(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記現場重合型樹脂層が、現場重合型フェノキシ樹脂を含む樹脂組成物の重合物から形成されてなる現場重合型熱可塑性フェノキシ樹脂層である、請求項2に記載の複合積層体。
前記熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2又は3に記載の複合積層体。
前記金属材は、その表面に、プラズマ処理、コロナ放電処理、ブラスト処理、研磨処理、レーザー処理、エッチング処理及び化成処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の前処理を施してなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合積層体。
前記現場重合型樹脂層が、現場重合型フェノキシ樹脂を含む樹脂組成物の重合物から形成されてなる現場重合型熱可塑性フェノキシ樹脂層である、請求項11に記載の複合積層体の製造方法。
前記金属材に、プラズマ処理、コロナ放電処理、ブラスト処理、研磨処理、レーザー処理、エッチング処理及び化成処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の前処理を施す、請求項10〜12のいずれか1項に記載の複合積層体の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術では、自動車部品やOA機器等の用途に十分な接合強度が実現できていないという課題があった。
また、特許文献1の技術は、特定の表面粗化を施した金属部材の使用を前提とするものであり、特許文献2の技術は、特定のポリアミド系樹脂部材の使用を前提とするものであり、何れも、汎用性に欠けるという課題もある。
【0006】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、任意の金属と、任意のポリアミド系樹脂を高い強度で接合する用途に好適な複合積層体及びその関連技術を提供することを課題とする。前記関連技術とは、前記複合積層体の製造方法、前記複合積層体を用いた金属―ポリアミド系樹脂接合体及びその製造方法、を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の手段を提供する。
なお、本明細書において、接合とは、物と物を繋合わせることを意味し、接着とはその下位概念であり、テープや接着剤の様な有機材(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等)を介して、2つの被着材(接着しようとするもの)を接合状態とすることを意味する。
【0008】
<複合積層体>
〔1〕 金属材と、前記金属材に積層された1層又は複数層の樹脂層からなる樹脂コーティング層とを有する複合積層体であって、前記樹脂層の少なくとも1層が、前記金属材の上でε−カプロラクタムを開環重合してなるナイロン6を含むナイロン6系樹脂層である、複合積層体。
〔2〕 前記樹脂コーティング層が、更に、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物から形成されてなる熱硬化性樹脂層及び現場重合型樹脂を含む現場重合型樹脂組成物の重合物から形成されてなる現場重合型樹脂層から選ばれる少なくとも1種の樹脂層を含む、〔1〕に記載の複合積層体。
〔3〕 前記現場重合型樹脂層が、現場重合型フェノキシ樹脂を含む樹脂組成物の重合物から形成されてなる現場重合型熱可塑性フェノキシ樹脂層である、〔2〕に記載の複合積層体。
〔4〕 前記熱硬化性樹脂が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である、〔2〕又は〔3〕に記載の複合積層体。
〔5〕 前記金属材と前記樹脂コーティング層との間に、前記金属材と前記樹脂コーティング層に接して積層された官能基含有層を有し、前記官能基含有層が、下記(1)〜(7)からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の複合積層体。
(1)シランカップリング剤由来であって、エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基、及びメルカプト基、からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基
(2)シランカップリング剤由来のアミノ基に、エポキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(3)シランカップリング剤由来のメルカプト基に、エポキシ化合物、アミノ化合物、イソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物、並びに(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(4)シランカップリング剤由来の(メタ)アクリロイル基に、チオール化合物を反応させてなる官能基
(5)シランカップリング剤由来のエポキシ基に、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アミノ化合物、並びにチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(6)イソシアネート化合物由来のイソシアナト基
(7)チオール化合物由来のメルカプト基
〔6〕 前記金属材は、その表面に、プラズマ処理、コロナ放電処理、ブラスト処理、研磨処理、レーザー処理、エッチング処理及び化成処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の前処理を施してなる、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の複合積層体。
〔7〕 前記金属材がアルミニウムである、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の複合積層体。
〔8〕 前記前処理が、プラズマ処理、コロナ放電処理、及びエッチング処理から選ばれる少なくとも1種である、〔7〕に記載の複合積層体。
〔9〕 前記金属材が、鉄、チタン、マグネシウム、ステンレス鋼及び銅からなる群より選ばれる少なくとも1種からなる、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の複合積層体。
【0009】
<複合積層体の製造方法>
〔10〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の複合積層体の製造方法であって、前記金属材の上でε−カプロラクタムを開環重合して前記ナイロン6系樹脂層を形成する、複合積層体の製造方法。
〔11〕 〔2〕〜〔9〕のいずれかに記載の複合積層体の製造方法であって、前記金属材の上に、前記熱硬化性樹脂層及び前記現場重合型樹脂層から選ばれる少なくとも1種の樹脂層を積層し、該樹脂層の上でε−カプロラクタムを開環重合して前記ナイロン6系樹脂層を形成する、複合積層体の製造方法。
〔12〕 前記現場重合型樹脂層が、現場重合型フェノキシ樹脂を含む樹脂組成物の重合物から形成されてなる現場重合型熱可塑性フェノキシ樹脂層である、〔11〕に記載の複合積層体の製造方法。
