特許第6919013号(P6919013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919013
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】椅子ユニット
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20210729BHJP
   A47C 1/124 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   A47C7/62 Z
   A47C1/124
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-68118(P2020-68118)
(22)【出願日】2020年4月6日
(62)【分割の表示】特願2016-16579(P2016-16579)の分割
【原出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2020-108827(P2020-108827A)
(43)【公開日】2020年7月16日
【審査請求日】2020年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】江連 晴洋
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−84942(JP,A)
【文献】 実開昭63−155468(JP,U)
【文献】 特開昭56−13910(JP,A)
【文献】 米国特許第4131314(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/62
A47C 1/124
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
及び背もたれと、これらを左右外側と後ろの三方から囲う囲い枠とを備え、
記囲い枠は、左右のサイドパネルとこれらに一体に連続したバックパネルとを有し、着座した人の前方に向けて前記左右サイドパネルの間隔が広がるように平面視台形状に形成されている、
椅子ユニット。
【請求項2】
前記座は、着座した人の前方に向けて左右間隔が広がるように平面視台形状に形成されている、
請求項1に記載した椅子ユニット。
【請求項3】
前記サイドパネルは、側面視で前記座及び背もたれの全体を覆う大きさである、
請求項1又は2に記載した椅子ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、椅子ユニットに使用する中間ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスでの執務用家具としては一般に机と椅子がセットで使用されており、例えば、一人用又は複数人用の机を左右に並べて、多数人が一列に並んで執務を行うスタイルが多かった。机の列を背中合わせに配置することもよく行われている。これらの伝統的なワーキングスタイルでは、特定の人が特定の席を使用するという固定アドレス方式が一般的である。
【0003】
しかし、近年、オフィスでのワーキングスタイルが大きく変貌しつつある。例えば、特定の席を持たずに、好きな席について仕事をするフリーアドレス方式(ノンテリトリアル方式)や、1人用に独立した席で執務するスタイル、或いは、複数人が使用できる席が固まっているグループワーキングスタイルなどである。
【0004】
これらのワーキングスタイルの変化の背景の一つとして、作業ツールとしてのノートパソコンやタブレット端末などの情報機器の小型化がある。つまり、これらノートパソコンやタブレット端末は持ち運び自在であるため、特定の席で執務する必要性が無くなり、その結果、フリーアドレス方式が大きく進展している。
【0005】
他の背景として、ワーカーの創作能力を引き出すための環境作りが進んだことが挙げられる。すなわち、ワーカーの創作能力を高めて知的生産性を上げるには、思索に集中できる環境やリラックスできる環境、或いは、同僚等と討議等して知的刺激を受けることが容易な環境が必要であり、そこで、席の独立化やグループ化が進展している。従って、作業の目的に応じて席を選択できるようにするのが好ましいと云える。
【0006】
ワーカーの集中力やリラックス性との関係では、ワーカーを取り巻く環境のクローズド性とオープン性とのバランスが重要である。例えば、完全な個室であると、外からの刺激が薄れ過ぎて緊張感が無くなり、却って生産性が落ちてしまうことが多い。他方、広いフロアーに点在しているテーブルを使用して1人で執務する場合のように、過度にオープンな環境であると、他人の動きや会話で気が散ったり他人の視線が気になったりするため、思索に集中し難いのみならず、他人に遠慮してリラックスした姿勢(例えば背伸びや瞑想)も取りづらいと云える。
