【実施例1】
【0033】
図5は、混合型NPC3レベルインバータ回路のトポロジ図である。回路のトポロジ内のスイッチネットワークは2つの部分を含み、左半分がNPC3レベルインバータ回路であり、右半分が2レベルインバータ回路である。回路のトポロジにおいて、従来の2レベルインバータ回路の低い導電損失特性及びNPC3レベルインバータ回路の低いスイッチング損失特性は、コンバータの全体の損失を減らし且つコンバータ性能を改善するために、包括的に使用され得る。
【0034】
図6a乃至
図6cは、本発明のこの実施例に従う変換回路の略構造である。回路は、入力端子と、出力端子と、制御モジュールと、半導体スイッチングデバイスによって形成されるスイッチネットワークとを含む。スイッチネットワークは、第1スイッチユニット及び第2スイッチユニットを含む。
【0035】
図6b又は
図6cに示されるように、入力端子は、正の直流バス端子及び負の直流バス端子を含み、出力端子は、交流出力端を含み、第1スイッチユニットは、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3、第4スイッチS4、及びフライングクランピングキャパシタCcを含み、更には、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第3スイッチS3、第4スイッチS4は、第1コンバータブリッジアームを形成するように直列接続され、第1コンバータブリッジアームの2つの端部は夫々、正の直流バス端子P及び負の直流バス端子Nへ接続され、フライングクランピングキャパシタCcの第1端は、第1スイッチS1と第2スイッチS2との間の直列接続点SPへ接続され、フライングクランピングキャパシタCcの第2端は、第3スイッチS3と第4スイッチS4との間の直列接続点SNへ接続され、第2スイッチS2と第3スイッチS3との間の直列接続点は、第1スイッチユニットの出力端を形成する。
【0036】
具体的に、第1スイッチS1の第1端は正の直流バス端子Pへ接続され、第1スイッチS1の他端は第2スイッチS2
の一端へ接続され、接合点はSPである。第2スイッチS2の他端は第3スイッチS3
の一端へ接続され、接合点はスイッチネットワークの出力端OUTである。第3スイッチS3の他端は第4スイッチS4
の一端へ接続され、接合点はSNである。第4スイッチS4の他端は負の直流バス端子Nへ接続され、フライングクランピングキャパシタCcの第1端はSPへ接続され、フライングクランピングキャパシタCcの他端はSNへ接続される。このようにして、スイッチデバイスS2及びS3の電圧クランピングが実装される。フライングクランピングキャパシタCcは、スイッチデバイスS2及びS3の電圧クランピングを実装して上記のデバイスの過電圧損傷を回避するよう構成される。
【0037】
第2スイッチユニットは第5スイッチS5及び第6スイッチS6を含み、第5スイッチS5及び第6スイッチS6は第2コンバータブリッジアームを形成し、第2コンバータブリッジアームの2つの端部は夫々、正の直流バス端子P及び負の直流バス端子Nへ接続され、第5スイッチS5と第6スイッチS6との間の直列接続点は、第2スイッチユニットの出力端へ接続される。
【0038】
第1スイッチユニット及び第2スイッチユニットの出力端OUTは、交流出力端Vacへ接続される。
【0039】
第1スイッチユニット及び第2スイッチユニットは制御モジュールへ接続され、制御モジュールの制御下で直流電圧と交流電圧との間の電力変換を行い、スイッチデバイスは、直流と交流との間の電気エネルギ変換を実装するために、前もって設定された時間シーケンスに従って制御モジュールによって制御される。
【0040】
この実施例で提供される回路では、第1スイッチユニット内のスイッチデバイスの電圧平衡及びコンバータの性能の最適制御を実装するために、フライングクランピングキャパシタの定常状態電圧は、通常、直流バス電圧の1/2、すなわち、Vbus/2に制御される。この場合に、駆動ロジックに基づき、直流バス中点Mに対する第1スイッチユニット及び第2スイッチユニットの出力端OUTの出力レベルは、+Vbus/2、0、及び−Vbus/2である。
【0041】
