【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すべてのこれらの事例において、有効な製品の開発で、依然として吸入による薬剤投与を制限する技術的問題に直面した。
【0007】
臨床の観点から、記述の吸入器は、概ね、各種タイプの患者および投与条件に適しているので、理想的吸入品は、患者による様々な投与法での使用を可能にすべきである。一般に、ネブライザー療法は、高齢患者および小児患者に汎用されているが、成人には乾燥粉末または加圧式吸入器による治療法の方が適している。しかし、患者は、安静条件下で、強制吸入を使用せずに薬剤を吸入し、これにはむしろ吸入粉末を必要とするので、現在、ネブライザーの使用が、依然として有効であると考えられている。その代わりに加圧式吸入器の場合、製品をデバイスの作動に吸気を調和させ、粒子が咽喉底部に衝突し、深部肺に到達できない状態を防がなければならない。
【0008】
したがって、これらの3タイプの吸入デバイスで使用する吸入配合物は、一般的に、互いに基本的に非常に異なる。
【0009】
ネブライザー用製品の場合、配合物は、賦形剤塩として界面活性剤および防腐剤を含有し、製剤の等張性、懸濁液の場合の粒度分布の均一性および微生物汚染から確実に保護する溶液または懸濁液によって実質的に構成される。
【0010】
加圧式製剤の場合、組成物は、通常、界面活性剤、プロペラントおよび共溶媒を含有する。粉末形態の吸入配合物では、賦形剤は、希釈剤として使用される基本的に粒度の異なるラクトースから成る。
【0011】
ある場合にある程度の配合または安定性が制約される点は、吸入製品の工業開発を制限し、実質的にすべての吸入剤形中に存在するコルチコステロイドとは別に、一部の気管支拡張剤および抗コリン作動性活性物質に対するいずれかの投与形態が販売できない。現在の呼吸器療法は、最も有効な手法として、様々な種類の併用薬を用いているので、これらの制約は、特に重要であり、この点で、吸入粉末の形態で汎用されるコルチコステロイド−気管支拡張剤併用薬を少数のみ開発することが可能になってきた。
【0012】
噴霧形態に関して、患者は、異なる配合品をそのまま即席に併用するが、これは互いに禁忌の可能性さえある。
【0013】
そのため、治療の観点から、患者が、在宅時、仕事中、旅行中、緊急時などの異なる条件では同じ薬剤を服用できない制限がある。前記の異なる状況で、患者は、異なる活性物質を含有する異なる製剤を使用せざるを得ないという可能性がある。
【0014】
吸入品の開発で直面する配合上の問題で最も重要なのは、大気因子に関連する化学的安定性に関するもので、これは、吸入製剤の急速な分解を引き起こし、その結果、この製剤を含有する製品の保存期間が減少する。
【0015】
吸入製品の安定性は、肺最深部への粒子または液滴の定量的浸透のための物理的特徴を維持しながら、該吸入製品を肺深部に投与しなければならないので、特に重要である。吸入投与が現在承認され、そのために、肺組織への毒性の点で許容されている賦形剤の数は、ごく限られている、という事実がこれに加わる。
【0016】
低密度のために空気中への高い分散性を有する乾燥吸入粉末の例が、文献で報告されている。これらの粉末は、通常、高含量のリン脂質、特にジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)と配合される。
【0017】
この種の粉末は、内部中空形態の低密度粒子に関する米国特許出願第2005/0074498号Alで、発泡剤と配合したリン脂質で構成される界面活性剤の使用により噴霧乾燥で得られると説明されている。中空構造は、発泡剤と界面活性剤リン脂質の正確な配合の結果として説明されている。前記出願は、リン脂質なしで得られる同様の形態の例を説明していない。界面活性剤としてのリン脂質の使用は、得られる製品の主要な特徴、および、とりわけ大気因子と関連するその感度および安定性を決定し、これは、特に湿気に影響される。さらに、特許文献(米国特許出願第2001/0036481号Al)は、DPPCが湿度41℃、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)が55℃、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)が63℃という、肺投与に最も適合する3種のリン脂質転移温度(Tg)の数値を示している。
【0018】
