に発生し、またヘッドホンまたはヘッドセットのような補聴器の場合にも同様に発生する。例えば、(第1)アンテナに加えて、第2アンテナを使用することができる。この場合、第2アンテナの送信空間方向は第1アンテナの送信空間方向に対して曲げて配向されている。その際、第2アンテナは機器内で好ましくは第1アンテナから離隔して配置され、相互の影響が防止されるように配向されている。従って、第2アンテナが付加的な構造スペースを必要とするので、比較的に複雑な構造あるいは機器の使用のために適用できない構造が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2017/153274号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の根底をなす課題は、いろいろな空間的配向の場合にも、受信器との比較的に確実な誘導結合を可能にするアンテナを提供することである。さらに、このアンテナを備えた機器と、このアンテナを作動させるための方法を提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
アンテナに関しては、この課題は本発明に従い、請求項1の特徴によって解決される。方法に関しては、この課題は本発明に従い、請求項7の特徴によって解決され、機器に関しては、この課題は本発明に従い、請求項8の特徴によって解決される。有利な実施形態と発展形態は従属請求項の対象である。
【0012】
アンテナは、誘導式情報伝達および/またはエネルギ伝達の際に使用するために適していて、特に設けられおよび/または形成されている。その際、アンテナは例えば補聴器、特に聴取補助器の構成部品である。アンテナはフィルム状で、好ましくはまとまりのあるアンテナ本体を有し、このアンテナ本体はコイルコア部分と、この中央コイルコア部分の両側に配置されたアンテナ部分とを有する。その際、中央コイルコア部分は第1コイル(主コイル)を支持している。外側アンテナ部分は好ましくは平らである。さらに、外側アンテナ部分はそれぞれ、中央コイルコア部分に接しかつ第2コイル(副コイル)を支持する端側コイルコア部分を有する。第1コイルと第2コイルは例えば異なる巻線数を有する。
【0013】
外側アンテナ部分は中央コイルコア部分に対して曲げられている。従って、第1コイルと両第2コイルは異なる空間方向に向いている。換言すると、第1コイルと両第2コイルのコイル軸線は折り曲げられている。中央コイルコア部分と各外側アンテナ部分の間の角度は例えば80〜130°、特に85〜110°である。しかし、端側コイルコア部分がU字形を形成しつつ、中央コイルコア部分に対して垂直に向いているときわめて有利である。それによって、外側アンテナ部分はそれぞれU字形のU字脚部分を形成し、中央コイルコア部分はU字形のU字連結部分を形成している。その際、U字連結部分は縦方向に延在し、U字脚部分は横方向に延在している。フィルム状の両外側アンテナ部分は、互いに離隔された平行な平面内を延在している。
【0014】
この場合、情報伝達とは特に、信号の伝達またはデータの伝達であると理解される。このデータは例えば調節データあるいは聴取補助器によって検知された音響または信号技術的に加工された音響信号に関する情報を含むデータである。エネルギ伝達の際に受け取ったエネルギは好ましくは、エネルギ貯蔵器、特にバッテリの充電のために供される。
【0015】
この場合、フィルム状の物体とは、この物体の一方向の寸法が、この一方向に対して垂直に向いた平面内の物体の寸法と比較して小さい物体であると理解される。換言すると、アンテナ本体は平たい。この場合、平面状に形成された側はそれぞれ幅広面と呼ばれる。
【0016】
両外側アンテナ部分または中央コイルコア部分に向いた中央コイルコア部分の幅広面と両外側アンテナ部分の幅広面は、以下においてそれぞれの部分の内面とも呼び、他方の幅広面は外面と呼ぶ。アンテナ本体によって少なくとも部分的に取り囲まれた範囲は内側範囲を形成している。
【0017】
さらに、中央コイルコア部分に対する外側アンテナ部分の折り曲げ(折り)に基づいておよびアンテナ本体のフィルム状形成、すなわち平面状の形成に基づいて、アンテナ本体の必要スペースが小さくなるので、比較的にコンパクトなアンテナが提供される。従って、このアンテナはわずかな構造スペースしか与えられない装置、特に聴取補助器内にも配置することができる。
【0018】
アンテナ本体は好ましくは強磁性体および/またはフェリ磁性体、特に軟磁性フェライトによって形成され、10S/mよりも小さな導電率、好ましくは100S/mよりも小さな導電率と、μ>5、好ましくはμ>200の透磁性を有する。アンテナ本体は例えばフィルムであるかまたはフィルムによって形成されている。フィルムの厚さ、すなわち幅広面に対して垂直な寸法は例えば25〜700μm、特に70〜300μm、好ましくは100〜250μmである。アンテナ本体は好ましくは撓曲可能であるかまたは折り曲げ可能である。従って、アンテナ本体は平らな形から出発して、両外側アンテナ部分を折り曲げることによって折り曲げ形成可能である。
【0019】
第1コイルと各第2コイルが互いに独立して切換え可能(活性化可能)である、すなわち同じ電流方向の電流を供給可能であると有利である。そのために、第1コイルと第2コイルが1つの電流源または電圧源に接続されていると合目的である。すなわち、第1コイル、個々の第2コイルまたはこれらのコイルの組合せがその都度予定された電流方向に切換え可能である。例えば第1作動方法では、第1コイルと両第2コイルが同時期に切換えられる。この場合、コイルによって発生する磁場が構造的に重なるように、すなわち第1コイルによって発生した磁場のN極が一方の第2コイルによって発生した磁場のS極に隣接して配置され、第1コイルによって発生した磁場のS極が他方の第2コイルによって発生した磁場のN極に隣接して配置されるように、電流方向が選択される。従って、電流はコイルを同じ方向に流れる。コイルをこのように切換える場合およびアンテナ本体がU字形の場合、アンテナは比較的に大きな端面を有するフェライトロッドのように作用する。この場合、発生した磁気的なダイポールモーメントは外側アンテナ部分に対してほぼ垂直に向いている。