任意に、実際の制御プロセス中に、制御モジュールは、実際の適用状況に基づき、フライングクランピングキャパシタの定常状態電圧に対して微調整を行ってもよい。その上、制御モジュールは、制御回路、コントローラ、などを含む。
【0042】
任意に、直流入力電圧Vbusに基づき、第1スイッチユニット内の各スイッチデバイス(例えば、第1スイッチS1乃至第4スイッチS4)の耐電圧値は、Vbus/2よりも小さくなく、第2スイッチユニット内の各スイッチデバイス(例えば、第5スイッチS5及び第6スイッチS6)の耐電圧値は、Vbusよりも小さくない。
【0043】
最大直流入力電圧Vbusが1kVであるコンバータ応用では、任意に、第1スイッチユニット内のスイッチデバイスS1乃至S4の夫々の選択可能な耐電圧値は、600V又は650Vであり、第2スイッチユニット内の第5スイッチS5及び第6スイッチS6の夫々の選択可能な耐電圧値は、1200Vである。
【0044】
この実施例で提供される回路は、2レベルインバータ回路の低い導電損失及びマルチレベルインバータ回路の低いスイッチング損失を包括的に使用することができ、第1スイッチユニット内のスイッチデバイス及び
第2スイッチユニット内のスイッチデバイスのスイッチオン/オフ時間シーケンスを制御することによって、コンバータの損失を大いに減らすことができる。具体的に、第1スイッチS1及び第2スイッチS2が両方ともオンである時間内に、すなわち、第1スイッチユニット及び第2スイッチユニットの出力端OUTが正の直流バス端子Pへ接続される場合に、第5スイッチS5は、少なくともある期間オンであるよう制御され、そして、第3スイッチS3及び第4スイッチS4が両方ともオンである時間内に、すなわち、出力端OUTが負の直流バス端子Nへ接続される場合に、第6スイッチS6は、少なくともある期間オンであるよう制御される。第5スイッチS5のオン状態電圧降下は、第1スイッチS1及び第2スイッチS2が直列接続された後に得られる電圧降下よりも低く、第6スイッチS6のオン状態電圧降下は、第3スイッチS3及び第4スイッチS4が直列接続された後に得られる電圧降下よりも低いので、第5スイッチS5及び第6スイッチS6のスイッチオンは、コンバータの導電損失の低減をもたらし得る。
【0045】
加えて、制御モジュールは、第1スイッチユニットを使用することによって電力変換において過渡整流を実装するために、第2スイッチユニット内のスイッチデバイスのスイッチオン/オフ時点を、第1スイッチユニット内のスイッチデバイスのスイッチオン/オフ時点よりも後又は先であるよう制御する。S1乃至S4は低電圧デバイスであり、優れたスイッチング特性及び低いスイッチング損失を有しているので、S1乃至S4を使用することによって実装されるスイッチオン/オフ整流は、コンバータのスイッチング損失の低減をもたらし、そして、第2スイッチユニット内のスイッチデバイスのゼロ電圧スイッチオン及びスイッチオフを実装することができる。
【0046】
任意に、回路は、第1スイッチユニット及び第2スイッチユニットの出力端OUTの電圧においてリップルを除去するよう構成されるフィルタリングモジュールを更に含み、フィルタリングモジュールの一端は、出力端OUTへ接続され、フィルタリングモジュールの他端は、交流出力端へ接続される。フィルタリングモジュールはフィルタ回路を含み、フィルタ回路はインダクタLであってよい。
【0047】
任意に、第5スイッチS5及び第6スイッチS6は、スイッチング損失を有さない。そのため、コンバータの導電損失を減らすために、S5及びS6は、実際の用途では、導通電圧降下が低いスイッチデバイスであってよい。
【0048】
任意に、第1スイッチユニット内の4つのスイッチ(S1乃至S4)のスイッチングサイクルは同じであり、4つのスイッチの夫々のスイッチング周波数は高周波であり、第1スイッチS1及び第4スイッチS4は相補的なスイッチであり、第2スイッチS2及び第3スイッチS3は相補的なスイッチである。高周波は、スイッチング周波数がkHz(キロヘルツ)レベル、例えば、数kHz、数十kHz、又は数百kHzにあることを意味する。各スイッチのスイッチング周波数の値は、この実施例で特には制限されない。
【0049】
