(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
0.15重量%以下の前記有機化合物を含むブロス・リサイクルが、前記ブロス・ストリッパ・カラムのサイドドローから得られ、発酵のために前記ブロス・ストリッパ・カラムからリサイクルされる、請求項1に記載のプロセス。
前記ブロス・ストリッパ・カラムは、ストリッピング蒸気を生成するための前記脱塩水を前記流下膜式蒸発器に提供するためのトレイ区域を底に設けている、請求項1に記載のプロセス。
起動動作のために、前記ブロス・ストリッパ・カラムからの底生成物が補助リボイラ内において低圧蒸気で熱せられ、起動のための前記ストリッピング蒸気を生成する、請求項1に記載のプロセス。
前記起動凝縮器は、記ブロス・ストリッパ・カラム内で42℃から43℃の間の範囲の温度で45mmHgの真空圧をもたらすために、任意に冷水を使用する、請求項8に記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
発酵器からのブロスは、エタノール、水、微生物(生きた微生物)/バイオマスを、副反応によって生成された微量の他のプロセス化学物質と共に含む。エタノールは、1〜5重量%のエタノールを含む発酵ブロスから回収しなければならず、残りのブロスは、発酵プロセスで発酵器区域にリサイクルされて戻される。ブロスには生きた微生物が含まれるので、発酵プロセスのために微生物が生きて、活性化状態を保って発酵器へ戻されるためには、ブロスからのエタノールの分離は、通常45℃未満で行われなければならない。さらに、微生物は、その生存のために供給ガスに強く依存しているため、微生物の生存と活性を確保するためには、発酵システムの外部でブロス(微生物を含む)が滞留する時間を最小限にする必要がある。したがって、発酵器の外部での滞留時間を最小化すると共に、低温でのエタノール分離システムを設計することは困難である。また、他の利用可能な技術に対抗するためには、エタノールを必要な条件で分離するという目標を満たしながら、プラントの設備投資および運営費が極力最少化することが強く望まれる。
【0003】
エタノールを回収するための従来の第1世代/第2世代技術は、生きた微生物のリサイクルに基づいていないので、エタノールの分離が約90℃以上の蒸留カラム温度で低圧蒸気リボイラ/直接注入を使用して実施することができる。オーバーヘッド蒸気は凝縮され、高純度エタノールを得るため、さらに下流のエタノール回収・脱水区域に送られる。このようなタイプの従来のスキームは、バイオ触媒(生きた微生物)を発酵プロセスとして利用するプロセスには機能しない。このような高温は、微生物の死滅につながり、上流発酵器におけるガス/バイオマス発酵プロセスでの微生物の成長/活性を抑制するからである。さらに、膜分離法など他のエタノール回収プロセスでは、生きた微生物を含むブロスからエタノール−水の混合物を分離し、微生物が低温要件で発酵プロセスにリサイクルされて戻すことを可能にするために、セル・リサイクル膜が使用される。しかしながら、膜分離モジュールは、修理やメンテナンスにコストがかかる。また、特に供給ガス組成物によっては、特に微生物成長率が低くなるので、このような膜の設置のために、とても大きな領域が必要になる。再度、動作条件の変化、供給品質、粒子状物質のブロスへの侵入などにより、膜の信頼性が低くなり、膜のライフサイクルが低下し、プロジェクト期間中に頻繁な交換が必要となる。
【0004】
特許文献1は、第1の膜分離、それに続くデフレグメーション・ステップ、およびエタノールを脱水する他の膜分離を含む、複数の膜を含む統合されたプロセスが記載している。このアプローチの問題は、膜分離プロセスの前に発酵ブロスから固体を除去する必要があることである。固体を除去するステップは、追加の設備投資および運営費が生じるため、全体的なエタノールの生成費を増加させる。
【0005】
特許文献2は、エタノールを分離して酵素の変性を防ぐことを目的とし、糖化発酵によって生成されるエタノール発酵液のみに適したエタノール分離のための、熱統合と共に達成される低温ブロス分離の原理を利用している。しかしながら、上記技術は、真空蒸留、凝縮器および単純な熱交換器からなる熱統合システムを有している。酵素が豊富な流れは、カラムの底から引き出される。したがって、上記特許出願に記載されたプロセスは、プラントが動作している間に、様々な動作条件/動作障害で、生きた微生物の完全な保護を保証できない。
【0006】