転移温度は、炭化水素鎖が平坦で、稠密な規則的ゲル相から、炭化水素鎖が無秩序に配向され、流動する不規則な液晶相への脂質の物理的状態の変化を引き起こすのに必要な温度であると定義される。
【0019】
これらのTg値は、すべて、非晶質ラクトースに特徴的なTg値よりもはるかに低い。
Tgが、製剤が保存される環境の温度に近いほど、転移が容易になることが既知である。主賦形剤が流体で、ゆるく充填された系では、成分の分子移動度が非常に高く、その結果、活性物質の様々な化学反応と分解を引き起こす傾向を示すことも既知である。
【0020】
そのため、リン脂質の吸入投与のための多孔質粒子を生成する解決策は、製品の長期安定性と関連する合理的な科学的評価によっては明らかに裏付けられない。
【0021】
前記の特許出願は、吸入粉末としての利用以外で、プロペラントガスを有する吸入器でのこれらの粒子の利用も説明している。とりわけ、この投与法は、液体表面に浮遊する、あるいは、水にゆっくりと溶解する傾向のために、水との不適合であるとすると、水または水溶液に粒子を分散させることによる従来のネブライザーでは不可能であると思われる。
【0022】
「高多孔率」または「低密度」の概念は、引用した特許出願で実質的に同等に使用されている。
【0023】
特に、「密度」という用語は、ヘリウムピクノメーターで測定すると、密度は、次式ρ=P/V(g/cc)に従って粉末および粒子を形成する固体材料の密度を特定するので、粒子の絶対密度を指すためではなく、むしろ、全体容積を考慮して、粒子の見かけの密度(一部の文書では、「嵩密度」と説明)を指すために使用されている。
【0024】
単一粒子毎のこの全体容積の測定が技術的に困難であるとすると、引用した特許出願は、粉末の容積(その後、密度)パラメーターを嵩容積およびタップ容積と呼んでいる。
【0025】
特許出願WO 03/0350030 A1は、溶液の凍結乾燥によって調製された薬剤を含有する固体乾燥形態の調製を考慮した吸入投与用キットの調製を説明している。例でも説明されているプロセスは、工業生産に関連すると非常に困難で、とりわけ、活性物質の経時的安定性の実質的改善を保証しない。事実、凍結乾燥後、配合物に添加された薬剤は、高多孔率を特徴とする賦形剤網に分散され、プロセスを通して調節または変更できない。この多孔率は、固体形態の急速溶解の観点から有用であるが、大気因子への薬剤の曝露を増加させ、安定性を損なう。特定の事例では、例で得られた凍結乾燥品の多孔率に関するデータが提供されていないが、間接的測定から得られた文献データは、0.05〜0.2g/ccの糖および界面活性剤を含有する配合凍結乾燥錠の見かけの密度(粉末の嵩密度に相当)を載せている。
【0026】
特許出願CA2536319は、噴霧乾燥によって得られる、水分1%未満の薬学的組成物を説明している。指摘によれば、配合物中の1%を上回る水分は薬理活性物質の分解を引き起こし、該組成物の効果を喪失させるので、この非常に低い水分は、該組成物の安定性を確保するのに必要である。水分レベルを低下させることを目的に、該組成物は、大量のマンニトールで構成されているが、しかし、粉末の物理的特徴をかなり損ない、粒度を増加させ、使用吸入器のマウスピースから送達される粉末量を減少させる。
【0027】
高分散性を有する吸入粉末の生成上の問題は、できる限り分散する薬剤を含有する粒子のエンジニアリングによって解決した。
【0028】
手短に言うと、使用技術は、適切な賦形剤マトリックス内部に分子レベルで分散された少量の活性物質から成る基本的に微細な粒子(直径の幾何平均が4.0μm超)の生成技術であって、噴霧乾燥製剤技術により低密度粗粒子を確実に配合できる生成技術である。
【0029】
この配合法は、配合物中に高い割合の賦形剤の使用を必要とするが、組成物中には少量の活性物質の含有を可能にする。
【0030】
したがって、これらの組成物は、空力性能の問題を解決するが、化学的安定性に関する重要な疑問を解決しない。
【0031】
その代わりに、噴霧乾燥技術を使った、活性物質含量%が高い吸入粉末の生成は、化学的安定性に関して有利であると考えることが必要である。呼吸器の治療法に共通する活性物質を考慮すると、製品の個々の量を構成する粉末量が限られているとすると、ほとんどの場合、この活性物質含量%は、吸入粉末形態の生成を可能にするには高すぎる。
【0032】
事実、この粉末量は、個別吸入粉末量を生成するいずれかの産業用装置により再現性を持って配量するには少なすぎる。
【0033】
そのため、化学的および物理的両観点から安定な吸入粉末の生成は、使用する活性物質の安定性の要件と必ず折り合いを付けねばならず、深部肺への配置に関して適切なエアゾル性能を確保することが必要である。
