特許第6919077号(P6919077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電工株式会社の特許一覧

特許6919077表面処理金属材、複合積層体及び、金属−非金属接合体並びにそれらの製造方法
<>
  • 特許6919077-表面処理金属材、複合積層体及び、金属−非金属接合体並びにそれらの製造方法 図000004
  • 特許6919077-表面処理金属材、複合積層体及び、金属−非金属接合体並びにそれらの製造方法 図000005
  • 特許6919077-表面処理金属材、複合積層体及び、金属−非金属接合体並びにそれらの製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919077
(24)【登録日】2021年7月27日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】表面処理金属材、複合積層体及び、金属−非金属接合体並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20210729BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20210729BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20210729BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20210729BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   B32B15/08 Z
   B05D7/14 101A
   B05D7/14 G
   C23C28/00 Z
   C23C26/00 A
   B29C45/14
【請求項の数】14
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2020-559592(P2020-559592)
(86)(22)【出願日】2020年4月21日
(86)【国際出願番号】JP2020017260
(87)【国際公開番号】WO2020218311
(87)【国際公開日】20201029
【審査請求日】2021年1月18日
(31)【優先権主張番号】特願2019-86181(P2019-86181)
(32)【優先日】2019年4月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 和男
(72)【発明者】
【氏名】沼尾 臣二
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−121151(JP,A)
【文献】 特開平08−099387(JP,A)
【文献】 特開平10−287862(JP,A)
【文献】 特開平05−307179(JP,A)
【文献】 特開2012−098134(JP,A)
【文献】 特開平09−295988(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/113485(WO,A1)
【文献】 特開2011−091066(JP,A)
【文献】 特開2013−105803(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/116879(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B05D 1/00−7/26
C09J 5/00
B29C 45/14
C23C 26/00
C23C 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材とその表面に表面処理層とを有する表面処理金属材であって、
前記表面処理層が、前記金属材にシランカップリング剤による処理を施してなるシランカップリング剤処理層と、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を、前記シランカップリング剤が有する官能基と反応させてなり、
前記化合物に由来の官能基を有する官能基含有層を含
前記イソシアネート化合物が、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート、1,1−(ビスアクリロイルオキシエチル)エチルイソシアネートからなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記チオール化合物が、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記エポキシ化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び2官能以上のエポキシ化合物から選ばれる少なくとも一種であり、
前記アミノ化合物が、(メタ)アクリルアミドである、表面処理金属材。
【請求項2】
前記シランカップリング剤が、アミノ基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、イソシアナト基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を含有する、請求項1に記載の表面処理金属材。
【請求項3】
前記金属材が、鉄、アルミニウム、マグネシウム、銅、及びステンレス鋼からなる群より選ばれる金属である、請求項1又は2に記載の表面処理金属材。
【請求項4】
前記金属材が、前処理を施したアルミニウムであり、
前記前処理が、エッチング処理、ベーマイト処理、アルマイト処理、リン酸亜鉛処理、ジルコニウム処理、レーザー処理、プラズマ処理、ブラスト処理、及びサンディング処理からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2に記載の表面処理金属材。
【請求項5】
請求項1〜の何れか1項に記載の表面処理金属材の官能基含有層表面に、1層又は複数層のプライマー層が形成された、複合積層体。
【請求項6】
前記プライマー層が、前記官能基含有層に含まれている官能基と反応する基を有する硬化性樹脂硬化物からなる、請求項に記載の複合積層体。
【請求項7】
前記プライマー層が、前記官能基含有層に含まれている官能基と反応する基を有する熱可塑性樹脂を形成するモノマー組成物の重付加反応物又はラジカル重合反応物からなる、請求項に記載の複合積層体。
【請求項8】
請求項1〜の何れか1項に記載の表面処理金属材と、非金属である被接合材とが直接又は接着剤を介して接合一体化された、金属−非金属接合体。
【請求項9】
請求項5〜7の何れか1項に記載の複合積層体のプライマー層と、非金属である被接合材とが直接又は接着剤を介して接合一体化された、金属−非金属接合体。
【請求項10】
前記非金属である被接合材が、樹脂である、請求項8又は9に記載の金属−非金属接合体。
【請求項11】
金属材にシランカップリング剤処理を施してシランカップリング剤処理層を形成した後、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の化合物を、前記シランカップリング剤処理で用いたシランカップリング剤が有する官能基と反応させて、前記化合物に由来の官能基を表面に有する官能基含有層を形成する、表面処理金属材の製造方法であって、
前記イソシアネート化合物が、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルアクリレート、1,1−(ビスアクリロイルオキシエチル)エチルイソシアネートからなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記チオール化合物が、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記エポキシ化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、及び2官能以上のエポキシ化合物から選ばれる少なくとも一種であり、
前記アミノ化合物が、(メタ)アクリルアミドである、表面処理金属材の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜の何れか1項に記載の表面処理金属材の前記官能基含有層の表面で、重付加反応又はラジカル重合反応を行い、熱可塑性樹脂からなるプライマー層を形成する、複合積層体の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜の何れか1項に記載の表面処理金属材の前記官能基含有層の表面に、接着剤層を形成し、該接着剤層の上に、射出成形、圧縮成形、及びハンドレイアップ成形からなる群より選ばれる少なくとも一種の方法で、非金属である被接合材を接合一体化する、金属−非金属接合体の製造方法。
【請求項14】
請求項5〜7の何れか1項に記載の複合積層体のプライマー層の上に、射出成形、圧縮成形、及びハンドレイアップ成形からなる群より選ばれる少なくとも一種の方法で、非金属である被接合材を接合一体化する、金属−非金属接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機材料との接合強度向上を目的とした表面処理を施した表面処理金属材及び前記表面処理金属材を得るための表面処理方法、前記表面処理金属材を用いた複合積層体及びその製造方法、前記複合積層体を用いた金属−非金属接合体及びその製造方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品やOA機器等の分野において、部品や製品の軽量化が求められている。これらの分野において、部品や製品の軽量化の観点からアルミニウム等の金属材と樹脂材とを接合一体化させた複合材が使用されることが多くなってきている。これら複合材中の金属材としてアルミニウムが用いられる場合には、接合強度を十分に確保するために、アルミニウム材に表面処理が行われている。
【0003】
従来、アルミニウム材の表面処理としては、ショットブラスト処理等の物理的な表面処理方法が一般的である。しかし、これらの物理的な表面処理方法は、生産性に劣る上に、薄い形状や複雑な形状の物品には適さないことから、化学的な表面処理方法の検討が進んでいる。
【0004】
化学的な表面処理方法として、例えば、アルミニウム材の表面に被膜を形成した後、エッチング溶液と接触させて材料表面に多孔質エッチング層を形成させる方法(特許文献1)が知られている。また、アルミニウム合金からなる基材の表面に設けられた下地処理皮膜の上に、極性基が導入された変性ポリプロピレン樹脂を含有する接着層を形成する方法(特許文献2)も知られている。また、アルミニウム材をリン酸又は水酸化ナトリウムの電解浴に浸漬して、直流電気分解により、表面に開口する孔の少なくとも85%が直径25〜90nmである孔を有する陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜形成面に溶融合成樹脂を射出成形してアンカー効果により接合強度を向上させる方法(特許文献3)等が知られている。