【0007】
そこで、実際に提案されている家具(什器)に眼をやると、ソファを左右と後ろからパネルが囲ってクローズド性を高めた椅子ユニットとして、特許文献1,2がある。また、くつろぎつつノートパソコン操作のような作業を行えるようにソファにテーブル板を設けたものがあり、その例として、特許文献3には、座の下方に水平回動式のアームを設けて、アームの先端に立設した支柱にテーブル板を取り付けた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−94404号公報
【特許文献2】意匠登録第1482021号公報
【特許文献3】特開平10−215980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2は、椅子ユニットは手前だけに開口した状態になるため、クローズド性は高くなるが、執務用を目的にしたものではではなく、ノートパソコンの操作のような作業のためのテーブル板を備えていないため、オフィスに設置する執務用に転用することは難しいといえる。
【0010】
他方、特許文献3は、ソファに腰掛けた人が普通の姿勢でテーブル板を使用できるため、作業の容易性という点では優れているが、オープン性が高すぎるため、これも、ワーカーが長時間に亙って作業を行う執務用には転用し難い。また、特許文献3では、アームが床面に沿って配置されているため、これが人の邪魔になるという厄介な問題もある。
【0011】
つまり、椅子ユニットの単体として見た場合、クローズド性とオープン性、作業の容易性を考慮したものは見当たらないというのが現状である。
【0012】
他方、机のような執務用家具は左右に並設することが多い。また、椅子についても、例えばパイプ椅子に見られるように左右に連結することは広く行われている。これら従来の家具の連結は、元々、使用者が同じ方向を向くということを前提にして行われており、従って、机にしても椅子にしても、左右に並んだものは同じ方向を向くように姿勢が揃えられている。
【0013】
しかし、一人用の執務家具の場合、知的生産性を高めるという点から見ると、ある程度のプライバシー確保が必要であり、従って、何らかの遮蔽手段を設けるのが好ましい。この要請に対する1つの対応として、例えば特許文献3のようなテーブル板付きの椅子ユニットを同じ姿勢で左右に並べつつ、左右の椅子ユニットの間に衝立のような仕切りを設けることが考えられるが、左右に隣り合った人の間隔(距離)は変わらないため、単に仕切りを設けただけでは、知的労働に集中できる好ましい環境には至りにくいと云える。
【0014】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、知的生産性の向上に貢献し得る執務用家具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願発明は椅子ユニットに関するものであり、請求項1では、
座及び背もたれと、これらを左右と後ろの三方から囲う囲い枠とを備え、
記囲い枠は、左右のサイドパネルとこれらに一体に連続したバックパネルとを有し、着座した人の前方に向けて前記左右サイドパネルの間隔が広がるように平面視台形状に形成されている」
という構成になっている。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1において、
「前記座は、着座した人の前方に向けて左右間隔が広がるように平面視台形状に形成されている」
という構成になっている。
【0023】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「前記サイドパネルは、側面視で前記座及び背もたれの全体を覆う大きさである」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0024】
本願発明では、着座した人を囲い枠で三方から囲われるため、周囲から区画されたクローズド性を有しているが、人は、椅子ユニットの開口部に向けて腰掛けるため、オープン性も備えていて、同僚等が話しかけやすい状態になっている。従って、クローズド性とオープン性とが調和して、集中しつつ外からの刺激も受け得る環境になっている。これにより、知的生産性の向上に貢献できる。
【0025】