【0034】
化学的安定性の観点から、理想的アプローチは、粉末粒子の分子移動を減少させることができる糖、および、外部環境との相互作用と粉末による水吸収を制限できる疎水性賦形剤と配合した大量の活性物質を含有する乾燥粉末の生成である。
【0035】
エアゾル性能の観点から、同粉末は、吸入投与に適した粒子径、および、吸入時に粒子の離解を促進することができる組成物を特徴としなければならない。
【0036】
同時に、本粉末の物理的組成の特徴は、個別量の吸入粉末の形態の製品または吸入粉末を含有する貯蔵チャンバーから比較的大量を抜き出すことができる複数回投与吸入器の工業規模の調製用の装置を使った均一分割能と一致することが必要である。
【0037】
普通は、個別量で吸入粉末を再現性を持って送達するために、キャリアおよび不活性フィラーを使用して、活性物質の迅速で効率的な希釈を可能にし、それによって吸入器中で容易に定量できる。
【0038】
ラクトースは、1948年にAbbottによってAerohaler吸入器に導入されて以来、粉末吸入配合物(乾燥粉末吸入器DPI)中のキャリアとして使用されている。
【0039】
事実、ラクトースは、粉末吸入配合物用に唯一承認されたキャリアで、微粉化活性物質との配合で均質な配合物を生成し、極端に少量の場合でも分割精度を高めるのに使用される。
【0040】
一般に、粉末形態の吸入配合物は、一般に空気動力学的直径1〜5μmの活性物質の微粉化粒子と配合した粗キャリア粒子の混合物として生成される。
【0041】
キャリア粒子は、薬剤粒子の流れを増加させ、それによって、分割精度を改善し、活性物質のみを含有する配合物に認められる用量の変動を減少させるために使用される。この配合アプローチにより、他では活性物質の合計1mgを越えない、取り扱い粉末の用量サイズを増加させ、生成作業中のバルク粉末の取り扱いと分割を容易にすることができる。
【0042】
キャリア粒子の使用により、薬剤粒子は、吸入器からより速く放出され(単回または複数回)、そのため、粉末の送達効率も増加する。
【0043】
ラクトースなどの粗キャリアの存在は、それが味蕾上に沈殿し、軽い甘味を生じ、薬剤量が正確に服用されたことを確認するので、吸入期中のフィードバックも提供する。その結果、ラクトースキャリアは、配合物の重要な成分であり、化学的、物理的観点で、ラクトースへの変更はいずれも、薬剤の沈殿プロファイルを変化させる可能性がある。そのため、キャリア粒子の設計は、吸入粉末配合物の開発で重要である。
【0044】
吸入中、キャリア粒子の表面に付着する薬剤粒子は、薬剤とキャリアとの間の付着力に吸入気流か克服する結果、剥離する。キャリア粗粒子は、上気道で衝突し、一方、小さめの薬剤粒子は、下気道を通過し、深部肺に沈殿する。
【0045】
強い粒子間エネルギーによるキャリア粒子からの薬剤粒子の不十分な剥離は、多くの粉末吸入製品の非効率的な肺沈殿の主因と見なす必要がある。そのため、有効な吸入配合物を生成し、付着と粘着の粒子間力の正しいバランスを特定し、安定な配合物(均質な混合物を有し、粉末の分離を伴わず、含量の適切な均一性)を提供するために微粉化薬剤と粗ラクトースキャリアとの間の十分な付着を保証し、吸入中キャリアからの薬剤の効果的な剥離を保証すべきである。
【0046】
その結果、粉末配合物の効率は、キャリアの性質に大きく依存し、そのキャリアの選択は、吸入製品の一般的性能の鍵となる要素である。吸入医薬品のキャリアとして使用を提案できる材料の範囲は、毒性のために極端に限られている。ラクトースや他の糖類が検討、使用され、その結果、これらの材料の特定の修飾がさらなる配合物の最適化を保証できる。
【0047】
吸入使用のキャリアに最も適したサイズに関して、様々な、議論を呼ぶ報告が発表されている。一部の研究は、キャリア粒子のサイズを減少させて得られた、粉末吸入器送達吸入剤量の改善を報告している。特定の小凝集体は、吸入気流中の乱流運動により強い感受性を示し、より効率的な解凝を引き起こす、と提案されている。しかし、小さすぎるキャリアの使用は、粉末の流動性悪化を引き起こし、これが、配合物中の粗キャリア混入の主な理由である。他方、大きすぎるキャリア粒子は、普通、微結晶よりも大きな表面の裂け目を示すことが報告されている。これは、活性物質粒子を保護し、混合ステップ中に剥離を防ぐという利点を有することができる。そのため、キャリアの大型粒子サイズは、吸入後の薬剤沈殿の観点から必ずしも負の要素ではない。よって、粗キャリアとの配合は、一般に、小サイズのキャリア粒子で得られる同様の配合物よりも薬剤の分散が良好である。これは、大きめの粒子の場合、弱めの粒子間力による。