〔13〕 前記金属材に、プラズマ処理、コロナ放電処理、ブラスト処理、研磨処理、レーザー処理、エッチング処理及び化成処理からなる群より選ばれる少なくとも1種の前処理を施す、〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載の複合積層体の製造方法。
〔14〕 前記金属材の表面に下記(1’)〜(7’)からなる群より選ばれる少なくとも1種の処理を施して前記官能基含有層を形成し、該官能基含有層の上でε−カプロラクタムを開環重合して前記ナイロン6系樹脂層を形成する、〔10〕〜〔13〕のいずれかに記載の複合積層体の製造方法。
(1’) エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有するシランカップリング剤での処理
(2’) アミノ基を有するシランカップリング剤での処理後に、エポキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(3’) メルカプト基を有するシランカップリング剤での処理後に、エポキシ化合物、アミノ化合物、イソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物、並びに(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(4’) (メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤での処理後に、チオール化合物を付加する処理
(5’) エポキシ基を有するシランカップリング剤での処理後に、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アミノ化合物、並びにチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(6’) イソシアネート化合物での処理
(7’) チオール化合物での処理
【0010】
<金属―ポリアミド系樹脂接合体>
〔15〕 〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の複合積層体の前記樹脂コーティング層側の面と、ポリアミド系樹脂とが接合一体化された、金属―ポリアミド系樹脂接合体。
【0011】
<金属―ポリアミド系樹脂接合体の製造方法>
〔16〕 〔15〕に記載の金属―ポリアミド系樹脂接合体を製造する方法であって、前記樹脂コーティング層側の面で、前記ポリアミド系樹脂を射出成形又はプレス成形して、前記ポリアミド系樹脂を前記樹脂コーティング層側の面に接合させる、金属―ポリアミド系樹脂接合体の製造方法。
〔17〕 〔15〕に記載の金属―ポリアミド系樹脂接合体を製造する方法であって、前記樹脂コーティング層側の面に、前記ポリアミド系樹脂を溶着により接合させる、金属―ポリアミド系樹脂接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、任意の金属と、任意のポリアミド系樹脂を高い強度で接合する用途に好適な複合積層体及びその関連技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態における複合積層体及びその関連技術について詳述する。
【0015】
[複合積層体]
図1に示すように、本実施形態の複合積層体1は、金属材2と、前記金属材2に積層された1層又は複数層の樹脂層からなる樹脂コーティング層3とを有する。前記樹脂コーティング層3の少なくとも1層が、前記金属材2の上でε−カプロラクタムを開環重合してなるナイロン6を含むナイロン6系樹脂層31である。
【0016】
<金属材2>
金属材2の金属種は特に限定されるものではない。金属種としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マグネシウム、ステンレス鋼、銅等が挙げられる。これらのうち、軽量性及び加工容易性等の観点から、アルミニウムが特に好適に用いられる。
【0017】
金属材2に樹脂コーティング層3を積層する前に、金属材の表面の汚染物の除去、及び/又は、アンカー効果を目的とした前処理を施すことが好ましい。
【0018】
前処理により、
図1に示すように、金属材2の表面に微細な凹凸21を形成して粗面化させることができる。
前処理により、金属材2の表面と、樹脂コーティング層3との接着性を向上させることができる。また、これらの前処理は、接合対象であるポリアミド系樹脂との接合性の向上にも寄与し得る。
【0019】
前処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、ブラスト処理、研磨処理、レーザー処理、エッチング処理、化成処理等が挙げられる。なかでも、金属材2の表面に水酸基を発生させる表面処理が好ましく、具体的にはプラズマ処理、ブラスト処理、研磨処理、レーザー処理、エッチング処理、化成処理等が好ましい。これらの表面処理は、1種のみであってもよく、2種以上を施してもよい。これらの表面処理の具体的な方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0020】
通常、空気中における金属材2の表面は酸化被膜に覆われ、そこには水酸基が存在すると考えられるが、前記の前処理によって新たに水酸基が生成され、金属材2の表面の水酸基を増やすことができる。
【0021】
プラズマ処理とは、高圧電源とロッドでプラズマビームを作り素材表面にぶつけて分子を励起させて官能状態とするもので、素材表面に水酸基や極性基を付与できる大気圧プラズマ処理方法等が挙げられる。
【0022】
コロナ放電処理とは、高分子フィルムの表面改質に施される方法が挙げられ、電極から放出された電子が高分子表面層の高分子主鎖や側鎖を切断し発生したラジカルを起点に表面に水酸基や極性基を発生させる方法である。
【0023】
前記ブラスト処理としては、例えば、ショットブラストやサンドブラスト等が挙げられる。
【0024】
前記研磨処理としては、例えば、研磨布を用いたバフ研磨や、研磨紙(サンドペーパー)を用いたロール研磨、電解研磨等が挙げられる。
【0025】
前記レーザー処理は、レーザー照射によって表面層のみを急速に加熱後、冷却して,表面の特性を改善するもので、表面の粗面化に有効な方法である。公知のレーザー処理技術を使用することができる。
【0026】
前記エッチング処理としては、例えば、アルカリ法、リン酸−硫酸法、フッ化物法、クロム酸−硫酸法、塩鉄法等の化学的エッチング処理、及び、電解エッチング法等の電気化学的エッチング処理等が挙げられる。
金属材がアルミニウムである場合のエッチング処理は、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いたアルカリ法が好ましく、特に、水酸化ナトリウム水溶液を用いた苛性ソーダ法が好ましい。前記アルカリ法は、例えば、金属材であるアルミニウムを濃度3〜20質量%の水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液に、20〜70℃で1〜15分間浸漬させることにより行うことができる。添加剤として、キレート剤、酸化剤、リン酸塩等を添加してもよい。前記浸漬後、5〜20質量%の硝酸水溶液等で中和(脱スマット)し、水洗及び乾燥を行うことが好ましい。
【0027】
前記化成処理とは、主として金属材の表面に、化成皮膜を形成するものである。