そして、椅子ユニットを隣合わせて、向き(姿勢)を前後に変えた状態で配置すると、隣り合った人は互いに逆方向に向いて執務を行うことになり、従って、同じ方向を向いた場合に比べて、隣り合った人の間隔を広げることができる。これにより、隣り合った人の距離感を拡大して、それぞれ執務に集中することができる。特に、隣り合った椅子ユニットのサイドパネルが中間ユニットを介して連結されていると、隣り合った人の間の間隔は多くなるため、独立性は強くなって、集中性を高めて作業に一層貢献できると云える。
【0027】
そして、椅子ユニットの囲い枠は、左右のサイドパネルが平面視で平行な姿勢も考えられるが、本願発明では椅子ユニットは平面視台形状に形成されているため、椅子ユニットに腰掛けた人の前方の空間が前方に向けて左右に広がるため、開放感を高くできる(圧迫感を無くすことができる)。従って、人はゆったりとした雰囲気で作業を行うことができて、好適である。
【0028】
更に、椅子ユニットを台形状に形成すると、座の手前にテーブル板を配置した状態であっても、椅子ユニットへの出入りの空間を広くとって、着座・離席を行いやすいという利点がある。つまり、テーブル板を右側又は左側に寄せて配置することにより、座の手前に出入り用の空間を空けることができるが、左右のサイドパネルが手前に向けて広がるように平面視で傾斜しているため、人の出入りのための空間は手前に向けて広がるのであり、これにより、着座・離席を行いやすくなって使い勝手がよい。
【0029】
また、複数の椅子ユニットをジグザグ状に配置した場合、列の両端を除いた中間部の家具装置の手前には、左右に隣り合った家具装置で挟まれた通路状の空間ができるが、椅子ユニットが台形状であると、椅子ユニットで挟まれた空間は手前に向けて広がるため、中間部の家具装置への出入りも容易になる。なお、座の前端の左右幅は、通常の椅子の座の1.5倍程度あるのが好ましい。
【0030】
椅子ユニットは平面視台形に形成されているため、2つの椅子ユニットを同じ方向に開口させて左右に並設しても、人が向く方向が平行でなくて互いに広がっている。このため、距離感を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は斜視図、(B)は平面図である。
図2】(A)はテーブル板の取り付け構造の例を示す斜視図、(B)は中間ユニットと椅子ユニットとの連結構造の一例を示す縦断側面図、(C)は遮蔽板の昇降ガイド構造を示す平断面図、(B)は遮蔽板を着脱式にした例の縦断正面図である。
図3】各分図とも、複数の家具装置を左右に連結したレイアウト例を示す斜視図である。
図4図2に示したレイアウト例の平面図である。
図5】(A)は第2実施形態の斜視図、(B)は第3実施形態の斜視図である。
図6】第4実施形態を示す図で、(A)は単体の斜視図、(B)は左右に連結した状態の斜視図、(B)は左右に連結した状態の平面図である。
図7】第5実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本願では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、この前後・左右の方向は、椅子ユニットに普通に腰掛けた人の向きを基準にしている。正面視は、着座した人と相対向した方向から見た状態である。
【0041】
(1).第1実施形態の構造
まず、図1〜4に示す第1実施形態を説明する。まず、主として図1,2を参照して構造を説明する。図1(A)に示すように、本実施形態の家具装置は、座1と背もたれ2とヘッドレスト3を有しており、これらを左右と後ろとの三方から囲い枠4で囲うことにより、椅子ユニット5が構成されている。従って、囲い枠4は、座1の左右両側に配置されたサイドパネル6と、背もたれ2及びヘッドレスト3の後ろに位置したバックパネル7とから成っている。
【0042】
左右のサイドパネル4は、手前に向けて間隔が広がるように、平面視ハ字の形態に配置されており、これに伴って、座1も手前に向けて横幅が広がるように平面視台形になっている。従って、椅子ユニット5は、平面視で手前に向けて広がった左右対称の台形状になっている。囲い枠4は、着座した人が横や後ろから見えない程度の高さになっている。また、サイドパネル6とバックパネル7とは一体に連続している。
【0043】
座1は、例えば座板にクッション材を張った構造であり、左右のサイドパネル6に、ステー材やブラケットを介して取り付けられている。また、背もたれ2は、例えば背板にクッション材を張った構造であり、バックパネル7に取り付けられている。なお、背もたれ2がばね手段に抗して後傾するロッキング構造も採用可能である。この場合は、背もたれ2の後傾動に連動して座1を前進させることも可能である。
【0044】
サイドパネル6及びバックパネル7は、木の単層板又は合板、或いは、ハニカム構造等の芯材の表裏に金属板を張った積層体など、様々な構造を採用できる。美粧のため、表面にクロスを張ることも可能である。