【0005】
また、アルミニウム材の表面をエッチング処理して形成された微細凹凸面に、金属酸化物又は金属リン酸化物の凹凸薄層を形成させる方法も提案されている(特許文献4)。
【0006】
以上のようなアンカー効果に頼る方法では、例えば樹脂を接合したい場合、樹脂が穴の中にしっかりと侵入しないと効果が発現できないため、金属材の表面にシランカップリング剤により樹脂と反応が可能な官能基を付ける処理方法が提案されている。例えば、水溶性アルコキシシラン含有トリアジンジチオール金属塩を含有する溶液に金属材、セラミックス材等の固体を浸漬して、固体表面に該水溶性アルコキシシラン含有トリアジンジチオール金属塩を付着させてなる表面反応性固体(金属材等)を用いることが提案されている(特許文献5)。
【0007】
また、アルミニウム材の表面を粗面化した後にアルコキシシラン含有トリアジンチオール誘導体をシランカップリング剤として被覆処理を行う方法が提案されており(特許文献6)、エポキシシラン、アミノシランメタクリロイルシランを使用する方法も提案されている(特許文献7、8)。
【0008】
この様にシランカップリング剤による処理は広く提案されている。
シランカップリング剤による処理は、いわゆるSAM(self-assembled monolayer:自己組織化単分子膜あるいは自己集積化単分子膜)による表面改質である。SAMは、金属材等の素材表面に化学吸着する反応性官能基と、二次元方向に規則構造をもたらせるスペーサー鎖と、素材表面を機能化させる機能性官能基、の三つの部分からなるとされる(非特許文献1)。
アルミニウム材のシランカップリング剤処理では、反応性官能基であるシラノール基(−SiOH)が、アルミニウム材表面に存在する酸化皮膜のOH基(-Al-OH)と脱水縮合反応を起こし、SAMが形成される。このとき、シラノール基同士も結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−41579号公報
【特許文献2】特開2016−16584号公報
【特許文献3】特許第4541153号公報
【特許文献4】特開2010−131888号公報
【特許文献5】特開2006−213677号公報
【特許文献6】特開2011−52292号公報
【特許文献7】特開2016―089261号公報
【特許文献8】特開2014―218050号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】UACJテクニカルレポートVol.2 No.2(2015)P.97−103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、SAMによる表面改質をした表面処理金属材では、表面処理金属材と被接合材(金属材料、有機材料等)との接合強度が所定レベルにとどまり、更なる接合強度の向上や、耐久性の向上といった需要に応えることが難しいという課題があった。
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、SAMによる表面改質をした表面処理金属材と被接合材を強固に接合することができる表面処理金属材およびその関連技術を提供することである。前記関連技術とは、前記表面処理金属材を得るための方法である金属材の表面処理方法、前記表面処理金属材を用いた複合積層体及びその製造方法、前記複合積層体を用いた金属−非金属接合体及びその製造方法、を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、SAMによる表面改質をした表面処理金属材と被接合材との接合強度の限界が、SAMの構造に基因することを見出し、本発明を完成させた。本発明は、前記目的を達成するために、以下の手段を提供する。
なお、本明細書において、接合とは、物と物を繋合わせることを意味し、接着とはその下位概念であり、テープや接着剤の様な有機材(熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等)を介して、2つの被着材(接着しようとするもの)を接合状態とすることを意味する。
【0013】
[1] 金属材とその表面に表面処理層とを有する表面処理金属材であって、前記表面処理層が、前記金属材にシランカップリング剤による処理を施してなるシランカップリング剤処理層と、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を、前記シランカップリング剤が有する官能基と反応させてなり、前記化合物に由来の官能基を有する官能基含有層を含む、表面処理金属材。
[2] 前記シランカップリング剤が、アミノ基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、イソシアナト基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を含有する、[1]に記載の表面処理金属材。
[3] 前記イソシアネート化合物が、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物及び2官能以上のイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも一種である、[1]又は[2]に記載の表面処理金属材。
[4] 前記チオール化合物が、2官能以上のチオール化合物である、[1]又は[2]に記載の表面処理金属材。
[5] 前記エポキシ化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び2官能以上のエポキシ化合物から選ばれる少なくとも一種である、[1]又は[2]に記載の表面処理金属材。
[6] 前記アミノ化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び2官能以上のアミノ化合物から選ばれる少なくとも一種である、[1]又は[2]に記載の表面処理金属材。
[7] 前記金属材が、鉄、アルミニウム、マグネシウム、銅及びステンレス鋼からなる群より選ばれる金属である、[1]〜[6]の何れかに記載の表面処理金属材。
[8] 前記金属材が、前処理を施したアルミニウムであり、前記前処理が、エッチング処理、ベーマイト処理、アルマイト処理、リン酸亜鉛処理、ジルコニウム処理、レーザー処理、プラズマ処理、ブラスト処理及びサンディング処理からなる群より選ばれる少なくとも一種である、[1]〜[6]の何れかに記載の表面処理金属材。
【0014】
[9] [1]〜[8]の何れかに記載の表面処理金属材の表面処理層側の表面に、1層又は複数層のプライマー層が形成された、複合積層体。
[10] 前記プライマー層が、前記官能基含有層に含まれている官能基と反応する基を有する硬化性樹脂硬化物からなる、[9]に記載の複合積層体。
[11] 前記プライマー層が、前記官能基含有層に含まれている官能基と反応する基を有する熱可塑性樹脂を形成するモノマー組成物の重付加反応物又はラジカル重合反応物からなる、[9]に記載の複合積層体。
【0015】
[12] [1]〜[8]の何れかに記載の表面処理金属材と、非金属である被接合材とが直接又は接着剤を介して接合一体化された、金属−非金属接合体。
[13] [9]〜[11]の何れかに記載の複合積層体のプライマー層と、非金属である被接合材とが直接又は接着剤を介して接合一体化された、金属−非金属接合体。
前記非金属である被接合材は、樹脂であることが好ましい。
[14] 前記非金属である被接合材が、樹脂である、[12]又は[13]に記載の金属−非金属接合体。
【0016】
[15] 金属材にシランカップリング剤処理を施してシランカップリング剤処理層を形成した後、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を、前記シランカップリング剤が有する官能基と反応させて、前記化合物に由来の官能基を表面に有する官能基含有層を形成する、表面処理金属材の製造方法。
[16] 前記シランカップリング剤が、アミノ基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、イソシアナト基、及びメルカプト基からなる群より選ばれる一種以上の官能基を含有する、[15]に記載の表面処理金属材の製造方法。
[17] 前記イソシアネート化合物が、(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート化合物、2官能以上のイソシアネート化合物、の少なくとも一種である、[15]又は[16]に記載の表面処理金属材の製造方法。
[18] 前記チオール化合物が、2官能以上のチオール化合物である、[15]又は[16]に記載の表面処理金属材の製造方法。
[19] 前記エポキシ化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、2官能以上のエポキシ化合物の少なくとも一種である、[15]又は[16]に記載の表面処理金属材の製造方法。
[20] 前記アミノ化合物が、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、2官能以上のアミノ化合物の少なくとも一種である、[15]又は[16]に記載の表面処理金属材の製造方法。
[21] 前記金属材が、鉄、アルミニウム、マグネシウム、銅、及びステンレス鋼からなる群より選ばれる金属である、[15]〜[20]の何れかに記載の表面処理金属材の製造方法。
[22] 前記金属材が、前処理を施したアルミニウムであり、前記前処理が、ベーマイト処理、アルマイト処理、リン酸亜鉛処理、ジルコニウム処理、レーザー処理、プラズマ処理、ブラスト処理、サンディング処理の少なくとも一種である、[15]〜[20]の何れかに記載の表面処理金属材の製造方法。
【0017】
[23] [1]〜[8]の何れかに記載の表面処理金属材の官能基含有層の表面で、重付加反応又はラジカル重合反応を行い、熱可塑性樹脂からなるプライマー層を形成する、複合積層体の製造方法。
【0018】
[24] [1]〜[8]の何れかに記載の表面処理金属材の官能基含有層の表面に、接着剤層を形成し、該接着剤層の上に、射出成形、圧縮成形、及びハンドレイアップ成形からなる群より選ばれる少なくとも一種の方法で、非金属である被接合材を接合一体化する、金属−非金属接合体の製造方法。
[25] [9]〜[11]の何れかに記載の複合積層体のプライマー層の上に、射出成形、圧縮成形、及びハンドレイアップ成形からなる群より選ばれる少なくとも一種の方法で、非金属である被接合材を接合一体化する、金属−非金属接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、SAMによる表面改質をした表面処理金属材と被接合材を強固に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】表面処理金属材の構成を示す説明図である。