前記化成処理としては、例えば、ベーマイト処理やジルコニウム処理等が挙げられる。
ベーマイト処理では、金属材であるアルミニウムを熱水処理することにより、該基材表面にベーマイト皮膜が形成される。反応促進剤として、アンモニアやトリエタノールアミン等を水に添加してもよい。例えば、金属材であるアルミニウムを、濃度0.1〜5.0質量%でトリエタノールアミンを含む90〜100℃の熱水中に3秒〜5分間浸漬して行うことが好ましい。
ジルコニウム処理では、金属材であるアルミニウムを、例えば、リン酸ジルコニウム等のジルコニウム塩含有液に浸漬することにより、金属材の表面にジルコニウム化合物の皮膜が形成される。例えば、金属材であるアルミニウムを、ジルコニウム処理用の化成剤(例えば、日本パ−カライジング株式会社製「パルコ−ト3762」、同「パルコ−ト3796」等)の45〜70℃の液中に0.5〜3分間浸漬して行うことが好ましい。前記ジルコニウム処理は、前記苛性ソ−ダ法によるエッチング処理後に行うことが好ましい。
【0028】
前記金属材2がアルミニウムである場合は、特に、プラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理及びベーマイト処理から選ばれる少なくとも1種の前処理を含むことが好ましいが、乾式処理となるプラズマ処理やコロナ放電処理がより好ましい。
【0029】
<樹脂コーティング層3>
樹脂コーティング層3は、金属材2の上に積層される。
樹脂コーティング層は、前記の前処理が施されていない金属材2の表面に積層されてもよく、前記の前処理を施した金属材2の表面に積層されてもよい。あるいはまた、後述の官能基含有層4の表面に積層されてもよい。
【0030】
〔ナイロン6系樹脂層31〕
樹脂コーティング層3を構成する樹脂層の少なくとも1層は、前記金属材2の上でε−カプロラクタムを開環重合してなるナイロン6(以下「PA6」と略すことがある。)を含むナイロン6系樹脂層31である。
ここで、前記金属材2の上、とは、前記金属材2の表面に限定されず、後述の官能基含有層4の表面、現場重合型樹脂層32の表面、熱硬化性樹脂層33の表面の何れの場合も含むことを意味する。
【0031】
前記樹脂コーティング層3を、前記ナイロン6系樹脂層31と前記ナイロン6系樹脂層以外の層を含む複数層で構成することもできる。
【0032】
樹脂コーティング層が複数層からなる場合、必須となるナイロン6系樹脂層31が、前記金属材2と反対側の最表面となるように積層することが好ましい。
【0033】
具体的には、複合積層体1が官能基含有層4を有し、かつ、樹脂コーティング層3が単層からなる場合、ε−カプロラクタムの開環重合は、後述の官能基含有層4の表面で行うことが好ましい。また、樹脂コーティング層3が複数層からなる場合、ε−カプロラクタムの開環重合は、樹脂コーティング層3のナイロン6系樹脂層31以外の層の表面で行うことが好ましい。
このような態様で形成された樹脂コーティング層3は、接合対象である任意のポリアミド系樹脂との接着性に優れる。
【0034】
前記ナイロン6系樹脂層31は、ナイロン6を50〜95質量%含むことが好ましく、70〜90質量%含むことがより好ましい。
前記ナイロン6系樹脂層31は、ナイロン6の他に、ωアミノ酸の重縮合反応で合成されるn−ナイロンであるナイロン11、ナイロン12を含んでもよい。
【0035】
〔現場重合型樹脂層32〕
図2に示すように、前記樹脂コーティング層3を、前記ナイロン6系樹脂層31とそれ以外の層との複数層の樹脂層で構成し、ナイロン6系樹脂層31以外の樹脂層の少なくとも1層を、現場重合型樹脂を含む現場重合型樹脂組成物の重合物から形成されてなる層(以下、現場重合型樹脂層32)で構成することができる。
現場重合型樹脂組成物は、現場重合型樹脂を40質量%〜100質量%含むことが好ましく、70質量%〜100質量%含むことがより好ましい。
【0036】
本明細書において、現場重合型樹脂組成物とは、特定の2官能の化合物の組み合わせを、触媒存在下で重付加反応することにより、若しくは、特定の単官能のモノマーのラジカル重合反応により、熱可塑構造、すなわち、リニアポリマー構造を形成する樹脂組成物を意味する。現場重合型樹脂組成物は、架橋構造による3次元ネットワークを構成する熱硬化性樹脂とは異なり、架橋構造による3次元ネットワークを構成せず、熱可塑性を有する。
前記現場重合型樹脂層32は、現場重合によって、すなわち溶剤に溶解した前記現場重合型樹脂組成物を、金属材2又は官能基含有層4の上に塗布し、前記溶剤を揮発させた後、前記現場重合型樹脂組成物を重合させることによって得ることができる。前記現場重合型樹脂層32は、現場重合型フェノキシ樹脂を含む樹脂組成物の重合物から形成されてなる現場重合型熱可塑性フェノキシ樹脂層であることが好ましい。現場重合型フェノキシ樹脂とは、熱可塑エポキシ樹脂や、現場硬化型フェノキシ樹脂、現場硬化型エポキシ樹脂等とも呼ばれる樹脂であり、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とが触媒存在下で重付加反応することにより、熱可塑構造、すなわち、リニアポリマー構造を形成する。現場重合型フェノキシ樹脂は、架橋構造による3次元ネットワークを構成する熱硬化性樹脂とは異なり、熱可塑性を有する樹脂コーティング層を形成することができる。現場重合型フェノキシ樹脂は、このような特徴を有していることにより、現場重合によって、接着性に優れた現場重合型樹脂層32である現場重合型熱可塑性フェノキシ樹脂層を形成することができる。
【0037】
現場重合型樹脂層32を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。
【0038】
現場重合型樹脂を含む樹脂組成物には、前記現場重合型樹脂の重付加反応を十分に進行させるため、溶剤や、必要応じて着色剤等の添加剤を含んでもよい。この場合、溶剤以外の含有成分中、前記現場重合型樹脂が主成分であることが好ましい。前記主成分とは、前記現場重合型樹脂の含有率が50〜100質量%であることを意味する。前記含有率は、好ましくは60質量%〜100質量%、より好ましくは80質量%〜100質量%である。
【0039】
前記現場重合型樹脂を得るための重付加反応性化合物として、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール性化合物との組み合わせが好ましい。
前記2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。具体的には、三菱ケミカル株式会社製「jER(登録商標)828」、同「jER(登録商標)834」、同「jER(登録商標)1001」、同「jER(登録商標)1004」、同「jER(登録商標) YX−4000」等が挙げられる。
前記2官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノール、ビフェノール等が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、これらの組み合わせとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF、ビフェニル型エポキシ樹脂と4,4’−ビフェノール等が挙げられる。また、例えば、ナガセケムテックス株式会社製「WPE190」と「EX−991L」との組み合わせも挙げられる。
【0040】