更には、第1スイッチユニット内の第1スイッチS1及び第2スイッチS2は、180°の位相シフトでオン/オフを切り替えられ、第3スイッチS3及び第4スイッチS4は180°の位相シフトでオン/オフを切り替えられる。実際の用途では、フライングクランピングキャパシタの定常状態電圧制御を実装するために、第1スイッチと第2スイッチとの間の位相シフト、及び第3スイッチと第4スイッチとの間の位相シフトは、厳密に180°に固定されず、180°近くで変動する。
【0050】
第1スイッチユニット及び第2スイッチユニット内の各スイッチは、1つのスイッチであってよく、代替的には、複数のスイッチによって形成されたスイッチデバイスを含んでもよいことが留意されるべきである。この実施例では、スイッチユニット内のスイッチ(S1乃至S6を含む。)は夫々が、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor,IGBT)(T1乃至T6)及びIGBTのアンチパラレルダイオード(D1乃至D6)を含む。その上、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、第4スイッチ、第5スイッチ、及び第6スイッチは、代替的に、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(metal-oxide semiconductor field-effect transistor,MOSFET)デバイスであってもよい。
【0051】
図7及び
図8に示されるように、回路のトポロジは、スイッチネットワーク、直流バスキャパシタ、フライングクランピングキャパシタ、出力フィルタインダクタ、及び制御モジュールを含む。スイッチネットワークは2つのスイッチユニット、すなわち、第1スイッチユニット及び第2スイッチユニットを含む。第1スイッチユニットは、第1スイッチ(T1及びD1)、第2スイッチ(T2及びD2)、第3スイッチ(T3及びD3)、第4スイッチ(T4及びD4)、及びフライングクランピングキャパシタCcを含み、第2スイッチユニットは、第5スイッチ(T5及び
D5)及び第6スイッチ(T6及びD6)を含む。
【0052】
第1スイッチユニットにおいて、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、及び第4スイッチは、第1コンバータブリッジアームを形成するように直列接続され、第1スイッチの第1端は正の直流バス端子Pへ接続され、第1スイッチの他端は第2スイッチ
の一端へ接続され、接合点はSPである。第2スイッチと第3スイッチとの接合点は第1スイッチユニットの出力端を形成し、第3スイッチの他端は第4スイッチ
の一端へ接続され、接合点はSNである。第4スイッチの他端は負の直流バス端子Nへ接続され、フライングクランピングキャパシタの第1端はSPへ接続され、フライングクランピングキャパシタの他端はSNへ接続される。第2スイッチユニットにおいて、第5スイッチ及び第6スイッチは、第2コンバータブリッジアームを形成するように直列接続され、第5スイッチの第1端は正の直流バス端子Pへ接続され、第5スイッチの他端は第6スイッチ
の一端へ接続され、接合点は第2スイッチユニットの出力端であり、第6スイッチの他端は負の直流バス端子Nへ接続される。
【0053】
直流バスキャパシタは、
図7に示されるように、キャパシタC1及びキャパシタC2を直流に接続することによって形成されてよく、あるいは、
図8に示されるように、単一の高電圧キャパシタC1によって直接実装されてもよい。記載の便宜上、本願の実施形態では、キャパシタC1及びキャパシタC2がバスキャパシタを形成するように直列接続される例が使用され、基準電位、すなわち、
図7に示される点M
の電圧が仮想化される。
【0054】
制御モジュールが実施形態では更に設けられ、
図6、
図7及び
図8に示される上記の変換回路を制御するために使用される。
【0055】
この実施例で提供される制御方法を詳細に記載するために、
図9は、変換回路内のスイッチデバイスの駆動ロジックの時間シーケンス図である。コンバータ制御プロセスにおいて、コンバータブリッジアーム内の相補的なスイッチ管の間の不感時間制御のために一般的な技術が使用され、そのため、
図9に示される時間シーケンス図では、コンバータブリッジアーム内の相補的なスイッチデバイス間の不感時間は考慮されず、駆動波形の概略図のみが示されている。
【0056】