【0045】
左右のサイドパネル6には、着座した人の肘程度の高さよりも上の部分を手前と上方に切除した状態の切り開き部8が形成されており、前記切り開き部8に、目隠し用の薄い遮蔽板(目隠し板)9を昇降可能に装着している。遮蔽板9は、例えば、乳白色のアクリル板のように、透光性はあるが不透明な樹脂板を採用できる。勿論、透光性のない金属板や樹脂板なども採用可能である。スクリーン状(膜状)の構造も採用可能である。
【0046】
遮蔽板10は、サイドパネル6に対して昇降自在に装着することができる。この場合は、図2(C)に示すように、サイドパネル6の内部に、遮蔽板9の前端縁と後端縁とを上下スライド可能にガイドする樋状のガイド体10を内蔵したらよい。遮蔽板9は、自動車のパワーウインドーと同様の機構により、モータで昇降させることもできるし、手動で昇降させることもできる。
【0047】
遮蔽板9をモータで昇降させる場合はボタン(スイッチ)が必要になるが、ボタンは、図1(A)に示すように、サイドパネル6に設けたパネル11に設けることができる。身体の接触を防止したい場合は、切り開き部8の上面に設けてもよい。遮蔽板9を手動で昇降させる場合は、サイドパネル6の内側面に設けたハンドルの回転によって昇降させる構造や、摩擦に抗して引き上げたり押し下げたりする構成を採用できる。ガイド部にボールキャッチのような弾性的な係脱機構を設けて、ラッチ体を弾性に抗して係合部に係脱させて昇降させる構造も採用可能である。
【0048】
遮蔽板9は、着脱式とすることも可能である。その例を図2(D)に示している。すなわち、この場合は、遮蔽板9はその下端縁が受け部材12に固定されていて、受け部材12に設けた足体13を、サイドパネル6に設けた穴14に着脱自在に嵌め入れている。足体13は、板状であってもよいし棒状であってもよい。
【0049】
椅子ユニット5における片方のサイドパネル6の手前に、中間ユニット15が配置され
ている。つまり、椅子ユニット5と中間ユニット15とで複合した家具装置が構成されている。中間ユニット15は、サイドパネル6における切り開き部8の下面と同じ高さになっている。中間ユニット15は、小物類や筆記具、書類などを載置できる程度のある程度の左右横幅を有しており、外側面が一方のサイドパネル6の外面と同一面を成すような状態で配置している。また、着座した人が手首を載せ得る高さになっている。従って、マウスの操作も可能である。
【0050】
また、中間ユニット15は、手前に向けて左右横幅が大きくなる平面視台形に形成されているが、外側面をサイドパネル6の外面と同一面状に成した状態で、内側面は平面視で座1の前端と直交するように設定している。従って、外面だけでサイドパネル6と同じ角度で傾斜した左右非対称の台形になっている。
中間ユニット15を台形に形成すると、幅狭の部分が使用者の側に位置するようにして配置することにより、平面積をできるだけ確保しつつ、中間ユニットが使用者の邪魔になることを防止できる利点がある。
さて、テーブル板18は長方形になっており、その一側面が中間ユニット15の内側面と平行になるように配置すると見栄えが良いが、この場合、椅子ユニット5が台形に形成されていて中間ユニット15が長方形又は正方形であると、テーブル板18は、中間ユニット18から離れるに従って座1から離れるように平面視で傾いた姿勢になってしまい、すると、見た目が悪くなると共にノートパソコン等の使用もしにくくなることが懸念される。
これに対して、実施形態のように中間ユニット15を台形に形成すると、椅子ユニット5が台形に形成されている場合、中間ユニット15の外側面は椅子ユニット5におけるサイドパネル6と一直線に揃えつつ、中間ユニット15の内側面は、平面視で座1の前面に対して直交した姿勢に揃えることができるため、テーブル板18も、その前後端面を座1の前面と平行な姿勢に配置することができる。従って、見栄えを良くすることができると共に、ノートパソコンの操作のような作業も行いやすくなると云える。
【0051】
中間ユニット15にも、遮蔽板16を昇降自在又は着脱自在に装着している。中間ユニット15の遮蔽板16は、サイドパネル6の遮蔽板9と平面視で一直線に延びるように配置しており、中間ユニット15の上面のうち遮蔽板16よりも内側は、例えば人がマウス操作をできる程度の左右横幅になっている。遮蔽板16をモータで昇降させる場合は、図1(A)に示すように、中間ユニット15の上に操作パネル17を設けたらよい。
【0052】
