特許第6918893号(P6918893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918893
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】異常検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20210729BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20210729BHJP
   G01M 13/045 20190101ALI20210729BHJP
【FI】
   G01M99/00 A
   G01H17/00 Z
   G01M13/045
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-196536(P2019-196536)
(22)【出願日】2019年10月29日
(65)【公開番号】特開2021-71322(P2021-71322A)
(43)【公開日】2021年5月6日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−209782(JP,A)
【文献】 特開2011−252753(JP,A)
【文献】 特開2016−023928(JP,A)
【文献】 特公平02−059420(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/054867(WO,A1)
【文献】 特開2017−219469(JP,A)
【文献】 特開2005−037293(JP,A)
【文献】 特開2011−259624(JP,A)
【文献】 特開昭56−011362(JP,A)
【文献】 特開2012−242336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00−13/045、99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸及び前記回転軸を支持する軸受を具備する回転機械の前記軸受の振動または音圧を検出する検出器と、
前記検出器の検出値をフーリエ変換して振幅スペクトルを演算し、前記軸受の異常により前記振幅スペクトルが増加する周波数を含む複数の所定周波数帯域の前記振幅スペクトルを記憶可能な記憶部と、
前記回転機械が設置現場に設置された後、前記回転機械の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたそれぞれでの前記回転機械の初期の駆動時の前記検出器の検出値から前記振幅スペクトルを求めて正常な初期データとして前記記憶部に記憶し、前記複数の回転速度範囲のいずれかでの前記回転機械の初期以降の駆動時の前記検出器の検出値から前記振幅スペクトルを求めて運転データとして前記記憶部に記憶し、前記初期データ及び前記運転データを比較して、前記運転データを前記初期データで除算した値である比率が一定の閾値以上である場合、前記軸受に異常があると判断して警報を送信する制御部と、
を具備し、
前記初期データ及び前記運転データは、前記検出器の検出値をフーリエ変換して得られる前記複数の所定周波数帯域内における振幅スペクトルの最大ピーク値である、
異常検出装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記回転機械の回転速度を検出する、回転速度検出用周波数帯域の情報、及び、前記回転機械の回転速度を求める為の係数を記憶し、
前記制御部は、前記検出器の検出値をフーリエ変換することで前記回転速度検出用周波数帯域の前記振幅スペクトルを求め、前記回転速度検出用周波数帯域のうち前記振幅スペクトルの最大ピーク値の周波数を求め、前記最大ピーク値の周波数に前記係数を乗算することで、前記回転機械の回転速度を求め、前記最大ピーク値を、前記係数に基づいて得られた回転速度を含む前記複数の回転速度範囲のいずれかの範囲に記憶する、
請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記回転機械の駆動を制御する回転機械制御部から前記回転機械の回転速度の情報を受信し、前記最大ピーク値を、前記回転機械制御部から受信した前記回転速度を含む前記複数の回転速度範囲のいずれかの範囲に記憶する、
請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記複数の所定周波数帯域と、前記複数の回転速度範囲のそれぞれに応じた複数の前記閾値を記憶し、
前記制御部は、前記複数の閾値から前記複数の回転速度範囲と、前記所定周波数帯域に応じた閾値を選択する、
請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記記憶部は、複数種類の回転機械の軸受のそれぞれに応じた複数の前記閾値を記憶し、
前記制御部は、前記複数の閾値から前記軸受に応じた閾値を選択する、
請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、警報停止信号を受信すると、警報の送信を停止し、前記記憶部に記憶された前記初期データを削除する信号を受信すると、前記記憶部に記憶された前記初期データを削除し、当該削除後に前記回転機械の前記複数の回転速度範囲のそれぞれでの前記初期と同回数の駆動時の前記検出器の検出値から前記振幅スペクトルを求めて前記初期データとして前記記憶部に記憶する、請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記回転機械は複数台設けられ、
前記制御部は、複数の前記回転機械のうち1台のみが駆動しているときに前記軸受の異常の有無を判断する、請求項1に記載の異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回転機械の軸受の異常を検出可能な異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、ビル等の給水先に給水する給水装置として、ポンプと、ポンプを駆動するモータと、を備える構成が知られている。このような給水装置は、例えば長期の運転により、モータの転がり軸受の内輪及び外輪の転動体が移動する軌道面に傷が生じたり、転動体に傷が生じたり、転がり軸受に塵埃が浸入したり、または、転がり軸受のグリースが不足ことによる潤滑不足が生じたりする、等の異常が生じる場合がある。軸受は、これらの異常が生じると、異常がない場合に比較して振動が大きくなる。
【0003】
そこで、異常を判断する為に、検査対象の音を音響センサで検出し、この検出結果に基づいて検出対象の異常を判断する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、軸受の振動を振動センサで検出し、この検出結果に基づいて軸受の異常を判断する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−12640号公報
【特許文献2】特開2003−148391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した音響センサや振動センサにより振動を検出し、この検出結果に基づいて異常の判断をする技術には、以下の問題があった。すなわち、軸受の異常の判断には、音響センサや振動センサの検出値に基づいて軸受の異常の判断に用いる判定値を試験により決定し、この判定値と実際の運転時の検出値とを比較する方法が考えられる。しかしながら、判定値は給水装置を製造する工場での音響センサや振動センサの検出値に基づいて試験により決定され、判定値と比較される実際の運転時の検出値は、給水装置が使用される設置現場での音響センサや振動センサの検出値である。そして、給水装置を製造する工場での給水装置の設置条件、及び給水装置を使用する設置現場での給水装置の設置条件が異なることで、軸受の異常判断の精度が低下する問題がある。
【0006】
すなわち、給水装置の設置現場は例えば、マンション、アパート、オフィスビル、工場等、様々な給水現場であり、そのそれぞれにおいて、例えば各ポンプの吸込側及び吐出側の配管の支持形態、ポンプの防振用の防振架台、アンカー打設の有無等が異なる。そして、これら設置現場での給水装置の設置条件は、給水装置を製造する工場での給水装置の設置条件とも異なる。