図2】複合積層体の構成を示す説明図である。
図3】金属−非金属接合体の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の表面処理金属材およびその関連技術について詳述する。
[表面処理金属材]
本発明の表面処理金属材3は、図1に示すように、金属材1と表面処理層2を有する。前記表面処理層2は、前記金属材1にシランカップリング剤処理を施してなるシランカップリング剤処理層21と、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物に由来の官能基を有する官能基含有層22を含む。前記官能基含有層22は、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を、前記シランカップリング剤由来の官能基と反応させてなる。
なお、シランカップリング剤の種類は数多く、また官能基含有層を構成する化合物も多岐にわたり、かつ、その組み合わせに基づく具体的態様を包括的に表現することもできないため、本発明の表面処理金属材3を構造又は特性により直接特定することは不可能又は非実際的といえる。
【0022】
<金属材>
金属材を構成する金属の種類は特に限定されるものではない。
金属材を構成する金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、マグネシウム、銅、ステンレス鋼等が挙げられる。これらのうち、軽量性及び加工容易性等の観点から、アルミニウムが、特に好適に用いられる。
なお、本発明において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む意味で用いられる。同様に、鉄、チタン、マグネシウム及び銅も、これらの単体及びその合金を含む意味で用いるものとする。
【0023】
金属材には、シランカップリング剤処理を施す前に、前処理を施すことが好ましい。
前記前処理としては、例えば、溶剤等による洗浄、脱脂処理、ブラスト処理、研磨処理、エッチング処理、化成処理等が挙げられる。なかでも、シランカップリング剤と反応する官能基である水酸基を、金属材の表面に発生させる前処理が好ましい。金属材に施す前処理は、一種のみでもよいし、二種以上でもよい。これらの前処理の具体的な方法としては、公知の方法を用いることができる。
前記前処理により、金属材の表面の汚染物を除去したり、金属材の表面を粗面化させ、金属材の表面に、アンカー効果を目的とした微細な凹凸4を形成することができる。
前記アンカー効果により、後述するプライマー層6との接着性を向上させることができる。前記前処理は、被接合材との接着性の向上にも寄与し得る。
前記前処理は、エッチング処理、ベーマイト処理、アルマイト処理、リン酸亜鉛処理、ジルコニウム処理、レーザー処理、プラズマ処理、ブラスト処理及びサンディング処理からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0024】
エッチング処理としては、例えば、化学的エッチング処理、電気化学的エッチング処理等の公知のエッチング処理等を適用できる。このようなエッチング処理を行うことにより、アルミニウム材の表面に微細な凹凸を形成させることができ、被接合材との接着性の向上にも寄与し得る。前記化学的エッチング処理としては、特に限定されるものではないが、例えば、苛性ソーダ法、リン酸−硫酸法、フッ化物法、クロム酸−硫酸法、塩鉄法等が挙げられる。前記電気化学的エッチング処理としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解エッチング法等が挙げられる。これらの中でも、苛性ソーダ法によりエッチング処理を行うのが好ましく、さらに水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を用いた苛性ソーダ法によりエッチング処理を行うのがより好ましい。具体的には、例えば、金属材の少なくとも一部を3質量%〜20質量%の水酸化ナトリウム水溶液又は3質量%〜20質量%の水酸化カリウム水溶液に20℃〜70℃の温度で1分〜15分間浸漬した後、5質量%〜20質量%の硝酸水溶液に浸漬して中和を行い、その後、水洗、乾燥を行うのがよい。なお、前記苛性ソーダ法では、添加剤としてキレート剤、酸化剤、リン酸塩等を使用することもできる。
【0025】
ベーマイト処理としては、公知のベーマイト処理等を使用できる。具体的には、例えば、アルミニウム材に対して熱水処理を行って表面にベーマイト皮膜を形成させる処理である。前記ベーマイトは、針状結晶であり、処理時間が長くなるに伴い結晶が成長し形状が複雑になる。このベーマイト皮膜の表面に微細な凹凸が形成されているので、被接合材との接着性の向上に寄与し得る。
ベーマイト処理には蒸留水が使用されるが、反応促進剤としてアンモニアやトリエタノールアミン等を添加してもよい。例えば、トリエタノールアミンを0.1質量%〜5.0質量%添加した蒸留水を90℃〜100℃の熱水にして、該熱水中に金属材を3秒〜5分間浸漬してベーマイト処理を行うのがよい。
前記ベーマイト処理を行った後の金属材は、そのまま次のシランカップリング剤処理工程に供してもよいが、脱脂を行ってから或いは苛性ソーダ法でエッチング処理を行ってから、シランカップリング剤処理工程に供してもよい。
【0026】
ジルコニウム処理としては、公知のジルコニウム処理等を使用できる。前記ジルコニウム処理は、例えば、リン酸ジルコニウム、ジルコニウム塩等のジルコニウム化合物を用いて金属材の表面にジルコニウム塩皮膜を形成させるものである。この皮膜の表面に微細な凹凸が形成されているので、被接合材との接着性の向上に寄与し得る。前記ジルコニウム処理としては、具体的には、例えば、日本パーカライジング社製の化成剤「パルコート3762」や「パルコート3796」を45℃〜70℃に加温してこの液中に金属材を0.5分〜3分間浸漬してジルコニウム処理を行う方法等が挙げられる。このジルコニウム処理を行う場合には、先に前記の苛性ソーダ法でエッチング処理を行った後に、ジルコニウム処理を行うのが望ましい。
【0027】
<表面処理層>
表面処理層2は、前記金属材1にシランカップリング剤処理を施してなるシランカップリング剤処理層21と、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物に由来の官能基を有する官能基含有層22を含む。前記官能基含有層22は、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を、前記シランカップリング剤由来の官能基と反応させてなる。
【0028】
(シランカップリング剤処理層)
シランカップリング剤処理層は、金属材にシランカップリング剤処理を施して形成した層であり、2次元構造の自己組織化単分子膜(SAM)からなる。
金属材の表面に存在する水酸基を基点にシランカップリング剤処理でシラノール基を結合させると、前記のようにシラノール基同士も結合するため、2次元に広がったシランカップリング剤処理層が形成される。シランカップリング剤は、シラノール基のほかに、官能基含有層22の有する前記官能基(イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物に由来の官能基)と反応する官能基を有することが好ましい。
【0029】
シランカップリング剤としては、ガラス繊維の表面処理等に用いられる公知のシランカップリング剤等を使用できる。
【0030】
シランカップリング剤の有する具体的な官能基としては、シランカップリング剤が有するシラノール基以外には、イソシアナト基、メルカプト基、エポキシ基、アミノ基、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基、及びスチリル基からなる群より選ばれる一種以上の官能基であることが好ましい。なかでも、アミノ基、グリシジル基、及び(メタ)アクリロイル基からなる群より選ばれる一種以上の官能基がより好ましい。これらの官能基は、官能基含有層に含まれる前記化合物の官能基に応じて適切に選択される。
【0031】
シランカップリング剤の具体例としては、イソシアナト基を有する3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メルカプト基を有する3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、エポキシ基を有する2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、アミノ基を有するN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、グリシジル基を有する3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシ基を有する3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、スチリル基を有するp−スチリルトリメトキシシラン、アクリロキシ基を有する3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニル基を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、イソシアヌレート基を有するトリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ウレイド基を有する3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、トリアジンメルカプト基を有するジチオールトリアジンプロピルトリエトキシシラン、エトキシシリル基及びメルカプト基を有する6-(トリエトキシシリルプロピルアミノ)−1,3,5−トリアジン―2,4−ジチオールモノナトリウム塩(TES)等が挙げられる。
【0032】
シランカップリング剤によりシランカップリング剤処理層を形成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。
スプレー塗布法では、金属材の表面にシランカップリング剤そのもの又は有機溶剤に希釈したシランカップリング剤を吹き付け、常温〜100℃で1分〜5時間乾燥処理を行う。乾燥処理を経て強固な化学結合となり、金属材の表面と化学結合した官能基を導入することができる。
浸漬法では、シランカップリング剤の低濃度の水溶液やシランカップリング剤の低濃度の有機溶剤溶液を金属材の表面に接触させることで、金属の表面に存在する水酸基等とシランカップリング剤が反応してシラノール基が生成し、オリゴマー化したシラノール基がアルミニウム材の表面に結合する。具体的には、例えば、シランカップリング剤を有機溶剤で0.5質量%〜50質量%程度の濃度になるように希釈した希釈溶液を常温〜100℃に加温してこの希釈溶液中に金属材を1分〜5日間浸漬することで、金属材の表面と化学結合した官能基を導入することができる。
【0033】
(官能基含有層)