前記現場重合型樹脂の重付加反応のための触媒としては、例えば、トリエチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン;トリフェニルホスフィン等のリン系化合物等が好適に用いられる。
前記重付加反応は、反応化合物等の種類にもよるが、120〜200℃で、5〜90分間加熱して行うことが好ましい。具体的には、前記樹脂組成物をコーティングした後、適宜溶剤を揮発させ、その後、加熱して重付加反応を行うことにより、現場重合型樹脂層を形成することができる。
【0041】
〔熱硬化性樹脂層33〕
図2に示すように、前記樹脂コーティング層3を、前記ナイロン6系樹脂層31とそれ以外の層との複数層の樹脂層で構成し、そのナイロン6系樹脂層31以外の樹脂層の少なくとも1層を、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から形成されてなる熱硬化性樹脂層33で構成することもできる。
【0042】
前記熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物には、前記熱硬化性樹脂の硬化反応を十分に進行させるため、溶剤や、必要応じて着色剤等の添加剤を含んでもよい。この場合、溶剤以外の含有成分中、前記熱硬化性樹脂が主成分であることが好ましい。前記主成分とは、前記熱硬化性樹脂の含有率が40〜100質量%であることを意味する。前記含有率は、好ましくは60質量%〜100質量%、より好ましくは70質量%〜100質量%、最も好ましくは80質量%〜100質量%である。
【0043】
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0044】
熱硬化性樹脂層33は、これらの樹脂のうちの1種単独で形成されていてもよく、2種以上が混合されて形成されていてもよい。あるいはまた、熱硬化性樹脂層33を複数層で構成し、各層を異なる種類の熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物で形成することもできる。
【0045】
熱硬化性樹脂層33を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。
【0046】
なお、本実施態様で言う熱硬化性樹脂は、広く、架橋硬化する樹脂を意味し、加熱硬化タイプに限られず、常温硬化タイプや光硬化タイプも包含するものとする。前記光硬化タイプは、可視光や紫外線の照射によって短時間での硬化も可能である。前記光硬化タイプを、加熱硬化タイプ及び/又は常温硬化タイプと併用してもよい。前記光硬化タイプとしては、例えば、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)LC−760」、同「リポキシ(登録商標)LC−720」等のビニルエステル樹脂が挙げられる。
【0047】
(ウレタン樹脂)
前記ウレタン樹脂は、通常、イソシアネート化合物のイソシアナト基とポリオール化合物の水酸基との反応によって得られる樹脂であり、ASTM D16において、「ビヒクル不揮発成分10質量%以上のポリイソシアネートを含む塗料」と定義されるものに該当するウレタン樹脂が好ましい。前記ウレタン樹脂は、一液型であっても、二液型であってもよい。
【0048】
一液型ウレタン樹脂としては、例えば、油変性型(不飽和脂肪酸基の酸化重合により硬化するもの)、湿気硬化型(イソシアナト基と空気中の水との反応により硬化するもの)、ブロック型(ブロック剤が加熱により解離し再生したイソシアナト基と水酸基が反応して硬化するもの)、ラッカー型(溶剤が揮発して乾燥することにより硬化するもの)等が挙げられる。これらの中でも、取り扱い容易性等の観点から、湿気硬化型一液ウレタン樹脂が好適に用いられる。具体的には、昭和電工株式会社製「UM−50P」等が挙げられる。
【0049】
二液型ウレタン樹脂としては、例えば、触媒硬化型(イソシアナト基と空気中の水等とが触媒存在下で反応して硬化するもの)、ポリオール硬化型(イソシアナト基とポリオール化合物の水酸基との反応により硬化するもの)等が挙げられる。
【0050】
前記ポリオール硬化型におけるポリオール化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、フェノール樹脂等が挙げられる。
また、前記ポリオール硬化型におけるイソシアナト基を有するイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)又はその混合物、p−フェニレンジシソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やその多核体混合物であるポリメリックMDI等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂環族イソシアネート等が挙げられる。
前記ポリオール硬化型の二液型ウレタン樹脂における前記ポリオール化合物と前記イソシアネート化合物の配合比は、水酸基/イソシアナト基のモル当量比が0.7〜1.5の範囲であることが好ましい。
【0051】
前記二液型ウレタン樹脂において使用されるウレタン化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ジメチルエーテルアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジプロピレン−トリアミン、N−メチルモルフォリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリエチルアミン等のアミン系触媒;ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンジマレート等の有機錫系触媒等が挙げられる。
前記ポリオール硬化型においては、一般に、前記ポリオール化合物100質量部に対して、前記ウレタン化触媒が0.01〜10質量部配合されることが好ましい。
【0052】
(エポキシ樹脂)
前記エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する樹脂である。
前記エポキシ樹脂の硬化前のプレポリマーとしては、例えば、エーテル系ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、エステル系の芳香族エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、エーテル・エステル系エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適に用いられる。これらのうち、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、具体的には、三菱ケミカル株式会社製「jER(登録商標)828」、同「jER(登録商標)1001」等が挙げられる。
ノボラック型エポキシ樹脂としては、具体的には、ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製「D.E.N.(登録商標)438(登録商標)」等が挙げられる。
【0053】
前記エポキシ樹脂に使用される硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物、フェノール樹脂、チオール類、イミダゾール類、カチオン触媒等の公知の硬化剤が挙げられる。前記硬化剤は、長鎖脂肪族アミン又は/及びチオール類との併用により、伸び率が大きく、耐衝撃性に優れるという効果が得られる。