中間ユニット15には、少なくともノートパソコンを載置できる程度の大きさのテーブル板14が取り付けられている。テーブル板18の取り付け構造としては、図1(A)に一点鎖線で示すように、中間ユニット15の下端部に前後回動可能に取り付けられた支柱19を使用することができる。
【0053】
この場合、支柱19の下端に、床面に当接し得る後ろ向き部19aを有しており、後ろ向き部19aの後端部が,中間ユニット15に左右横長の回動軸によって回動可能に連結されている。支柱19の上端には図示しないブラケットが固定されており、テーブル板18はブラケットに固定されている。支柱19は、連結部の摩擦に抗して回動することができるが、ロック装置を設けて、ボタン操作やレバー操作によってロックを解除してから回動させることも可能である。
【0054】
図2(A)では、他の取り付け構造を示している。すなわちこの例では、中間ユニット15の内側面に、水平状のレール20を介してスライドブラケット21を前後スライド可能に装着して、スライドブラケット21にテーブル板18を固定している。テーブル板18は、スライドブラケット21に対して前後回動可能に取り付けることも可能である。
【0055】
中間ユニット15は、サイドパネル6の前端部に連結されている。この連結構造の例を図2(B)に示している。すなわちこの例では、H形の連結具22を利用しており、サイドパネル6の前端に設けた前板23に後ろ係合穴24を形成して、この後ろ係合穴24に連結具22の後部係合爪22aを落とし込み係合させる一方、中間ユニット15の後面板15aに前係合穴25を形成して、この前係合穴25の部位を、連結具22の前係合爪22bに上から嵌め込み係合させている。連結具22は上下に複数化個所設けている。
【0056】
H形の連結具22を使用することに代えて、中間ユニット15の後面に下向き鉤状の係合爪を上下複数個設けて、これを、サイドパネル6の前端に形成した係合穴に嵌め込むことも可能である。或いは、中間ユニット15の後面とサイドパネル6の内側面とに重なる平面視L形のジョイント金具を用意して、このジョイント金具を両者にねじ止めするといったことも可能である。
【0057】
(2).レイアウトの態様・まとめ
上記の椅子ユニット5は、左右に並設して家具装置を構成することができる。そのレイアウト例を、図3,4で示している。図3(A)及び図4(A)に示す第1レイアウト例では、複数の椅子ユニット5を、開口方向を前後に変えて左右に並設している。中間ユニット15は右サイドパネル6に連結しており、隣り合った椅子ユニット5の左サイドパネル6と中間ユニット15とが、互いに左右に重なっている。この場合、左右に重なったサイドパネル6と中間ユニット15は連結してもよいし、単に重ねただけであってもよい。
【0058】
また、この第1レイアウト例では、右サイドパネル6に中間ユニット15を連結した右使いタイプの椅子ユニット5と、左サイドパネル6に中間ユニット15を連結した左使いタイプの椅子ユニット5とが、左右に交互に並んでいる。この第1レイアウト例では、家具装置の奥行き寸法は小さくなっている。従って、前後方向のスペースに余裕がない場合や、オープン性を重視したい場合には好適である。
【0059】
図3(B)及び図4(B)に示す第2レイアウト例では、椅子ユニット5を、その開口方向を前後に交互に変えて左右に併設している点は第1レイアウト例と共通しているが、第1レイアウトとは異なって、隣り合った椅子ユニット5におけるサイドパネル6の端面間に中間ユニット15が配置されている。
【0060】
従って、家具装置の奥行きが大きくなっており、左右の両端の椅子ユニット5を除いて、中間部に位置した椅子ユニット5では、使用者の前方に、隣り合った2つの家具装置で囲われた通路状の大きな空間26が空いている。また、隣り合った人の間隔は、第1レイアウト例の場合よりも広がっている。このため、椅子ユニット5のクローズド性、プライバシー確保機能が高くなっている。室のスペースに余裕がある場合や、ワーカーに一層集中しやすい環境を提供したい場合に好適である。
【0061】
第1レイアウト例と第2レイアウト例との中間的なレイアウト例として、中間ユニット15とサイドパネル6とを前後にずらして重ねるということも可能である。すなわち、中間ユニット15の前後中途部にサイドパネル6の前端部が位置するようにして、左右の椅子ユニット5を配置することも可能である。
【0062】
図3(C)及び図4(C)に示す第3レイアウト例では、同じ方向に開口する姿勢に配置した2つの椅子ユニット5と、前後逆向きに開口するように配置した椅子ユニット5とを組み合わせている。従って、同じ方向に対向した2つの椅子ユニット5を1セットとして、隣り合ったセットが互いに逆方向に開口している。
【0063】