特許文献3は、統合された機械的蒸気再圧縮(MVR)および膜蒸気浸透システムを使用したエタノール回収のための発酵プロセスを開示しており、発酵は75〜100℃を超す温度で行われる。さらに、このプロセスは、5重量%を超えるブロス供給エタノール濃度からエタノールを回収することを開示している。さらに、このプロセスは、蒸気および二酸化炭素をストリッピング媒体として発酵ストリッパと呼ばれる機器で使用する。
【0007】
特許文献4は、酵素のリサイクル使用に適したエタノールの生成方法およびエタノールの生成装置を開示している。この特許出願は、エタノールを生成する方法を提供しており、この方法は、バイオマス開始物質の糖化発酵により生成されたエタノール発酵液からエタノールを精製するステップを含み、エタノールを生成する機器は、真空蒸留塔から蒸留されたエタノール蒸気を精留するように構成された精留カラムと、水蒸気を含むエタノール蒸気を蒸留し、底生成物として酵素含有凝縮廃液を取り除く真空蒸留塔と、を備えている。
【0008】
エタノール生成のためのこの種の技術には上記の制約があるので、エタノール・プラントの膜分離法と同様、第1世代(1G)/または第2世代(2G)技術で利用可能な従来のプロセスによっても、発酵ブロスからエタノールを有効に分離することができない。したがって、このような、ブロスからのエタノールを分離するために使用することができ、エネルギー効率が良い、代替技術/プロセス/方法を探し出すことが強く望まれる。ブロスからエタノールを回収するためのエネルギー消費および設備投資を最少化しながら、生きた微生物を保護することを目的とした、超低温でのエタノール分離要求の問題に対する解決法を探し出すために、様々なアプローチが検討されてきたか、または現在検討されている。さらに、このような技術では、微生物は、温度と滞留時間の制限に基づいて、ガス発酵器の外部のブロス溶液で保護される必要がある。そのため、発酵ブロスからエタノールを分離した後に、温度および滞留時間を設計限界以内に保ちながら微生物をリサイクルして戻すことが必要である。ブロスからエタノールを分離するプロセスは、第1世代(1G)または/第2世代(2G)技術、および膜分離法が知られているが、先行技術の研究では、生きた微生物を含む発酵ブロスからの効果的なエタノール(ならびに他の低アルコール類および低ケトン類)の分離を保証し、エタノールの分離の後のリサイクル・ブロスで微生物が保たれるように統合されたプロセスまたはアプローチが何ら明らかにされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、発酵ブロスから有機化合物(すなわち、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、イソプロピルアルコール)、特にエタノールを分離する「統合されたプロセス」を提供するものであり、このプロセスは、低温でのエタノールの最大回収量を確保し、ガス発酵区域でのさらなる発酵のためにリサイクル・ブロスでの微生物の活性を保ちながら、より低いシステム温度とより短い滞留時間で動作する。本発明は、先行技術の欠点を克服し、ブロス・ストリッパ・カラム(真空蒸留システム)、流下膜式蒸発器および蒸気圧縮ユニット(ターボファン)を備える統合されたシステムを使用することにより、ガス発酵区域での発酵に望ましい微生物の活性を確保しながら、低温でのエタノール回収量を最大限に確保する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、発酵ブロスから有機化合物を分離する統合されたプロセスを提供し、このプロセスは、
(a)蒸気を生成するために、脱気および予熱された発酵ブロスをブロス・ストリッパ・カラム内に供給するステップと、
(b)ブロス・ストリッパ・カラムのオーバーヘッドから得られた蒸気をターボファン内で圧縮して、160から200mmHgの範囲の圧力で圧縮蒸気を得るステップと、
(c)ブロス・ストリッパ・カラムの底から流下膜式蒸発器に脱塩水を送ってストリッピング蒸気を得るステップであって、ストリッピング蒸気がブロス・ストリッパ・カラム内に送られる、ステップと、
(d)ストリッピング蒸気を生成するための圧縮蒸気から脱塩水への熱伝達のために、ステップ(b)で得られた圧縮蒸気を流下膜式蒸発器に送るステップであって、圧縮蒸気が凝縮されて凝縮液および残蒸気の混合物が得られる、ステップと、
(e)残蒸気を凝縮液に凝縮するために、ステップ(d)で得られた凝縮液および残蒸気の混合物をブロス・ストリッパ凝縮器に送るステップと、
