特許第6919100号(P6919100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919100
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】新規多重特異的結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20210812BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20210812BHJP
【FI】
   C07K16/46ZNA
   !C12N15/13
【請求項の数】11
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2019-566550(P2019-566550)
(86)(22)【出願日】2017年4月18日
(65)【公表番号】特表2020-508352(P2020-508352A)
(43)【公表日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】KR2017004154
(87)【国際公開番号】WO2018151375
(87)【国際公開日】20180823
【審査請求日】2019年8月20日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0022270
(32)【優先日】2017年2月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519302279
【氏名又は名称】ワイ−バイオロジクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Y−BIOLOGICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ジャン セイル
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨンウ
(72)【発明者】
【氏名】パク ブンチャン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジェホ
【審査官】 西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】 Jakob, C. G. et al.,"Structure reveals function of the dual variable domain immunoglobulin (DVD-IgTM) molecule",MAbs,2013年,Vol. 5,pp. 358-363
【文献】 Kontermann, R. E.,"Dual targeting strategies with bispecific antibodies",MAbs,2012年,Vol. 4,pp. 182-197
【文献】 Zhao, J.-X. et al.,"Stabilization of the single-chain fragment variable by an interdomain disulfide bond and its effect on antibody affinity",Int. J. Mol. Sci.,2011年,Vol. 12,pp. 1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VH1−[(L1)a−VH2]m−Xbの第1ポリペプチド及びVL1−[(L2)c−VL2]n第2ポリペプチドを含む結合タンパク質であって、
前記第1ポリペプチドのVH1又はVH2はそれぞれ、異なる抗原結合領域を含む重鎖可変領域であり、
前記第2ポリペプチドのVL1又はVL2はそれぞれ、異なる抗原結合領域を含む軽鎖可変領域であり、前記第2ポリペプチドはCLを含まず、
前記第1ポリペプチドのL1はVH1とVH2との間に存在し、連続するVH1及びVH2を連結するためのリンカーであり、
前記第2ポリペプチドのL2はVL1とVL2との間に存在し、連続するVL1及びVL2を連結するためのリンカーであり、
前記第1ポリペプチドのXは、CH1を除くCH2及びCH3領域のみからなるFcであり、
VH1−VL1及びVH2−VL2から構成された群から選ばれる一つ以上が鎖間ジスルフィド架橋で連結されており、
a及びcはそれぞれ0又は1であり、
bは1であり、
m及びnはそれぞれ1である。
【請求項2】
前記aは1であり、このとき、L1は、ASTKGP(配列番号1)、ASTKGPSVFPLAP(配列番号2)、及びGGGGSGGGGS(配列番号3)から構成された群から選ばれるいずれか一つのリンカーであることを特徴とする、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項3】
前記cは1であり、このとき、L2は、TVAAP(配列番号4)、TVAAPSVFIFPP(配列番号5)及びGGSGGGGSG(配列番号6)から構成された群から選ばれるいずれか一つのリンカーであることを特徴とする、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項4】
前記重鎖は、軽鎖と鎖間ジスルフィド架橋を生成するためにVH2とXbとの間に鎖間ジスルフィドドメイン(Inter Disulfide Domain:IDD)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項5】
前記鎖間ジスルフィドドメインは、EPKSC(配列番号7)を含むことを特徴とする、請求項4に記載の結合タンパク質。
【請求項6】
前記軽鎖は、重鎖と鎖間ジスルフィド架橋を生成するためにC−末端に鎖間ジスルフィドドメイン(Inter Disulfide Domain:IDD)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項7】
前記鎖間ジスルフィドドメインは、RGEC(配列番号8)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の結合タンパク質。
【請求項8】
前記VH1及びVH2におけるカバット位置H44の少なくとも一つのアミノ酸がシステインに置換されたことを特徴とする、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項9】
