(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁ボディは、ノズルボディ(11)と、インジェクタボディ(16)と、前記ノズルボディと前記インジェクタボディとの間に介装されているプレート(12)と、前記ノズルボディと前記プレートとを前記インジェクタボディに締結している締結部材(13)とを有し、
前記ストッパは、前記インジェクタボディの前記閉方向の端面に、又はそれよりも閉方向に設けられている、
請求項1に記載の燃料噴射装置。
前記制御弁は、制御弁本体(65)と、前記規制部を備えると共に、前記ストッパに対する前記規制部の角度が変更自在になるように、前記制御弁本体に対して回動自在に係合している回動部材(55)とを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
前記制御弁は、制御弁本体(65)と、前記排出ポートの開口を塞ぐシール面(51)を備えると共に、前記排出ポートの開口に対する前記シール面の角度が変更自在になるように、前記制御弁本体に対して回動自在に外嵌されている回動部材(55)とを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
前記制御弁本体の前記閉方向の端部に球状部(64)が設けられ、前記球状部に前記回動部材が前記回動自在に外嵌されている、請求項4〜6のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
前記回動部材は、前記開閉方向の側方に貫通すると共に前記開方向に開口している係合穴(56)を備え、前記係合穴は、前記球状部を前記側方から挿入可能に構成されており、前記係合穴に前記球状部が挿入されることにより、前記制御弁本体に前記回動部材が前記回動自在に係合している、請求項7に記載の燃料噴射装置。
前記係合穴の内周面及び前記球状部の外周面の少なくともいずれか一方に、1以上の凸部(56a)又は凹部(64a)を有する、請求項8又は9に記載の燃料噴射装置。
前記制御弁には、前記制御弁の前記開閉方向への熱膨張を抑制するための熱歪み抑制用構造(80)が設けられており、前記熱歪み抑制用構造は、前記制御弁における伝熱に影響を及ぼすことにより、前記熱歪み抑制用構造が無い場合に比べて前記熱膨張を抑制する、請求項14に記載の燃料噴射装置。
前記熱歪み抑制用構造は、前記制御弁における前記開閉方向の中間部の所定部位に設けられている括れ状の、前記制御弁における前記所定部位よりも前記閉方向側で受熱された熱を前記制御弁における前記所定部位よりも前記開方向側に伝熱され難くするための伝熱抑制用括れ部(81)を含む、請求項15又は16に記載の燃料噴射装置。
前記熱歪み抑制用構造は、前記制御弁の外周面に設けられている、前記制御弁の表面積を大きくして前記制御弁からその外部への放熱を促進するための複数の放熱用凸部(82)及び複数の放熱用凹部(83)のうちの少なくともいずれか一方を含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
前記熱歪み抑制用構造は、前記制御弁の外周面に設けられている、前記弁ボディに摺接して前記制御弁から前記弁ボディへの放熱を促進するための放熱用摺接部(85)を含む、請求項15〜18のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
前記熱歪み抑制用構造は、前記制御弁における前記開閉方向の中央部(Cv)よりも前記閉方向側に設けられている、請求項15〜19のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
前記圧力室から前記排出ポートを通じて前記圧力室の外部に排出された燃料は、前記制御弁と前記弁ボディとの隙間を通じて、前記燃料噴射装置の外部に排出される、請求項15〜20のいずれか1項に記載の燃料噴射装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0018】
[第1実施形態]
図1(a)は、第1実施形態の燃料噴射装置91を示す正面断面図である。以下では、図に合わせて、燃料噴射装置91の長手方向の一方を「上」といい、他方を「下」というが、燃料噴射装置91は、その長手方向を鉛直方向に対して斜めにして設置したり、その長手方向を水平方向にして設置したりする等、その長手方向を任意の方向にして設置することができる。本実施形態でいう「上」は、本発明でいう「開方向」に相当し、本実施形態でいう「下」は、本発明でいう「閉方向」に相当する。
【0019】