(f)ステップ(d)およびステップ(e)で得られた凝縮液を蒸留のための精留器供給ドラムに集めて、15〜25重量%の有機化合物を得るステップと、を備え、
ブロス・ストリッパ・カラムが、1〜10分の範囲の滞留時間の間に15から50℃の範囲の温度で動作され、
有機化合物が、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトンおよびイソプロピルアルコールから選択される。
【0012】
本発明のステップ(a)から(f)に記載されているプロセスは、発酵ブロスからプロパノール、ブタノール、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)を分離するために同様に適用することができる。
【0013】
さらに、本発明は、発酵ブロスから有機化合物を分離する統合されたシステムを提供し、有機化合物はエタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、イソプロピルアルコールから選択され、システムは、
充填材の物質移動ベッドで充填された充填ベッド区域と、リサイクル・ブロスを取り除くための充填ベッド区域の下の煙突トレイと、ストリッピング蒸気を生成するための脱塩水を流下膜式蒸留器に提供するための底にあるトレイ区域と、が設けられたブロス・ストリッパ・カラム(C−1)と、
ブロス・ストリッパ・カラムのオーバーヘッドから得られた蒸気を圧縮するターボファン(K−1)と、
圧縮蒸気から、ブロス・ストリッパ・カラム(C−1)の底から得られた脱塩水への熱伝達のため、および凝縮液と残蒸気の混合物を得るための流下膜式蒸発器(E−1)と、
流下膜式蒸発器から得られた残蒸気を凝縮して凝縮液を得るための凝縮器(E−3)と、
凝縮器(E−3)から得られた凝縮液を集める精留器供給ドラム(V−2)と、
起動動作中に、ブロス・ストリッパ・カラムからの底生成物を低圧蒸気で熱するための補助リボイラ(E−2)と、
起動動作中に、圧縮蒸気を凝縮させる起動凝縮器(E−5)と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一次的な目的は、生きた微生物を含む発酵ブロスから有機化合物(例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、イソプロピルアルコール)、特にエタノールを効率的に回収し、微生物を温度の逸脱および滞留時間制限から保護することである。
【0015】
別の目的は、通常50℃以下、好ましくは45℃未満の温度で生きた微生物を含む発酵ブロスからエタノールを低温分離および回収することである。
【0016】
本発明の別の目的は、発酵器の外部の微生物含有ブロスの滞留する時間を10分未満に維持することによって、微生物の活性を保証することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、1重量%と低いエタノールを含むブロスにより効率的に実施する統合された方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、エネルギーを最適化し、OPEX(運営費)を低減するためのターボファン、蒸発器およびブロス・ストリッパ・カラムを伴うエタノール分離の統合された方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、種々の発酵技術から生成される発酵ブロスからエタノールを回収する統合されたプロセスに関する。本発明は、特にブロス・ストリッパ・カラム(真空蒸留システム)、ターボファンおよび流下膜式蒸発器の統合されたシステムを使用して、ガス発酵プロセスから生成されるブロスからエタノールを分離する統合されたプロセスに関する。
【0021】
本発明は、ブロス溶液からプロパノール、ブタノール、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)を分離するために同様に適用することができる。さらに、本発明は、都市廃棄物(MSW)、産業廃ガス、製油所オフガス、バイオマスおよびコークスガス化、製鉄所オフガスなどのような廃棄物発生源から、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)を生成することを目標とする様々な発酵技術で、エタノール、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、プロパノール、ブタノールを(低温で)分離するための広い適用を探し出している。より具体的には、本発明は、発酵プロセス外部での動作温度および滞留時間の制限を超える微生物を保護し、他の利用可能な従来の蒸留スキームおよび膜分離プロセスと比較してエネルギーを節約することができる。またこのプロセスは、ガス発酵技術以外の温度や滞留時間に制限がある発酵技術にも適用することができる。このシステムは、有機化合物(すなわち、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、イソプロピルアルコール)、特にエタノールを、1重量%という低い濃度で含む発酵ブロスに対して機能することができる。