【0020】
例えば第2作動方法では、両第2コイルの一方だけが切換えられる。アンテナ本体がU字形の場合、発生した磁気的なダイポールモーメントは外側アンテナ部分に対して垂直ではなく、外側アンテナ部分の垂線に対して角度をなして傾斜している。
【0021】
要約すると、送信空間方向またはアンテナによって発生する磁気的なダイポールモーメントの方向は、アンテナに対して一定(固定)ではなく、コイルの切換えに応じて空間的に異なるように向けられる。換言すると、アンテナの放射特性はコイルの切換えに応じて調節可能でありかつ調節される。換言すると、アンテナによって発生する磁場は回転させられる。従って、第2コイルの一方、第2コイルの両方および/または第1コイルの活性化、特に通電により、アンテナと受信器の間でできるだけ強い誘導結合が達成されるように、磁気的なダイポールモーメントの方向が調節される。受信器が例えばコイルであると、アンテナによって発生した磁気的なダイポールモーメントがコイル軸線に対してできるだけ平行に延びるようにまたは受信器の受信面に対してできるだけ垂直に延びるように、第1コイルと第2コイルが通電される。
【0022】
その際、アンテナのために必要な構造スペースが比較的に小さいので有利である。さらに、アンテナは比較的に簡単に、それによって低コストで製造可能である。
【0023】
情報伝達および/またはエネルギ伝達のために、アンテナはそれによって発生したダイポールモーメントに基づいて受信器に(磁気的に)誘導結合されている。この受信器は特に第2アンテナまたはコイルである。受信器は特に、例えば遠隔操作部または特に体に身につける中継ステーションのような付属品である。
【0024】
送信空間方向に対して受信器を回転させると、磁気的な誘導結合の強さが変化する。特に磁気的な誘導結合が比較的に弱いときに、コイルの切換え(制御)を変更することによって、換言するとコイルの電流強さおよび/または電流方向を変更することによって、送信空間方向の配向を変えることが本発明に係るアンテナによって可能になるので有利である。その際、送信空間方向は好ましくは受信器の変更された空間方向に対応して適合させられる。例えば、受信器がコイルとして形成されている場合、磁気的なダイポールモーメントは受信器のコイル軸線に対して平行に向けられる。磁気的なダイポールモーメントが受信器に対応して完全に調節できない場合にも、例えば受信器がアンテナに対して比較的に大きく回転しているとき、特にアンテナに対して90°回転しているときに、磁気的なダイポールモーメントの空間的な配向の変更に基づいて、磁気的なダイポールモーメントの大部分を磁気的な結合に役立てることができる。要約すると、磁気的なダイポールモーメントの空間的な配向の変更によって、十分な情報伝達が実現されるように、磁気的な誘導結合を調節することができかつ調節される。
【0025】
例えば、受信器を備えた装置、特に付属品あるいはアンテナを有する機器、特に聴取補助器は、評価ユニット(信号処理ユニット)を備えている。この評価ユニットは例えばチャネル推定アルゴリズムのような適切なアルゴリズムによってあるいはいわゆるBER評価(ビット誤り率評価)によって、誘導結合の強さを決定するので、場合によっては決定の結果に依存してコイルの切換えまたは制御がアンテナと受信器の間の十分な伝達品質のために変更される。
【0026】
有利な発展形態では、両外側アンテナ部分の各々が特に欠円状のフランジ部分を備えている。このフランジ部分は、端側コイルコア部分の自由端側に、すなわち中央コイルコア部分の反対側および/または中央コイルコア部分から離れた端側コイルコア部分の端面に接している。換言すると、外側アンテナ部分はその端側コイルコア部分の自由端側から出発して、特に欠円状に拡張している。この場合、端側コイルコア部分とフランジ部分は共通の1つの平面内に延在している。換言すると、欠円状の拡張部の場合、外側アンテナ部分はマッシュルームの形をしている。その代わりに、拡張部は長方形、T字状、円状またはリング状でもよい。フランジ範囲によって、有効アンテナ面積が拡大または増大させられるので有利である。
【0027】
きわめて有利な発展形態では、アンテナが好ましくは一体のフィルム状シールドを備えている。このシールドはそれぞれ、中央コイルコア部分の方に向いた、両外側アンテナ部分の側におよび外側アンテナ部分の方に向いた、中央コイルコア部分の側に配置されている。換言すると、シールドは外側アンテナ部分と中央コイルコア部分のそれぞれの内面に配置されている。
【0028】
発展形態では、シールドはアンテナ本体よりも大きいかまたは同じであり、アンテナ本体を覆っている。換言すると、シールドは、外側アンテナ部分または中央コイルコア部分に対して平行な平面内において、外側アンテナ部分または中央コイルコア部分の寸法よりも大きいかまたは等しい寸法を有する。
【0029】
シールドは好ましくは10S/mよりも大きな導電率を有する。シールドはさらに、μ<1000、特にμ<100、好ましくはμ<2の(磁気的な)透過性を有する。シールドは反磁性体(0≦μ≦1)または常磁性体(μ>1)、特に銅によって形成されているかまたは反磁性体または常磁性体を含んでいる。シールドの厚さは、アンテナによって発生する磁場によるシールドの浸透が回避されるように選定されている。例えば、シールドはその材料の磁場の侵入深さの0.25〜1.5倍の厚さを有する。