燃料噴射装置91は、弁ボディ10とニードル弁30と制御弁60とアクチュエータ70とを有する。弁ボディ10は、下から順にノズルボディ11とプレート12とインジェクタボディ16とを有する。そして、ノズルボディ11及びプレート12は、締結部材13によりインジェクタボディ16の下部に締結されている。締結部材13は、ノズルボディ11及びプレート12を内側に保持した状態で、インジェクタボディ16の下部に螺着されるリテーニングナットである。ノズルボディ11の下端部には、噴孔22が設けられている。
【0020】
ノズルボディ11は、上方に開口した筒状体であって、下端部には噴孔22が設けられている。ニードル弁30は、ノズルボディ11の内側に上下に摺動自在に挿入されている。ニードル弁30は、上方に摺動すると噴孔22を開弁し、下方に摺動すると噴孔22を閉弁する。
【0021】
弁ボディ10には、噴孔22に高圧燃料を供給するための高圧通路21が設けられている。詳しくは、インジェクタボディ16及びプレート12には、高圧燃料を構成する穴が設けられている。また、ノズルボディ11の内周面とニードル弁30の外周面との間の隙間も、高圧通路21の一部を構成している。ニードル弁30の外周面における、ノズルボディ11の内周面にあるガイド32に摺接する高さ部分には、高圧通路21を確保するための複数のカット部31が、周方向に間隔をおいて設けられている。
【0022】
ニードル弁30の上方には、圧力室36が設けられている。詳しくは、ニードル弁30の上方には、シリンダ34が外嵌されている。そして、シリンダ34とニードル弁30との間には、ニードル弁30を下方に押圧すると共に、その反力でシリンダ34を上方に押圧してプレート12の下面に付勢するニードル弁スプリング33が設置されている。そして、ニードル弁30の上面とシリンダ34の内周面とプレート12の下面とに囲まれた領域が、圧力室36になっている。圧力室36は、内部の燃料圧力が上がるとニードル弁20を下降させて噴孔22を閉じ、内部の燃料圧力が下がるとニードル弁20を上昇させて噴孔22を開く。
【0023】
シリンダ34の外径は、ノズルボディ11の内径よりも若干小さくなっており、シリンダ34の外周面とノズルボディ11の内周面との間の隙間は、高圧通路21の一部を構成している。プレート12には、圧力室36内に燃料を供給するための供給ポート35と、圧力室36内の燃料を排出するための排出ポート37とが設けられている。供給ポート35には、インオリフィス35aが設けられ、排出ポート37には、アウトオリフィス37aが設けられている。
【0024】
制御弁60は、インジェクタボディ16の内側に、上下方向に往復動自在に設置されている。制御弁60は、制御弁本体65と、その下端部に取り付けられた回動部材55とを有する。制御弁60は、上昇することにより排出ポート37の上側開口を開弁し、下降することにより排出ポート37の上側開口を閉弁する。制御弁60は、ニードル弁20よりも上下方向に長い。制御弁60上端及びアクチュエータ70は、弁ボディ10の上下方向の中央線Cよりも上方に配置されている。中央線Cは、ノズルボディ11の下端からインジェクタボディ16の上端にまで延びる上下方向の線分の二等分線である。
【0025】
制御弁本体65は、上下方向に長いシャフト部65aと、シャフト部65aの上部から側方に広がる被駆動部65bとを有する。少なくとも被駆動部65bは、磁性体で構成されている。詳しくは、弁ボディ10は、その上部に上方に開口した格納凹部16bが設けられると共に、格納凹部16bの底面からインジェクタボディ16の下端面にまで貫通した貫通穴16aが設けられている。格納凹部16bには、上下方向に貫通する保持穴45aを備えた保持部材45が設置されている。制御弁60は、シャフト部65aが保持穴45a及び貫通穴16aに挿入されると共に、被駆動部65bが格納凹部16bに格納されている。シャフト部65aの上部は、保持穴45aの内周面に摺接している。
【0026】
弁ボディ10には、排出ポート37から排出された燃料をタンク等に戻すための低圧通路39が設けられている。詳しくは、貫通穴16aの内周面とシャフト部65aとの間には、隙間が形成されており、この隙間が低圧通路39の一部を構成している。また、インジェクタボディ16の上部には、格納凹部16bに連通する連通穴16cが設けられており、この連通穴16cも低圧通路39の一部を構成している。
【0027】
アクチュエータ70は、制御弁60よりも上方に設置されている。詳しくは、インジェクタボディ16の上端部には、締結部材17が締結されている。その締結部材17により、アクチュエータ70がインジェクタボディ16の上部に保持されている。
【0028】
アクチュエータ70は、アクチュエータボディ71と、円筒部材73と、制御弁スプリング75と、ソレノイド77とを有する。アクチュエータボディ71は、複数の部材71a,71b,71cからなり、軸心部には取付穴72が設けられている。その取付穴72に、円筒部材73が取り付けられている。
【0029】