【0022】
本発明に従って、生きた微生物を有するガス発酵設備からエタノールを含むブロス流(ブロス溶液または発酵ブロスと呼ばれる)が得られる。このように得られる発酵ブロスは、ガス供給品質に応じて約1〜5重量%のエタノールを含み、残りは、生きた微生物と共にほとんど水および他の不純物である。本発明に従って、エタノールが発酵ブロスから低温(すなわち、生きた微生物を保護するために通常は50℃以下)で回収され、このように回収されたエタノールが下流の蒸留および脱塩区域でさらに精製され、燃料級の高純度エタノールを得ることができる。本発明に従って、統合された蒸気圧縮ユニット(ターボファン)、蒸発器/リボイラおよびブロス・ストリッパ・カラム(真空蒸留システム)を使用することで、ブロスからエタノールが効果的に分離される。真空条件下でのカラム動作によりエタノールが蒸留され、リサイクル・ブロスでの微生物の活性を保証するよう低温分離される。真空カラム・オーバーヘッド蒸気熱の統合を達成するために蒸気圧縮ユニット(ターボファン)が使用され、流下膜式蒸発器リボイラでストリッピング蒸気が生成される。この組み合わせにより、エネルギーが節約されるだけでなく、生きた微生物を含むブロスから低温エタノールを分離するという目標を果たすことができる。
【0023】
主な特徴に従って、本発明は、発酵ブロスから有機化合物を分離する統合されたプロセスを提供し、このプロセスは、
(a)蒸気を生成するために、脱気および予熱された発酵ブロスをブロス・ストリッパ・カラム内に供給するステップと、
(b)ブロス・ストリッパ・カラムのオーバーヘッドから得られた蒸気をターボファン内で圧縮して、160から200mmHgの範囲の圧力で圧縮蒸気を得るステップと、
(c)ブロス・ストリッパ・カラムの底から流下膜式蒸発器に脱塩水を送ってストリッピング蒸気を得るステップであって、ストリッピング蒸気がブロス・ストリッパ・カラム内に送られる、ステップと、
(d)ストリッピング蒸気を生成するための圧縮蒸気から脱塩水への熱伝達のために、ステップ(b)で得られた圧縮蒸気を流下膜式蒸発器に送るステップであって、圧縮蒸気が凝縮されて凝縮液および残蒸気の混合物が得られる、ステップと、
(e)ステップ(d)で得られた凝縮液および残蒸気の混合物をブロス・ストリッパ凝縮器に送って、残蒸気を凝縮して凝縮液にするステップと、
(f)ステップ(d)およびステップ(e)で得られた凝縮液を蒸留のための精留器供給ドラムに集めて、15〜25重量%の有機化合物を得るステップと、を備え、
ブロス・ストリッパ・カラムが、10分以下の滞留時間の間に50℃以下の温度で動作され、
有機化合物が、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトンおよびイソプロピルアルコールから選択される。
【0024】
好ましい実施形態では、滞留時間は1〜10分の範囲、より好ましくは5〜10分、ブロス・ストリッパ・カラム内の温度は15℃から50℃の間の範囲、より好ましくは30〜45℃である。
【0025】
実施形態では、発酵ブロスはさらに、生きた微生物を含み、発酵ブロスは、種々の発酵技術で、特にガス発酵で生成される。加えて、発酵ブロスは、触媒から成る。エタノール分離のプロセスは、短い滞留時間と共にこのように低温で動作されて、微生物がプロセスで生き続け、さらに発酵ユニットにリサイクルされることを保証する。
【0026】
好ましい特徴では、本発明は、発酵ブロスからエタノールを分離する統合されたプロセスを提供し、プロセスは、
(a)蒸気を生成するために、脱気および予熱された発酵ブロスをブロス・ストリッパ・カラム内に供給するステップと、
(b)ブロス・ストリッパ・カラムのオーバーヘッドから得られた蒸気をターボファン内で圧縮して、160から200mmHgの範囲の圧力で圧縮蒸気を得るステップと、