官能基含有層は、二次元構造の自己組織化単分子膜(SAM)からなるシランカップリング剤処理層を三次元的に延長した層である。
官能基含有層は、二次元に広がったシランカップリング剤処理層表面の官能基の少なくとも一部に、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を反応させて形成することができる。前記イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物は、シランカップリング剤層表面の官能基と反応可能な官能基と、後述するプライマー層を構成する有機材料が有する官能基と反応可能な官能基、の双方を有する化合物であることが好ましい。
官能基含有層を設けることにより、金属材の表面を、プライマー層を構成する有機材料が有する官能基と化学結合可能な官能基を三次元方向に延ばした官能基含有構造とすることができる。二次元構造のシランカップリング剤処理層のみを備えた金属材では、有機材料(プライマー、樹脂、接着剤等)との間の化学結合の強さには限界があり、より強固な化学結合を形成することが難しいが、金属材の表面を、化学結合可能な官能基を三次元方向に延ばした官能基含有構造とした本発明によれば、金属材と有機材料(プライマー、樹脂、接着剤等)との化学結合による接合をより強固にし、長期間にわたっての耐久性も向上させることができる。
【0034】
例えばシランカップリング剤の有する官能基がアミノ基の場合、イソシアナト基を有するイソシアネート化合物、エポキシ基を有するエポキシ化合物等を、前記アミノ基と反応させて官能基含有層を形成することができる。ラジカル反応性基を有するイソシアネート化合物である2−イソシアナトエチルメタクリレート(例えば昭和電工株式会社製「カレンズMOI(登録商標)」)やグリシジルメタクリレートをアミノ基に反応させれば、三次元方向に延ばした最末端はラジカル重合可能な(メタ)アクリロイル基となる。
シランカップリング剤の有する官能基がエポキシ基の場合、アミノ基と、別のアミノ基や他の官能基を有するアミノ化合物、メルカプト基と、別のメルカプト基や他の官能基を有するチオール化合物、カルボキシ基と、別のカルボキシ基や他の官能基を有する化合物等を、前記エポキシ基と反応させて官能基含有層を形成することができる。(メタ)アクリル酸をシランカップリング剤のエポキシ基に反応させれば、三次元方向に延ばした最末端はこれもラジカル重合可能な(メタ)アクリロイル基となる。
シランカップリング剤の有する官能基が(メタ)アクリロイル基の場合、メルカプト基を有するチオール化合物等を、前記(メタ)アクリロイル基と反応させて官能基含有層を形成することができる。2官能チオール化合物である1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(例えば昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) BD1」)や3官能チオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(例えば昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) PE1」)を(メタ)アクリロイル基に反応させれば、三次元方向に延ばした最末端はエポキシ基や(メタ)アクリロイル基と付加反応可能なメルカプト基となる。
シランカップリング剤の有する官能基がメルカプト基の場合、(メタ)アクリロイル基を、前記メルカプト基と反応させて官能基含有層を形成することができる。例えばカレンズMOI(登録商標)のメタクリロイル基をメルカプト基に反応させれば、三次元方向に延ばした最末端をイソシアナト基とすることができ、(メタ)アクリルアミドの(メタ)アクリロイル基をメルカプト基に反応させれば三次元方向に延ばした最末端をアミノ基とすることができる。さらにグリシジル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基をメルカプト基に反応させれば三次元方向に延ばした最末端をエポキシ基とすることができる。
この様に三次元方向に延ばした最末端を様々な官能基とすることができる。また上述の化合物以外に、例えばジイソシアネート化合物を反応させれば片側のイソシアナト基のみ反応して最末端がイソシアナト基となることも期待でき、ジアミンを反応させれば片側のアミノ基のみ反応して最末端がアミノ基となることも期待できる。
【0035】
官能基含有層の形成方法としては、浸漬法やスプレー塗布法が挙げられる。
浸漬法では、3級アミン等の触媒を共存させたイソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の低濃度の有機溶剤溶液を25℃〜120℃でシランカップリング剤処理を施した金属材の表面に接触させることで、一層目のシランカップリング剤処理末端の官能基に、二層目として反応させ三次元方向に延ばした官能基構造とすることができる。
スプレー塗布法では、シランカップリング剤処理を施した金属材の表面に3級アミン等の触媒を共存させたイソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の有機溶剤溶液を吹き付け、常温〜100℃で1分〜5時間乾燥処理を行う。この様な処理を行うことで、一層目のシランカップリング剤処理末端の官能基に、二層目として反応させ三次元方向に延ばした官能基構造とすることができる。
前記有機溶剤溶液は、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物の含有率が、有機溶剤以外の成分中、90〜100質量%であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。
【0036】
〔イソシアネート化合物〕
イソシアネート化合物としては、公知のイソシアネート化合物等を使用できる。前記イソシアネート化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、多官能のイソシアネートであるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の他、ラジカル反応性基を有するイソシアネート化合物である2−イソシアナトエチルメタクリレート(例えば昭和電工株式会社製「カレンズMOI」(登録商標))、2−イソシアナトエチルアクリレート(例えば昭和電工株式会社製「カレンズAOI(登録商標)」)、1,1−(ビスアクリロイルオキシエチル)エチルイソシアネート(例えば昭和電工株式会社製「カレンズBEI(登録商標)」)等が挙げられる。
前記イソシアネート化合物で処理する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。具体的には、例えば、イソシアネート化合物を有機溶剤で5質量%〜50質量%程度の濃度になるように希釈した希釈溶液を常温〜100℃に加温してこの希釈溶液中にアルミニウム材を1分〜5日間浸漬した後、アルミニウム材を取り出して常温〜100℃で1分〜5時間乾燥処理を行う方法等が挙げられる。
【0037】
〔チオール化合物〕
チオール化合物としては、公知のチオール化合物等を使用できる。多官能のチオール化合物や、メルカプト基以外にアルケニル基を有する化合物が好ましい。前記チオール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(例えば、三菱化学株式会社製「QX40」、東レ・ファインケミカル株式会社製「QE−340M」)、エーテル系一級チオール(例えばコグニス(Cognis)社製「カップキュア3−800」)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(例えば昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) BD1」)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(例えば昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) PE1」)、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(例えば昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) NR1」)等が挙げられる。中でも、エポキシ樹脂中での安定性はペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)が優れている。
前記チオール化合物で処理する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、スプレー塗布法、浸漬法等が挙げられる。具体的には、例えば、チオール化合物を有機溶剤で5質量%〜50質量%程度の濃度になるように希釈した希釈溶液を常温〜100℃に加温してこの希釈溶液中にアルミニウム材を1分〜5日間浸漬した後、アルミニウム材を取り出して常温〜100℃で1分〜5時間乾燥処理を行う方法等が挙げられる。前記チオール化合物の希釈溶液中に触媒としてアミン類を含有せしめてもよい。
【0038】
〔エポキシ化合物〕
エポキシ化合物としては、公知のエポキシ化合物等を使用できる。多価エポキシ化合物や、エポキシ基以外にアルケニル基を有する化合物が好ましい。前記エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。また脂環式のエポキシ化合物でもよく、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート(株式会社ダイセル製 サイクロマーM100)、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(株式会社ダイセル製 セロキサイド2000)、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセル製セロキサイド2021P)等が挙げられる。
【0039】
〔アミノ化合物〕
アミノ化合物としては、公知のアミノ化合物等を使用できる。多官能アミノ化合物や、アミノ基(アミドを含む)以外にアルケニル基を有する化合物が好ましい。前記アミノ化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、4−アミノメチルオクタメチレンジアミン、3,3’−イミノビス(プロピルアミン)、3,3’−メチルイミノビス(プロピルアミン)、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(3−アミノプロピルオキシ)エタン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルノルボルナン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、アミノエチルピペラジン、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0040】