【0007】
このように、給水装置を製造する工場での給水装置の設置条件、及び給水装置が使用される設置現場での給水装置の設置条件が異なることが、音響センサや振動センサの検出値に影響を及ぼすことで、音響センサや振動センサの検出値に基づいて算出される、軸受の異常の判断に用いる値の正確な比較ができず、結果、軸受の異常判断の精度が低下する虞が生じる。
【0008】
さらに、モータは、最小回転速度から最大回転速度までの周波数帯域で駆動するので、軸受の異常を判断する為に、モータの最小回転速度から最大周波数までの音響センサや振動センサによる多くの試験による判定値が必要であり、異常の判断の為の工程が複雑になる。
【0009】
そこで本発明は、軸受の異常の判断の工程が複雑になること防止し、かつ、回転機械の軸受の異常の検出精度を向上できる異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る異常検出装置は、回転軸及び前記回転軸を支持する軸受を具備する回転機械の前記軸受の振動または音圧を検出する検出器と、前記検出器の検出値をフーリエ変換して振幅スペクトルを演算し、前記軸受の異常により前記振幅スペクトルが増加する周波数を含む複数の所定周波数帯域の前記振幅スペクトルを記憶可能な記憶部と、前記回転機械が設置現場に設置された後、前記回転機械の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたそれぞれでの前記回転機械の初期の駆動時の前記検出器の検出値から前記振幅スペクトルを求めて正常な初期データとして前記記憶部に記憶し、前記複数の回転速度範囲のいずれかでの前記回転機械の初期以降の駆動時の前記検出器の検出値から前記振幅スペクトルを求めて運転データとして前記記憶部に記憶し、前記初期データ及び前記運転データを比較して、前記運転データを前記初期データで除算した値である比率が一定の閾値以上である場合、前記軸受に異常があると判断して警報を送信する制御部と、を備える。前記初期データ及び前記運転データは、前記検出器の検出値をフーリエ変換して得られる前記複数の所定周波数帯域内における振幅スペクトルの最大ピーク値である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸受の異常の判断の工程が複雑になることを防止しつつ、回転機械の軸受の異常の検出精度を向上できる異常検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る給水装置の構成を示す正面図。
図2】同給水装置の構成を一部断面で示す側面図。
図3】同給水装置に用いられる異常検出装置の検出器及びその近傍の構成を一部断面で示す側面図。
図4】同検出器の構成を示す断面図。
図5】同異常検出装置の構成を示すブロック図。
図6】同異常検出装置に用いられる記憶部に記憶される軸受の異常の判断に用いられる所定周波数帯域の初期データ、運転データ、及び閾値を示す説明図。
図7】同検出器の検出値をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域での周波数及び振幅スペクトルの関係を示すグラフ。
図8】同異常検出装置による軸受異常の有無の判断の一例を示す流れ図。
図9】同異常検出装置の変形例に係る記憶部に記憶される軸受の異常の判断に用いられる所定周波数帯域の初期データ、及び閾値を示す説明図。
図10】同モータの回転数を検出する為に用いられる、同検出器の検出値をフーリエ変換して得られる周波数と振幅スペクトルの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施形態に係る給水装置10を、図1乃至図8を用いて説明する。図1は、給水装置10の構成を示す正面図である。図2は、給水装置10の構成を一部断面で示す側面図である。図3は、給水装置10に用いられる異常検出装置130の検出器140及びその近傍の構成を一部断面で示す側面図である。図5は、異常検出装置130の構成を示すブロック図である。図6は、異常検出装置130に用いられる記憶部150に記憶される軸受37の異常の判断に用いられる所定周波数帯域の初期データF、運転データC、及び閾値Tを示す説明図である。図7は、検出器140の検出値をフーリエ変換した所定周波数帯域での周波数及び振幅スペクトルの関係を示すグラフである。図7では、横軸が周波数(Hz)であり、縦軸が振幅スペクトル値(dB)を示している。図8は、異常検出装置130による軸受異常の有無の判断の一例を示す流れ図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、給水装置10は、ベース20と、ベース20上に配置された複数のポンプ装置30と、複数のポンプ装置30の二次側にそれぞれ接続される複数の吐出管40と、各吐出管40に設けられる複数の逆止弁50と、各吐出管40に設けられる複数の開閉弁60と、複数の吐出管40を連結する連結管70と、連結管70に設けられる接続管80と、接続管80に設けられる蓄圧装置90と、各ポンプ装置30の二次側の流量をそれぞれ検出する複数の流量検出器100と、連結管70内の圧力を検出する圧力検出器110と、各ポンプ装置30の動作を制御する制御装置120と、を備える。
【0015】
また、給水装置10は、給水装置10に用いられる回転機械の軸受の異常を検出する異常検出装置130を備える。回転機械は、回転軸と、回転軸を支持する軸受と、を備える機械である。給水装置10に用いられる回転機械は、例えば、ポンプ装置30に用いられるモータ31及びポンプ32である。給水装置10は、ポンプ装置30により水源の水を圧送し、吐出管40及び連結管70を介して給水先に給水する。
【0016】
ポンプ装置30は、モータ31と、ポンプ32と、モータ31及びポンプ32を接続する主軸33と、軸封装置34と、を備える。ポンプ装置30は、一次側が、受水槽等の水源に接続される。ポンプ装置30は、例えば、主軸33が重力方向に沿って延設され、モータ31がポンプ32の上部に配置された、所謂立型多段タービンポンプである。ポンプ装置30は、例えば3台設けられる。
【0017】
モータ31は、制御装置120の後述する制御基板122に収納されたインバータに電気的に接続される。モータ31は、例えば、モータフレーム35と、固定子と、回転子と、回転軸36と、ポンプ32側の軸受37と、ポンプとは反対側の軸受と、を備える。
【0018】
モータフレーム35は、例えば、内部に固定子及び回転子を収納するフレーム本体38と、フレーム本体38のポンプ32側に固定され、ポンプ32側の軸受37が固定され、ポンプ32の上部に固定されるモータブラケット39と、を備える。
【0019】
フレーム本体38は、ポンプ32側が開口を有する筒状に構成される。
図3に示すように、モータブラケット39は、筒状に構成されるブラケット本体39aと、ブラケット本体39aの一端に設けられる底壁部39bと、を有する。
【0020】
ブラケット本体39aは、例えば、円筒状に構成される。ブラケット本体39aの内周面は、嵌め合いにより軸受37を固定可能に形成される。ブラケット本体39aは、例えばフランジ39cを有する。フランジ39cは、図1及び図2に示すように、例えばボルト等の固定部材39dにより,フレーム本体38に固定される。底壁部39bは、回転軸36の一部を配置する孔が形成される
固定子及び回転子は、フレーム本体38内に収容される。
回転軸36は、回転子に固定される。回転軸36は、主軸33に連結される。
【0021】
図3に示すように、軸受37は、転がり軸受けである。軸受37は、外輪37aと、内輪37bと、玉等の複数の転動体37cと、を備える。
【0022】
外輪37aは、嵌め合いによりモータブラケット39の内周面に固定される。また、外輪37aは、例えば、押え板37dにより、モータブラケット39に固定される。具体的には、外輪37aは、押え板37dが回転軸36の軸方向に当接することで、回転軸36の軸方向に固定される。押え板37dは、ボルト等の固定部材37eにより、モータブラケット39に固定される。外輪37aの内周面には、転動体37cが移動する軌道面が構成される。
【0023】
内輪37bは、内側に回転軸36を挿通し、回転軸36に固定される。内輪37bの外周面には、転動体37cが移動する軌道面が構成される。複数の転動体37cは、外輪37aの軌道面及び内輪37bの軌道面間に設置され、外輪37a及び内輪37bに保持される。
【0024】