図9に示されるように、第1スイッチユニットにおいて、各スイッチデバイスのスイッチングサイクルはTswであり、パルス幅は、パルス幅変調(pulse width modulation,PWM)により入力及び出力条件に基づき制御モジュールによって取得され、ここで、第1スイッチT1及び第4スイッチT4は相補的なスイッチであり、第2スイッチT2及び第3スイッチT3は相補的なスイッチであり、第1スイッチT1及び第2スイッチT2は180°の位相シフトでオン/オフを切り替えられ、第3スイッチT3及び第4スイッチT4は180°の位相シフトでオン/オフを切り替えられる。第1スイッチユニットとは異なり、第2スイッチユニット内の第5スイッチT5及び第6スイッチT6は非相補的なスイッチであり、T5及びT6は、第1スイッチユニット内のスイッチデバイスの時間シーケンスに基づいて、オン又はオフされると決定される。
【0057】
図9において、Vmは、交流出力端電圧、インダクタ電流、直流バス電圧、及び外部コマンドのようなフィードバック量に基づいて制御モジュールによって取得される変調電圧を表す。Voは、回路内の第1スイッチユニット及び第2スイッチユニット(又はスイッチネットワークとも呼ばれる。)の出力端OUTの電圧を表し、上記の電圧の両方について、直流バス中点Mの電圧が基準電位となる。
【0058】
この実施例で提供される方法において、制御モジュールは、パルス幅変調を実行するよう第1スイッチユニット内の各スイッチデバイスを制御し、それにより、スイッチネットワークの出力端は、高周波インパルス電圧のような、必要とされる交流電圧を出力する。更に、制御モジュールは、第1スイッチユニット内の各スイッチデバイスをオン又はオフすることにおいて協同するよう第2スイッチユニット内の各スイッチデバイスを制御する。具体的な制御プロセスは次の通りである。
【0059】
第1スイッチ及び第2スイッチが両方ともオンである時間内に、すなわち、スイッチネットワークの出力端OUTが正の直流バス端子Pへ接続される場合に、制御モジュールは、少なくともある期間オンであるよう第5スイッ
チを制御し、第3スイッチ及び第4スイッチが両方ともオンである時間内に、すなわち、スイッチネットワークの出力端OUTが負の直流バス端子Nへ接続される場合に、制御モジュールは、少なくともある期間オンであるよう第6スイッチを制御する。
【0060】
第5スイッチのオン状態電圧降下は、第1スイッチ及び第2スイッチが直列接続された後に得られる電圧降下よりも低く、第6スイッチのオン状態電圧降下は、第3スイッチ及び第4スイッチが直列接続された後に得られる電圧降下よりも低いので、第5スイッチ及び第6スイッチのスイッチオンは、電流フローループでの導通電圧降下の低減をもたらし、それによってコンバータの導電損失を減らし得る。
【0061】
任意に、コンバータのスイッチング損失を減らすよう第1スイッチユニットを十分に使用するために、スイッチネットワークの出力端が正の直流バス端子へ接続される場合に、すなわち、スイッチネットワークの出力端がレベルVbus/2を出力する場合に、制御モジュールは、第5スイッチT5を、第1スイッチT1又は第2スイッチT2よりもある期間遅れてオンされるよう制御し、第1スイッチT1又は第2スイッチT2は、スイッチングオン整流を実施するために使用され、スイッチネットワークの出力端がフライングクランピングキャパシタを介して正の直流バス端子又は負の直流バス端子へ接続される場合に、すなわち、スイッチネットワークの出力
端がレベル0を出力する場合に、制御モジュールは、第5スイッチT5を、第1スイッチT1又は第2スイッチT2よりもある期間先行してオフされるよう制御し、第1スイッチT1又は第2スイッチT2は、スイッチングオフ整流を実施するために使用される。
【0062】
同様に、スイッチネットワークの出力端が負の直流バス端子へ接続される場合に、すなわち、スイッチネットワークの出力端がレベル−Vbus/2を出力する場合に、制御モジュールは、第6スイッチT6を、
第3スイッチT3又は
第4スイッチT4よりもある期間遅れてオンされるよう制御し、第3スイッチT3又は第4スイッチT4は、スイッチングオン整流を実施するために使用され、スイッチネットワークの出力端がフライングクランピングキャパシタを介して正の直流バス端子又は負の直流バス端子へ接続される場合に、すなわち、スイッチネットワークの出力