前記VL1及びVL2におけるカバット位置L100の少なくとも一つのアミノ酸がシステインに置換されたことを特徴とする、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の結合タンパク質が複数個含まれている抗体。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載の結合タンパク質を含む接合体(conjugate)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規多重特異的結合タンパク質に関し、従来公知の様々な多重特異的結合タンパク質フォーマット、例えば二重特異的抗体フォーマットなどにおける短所を補完した新規多重特異的結合タンパク質であり、抗体の不変領域のうち、重鎖のCH1と軽鎖のCL領域を含まず、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域が連続して連結されているポリペプチドを含む多重特異的結合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子組換えタンパク質の生産とファージディスプレイ技術を用いたヒト抗体ライブラリースクリーニングが容易になることにより、抗体を用いた治療剤の開発が活発になった。抗体を用いた治療剤は、抗原抗体の特異的結合特性を利用し、人体固有の免疫システムに基づいて作用することから、既存の化学治療剤に比べて低い毒性を有する。したがって、現在開発中及び臨床で使用中の抗体治療剤は抗癌剤、自己免疫及び炎症性疾患、感染疾患、臓器移植などの様々な分野で活発に使用されている。
【0003】
最近、一つの適応症に対する様々な原因と機作が明らかになり、治療剤開発においても単一種類のターゲットから複数種類のターゲットへの接近法が台頭している。そこで、抗体を用いた治療剤開発において単一特異的抗体の特性を2種類以上の抗原タンパク質に特異的に結合し得る多重特異的機能追加のために様々な研究が数十年間行われている。最初の二重特異的抗体の開発は、Quadroma Technology(Milstein,C.,&Cuello,A.C.(1984)。Hybrid hybridomas and the production of bi−specific monoclonal antibodies.Immunology Today,5(10)、299−304.doi:10.1016/0167−5699(84)90155−5)を用いた方法であって、異なる抗体を発現するハイブリドーマ細胞株の細胞融合によって二重特異的抗体を作製する方法で始まった。最近では動物細胞を用いた遺伝子組換えタンパク質の生産と構造基盤タンパク質エンジニアリング技術が飛躍的に発展することによって多種多様な二重特異的抗体の開発が試みられている。抗体のCH3領域にKnobs−into−holesデザインを適用させて効果的に重鎖の異種二量体化(heterodimerization)を誘導し、異なる2種類の抗原が結合し得るTwo−in−one bispecific antibody(Bostrom,J.,Yu,S.−F.,Kan,D.,Appleton,B.A.,Lee,C.V.,Billeci,K.,et al.(2009)。Variants of the antibody herceptin that interact with HER2 and VEGF at the antigen binding site.Science,323(5921)、1610−1614.doi:10.1126/science.1165480)と、重鎖の異種二量体化に基づいて軽鎖のVL又はCL領域を重鎖のVH又はCH1領域と交差反応(crossover)させて一方の軽鎖に選択的な異種二量体化を誘導したCrossMab(Schaefer,W.,Regula,J.T.,Bahner,M.,Schanzer,J.,Croasdale,R.,Durr,H.,et al.(2011)。Immunoglobulin domain crossover as a generic approach for the production of bispecific IgG antibodies.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,108(27)、11187−11192.doi:10.1073/pnas.1019002108)などが、単価二重特異的抗体(monovalent bispecific antibody)の代表である。しかし、このような異種二量体化に基づく二重特異的抗体の場合、二重特異的抗体を得るための動物細胞を用いた組換えタンパク質を生産するとき、発現培地に同時に存在するホモとヘテロの区別が困難であるだけでなく、既存の親二価抗体(parental bivalent antibody)に比べて活性が弱いという短所がある。
【0004】
また、重鎖及び軽鎖の選択的異種二量体化のために導入した変異(mutation)による免疫原性(immunogenicity)などの安定性問題も提起され得る。最近ではGenentechのTwo−in−one antibodyとRocheのCrossMabが持つ様々な組合せのポリペプチドイシューによるCMC(Chemistry,Manufacturing,Control)問題点から比較的離れた二重特異的抗体DVD−Ig(Dual−variable−domain immunoglobulin,AbbVie,USA)に基づく二重抗体の開発が活発に行われている。DVD−Igフォーマットを適用したターゲットの代表には、IL−1α/IL−1β、IL−12/IL−18、VEGF/osteopontin、TNF−α/IL−17があり、ターゲットタンパク質を同時に中和する戦略で治療剤の開発及び臨床を進行している(Wu,C.,Ying,H.,Grinnell,C.,Bryant,S.,Miller,R.,Clabbers,A.,et al.(2007)。Simultaneous targeting of multiple disease mediators by a dual−variable−domain immunoglobulin.Nature Biotechnology,25(11)、1290−1297.doi:10.1038/nbt1345)。
【0005】