図1及び図2に示すように、ポンプ32は、例えば、下端側に吸込口32a及び吐出口32bを有する。ポンプ32は、吸込口32aが受水槽等の水源に流体的に接続され、吐出口32bが吐出管40に接続される。
【0025】
ポンプ32は、例えば、吸込口32a及び吐出口32bを構成するケーシング32cと、ケーシング32c上に複数配置される中間ケーシングと、中間ケーシング上に配置されるケーシングカバー32dと、複数の中間ケーシング内に配置され、主軸33に固定される複数のインペラと、ケーシングカバー32dに設けられ、複数の中間ケーシングを覆う管ケーシング32eと、を備える。
【0026】
ケーシングカバー32dは、ポンプ32の上面を覆うとともに、例えば、ボルト等の固定部材32fを介してモータ31のモータブラケット39が固定される。具体的には、ケーシングカバー32dは、その上部に、モータブラケット39が載置される。固定部材32fは、例えば、ケーシングカバー32dの上部とモータ31の下部を固定する。
【0027】
管ケーシング32eは、ケーシング32c及びケーシングカバー間に設けられ、内周面と複数のポンプケーシングの外周面との間に、ケーシングカバー32dからケーシング32cの吐出口32bへの流路を構成する。
【0028】
主軸33は、例えば、軸継手33a等を介してモータ31の回転軸36に連結される。
軸封装置34は、ケーシングカバー32d及び主軸33の間を軸封する。軸封装置34は、例えば、メカニカルシールである。
【0029】
図1に示すように、吐出管40は、一端が各ポンプ32の吐出口32bに、他端が連結管70に、それぞれ接続される。吐出管40は、例えば、少なくとも一部が重力方向に沿って延設される。
【0030】
逆止弁50は、ポンプ32の二次側であって、且つ、連結管70の一次側に、例えば、各吐出管40にそれぞれ設けられる。逆止弁50は、吐出管40内でポンプ32へ向かう水の逆流を防止する。
【0031】
開閉弁60は、例えば、吐出管40と連結管70との接続部に隣接する位置に設けられる。開閉弁60は、吐出管40から連結管70に連続する流路を開放または閉止する。
図1及び図2に示すように、連結管70は、複数の吐出管40の他端を連結する。また、連結管70は、給水先に連通する配管が接続される。連結管70は、各吐出管40を通過した水を合流させ、接続された配管に連通する二次側への流路を形成する。
図1に示すように、蓄圧装置90は、接続管80に例えば複数設けられる。蓄圧装置90は、接続管80を介して連結管70に流体的に連続する。
【0032】
流量検出器100は、各ポンプ32の二次側の流量を検出可能に、例えば各吐出管40にそれぞれ設けられる。信号線等を介して制御基板122に電気的に接続される。流量検出器100は、信号を制御基板122に送信する。
【0033】
圧力検出器110は、連結管70に設けられる。圧力検出器110は、連結管70内の圧力を検出可能に構成される。圧力検出器110は、信号線等を介して制御基板122に電気的に接続される。圧力検出器110は、検出した圧力を信号に変換し、信号を制御基板122に送信する。
【0034】
制御装置120は、ボックス121と、ボックス121内に収容される制御基板122と、を備える。制御基板122は、流量検出器100と、圧力検出器110とが、電気的に接続される。制御基板122は、流量検出器100及び圧力検出器110の検出結果に基づいて、ポンプ装置30を制御する。制御基板122は、例えば、複数のポンプ装置30を交互運転制御する。交互運転制御は、複数のポンプ装置30が1台ずつ順番で駆動される制御である。
【0035】
図5に示すように、異常検出装置130は、給水装置10に用いられる回転機械の軸受の振動、もしくは音圧を検出可能に構成される検出器140と、軸受の異常の判断に用いるために、あらかじめ定められた所定周波数帯域や閾値を記憶する記憶部150と、検出器140の検出結果より演算される運転データと記憶部150に記憶された初期データとの比較に基づいて軸受の異常の判断を行う制御部160と、を備える。異常検出装置130は、例えば、回転機械の一例であるポンプ装置30が備えるモータ31の軸受37の異常を検出する。
【0036】
軸受37は、異常が生じると、正常な状態に比較して大きく振動する。軸受37の異常は、例えば、軌道面や転動体37cの傷が生じることや、複数の転動体37cの間に塵埃等の異物が浸入することにより発生する。
【0037】
軸受37は、軌道面や転動体37cの傷が生じることにより、回転軸36の軸方向に直交する方向に、正常な状態に比較して大きく振動する。軸受37は、複数の転動体37cの間に塵埃等の異物が浸入することにより、回転軸36の軸方向に直交する方向に、正常な状態に比較して大きく振動する。軸受37の振動は、軸受37が固定されるモータブラケット39に伝わり、モータブラケット39を振動させる。
【0038】
なお、軸受37の振動は、直接的にまたは間接的に検出可能である。軸受37の振動を直接的に検出するとは、軸受37の例えば外輪37aの振動を検出することである。軸受37の振動を間接的に検出するとは、軸受37の振動が伝播して振動する部材例えばモータブラケット39の振動を検出することである。
【0039】
軸受37の音圧を検出することは、軸受37の振動により生じる空気の振動を直接的または間接的に検出することである。軸受37の振動により生じる空気の振動を間接的に検出するとは、軸受37の振動により生じる他の部材の振動により生じる空気の振動を検出することである。
【0040】
本実施形態では、検出器140は、軸受37の振動が伝播するモータブラケット39の振動による空気の振動を検出することで、軸受37の振動による空気の振動を間接的に検出する構成を、一例として用いる。
【0041】
図3及び図5に示すように、検出器140は、マイクロフォン141と、基板143と、マイクロフォン141及び基板143を収容するケース142と、ケース142に設けられる密閉カバー148と、を備える。検出器140は、検出値を例えばアナログ信号で出力する。
【0042】
マイクロフォン141は、空気の振動を検出可能に構成される。本実施形態では、マイクロフォン141は、一例としてチップとして構成されており、基板143に実装される。マイクロフォン141は、外郭を構成するケースの内部に振動板141a等を有しており、このケースには振動板141aに空気の振動を伝播する為の孔141bが形成される。孔141bは、所謂検出孔である。マイクロフォン141は、この孔141bが基板143側に向く姿勢で、基板143に実装される。マイクロフォン141は、振動板141aの振動により、空気の振動を検出する。マイクロフォンは、検出結果に応じた信号を出力する。
【0043】
基板143は、例えば、電源ノイズ対策の為のコンデンサや、マイクロフォン141の検出結果を増幅する増幅回路が設けられる。基板143は、図3に示すように、信号線143bが接続される。また、基板143は、マイクロフォン141の検出結果に応じた信号を、信号線143bを介して出力する。
【0044】
また、基板143のマイクロフォン141と対向する部位には、孔143aが形成される。孔143aは、基板143を貫通する。孔143aは、マイクロフォン141の孔を介して振動板141aと対向する。マイクロフォン141の孔及び振動板141aは、例えば、孔143aの軸線上に配置される。孔143aは、例えば、基板143のマイクロフォン141が実装される主面と反対側の面からマイクロフォン141が実施される面に向かって縮径する孔に形成される。孔143aのマイクロフォン141側の一端の内径は、マイクロフォン141のケースの、振動板141aに対向する孔と同径または略同径に形成される。
【0045】
ケース142は、例えば取付金具144により、モータブラケット39の外周面に接触する位置に固定される。
【0046】
ケース142は、内部に、マイクロフォン141及び基板143を収容する収容スペースSを有する。ケース142は、例えば、ケース本体146と、ケースカバー147と、を備える。
【0047】
ケース本体146は、ケースカバー147との間に収容スペースSを構成する。ケース本体146は、例えば一面が開口する矩形の箱状に形成される。ケース本体146の内面には、例えば、リブ146aが形成される。リブ146aは、ケースカバー147との間に基板143を狭持することで、基板143をケース142に固定する。
【0048】