[複合積層体]
本発明の複合積層体5は、図2に示すように、前記の表面処理金属材3の官能基含有層22側の表面に、プライマー層6を有する。プライマー層は、一層であっても、複数層であってもよい。
【0041】
<プライマー層>
プライマー層の形成には、硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が使用される。なお、本発明で言う硬化性樹脂は、広く、架橋構造による3次元ネットワークを構成して硬化する樹脂を意味し、加熱硬化タイプに限られず、常温硬化タイプや光硬化タイプも包含するものとする。前記光硬化タイプは、可視光線や紫外線の照射によって短時間での硬化も可能である。前記光硬化タイプを、加熱硬化タイプ及び/又は常温硬化タイプと併用してもよい。前記光硬化タイプとしては、例えば、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)LC−760」、同「リポキシ(登録商標)LC−720」等のビニルエステル樹脂が挙げられる。
前記表面処理金属材の官能基含有層は、プライマー層の種類に合わせて適宜最適な化合物を選択して形成することができる。
【0042】
プライマー層は、表面処理金属材が、非金属である被接合材と接合一体化される際に、被接合材と表面処理金属材との間に介在して接合性をより向上させるための層である。
プライマー層には、表面処理金属材の表面が汚れや、酸化等で変質することを防止し、長期間にわたり安定した接着力を維持する効果もある。
前記プライマー層は、前記表面処理金属材において前記官能基含有層を形成した側の表面の少なくとも一部に、硬化性樹脂を含むプライマー又は該プライマーを含有するプライマー含有処理液を塗布することによって形成することができる。前記プライマー層は、前記表面処理金属材において前記官能基含有層を形成した側の表面の少なくとも一部に、熱可塑性樹脂を含むプライマー又は該プライマーを含有するプライマー含有処理液を塗布することによって形成することもできる。
前記プライマー層は、非金属である被接合材に接着可能なプライマー層であるのが好ましい。
なお、前記「硬化性樹脂を含むプライマー又は該プライマーを含有するプライマー含有処理液」は、硬化性樹脂のみからなり、溶剤等の他の成分を含有しない構成であってもよいし、硬化性樹脂および溶剤等の他の成分を含有する構成であってもよい。前記「熱可塑性樹脂を含むプライマー又は該プライマーを含有するプライマー含有処理液」は、熱可塑性樹脂のみからなり、溶剤等の他の成分を含有しない構成であってもよいし、現場重合型として反応して熱可塑性樹脂となる成分および溶剤等の他の成分を含有する構成であってもよい。
以下に具体的に説明する。
【0043】
(硬化性樹脂を含むプライマー)
「硬化性樹脂を含むプライマー」を構成する硬化性樹脂は、特に限定されるものではないが、常温硬化、加熱硬化又は光硬化が可能な硬化性樹脂であることが好ましく、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、ビニルエステル樹脂系及び不飽和ポリエステル樹脂系からなる群より選ばれる少なくとも一種の硬化性樹脂を用いるのがより好ましい
【0044】
〔ウレタン樹脂系熱硬化性樹脂〕
ウレタン樹脂は、化学構造中にウレタン結合を含む高分子多量体であり、通常、イソシアナト基と水酸基との反応によって得られる樹脂であるが、この中では硬化後に架橋構造となるものが好ましい。前記ウレタン樹脂としては、一液型であってもよいし、二液型であってもよい。
【0045】
前記一液型としては、特に限定されるものではないが、例えば、油変性タイプ(不飽和脂肪酸基の酸化重合)、湿気硬化型(空気中の水とイソシアナト基の反応)、ブロック型(ブロック剤が加熱により解離し再生したイソシアナト基と水酸基が反応)、ラッカー型(溶剤の揮発による乾燥)等が挙げられる。これらの中でも、湿気硬化型一液ウレタン樹脂系熱硬化性樹脂からなるプライマーは、一液型を塗布するだけでよいので、容易に使用できる。このような湿気硬化型一液ウレタン樹脂系熱硬化性樹脂の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「UM−50P」等が挙げられる。
前記二液型としては、硬化物が架橋構造となるもので、例えば、触媒硬化型(イソシアナト基と空気中の水、触媒のアミンとの反応)、ポリオール硬化型(イソシアナト基と水酸基の反応)等が挙げられる。
【0046】
前記二液型としてのポリオール硬化型のポリオール成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、フェノール樹脂等が挙げられる。また、前記二液型としてのポリオール硬化型のイソシアネート成分(イソシアネート化合物)としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、脂環族イソシアネート等が挙げられる。前記脂肪族イソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。前記芳香族イソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)又はその混合物、p−フェニレンジシソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やその多核体混合物であるポリメリックMDI等などが挙げられる。前記二液型において配合比は、−OH/−NCO当量比で0.7〜1.5の範囲が好適で、硬化物が架橋構造となるものである。
【0047】
前記二液型としての触媒硬化型で使用するウレタン化触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系触媒、有機錫系触媒等が挙げられる。前記アミン系触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ジメチルエーテルアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジプロピレン−トリアミン、N−メチルモルフォリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリエチルアミン等が挙げられる。前記有機錫系触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンジマレエート等が挙げられる。一般にはポリオール成分100質量部に対しウレタン化触媒を0.01〜10質量部配合するのが好ましい。
【0048】
〔エポキシ樹脂系熱硬化性樹脂〕
前記エポキシ樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する熱硬化性エポキシ樹脂を用いるのが好ましい。このような1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する熱硬化性エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エーテル型のビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、エステル系芳香族エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、エーテル・エステル型エポキシ樹脂等の公知の熱硬化性エポキシ樹脂などが挙げられ、中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。前記エポキシ樹脂としては、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品として、例えば、三菱ケミカル株式会社製「jER(登録商標)828」や「jER(登録商標)1001」等が挙げられ、ノボラック型エポキシ樹脂の市販品として、例えば、ダウケミカルカンパニー製「DEN438」等が挙げられる。
【0049】
前記エポキシ樹脂の硬化剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、酸無水物、フェノール樹脂、チオール類、イミダゾール類、カチオン触媒等の公知の硬化剤等が挙げられる。また、これら例示の硬化剤と、長鎖脂肪族アミン又は/及びチオール類と、を併用すると、伸び率が大きく耐衝撃性に優れるという効果が得られる。このチオール類の具体的な化合物としては、例えば、上述したチオール化合物処理で例示したものと同じチオール類を挙げることができる。中でも、前記エポキシ樹脂の硬化剤としては、チオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(例えば昭和電工株式会社製「カレンズMT(登録商標) PE1」)を使用するのがより好ましく、この場合には伸び率が特に大きく耐衝撃性により優れるという利点がある。このようなエポキシ樹脂系熱硬化性樹脂からなるプライマー層が形成されたアルミニウム材(の該プライマー層)には様々な樹脂種の樹脂物品が接合可能である(接合対象の樹脂物品の樹脂種を問わない)。
【0050】
〔ビニルエステル樹脂系熱硬化性樹脂〕
前記ビニルエステル樹脂としては、ビニルエステルオリゴマーを重合性モノマー(例えばスチレンモノマー等)に溶解したもの等が挙げられる。このようなビニルエステル樹脂は、エポキシアクリレート樹脂とも呼ばれており、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1988年発行)、「塗料用語辞典」(色材協会、1993年発行)等に記載されているものも使用できる。前記ビニルエステル樹脂の市販品としては、特に限定されるものではないが、例えば、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)R−802」、「リポキシ(登録商標)R−804」、「リポキシ(登録商標)R−806」等が挙げられる。
【0051】
前記ビニルエステル樹脂としては、ウレタンアクリレート樹脂およびウレタンメタクリレート樹脂を用いてもよい。このようなウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイソシアネートと、ポリヒドロキシ化合物又は多価アルコールとを反応させた後、さらに、水酸基含有(メタ)アクリル化合物および必要に応じて水酸基含有アリルエーテル化合物を反応させることによって得ることができるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーを挙げることができ、このようなラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーの市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)R−6545」等が挙げられる。
【0052】
〔不飽和ポリエステル樹脂系熱硬化性樹脂〕