【0030】
アンテナ本体の透過性は好ましくはシールドの透過性よりも大きく、シールドの材料の導電性がアンテナ本体の導電性よりも大きいと合目的である。磁場は特に、レンツの法則に従ってシールドの表面に誘導された電流と逆磁場とに基づいて、シールドに侵入しないで、シールドから外に押しのけられる。磁場はアンテナ本体内に押し込まれ、それによって実質的にアンテナ本体内で広がる。すなわち、シールドに基づいて、内側範囲への磁場の広がりが回避される。これに基づいて、アンテナ本体の効果的な透過性とアンテナの感度が高められるので有利である。
【0031】
アンテナの感度と品質は、シールドと相対的なアンテナ本体の形成、特に寸法の形成によって、作動に従って発生する要求に適合可能である。例えばシールドよりも小さな外側アンテナ部分は、アンテナの改善された品質を生じ、感度は少しだけしか低下しないので有利である。特に、磁力線が内側範囲から離れるように案内されるかまたは内側範囲内への磁力線の侵入が回避される。シールドに対して縮小した外側アンテナ部分とは、シールド上への外側アンテナ部分の投影が、シールドによって完全に覆われていることであると理解される。
【0032】
コイルの適切な切換えまたは操作制御によって実現可能である、アンテナによって発生する磁気的なダイポールモーメントの空間的な配向は、アンテナの形成、特に中央コイルコア部分と各外側アンテナ部分の間の角度、フランジ部分の形状およびシールドの形状に左右される。作動中、アンテナと受信器の間で、典型的な回転または比較的に頻繁に発生する回転が予定または予想される場合には、アンテナは好ましくはそれを支持する装置、例えば聴取補助器内に次のように配置されている。すなわち、このような回転が、アンテナの形成、ひいては実現可能な空間的な配向を考慮して、磁気的なダイポールモーメントの適切な変更によって、できるだけ相殺可能であるか相殺され、誘導結合ができるだけ強いかまたは維持されるように配置されている。例えば人の頭の回転は一般的に頻繁におよび/または頭の傾斜よりも大きな角度で発生する。このような回転時に、聴取補助器のアンテナと付属品の受信器の間のできるだけ良好な(強い)誘導結合が磁気的なダイポールモーメントの空間的な配向を適切に適合させることによってこの回転にとって可能であるように、アンテナが聴取補助器内に配置されていると有利である。
【0033】
例えば第1コイルおよび/または第2コイルは巻回機械によって、折り曲げ可能なフィルムによって形成されたまだ折り曲げられていないアンテナ本体の周りに巻かれ、コイルは例えばボンドによって電気的な端子に連結される。続いて例えば、銅フィルムとして形成されたシールドがアンテナ本体上に配置され、アンテナ本体と銅フィルムが折り曲げられる。アンテナ本体は代替的に、既に曲げられた剛性のあるフェリコアによって形成されている。その際、第1コイルは巻回機械によって取付けられる。第2コイルは予備巻回され、続いて端側コイルコア部分に嵌め込まれる。外側アンテナ部分がフランジ部分を備えている場合には、このフランジ部分を経て端側コイルコア部分に第2コイルを嵌め込むことができるように、フランジ部分が形成されている。
【0034】
適切な発展形態に従って、代替的におよび有利に、アンテナ本体がプリント配線板に組み込まれている。シールドはアンテナの製作の途中で、内側範囲の方向に向くように設けられたプリント配線板の側に接着される。
【0035】
他の代替実施形態では、シールドとアンテナ本体が好ましくは撓曲可能なプリント配線板に組み込まれている。場合によっては、アンテナ本体の両側の幅広面に、第1巻線層と第2巻線層が配置されている。換言すると、アンテナ本体、第1巻線層および第2巻線層は上下に積層されている。アンテナ本体と巻線層は特にプリント配線板の層を形成している。例えばプリント配線板の製作の途中で、この層が基板上にまたは層の一つに接着またははり合わせられる。
【0036】
プリント配線板はそれぞれ、第1コイルの巻線と第2コイルの巻線を形成する或る数のプリント配線を備えている。プリント配線は縦方向または横方向に対してほぼ垂直に延在している。両巻線層のプリント配線はコイルを形成しつつスルーホール(ビア)によって互いに電気的に(電着で)連結されている。このスルーホールはアンテナ本体の幅広面に対して垂直に延在している。プリント配線は例えばプリント配線板の製作の途中でエッチングによってまたはリソグラフィ法によって巻線層に形成される。
【0037】
シールドがプリント配線板の銅層によって形成され、そして内側範囲の方に向いたアンテナ本体の側と、アンテナ本体とは反対側の第1巻線層の幅広面に配置されていると合目的である。製作の途中で、アンテナ本体および/または巻線層が例えばはり合わせによってまたは代替的にコーティングによって被覆形成される。例えばアンテナ本体および/または巻線層は層の1つにまたは支持構造体上に被着される。
【0038】
例えば巻線層は中央コイルコア部分と端側コイルコア部分の範囲にのみ形成されている。代替的に、巻線層はアンテナ本体を完全に、すなわちアンテナ本体の全範囲にわたって覆っている。
【0039】
プリント配線板の幅広面に対して垂直な寸法(厚さ)は例えば75〜850μm、特に120〜450μm、好ましくは150〜400μmである。その際、プリント配線板に組み込まれたアンテナ本体の厚さは例えば25〜700μm、特に70〜300μm、好ましくは100〜250μmである。
【0040】