同じ方向に開口した左右2つの椅子ユニット5では、サイドパネル6と中間ユニット15とが互いに重なっているが、これらは連結具等で連結してもよいし、単に重ねただけでもよい。また、隣り合って逆方向に開口した椅子ユニット5は、互いのサイドパネル6の前端面が当接しているが、これらについても、連結してもよいし、単に当接させただけでもよい。
【0064】
椅子ユニット5は平面視台形に形成されているため、2つの椅子ユニット5を同じ方向に開口させて左右に並設しても、人が向く方向が平行でなくて互いに広がっている。このため、距離感が広がっている。また、同じ方向に開口した姿勢で左右に並設されていても、中間ユニット15に設けた遮蔽板9によって各人のエリアが区画されているため、隣の人に気をとられることなく仕事に集中できる。また、遮蔽板9を下降させることにより、コミュニケーションを取りやすくできるという利点もある。
【0065】
座1の前端の左右横幅(或いは、左右サントパネル6の前端間の間隔は、通常の椅子の座の1.5倍程度に設定している。そして、テーブル板18は家具装置の左又は右の片側に寄せているため、テーブル板18の横に人が出入りできる空間が空くが、椅子ユニット4が台形に形成されていてサイドパネル6が手前に向かって外側にずれているため、出入りのための空間を大きくして、着座・離席が容易になる。
また、図4(A)(B)のように、多数の複数の家具装置をジグザグ状に配置すると、中間部の家具装置の手前に左右の椅子ユニット4で挟まれた通路状の空間26が空くが、椅子ユニット6が台形状であることにより、空間26は手間に向けて間隔が広がるため、中間部に位置した椅子ユニット4が奥まった状態になっていても、椅子ユニット4への出入りを楽に行えるという利点がある。
【0066】
さて、例えば、通常の一人用椅子は、使用者の最大横幅と同じ程度の左右横幅である。従って、左右のサイドパネルを備えた状態でテーブル板を設けていると、テーブル板を跳ね上げないと人は着座・離席することができない。しかし、これでは手間であり、長時間にわたって使い続ける執務用家具としては不適である。
【0067】
これに対して本実施形態では、座1は、通常の椅子の1.5倍程度の横幅があるため、テーブル板18を右か左に寄せておくことにより、テーブル板18の横に人が出入りできる空間を空けることができる。また、座1のテーブル板18との間には、人が足を差し込みできる程度の間隔が空いている。従って、テーブル板18を跳ね上げ式にしなくても、人は容易に着座・離席することができる。従って、テーブル板18にノートパソコン等の物品を載せたままで、席を立ったり座ったりすることができる。このため、使い勝手が非常によくて、執務用の家具としても好適である。
【0068】
しかも、本実施形態のように椅子ユニット5を平面視台形に形成すると、座1の上の空間が前広がりになるため、人は着座に際して身体を滑り込ませやすいと共に、離席に際しては身体を離しやすくなる。従って、着座・離席の容易性は一層高くなる。また、視覚面(心理面)からも、着座・離席が容易で使いやすい椅子部という印象も強い。なお、サイドパネル6は座1の手前に突出させることも可能であるが、この場合は、平面視台形に形成することによる着座・離席の容易性は一層顕著に表れると云える。
【0069】
以上のように、本実施形態の椅子ユニット5は、その複数個を様々なレイアウトで配置して様々な形態の家具装置を形成できるため、各種の条件を考慮して最適なレイアウトを実現できる。また、椅子ユニット5の単体で見ても、例えば、全体として使用者の前方に向けて左右間隔が広がっているため、圧迫感がなくて作業を行いやすいと云える。また、中間ユニット15の内側面は座1の前端に対して平面視で直交しているため、中間ユニット15に使用者の足が当たることを防止できて、使い勝手がよい。また、長方形や正方形のテーブル板18を、その前後縁が座1の前端と平行な姿勢に揃えることができるため、見た目もよい。
【0070】
なお、明るい環境を望む場合は、オプション品として灯具を配置したらよい。この場合、灯具は、中間ユニット15の上面に載置したり、遮蔽板9,16に固定したりすることができる。遮蔽板9の上部等に有機EL板を配置して、面発光式の灯具を遮蔽板9,16に一体的に設けることも可能である。
【0071】
図示していないが、中間ユニット15などに、電源用のコンセントや、携帯電話やスマートフォンやタブレット端末用の充電用USBポート、或いは、LANポートなどを設けることが可能である。更に、サイドパネル4,5の上面やフロントパネル7、或いはテーブル板18に、無線送電機を内蔵することも可能である。
【0072】
電源用コンセントなどは、例えば、中間ユニット15の上面や前後両面に前後対象に設けることも可能である。すると、例えば、2つの家具を向かい合わせに配置するにおいて、前後の家具の間に1台の中間ユニット15を配置しても、向かった人がそれぞれ1つの