前記不飽和ポリエステル樹脂としては、二価アルコールと不飽和二塩基酸(及び必要に応じて飽和二塩基酸を用いてもよい)とのエステル化反応による縮合生成物(不飽和ポリエステル)を重合性モノマー(例えばスチレンモノマー等)に溶解したもの等が挙げられる。前記不飽和ポリエステル樹脂としては、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社、1988年発行)、「塗料用語辞典」(色材協会、1993年発行)等に記載されているものも使用できる。前記不飽和ポリエステル樹脂の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「リゴラック」等が挙げられる。
【0053】
前記ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂は、いずれも、有機過酸化物開始剤を添加して加熱によるラジカル重合によって硬化させることができる。前記有機過酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類されるもの等が挙げられ、コバルト金属塩等と組み合わせれば常温での硬化も可能となる。前記コバルト金属塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、水酸化コバルト等が挙げられ、中でも、ナフテン酸コバルト又は/及びオクチル酸コバルトを用いるのが好ましい。
【0054】
なお、前記硬化性樹脂として、光硬化タイプを使用してもよく、この場合には可視光線の照射もより短時間で硬化させることができる。また、前記硬化性樹脂として、熱硬化タイプや常温硬化タイプと共に光硬化タイプを併用することもできる。前記光硬化性樹脂(光硬化タイプ)の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「リポキシ(登録商標)LC−760」、「リポキシ(登録商標)LC−720」等が挙げられる。
【0055】
(熱可塑性樹脂を含むプライマー)
「熱可塑性樹脂を含むプライマー」を構成する熱可塑性樹脂は、官能基含有層上でモノマーを反応させて生成した熱可塑性樹脂であることが望ましい。既にポリマー化している熱可塑性樹脂を使用するのではなく、ポリマー化するためのモノマー組成物を官能基含有層上で重付加反応又はラジカル重合反応させて、ポリマー化することで、リニアポリマー構造の直鎖状高分子で構成されるプライマー層が形成され、官能基含有層上の官能基とも化学結合させることができる。ここで、リニアポリマーとは、ポリマー分子中に架橋構造を含まず、1次元の直鎖状であるポリマーを意味する。リニアポリマーは、架橋構造による3次元ネットワークを構成する熱硬化性樹脂とは異なり、熱可塑性を有する。
以下、重付加反応させるものを重付加型熱可塑性樹脂、ラジカル重合反応させるものをラジカル重合型熱可塑性樹脂という。
【0056】
〔重付加型熱可塑性樹脂〕
重付加型熱可塑性樹脂を製造するためのモノマー組成物は、重付加によりリニアポリマー構造の直鎖状高分子を生成する重付加反応性化合物の組み合わせを構成成分として含む組成物である。前記組み合わせは、下記(1)〜(4)の少なくとも何れかの組み合わせであることが好ましい。
(1)2官能イソシアネート化合物と2官能の水酸基を有する化合物
(2)2官能エポキシ化合物と2官能の水酸基を有する化合物
(3)2官能エポキシ化合物と2官能カルボキシ化合物
(4)2官能エポキシ化合物と2官能チオール化合物
【0057】
《2官能イソシアネート化合物と2官能の水酸基を有する化合物》
前記ウレタン樹脂に記載の原料の中で、2官能イソシアネート化合物と2官能の水酸基を有する化合物の組み合わせることで、リニアポリマー構造の直鎖状高分子を生成させることができる。
具体的には、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)又はその混合物、p−フェニレンジシソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のジイソシアネート化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族グリコールとの組み合わせが挙げられる。その配合比は、−OH/−NCO当量比で0.7〜1.5の範囲が好適である。
前記二液型としての触媒硬化型で使用するウレタン化触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系触媒、有機錫系触媒等が挙げられる。前記アミン系触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トリエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ジメチルエーテルアミン、N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジプロピレン−トリアミン、N−メチルモルフォリン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリエチルアミン等が挙げられる。前記有機錫系触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンジマレエート等が挙げられる。一般にはポリオール成分100質量部に対しウレタン化触媒を0.01〜10質量部配合するのが好ましい。
【0058】
《2官能エポキシ化合物と2官能の水酸基を有する化合物》
ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールAの組み合わせが代表的であるが、ビスフェノールA以外のエポキシ樹脂としては公知のものが使用できる。具体的にはビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂や1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
また、ビスフェノールA以外の2官能の水酸基を有する化合物としては、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール等のフェノール類やエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族グリコールが挙げられる。これらの組み合わせは、前記現場重合型フェノキシ樹脂とか熱可塑エポキシ樹脂とも呼ばれる樹脂である。硬化前は、熱硬化性樹脂と同様の取り扱いで、加熱硬化後に熱可塑性樹脂の構造となる樹脂である。
触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系触媒、リン系触媒等が挙げられる。トリエチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0059】
《2官能エポキシ化合物と2官能カルボキシ化合物》
2官能エポキシ化合物は、前記2官能エポキシ化合物を使用することができる。2官能カルボキシ化合物としては、分子内にカルボキシ基を2つ有する化合物であればよく、例えばテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸やシュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。
硬化前は、熱硬化性樹脂と同様の取り扱いで、加熱硬化後に熱可塑性樹脂の構造となる樹脂である。
触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系触媒、リン系触媒等が挙げられる。トリエチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0060】
《2官能エポキシ化合物と2官能チオール化合物》
2官能エポキシ化合物は、前記2官能エポキシ化合物を使用することができる。2官能チオール化合物としては、分子内にメルカプト基を2つ有する化合物であればよく、例えば昭和電工株式会社製2官能2級チオール化合物カレンズMT(登録商標)BD1:1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン等が挙げられる。
硬化前は、熱硬化性樹脂と同様の取り扱いで、加熱硬化後に熱可塑性樹脂の構造となる樹脂である。
触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、アミン系触媒、リン系触媒等が挙げられる。トリエチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0061】
〔ラジカル重合型熱可塑性樹脂〕
ラジカル重合型熱可塑性樹脂は、不飽和基を有する単官能モノマーのラジカル単独重合体又はラジカル共重合体である、リニアポリマー構造の直鎖状高分子を含む樹脂組成物からなることが好ましい。
ラジカル重合型熱可塑性樹脂を製造するためのモノマー組成物は、エチレン性不飽和基を有する単官能モノマーを少なくとも一種含む組成物である。
前記エチレン性不飽和基を有する単官能モノマーとしては、例えば、スチレンモノマー、スチレンのα−,o−,m−,p−アルキル,ニトロ,シアノ,アミド,エステル誘導体、クロルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系モノマー;ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン類;(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−i−プロピル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
【0062】
前記ラジカル重合性化合物のラジカル重合反応のための触媒としては、例えば、公知の有機過酸化物や光開始剤等が好適に用いられる。有機過酸化物にコバルト金属塩やアミン類を組み合わせた常温ラジカル重合開始剤を使用してもよい。有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートに分類されるものが挙げられる。光開始剤としては、紫外線から可視光線で重合開始できるものを使用することが望ましい。
前記ラジカル重合反応は、反応化合物等の種類にもよるが、常温〜200℃で、5〜90分間加熱して行うことが好ましい。また光硬化の場合は紫外線や可視光線を照射して重合反応を行う。具体的には、前記樹脂組成物をコーティングした後、加熱してラジカル重合反応を行うことにより、前記ラジカル重合性化合物からなる熱可塑性樹脂層を形成することができる。
【0063】
[金属−非金属接合体]
本発明の金属−非金属接合体7は、図3に示すように、前記の表面処理金属材3の官能基含有層22側の表面又は前記の複合積層体5のプライマー層6側の表面に、非金属である被接合材8が接合一体化されてなる。
接合一体化する方法としては、前記非金属である被接合材を成形後に、前記の表面処理金属材又は前記の複合積層体と接合一体化させる方法でもよいし、前記非金属である被接合材を成形するのと同時に、接合一体化させる方法でもよい。