外側アンテナ部分上に配置されたシールドの内面の特に中央に、ゼロ磁場の範囲が形成されていると有利である。ここに、アンテナを有する機器の電気的または電子的な機器構成要素が接続可能であると有利である。例えば、電子的な機器構成要素は充電チップの形をした充電電子機器、無線システムチップおよび/またはエネルギ貯蔵器のための端子である。その際、電子的な機器構成要素は好ましくは、内側範囲の方に向いた、プリント配線板の部分のプリント配線板側(プリント配線板面)の中央に配置されている。このプリント配線板の部分には外側アンテナ部分が組み込まれている。それによって、電子的な機器構成要素は実質的にゼロ磁場に配置され、磁場によって妨害されないかまたは少ししか妨害されない。このような電子的な機器構成要素は作動時のアンテナのSN比を妨害しないかまたは比較的に少ししか妨害しない。すなわち、アンテナと電子的な機器構成要素は比較的に小さな誘導妨害を有する。電子的な機器構成要素はさらに、例えばリフローはんだ付けによって、プリント配線板に簡単かつ低コストで取付け可能である。
【0041】
有利な実施形態では、アンテナが第3巻線層と第4巻線層を備えている。この第3巻線層と第4巻線層はアンテナ本体とは反対側の第1巻線層の幅広面にまたはアンテナ本体とは反対側の第2巻線層の幅広面に配置されている。その際、第3巻線層が第1巻線層とシールドの間に配置されていると合目的である。第1巻線層および第2巻線層と同様に、第3巻線層と第4巻線層はプリント配線を備えている。第3巻線層のプリント配線によっておよび第4巻線層のプリント配線によって、第3コイルが形成されている。この第3コイルは第1コイルに対してまたは第2コイルに対して同心的に配置されている。換言すると、第3コイルは他の第1コイルまたは他の第2コイルである。同様に例えば、第1コイルまたは両第2コイルに対して同心的に配置された第3コイルが3つ形成されている。その際、コイルは好ましくは互いに独立して切換えまたは操作制御可能である。これにより、コイルの切換え(通電、操作制御)時に、アンテナの送信空間方向が正確に調節可能であるかまたは調節される。代替的に、第3コイルは1つの巻線を形成しつつ、第1コイルまたは第2コイルに電着される。
【0042】
代替的にまたは追加して、1個または複数の他の第1コイルが中央コイルコア部分によって支持されている。この場合、他の第1コイルは縦方向またはコイル縦方向に並べて配置されている。代替的にまたは追加して、1個または複数の他の第2コイルが一方または両方の端側コイルコア部分によって支持されている。この場合、他の第2コイルは横方向またはコイル縦方向に並べて配置されている。この場合、コイルが同様に互いに独立して切換え可能であるので、コイルの切換え時にアンテナの送信空間方向が正確に調節可能であるかまたは調節される。
【0043】
製作の途中でのコイルの(電気的な)接触が比較的に簡単であるので有利である。従って、特に接触のための付加的な作業ステップが不要であり、プリント配線板の形成(レイアウト)状態で一緒に考慮される。それに基づいてさらに、コイルの接触がはんだパッドを必要としないので、必要スペースが狭くなるので有利である。
【0044】
同様に、プリント配線板は例えば、第1コイルおよび第3コイルに対してまたは第2コイルおよび第3コイルに対して同心的に配置された他のコイルを形成するための他の巻線層を備えている。
【0045】
撓曲可能なプリント配線板の場合、このプリント配線板、ひいてはそれに組み込まれたアンテナ本体を、組立てまたは製作の途中で曲げる(折り曲げる)ことができる。さらに、シールドとアンテナ本体が特に可撓性のプリント配線板に組み込まれている場合には、アンテナが比較的に安定するように形成され、それによって比較的に少ないコストで機器内に組立てることができるので有利である。
【0046】
シールドとアンテナ本体を組み込む代わりに、シールドだけをプリント配線板に組み込むことができる。その際、プリント配線板が内側範囲の方に向いたアンテナ本体とコイルの側に配置されていると合目的である。
【0047】
有利な実施形態では、機器が上述のいろいろなアンテナの一つを備えている。アンテナは特に、無線誘導式情報伝達および/またはエネルギ伝達のために役立つ。アンテナは、フィルム状アンテナ本体の中央コイルコア部分の周りに巻かれた第1コイルと、この第1コイルに対して特に90°の角度をなして、それぞれフィルム状アンテナ本体の端側コイルコア部分の周りに巻かれた第2コイルとを備えている。
【0048】
機器は例えば血圧測定器、血糖測定器または脈拍数測定器のようなセンサ(センサ装置)あるいは身につけられるコンピュータシステム(ウェアラブルコンピュータ、ウェアラブルズ)あるいは身につけられるセンサシステムまたはアクチュエータシステム(ボティエリアネットワーク)である。機器は特に、ヘッドホンまたはヘッドセットのような補聴器であり、好ましくは機器は聴取補助器である。聴取補助器は例えばカナル内レシーバ型聴取補助器(RIC聴取補助器)、耳内型聴取補助器(ITE聴取補助器)、カナル内型聴取補助器(ITC)、完全カナル内型聴取補助器(CIC)または耳介の後部に装着される耳後部型聴取補助器(BTE聴取補助器)である。聴取補助器は(両耳型)聴取補助器システムの一部であってもよい。この場合、人の各耳に、このような聴取補助器が付設される。
【0049】
例えば遠隔操作部または人によって携行可能な中継ステーションのような付属品を、機器、特に聴取補助器に付設することができる。この中継ステーションは誘導式情報伝達および/またはエネルギ伝達のために機器に少なくとも一時的に誘導結合される。付属品は例えば上述のいろいろなアンテナの1つを備えている。
【0050】
外側アンテナ部分は例えば機器の他の範囲にわたって、例えば機器全体にわたって延在している。それによって、アンテナはフィルム状形成に基づいて、省スペース的におよび低コストで拡大される。従って、アンテナの帯域または品質および感度を、作動要求に適合させることができる。
【0051】