(c)ブロス・ストリッパ・カラムの底から流下膜式蒸発器に脱塩水を送ってストリッピング蒸気を得るステップであって、ストリッピング蒸気がブロス・ストリッパ・カラム内に送られるステップと、
(d)ストリッピング蒸気を生成するための圧縮蒸気から脱塩水への熱伝達のために、ステップ(b)で得られた圧縮蒸気を流下膜式蒸発器に送るステップであって、圧縮蒸気が凝縮されて凝縮液および残蒸気の混合物が得られるステップと、
(e)ステップ(d)で得られた凝縮液および残蒸気の混合物をブロス・ストリッパ凝縮器に送って、残蒸気を凝縮して凝縮液にするステップと、
(f)ステップ(d)およびステップ(e)で得られた凝縮液を蒸留のための精精留器供給ドラムに集めて、15〜25重量%のエタノールを得るステップと、を備え、
ブロス・ストリッパ・カラムが、10分以下の滞留時間の間に50℃以下の温度で動作される。
【0027】
本発明のステップ(a)から(f)に記載されたプロセスは、発酵ブロスからプロパノール、ブタノール、アセトンおよびイソプロピルアルコール(IPA)を分離するために同様に適用することができる。
【0028】
実施形態では、本発明は、ブロス・ストリッパ・カラム内に供給される発酵ブロスが、1〜5重量%の有機化合物、特にエタノールを含むことを規定する。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、ブロス・ストリッパ・カラムのサイドドローから得られ、発酵のためにブロス・ストリッパ・カラムからリサイクルされる、0.15重量%以下の有機化合物、好ましくは、エタノールを含むブロス・リサイクルを提供する。ブロス・リサイクルは、好ましくは0.05〜0.15重量%のエタノールを含み、より好ましくは、ブロス・リサイクルは、0.08〜0.1重量%のエタノールを含む。
【0030】
好ましい実施形態では、ブロス・ストリッパ・カラムは、充填材の物質移動ベッドで充填された充填ベッド区域が設けられ、ブロス・ストリッパ・カラムが45〜60mmHgの範囲の圧力、好ましくは56mmHgの真空条件下、および45℃未満の温度で動作される。さらにブロス・ストリッパ・カラムは、リサイクル・ブロスを取り除くための充填ベッド区域の下の煙突トレイが設けられ、ストリッピング蒸気を生成するための脱塩水を流下膜式蒸留器に提供する底にある追加のトレイ区域が設けられる。
【0031】
別の実施形態では、本発明の分離プロセスは、起動動作のために、ブロス・ストリッパ・カラムからの底生成物が補助リボイラ内において、低圧蒸気(約5気圧の圧力を有する)で熱せられ、起動のためのストリッピング蒸気を生成することを規定する。
【0032】
さらに別の実施形態では、本発明はさらに、プロセスの起動動作中に、(上記プロセスの)ステップ(a)で得られた蒸気が起動凝縮器に送られて凝縮液を得、続いて精留器供給ドラムに凝縮液を送ることを規定する。
【0033】
起動動作は、ターボファン最少流量要件に到達するためにプロセスの開始を促進する。ひとたびプロセスが実行を開始し、ターボファンが動作されると、起動関連装置がターンオフされ、効率的な熱伝達プロセスを通してシステムのエネルギーを保存することによって、省エネルギー・モードで、システム内で生成された熱に基づいてプロセスが動作される。暑い国では、冷却水の温度がより高く、オーバーヘッド蒸気の冷却を抑制する。このように、好ましい実施形態では、暑い国で動作させるために、起動凝縮器は、ブロス・ストリッパ・カラム内で42〜43℃の範囲の温度で45mmHgの真空圧をもたらすために、任意で冷水を使用する。このように暑い国でプロセスを動作させるために、本発明は、有機化合物、特にエタノール(
図2)を分離する3段階ターボファン動作を規定する。
【0034】
暑い国で動作するプロセスに対する好ましい実施形態では、本発明は、エタノールを分離する2段階ターボファン動作を規定し、ブロス・ストリッパ凝縮器が、ブロス・ストリッパ・カラム内で42〜43℃の範囲の温度で45mmHgの真空圧をもたらすために、任意で連続的な冷却器の動作に設けられ、それによって、分離プロセスで追加的な起動凝縮器を使用する必要性を取り除く。
【0035】
また本発明は、発酵ブロスから有機化合物を分離する統合されたシステムを提供し、有機化合物はエタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、イソプロピルアルコールから選択され、システムは、
充填材の物質移動ベッドで充填された充填ベッド区域、リサイクル・ブロスを取り除くための充填ベッド区域の下の煙突トレイ、およびストリッピング蒸気を生成するための脱塩水を流下膜式蒸留器に提供する底にあるトレイ区域が設けられたブロス・ストリッパ・カラム(C−1)と、