前記非金属である被接合材を成形後に、前記の表面処理金属材又は前記の複合積層体と接合一体化させる方法として、溶着による接合、具体的には、超音波溶着、振動溶着、熱溶着、熱風溶着、高周波誘導溶着、高周波誘電溶着、及び射出溶着を例示することができる。
前記非金属である被接合材を成形するのと同時に、接合一体化させる場合、具体的には、前記非金属である被接合材が樹脂のとき、当該樹脂を、射出成形、プレス成形、フィラメントワインディング成形、ハンドレイアップ成形、トランスファー成形、スプレードライ、塗布、浸漬等の方法で成形する際に、前記の表面処理金属材の表面処理層側の表面又は前記の複合積層体のプライマー層側の表面と接合一体化させることにより、金属−非金属接合体を得ることができる。これらの成形の方法のうち、射出成形、プレス成形、フィラメントワインディング成形、ハンドレイアップ成形が好ましい。
【0064】
上述したように、前記プライマー層の表面は、種々の材質(金属材料、有機材料等)の被接合材、特に、非金属である被接合材(樹脂材等)との接着性に優れている。非金属である被接合材を複合積層体のプライマー層側の表面に接合一体化することで、金属材と、非金属である被接合材とが高い強度で接合した金属−非金属接合体を好適に得ることができる。
【0065】
前記プライマー層の厚さ(乾燥厚さ)は、前記被接合材の材質や接合部分の接触面積にもよるが、前記プライマー層と前記被接合材との優れた接着性を得る観点から、1μm〜10mmであることが好ましく、より好ましくは2μm〜8mm、さらに好ましくは3μm〜5mmである。なお、プライマー層の厚さ(乾燥厚さ)は、前記プライマー層が複数層のときは、合計の厚さのことをいうものとする。
なお、接合時に加熱する場合、その加熱温度によっては、接合後に室温に冷却する過程で、金属材と被接合材との熱膨張係数の差に起因して金属−非金属接合体が熱変形を生じやすくなる。このような熱変形を抑制緩和する観点から、金属材と被接合材との間に伸び率の大きい特性を有する部分を所定の厚みで設けておくことが望ましい。前記厚さは、接合時の温度変化(接合時の加熱温度から室温冷却までの温度変化)と前記プライマー層の伸び率等の物性を考慮して求められる。
例えば、アルミニウム材と炭素繊維強化樹脂(CFRP)等とを接合一体化させる場合、前記プライマー層の厚さは0.1〜10mmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜8mm、さらに好ましくは0.5〜5mmである。
【0066】
非金属である被接合材の種類によっては、接着剤を用いることにより、金属材とより高い強度で接合した金属−非金属接合体を得ることができる。
【0067】
接着剤は、被接合材の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、ビニルエステル樹脂系等の公知の接着剤を用いることができる。
なお、接着時に加熱する場合、その加熱温度によっては、接着後に室温に冷却する過程で、金属材と非金属である被接合材との熱膨張係数の差に起因して金属−非金属接合体が熱変形を生じやすくなる。このような熱変形を抑制緩和する観点から、接着剤層の厚さは、前記プライマー層と接着剤層の合計厚さが0.5mm以上になるようにし、金属材と被接合材との間に伸び率の大きい特性を有する部分を所定の厚みで設けておくことが望ましい。前記合計厚さは、接着時の温度変化(接着持の加熱温度から室温冷却までの温度変化)と前記プライマー層及び接着剤の伸び率等の物性を考慮して求められる。
【0068】
<被接合材>
非金属である被接合材は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂(硬化物)等の樹脂であることが好ましい。前記樹脂は、樹脂単独であってもよいし、FRPなどガラス繊維や炭素繊維で強化されたものであってもよい。被接合材である樹脂は、あらかじめ成形された部材として、複合積層体のプライマー層又は前記表面処理金属材の官能基含有層を介して金属材と接合(接着)することにより金属−非金属接合体を形成してもよい。また前述のように、プライマー層又は官能基含有層上でモノマーを重合することにより、樹脂の被接合材を形成してもよい。あるいは、表面処理金属材又は複合積層体に対して熱可塑性樹脂をインサート成形することで金属−非金属接合体としてもよい。
【0069】
(樹脂)
被接合材とする樹脂は、特に限定されるものではなく、一般的な合成樹脂でよい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の自動車部品等に用いられるような樹脂等も挙げられる。あるいは、FRPや熱硬化性樹脂でもよい。FRPは、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維をプラスチックの中に入れて強度を向上させた複合材料を意味する。
FRPは、前記プライマー層の形成に使用したものと同一種類の樹脂とガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等を使用した織物や不織布をハンドレイアップ成形してもよいし、フィラメントワインディング成形してもよい。またシートモールディングコンパウンド(SMC)やバルクモールディングコンパウンド(BMC)を使用してもよい。
前記シートモールディングコンパウンド(SMC)とは、不飽和ポリエステル樹脂及び/又はビニルエステル樹脂、重合性不飽和単量体、硬化剤、低収縮剤、充填剤等を混合した後、さらに繊維補強材を含有させることによって得られるシート状の成形材料である。前記バルクモールディングコンパウンド(BMC)とは、バルク状の成形材料である。これらの成形材料は、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の成形法により目的の成形体に成形するが、この際にプライマー層を有する複合積層体のプライマー層側表面上に金属材を一緒に一体成形して両者を接合一体化してもよい。
【0070】
被接合材は、部材の形ではなく、膜状であってもよい。例えば、塗料による塗膜や、金属保護膜であってもよい。
【0071】
(塗膜)
塗膜は、顔料、樹脂、添加剤、溶剤を含む塗料を塗って形成される層を意味する。塗膜は、塗料を塗布後乾燥して形成することができる。
【0072】
(金属保護膜)
金属保護膜は、前記の表面処理金属材の表面処理層の表面に樹脂膜形成することにより、表面処理金属材に耐蝕性を付与する役割を果たす。
金属保護膜としては、例えば缶内面保護膜としてエポキシ樹脂/フェノール樹脂系、飽和ポリエステル樹脂/フェノール樹脂系の樹脂膜等がある。
【実施例】
【0073】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
<実施例1>
(前処理工程)
25mm×100mmの大きさの平面視矩形状の厚さ1.6mmのアルミニウム板(A6063)(アルミニウム物品)を、濃度5質量%の水酸化ナトリウム水溶液中に1.5分間浸漬した後、濃度5質量%の硝酸水溶液で中和処理し、水洗、乾燥を行って、化成処理を施し、次いで前記化成処理後のアルミニウム板を、純水中で10分間煮沸することによって、ベーマイト処理(前処理)を行った。このベーマイト処理によって前記アルミニウム板の表面に前処理部(表面凹凸を有するベーマイト皮膜)を形成した。
【0074】
(シランカップリング剤処理工程)
次に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製 KBM−903;シランカップリング剤)0.5gを工業用エタノール100gに溶解せしめてなる70℃のシランカップリング剤溶液中に、前記ベーマイト処理後のアルミニウム板を5分間浸漬した後、該アルミニウム板を取り出して乾燥せしめシランカップリング剤による層を形成した。
(官能基付与工程)
次に2−イソシアネトエチルメタクリレート(昭和電工株式会社製 カレンズMOI(登録商標)):1.2g、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30):0.05gをトルエン150g中に溶解した溶液に70℃で5分間浸漬した後に引き揚げて乾燥した。このようにして、メタアクリロイル基を三次元方向に延ばした。
【0075】
(プライマー層形成工程)
次に、固形ビニルエステル樹脂(昭和電工株式会社製 VR−77)100gをアセトン100g中に溶解し、さらに有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製 パーブチル(登録商標)O)1.0gを混合した熱硬化性樹脂組成物を、前記官能基付与工程を経た後のアルミニウム板の官能基付着面(以下、官能基含有層表面という)に、乾燥厚さが15μmになるようにスプレー法にて塗布した後、空気中に常温で1時間放置することによって溶剤の揮発を行った。その後、120℃の乾燥炉中に30分間放置しビニルエステル樹脂の硬化を行ってプライマー層が形成されたアルミニウム板−1(プライマー付き)を得た。
【0076】
<比較例1>
(前処理工程)
実施例1の(前処理工程)と同様の操作を行った。
(シランカップリング剤処理工程)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製 KBM−503;シランカップリング剤)0.5gを工業用エタノール100gに溶解せしめてなる70℃のシランカップリング剤溶液中で行うシランカップリング剤溶液中に、前記ベーマイト処理後のアルミニウム板を5分間浸漬した後、該アルミニウム板を取り出して乾燥せしめシランカップリング剤による層を形成した。
(プライマー層形成工程)
官能基付与工程は行わずに、実施例1の(プライマー層形成工程)と同様の操作を行い、アルミニウム版−2(プライマー付き)を得た。
【0077】
<実施例2>
(前処理工程)
実施例1と同様の操作を行った。
【0078】
(シランカップリング剤処理工程)
実施例1と同様の操作を行った。
(官能基付与工程)
次にグリシジルメタクリレート:1.0gをトルエン150g中に溶解した溶液に70℃で5分間浸漬した後に引き揚げて乾燥した。このようにして、メタクリロイル基を三次元方向に延ばした。
【0079】
(プライマー層形成工程)
次に、ビニルエステル樹脂(昭和電工株式会社製 R−806)100gに有機過酸化物(化薬アクゾ株式会社製 パーブチル(登録商標)O)1.0gを混合した熱硬化性樹脂組成物を、前記官能基付与工程を経た後のアルミニウム板の官能基含有層表面に、乾燥厚さが20μmになるようにスプレー法にて塗布した後、120℃乾燥炉中に30分間放置しビニルエステル樹脂の硬化を行ってプライマー層が形成されたアルミニウム板−3(プライマー付き)を得た。
【0080】
<実施例3>
(前処理工程)
実施例1と同様の操作を行った。
【0081】
(シランカップリング剤処理工程)
比較例1と同様の操作を行った。
(官能基付与工程)