有利な発展形態では、アンテナは機器構成要素を少なくとも部分的に取り巻いている。従って、機器構成要素はアンテナの内側範囲に配置されている。アンテナを機器構成要素上に直接配置することにより、省スペース的な実施形態が形成される。その結果、アンテナの感度が同じである場合、特に補聴器として形成された機器を小さく形成することができるかあるいは付加的な構成要素を機器内に挿入することができる。
【0052】
外側アンテナ部分、特にそのフランジ部分は例えば機器構成要素の形に合わせられている。従って、フランジ部分は例えば平らではなく、曲がっている。フランジ部分は代替的に、機器構成要素の接触のための切欠きを有していてもよい。
【0053】
機器構成要素は特に、バッテリのようなエネルギ貯蔵器、特に補聴器のエネルギ供給のために役立つリチウムイオン蓄電池である。その際、アンテナが誘導式エネルギ伝達の働きをするので、機器の所定の作動モードではアンテナによって機器のエネルギ貯蔵器の無線(ケーブルレス)充電が可能である。
【0054】
特に機器構成要素がエネルギ貯蔵器として形成されている場合には、機器構成要素はほぼ平行で互いに離隔された端面(端側の面)と、外周範囲を有する。この外周範囲は機器構成要素の端面に対して垂直な周方向の側面によって形成されている。適切な発展形態では、外側アンテナ部分はそれぞれ機器構成要素の端面上に配置され、中央コイルコア部分は機器構成要素の側面を覆っている。その際、外側アンテナ部分はそれぞれの端側端面を少なくとも部分的に、好ましくは少なくとも端面の半分を覆っている。さらに、シールドが機器構成要素の端面を完全に覆っている。
【0055】
その際、機器構成要素の端面が平らではなく、例えば湾曲していると、代替的な実施形態に従って、外側アンテナ部分が端縁に対応して形成され、例えば湾曲している。従って、アンテナは機器構成要素上にきわめて省スペース的に配置されている。
【0056】
シールドに基づいて、機器構成要素寄りの外側アンテナ要素の側から機器構成要素の方への磁力線の伝播が回避される。その際、渦電流損失が作動に起因する交換磁場によって場合によってはおよび少しだけしかシールド内に生じない。その結果、渦電流損失と、この渦電流損失によって引き起こされる機器構成要素の加熱が回避されるのできわめて有利である。それによって、補聴器構成要素の損傷が防止され、寿命が長くなる。機器構成要素が比較的に高い導電性を有する材料、例えば銅によって形成されているかまたはこの材料によって取り囲まれている場合には、アンテナによって発生する磁場が、機器構成要素の表面内の、レンツの法則に従って誘導される電流に基づいておよびそれに伴う逆磁場に基づいて、この表面から外に押しのけられるので、アンテナ本体と機器構成要素の間にシールドを設ける必要はない。
【0057】
さらに例えば、機器構成要素はスリーブ状の外周遮蔽体によって少なくとも部分的に取り囲まれている。換言すると、外周遮蔽体の縦方向の寸法は最大で、機器構成要素の外周範囲の寸法に等しい。その際、外周遮蔽体は特に、外側アンテナ部分の間の中央に配置され、その際必ずしも(電気的に)閉じていなくてもよい。外周遮蔽体は好ましくはシールドの一部であるがしかし、必ずしもこのシールドに(電着)連結されていなくてもよい。外周遮蔽体に基づいて、機器構成要素内への磁力線の侵入が回避されるので、外周遮蔽体内では渦電流損失が場合によってはおよび少ししか引き起こされない。
【0058】
次に、図に基づいて本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】それぞれ1個のアンテナを備え、このアンテナがエネルギ貯蔵器を取り巻いている、聴取補助器として形成された2個の機器の概略図であり、両聴取補助器はそれと相対的に回転可能な付属部品に誘導結合されている。
図2a】エネルギ貯蔵器を取り巻くU字状アンテナの斜視図であり、アンテナ本体のアンテナ部分がエネルギ貯蔵器の端面に配置され、アンテナ本体のコイルコア部分がエネルギ貯蔵器の外周面を部分的に覆い、アンテナ本体とエネルギ貯蔵器の間にシールドが配置されている。
図2b図2aのU字状アンテナの側面図である。
図2c図2aに示した、エネルギ貯蔵器を取り巻くアンテナの平面図である。
図3a】アンテナ部分の平面図で、アンテナ部分の欠円状のフランジ範囲の代替的な第1実施形態を示し、この場合フランジはシールドよりも小さい。
図3b】アンテナ部分の代替的な第2実施形態を示し、そのフランジ範囲は比較的に大きな中心角度で欠円状に形成されている。
図3c】アンテナ部分の代替的な第3実施形態を示し、そのフランジ範囲は小さな中心角度で欠円状に形成されている。
図4】プリント配線板の横断面を概略的に示す。このプリント配線板にはアンテナ本体とシールドが組み込まれ、第1コイルがプリント配線によって形成され、このプリント配線はアンテナ本体の両側の幅広面に配置された巻線層に形成されている。
図5a】アンテナの組立て途中でエネルギ貯蔵器の周りに折り曲げる前の、アンテナ本体とシールドを組み込んだプリント配線板の状態を示す。
図5b図5aのプリント配線板を示し、この場合プリント配線板の基板と塗装層が示されていない。
図6】アンテナの分解図であり、この場合第3コイルが第1コイルの周りに同心的に配置され、プリント配線板の基板と塗装層が示されていない。
図7a】U字状アンテナの側面図であり、この場合アンテナの作動時に発生する磁気的なダイポールモーメントの空間的な方向が調節される。
図7b】U字状アンテナの側面図であり、この場合アンテナの作動時に発生する磁気的なダイポールモーメントの空間的な方向が調節される。
【発明を実施するための形態】
【0060】
すべての図において、互いに一致する部分には同じ参照符号が付けてある。
【0061】