ブロス・ストリッパ・カラム(C−1)のオーバーヘッドから得られた蒸気を圧縮するためのターボファン(K−1)と、
ブロス・ストリッパ・カラム(C−1)の底から得られた脱塩水に圧縮蒸気から熱を伝えて、そして凝縮液と残蒸気の混合物を得るための流下膜式蒸発器(E−1)と、
流下膜式蒸発器から得られた残蒸気を凝縮して凝縮液を得るための凝縮器(E−3)と、
凝縮器(E−3)から得られた凝縮液を集める精留器供給ドラム(V−2)と、
起動動作中に、ブロス・ストリッパ・カラム(C−1)からの底生成物を低圧蒸気で熱するための補助リボイラ(E−2)と、
起動動作中に、圧縮蒸気を凝縮させる起動凝縮器(E−5)と、を備える。
【0036】
好ましい特徴では、統合されたシステムは、エタノールを分離するために採用される。
【0037】
別の実施形態では、システムは、ブロス・ストリッパ・カラム(C−1)のサイドドローからブロス・リサイクルを受け取るためのブロス・リサイクル・ポンプ(P−1)を備え、ブロス・リサイクルが0.15重量%以下の有機化合物、好ましくはエタノールを含む。
【0038】
さらなる実施形態では、システムは、精留器供給ドラム(V−2)の蒸気出口に、真空を維持するための起動真空ポンプ(K−2)を備える。
【0039】
本発明は、暑い国および寒い国で、冷却水供給温度に応じた3つの異なる構成に基づいて動作される。3つの構成のいずれも寒い国で作動することができ、構成2および3は特に、暑い国に対して促進される。エタノールについての例示的な構成を以下に記載する。
【0040】
構成1(
図1):ターボファン構成(3段階ターボファン)との統合された真空カラム、FFE
本構成(
図1)では、脱気後に上流の発酵器から受け取られたブロス(流れ#1)が、(供給/底交換器)で予熱され、真空下で動作する真空カラム(C−1)に流入する。カラムは、流下膜式蒸発器リボイラ(E−1)へのオーバーヘッド蒸気の熱統合により動作されて、オーバーヘッド蒸気の熱を再利用し、このようにして、ブロスからエタノールをストリッピングするため、どのような外部エネルギー入力の必要性をも低減させる。
【0041】
カラム内の低温が約56mmHgの最高圧の真空条件下の動作により維持され、充填ベッドの使用により、カラム内の低デルタPが保証される。オーバーヘッド蒸気は、20〜22重量%のエタノール(流れ#2)を含み、ターボファン(K−1)により圧縮されて、流下膜式蒸発器(FFE)リボイラ(E−1)への熱伝達のために十分な圧力を達成する(すなわち、底温度およびFFE温度アプローチがターボファンの出口圧力を定める)。煙突トレイがブロス・リサイクル(流れ#3)を取り除くために充填ベッドの下に設置され、カラムの底区域がトレイ区域を含み、トレイ区域では、蒸気生成のためにプロセス水(流れ#5)が流入し、FFEに到達する。FFE(E−1)管側面出口蒸気が、カラムの底のトレイ区域に流入し、エタノール分離のためのストリッピング媒体の機能を果たす。一方で、FFEシェル出口蒸気+凝縮液が、さらにトリム凝縮器(E−3)で冷却され、下流の蒸留区域(流れ#4)で処理するために精留器供給ドラム(V−2)に集められる。残った未凝縮蒸気は、さらに真空洗浄システムに送られる。システム全体の真空は、このユニットの下流の供給洗浄ドラム(V−2)の蒸気出口に設置された、動作している真空洗浄器および真空ポンプにより維持される。
【0042】
補助リボイラ(E−2)が、ターボファン(K−1)の最少流量要件を達成するためにLP蒸気が提供され、ターボファン(K−1)が起動される。システムの真空は、最初は起動真空ポンプ(K−2)を使用して維持され、生成された蒸気がOVHD起動冷却水凝縮器(E−5)により凝縮される。オーバーヘッド蒸気の最少流量を得た後、ターボファン(K−1)が起動および安定化され、その後、カラムに必要なリボイラのデューティは、FFEリボイラ(E−1)を通してオーバーヘッド蒸気から利用可能となる。
【0043】
このアプローチを通して、発酵プロセスの中心である生きた微生物の成長に悪影響を及ぼすことなく、熱統合と共に低温ブロス分離が達成される。脱気器、真空蒸留カラムのような装置で必要とされる最小容積を保つと共に、ガス発酵器から蒸留区域へ、および発酵器に戻る配管が最小化され、発酵器の外部のブロスに対する総滞留時間を最小化する。
【0044】
構成2(
図2):ターボファン構成(3段階ターボファン+起動冷却器)との統合された真空カラム、FFE
このスキーム(