ケースカバー147は、ケース本体146の開口端面に設けられる。ケースカバー147は、ケース本体146との間を密閉する。ケースカバー147は、例えば、ねじ等の固定部材147aにより、ケースカバー147に固定される。ケースカバー147には、密閉カバー148の一部を配置する孔147bが形成される。孔147bは、ケースカバー147を貫通しており、収容スペースSに連通する。また、孔147bは、その軸方向で、基板143の孔143aと並ぶ。
【0049】
密閉カバー148は、ケースカバー147に設けられる。密閉カバー148は、モータブラケット39の外周面等の接触対象に密着可能な弾性体から形成される。密閉カバー148は、例えばゴムから形成される。
【0050】
密閉カバー148は、例えば、一部がケースカバー147の孔147bに配置される筒状の本体148aと、本体148aの孔147bからケース142外に出る部分に設けられるフランジ部148bと、を有する。
【0051】
本体148aは、孔147bの内面との間を密閉する。本体148aの基板143側の端面は、基板143の、マイクロフォン141が実装される一方の主面に対して他方の主面に当接する。本体148aは、例えば、円筒状に構成される。本体148aの内径は、基板143側に向かって漸次縮径する。
【0052】
本体148aは、基板143の孔143aと同軸に配置される。本体148aの基板143側の一端の内径は、孔143aの密閉カバー148側の内径と同径または略同径に形成される。このように、本体148aの孔148d、及び基板143の孔143aは、互いに連続する。
【0053】
フランジ部148bは、例えば環状に構成される。フランジ部148bは、ケースカバー147との間を密閉する。
【0054】
本体148a及びフランジ部148bのモータブラケット39側の端面148cは、軸受37または軸受37の振動を受けて振動する部材に密着される面に構成される。本実施形態では、端面148cは、一例として、モータブラケット39の外周面に密着する面に構成される。端面148cは、例えば、モータブラケット39の外周面に押し付けられることでモータブラケット39の外周面に倣って変形してモータブラケット39の外周面に密着する。端面148cは、例えば、モータブラケット39の外周面など、接触対象にならう曲面に形成されてもよい。
【0055】
このように、本実施形態では、孔148d及び孔143aにより、密閉カバー148のモータブラケット39の外周面に密着する端面148cから、ケース142内まで延びる孔が構成される。
【0056】
このように構成される検出器140は、密閉カバー148の端面148cがモータブラケット39の外周面に密着する位置に設置された状態で、モータブラケット39の外周面からマイクロフォン141の振動板141aまでの距離が、マイクロフォン141の最高応答周波数の半波長以下となる長さとなるよう、構成される。
【0057】
このように構成される検出器140は、図2に示すように、例えば、モータブラケット39に、取付金具144により固定される。モータブラケット39は、検出器140が固定されるポンプ32側の軸受37側の一例である。
【0058】
取付金具144は、図3に示すように、モータ31側に固定されることで、検出器140を、孔148d,143aの軸方向が回転軸36に直交する方向に平行となる姿勢で、密閉カバー148の端面148cをモータブラケット39の外周面に密着させる。
【0059】
図3に示すように、取付金具144は、例えば、ポンプ32のケーシングカバー32dをモータ31に固定する固定部材32fにより、ケーシングカバー32dに固定される。ケーシングカバー32dは、モータ31側の一例である。モータ31側は、モータ31に限定されず、モータ31の周囲の構成も含む。
【0060】
取付金具144は、例えば、側面視でL字形状に構成される。具体的には、取付金具144は、第1部分144aと、第2部分144bと、を有する。
【0061】
第1部分144aは、固定部材32fが挿通される孔144cが形成される。第2部分は、検出器140が固定される。検出器140は、例えば、ねじ等の固定部材144dにより固定される。
【0062】
記憶部150は、例えば、制御部160と同じ基板に搭載され、ボックス121内に収容される。制御部160と同じ基板とは、例えば、制御部160が搭載される基板である。記憶部150は、あらかじめ定めた所定周波数帯域や閾値に加えて、軸受37の異常の有無の判断に用いられる値であり、検出器140の検出値をフーリエ変換して得られた振幅スペクトルに基づく初期データ及び運転データを記憶可能に構成される。また、記憶部150は、軸受37の異常を判断する為の情報や値を記憶する。
【0063】
また、記憶部150は、給水装置10の複数のポンプ装置30のそれぞれに対応する複数のデータテーブルを有する。本実施形態では、記憶部150は、3台のポンプ装置30の1台に対応する第1のデータテーブル、他の1台のポンプ装置30に対応する第2のデータテーブル、残りの1台のポンプ装置30に対応するデータテーブルを有する。
【0064】
検出器140の検出結果に基づいて記憶される初期データ及び運転データは、検出器140の検出値をフーリエ変換して得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルを演算して得られる。
【0065】
初期データF及び運転データCは、例えば、検出器140の検出値をフーリエ変換することで得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの累積値である。初期データF及び運転データCは、制御部160により算出されて、制御部160により記憶部150に記憶される。そしてこの初期データF及び運転データCは、検出器140が設けられるポンプ装置30に応じて、第1のデータテーブル、第2のデータテーブル、第3のデータテーブルにひもづけられる。
【0066】
ここでいう、初期データFとは、給水装置10が設置現場に設置された後、モータ31が、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたそれぞれで初期に駆動されたときの、検出器140の検出値をフーリエ変換することで得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの累積値である。ここで言う初期の駆動とは、例えば、給水装置10が設置現場に設置された後の初回の駆動、または、給水装置10が設置された後の初回を含む所定の複数回の駆動である。ここで言う、所定の複数回は、例えば2回や3回であり、任意に決定できる。初期の駆動回数は、初回の1回または所定の複数回を任意に設定できる。
【0067】
例えば、初期の駆動が1回に設定される場合は、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたそれぞれでの初回の駆動時の検出器140の検出値に基づく振幅スペクトルの累積値が初期データFとして記憶部150に記憶される。
【0068】
初期の駆動が複数回例えば3回である場合は、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたそれぞれでの初回の駆動時の検出器140の検出値に基づく振幅スペクトルの累積値、2回目の駆動時の検出器140の検出値に基づく振幅スペクトルの累積値、及び3回目の駆動時の検出器140の検出値に基づく振幅スペクトルの累積値のうち最大値が、初期データFとして記憶される。または、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたそれぞれでの初回の駆動時の検出器140の検出値に基づく振幅スペクトルの累積値、2回目の駆動時の検出器140の検出値に基づく振幅スペクトルの累積値、及び3回目の駆動時の検出器140の検出値に基づく振幅スペクトルの累積値の平均値が、初期データFとして記憶される。
【0069】
運転データCとは、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたそれぞれでのモータ31の初期の駆動以降の駆動、すなわち初期と設定された回数以降のモータ31の駆動時の検出器140の検出値に基づく振幅スペクトルの累積値であり、記憶部150に更新される。例えば、初期として3回が設定されている場合は、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたそれぞれでのモータ31の4回目の駆動時の検出器140の検出値に基づく振幅スペクトルの累積値が運転データCとして記憶され、その後モータ31の5回目の駆動時の検出器140の検出値に基づく振幅スペクトルの累積値が演算されると、運転データCが記憶部150に更新される。