制御弁スプリング75は、円筒部材73の内側に設置されており、制御弁60を下方に押圧している。ソレノイド77は、円筒部材73の周囲に設けられており、通電されると、磁力により被駆動部65bを引き寄せることにより、制御弁60を上昇させて、排出ポート37の上側開口を開弁する。他方、通電が解除されると、その引き寄せを解除することにより、排出ポート37の上側開口を閉弁する。
【0030】
図1(b)は、制御弁60の下部等を示す拡大図である。制御弁本体65の下端部には、球状部64が設けられている。回動部材55には、側方に貫通すると共に上方に開口した係合穴56が設けられている。その係合穴56に、球状部64が圧入されることにより、制御弁本体65の下端部に回動部材55が回動自在に係合している。係合穴56の内周面には、3つ以上の凸部56aが周方向に間隔をおいて設けられている。係合穴56の貫通方向にみた正面視で、凸部56aの先端面の曲率半径は、球状部64の外周面の曲率半径と略等しい。制御弁本体65における球状部64よりも上方部分と係合穴56の内側面との間には、制御弁本体65に対する回動部材55の回動を許容するための隙間が設けられている。
【0031】
プレート12の上面には、プレート凹部12aが設けられている。そのプレート凹部12aの底面の中央部に、排出ポート37の上側開口が設けられている。そのプレート凹部12a内に、回動部材55及び制御弁本体65の下端部が格納されている。貫通穴16aの下端部には、その上方部分よりも内径が小さくなった絞り部15aが設けられている。絞り部15aの内径は、球状部64の外径よりも大きく、かつ、回動部材55の外径よりも小さい。そのため、球状部64に回動部材55を係合させる前の状態では、球状部64を絞り部15aの内側に通すことができる。他方、球状部64に回動部材55を取り付けた状態では、次の通りとなる。
【0032】
制御弁60が上昇する開弁時には、回動部材55の上面が、インジェクタボディ16の下端面における絞り部15aの下側開口周辺部に当接することにより、制御弁60の最大リフト量が規制される。よって、インジェクタボディ16の下端面における絞り部15aの下側開口周辺部は、ストッパ15を構成し、回動部材55の上端面における縁側部分は、ストッパ15に当接する規制部59を構成する。本実施形態では、ストッパ15及び規制部59は、上下方向に対して直角をなす面である。制御弁60が上昇する開弁時には、上方に開口した係合穴56における制御弁本体65の側方部分により、低圧通路39が確保される。
【0033】
ストッパ15は、制御弁60が下降している閉弁時の状態では、制御弁60とアクチュエータ70との上下間隔以下の所定間隔だけ、規制部59から上方に離間して、規制部59に対向する。また、閉弁時には、回動部材55の下端面の中央部が、排出ポート37の上側開口を覆うと共に、プレート凹部12aの底面における排出ポート37の上側開口周辺部に当接することにより、排出ポート37の上側開口を塞ぐ。よって、回動部材55の下端面の中央部は、排出ポート37の上側開口を塞ぐシール面51を構成する。
【0034】
制御弁60の下部には、制御弁60の上下方向への熱膨張を抑制するための熱歪み抑制用構造80が設けられている。熱歪み抑制用構造80は、制御弁60における伝熱に影響を及ぼすことにより、熱歪み抑制用構造80が無い場合に比べて、制御弁60の上下方向への熱膨張を抑制する。
【0035】
詳しくは、熱歪み抑制用構造80は、本実施形態では、制御弁本体65の下部における回動部材55よりも上方部分にある伝熱抑制用括れ部81により構成されている。制御弁60において伝熱抑制用括れ部81は、その周辺部分よりも、水平方向に切った断面の断面積が小さい括れ状になっている。伝熱抑制用括れ部81は、制御弁60における自身よりも下側部分で受熱された熱を、制御弁60における自身よりも上側部分に伝熱され難くするための部位である。
【0036】
伝熱抑制用括れ部81は、制御弁60の上下方向の中央線Cvよりも下方に設けられている。その中央線Cvは、制御弁60の下端から上端にまで延びる上下方向の線分の二等分線である。
【0037】
図2(a)は、回動部材55の平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のIIb−IIb線の断面を示す断面図であり、
図2(c)は、回動部材55の底面図である。上記のとおり、係合穴56は、上下方向の側方(前後方向)に貫通している。そのため、制御弁本体65に回動部材55を係合させる際には、球状部64を側方から係合穴56に挿入することができる。詳しくは、回動部材55は、係合穴56に球状部64を挿入する前の状態では、係合穴56の貫通方向にみた正面視で、全ての凸部56aの先端を通る仮想円の径が、球状部64の径よりも若干小さい。そのため、係合穴56に球状部64を圧入することがきる。
【0038】