図1には、(両耳性)聴取補助システム4の同じ構造の聴取補助器2aとして形成された2個の機器2が示してある。両聴取補助器2aは、使用者(装着者、人)の各耳の後部に装着するように設計および形成されている。換言すると、この聴取補助器は、使用者の耳に挿入される図示していない音響チューブを備えた耳後部型補聴器(BTE補聴器)である。各聴取補助器2aは例えば合成樹脂で作られたケーシング6を備えている。このケーシング6内には、2個の電気機械式音響変換器10を有するマイクロホン8が配置されている。両音響変換器10によって、マイクロホン8の指向特性を変更することができる。これは、検出された音響信号からそれぞれ音響変換器10によって発生させられる電気信号の時間的なずれを変更することによって行われる。両電気機械式音響変換器10は信号処理ユニット12に信号技術的に接続されている。この信号処理ユニットは増幅回路を備えている。信号処理ユニット12は電気的および/または電子的な(能動的および/または受動的な)部品および回路要素を備えている。
【0062】
信号処理ユニット12にはさらに、スピーカ14が信号技術的に接続されている。信号処理ユニット12によって処理された音響変換器10の電気信号は、このスピーカによって、新たに音響信号として出力される。この音響信号は図示していない音響チューブによって、補聴器システム2の使用者の耳に導かれる。
【0063】
各聴取補助器2aの信号処理ユニット12、マイクロホン8およびスピーカ14の電力供給(電圧供給および電流供給)は、再充電可能な(破線で示した)エネルギ貯蔵器16によって行われる。聴取補助器2aの各々はさらに、アンテナ18を備えている。このアンテナにより、両聴取補助器2aの間で誘導式情報伝達20が可能である。その際、アンテナ18はエネルギ貯蔵器16を部分的に取り巻いている。両聴取補助器2aの間の誘導式情報伝達20はデータを交換するために役立つ。データの交換に基づいて、例えば改善された指向性マイクロフォニック(ビームフォーミング)が可能である。
【0064】
図1の実施形態ではさらに、付属品22が示されている。この付属品は例えば、使用者が携行する遠隔操作部または中継局である。この付属品22は受信器23を備えている。この受信器によって、両聴取補助器2aの両アンテナ18との、一点鎖線の矢印で示す他の誘導式情報伝達20が実現される。この誘導式情報伝達20は他の機器22と補聴器2aとの間でデータを交換するために役立つ。
【0065】
アンテナ18はさらに、図示していない充電器から聴取補助器2aへの誘導式無線エネルギ伝達のために用いられるので、所定の運転モードではアンテナ18を用いて、聴取補助器2aの再充電可能なエネルギ貯蔵器16の充電が可能である。換言すると、アンテナ18によって、エネルギ貯蔵器16の充電のために利用される誘導エネルギが伝達される。
【0066】
図示していない実施形態では、機器2は、血圧測定器、血糖測定器または脈拍数測定器のようなセンサ(センサ装置)あるいは身につけられるコンピュータシステム(ウェアラブルコンピュータ、ウェアラブルズ)あるいは身につけられるセンサシステムまたはアクチュエータシステム(ボティエリアネットワーク)の構成要素である。いかなる場合でも、この機器2は誘導式情報伝達および場合によっては誘導式エネルギ伝達のためのアンテナ18を備えている。
【0067】
図2a〜図2cは機器2のアンテナ18を示す。アンテナ18は軟磁性のフェライトによって形成されたフィルム状のアンテナ本体24を備えている。このアンテナ本体24は第1コイル28を支持するコイルコア部分26を有する。その際、コイルコア部分26、ひいては第1コイル28のコイル軸線は、縦方向Lに沿って延在している。縦方向Lにおけるコイルコア部分の端面には、両側にそれぞれ1つの外側アンテナ部分30が配置され、アンテナ本体24のU字形状を形成している。それによって、両外側アンテナ部分30は縦方向Lに対して垂直に向いている。その際、両外側アンテナ部分30は縦方向Lに対して垂直に向いた横方向Qに延在している。
【0068】
アンテナ本体24の両外側アンテナ部分30はそれぞれ、コイルコア部分26に接する端側コイルコア範囲(端側コイルコア部分)32を備えている。その際、端側コイルコア範囲32はそれぞれ、第2コイル34を支持している。この第2コイルのコイル軸線は横方向Qに向いている。さらに、両外側アンテナ部分30はそれぞれ、平たく形成されたフランジ部分36を備えている。このフランジ部分は、端側コイルコア範囲32の自由端側、すなわちコイルコア部分26とは反対の離れた端側に接している。外側アンテナ部分30は端側コイルコア範囲32の自由端側から出発して半円状に広がっている。この場合、端側コイルコア範囲32とフランジ部分36は、縦方向Lに対して垂直に向いた共通の平面内に延在している。両外側アンテナ部分30は同じ構造であり、互いに鏡像対称である。この場合、その対称平面は縦方向Lに対して垂直に延在している。
【0069】
図示していない代替的な実施形態では、両外側アンテナ部分30は構造的に同じにまたは対称に形成されていない。それによって、フランジ部分36が例えば機器構成要素16の形に適合しているかあるいはフランジ部分が例えば機器構成要素16の接触のための切欠きを有する。
【0070】
第1コイル28と両第2コイル34はそれぞれ、図示していない電子機器または図示していない電源に電気的に接触している。場合によっては、第1コイル28と両第2コイル34は互いに独立して切換え可能である、すなわち意図する電流強さを供給可能(制御可能)である。
【0071】