フロントパネル7から電源等をとることができる。すなわち、1つのフロントパネル7を、対向した人への給電手段として兼用できる。
【0073】
フロントパネルの左右側面にそれぞれコンセント等の給電手段を設けると、図4(B)のように、2つの家具を逆向きの姿勢としつつ対向させずに左右にずらして配置した場合、2つの家具の間に1つだけ中間ユニット15を配置しても、2つの家具において1つの中間ユニット15を給電等の手段として共用することができる。
【0074】
(3).他の実施形態
次に、図5以下に示す他の実施形態を説明する。図5(A)に示す第2実施形態は、基本的には第1実施形態と同様であり、第1実施形態との相違点は、中間ユニット15を内側に開口した袋構造に構成して、中間ユニット15の天板の下面にブラケット28を前後自在に装着して、ブラケット28にテーブル板18を固定している点である。この実施形態では,中間ユニット15の内部を荷物の収納部として利用できる。
【0075】
図5(B)に示す第3実施形態も第1実施形態の変形例であり、第1実施形態との相違点は、中間ユニット15を設けていない側のサイドパネル6に、物を載置可能な台板29を設けている点である。台板29には、携帯電話やスマートフォン、筆記具、書類、メモ、時計など、小物を中心にして様々な物を載置できるし、肘当てとしても使用可能である。
【0076】
台板29は、サイドパネル6から内側に張り出した板状の形態になっている。従って、座1の上のうち肘当て29の下方を荷物置き場に使用できる。図では省略しているが、台板29を設けたサイドパネル6にも、遮蔽板9を設けている。
【0077】
図6に示す第4実施形態では、サイドパネル6とバックパネル7との全周にわたって切り開き部8を形成して、遮蔽板9を全周にわたって形成している。遮蔽板9は、囲い枠4の全周にわたって連続しているが、例えば、(A)に一点鎖線で示すように、サイドパネル6の後端寄り部位において3つに分離構成し、中間部は固定式として、左右の部分は昇降式又は着脱式とすることも可能である。
【0078】
また、本実施形態では、左右のサイドパネル6は、小物載置台として使用できるような左右横幅を有しており、物の載置面をできるだけ広げるために、遮蔽板9は外側に寄せて配置している。中間ユニット15は平面視長方形になっている。(B)(C)に示すレイアウトは、第1実施形態の図3(B)、図4(B)のレイアウトに対応したものである。この図6の実施形態でも、椅子ユニット5は手前に向けて広がった台形に形成されている。
【0079】
なお、図6の実施形態では、横幅が大きい部分をサイドパネル6、バックパネル7として説明したが、サイドパネル6及びバックパネル7が、厚い下部と薄い上部とで構成されているということも可能である。つまり、サイドパネル及びバックパネルを、遮蔽板が含まれた概念として捉えるものであり、遮蔽板9も囲い機能を備えているので、遮蔽板9もサイドパネル6の一部として特定するのが適切であるとも云える。
【0080】
上記の各実施形態は中間ユニット15を備えていたが、図7に示す第5実施形態は中間ユニット15を備えておらず、代わりに、一方のサイドパネル6を座1の手前に突出させたフロントパネル30を構成し、フロントパネル30にテーブル板18を取り付けている。テーブル板18は、矢印で示すように、フロントパネル30に対して、前後動自在に取り付けることも可能であるし、水平旋回自在に取り付けることも可能である。
【0081】
図では、左サイドパネル6にフロントパネル30を設けた左使いになっているが、右サイドパネル6にフロントパネル30を設けた右使いとすることも可能である。この実施形態も、様々なレイアウトを実現できる。なお、この実施形態では、サイドパネル6に台板29を設けている。
【0082】
本願発明の実施形態を何点か説明したが、本願発明は、上記の他にも様々に具体化できる。例えば、背もたれとバックパネルとの間に間隔を空けて、この部位を荷物置き場に使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本願発明は、実際に家具装置に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0084】
1 座
2 背もたれ
4 囲い枠
5 椅子ユニット
6 サイドパネル
7 バックパネル
8 切り開き部
9,16 遮蔽板
11,17 昇降操作用パネル
15 中間ユニット
16 遮蔽板
18 テーブル板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7