図3(a)は、制御弁60の上昇途中を示す正面断面図であり、
図3(b)は、制御弁60が最大限上昇した際を示す正面断面図である。回動部材55の回動により、ストッパ15に対する規制部59の角度が変更自在になる。そのため、制御弁60が最大限上昇した際には、規制部59はストッパ15に倣ってそのストッパ15と略平行に当接する。また、回動部材55の回動により、排出ポート37の上側開口に対するシール面51の角度が変更自在になる。そのため、制御弁60が最大限下降した際には、シール面51はプレート凹部12aの底面に倣ってその底面と略平行に当接する。
【0039】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。クランプにより制御弁60の最大リフト量が低下するといった課題は、上記のとおり、クランプによっても制御弁60は下方に圧縮されない一方、弁ボディ10における制御弁60の下端からストッパ15までの長さ区間は下方に圧縮されることにより生じる。
【0040】
その点、本実施形態によれば、ストッパ15はアクチュエータ70よりも下方に位置する。そのため、アクチュエータ70にストッパ15を設ける場合に比べて、制御弁60の下端からストッパ15までの長さ区間が短くなる。そのため、その長さ区間のクランプによる圧縮量も小さくなり、クランプによる制御弁60の最大リフトの低下を抑制できる。
【0041】
特に、本実施形態では、ストッパ15がインジェクタボディ16の下端にあるため、この点により、上記の最大リフト量の低下抑制効果をより向上させることができる。以下にその理由を説明する。プレート12とノズルボディ11とは、締結部材13による締結力によりインジェクタボディ16に押し付けられているため、クランプ前に既に締結部材13による締結力により上下方向に圧縮されている。そのため、クランプによりプレート12やノズルボディ11にクランプ荷重が加わっても、そのクランプ荷重が締結部材13による締結力の一部を肩代わりすることになり、クランプ荷重が加わった分だけ締結部材13による締結力が軽減される。そのため、プレート12やノズルボディ11は、クランプ荷重により新たに圧縮され難い。よって、弁ボディ10におけるインジェクタボディ16の下端以下の領域は、クランプ荷重が加わっても下方に圧縮され難い。その領域内であるインジェクタボディ16の下端に、ストッパ15があるので、この点により、上記のとおり、最大リフト量の低下抑制効果をより向上させることができる。
【0042】
ストッパ15及び規制部59を上下方向に対して直角をなす面にすることにより、シンプルな構成で、制御弁60の最大リフト量を規制することができる。また、規制部59を備える回動部材55が、制御弁本体65に対して回動自在に取り付けられているため、ストッパ15に対する規制部59の角度が変更自在になる。そのため、生産時における規制部59とストッパ15との平行度、すなわち、制御弁60とストッパ15との直角度の角度精度の確保が不要になり、生産性が向上する。また、球状部64に回動部材55を外嵌することにより、シンプルに、制御弁本体65に対して回動部材55を回動自在に係合させることができる。
【0043】
圧入により、球状部64の外周面と係合穴56の内周面との間の隙間をなくすことができ、ガタがなくなる。そのため、制御弁60の閉弁タイミングのばらつき要因を減少させることができ、それにより噴射精度を向上させることができる。また、係合穴56の内周面に凸部56aを設けることにより、係合穴56の内周面と球状部64との接触面積を減らして圧入荷重を低減できる。そのため、回動部材55の回動時における係合穴56の内周面と球状部64との間の摩擦を低下させることができ、より小さなトルクでも回動部材55を回動させることができる。また、その回動時の摩擦の低減により、回転起因の摩耗を抑制することもできる。また、圧入荷重の低減により、圧入によるバリの発生とその剥落による異物の発生を抑制できる。また、球状部64を側方から係合穴56に挿入可能に構成されているので、球状部64を上方から係合穴56に圧入する場合に比べて、圧入荷重を低減できる。
【0044】
回動部材55にシール面51を設けることで、弁体を別途設ける必要性をなくして、部品点数を低減できる。また、回動部材55は、制御弁本体65に対して回動自在に係合しているため、排出ポート37の上側開口に対するシール面51の角度が変更自在になる。そのため、生産時におけるシール面51と排出ポート37の上側開口周辺部との平行度、すなわち、制御弁60と排出ポート37の上側開口周辺部との直角度の角度精度の確保が不要になり、生産性が向上する。また、貫通穴16aの下端部に絞り部15aを設けることにより、回動部材55の外径を、貫通穴16aの下側開口(すなわち絞り部15aの下側開口)の内径よりも大きくし易くなる。そのため、回動部材55の外径を抑えることができる。