端がレベル0を出力する場合に、制御モジュールは、第6スイッチT6を、
第3スイッチT3又は
第4スイッチT4よりもある期間先行してオフされるよう制御し、第3スイッチT3又は第4スイッチT4は、スイッチングオフ整流を実施するために使用される。
【0063】
この方法では、第1スイッチユニット内のスイッチデバイスは低電圧デバイスであり、優れたスイッチング特性及び低いスイッチング損失を有しているので、低電圧デバイスが整流を実装するために使用され、それによってコンバータのスイッチング損失を低減し得る。
【0064】
具体的な実施形態において、第2スイッチユニット内のスイッチデバイスのスイッチオン/オフ時間シーケンスが、第5スイッチT5のスイッチ時間シーケンスを一例として使用することによって記載される。制御方法は、具体的に、次を含む。
【0065】
図9に示されるように、変調電圧の正の半サイクルにおいて、第1スイッチT1がオフであり且つ第2スイッチT2がオンである場合に、第1スイッチT1が時点t0でオンされるとき、すなわち、スイッチネットワークの出力電圧がゼロ電圧からVbus/2に急増するとき、制御モジュールは、第5スイッチT5を、時点t0から時間インターバルTd1後にオンされるよう制御する。第1スイッチT1は時点t0でスイッチングオン整流を完了しており、第5スイッチの2つの端部の間の電圧はゼロであり、従って、ゼロ電圧スイッチオンは、時間インターバル後に第5スイッチT5をオンすることによって実施され得、それにより、T5はスイッチングオン損失を有さない。T5がオンされた後、T5の電圧降下は、T1及びT2が直列接続された後に得られる電圧降下よりも低いので、負荷電流は主にT5を流れ、それによってコンバータの導電損失は低減される。
【0066】
第1スイッチT1及び第2スイッチT2が両方ともオンである場合に、第2スイッチT2が時点t1でオフされるべきであるとき、制御モジュールは、負荷電流を第1スイッチユニットへ切り替えるために、第5スイッチT5を、時点t1より時間インターバルTd2前にオフされるよう制御する。このようにして、T2は、スイッチングオフ整流を実施し且つ第5スイッチT5のゼロ電圧スイッチオフを実施するために使用され、それにより、T5はスイッチングオフ損失を有さない。実際の制御プロセスでは、制御モジュールは、少なくとも1スイッチングサイクル前に第2スイッチT2のスイッチオフ時点を計算してよく、それにより、T5のスイッチオフ時点は、T2のスイッチオフ時点と、T2のスイッチオフ時点までの、スイッチングオフが実行されてからの時間インターバルTd2とに基づいて、求められ得る。
【0067】
第1スイッチがオンであり且つ第2スイッチがオフである場合に、第2スイッチT2が時点t2でオンされるとき、制御モジュールは、第5スイッチT5を、時点t2から時間インターバルTd3後にオンされるよう制御する。このようにして、T2は、スイッチングオン整流を実施し且つ第5スイッチT5のゼロ電圧スイッチオンを実施するために使用され、それにより、T5はスイッチングオン損失を有さない。
【0068】
第1スイッチ及び第2スイッチが両方ともオンである場合に、第1スイッチが時点t3でオフされるべきであるとき、制御モジュールは、第5スイッチT5を、時点t3より時間インターバルTd4前にオフされるよう制御する。このようにして、T1は、スイッチングオフ整流を実施し且つ第5スイッチT5のゼロ電圧スイッチオフを実施するために使用され、それにより、T5はスイッチングオフ損失を有さない。実際の制御プロセスでは、制御モジュールは、少なくとも1スイッチングサイクル前に第1スイッチT1のスイッチオフ時点を計算してよく、それにより、T5のスイッチオフ時点は、T1のスイッチオフ時点と、T1のスイッチオフ時点までの、スイッチングオフが実行されてからの時間インターバル
Td4とに基づいて、求められ得る。
【0069】
上記の時間シーケンス制御が実行される場合に、T5は、ゼロ電圧スイッチオン及びスイッチオフを実装することができ、スイッチング損失を有さず、主たるスイッチング損失は、T1及びT2で起こる。T1及びT2は低電圧デバイスであり、スイッチング損失が低いので、コンバータのスイッチング損失は、上記の様態では低減され得る。
【0070】