図2)は、さらに45mmHgのより深い真空圧で約42〜43℃でブロス分離カラムを動作させることを可能にする。3段階構成を有するターボファン(K−1)は、熱統合による圧力上昇要件に十分である。しかしながら、起動中は、45mmHgのより深い真空圧は、冷水による起動凝縮器(E−5)の動作を必要とする。3段階ターボファン構成により、凝縮器冷却器ユニットで低温である必要がある。この構成は、冷却水温度がより高く、蒸気の凝縮を制限する暑い国で適用することができる。さらにこの構成は、微生物の動作温度(通常は45℃未満)の設計限界を超える著しい動作マージンをもたらす。
【0045】
構成3(
図3):ターボファン構成(2段階ターボファン+連続的に動作する冷却器)との統合された真空カラム、FFE
3段階ターボファンによる真空構成(構成2で言及したような)は、約33℃の冷水(すなわち露点が冷却水により達成され−冷水要件がない)によるトリム凝縮器の設置を可能にする。一方、2段階(構成3)によるターボファンは、露点がより低いので、冷水(すなわち連続的な冷却器動作)を必要とする。この構成(
図3)は、1段階削減されたターボファンにおいて、45mmHgで、およびより少ない動力でのカラムの動作を可能にする。しかしながら、冷却器の動作のために必要な動力は、正味増大するが、カラムの底温度により大きなマージン持たせることができるので、約42〜43℃でカラムを動作させることができる。
【0046】
本発明に従って、発酵ブロスからエタノールを低温(通常は45℃未満)で分離するプロセスは、以下の主な構成要素を使用する。
a)流下膜式蒸発器(E−1)および真空蒸留システム(C−1)を有する統合されたターボファン(K−1)と、
b)充填材の物質移動ベッドを有する真空蒸留カラム(C−1)と、
c)真空蒸留カラム(C−1)からのブロス・リサイクル・ポンプ(P−1)によるブロス・リサイクル流のサイドドローと、
d)起動真空ポンプ(K−2)および起動オーバーヘッド凝縮器(E−5)と、
e)起動補助リボイラ(E−2)と、
f)精留器供給ドラム(V−2)。
【0047】
本発明に従って、0.1重量%未満のエタノールを有するブロス・リサイクルが、生きた微生物を含むブロスに対する温度(通常は45℃未満)および滞留時間(10分未満)の動作制限の遵守を保証するプロセスで得られるような方式で、統合されたターボファン(K−1)、流下膜式蒸発器(E−1)および真空蒸留システム/ブロス・ストリッパ・カラム(C−1)が設計される。
【0048】
本発明に従って、ブロスからエタノールを低温動作で分離するプロセスは、以下の特徴を開示する。
a)通常45℃未満の温度の場合には56mmHg(構成−1、
図1)の圧力、または43℃未満の温度の場合には45mmHg(構成−2および3)の圧力で動作するブロス・ストリッパ・カラム(C−1)に発酵器から発酵ブロス供給を供給する。
b)ブロス・ストリッパ(C−1)からのオーバーヘッド蒸気が、ターボファン(K−1)により圧縮され、下流の流下膜式蒸発器(E−1)へのエネルギー/熱伝達に十分な圧力および温度を達成する。
c)流下膜式蒸気リボイラ(E−1)を使用することで、カラム・オーバーヘッド蒸気からカラムの底の水流への効果的な熱伝達のための低温アプローチを達成する。
d)ブロス・ストリッパ(C−1)でトレイ/グリッド・トレイの代わりに充填ベッド・カラムを使用し、低デルタPを達成し、ブロス収集トレイおよびカラムの底で温度の制限内での動作を保証する。
e)ブロス・ストリッパ・カラム(C−1)の充填ベッド区域の下に煙突トレイを設置することで、生きた微生物を含むリサイクル・ブロスを収集し、収集されたブロスを発酵区域内の上流の発酵器にリサイクルして戻す。
f)発酵区域とブロス分離区域との間の配管および距離を最小化し、発酵領域外部での循環および滞留時間を最小限に抑える。
g)FFE(E−1)を通じたストリッピング蒸気の生成のために、煙突トレイの下に小さなトレイ区域を設置する。
h)ターボファン(K−1)の最少流量要件を達成するために、起動動作のための低圧(LP)蒸気による補助リボイラ(E−2)を設置する。
i)起動動作中および連続動作中に真空条件を創出および維持するために真空システムを設置する。
j)暑い国で冷却水温度制限がある場合には、構成−2(
図2)での起動、および構成−3(
図3)での連続動作のため、オーバーヘッド蒸気に対して、冷却器システムによりカラムを動作させる。
【0049】