前記チオール類の具体例としては、後述の官能基含有層を形成するためのチオール化合物として例示したものと同じ化合物が挙げられる。これらの中でも、伸び率及び耐衝撃性の観点から、ペンタエリスリトールテトラキス(3−チオールブチレート)(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) PE1」)が好ましい。
【0054】
(ビニルエステル樹脂)
前記ビニルエステル樹脂は、ビニルエステル化合物を重合性モノマー(例えば、スチレン等)に溶解したものである。エポキシ(メタ)アクリレート樹脂とも呼ばれるが、前記ビニルエステル樹脂には、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂も包含するものとする。
前記ビニルエステル樹脂としては、例えば、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1988年発行)、「塗料用語辞典」(色材協会、1993年発行)等に記載されているものも使用することができ、また、具体的には、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)R−802」、同「リポキシ(登録商標)R−804」、同「リポキシ(登録商標)R−806」等が挙げられる。
【0055】
前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば、イソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを反応させた後、水酸基含有(メタ)アクリルモノマー(及び、必要に応じて水酸基含有アリルエーテルモノマー)を反応させて得られるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーが挙げられる。具体的には、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)R−6545」等が挙げられる。
【0056】
前記ビニルエステル樹脂は、有機過酸化物等の触媒存在下での加熱によるラジカル重合で硬化させることができる。
前記有機過酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアリルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、パーオキシジカーボネート類等が挙げられる。これらをコバルト金属塩等と組み合わせることにより、常温での硬化も可能となる。
前記コバルト金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、水酸化コバルト等が挙げられる。これらの中でも、ナフテン酸コバルト又は/及びオクチル酸コバルトが好ましい。
【0057】
(不飽和ポリエステル樹脂)
前記不飽和ポリエステル樹脂は、ポリオール化合物と不飽和多塩基酸(及び、必要に応じて飽和多塩基酸)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)を重合性モノマー(例えば、スチレン等)に溶解したものである。
前記不飽和ポリエステル樹脂としては、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1988年発行)、「塗料用語辞典」(色材協会、1993年発行)等に記載されているものも使用することができ、また、具体的には、昭和電工株式会社製「リゴラック(登録商標)」等が挙げられる。
【0058】
前記不飽和ポリエステル樹脂は、前記ビニルエステル樹脂と同様の触媒存在下での加熱によるラジカル重合で硬化させることができる。
【0059】
〔樹脂コーティング層の作用〕
樹脂コーティング層3は、金属材2の上に優れた接着性で形成される。樹脂コーティング層3により金属材2の表面が保護され、金属材2の表面への汚れの付着や金属材2の表面の酸化等の変質を抑制することもできる。
【0060】
樹脂コーティング層3によって、接合対象であるポリアミド系樹脂6との優れた接合性が金属材2に付与される。
樹脂コーティング層3によって、数ヶ月間の長期にわたって優れた接着性が得られる状態を維持し得る複合積層体1を得ることができる。
【0061】
樹脂コーティング層3は、複合積層体のプライマー層とすることができる。
ここで言うプライマー層とは、例えば、後述の金属―ポリアミド系樹脂接合体5のように、金属材2が接合対象と接合一体化される際に、該金属材と接合対象との間に介在し、金属材の接合対象に対する接着性を向上させる層を意味するものとする。
【0062】
<官能基含有層4>
図3に示すように、前記金属材2と前記樹脂コーティング層3との間に、前記金属材2と前記樹脂コーティング層3に接して積層された一層又は複数層の官能基含有層4を有することもできる。
官能基含有層4を有する場合、該官能基含有層が有する官能基が、前記金属材の表面の水酸基及び前記樹脂コーティング層を構成する樹脂が有する官能基と、それぞれ反応して形成する化学結合により、金属材の表面と、樹脂コーティング層との接着性を向上させる効果が得られる。また、接合対象との接合性を向上させる効果も得られる。
【0063】
《処理》
官能基含有層4は、金属材2の表面に下記(1’)〜(7’)からなる群より選ばれる少なくとも1種の処理を施し、形成したものであることが好ましい。
(1’) エポキシ基、アミノ基、(メタ)アクリロイル基及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を有するシランカップリング剤での処理
(2’) アミノ基を有するシランカップリング剤での処理後に、エポキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(3’) メルカプト基を有するシランカップリング剤での処理後に、エポキシ化合物、アミノ化合物、イソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物、並びに(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(4’) (メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤での処理後に、チオール化合物を付加する処理
(5’) エポキシ基を有するシランカップリング剤での処理後に、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アミノ化合物、並びにチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を付加する処理
(6’) イソシアネート化合物での処理
(7’) チオール化合物での処理
《官能基》
官能基含有層4は、前記処理により導入された官能基を含むことが好ましく、具体的には、下記(1)〜(7)からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基を含むことが好ましい。
(1)シランカップリング剤由来であって、エポキシ基、アミノ基(メタ)アクリロイル基、及びメルカプト基、からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基