【0045】
また、次に示す効果も得られる。制御弁60が上下方向に熱膨張すると、その熱膨張により制御弁60とアクチュエータ70との間隔が縮小してしまう。そのため、その熱膨張によっても、制御弁60とアクチュエータ70とが開弁時に当接しないだけの間隔を、制御弁60とアクチュエータ70との間に設ける必要がある。そして、このように、制御弁60とアクチュエータ70との間隔を大きくした場合、アクチュエータ70による制御弁60の引寄せ力の低下に繋がる。
【0046】
その点、ここでは、制御弁60に、伝熱抑制用括れ部81からなる、制御弁60の熱膨張を抑制するための熱歪み抑制用構造80が設けられている。そのため、この熱歪み抑制用構造80が無い場合に比べて、制御弁60が熱膨張するのが抑制される。そのため、その熱膨張により制御弁60とアクチュエータ70との間隔が縮小するのが抑制される。そのため、制御弁60とアクチュエータ70との間隔を、熱歪み抑制用構造80が無い場合に比べて小さく設定できる。そのため、アクチュエータ70による制御弁60の引寄せ力を確保し易くなる。
【0047】
その熱歪み抑制用構造80は、制御弁60における上下方向の中央線Cvよりも下方に、具体的には制御弁60の下部に設けられている。そのため、熱歪み抑制用構造80が中央線Cvよりも上方に設けられている場合等に比べて、制御弁60における、熱歪み抑制用構造80よりも上側部分が大きくなる。そのため、制御弁60における、熱歪み抑制用構造80よりも下側部分で受熱された熱が伝わり難くなる範囲が大きくなり、制御弁60の熱膨張を効率的に抑制することができる。
【0048】
また、燃料は、制御弁60と弁ボディ10との隙間を通じて、燃料噴射装置91の外部に排出されるので、その燃料によって制御弁60を冷却することができる。そのため、これによっても、制御弁60の熱膨張を抑制することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。以下の実施形態では、それ以前の実施形態のものと同一の又は対応する部材等は、同一の符号を付する。ただし、燃料噴射装置91〜102については、実施形態毎に異なる符号を付する。以下の実施形態については、特に断りのない限り、第1実施形態と異なる点のみを説明する。
【0050】
図4は、第2実施形態の燃料噴射装置92の制御弁60を示す正面断面図である。回動部材55の係合穴56の内周面には、凸部56aが設けられておらず、代わりに、球状部64の外周面に、複数の凹部64aが設けられている。球状部64における凹部64aがない部分の外径は、係合穴56の内径よりも若干大きい。
【0051】
本実施形態によれば、球状部64の外周面に凹部64aを設けることにより、係合穴56の内周面と球状部64との接触面積を減らして圧入荷重を低減できる。そのため、回動部材55の回動時における係合穴56の内周面と球状部64との間の摩擦を低下させることができる。
【0052】
[第3実施形態]
図5は、本実施形態の燃料噴射装置93の制御弁60の下部を示す正面断面図である。本実施形態については、第2実施形態と異なる点のみを説明する。球状部64の外周面には、凹部64aが設けられていない。本実施形態によれば、圧入荷重は大きくなるが、シンプルな構成により、制御弁本体65に回動部材55を回動自在に係合させることができる。
【0053】
なお、本実施形態においては、球状部64の外周面と係合穴56の内周面との間に、クリアランスを設けてもよい。その場合には、ガタは大きくなるが、回動部材55の回動時における係合穴56の内周面と球状部64との間の摩擦を低下させることができる。
【0054】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態の燃料噴射装置94の制御弁60を示す正面断面図である。回動部材55は、側方に貫通した係合穴56を備えていない。制御弁本体65の下端面には、上方にテーパ状に凹むテーパ面62が設けられている。また、回動部材55の上端面には、上側凹部55cが設けられている。上側凹部55cの底面は、下方にテーパ状に凹んでいる。そして、テーパ面62に球体55dの上部が係合すると共に、その球体55dの下部が上側凹部55cに係合している。よって、制御弁本体65は、球体55dを介して回動部材55を下方に押圧する。
【0055】
また、回動部材55の下端面には、下側凹部55bが設けられている。下側凹部55bの天井面は、上方にテーパ状に凹んでいる。その下側凹部55bに、上半球状の弁体55aが係合している。その弁体55aの下部が、プレート凹部12aの底面における排出ポート37の上側開口周辺部に当接することにより、排出ポート37の上側開口を塞ぐ。回動部材55の上面又はインジェクタボディ16の下端面には、制御弁60が上昇する開弁時に低圧通路39を確保するための溝(図示略)が設けられている。