【0048】
粉末吸入配合物の薬剤の分散性に対するキャリア粒子の形状の影響が十分に規定されていない場合でも、薬剤とキャリア粒子との間の引力は、形態に依存することは既知であり、事実、粉末吸入配合物に最も汎用される粒子は、不規則な形態を有する。
【0049】
前記の考察すべてに照らして、吸入粉末に共通するディスペンサーで投与するのが安定で、容易な乾燥粉末の形態での吸入使用のための薬学的組成物を生成できるのが有利である。乾燥粉末の形態の固体組成物を得るのも有利と思われ、これは、異なる活性物質を含有する粉末の、少量でも正確な混合を可能にし、同時に配合物の高い安定性を維持し、活性物質の分解を防止することができる。
【0050】
しかし、高い送達能および呼吸能の特徴を持ち、安定で、吸入粉末の一般的ディスペンサーで投与可能な薬剤の吸入配合物を提供する問題は、現在未解決であり、または、十分に解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0051】
したがって、本発明の第1の態様は、粉末形態での吸入用の薬学的組成物を提供することであり、本薬学的組成物は、
a) 少なくとも粉末(a
1)を含む第1の粉末であって、粉末(a
1)が前記の1重量%超の量の活性物質または薬学的に許容可能なその塩と、前記粉末の5〜70重量%の量のロイシンと、前記粉末20〜90重量%の量の糖とを含む第1の粉末と、
b) 35〜75μmのX50を有する第1のラクトースの1.5〜10μmのX50を有する第2のラクトースとの混合物を含む第2の粉末であって、前記混合物中の第1および第2のラクトースの含量が、それぞれ、85%〜96%および4%〜15%である第2の粉末とを含み、
この場合、薬学的組成物に含まれる第1の粉末と第2の粉末との間の重量比は、1/5〜1/100である。
【0052】
本組成物は、60%超の微粒子画分(FPF)と80%超の送達画分(DF)も有する。
【0053】
本発明のさらなる態様は、本発明に従った定量の組成物および吸入デバイスを含む吸入粉末としての薬剤の投与用キットで表される。
【0054】
本発明に従った薬学的組成物のさらなる実施形態では、第3粉末(a
2)は、前記第2粉末の5〜70重量%の量のロイシン、前記第2粉末の20〜90重量%の量の糖を含む粉末(以後、増量剤とも定義)を含む。
【0055】
この第2の実施形態で説明した薬学的組成物により、ごく少量を服用しなければならない活性物質を含み、本組成物の第1粉末と第2粉末との間の比率を変動させずに保ち、高い呼吸能を保証することが可能な薬理活性組成物を得ることが可能である。
【0056】
本発明に従った薬学的組成物のさらなる実施形態では、第1粉末は、前記第3粉末の1重量%超の量の活性物質、前記第3粉末の5〜70重量%の量のロイシン、前記第3粉末の20〜90重量%の量の糖を含む第4粉末(a
3)を含む。
【0057】
この第3の実施形態で説明した薬学的組成物により、適用部位で、相乗作用、または、同時の単独作用が可能な2種またはそれよりも多い異なる活性物質の配合物を含むことができる薬理活性組成物が得られる。
【0058】
本発明によれば、「活性物質」という用語は、望みの生体治療効果を有する物質を意図する。
【0059】
吸入により投与可能な活性物質の例は、β2作用薬、ステロイド、例えばグルココルチコステロイドまたはコルチコステロイドなど(好ましくは抗炎症剤)、抗コリン作動薬、ロイコトリエン拮抗剤、ロイコトリエン合成阻害剤、粘液溶解薬、抗生物質、疼痛緩和剤、一般に例えば鎮痛抗炎症剤(ステロイドおよび非ステロイド抗炎症剤を含む)など、心臓血管作用薬、例えばグルコシドなど、呼吸器作用薬、抗喘息薬、短時間および長時間作用気管支拡張吸入剤、抗癌剤、アルカロイド(すなわち、麦角アルカロイド)またはトリプタン、例えば偏頭痛の治療に使用可能なスマトリプタンまたはリザトリプタンなど、糖尿病および関連機能障害に使用可能な薬剤(すなわちスルホニルウレア)、睡眠誘発剤、例えば鎮静剤および催眠薬など、精神賦活薬、精神賦活薬、食欲抑制剤、抗関節炎薬、抗マラリア薬、抗てんかん薬、抗血栓薬、降圧剤、抗不整脈薬、抗酸化剤、抗精神病薬、抗不安薬、抗痙攣薬、鎮吐剤、抗感染症薬、抗ヒスタミン薬、抗真菌薬および抗ウイルス薬、パーキンソン病などの神経機能障害治療薬(ドーパミン拮抗剤)、アルコール中毒および他種依存症治療薬、勃起不全を治療するための血管拡