第5スイッチT5が第1スイッチT1又は第2スイッチT2よりも後にオンされる時間インターバルと、第5スイッチT5が第1スイッチT1又は第2スイッチT2よりも先にオフされる時間インターバルとは、電流立ち上がり時間及び電流立ち下がり時間のような、第1スイッチユニット及び第2スイッチユニット内のスイッチデバイスのスイッチング特性に基づき決定されてよい。任意に、時間インターバルは、制御モジュールによってもっぱら設定されてよい。一般に、時間インターバルは、数ナノ秒から数マイクロ秒の間である。例えば、時間インターバルは、0nsから10μsの間の任意の値である。
【0071】
同様に、変調電圧の負の半サイクルにおいて、第6スイッチT6のスイッチオン/オフ時間シーケンスは第5スイッチT5のそれと同等であり、第6スイッチT6のスイッチ時間シーケンスは、第3スイッチT3及び第4スイッチT4によって決定される。
【0072】
具体的に、第3スイッチT3がオンであり且つ第4スイッチT4がオフである場合に、第4スイッチT4が時点t5でオンされるとき、制御モジュールは、第6スイッチT6を、第4スイッチT4のスイッチオン時点t5から時間インターバルTd5後にオンされるよう制御する。このようにして、第4スイッチt4は、スイッチングオン整流を実施し且つT6のゼロ電圧スイッチオンを実施するために使用され、それにより、T6はスイッチングオン損失を有さない。
【0073】
第3スイッチT3及び第4スイッチT4が両方ともオンである場合に、第3スイッチT3が時点t6でオフされるべきであるとき、制御モジュールは、負荷電流を第1スイッチユニットへ切り替えるために、第6スイッチT6を、第3スイッチT3のスイッチオフ時点t6より時間インターバルTd6前にオフされるよう制御する。このようにして、T3は、スイッチングオフ整流を実施し且つT6のゼロ電圧スイッチオフを実施するために使用され、それにより、T6はスイッチングオフ損失を有さない。
【0074】
第3スイッチT3がオフであり且つ第4スイッチT4がオンである場合に、第3スイッチT3が時点t7でオンされるとき、制御モジュールは、第6スイッチT6を、第3スイッチT3のスイッチオン時点t7から時間インターバルTd7後にオンされるよう制御する。このようにして、T3は、スイッチングオン整流を実施し且つT6のゼロ電圧スイッチオンを実施するために使用され、それにより、T6はスイッチングオン損失を有さない。
【0075】
第3スイッチT3及び第4スイッチT4が両方ともオンである場合に、第4スイッチT4が時点t8でオフされるべきであるとき、制御モジュールは、第6スイッチT6を、第4スイッチT4のスイッチオフ時点t8より時間インターバルTd8前にオフされるよう制御する。このようにして、T4は、スイッチングオフ整流を実施し且つT6のゼロ電圧スイッチオフを実施するために使用され、それにより、T6はスイッチングオフ損失を有さない。
【0076】
上記の時間シーケンス制御が実行される場合に、T6は、ゼロ電圧スイッチオン及びスイッチオフを実装することができ、スイッチング損失を有さず、主たるスイッチング損失は、T3及びT4で起こる。T3及びT4は低電圧デバイスであり、スイッチング損失が低いので、コンバータのスイッチング損失は、上記の様態では低減され得る。
【0077】
この実施例におけるスイッチの「スイッチオン」と「スイッチオフ」との間の違いは、「スイッチオン」が主に、スイッチに対して実行される動作を指し、スイッチをオンする過渡状態を強調し、「オン」が主に、スイッチの定常状態と、半導体スイッチが閉回路内にある状態にあることとを意味する点にあることが留意されるべきである。
【0078】
この実施例で提供される回路構造及び制御方法では、コンバータのスイッチング損失は、低電圧デバイスと組み合わせてフライングキャパシタ3レベル回路トポロジを使用することによって低減され得、コンバータの導電損失は、高電圧デバイスと組み合わせて従来のブリッジ型2レベル回路トポロジを使用することによって低減され得る。
【0079】
混合型NPC3レベルインバータ回路と比較して、本願で提供される回路構造では、フライングキャパシタが、