(2)シランカップリング剤由来のアミノ基に、エポキシ化合物及びチオール化合物から選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(3)シランカップリング剤由来のメルカプト基に、エポキシ化合物、アミノ化合物、イソシアネート化合物、(メタ)アクリロイル基及びエポキシ基を有する化合物、並びに(メタ)アクリロイル基及びアミノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(4)シランカップリング剤由来の(メタ)アクリロイル基に、チオール化合物を反応させてなる官能基
(5)シランカップリング剤由来のエポキシ基に、アミノ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、アミノ化合物、並びにチオール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を反応させてなる官能基
(6)イソシアネート化合物由来のイソシアナト基
(7)チオール化合物由来のメルカプト基
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」との用語は、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を意味する。同様に、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0064】
金属材に官能基含有層4を形成する前に、金属材の表面に前記の前処理を施すこともできる。
前処理を施すことにより、微細な凹凸によるアンカー効果と、官能基含有層が有する官能基が前記金属材の表面の水酸基及び前記樹脂コーティング層3を構成する樹脂が有する官能基のそれぞれと反応して形成する化学結合との相乗効果によって、金属材の表面と、樹脂コーティング層との接着性、及び、接合対象との接合性を向上させることもできる。
【0065】
前記シランカップリング剤、前記イソシアネート化合物、前記チオール化合物等により、官能基含有層を形成する方法は特に限定されるものではないが、例えば、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。具体的には、金属材を、濃度5〜50質量%のシランカップリング剤等の常温〜100℃の溶液中に1分〜5日間浸漬した後、常温〜100℃で1分〜5時間乾燥させる等の方法により行うことができる。
【0066】
〔シランカップリング剤〕
前記シランカップリング剤としては、例えば、ガラス繊維の表面処理等に用いられる公知のものを使用することができる。シランカップリング剤を加水分解させて生成したシラノール基、又はこれがオリゴマー化したシラノール基が、金属材の表面に存在する水酸基と反応して結合することにより、樹脂コーティング層3と化学結合可能な該シランカップリング剤の構造に基づく官能基を、金属材2に対して付与する(導入する)ことができる。
【0067】
前記シランカップリング剤としては、特に限定されるものではないが、エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては3−チオールプロピルメチルジメトキシシラン、ジチオールトリアジンプルピルトリエトキシシラン等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、その他の有効なシランカップリング剤として3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するシランカップリング剤、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0068】
〔エポキシ化合物〕
上記エポキシ化合物としては、公知のエポキシ化合物等を使用できる。多価エポキシ化合物や、エポキシ基以外にアルケニル基を有する化合物が好ましい。前記エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、末端基がラジカル反応性基である(メタ)アクリロイル基やアリル基とすることができるグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルや、末端基がエポキシ基である1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。また脂環式のエポキシ化合物でもよく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(株式会社ダイセル製 サイクロマーM100)、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(株式会社ダイセル製 セロキサイド2000)、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製 セロキサイド2021P)等が挙げられる。
【0069】
〔チオール化合物〕
前記チオール化合物は、該チオール化合物中のメルカプト基が、金属材2の表面に存在する水酸基と反応して結合することにより、樹脂コーティング層や接合対象と化学結合可能な該チオール化合物の構造に基づく官能基を、金属材に対して付与する(導入する)ことができる。
【0070】
前記チオール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、末端基がメルカプト基となるペンタエリスリト−ルテトラキス(3−チオールプロピオネ−ト)(例えば、三菱化学株式会社製「QX40」、東レ・ファインケミカル株式会社製「QE−340M」)、エーテル系一級チオール(例えば、コグニス(Cognis)社製「カップキュア3−800」)、1,4−ビス(3−チオールブチリルオキシ)ブタン(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) BD1」)、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−チオールブチレート)(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) PE1」)、1,3,5−トリス(3−チオールブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) NR1」)等が挙げられる。
【0071】
〔アミノ化合物〕
上記アミノ化合物としては、公知のアミノ化合物等を使用できる。多官能アミノ化合物や、アミノ基(アミドを含む)以外にアルケニル基を有する化合物が好ましい。前記アミノ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、末端がアミノ基となるエチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、4−アミノメチルオクタメチレンジアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、3,3’−メチルイミノビス(プロピルアミン)、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(3−アミノプロピルオキシ)エタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルノルボルナン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、アミノエチルピペラジン、末端基がラジカル反応性基である(メタ)アクリロイル基とすることができる(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0072】