【0070】
なお、ここで言う所定周波数帯域について説明する。所定周波数帯域は、軸受37の異常を検出するに適した周波数帯域である。図7に示すように、軸受37に異常が生じると、モータ31の回転速度に関わらず、検出器140の検出値をフーリエ変換することで得られる振幅スペクトルが、特定の周波数で、軸受37が正常であるときに比較して大きくなる傾向にある。軸受37の異常を検出するに適した周波数帯域とは、上述のように、軸受37に異常が生じることで振幅スペクトルが大きくなる周波数を含む周波数帯域である。所定の周波数帯域は、単数または複数が設定される。なお、所定の周波数帯域の幅は、任意に設定できる。
【0071】
単数すなわち1つの周波数帯域が所定周波数帯域として設定される場合、所定周波数帯域は、本実施形態では、例えば、2500〜3500(Hz)である。
【0072】
複数の所定周波数帯域を設定する場合の一例を説明する。人間の可聴周波数帯域は概ね50〜20kHzとされており、50〜2500Hzの帯域は、人間の会話に使われる帯域のため、人間にとって不愉快な周波数ではない。この為、複数の所定周波数帯域を設定する場合の一例としては、人間にとって不愉快となる周波数帯域を複数の周波数帯域に分け、これら複数の周波数帯域をそれぞれ所定周波数帯域として設定する。具体例としては、2500〜10kHzを複数の周波数帯域に分割して、それぞれの周波数帯域を所定周波数帯域として設定する。なお、これら複数の周波数帯域のそれぞれでは、軸受37に異常が生じることで、いずれかの周波数において、検出器140の検出をフーリエ変換することで得られる振幅スペクトルが大きくなる。
【0073】
また、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分ける一例について説明する。本実施形態では、モータ31の最小回転速度は、例えば64(Hz)であり、最大回転速度は、75(Hz)である。本実施形態では、複数の回転速度範囲として、一例として図6に示すように、回転速度範囲64〜66(Hz)と、回転速度範囲66〜68(Hz)と、回転速度範囲68〜70(Hz)と、回転速度範囲70〜72(Hz)と、回転速度範囲72〜74(Hz)と、回転速度範囲74〜75(Hz)と、が設定される。
【0074】
記憶部150に記憶される、軸受37の異常を判断する為に用いられる情報や値は、軸受37の異常を検出するに適した所定周波数帯域の情報と、軸受37の異常の検出に用いられる初期データFと運転データCの比較用の閾値Tと、給水装置10が備える複数のポンプ装置30の異常を判断する順番を示す情報と、検出器140による検出のタイミングの情報と、検出器140により軸受37の情報を検出する時間間隔の情報と、異常振動カウンタである。
【0075】
軸受37の異常を検出するに適した周波数帯域は、検出器140が設けられるポンプ装置30に応じたデータテーブルにひもづけられる。
【0076】
閾値Tは、軸受37の異常の判断に用いられる。ここで言う、軸受37の異常の状態は、例えば、注意レベルの状態であるプレアラーム状態である。プレアラーム状態は、軸受37の交換を要しない程度の異常の状態である。閾値Tは、軸受37の正常であるときの初期データと、初期データ取得以降の運転データとを比較して、その比率との大小を判定する値である。
【0077】
閾値Tは、例えば、所定周波数帯域と、モータ31の回転速度範囲に応じて設定される。なお、ここで言うモータ31の回転速度は、1秒間当たりのモータ31の回転数である。
【0078】
2500〜3500(Hz)に設定された所定周波数帯域に対しては、例えば、図6に示すように、モータ31の回転速度範囲64〜66(Hz)には、閾値Tは、2が設定される。モータ31の回転速度範囲66〜68(Hz)には、閾値Tは、2が設定される。モータ31の回転速度範囲68〜70(Hz)には、閾値Tは、2が設定される。モータ31の回転速度範囲70〜72(Hz)には、閾値Tは、2が設定される。モータ31の回転速度範囲72〜74(Hz)には、閾値Tは、3が設定される。モータ31の回転速度範囲74〜75(Hz)には、閾値Tは、3が設定される。
【0079】
複数の所定周波数帯域が設定される場合は、閾値Tは、複数の所定周波数帯域ごとに、図6に示すようにモータ31の回転速度範囲のそれぞれに設定される
検出器140により軸受37の情報を検出するタイミングの情報は、例えば、本実施形態では、制御部160は、10秒毎である。検出器140により軸受37の情報を検出する時間間隔の情報は、例えば、3秒間である。すなわち、検出器140は、10秒おきに、3秒間、軸受37の振動を検出する。
【0080】
異常振動カウンタは、制御部160による警報の送信に必要な、異常判断の回数である。本実施形態では、異常振動カウンタは、例えば初期値として3が記憶される。
【0081】
制御部160は、例えばボックス121内に収容される。制御部160は、信号線143bを介して、マイクロフォン141の検出値が送信される。また、制御部160は、制御基板122から、駆動しているポンプ装置30に関する情報を受信する。駆動しているポンプ装置30に関する情報は、駆動しているポンプ装置30を示す号機ナンバー、及び駆動しているポンプ装置30のモータ31の回転速度の情報である。
【0082】
また、制御部160は、検出器140の検出値から初期データF及び運転データCを算出する。例えば、モータ31の初期の駆動時において10秒間隔で検出器140により実施される3秒間の検出値をAD(Analog Digital)変換した後に、フーリエ変換して得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの累積値に基づいて初期データFを求める。モータ31の初期以降の駆動時において、例えば10秒間隔で検出器140により実施される例えば3秒間の検出値をAD変換した後に、フーリエ変換して得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの累積値を運転データCとする。ここで、検出器140により検出が行われる時間間隔を一例として10秒としたが、これは任意に設定できる。検出器140による検出を行う時間を一例として3秒としたが、これは任意に設定できる。
【0083】
さらに具体的には、制御部160は、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までの複数の回転速度範囲のそれぞれでの初期の駆動時すなわち最初もしくは複数回の駆動時の検出器140の検出値をフーリエ変換することで得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの累積値Dを、初期データFとして記憶部150に記憶する。
【0084】
初期データFは、本実施形態では、モータ31の最小回転速度64(Hz)から最大回転速度75(Hz)までの回転速度範囲を、6分割したそれぞれに記憶される。具体的には、図6に示すように、モータ31の64〜66(Hz)の回転速度範囲と、66〜68(Hz)の回転速度範囲と、68〜70(Hz)の回転速度範囲と、70〜72(Hz)の回転速度範囲と、72〜74(Hz)の回転速度範囲と、74〜75(Hz)の回転速度範囲である。図6には、初期データFの一例が示されている。
【0085】
また、制御部160は、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までの上述の複数の回転速度範囲のそれぞれの初期の駆動以降すなわち2回目または複数回目以降の駆動時の検出器140の検出値をフーリエ変換することで得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの累積値Dを、運転データCとして記憶部150に記憶し、更新する。
【0086】
また、制御部160は、初期データFに対する運転データCの比率R(R=C/F)を算出する。そして、制御部160は、比率Rと閾値Tとを比較して、軸受37の異常の有無を判断する。図6には、運転データCの一例が示されている。
【0087】