張剤などの薬剤、筋弛緩剤、筋収縮薬、オピオイド、刺激薬、精神安定剤、抗生物質、例えばマクロライドなど、アミノグリコシド、フルオロキノロンおよびβ−ラクタマーゼ、ワクチン、サイトカイン、成長因子、避妊薬を含むホルモン、交感神経興奮薬、利尿剤、脂質調節薬、抗アンドロゲン剤、駆虫薬、抗凝血剤、新生物薬、抗腫瘍薬、血糖降下剤、栄養剤および栄養補助剤、成長補助剤、抗腸内薬、ワクチン、抗体、診断薬および造影剤、または、上記物質の混合物(例、ステロイドおよびβ−作用薬を含有する喘息治療用配合物)、ヘパリンおよびその誘導体、例えば分子量が15〜30Kdaのヘパリンおよび半合成ヘパリン誘導体など、N−アセチルシステインなどの抗酸化作用を有する物質、カルノシン、メラトニン、レスベラトロール、アスコルビン酸、アルファ−トコフェロール、葉酸、トランス−カフェイン酸、ヘスペリジン、没食子酸エピガロカテキン、デルフィニジン、ロスマリン酸、ミリセチン、5−メチルテトラヒドロ葉酸、5−ホルミルテトラヒドロホレートアシド、5−ホルミルテトラヒドロ葉酸、アスタキサンチン、リコペン、クルクミン、ピノスチルベン、プテロスチルベン、および、イソラポンチゲニンを含む。
【0060】
前記の活性物質は、小分子(好ましくは小不溶性分子)、ペプチド、ポリペプチド、プロテイン、ポリサッカライド、ステロイド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂肪、電解質などを含むが、それらに制限されない1種または複数の構造クラスに属する。
【0061】
具体例は、β2作用薬のサルブタモール、サルメテロール(すなわち、キシナホ酸サルメテロール)、ホルモテロールおよびフマル酸ホルモテロール、フェノテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、レバルブテロールおよびカルモテロール、ステロイド、例えばジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニドおよびフルチカゾン(例、プロピオン酸フルチカゾンまたはフロ酸フルチカゾン)、シクレソニド、フロ酸モメタゾンなど、抗コリン作動薬、例えば臭化グリコピロニウム、臭化アクリジニウム、ウメクリジニウム、臭化イプラトロピウム、オキシトロピウム、臭化チオトロピウムを含む。
【0062】
ペプチドおよびタンパクに関しては、本発明は、合成、組換え、天然、グリコシル化および非グリコシル化ペプチドおよびタンパク、および、生体活性断片および類似体も含む。
【0063】
血流への中間体の放出が迅速な薬理効果を得るのに特に有利な活性物質は、偏頭痛、悪心、不眠、アレルギー反応(アナフィラキシー反応を含む)、神経障害および精神疾患(特に、パニック発作および他の精神病または神経症、並びに、パーキンソン病)の治療に使用される物質、これらの活性物質の中でも、サフィナミドを含むレボドーパおよびモノアミンオキシダーゼ阻害剤、勃起不全、糖尿病および関連疾患、心臓疾患を治療する活性物質、抗痙攣薬、気管支拡張剤、および、疼痛および炎症を治療する活性物質を含む。本発明に従って、抗体、細胞、遊離細胞および細胞部分から成るワクチンも投与することができる。
【0064】
他の活性物質の例は、ステロイドおよびそれらの塩、例えばブデソニド、テストステロン、プロジェステロン、フルニソリド、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、ベタメサゾン、デキサメサゾン、フルリカゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニソン、ヒドロコルチゾンなど、ペプチド、例えばサイクロスポリンおよび他の水不溶性ペプチドなど、レチノイド、例えばシス−レチノイン酸、13−トランス−レチノイン酸および他のビタミンAおよびベータ−カロテンの誘導体など、ビタミンD、EおよびKおよびそれらの前駆体および水不溶性誘導体、プロスタサイクリン、プロスタグランジンE1およびE2、テトラヒドロカンナビノール、肺サーファクタント脂質を含めたプロスタグランジン、ロイコトリエンおよびそれらのアクチベーターおよび阻害剤、脂溶性抗酸化剤、疎水性抗生物質および化学療法剤、例えばアンホテリシンB、アドリアマイシンなどである。
【0065】
活性物質のさらなる例は、ピルフェニドンで、突発性肺線維症の治療に用いられる。
【0066】
特に、本発明によれば、前記活性物質は、加水分解可能活性物質、すなわち、配合物中に存在する水分量に応じた分解プロセスを受けることができる物質である。