〔イソシアネート化合物〕
前記イソシアネート化合物は、該イソシアネート化合物中のイソシアナト基が、金属材2の表面に存在する水酸基と反応して結合することにより、樹脂コーティング層3と化学結合可能な該イソシアネート化合物の構造に基づく官能基を、金属材に対して付与する(導入する)ことができる。
【0073】
前記イソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、末端基がイソシアナトとなる多官能イソシアネートであるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の他、末端基がラジカル反応性基である(メタ)アクリロイル基とすることができるイソシアネート化合物である2−イソシアナトエチルメタクリレート(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズMOI(登録商標)」)、2−イソシアネートエチルアクリレート(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズAOI(登録商標)」、同「AOI−VM(登録商標)」)、1,1−(ビスアクリロイルオキシエチル)エチルイソシアネート(例えば、昭和電工株式会社製「カレンズBEI(登録商標)」)等が挙げられる。
【0074】
[金属―ポリアミド系樹脂接合体5]
図4に示すように、本実施形態の金属―ポリアミド系樹脂接合体5は、複合積層体1の樹脂コーティング層3が、上述したように、プライマー層であり、該プライマー層側の面と、ポリアミド系樹脂6とが接合一体化されたものである。
【0075】
前記プライマー層の厚さ(乾燥後の厚さ)は、前記接合対象の材質や接合部分の接触面積にもよるが、前記プライマー層側の面とポリアミド系樹脂との優れた接着性を得る観点、及び異種材間の熱膨張係数の差に起因する前記接合体の熱変形を抑制する観点から、1μm〜10mmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜3mm、さらに好ましくは30μm〜1mmである。なお、前記プライマー層が複数層の場合、プライマー層の厚さ(乾燥後の厚さ)は、各層合計の厚さとする。
【0076】
前記金属―ポリアミド系樹脂接合体におけるポリアミド系樹脂は、脂肪族ポリアミドが好ましく、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)がより好ましく、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)が最も好ましい。
ただし、ポリアミド系樹脂は上記のものに限定されず、任意のポリアミド樹脂を成形加工性、相溶性等の必要特性に応じて共重合/混合物として用いることもできる。
【0077】
前記金属―ポリアミド系樹脂接合体を製造する方法としては、例えば、前記ポリアミド系樹脂6の成形体を成形するのと同時に、複合積層体1と接合一体化させる方法が挙げられる。具体的には、複合積層体1の樹脂コーティング層側の面で、ポリアミド系樹脂6を、例えば、射出成形、プレス成形、トランスファー成形等の方法で成形して、ポリアミド系樹脂6を樹脂コーティング層側の面に接合させることにより、金属―ポリアミド系樹脂接合体を得る方法が挙げられる。
複合積層体1の樹脂コーティング層側の面に、ポリアミド系樹脂6の成形体を溶着により接合させることにより、金属―ポリアミド系樹脂接合体を得ることもできる。
前記溶着の方法としては、例えば、熱風溶着、熱板溶着、高周波溶着、誘導加熱溶着、超音波溶着、振動溶着、スピン溶着等の種々の溶着方法が挙げられる。
【実施例】
【0078】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0079】
下記実施例1−1、実施例2−1、実施例3−1、比較例3−1に記載の各方法で複合積層体1〜4を作製した。下記比較例1−1、比較例2−1に記載の各方法で積層体1、2を作製した。
下記実施例1−2、実施例2−2、実施例3−2に記載の各方法で引張剪断接着強度試験用の金属樹脂接合体1〜3を作製した。
〔接合性評価〕
金属樹脂接合体1〜3について、常温で1日間放置後、ISO19095 1−4に準拠して、引張試験機(株式会社島津製作所製万能試験機オートグラフ「AG−IS」;ロードセル10kN、引張速度10mm/min、温度23℃、50%RH)にて、引張剪断接着強度試験を行い、接着強度を測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0080】
<実施例1−1>
(前処理)
18mm×45mm、厚さ1.5mmのアルミニウム板(A6063)を、濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液中に1.5分間浸漬した後、濃度5質量%の硝酸水溶液で中和し、水洗、乾燥を行うことにより、エッチング処理を行った。
次いで、Plasmatreat社(ドイツ)製 大気圧プラズマ装置を使用し大気圧プラズマ処理を行った。
【0081】
(官能基含有層の形成)
次に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製「KBM−903」;シランカップリング剤)2gを工業用エタノール1000gに溶解させた70℃のシランカップリング剤含有溶液中に、前記大気圧プラズマ処理後のアルミニウム板を20分間浸漬した。該アルミニウム板を取り出して乾燥させ、前記大気圧プラズマ処理後のアルミニウム板の表面(表面処理部)に、官能基含有層を形成した。
【0082】
(樹脂コーティング層の形成)
ε-カプロラクタム10gをアセトン10gに溶解した溶液;A液、6−アミノヘキサン酸2.3gをアセトン8gに混合した液:B液を準備した。
次に、A液とB液を等質量混合したものを前記アルミニウム板の官能基含有層の表面に塗布した。その後、真空乾燥機中において減圧状態かつ常温で30分保持後、真空乾燥機から一旦取り出して再度機内に入れる操作を3回繰り返してアセトンを揮発させ、更に、減圧状態かつ190℃で1時間保持し、前記官能基含有層の表面に、厚さ40μmのPA6コーティング層(金属材の上で開環重合してなるPA6を含む樹脂層からなる樹脂コーティング層)が形成された複合積層体1を作製した。
【0083】
<実施例1−2>
(金属樹脂接合体1)
複合積層体1の樹脂コーティング層側の表面に、30%ガラス強化PA6(DSM社製商品名:ノバミッド1013G30(接合対象))を、射出成形機(住友重機械工業株式会社製「SE100V」;シリンダー温度270℃、ツール温度80℃、インジェクションスピード50mm/sec、ピーク/ホールディング圧力100/100[MPa/MPa])にて射出成形することにより、ISO19095に準拠した引張試験用試験片である金属樹脂接合体1(PA6、10mm×45mm×3mm、接合部長さ5mm)を作製した。