外側アンテナ部分30の間の内側範囲Iには、機器2の機器構成要素38が配置されている。この構成要素はここでは、バッテリとして形成された機器2のエネルギ貯蔵器16である。エネルギ貯蔵器16は、上下に配置されかつ同軸に支持された2つの円筒体に相当する形状を有する。円筒体の軸線は縦軸線L方向に延在している。円筒体の離隔された両側の平らな面は、エネルギ貯蔵器16の平行な端面40を形成している。両円筒体の外周面はエネルギ貯蔵器16の外周範囲42を形成している。その際、端面40が縦方向Lに対して垂直な平面内に延在しているので、端面は外側アンテナ部分30に対して平行に向いている。要約すると、外側アンテナ部分30はエネルギ貯蔵器の両側の端面40上に配置され、コイルコア部分26はエネルギ貯蔵器16として形成された機器構成要素38の外周範囲42に被さっている。
【0072】
アンテナ本体24、すなわちコイルコア部分26および外側アンテナ部分30と、機器構成要素38との間には、フィルム状のシールド44が配置されている。すなわち、シールド44がコイルコア部分26寄りの両外側アンテナ部分30の側と、外側アンテナ部分30寄りのコイルコア部分26の側に配置されている。コイルコア部分26に配置されたシールド44の範囲またはコイルコア部分26とエネルギ貯蔵器16の間に配置されたシールドの範囲は、以下においてシールド部分46と呼ぶ。これと同様に、外側アンテナ部分30に配置されたシールド44の両範囲は、外側シールド部分48と呼ぶ。その際、フィルム状のシールド44は10S/mの導電率を有し、反磁性材料によって形成されているかまたは反磁性材料を含んでいる。図2の実施の形態では、シールド44は銅フィルムによって形成されている。
【0073】
その際、シールド44はアンテナ本体24よりも大きく、このアンテナ本体24を覆っている。それによって、シールド部分46はコイルコア部分26に対して平行な平面内で広がっている。この広がりの大きさはコイルコア部分26の広がりの大きさよりも大きい。外側シールド部分48は同様に、外側アンテナ部分30に対して平行な平面内で広がっている。この広がりの大きさは外側アンテナ部分30の広がりの大きさよりも大きい。その際、両外側シールド部分48はエネルギ貯蔵器16の端面40(端側の面)を完全に覆っている。
【0074】
シールドに基づいて、内側範囲I内での磁場の広がりが阻止されるかまたは少なくとも低減される。これに基づいて、内側範囲I内に配置されたエネルギ貯蔵器16に、渦電流が発生させられないかまたは少ししか発生させられないので、エネルギ貯蔵器は加熱されないかまたは損傷しない。
【0075】
アンテナ18をエネルギ貯蔵器16または機器構成要素38上に直接配置したことに基づいておよびシールド44をアンテナ要素18のアンテナ本体とエネルギ貯蔵器16の間に配置したことによって、機器2内でのアンテナ18の省スペース的な配置が実現される。その結果、機器2はきわめて省構造スペース的に(小さく)形成されている。
【0076】
図3a〜図3cはそれぞれ、フランジ部分36の代替的な実施形態を示している。図3aに示した代替実施形態では、欠円として形成されたフランジ部分36はシールド44よりも小さくなっている。その際、半径方向に沿った欠円の広がりは、この方向におけるシールド44の広がりよりも小さい。これにより、内側範囲Iにおける磁力線の広がりがさらに小さくなる。図3bの第2の代替実施形態と図3cの第3の代替実施形態は、欠円として形成されたフランジ部分36の異なる中心角度を有する。図3bのフランジ部分36は120°の中心角度を有し、図3cのフランジ部分36は60°の中心角度を有する。フランジ部分36のいろいろな形によって、アンテナ面積が運転に従う要求に適合させられる。
【0077】
図4は、シールド44とアンテナ本体24を組み込んだ撓曲可能なプリント配線板50を概略的に示している。その際、フェライトによって形成されたアンテナ本体24は、プリント配線板50内にはり合わせられている。アンテナ本体24の両側の広幅面には、第1巻線層52と第2巻線層54が配置されている。第1巻線層52と第2巻線層54はそれぞれ、プリント配線56を備えている(図5a)。このプリント配線によって、第1コイル28の巻線と第2コイル34の巻線が形成されている。プリント配線56は、プリント配線板50の製造の途中で、第1巻線層53と第2巻線層54にエッチングによって形成される。プリント配線56はスルーホール(ビア)58によって互いに電気的に接続されている。さらに、第1巻線層52が基板60上に配置または取付けられている。第1巻線層52とは反対の基板60の側には、シールド44が配置されている。シールドはここではプリント配線板50の銅層によって形成されている。その際、シールド44は内側範囲Iの方に向いた基板60の幅広面に配置されている。さらに、内側範囲Iの方に向いたシールド44の幅広面と、内側範囲Iとは反対側の、すなわち外側範囲Aの方に向いた第2巻線層54の幅広面にはそれぞれ、塗装層62が配置されている。
【0078】
図5aと図5bは、平らな状態のアンテナ18を示している。機器2におけるアンテナ18の組立ての途中で、アンテナ18が折り曲げられる(曲げられる)ので、アンテナ18はエネルギ貯蔵器16を省スペース的に取り囲む。これは撓曲可能なプリント配線板50の使用に基づいておよびアンテナ本体24の折り曲げ可能なフィルム状の形成に基づいて可能である。その際、アンテナ本体24とシールド44は図4の実施形態に従ってプリント配線板50に組み込まれている。図5aはシールド44とアンテナ本体24を組み込んだ撓曲可能なプリント配線板50を示す。図5bでは、このプリント配線板50は、アンテナ本体24とシールド44を見やすくするために、基板60と両塗装層62を省略して示してある。
【0079】