【0056】
本実施形態によれば、制御弁本体65と回動部材55との間に介装された球体55dにより、制御弁本体65に対して回動部材55が回動自在になる。そのため、生産時における規制部59とストッパ15との平行度等の角度精度の確保が不要になり、生産性が向上する。また、回動部材55の下側凹部55bに上半球状の弁体55aが係合しているため、回動部材55に対して弁体55aが回動自在になる。そのため、回動部材55の下面が排出ポート37の上側開口周辺部に対して平行にならなくても、弁体55aにより排出ポート37の上側開口を塞ぐことができる。
【0057】
[第5実施形態]
図7は、本実施形態の燃料噴射装置95の制御弁60の下部等を示す正面断面図である。回動部材55は、側方に貫通した係合穴56を備えておらず、上方に開口した有底筒状の形状をしている。その内周面に、周方向に延びる環状の係合凹部55eが設けられている。その係合凹部55eに球状部64が圧入されている。回動部材55の上面又はインジェクタボディ16の下端面には、制御弁60が上昇する開弁時に低圧通路39を確保するための溝(図示略)が設けられている。
【0058】
本実施形態によれば、第1実施形態に比べて、圧入時の荷重は大きくなるが、よりシンプルな構成により、制御弁本体65に回動部材55を回動自在に係合させることができる。
【0059】
[第6実施形態]
図8は、第6実施形態の燃料噴射装置95の回動部材55を示す三面図である。詳しくは、
図8(a)は、回動部材55の平面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のVIIIb−VIIIb線の断面を示す断面図であり、
図8(c)は、回動部材55の底面図である。回動部材55は、円筒形状ではなく直方体形状をしている。本実施形態の形状によっても、回動部材55を構成することができる。
【0060】
[第7実施形態]
図9(a)は、第7実施形態の燃料噴射装置97の制御弁60の下部等を示す正面断面図である。
図9(b)は、
図9(a)のIXb−IXb線の断面を示す断面図である。回動部材55は、上下方向に貫通すると共にその側方に開口した挿通穴52を備えている。そのため、上下方向に延びる制御弁本体65の下部を挿通穴52に側方から挿入可能に構成されている。その挿通穴52に、制御弁本体65の下部が上下方向に挿通されている。制御弁本体65は、回動部材55よりも下方に、拡径部61を備えている。回動部材55の下端部における挿通穴52の下側開口よりも外側部分には、上方にテーパ状に凹むテーパ面55fが設けられている。拡径部61の上端部における縁側部分には、テーパ面に当接する曲面61cが設けられている。曲面61cは、仮想球面の上部に倣うように湾曲している。それらテーパ面55fと曲面61cとの摺接により、回動部材55は、制御弁本体65に対して回動自在に係合している。また、挿通穴52の内周面とその内側の制御弁本体65の外周面との間には、制御弁本体65に対する回動部材55の回動を許容するための隙間が設けられている。拡径部61の下端面には、凹部61bが設けられている。凹部61bの天井面は、上方にテーパ状に凹んでいる。その凹部61bに上半球状の弁体61aが係合している。制御弁60が上昇する開弁時には、側方に開口した挿通穴52における制御弁本体65の側方部分により、低圧通路39が確保される。
【0061】
本実施形態によれば、テーパ面55fと曲面61cとにより、回動部材55を制御弁本体65に対して回動自在に係合させることができる。
【0062】
[第8実施形態]
図10(a)は、第8実施形態の燃料噴射装置98の制御弁60の下部等を示す正面断面図である。
図10(b)は、
図10(a)のXb−Xb線の断面を示す断面図である。本実施形態については、第7実施形態と異なる点のみを説明する。制御弁本体65の下部には、上下に延びる円柱の左右両端部分をカットした形状の2面幅部63aが設けられている。制御弁60は、回動部材55を有さず、代わりに、係合部材558を有している。その係合部材558は、上下方向に貫通すると共にその側方に開口した挿通穴52を備えている。その挿通穴52に2面幅部63aが上下方向に挿通されている。係合部材558の下面及びそれに当接する拡径部61の上面は、いずれも上下方向に対して直角をなしている。
【0063】
本実施形態の場合、係合部材558を制御弁本体65に対して回動自在に係合させることはできないが、加工の難しい曲面形状や圧入等が不要になる。
【0064】
[第9実施形態]
図11は、第9実施形態の燃料噴射装置99の制御弁60の下部等を示す正面断面図である。制御弁60は、回動部材55を有さず、代わりに、固定部材559が、制御弁本体65の下端部に固定されている。固定部材559は、外径が絞り部15aの内径よりも大きい円筒形状をしている。その固定部材559の上面における縁側部分が、規制部59を構成している。