具体的には、制御部160は、比率Rが閾値T以上であると、軸受37に異常があると判断する。制御部160は、軸受37に異常があると判断すると、警報を外部装置に送信する。ここで言う外部装置は、軸受37に異常が生じていることを、作業者等に報知可能な装置であり、例えば、モニタ、スピーカ等である。これら外部装置は、制御部160から警報を受信すると、表示や音により、周囲に報知する。制御部160は、軸受37の異常を判断すると、警報の送信を継続する。
【0088】
また、制御部160は、軸受37に異常があると判断して警報を外部装置に送信している状態において、外部より警報送信停止の要請を受けると、警報の送信を停止可能に構成される。また、制御部160は、記憶部150に記憶された初期データFを削除可能に構成される。
【0089】
制御部160に、警報送信の停止を要請する信号や、記憶部150に記憶された初期データFの削除を要請する削除信号を送信する為の操作部180が、例えばボックス121内に設けられてもよい。この操作部180は、電気的に制御部160に接続されており、操作されると制御部160に、警報送信の停止を要請する信号や削除信号を送信する。
【0090】
この操作部180は、例えば共通の構成であってもよく、操作に応じて、警報送信停止の信号、または削除信号を送信する。例えば、操作部180が釦である構成では、操作部180の押し込み操作が所定時間以下であると、操作部180は、制御部160に、警報送信の停止要請信号を送信する。操作部180の押し込み操作が所定時間を超えると、操作部180は、制御部160に、削除信号を送信する。なお、警報送信の停止要請の為の操作部、及び記憶部150に記憶された初期データFの削除要請の為の操作部は、異なる構成であってもよい。
【0091】
または、リモコン等の外部装置から送信された、警報送信の停止要請の信号及び削除信号を受信するための受信部が、例えばボックス121内に設けられてもよい。ここで言う受信部は、無線で送信された信号を受信する構成でもよいし、または、外部装置の信号線が接続される接続部であってもよい。制御部160は、操作部または外部装置から、警報送信の停止要請信号を受信すると、警報の送信を停止する。また、制御部160は、操作部または外部装置から、削除信号を受信すると、記憶部150に記憶された初期データFを削除する。制御部160は、記憶部150に記憶された初期データFを削除した後、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたそれぞれにおいて、モータ31の初期と同回数の駆動時に検出器140の検出値をフーリエ変換することで得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルに基づいて初期データFを求めて、記憶部150に記憶する。
【0092】
すなわち、制御部160は、初期データFを削除した後では、給水装置10が設置現場に設置された後モータ31の初期に駆動されたときに初期データFを求めたのと同様に、初期データFを求めて記憶部150に記憶する。
【0093】
次に、検出器140の動作の一例を説明する。
なお、本実施形態では、給水装置10は、複数のポンプ装置30を、交互運転制により駆動する。モータ31の駆動により軸受37が振動すると、軸受37の振動は、モータブラケット39に伝わる。モータブラケット39の振動は、検出器140のケース142の孔148d、及び基板143の孔143a内の空気を振動させる。孔148d,143a内の空気の振動は、マイクロフォン141の振動板141aに伝わる。マイクロフォン141は、振動板141aの振動を検出することで、空気の振動を検出する。検出器140は、検出値を、制御部160に送信する。
【0094】
制御部160は、図8に示すように、制御基板122から駆動しているポンプ装置30に関する情報を受信すると、この情報から駆動しているモータ31を特定し、かつ、モータ31の回転速度を検出する(ステップST1)。
【0095】
次に、制御部160は、異常振動フラグがONであるか否かを判断する(ステップST2)。モータ31の軸受37の異常をすでに判断している場合は、異常振動フラグがONである。制御部160は、異常振動フラグがOFFであると(ステップST2のNO)、記憶部150に初期データFが記憶されているか否かを判断する(ステップST3)。
【0096】
モータ31の最小回転速度から最大回転速度までを複数に分けた回転速度範囲のそれぞれで最初に駆動する場合には記憶部150に初期データFが記憶されていない。制御部160は、記憶部150に初期データFが記憶されていないと判断すると(ステップST3のNO)、検出器140からの信号に基づいて累積値Dを算出して、これを初期データFとして記憶部150に記憶する(ステップST4)。
【0097】
制御部160は、記憶部150に初期データFが記憶されていると判断すると(ステップST3のYES)、検出器140からの信号に基づいて累積値Dを算出して運転データCとして、記憶部150に記憶する(ステップST6)。なお、制御部160は、運転データCがすでに記憶されている場合は、更新する。すなわち、記憶部150には、運転データとして、最新の累積値Dが記憶される。
【0098】
次に、制御部160は、運転データCに対する初期データFの比率R(R=C/F)を算出する(ステップST7)。次に、制御部160は、比率Rを記憶部150に記憶された閾値Tと比較する(ステップST8)。制御部160は、比率Rが閾値T以上であると判断すると(ステップST8のYES)、記憶部150に記憶された異常振動カウンタを−1した値を、新規の異常振動カウンタとして記憶部150に記憶する(ステップST9)。異常振動カウンタは、初期値として例えば3が記憶部150に記憶されている。
【0099】
次に、制御部160は、異常振動カウンタが0であるか否かを判断する(ステップST10)。制御部160は、異常振動カウンタが0であると判断すると(ステップST10のYES)、警報を送信し、異常振動フラグをONする(ステップST11)。異常振動カウンタが0であることは、ステップST8での比率が閾値T以上であるとの判断が、異常振動カウンタの初期値と同回数行われたことを示す。制御部160は、次ぎに、ステップST1に戻る。
【0100】
また、制御部160は、警報を送信している状態において、操作部180が操作されることで警報送信の停止要請の信号を受信すると警報の送信を停止する。また、制御部160は、操作部180が操作されることで、記憶部150に記憶された初期データFの削除信号を受信すると記憶部150に記憶された初期データFを削除する。
【0101】
このように構成される検出器140によれば、給水装置10が設置現場に設置された後、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までの複数の回転速度範囲のそれぞれで初期に駆動されたときの検出器140の検出値をAD変換した後にフーリエ変換して得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの累積値Dを初期データFとして記憶部150に記憶し、次回または複数回目以降の駆動時の累積値Dを運転データCとして記憶部150に記憶し、初期データF及び運転データCより比率Rを算出する。そして、制御部160は、比率Rが閾値T以上であると、軸受37に異常があると判断して警報を送信する。
【0102】
このように、給水装置10が設置現場に設置された状態での検出器140による検出値をフーリエ変換することで得られる所定周波数帯域の振幅スペクトルの累積値Dを算出して初期データF及び運転データCを記憶することで、初期データFを記憶部150に記憶したときの給水装置10の設置条件、及び運転データCを記憶部150に記憶したときの給水装置10の設置条件が同じであるので、軸受37の異常の判断に対する、給水装置10の設置条件の影響が生じない。この為、軸受37の異常判断の精度を向上できる。
【0103】
さらに、初期データF及び運転データCとして、フーリエ変換して得られる周波数と振幅との関係において、軸受37に異常が生じたときに振幅に変化が生じる周波数を含む所定周波数帯域の振幅スペクトルの累積値を用いることで、軸受37の異常の検出の精度を向上できる。
【0104】
すなわち、所定周波数帯域の累積値とすることで、累積値に対する軸受37の異常による振幅の変化の割合が小さくなることを抑制できる。結果、軸受37の異常の検出の精度を向上できる。
【0105】