図6はアンテナ18の分解図である。この場合、図5bと同様に、シールド44とアンテナ本体24を組み込んだプリント配線板50の基板60と両塗装層62は、アンテナ18の個々の構成要素を見やすくするために示されていない。アンテナ18は、第1コイル28と同心的にコイルコア部分26の周りに配置された第3コイル64を備えている。この第3コイル64はスルーホール58によって電気的に接続されたプリント配線56によって形成されている。このプリント配線は特にエッチングによって第3巻線層66と第4巻線層68に形成されている。その際、第3巻線層66または第3巻線層66のプリント配線56は、内側範囲I寄りの第1巻線層52の側に配置され、第4巻線層68は外側範囲A寄りの第2巻線層54の側に配置されている。
【0080】
さらに、縦方向Lに関して隣接するスルーホール58が、縦方向Lに対して垂直および横方向Qに対して垂直な方向に互いにずらして配置されていることが判る。換言すると、隣接するスルーホール58は、縦方向Lと横方向Qに張り渡された共通の一つの平面内に配置されていない。その際、スルーホール58は縦方向Lにおいてプリント配線56よりも大きなスペースを必要とする。その際、製作に起因して、2つの配線要素の間に、換言すると隣接する2つのプリント配線56の間、隣接する2つのスルーホール58の間および1つのプリント配線56とこのプリント配線56に隣接するプリント配線56に連結されたスルーホール58との間に、最小間隔が必要である。スルーホール58がずらして配置されていない場合、互いに空間的に最も近く配置される配線要素は、隣接する2つのスルーホール58である。それによって、スルーホール58が縦方向Lにおいてプリント配線56よりも大きなスペースを必要とする結果として、隣接する2つのプリント配線56の間の間隔は最小間隔よりも大きい。これに対して、スルーホール58をずらして配置する場合は、2つの配線要素の間の最も小さな間隔は、1つのプリント配線56と、直接隣接するプリント配線56に連結されたスルーホール58との間にある。従って、直接隣接するスルーホール58をずらして配置する場合、プリント配線56の縦方向Lにおける必要スペースがスルーホール58よりも小さいことに基づいて、直接隣接するプリント配線56の間の間隔は小さい。それによって、コイルの巻線密度が高められる。
【0081】
図7aと7図bは、図2に従って形成されたアンテナ18を作動させるための方法を示している。図7aには、アンテナ18の第1作動方式が示してある。この場合、第1コイル28と両第2コイル34が同時に切換えられ、その際コイル28、34によって発生した磁場が構造的に重なるように、電流方向が選択される。すなわち、電流がコイル28、34を同じ方向に流れる。アンテナ18は比較的に大きな端面を有するフェライトロッドアンテナのように作用する。この場合、作動時に発生した磁気的なダイポールモーメントmは、外側アンテナ部分30に対してほぼ垂直にかつ縦方向Lに対して平行に向いている。
【0082】
図7bはアンテナ18の第2作動方式を示している。この場合、第2の両コイル34の一方だけが切換えられている。作動時に発生する磁気的なダイポールモーメントmは、外側アンテナ部分30に対して垂直ではなく、縦方向Lと横方向Qに張り渡された平面内で、外側アンテナ部分30の垂線Nに対して角度αをなして傾いている。
【0083】
図7aと図7bでは、アンテナ18のほかに、コイルとして形成された、付属品22の受信器23が示してある。このコイルの軸線Sはアンテナ18の外側アンテナ部分30に対して垂直に向いているかまたは垂線Nに対して角度αをなしてねじ曲げられている。その際、アンテナ18と受信器23の間の誘導結合は、磁気的なダイポールモーメントmがコイル軸線Sに対して平行に配向されているときに最大である。第2コイル34の一方、第2コイル34の両方および/または第1コイル28を作動させる、特に通電することにより、磁気的なダイポールモーメントmは、できるだけコイル軸線Sに対して平行に延在するように調節される。
【0084】
要約すると、送信器空間方向、換言すると、アンテナ18の作動時に発生する磁気的なダイポールモーメントmの空間的な方向は、アンテナ18に対して特定の(固定された)方向に向いているのではなく、コイル28、34の切換えに応じて空間的に異なる方向に向けられる。これにより、コイル28、34の一つを切り換えることにより、アンテナ18の作動時に発生する磁気的なダイポールモーメントmが、受信器23の配向に対応してアンテナ18と相対的に調節される。従って、アンテナ18に対して受信器23がねじ曲がっている場合にも、アンテナ18と受信器23の確実な誘導結合が可能であり、従って確実な誘導式情報伝達が実現される。
【0085】
本発明は、上述の実施の形態に限定されない。専門家は、本発明の対象から逸脱せずに、本発明の他の変形を導き出すことができる。さらに特に、実施の形態に関連して説明した個々の特徴は、本発明の対象から逸脱せずに、異なる態様で互いに組合せ可能である。
【符号の説明】
【0086】
2 機器
2a 聴取補助器
4 補聴器システム
6 ケーシング
8 マイクロホン
10 音響変換器
12 信号処理ユニット
14 スピーカ
16 エネルギ貯蔵器
18 アンテナ
20 誘導式情報伝達
22 付属品
23 受信器
24 アンテナ本体
26 コイルコア部分
28 第1コイル
30 外側アンテナ部分
32 端側コイルコア範囲(端側コイル部分)
34 第2コイル
36 フランジ部分
38 機器構成要素
40 端面
42 外周範囲
44 シールド
46 シールド部分
48 外側シールド部分
50 プリント配線板
52 第1巻線層
54 第2巻線層
56 プリント配線
58 スルーホール
60 基板
62 塗装層
64 第3コイル
66 第3巻線層
68 第4巻線層
α 角度
A 外側範囲
I 内側範囲
L 縦方向
m 磁気的なダイポールモーメント
N 外側アンテナ部分の垂線
Q 横方向
S コイル軸線
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4
図5a
図5b
図6
図7a
図7b