【0067】
本発明によれば、用語「糖」は、炭素原子5個またはそれよりも多いモノサッカライド、ジサッカライド、オリゴサッカライドまたはポリサッカライドを意図し、炭素原子5個またはそれよりも多いポリールも意図する(しばしば、糖アルコールとも規定する)。
【0068】
吸入により投与可能な糖の例は、ラクトース、トレハロース、スクロース、マルトース、メリビオース、セロビオース、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、ソルビトール、ガラクチトール、イジトール、ボレミトール、フシトール、イノシトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルト、マルトトリオース、マルトトリオース、マルトテトラオース、ポリグリシトールを含む。
【0069】
本詳細な説明の薬学的組成物の第1粉末に含有される粉末(a
1、a
2、a
3)に存在する糖の量は、各粉末の20〜90重量%、好ましくは各粉末の20〜80重量%、はるかに好ましくは各粉末の40〜80重量%である。
【0070】
本発明によれば、本詳細な説明の薬学的組成物の第1粉末に含有される粉末(a
1、a
2、a
3)は、湿気への感受性を軽減するために疎水性物質を含む。この疎水性物質は、ロイシンで、粒子の離解も容易にする。ロイシンは、各粉末の5〜70重量%の量、好ましくは各粉末の15〜70重量%の量、はるかに好ましくは各粉末の18〜55重量%の量で存在する。
【0071】
本発明によれば、本詳細な説明の薬学的組成物の第1粉末に含有される粉末(a
1、a
2、a
3)は、界面活性剤を各粉末の0.2〜2.0重量%の量、好ましくは各粉末の0.4〜0.8重量%の量で含む。
【0072】
本発明に従った薬学的組成物の界面活性剤は、各種クラスの医薬品用界面活性剤から選択可能である。
【0073】
本発明での使用に適した界面活性剤は、中間または低分子量で、一般に有機溶媒によく溶けるが、水にはわずかに溶けるまたはまったく溶けない疎水性部分、および、有機溶媒にわずかに溶けるまたはまったく溶けないが、水によく溶ける親水性(極性)部分を含有することを特徴とするすべての物質である。界面活性剤は、その極性部分に従って分類される。そのため、負に荷電した極性部分を有する界面活性剤は、アニオン界面活性剤と呼ばれ、一方、カチオン界面活性剤は、正に荷電した極性部分を含有する。非荷電界面活性剤は、一般に、非イオン性と呼ばれるが、正負両電荷を有する界面活性剤は、双性イオン性と呼ばれる。アニオン界面活性剤の例は、脂肪酸塩(石鹸としての方がよく知られている)、硫酸塩、硫酸エーテルおよびリン酸エステルに代表される。カチオン界面活性剤は、アミノ基を含有する極性基に基づくことが多い。最も一般的な非イオン界面活性剤は、オリゴ(エチレンオキサイド)基を含有する極性基に基づく。双性イオン界面活性剤は、一般に、四級アミンと硫酸基またはカルボキシル基から成る極性基を特徴とする。
【0074】
この出願の具体例は、次の界面活性剤に代表される。すなわち、塩化ベンザルコニウム、セトリミド、ドキュセートナトリウム、グリセリルモノオレエート、ソルビタンエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、リン脂質、胆汁酸塩である。
【0075】
ポリソルベート、および、ポロキサマーとして既知のポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマーなどの非イオン界面活性剤は好ましい。ポリソルベートは、CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionaryに、ソルビトールとエチレンオキサイド縮合ソルビトール無水物脂肪酸エステルの混合物として記述されている。特に好ましいのは、ツイーン(Tween)として既知のシリーズの非イオン界面活性剤、特に、市販されているツイーン80、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとして既知の界面活性剤である。
【0076】
界面活性剤、好ましくはツイーン80、の存在は、それを用いない配合物に見られる帯電の軽減、粉体流および初期結晶化を伴わない均質固体状態の維持に必要である。
【0077】