このプロセスは、生きた微生物(バイオ触媒)を保護し、技術のための発酵ブロスからのエタノール分離に必要な最大温度制限(通常は45℃未満)および滞留時間の基準(10分未満)を満たす。
【0050】
図4は、ガス発酵ブロスの分離に採用された場合の、エタノール分離の従来の方法の概略図を描いている。このタイプのスキームが、主に糖蜜、米の籾殻、小麦の麦藁などからのエタノールの生成のための従来の第1世代/第2世代技術で採用されている。従来の第1世代/第2世代技術は、生きた微生物のリサイクルに基づいていないので、エタノール分離が、低圧蒸気リボイラ/直接注入を使用して約90℃以上の温度の蒸留カラム底で実施される。オーバーヘッド蒸気(20〜22重量%濃縮エタノール)が凝縮され、さらに、高純度エタノールを得るために下流のエタノール回収および脱水区域に送られる。このようなタイプの従来のスキームは、発酵プロセスのためにバイオ触媒(生きた微生物)を利用するプロセスに対して機能することができない。このような高温は、上流の発酵器でのガス/バイオマス発酵プロセスでの、微生物の死滅につながり、微生物の成長/活性を抑制する。
【0051】
再度、
図5は、発酵ブロスからエタノールを回収する膜分離法の概略図を描いている。このようなシステムでは、セル・リサイクル膜が、生きた微生物を含むブロスからエタノール−水の混合物を分離し、微生物が低温要件で発酵プロセスにリサイクルして戻ることを可能にするために使用される。しかしながら、膜分離モジュールの修理やメンテナンスにはコストがかかる。また、特に供給ガス組成物によっては、微生物の成長率が低くなるので、このような膜を設置するために、とても大きな領域が必要になる。さらに、動作条件の変化、供給品質、粒子状物質のブロスへの侵入などにより、膜の信頼性が低くなり、膜のライフサイクル低下し、プロジェクト期間中に頻繁な交換が必要となる。
【0052】
有機化合物(すなわち、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、イソプロピルアルコール)、好ましくはエタノールを発酵ブロスから分離する開示されたプロセスは、以下の技術的な利点をもたらす。
・生きた微生物を含む発酵ブロスからのエタノールの通常50℃以下での低温分離および回収。
・微生物含有ブロスの発酵器の外部での滞留時間を10分未満に維持することで微生物の活性が保証される。
・ターボファン、蒸発器および真空蒸留システムを統合したアプリケーションにより、エネルギーの最適化とOPEX(運営費)の低減を実現する。
・外部蒸気流入が起動動作以外に必要とされない。
・従来のスキームと比べて、ほぼ40〜50%の動力の削減が達成できる。
・従来のスキームと比べて、ほぼ60〜70%の冷却水の削減が達成できる。
・このプロセスが、前述のガス発酵技術に加えて、温度や滞留時間に制限がある他の発酵技術にも適用できる。
・このプロセスは、発酵ブロス・エタノール濃度が1重量%と低い場合にも機能し得る。
【0053】
本発明の基本的な態様を説明してきたが、以下の非限定的な例は、その具体的な実施形態を示す。
【0054】
構成1は、統合されたターボファン、流下膜式蒸発器および真空蒸留システムを使用して、20〜22重量%のエタノールに濃縮された、2〜3重量%のエタノールを有するガス発酵区域からのブロス供給を受け取る。ブロス・ストリッパは、カラム底(ブロス・リサイクル)の温度が通常45℃未満に保たれるように、56mmHgで動作される。結果は、表−1に要約される。
【0056】
図4に記載される通常の従来のプロセスと比較して、構成−1(
図1)による本発明で開示されるエタノール分離の統合されたプロセスによる期待された利点は、表−2に要約される。
【0058】
従来のプロセスは、LP蒸気によるリボイラを連続的に必要とした。従って、上記の表2に示されているように、従来のプロセスの場合は、2〜3重量%のエタノールを有する発酵飼料から20〜22重量%のエタノールを回収するのに必要なエネルギーは、従来のプロセスでは10〜12トン/時のLP蒸気に相当するが、本発明では、ブロス・ストリッパを連続的に動作させるのに蒸気は不要である。従来のプロセスでは、ブロス・ストリッパ・オーバーヘッド蒸気を56mmHgで凝縮させるために、動作条件で生成される蒸気の露点が低いため、冷水システムが必要であり、動作条件はさらに、冷水システムを循環させるために1.4〜1.6MWの動力と1500〜1700m
3/時の冷却水が必要であった。対照的に、提案されたエタノール分離プロセスは、ターボファン動作に0.7〜0.8MWの動力、トリム凝縮器に500〜600m
3/時の冷却水しか必要としない。