【0065】
固定部材559の下端面には、凹部61bが設けられている。凹部61bの天井面は、上方にテーパ状に凹んでいる。その凹部61bに、上半球状の弁体51aが係合している。その弁体61aの下部がプレート凹部12aの底面における排出ポート37の上側開口周辺部に当接することにより、排出ポート37の上側開口を塞ぐ。固定部材559の上面又はインジェクタボディ16の下端面には、制御弁60が上昇する開弁時に低圧通路39を確保するための溝(図示略)が設けられている。
【0066】
本実施形態の場合、固定部材559を制御弁本体65に対して回動自在にすることはできないが、加工の難しい曲面形状や圧入等が不要になる。
【0067】
[第10実施形態]
図12は、第10実施形態の燃料噴射装置100の制御弁60を示す正面断面図である。球状部64が制御弁本体65とは別体で形成されており、溶接により固着されている。本実施形態によれば、球状部64を簡単に形成することができる。
【0068】
[第11実施形態]
図13は、第11実施形態の燃料噴射装置101の制御弁60の下部等を示す正面断面図である。本実施形態では、プレート12とインジェクタボディ16との間に、平板状の第2プレート161が介装されている。その第2プレート161に、絞り部15aを構成する穴が設けられている。そして、第2プレート161の下面における絞り部15aの下側開口周辺部が、ストッパ15を構成している。すなわち、インジェクタボディ16の下端面よりも下方に、ストッパ15が形成されている。
【0069】
本実施形態によれば、絞り部15aを第2プレート161に設けることにより、絞り部15aを形成し易くなる。
【0070】
[第12実施形態]
図14は、第12実施形態の燃料噴射装置102の制御弁60の下部等を示す正面断面図である。本実施形態では、インジェクタボディ16の下面に、凹部165が設けられている。その凹部165の天井面に、絞り部15aの下側開口が設けられている。その凹部165の天井面における絞り部15aの下側開口周辺部が、ストッパ15を構成している。すなわち、インジェクタボディ16の下端面よりも上方に、ストッパ15が形成されている。本実施形態の態様によっても、ストッパ15を形成することができる。
【0071】
[第13実施形態]
図15は、第13実施形態の燃料噴射装置103の制御弁60の下部等を示す正面断面図である。本実施形態では、第1実施形態でいう回動部材55が、第1回動部材55と第2回動部材54とに分割形成されている。
【0072】
第1回動部材55は、上下方向に貫通すると共にその側方に開口した挿通穴52を備えている。そのため、上下方向に延びる制御弁本体65の下部を挿通穴52に側方から挿入可能に構成されている。その挿通穴52に、制御弁本体65の下部が上下方向に挿通されている。制御弁本体65は、第1回動部材55よりも下方に、球状の拡径部61を備えている。第1回動部材55の下端部における挿通穴52の下側開口よりも外側部分には、上方にテーパ状に凹むテーパ面55fが設けられている。それらテーパ面55fと球状の拡径部61との摺接により、第1回動部材55は、制御弁本体65に対して回動自在に係合している。また、挿通穴52の内周面とその内側の制御弁本体65の外周面との間には、制御弁本体65に対する第1回動部材55の回動を許容するための隙間が設けられている。
【0073】
第2回動部材54は、球状の拡径部61の下方に設けられている。その第2回動部材54の上面には、下方にテーパ状に凹み上方に開口している係合凹部54aが形成されている。その係合凹部54aの内周面が球状の拡径部61に摺接して係合することにより、第2回動部材54が制御弁本体65に対して回動自在に係合している。そして、第2回動部材54の下面には、排出ポート37の開口を塞ぐシール面51が形成されている。制御弁60が上昇する開弁時には、側方に開口した挿通穴52における制御弁本体65の側方部分により、低圧通路39が確保される。
【0074】
本実施形態によれば、第1実施形態でいう回動部材55を、第1回動部材55と第2回動部材54とに分割形成することにより、その製造や制御弁本体65に対する取付けを容易にすることができる。また、制御弁本体65に球状の拡径部61を設けると共に、その拡径部61の上下両側に第1回動部材55及び第2回動部材54を設けることにより、制御弁本体65に対して、第1回動部材55及び第2回動部材54の両方を、効率的に回動自在に係合させることができる。
【0075】
[第14実施形態]