本発明によれば、用語「吸入可能」は、肺投与に適した粉末を意図する。吸入可能粉末は、粒子が肺および肺胞に入り、粒子を形成する活性物質の薬理学的特性を提供できるように、適切な吸入器によって分散、吸入することができる。通常、5.0μm未満の空気動力学的直径を有する粒子が吸入可能と考えられる。
【0078】
本発明に従った用語「非晶質」は、70%未満、さらに好ましくは55%未満の結晶画分を含有する粉末を意図する。この本文で説明する薬学的組成物は、該組成物を構成する非晶質状態の重量表示粉末量と該組成物中に存在する重量表示糖量との間における0.8〜2.0の範囲の比率を有する。この比率は、粉末中に存在する糖が実質的に非晶質糖であり、そのため、50%未満の結晶画分を有することを示す。これは、糖を該組成物中に存在する水に配位結合させ、それにより、活性物質を加水分解し、該活性物質を無効にするのを防止する。
【0079】
用語「微粒子画分(FPF)」は、吸入器により送達される全量に対して、5.0μm未満の空気動力学的直径(dae)を有する粉末の画分を意図する。用語「送達画分(DF)」は、充填される全量に対して送達される活性物質画分を意図する。該粉末のこれらの性質の評価に実施した特徴付け試験は、欧州薬局方現行版に記述の多段階液体インピンジャー(MSLI)試験である。この試験を実施するための条件は、吸入器からの吸入に粉末を供し、例えば60±2リットル/分の流れを起こす点にある。この流れは、RS01型吸入器(Plastiape,Osnago,伊)の場合、装置中に2KPaの圧力降下を発生させることによって得られる。
【0080】
本発明に従って第1粉末を構成する粉末の好ましい生成プロセスは、あるとすれば、懸濁液またはエマルジョンとして薬剤を溶解または分散したロイシン溶液、糖溶液および界面活性剤からの噴霧乾燥である。
【0081】
この第1粉末の好ましい粒度は、表面積を増加させて深部肺沈殿を最適化するためにも、5μm未満、好ましくは3μm未満、さらに好ましくは2.0μm未満の粒度分布の少なくとも50%(X50)である。
【0082】
本発明によれば、本発明の説明に従った薬学的組成物の第1粉末を構成する粉末は、実質的に乾燥粉末、すなわち、水分が10%未満、好ましく5%未満、さらに好ましくは3%未満の粉末である。この乾燥粉末は、好ましくは、活性物質を加水分解し、不活性化する可能性のある水を含まない。該組成物に存在する水分量は、親水性特性によって粉末生成ステップ、その後の取り扱いステップの両ステップで含量を制限するロイシンの存在、構造に水を捕捉し、経時的に剛性を強め、水による活性物質の加水分解を防ぐ糖の存在によってコントロールされる。
【0083】
本発明によれば、吸入用薬学的組成物中に含まれる第2粉末は、粒度の異なる2タイプラクトースの混合物を含む。この粉末によって、吸入装置で使用されるカプセルなど、投与に使用される手段で容易に分割できる組成物を得ること、同時に、活性物質が深部肺領域に沈殿し、その薬理作用を発揮できるように、高い呼吸能を有する組成物を得ることが可能である。
【0084】
上記により、微細すぎる、または、粗すぎる第2ラクトース粉末を含む組成物は、望みの呼吸能結果が得られる理想的な解決策ではない。そのため、薬剤の吸入効率を改善するために、粗ラクトース粉末をすでに含有している吸入粉末配合物に一定量のラクトース微粒子を添加できるか否かの可能性を評価した。
【0085】
実施した試験は、より粗いラクトースと十分に結合する微細ラクトースの存在が、薬剤の分散プロセスで重要な役割を果たすことができる、と確認した。好ましい実施形態で、粗ラクトースと混合した約10%の微細ラクトースの添加は、微細成分が、活性物質を含む粒子の粗粒子からの剥離を助けることを示した。前記薬剤の望みの分散能は、前記薬剤の流動性に実質的に影響することなく達成できるので、添加微細ラクトース濃度は、慎重にコントロールしなければならない、とも報告された。反対に、過剰の微細ラクトースの存在は、このラクトースが大型粒子間の空間に入り、該粉末の圧縮およびその結果の肥厚を促進する可能性があるので、粉末流を阻害する傾向がある。過剰の微細ラクトースの存在は、吸入粉末の呼吸可能画分の減少を引き起こす、とも報告された。
【0086】
本発明によれば、混合物は、小さめの粒度、すなわち、1.5〜10μmのX50を有する第2ラクトースよりも多い量で存在する大きめの粒度、すなわち、35〜75μmのX50(少なくとも粒子の50%)のラクトースを含む。特に、大きめの粒度のラクトースは、混合物の85〜96重量%の割合で混合物中に存在するが、小さめの粒度のラクトースは、混合物の4〜15重量%の割合で混合物中に存在する。好ましくは、大きめの粒度のラクトースは、混合物の91〜95重量%の割合で混合物中に存在するが、小さめの粒度のラクトースは、混合物の5〜9重量%の割合で混合物中に存在する。