さらに、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けて、それぞれで初期データF及び運転データCを算出することから、いずれかの回転速度範囲の初期データF及び運転データCがあれば軸受37の異常の判断を行うことが可能となる。結果、軸受37の異常の判断に要する制御部160の計算の工程が多くなることを防止できることから、軸受37の異常の判断の工程が複雑になること防止できる。
【0106】
さらに、記憶部150に記憶された初期データFを削除できることから、例えば、給水装置10のモータ31や軸受37を交換した場合であっても、この交換した後のポンプ装置30の軸受37に応じた初期データF及び運転データCを改めて記憶部150に記憶することが可能となる。
【0107】
さらに、制御部160は、警報送信の停止要請の信号を受信することで警報の送信を停止することから、例えば、警報を受信した後、作業者等が軸受37に異常がないと判断した場合に、警報の送信のみを停止できる。
【0108】
さらに、制御部160は、モータ31の駆動を制御する制御基板122から、駆動しているモータ31の回転速度の情報を受信可能な構成であることで、モータ31の回転速度を得ることが可能となる。
【0109】
さらに、モータ31の回転速度範囲、及び所定の周波数帯域に応じた閾値Tが用いられる。具体的には、モータ31の回転速度範囲が64〜72(Hz)では、閾値Tは、1.4であり、モータ31の回転速度範囲72〜75では、閾値Tは2である。このようにモータ31の回転速度範囲に応じた閾値Tが用いられることで、軸受37の異常判断の精度を向上できる。
【0110】
さらに、制御部160が、給水装置10が備える複数のポンプ装置30のうち一台のモータ31のみが駆動しているときに、当該駆動しているモータ31の軸受37の振動を検出する検出器140の検出値から軸受37の異常を判断する構成であることで、複数の検出器140ごとに制御部160を設ける必要がないので、異常検出装置130の製造コストを低減できる。
【0111】
上述したように、本発明の一実施形態に係る給水装置10によれば、軸受の異常の判断の工程が複雑になること防止し、かつ、回転機械の軸受の異常の検出精度を向上できる異常検出装置を提供できる。
【0112】
なお、本発明は上述した例に限定されない。上述した例では、記憶部150は、一種類のポンプ装置30のモータ31の軸受37に応じた、軸受37の異常の判断に用いる、閾値T、所定の周波数帯域等、初期データF及び運転データCの情報を記憶する構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、記憶部150は、複数種類のモータ等の回転機械の軸受に応じた閾値、軸受の異常の判断に適した周波数帯域等の情報を記憶する構成であり、作業者などは、異常を検出する対象となる回転機械に応じて、記憶部150に記憶された閾値や、軸受の異常の判断に適した周波数帯域や閾値の情報を選択できる。
【0113】
また、上述の例では、検出器140の検出結果をAD変換した後にフーリエ変換して得られる、軸受37の異常の検出に適した単数または複数の所定周波数帯域の振幅スペクトルの累積値Dが初期データF及び運転データCとして用いられる構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、検出器140の検出結果をAD変換した後にフーリエ変換して得らえる単数または複数の所定周波数帯域の振幅スペクトルに基づいて得らえる初期データF及び運転データCの他の例として、検出器140の検出結果をAD変換した後にフーリエ変換した単数または複数の所定周波数帯域内における振幅スペクトルの各最大ピーク値を用いる構成であってもよい。
【0114】
この構成では、制御部160は、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までの複数の回転速度範囲のそれぞれでの1回目の検出器140の検出結果をAD変換した後にフーリエ変換して得られる単数または複数の所定周波数帯域内における振幅スペクトルの各最大ピーク値を、初期データFとして記憶部150に記憶する。そして、制御部160は、モータ31の最小回転速度から最大回転速度までの複数の回転速度範囲のそれぞれでの次回または複数回目の検出器140の検出値をAD変換した後にフーリエ変換して得られる所定周波数帯域内における振幅スペクトルの各最大ピーク値Pを運転データCとして記憶部150に記憶して、初期データF及び運転データCの、それぞれの同じ所定周波数帯域の最大ピーク値P同士を比較する。すなわち、初期データF及び運転データCの最大ピーク値Pの周波数は同じ所定周波数帯域内にあるが、異なった数値であってもよい。そして、所定周波数帯域毎に比較し、いずれかの所定周波数帯域において、初期データFと運転データCの各最大ピーク値P同士の比率Rが閾値T以上であると、軸受37に異常があると判断して警報を送信する。
【0115】
また、上述の例では、比率Rと比較される1個の閾値Tが用いられる構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、異常の程度を複数段階で判断できるよう、複数の閾値が用いられてもよい。この一例としては、図9に示すように、記憶部150は、注意レベルの状態であり軸受37の交換を要しない程度の異常状態であるプレアラーム状態を判断するプレアラーム用閾値T1、及び軸受37の交換を要する異常状態であるアラーム状態を判断するアラーム用閾値T2を記憶してもよい。なお、ここで言うプレアラーム用閾値T1は、上述の閾値Tと同値である。
【0116】
図9は、一例として、所定周波数帯域として2500〜3500(Hz)の周波数帯域に対して設定されたプレアラーム用閾値T1及びアラーム用閾値T2である。具体的には、2500〜3500(Hz)に設定された所定周波数帯域では、モータ31の回転速度範囲64〜66(Hz)には、アラーム用閾値T2は、4が設定される。モータ31の回転速度範囲66〜68(Hz)には、アラーム用閾値T2は、4が設定される。モータ31の回転速度範囲68〜70(Hz)には、アラーム用閾値T2は、4が設定される。モータ31の回転速度範囲70〜72(Hz)には、アラーム用閾値T2は、6が設定される。モータ31の回転速度範囲72〜74(Hz)には、アラーム用閾値T2は、6が設定される。モータ31の回転速度範囲74〜75(Hz)には、アラーム用閾値T2は、6が設定される。なお、1つの閾値Tが用いられる構成の場合の変形例として、プレアラーム用閾値T1に代えて、アラーム用閾値T2が用いられてもよい。
【0117】
制御部160は、比率Rが、プレアラーム状態を判断するプレアラーム用閾値T1以上であって、アラーム状態を判断するアラーム用閾値T2未満であると、軸受37がプレアラーム状態であると判断する。また、制御部160は、比率Rが、異常状態を判断するアラーム用閾値T2以上であると、軸受37がアラーム状態であると判断する。そして、制御部160は、軸受37のプレアラーム状態を判断すると、軸受37がプレアラーム状態であること示す警報を送信し、軸受37のアラーム状態を判断すると、軸受37がアラーム状態であることを示す警報を送信する。
【0118】
このように、軸受37の異常の程度を複数段階で判断できるよう複数の閾値を用いる構成であることで、軸受37の交換を要する状態であるか、または、点検のみでよい状態であるかなど、軸受37に対する作業の重要度を判別できる。
【0119】
また、上述の例では、制御部160は、給水装置10の制御基板122から、駆動しているモータ31の情報受信する構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、制御部160は、検出器140の検出結果をAD変換した後にフーリエ変換することで得られる振幅スペクトルの最大ピーク値の周波数から、モータ31の回転数を検出する構成であってもよい。
【0120】
具体的には、制御部160は、検出器140の検出結果をAD変換した後にフーリエ変換して得られる、回転速度検出用周波数帯域の振幅スペクトルの最大ピーク値の周波数を検出し、この周波数にモータ31に特有の係数を乗算する。この、係数が乗算されて得らえる値が、モータ31の回転速度として取り扱う。
【0121】