図16は、第14実施形態の燃料噴射装置104の制御弁60の下部等を示す正面断面図である。本実施形態は、低圧通路39に流れる燃料が制御弁60よりも低温になることに着目したものである。熱歪み抑制用構造80は、伝熱抑制用括れ部81に加えて、複数の放熱用凸部82又は放熱用凹部83を有している。それら放熱用凸部82又は放熱用凹部83は、制御弁本体65の下部の外周面に設けられている。放熱用凸部82や放熱用凹部83は、制御弁60の表面積を大きくして、制御弁60からその外部への放熱、具体的には低圧通路39に流れる燃料への放熱を促進することにより、制御弁60の熱膨張を抑制するための部位である。
【0076】
複数の放熱用凸部82は、例えば
図16(a)に示すように、上下方向に延び、周方向に並設されている複数本の突条状の凸部であってもよいし、例えば
図16(b)に示すように、周方向に断続的に延び、上下方向に並設されている凸部であってもよいし、その他の形状の凸部であってもよい。また、複数の放熱用凹部83は、例えば
図16(c)に示すように、複数のディンプルであってもよいし、その他の形状の凹部であってもよい。また、熱歪み抑制用構造80は、放熱用凸部82及び放熱用凹部83の両方を有していてもよい。
【0077】
本実施形態によれば、放熱用凸部82又は放熱用凹部83によって、制御弁60からその外部への放熱を促進することにより、制御弁60の熱膨張を抑制することができる。
【0078】
[第15実施形態]
図17(a)は、第15実施形態の燃料噴射装置105の制御弁60の下部等を示す正面断面図であり、
図17(b)は、
図17(a)のXVIIb−XVIIb線の断面を示す断面図である。本実施形態は、インジェクタボディ16の貫通穴16aの内周面が制御弁60よりも低温になることに着目したものである。熱歪み抑制用構造80は、伝熱抑制用括れ部81に加えて、放熱用摺接部85を有している。放熱用摺接部85は、貫通穴16aの絞り部15aの内周面に摺接して制御弁60からインジェクタボディ16への放熱を促進することにより、制御弁60の熱膨張を抑制するための部位である。
【0079】
詳しくは、制御弁本体65の下部の外周面には、複数の放熱用摺接部85が周方向に間隔をおいて形成されている。そして、放熱用摺接部85どうしの間に、燃料を通すための、すなわち低圧通路39を確保するための、絞り部15aの内周面に摺接しない非摺接部84が形成されている。具体的には、それら複数の非摺接部84は、円柱状の制御弁本体65の外周面における周方向の複数個所を平面状にカットした形状をしている。
【0080】
本発明によれば、非摺接部84によって低圧通路39を確保しつつも、放熱用摺接部85によって、制御弁60からインジェクタボディ16への放熱を促進することにより、制御弁60の熱膨張を抑制することができる。
【0081】
[他の実施形態]
上記の実施形態は、次のように変更して実施することもできる。例えば、規制部59又はストッパ15を、上下方向に対して直角ではなく、当該直角に対して斜めに延びる傾斜面等にしてもよい。また例えば、規制部59を、制御弁60の上下中程に設けると共に、ストッパ15を、インジェクタボディ16の上下中程に設けてもよい。また例えば、係合穴56の凸部56aを1つや2つにしてもよい。また例えば、第2実施形態において、球状部64の凹部64aを、1つのみにしてもよい。また例えば、制御弁60を、ニードル弁30よりも短くしてもよい。また例えば、各テーパ面を、当接する相手方の曲面に倣う曲面にしてもよい。また例えば、一方の部材にテーパ面を凹設し、他方の部材にそれに当接する曲面を設けるのとは反対に、他方の部材にテーパ面を凹設し、一方の部材にそれに当接する曲面を設けるようにしてもよい。
【0082】
また例えば、排出ポート37、制御弁60、アクチュエータ70をそれぞれ2つずつ設け、一方の排出ポート37のみを開弁する場合と、両方の排出ポート37を開弁する場合とで、圧力室36の減圧速度を異ならせることにより、制御弁60の開弁速度を異ならせるようにしてもよい。この場合、一方の制御弁60を上記実施形態のようにニードル弁30よりも長いものとし、他方の制御弁60をニードル弁30よりも短いものとすることにより、それらを駆動するアクチュエータ70を互いに上下にずらして設置することが好ましい。アクチュエータ70を側方に並べて設置するには、弁ボディ10内にスペースが足りない場合が多いからである。このとき、少なくとも、長い方の制御弁60については、上記実施形態の構成にする。クランプ荷重により制御弁60の最大リフト量が低下するといった課題は、上記のとおり、制御弁60が長い場合により顕著になるからである。
【0083】
また例えば、第14実施形態において、伝熱抑制用括れ部81を無くして、熱歪み抑制用構造80を放熱用凸部82又は放熱用凹部83のみにしてもよい。また例えば、第15実施形態において、伝熱抑制用括れ部81を無くして、熱歪み抑制用構造80を放熱用摺接部85のみにしてもよい。また例えば、第15実施形態において、伝熱抑制用括れ部81及び放熱用摺接部85に加えて、第14実施形態の放熱用凸部82や放熱用凹部83を設けてもよい。