【0087】
高い呼吸可能性の性質を有する組成物を得るためには、薬学的組成物を構成する第1粉末粒子は、第2粉末を形成するラクトース粒子から確実に容易に剥離させる量でなければならない。そのため、ラクトース混合物を含む第1粉末と第2粉末との比率は、1/100〜1/5でなければならない。この比率は、前記組成物に高い呼吸能を提供し、活性物質の良好な薬理反応を保証する。
【0088】
薬学的組成物中の投与量が非常に低く、その結果、第1粉末と第2粉末との適切な比率を確保するのが不十分な一部の活性物質では、活性物質を作用部位に到達させる空気動力学的性能を保証するために、第1粉末は、薬理学的観点から、第2粉末に対して第1粉末量を増加させることができる不活性粉末も含む。
【0089】
本発明に従った薬学的組成物の調製プロセスは、以下の作業を含む。すなわち、
a) 粉末の1重量%超の量の活性物質、粉末の5〜70重量%の範囲の量のロイシン、粉末の20〜90重量%の範囲の量で噴霧乾燥により粉末を得た後の実質的に非晶質の糖を含む少なくとも噴霧乾燥で得られる粉末を含む第1粉末を提供する作業と、
b) 35〜75μmのX50を有する第1ラクトースの、1.5〜10μmのX50を有する第2ラクトースとの混合によって得られる第2粉末であって、混合物中の第1および第2ラクトースの含量がそれぞれ、85〜96%と4〜15%である第2粉末を提供する作業と、
c) 粉末を混合する作業である。
【0090】
特に、噴霧乾燥によって粉末を得るステップa)で組成物の生成プロセスは、下記の一連の作業から成る。
ステップa)では、
・ 適切な液体媒質中に活性物質が存在する第1相(A)を調製し、
・ ロイシン、糖および界面活性剤を水性媒質に溶解または分散させる第2相(B)を調製し、
・ 前記A相よB相を混合し、液体媒質が均質な第3相(C)を入手し、
・ コントロール条件で前記相(C)を乾燥し、直径中央値が10.0μm未満の粒度分布を有する乾燥粉末を入手し、
・ 前記乾燥粉末を収集する。
【0091】
相(A)は、水性または非水性媒質中の活性物質の懸濁液、または、水性または非水性媒質中の活性物質懸濁液、あるいは、適切な溶媒中の活性物質溶液であることができる。
【0092】
溶液の調製は好ましく、有機溶媒は、水溶性の溶媒から選択される。この場合、相(C)は、望みの組成物の全成分の溶液でもある。
【0093】
それに代わって、相(A)が水性媒質中の疎水性活性物質の懸濁液である場合、相(C)も水性媒質中の懸濁液であり、賦形剤および界面活性剤などの溶解可溶性成分を含有することになる。
【0094】
乾燥作業は、望みの寸法特性の乾燥粉末を得るための相(C)からの液体媒質、溶媒または分散液の除去から成る。この乾燥は、好ましくは、噴霧乾燥によって得られる。液体媒質を溶液または懸濁液(C)から蒸発させ、望みの粒度の粉末を形成するように、ノズルおよびプロセスパラメーターの特徴を選択する。
【0095】
ラクトース混合物を得るステップb)の生成プロセスは、通常の混合技術に従って得られる各種粒度のラクトースの物理的混合から成る。本発明の好ましい実施形態では、使用ラクトースは、Respitose(登録商標)SV003(DFE Pharma、Goch、D)およびLacto−Sphere(登録商標)MM3(Microsphere SA,Ponte Cremenaga,Lugano CH)である。
【0096】
それに代わって、薬学的組成物の調製プロセスステップc)は、噴霧乾燥によって得られる粉末およびラクトース混合物の、最も汎用されている混合技術、すなわち、Turbulaなどの回転ミキサー、V−ミキサー、シリンダー、ダブルコーン、キューブミキサーまたは混合専用の固定容器型ミキサー、例えば遊星形、ノータミックス、シグマ、リボンミキサーまたはミキサー−造粒器、例えばDiosna、を使った物理的混合から成る。これらのミキサーの他に、Ultra TurraxまたはSilversonおよび最終的に内部流動層造粒器などの普通に使用されるデバイスで混合することもできる。
【0097】
すでに上で指摘したように、本発明に従った薬学的組成物は、増量剤(BA)と呼ばれる粉末を含むことでき、これは、前記粉末の5〜70重量%の量のロイシン、前記粉末の20〜90重量%の量の糖を含み、前記組成物は、60%超で、80%超のマウスピース(DF)からの送達量の割合の微粒子画分(FPF)を有する。