回転速度検出用周波数帯域は、回転機械の最小回転速度及び最大回転速度に応じた値である。すなわち、回転速度を係数で除算した値が、フーリエ変換により得られる振幅スペクトルの最大ピーク値の周波数と振動の強さの関係において振動の強さが最大となる周波数となることから、回転速度検出用周波数帯域の最小値は、回転機械の最小回転速度を係数で除算した値以下に設定され、回転速度検出用周波数帯域の最大値は、回転機械の最大回転速度を係数で除算した値以上に設定される。
【0122】
この例を、図10を用いて説明する。図10は、検出器140の検出結果をAD変換した後にフーリエ変換して得られる振幅スペクトルの分布を示すグラフである。図10では、横軸は周波数を示し、縦軸は振幅スペクトル値を示す。図10に示すように、モータ31に設定される回転速度検出用周波数帯域は、一例として0〜1000Hzである。係数は、モータ31に特有の値であり、モータ31では一例として、1/9である。回転速度検出用周波数帯域の情報、及び係数は、記憶部150に記憶されている。
【0123】
制御部160は、1台のポンプ装置30が駆動されて検出器140から信号を受信すると、まず、初期データFまたは運転データCを検出する前に、検出器140からの信号受信開始から所定時間、例えば1秒間の検出器140の検出結果をフーリエ変換することで、回転速度検出用周波数帯域の振幅スペクトルを求める。なお、ここで言う所定時間は、回転速度の検出に必要な、検出器140による検出時間である。モータ31の場合では、図10に示すように、675Hzで振幅スペクトルが最大ピーク値を示す。
制御部160は、675に1/9を乗算することでと、換言すると9で除算することで、モータ31の回転速度75(Hz)を得る。なお、係数は、例えば試験等で得られる。
【0124】
また、上述の異常検出装置130は、軸受37の異常のみを判断する構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、異常検出装置130は、軸受37の異常の判断に加えて、例えば給水装置10の軸封装置34からの漏水を検出する構成であってもよい。例えば、図2に示すように、軸封装置34からの漏水を検出するセンサ170が設けられ、このセンサ170の検出結果が制御部160に送信され、制御部160が漏水を判断する構成であってもよい。このセンサ170は、2つの電極を有する。
【0125】
制御部160は、センサ170の2つの電極の一方に電圧を印可する。軸封装置34からの漏水があると、これら2つの電極が水に浸されることで短絡する。この為、これら2つの電極間の電圧を測定することで、漏水の有無を判断できる。この構成では、制御部160は、制御基板122から受信した駆動しているポンプ装置30の情報に基づいて、駆動しているポンプ装置30の軸封装置34の漏水の有無を判断するようにすれば、効率よく漏水を判断できる。
【0126】
また、上述の例では、検出器140がアナログ信号を出力する構成であることから、制御部160は、検出器140の検出結果をAD変換した後にフーリエ変換する構成が一例として説明されたが、これに限定されない。例えば、検出器140が、デジタル信号を出力する構成である場合は、制御部160は、検出器140の検出結果をAD変換する必要はない。
【0127】
また、上述の例では、制御装置120が交互運転制御により複数のポンプ装置30を駆動する構成が一例として説明されたが、これに限定されない。他の例では、制御装置120は、2台以上のポンプ装置30が同時に駆動する状態を有する並列運転制御により、複数のポンプ装置30を制御してもよい。この場合であっても、異常検出装置130は、一台のポンプ装置30のみが駆動している状態、すなわち一台のモータ31のみが駆動しているときに、軸受37の異常を判断することで、他のモータ31の振動・騒音の影響を受けないため、精度よく、軸受の異常を検出でき、さらに、制御部160を、検出器140ごとに設ける必要がないので、異常検出装置130の製造コストを低減できる。
【0128】
また、上述の例では、閾値Tは、軸受37が正常であるときの初期データFと、長期の運転時間経過後の運転データCとの比率であり、閾値Tが比率R(運転データCを初期データFで除算した値である、運転データC/初期データF)と比較される構成が一例として説明されたが、これに限定されない。
【0129】
他の例では、比率の表現を倍率ではなく、「dB」として、閾値Tは、軸受37が正常あるときの初期データFと、長期の運転時間経過後の運転データCの差であってもよい。この場合では、運転データC及び初期データFの差が、閾値T(dB)と比較され、この差の値が閾値T(dB)以上であると、軸受37に異常があると判断される。特に、音圧の振幅スペクトル値の単位は、dBで表現されるため、閾値TをdB単位の差とした方が、物理的表現としてなじみやすい。
【0130】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
[1]
回転軸及び前記回転軸を支持する軸受を具備する回転機械の前記軸受の振動または音圧を検出する検出器と、
前記検出器の検出値をフーリエ変換して振幅スペクトルを演算し、前記軸受の異常により前記振幅スペクトルが増加する周波数を含む単数または複数の所定周波数帯域の前記振幅スペクトルを記憶可能な記憶部と、
前記回転機械が設置現場に設置された後、前記回転機械の最小回転速度から最大回転速度までを複数の回転速度範囲に分けたそれぞれでの前記回転機械の初期の駆動時の前記検出器の検出値から前記振幅スペクトルを求めて正常な初期データとして前記記憶部に記憶し、前記複数の回転速度範囲のいずれかでの前記回転機械の初期以降の駆動時の前記検出器の検出値から前記振幅スペクトルを求めて運転データとして前記記憶部に記憶し、前記初期データ及び前記運転データを比較して、比率が一定の閾値以上である場合、前記軸受に異常があると判断して警報を送信する制御部と、
を具備する異常検出装置。
[2]
前記初期データ及び前記運転データは、前記検出器の検出値をフーリエ変換して得られる前記単数または複数の所定周波数帯域の前記振幅スペクトルの累積値である、[1]に記載の異常検出装置。
[3]
前記初期データ及び前記運転データは、前記検出器の検出値をフーリエ変換して得られる前記単数または複数の所定周波数帯域内における振幅スペクトルの最大ピーク値である、[1]に記載の異常検出装置。
[4]
前記記憶部は、前記回転機械の回転速度を検出する、回転速度検出用周波数帯域の情報、及び、前記回転機械の回転速度を求める為の係数を記憶し、
前記制御部は、前記検出器の検出値をフーリエ変換することで前記回転速度検出用周波数帯域の前記振幅スペクトルを求め、前記回転速度検出用周波数帯域のうち前記振幅スペクトルの最大ピーク値の周波数を求め、前記最大ピーク値の周波数に前記係数を乗算することで、前記回転機械の回転速度を求める、
[1]に記載の異常検出装置。
[5]
前記制御部は、前記回転機械の駆動を制御する回転機械制御部から前記回転機械の回転速度の情報を受信する、
[1]に記載の異常検出装置。
[6]
前記記憶部は、前記単数または複数の所定周波数帯域と、複数の回転速度範囲のそれぞれに応じた複数の前記閾値を記憶し、
前記制御部は、前記複数の閾値から複数の回転速度範囲と、前記所定周波数帯域に応じた閾値を選択する、
[1]に記載の異常検出装置。
[7]
前記記憶部は、複数種類の回転機械の軸受のそれぞれに応じた複数の前記閾値を記憶し、
前記制御部は、前記複数の閾値から前記軸受に応じた閾値を選択する、
[1]に記載の異常検出装置。
[8]
前記制御部は、警報停止信号を受信すると、警報の送信を停止し、前記記憶部に記憶された前記初期データを削除する信号を受信すると、前記記憶部に記憶された前記初期データを削除し、当該削除後に前記回転機械の前記複数の回転速度範囲のそれぞれでの前記初期と同回数の駆動時の前記検出器の検出値から前記振幅スペクトルを求めて前記初期データとして前記記憶部に記憶する、[1]に記載の異常検出装置。
[9]
前記回転機械は複数台設けられ、
前記制御部は、複数の前記回転機械のうち1台のみが駆動しているときに前記軸受の異常の有無を判断する、[1]に記載の異常検出装置。
【符号の説明】
【0131】
10…給水装置、30…ポンプ装置、31…モータ、32…ポンプ、36…回転軸、37…軸受、37a…外輪、37b…内輪、37c…転動体、130…異常検出装置、140…検出器、150…記憶部、160…制御部、170…センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10