図5に示されるダイオードD2及びダイオードD3のようなダイオードを置換するために使用される。これは、半導体の数量を減らし且つ回路構造を簡単にして、電力モジュールレイアウトを容易にする。その上、フライングキャパシタが使用され、ダイオードD2及びD3がないので、直流バスは、中点電圧を生成する電圧分割のために大容量キャパシタを使用する必要がない。従って、中点電圧変動の問題は存在せず、直流バスキャパシタ構造は簡単にされ、バスキャパシタは省かれる。
【0080】
加えて、この実施例で提供される回路制御方法では、第1スイッチユニット及び第2スイッチユニットの各スイッチは、前もって設定されたスイッチオン/オフ時間シーケンスに従って第1スイッチユニット及び第2スイッチユニットの出力端が正の直流バス端子及び負の直流バス端子へ交互に接続されるように、オン又はオフされるよう制御され、第1スイッチユニット内の4つのスイッチのスイッチオン又はスイッチオフを通じて整流が実装され、第2スイッチユニット内の第5スイッチ及び第6スイッチのスイッチオンは、電流フローループの導通電圧降下の低減をもたらし、それによってコンバータの導電損失を減らす。
【0081】
任意に、最大直流入力電圧Vbusが1kVである応用システムでは、任意に、第1スイッチユニット内のスイッチT1乃至T4及びアンチパラレルダイオードD1乃至D4は夫々が、600V又は650Vの耐電圧値を有するスイッチデバイスであってよく、第2スイッチユニット内のT5、T6、D5、及び
D6は夫々が、1200Vの耐電圧値を有するスイッチデバイスであってよい。導通電圧降下及びスイッチング損失特性に基づいて、T1乃至T4は夫々が、スイッチング損失が低いデバイスであってよく、T5及びT6は夫々が、導通電圧降下が小さいデバイスであってよい。
【実施例3】
【0086】
図11は、実施例1で提供される回路トポロジに基づく三相インバータ回路の形態を示し、回路は、直流源、交流源、インバータ回路、フィルタリングモジュール、及び制御モジュールを含む。
【0087】
直流源と交流源との間で電気エネルギ変換を実装するために、各位相回路は、実施例1で提供される回路によって形成され、三相交流と三相直流との間のエネルギ変換は、制御モジュールを使用することによって実施され得る。
【0088】
具体的に、各位相回路の組成構造及び制御モジュールによって実行される制御方法は、実施例1におけるそれらと同じであり、詳細については、この実施例の中で繰り返されない。
【0089】
上記の実施例1及び実施例2で提供される変換回路は夫々、単相回路又は単相回路の一部であり、実施例3の回路は三相回路又は三相回路の一部であることが留意されるべきである。その上、実施例3の回路は、代替的に、多相回路又は多相回路の構成部分であってよい。これは、本願において制限されない。
【0090】
加えて、上記の実施例における変換回路は、整流回路、インバータ回路、又は整流回路若しくはインバータ回路の構成部分であってよい。
【0091】
実際のハードウェア実施において、本願は、上記の実施例における変換回路と、該回路のための
制御モジュールとを含み、直流電圧と交流電圧との電力変換を実装するよう構成されるデバイスを更に提供する。
【0092】
更に、デバイスは、コンバータ、すなわち、
図3又は
図4のAC/DCコンバータ又はDC/ACコンバータであってもよい。その上、変換回路は、他のデバイス又は装置にも適用可能であり、直流電圧と交流電圧との電力変換を実装する機能を備える。
【0093】
上記の実施例では、第1スイッチ、第2スイッチ、第3スイッチ、及び第4スイッチは夫々が、IGBT又はMOSFETのような半導体スイッチングデバイスであり、IGBTはアンチパラレルダイオードを含む。第5スイッチ及び第6スイッチは夫々が、IGBT又はMOSFETのような半導体スイッチングデバイスであり、IGBTはアンチパラレルダイオードを含んでよく、あるいは、アンチパラレルダイオードを含まなくてもよい。
【0094】
加えて、スイッチネットワーク内の半導体スイッチングデバイスは、別個の単管デバイス、又はスイッチデバイスウェハをパッケージ化することによって形成されるパワーモジュールであってよく、制御ロジックは、デジタル・シグナル・プロセッサ、コンプレックス・プログラマブル・ロジック・デバイス、又はデジタル/アナログ・ディスクリート集積回路のような制御チップによって実装される。
【0095】