【0084】
<実施例2−1>
(前処理)
実施例1−1と同様の操作を行い、アルミニウム板(18mm×45mm、厚さ1.5mmのA6063)の表面に大気圧プラズマ処理を施した。
【0085】
(官能基含有層の形成)
次に、実施例1−1と同様の操作を行い、前記大気圧プラズマ処理後のアルミニウム板の表面(表面処理部)に官能基含有層を形成した。
【0086】
(樹脂コーティング層_1層目の形成)
前記官能基含有層の表面に、エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製「jER(登録商標)1001」)100g、ビスフェノールA 24g、及びトリエチルアミン0.4gを、アセトン250g中に溶解してなる現場重合型フェノキシ樹脂組成物を、前記アルミニウム板の官能基含有層の表面に、乾燥後の厚さが30μmになるようにスプレー法にて塗布した。空気中に常温で30分間放置することによって溶剤を揮発させた後、150℃の炉中に30分間放置して重付加反応を行い、常温まで放冷して、1層目の樹脂コーティング層(現場重合型熱可塑性フェノキシ樹脂層)を形成した。
【0087】
(樹脂コーティング層_2層目の形成)
次に、ε-カプロラクタム10gをアセトン10gに溶解した溶液;A液、6−アミノヘキサン酸0.6gをアセトン5gに混合した溶液:B液を準備した。
次に、A液とB液を等質量混合したものを前記アルミニウム板の1層目の樹脂コーティング層の表面に塗布し、その後、真空乾燥機中において減圧状態かつ常温で30分間保持後、真空乾燥機から一旦取り出して再度機内に入れる操作を3回繰り返してアセトンを揮発させ、その後、減圧状態かつ190℃で1時間保持し、前記1層目の樹脂コーティング層の表面に、厚さ30μmのPA6コーティング層(金属材の上で開環重合してなるPA6を含む樹脂層からなる樹脂コーティング層)が形成された複合積層体2を作製した。
【0088】
<実施例2−2>
(金属樹脂接合体2)
複合積層体2の樹脂コーティング層側の表面に、30%ガラス強化PA66(DSM社製「ノバミッド3021GH30」(接合対象))を、射出成形機(住友重機械工業株式会社製「SE100V」;シリンダー温度270℃、ツール温度80℃、インジェクションスピード50mm/sec、ピーク/ホールディング圧力100/100[MPa/MPa])にて射出成形することにより、ISO19095に準拠した引張試験用試験片である金属樹脂接合体2(PA66、10mm×45mm×3mm、接合部長さ5mm)を作製した。
【0089】
<実施例3−1>
(前処理)
18mm×45mm、厚さ1.5mmのアルミニウム板(A6063)の表面を#100サンドペーパーで研磨後に、アセトンで洗浄及び脱脂した。
【0090】
(官能基含有層の形成)
次に、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製「KBM−503」;シランカップリング剤)0.5gを工業用エタノール100gに溶解せしめてなるシランカップリング剤溶液をスプレーで塗布し、室温で乾燥後120℃20分間保持した。
そしてさらに2官能チオール化合物1,4ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標)BD1」):0.6g、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30):0.05gをトルエン150g中に溶解した溶液をスプレーで塗布し、室温で乾燥後、120℃で20分間保持し、化学結合可能な官能基を三次元方向に延ばした。
【0091】
(樹脂コーティング層の形成)
次に、現場重合型PA6として、ナガセケムテクス社製「GAP−1R/GAP−1DA」を前記アルミニウム板の官能基含有層の表面に塗布した。その後、真空乾燥機中において、減圧状態かつ190℃で1時間保持し、前記官能基含有層の表面に、厚さ40μmのPA6コーティング層(金属材の上で開環重合してなるPA6を含む樹脂層からなる樹脂コーティング層)が形成された複合積層体3を作製した。
【0092】
<実施例3−2>
(金属樹脂接合体3)
複合積層体3を用いて実施例1-2と同様の操作を行い、引張試験用試験片である金属樹脂接合体3(PA6、10mm×45mm×3mm、接合部長さ5mm)を作製した。
【0093】
<実施例4−1>
実施例1−1と同様にして、複合積層体4を作製した。
<実施例4−2>
(金属樹脂接合体4)
長繊維CF強化6ナイロン:東レ株式会社製「TLP1040」(炭素繊維20%)を使用し射出成形で、10mm×45mm×3mmのCFRTP1を得た。
複合積層体4のプライマー面と前記CFRTP1の接合面積が10mm×5mmになるように重ね合わせ、クリップで押さえた状態で180℃乾燥機中に5分間保持して溶着し、ISO19095に準拠した引張試験用試験片である金属樹脂接合体4(CFRTP、10mm×45mm×3mm、接合部長さ5mm)を作製した。
【0094】
<比較例1−1>
(前処理)
実施例1−1と同様の操作を行い、アルミニウム板(18mm×45mm、厚さ1.5mmのA6063)の表面に大気圧プラズマ処理を施した。
【0095】
(官能基含有層の形成)
次に、実施例1−1と同様の操作を行い、前記大気圧プラズマ処理後のアルミニウム板の表面(表面処理部)に官能基含有層が形成された積層体1を作製した。
【0096】
<比較例1−2>
積層体1の官能基含有層側の表面に、実施例1−2と同様に、30%ガラス強化PA6の射出成形を行って引張試験用試験片の作製を試みたが、成形できなかった。
【0097】
<比較例2−1>
(前処理)
実施例1−1と同様の操作を行い、アルミニウム板(18mm×45mm、厚さ1.5mmのA6063)の表面に大気圧プラズマ処理を施した。
【0098】
(官能基含有層の形成)
次に、実施例3−1と同様の操作を行い、前記大気圧プラズマ処理後のアルミニウム板の表面(表面処理部)に官能基含有層が形成された積層体2を作製した。
【0099】
<比較例2−2>
積層体2の官能基含有層側の表面に、実施例2−2と同様に、30%ガラス強化PA66の射出成形を行って引張試験用試験片の作製を試みたが、成形できなかった。
【0100】
<比較例3−1>
(前処理)
実施例1−1と同様の操作を行い、アルミニウム板(18mm×45mm、厚さ1.5mmのA6063)の表面に大気圧プラズマ処理を施した。
【0101】
(官能基含有層の形成)
次に、実施例3−1と同様の操作を行い、前記大気圧プラズマ処理後のアルミニウム板の表面(表面処理部)に官能基含有層を形成した。
【0102】
(樹脂コーティング層の形成)
DSM社製ナイロン6(商品名:Akulon(登録商標)ポリアミド6)を前記アルミ板の官能基含有層の表面に置き、250℃で溶融して80μmの厚さに延ばした後、室温に戻して、厚さ80μmのPA6コーティング層が形成された複合積層体4を作製した。
【0103】
<比較例3−2>
複合積層体4のPA6コーティング層側の表面に、実施例2−2と同様に、30%ガラス強化PA66の射出成形を行って引張試験用試験片の作製を試みたが、PA6樹脂コーティング層ごと剥離し、引張試験用試験片の作製はできなかった。
【0104】
【表1】
【0105】
表1の実施例に示すように、金属材の上で開環重合してなるナイロン6系樹脂層を含む樹脂コーティング層を有する複合積層体を用いることで、金属とポリアミド系樹脂を高い強度で接合することができる。