次に2官能チオール化合物である1,4ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工株式会社製 カレンズMT(登録商標) BD1):0.6g、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30):0.05gをトルエン150g中に溶解した溶液に70℃で10分間浸漬した後に引き揚げて乾燥した。このようにして、化学結合可能な官能基を三次元方向に延ばした。
【0082】
(プライマー層形成工程)
次に、エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)1004):100g、ビスフェノールA:12.6g、トリエチルアミン:0.45gをアセトン:209g中に溶解して得られた樹脂組成物を、前記官能基付与工程を経た後のアルミニウム板の官能基含有層表面に、乾燥厚さが10μmになるようにスプレー法にて塗布した後、空気中常温で30分間放置することによって溶剤を揮発させ、その後150℃の炉中に30分間放置して付加重合反応を行ない常温に戻した。前記官能基含有層表面に厚さ10μmのプライマー層が形成された、アルミニウム板−4(プライマー付き)を得た。
【0083】
<比較例2>
(前処理工程)
実施例1の(前処理工程)と同様の操作を行った。
(シランカップリング剤処理工程)
実施例1のシランカップリング剤処理工程と同様の処理を行ってシランカップリング剤による層を形成した。
(プライマー層形成工程)
官能基付与工程は行わずに、実施例3の(プライマー層形成工程)と同様の操作を行い、アルミニウム版−5(プライマー付き)を得た。
【0084】
<実施例4>
(前処理工程)
実施例1と同様の操作を行った。
【0085】
(シランカップリング剤処理工程)
次に、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越シリコーン株式会社製 KBM−403;シランカップリング剤)0.5gを工業用エタノール100gに溶解せしめてなるシランカップリング剤溶液を、前記ベーマイト処理後のアルミニウム板の上にスプレーで表面が均一に濡れるまで吹き付けたものを100℃乾燥炉中で5分間放置し反応を進めシランカップリング剤による層を形成した。
(官能基付与工程)
次にメタクリルアミド:0.3gをトルエン150g中に溶解した溶液をスプレーで表面が均一に濡れるまで吹き付けたものを100℃乾燥炉中で5分間放置しシランカップリング剤層との反応を進めた。このようにして、メタクリロイル基を三次元方向に延ばした。
【0086】
(プライマー層形成工程)
実施例2のプライマー層形成工程と同様の処理を行ってアルミニウム板−6(プライマー付き)を得た。
【0087】
<比較例3>
(前処理工程)
実施例1の(前処理工程)と同様の操作を行った。
(シランカップリング剤処理工程)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製 KBM−503;シランカップリング剤)0.5gを工業用エタノール100gに溶解せしめてなるシランカップリング剤溶液を、前記ベーマイト処理後のアルミニウム板の上にスプレーで表面が均一に濡れるまで吹き付けたものを100℃乾燥炉中で5分間放置し反応を進めシランカップリング剤による層を形成した。
(プライマー層形成工程)
官能基付与工程は行わずに、実施例4の(プライマー層形成工程)と同様の操作を行い、アルミニウム版−7(プライマー付き)を得た。
【0088】
<実施例5>
(前処理工程)
実施例1と同様の操作を行った。
【0089】
(シランカップリング剤処理工程)
比較例1のシランカップリング剤処理工程と同様の操作を行った。
(官能基付与工程)
次に3官能チオール化合物であるペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工株式会社製 カレンズMT(登録商標) PE1):0.6g、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30):0.05gをトルエン150g中に溶解した溶液に70℃で10分間浸漬した後に引き揚げて乾燥した。このようにして、メルカプト基を三次元方向に延ばした。
【0090】
(プライマー層形成工程)
次に、エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 jER(登録商標)1001):100g、2−エチル−4−メチルイミダゾール:2gをアセトン:200g中に溶解して得られた組成物を、前記官能基付与工程を経た後のアルミニウム板の官能基含有層表面に、乾燥厚さが10μmになるようにスプレー法にて塗布した後、空気中常温で30分間放置することによって溶剤を揮発させ、その後120℃の炉中に30分間放置して硬化反応を行ない常温に戻した。官能基含有層表面に厚さ10μmの架橋型エポキシ樹脂のプライマー層が形成された、アルミニウム板−8(プライマー付き)を得た。
【0091】
<比較例4>
(前処理工程)
実施例1の(前処理工程)と同様の操作を行った。
(シランカップリング剤処理工程)
実施例1のシランカップリング剤処理工程と同様の操作を行ってシランカップリング剤による層を形成した。
(プライマー層形成工程)
官能基付与工程は行わずに、実施例5の(プライマー層形成工程)と同様の操作を行い、アルミニウム版−9(プライマー付き)を得た。
【0092】
〔密着性耐久性試験:接着性評価〕
前記の各実施例、比較例で作製したアルミニウム板(1〜9)について、JIS K5400-8.5:1999の碁盤目試験法に準拠して、60℃温水に浸漬前と、60℃温水に24時間浸漬後と、60℃温水に1週間浸漬後と、60℃温水に1か月浸漬後と、60℃温水に3か月浸漬後に、それぞれ碁盤目試験を行った。
具体的には、JIS K 5400 8.5.2:1999(付着性 碁盤目テープ法)に準ずる試験片上の膜層(プライマー層)を貫通して、素地面に達する切り傷を碁盤目状に付け、この碁盤目の上に粘着テープをはり、はがした後の膜層(プライマー層)の付着状態を目視によって観察し、JIS K5400-8.5.1:1999の表18に準じ、評価した。評価結果を下記表1に示す。
JIS K5400-8.5.1:1999の表18 碁盤目試験の評価点数は以下の通り。
10点:切り傷1本ごとが、細くて両側が滑らかで、切り傷の交点と正方形の一目一目にはがれがない。
8点:切り傷の交点にわずかなはがれがあって、正方形の一目一目にはがれがなく、欠損部の面積は全正方形面積の5%以内。
6点:切り傷の両側と交点とにはがれがあって、欠損部の面積は全正方形面積の5〜15%。
4点:切り傷によるはがれの幅が広く、欠損部の面積は全正方形面積の15〜35%。
2点:切り傷によるはがれの幅は4点よりも広く、欠損部の面積は全正方形面積の35〜65%。
0点:はがれの面積は全正方形面積の65%以上。
【0093】
【表1】

【0094】
<実施例6>
ISO19095の引張試験用試験片アルミニウム板(A6063:18mm×45mm)に対して、アセトンで脱脂し、#100のサンドペーパーで表面を粗らし(サンディング処理)、実施例3と同様の操作(シランカップリング剤処理工程、官能基付与工程、プライマー層形成工程)を行った。
次にSABICジャパン合同会社製のポリカーボネート樹脂「LEXAN 121R−111」(汎用、高流動タイプ)を使用し、住友重機SE100Vの射出成形機を用いてシリンダー温度:300℃、ツール温度:110℃、インジェクションスピード:10mm/sec、ピーク/ホールディング圧力:100/80(MPa/MPa)の条件で、ISO19095の引張試験用試験片(アルミ:18mm×45mm×1.5mm、樹脂:10mm×45mm×3mm)である金属−非金属接合体−1を得た。
【0095】
<比較例5>
ISO19095の引張試験用試験片アルミニウム板(A6063:18mm×45mm)に対して、アセトンで脱脂し#100のサンドペーパーで表面を粗らし(サンディング処理)、比較例2と同様の操作(シランカップリング剤処理工程、プライマー層形成工程)を行った。
次にSABICジャパン合同会社製のポリカーボネート樹脂「LEXAN 121R−111」(汎用、高流動タイプ)を使用し、住友重機SE100Vの射出成形機を用いてシリンダー温度:300℃、ツール温度:110℃、インジェクションスピード:10mm/sec、ピーク/ホールディング圧力:100/80(MPa/MPa)の条件で、ISO19095の引張試験用試験片(アルミ:18mm×45mm×1.5mm、樹脂:10mm×45mm×3mm)である金属−非金属接合体−2を得た。
【0096】
<実施例7>
ISO19095の引張試験用試験片アルミニウム板(A6063:18mm×45mm)に対して、アセトンで脱脂し、#100のサンドペーパーで表面を粗らし(サンディング処理)、実施例6と同様のシランカップリング剤処理工程、官能基付与工程を行った。
次に、バルクモールディングコンパウンド(BMC)(昭和電工社製「リゴラック(登録商標)RNC−980)(接合対象)を、射出成形機(ファナック株式会社「α‐S100iA」;金型温度160℃、成形圧力100MPa、成形時間3分で射出成形することにより、金型内に設置したアルミ部材とBMCを接合してISO19095の引張試験用試験片(アルミ:18mm×45mm×1.5mm、樹脂:10mm×45mm×3mm)である金属−非金属接合体−3を得た
【0097】
<比較例6>
官能基付与工程を行わないこと以外は実施例7と同様の操作を行い、金属−非金属接合体−4を得た。
【0098】
〔金属−非金属接合体の接合強度の評価〕
実施例6、7及び比較例5、6で得た金属−非金属接合体について、常温で1日間放置後と、60℃純水中に3ヶ月浸漬後に、ISO19095 1−4に準拠して、引張試験機(株式会社島津製作所製万能試験機オートグラフ「AG−IS」;ロードセル10kN、引張速度10mm/min、温度23℃、50%RH)にて、引張剪断接着強度試験を行い、金属と非金属の接合強度を測定した。これらの測定結果を下記表2に示す。
【0099】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る表面処理金属材は、例えば、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)材等の他の材料(部品等)と接合一体化されて、例えば、自動車用部品(ドアサイドパネル、ルーフ、ブレーディング、Aピラー、Bピラー等)等として用いられる。また、本発明に係る表面処理金属材は、例えば、ポリカーボネート成形体と接合一体化されて、例えば、スマートフォンの構造体等として用いられるが、特にこれら例示の用途に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0101】
1 金属材
2 表面処理層
21 シランカップリング剤処理層
22 官能基含有層
3 表面処理金属材
4 前処理により形成された金属材の表面の微細な凹凸
5 複合積層体
6 プライマー層
7 金属−非金属接合体
8 被接合材
図1
図2
図3