制御モジュールは、プロセッサを含む。具体的に、プロセッサは、中央演算処理装置(central processing unit,CPU)、デジタル・シグナル・プロセッサ(digital signal processor,DSP)、又は他の信号処理ユニットであってよい。プロセッサは、ハードウェアチップを更に含んでもよい。ハードウェアチップは、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit,ASIC)、プログラマブル・ロジック・デバイス(programmable logic device,PLD)、又はそれらの組み合わせであってよい。上記のPLDは、コンプレックス・プログラマブル・ロジック・デバイス(complex programmable logic device,CPLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(field-programmable gate array,FPGA)、ジェネリック・アレイ・ロジック(generic array logic,GAL)、又はそれらの任意の組み合わせであってよい。
【0096】
実際のコンバータ適用の制御プロセスでは、制御モジュールは、少なくとも1スイッチングサイクル前に第1スイッチユニット内の各スイッチデバイスのスイッチオフ時点を計算してよく、それにより、対応するスイッチデバイスは、計算されたスイッチオフ時点と、スイッチオフ時点前の、スイッチオフが実行されてからの時間インターバルとに基づいて、前もってオフされ得る。
【0097】
制御モジュールは、変換回路の制御方法及びストラテジを記憶するよう構成されるメモリを更に含んでもよい。更に、メモリは、磁気ディスク、光ディスク、リード・オンリー・メモリ(read-only memory,ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(random access memory,RAM)、などであってよい。
【0098】
具体的な応用技術シナリオでは、本願の上記の実施例で提供される変換回路及び制御方法は、光発電システムに適用されてよい。具体的に、
図4を参照すると、光発電システムは、光起電力電池、光起電力インバータ、及び交流電力グリッドを含み、光起電力インバータは、入力端、出力端、及び上記の実施例のいずれか1つで提供される変換回路を含む。具体的に、変換回路の構造及び機能については、上記の実施例を参照されたく、詳細については繰り返されない。光起電力インバータの入力端は、光起電力電池へ接続され、光起電力インバータの出力端は、交流電力グリッドへ接続され、変換回路は、光起電力インバータの入力端及び出力端での電圧を変換するよう構成される。
【0099】
任意に、光起電力電池は、光起電力パネルを含み、光起電力インバータは、DC/AC整流器などであってよい。
【0100】
任意に、光起電力インバータは、モニタリングモジュール、最大電力監視モジュール、通信モジュール、避雷モジュール、及び系統連系モジュールのような他の補助機能モジュールを更に含んでもよい。
【0101】
任意に、光発電システムは、中央集権型通信ユニット、中央集権型制御ユニット、又は交流分配デバイス若しくは絶縁変圧器デバイスのような他のデバイスを更に含んでもよく、これは本願において制限されない。
【0102】
当業者であれば、本発明の実施形態における技術が、必須の一般的なハードウェアプラットフォームに加えてソフトウェアによって実装されてもよいことを明らかに理解し得る。かような理解に基づき、本発明の技術的解決法は本質的に、又は先行技術に寄与する部分は、ソフトウェア製品の形で実装されてもよい。ソフトウェア製品は、ROM/RAM、磁気ディスク、又は光ディスクのような記憶媒体に記憶され、コンピュータデバイス(パーソナルコンピュータ、サーバ、又はネットワークデバイスであってよい。)に、本発明の実施形態又は実施形態のいくつかの部分で記載される方法を実行するように指示するいくつかの命令を含む。
【0103】
本明細書中の様々な実施形態の間の同じ及び類似した部分は、互いに参照され得る。特に、上記の実施例2及び実施例3は、基本的に、方法の実施形態と同様であり、従って、簡潔に記載される。関連する部分については、方法の実施形態の記載を参照されたい。
【0104】
上記の説明は、本発明の実施であるが、本発明の保護範囲を限定する意図はない。