DVD−Igフォーマットの場合、他の抗原に結合し得る抗体の可変領域が、既存IgG抗体可変領域のN−末端に連続して連結されている形態を有している。したがって、機能的添加のためにリンカーで連結された可変領域の大きさ分だけ増加した約200kDaの分子量を有している。タンパク質及び抗体医薬品の開発においてより小さい分子量を有する抗体或いはタンパク質医薬品は、癌細胞或いは病変組織への効果的な浸潤を期待でき、且つ短時間で高い血中濃度に到達できる長所があるので、臨床実験及び治療剤として投与すれば、同一重量に対してより多いモル(mole)の効果を期待することができる。
【0006】
このような技術的背景の下に、本出願の発明者らは新規フォーマットの多重特異的多価の結合タンパク質を開発しようと鋭意努力した結果、重鎖と軽鎖不変領域のCH1領域とCL領域を、第2抗原結合に必要な可変領域であるVHとVLにそれぞれ取り替えることによって、既存の抗体のような150kDaの分子量を有する結合タンパク質(一実施例において4価の二重特異的抗体Fv2mab)が作製でき、上に記した従来の短所を補完し、目的の通りに2種以上のターゲットに同時に結合して活性を抑制させ得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自己免疫疾患、新生血管生成及び癌細胞増殖などの様々な適応症に原因となる様々なタンパク質分子(例えば、サイトカイン、ケモカインなど)の信号伝達及び生物学的活性を効果的に遮断、抑制できる新規結合タンパク質(例えば、二重特異的抗体Fv2mab)プラットホームを開発することにある。
本発明の目的はまた、前記結合タンパク質を含む接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、VH1−[(L1)a−VH2]m−Xbの第1ポリペプチド及びVL1−[(L2)c−VL2]nを含む第2ポリペプチドを含む結合タンパク質を提供する:前記第1ポリペプチドのVH1又はVH2はそれぞれ、同一の又は異なる抗原結合領域を含む重鎖可変領域であり、前記第2ポリペプチドのVL1又はVL2はそれぞれ、同一の又は異なる抗原結合領域を含む軽鎖可変領域であり、前記第2ポリペプチドはCLを含まず、前記第1ポリペプチドのL1はVH1とVH2との間に存在し、連続するVH1及びVH2を連結するためのリンカーであり、前記第2ポリペプチドのL2はVL1とVL2との間に存在し、連続するVL1及びVL2を連結するためのリンカーであり、前記第1ポリペプチドのXは、CH1を除くCH2及びCH3領域を含むFcであり、a、b及びcはそれぞれ0又は1であり、m及びnはそれぞれ1〜10の整数である。
【0009】
本発明はまた、VH1−[(L1)a−VH2−(IDD1)b]m−Xcで構成された第1ポリペプチド及びVL1−[(L2)d−VL2−(IDD2)e]nで構成された第2ポリペプチドを含む結合タンパク質を提供する:前記第1ポリペプチドのVH1又はVH2はそれぞれ、同一の又は異なる抗原結合領域を含む重鎖可変領域又はその変異体であり、前記第2ポリペプチドのVL1又はVL2はそれぞれ、同一の又は異なる抗原結合領域を含む軽鎖可変領域又はその変異体であり、前記第1ポリペプチドのL1はVH1とVH2との間に存在し、連続するVH1及びVH2を連結するためのリンカーであり、前記第2ポリペプチドのL2はVL1とVL2との間に存在し、連続するVL1及びVL2を連結するためのリンカーであり、前記第1ポリペプチドのIDD1は、軽鎖とジスルフィド架橋を生成するための鎖間ジスルフィドドメイン(Inter Disulfide Domain)であり、前記第2ポリペプチドのIDD2は、重鎖とジスルフィド架橋を生成するための鎖間ジスルフィドドメインであり、前記第1ポリペプチドのXは、CH2及びCH3領域を含むFcであり、a、b、c、d及びeはそれぞれ0又は1であり、m及びnはそれぞれ1〜10の整数である。
本発明はまた、結合タンパク質が複数個含まれている抗体を提供する。
本発明はさらに、前記結合タンパク質を含む接合体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、二重特異的抗体Fv2mabの簡略な構造を示す図である。図1Bは、鎖間ジスルフィド架橋(inter disulfide bridge)が導入されたエンジニアリングされたFv2mabの構造を示す図である。システインジスルフィド結合を導入できる部分は、外部可変領域(outer variable domain)と内部可変領域(inner variable domain)のC−末端に導入した軽鎖のRGECアミノ酸と重鎖のEPKSCアミノ酸である。
図2】リンカーとジスルフィド架橋エンジニアリングを適用したFv2mabの2次構造を示す図である。
図3】RGECエンジニアリングのための鎖間ジスルフィドドメイン(Inter Disulfide Domain:IDD)の長さを示す図である。
図4】pFEベクターにクローニングしたFv2mabsの発現カセットを示す図である。
図5】SDS−PAGEを用いたFv2mabの発現確認とタンパク質Aプルダウンアッセイ(pull down assay)結果を示すものである。
図6】Fv2mabの組立て(assembly)と分泌(secretion)のためのQCがBip依存的に調節されることをSDS−PAGEで確認した結果である(構造選別:structure selection)。
図7】システインエンジニアリング(cysteine engineering)によるFv2mabの鎖間ジスルフィド架橋(inter disulfide bridge)効率を確認した結果である。
図8】重鎖と軽鎖間の鎖間ジスルフィド架橋がない形態のFv2mab(pH7.4、PBS)に対する形態(構造)をNative PAGEを用いて確認した結果である。
図9】VHとVLの結合だけからなるFv2mabの2D SDS−PAGE結果を示すものである。
図10】エンジニアリングされたFv2mabクローンの形態をAgilent bioanalyzer 2100を用いて確認した結果と、H44L100システインエンジニアリングされたFv2mabの純度(purity)を確認した結果である。
図11】SEC−HPLCを用いたHUMIRA、SECUKINUMAB、Fv2mab_TNF−IL17−SL、Fv2mab_eTNF−IL17−SLの純度(purity)を確認した結果である。
図12】ヒト血清におけるFv2mabs(エンジニアリングされた抗体、エンジニアリングされていない抗体)の安定性確認結果である。
図13】外部FvのVEGFAに対するFv2mabsの結合親和度(binding affinity)比較結果である。
図14】内部FvのTNF−αに対するFv2mabsの結合親和度比較結果である。
図15】外部FvのTNF−αに対するFv2mabsの結合親和度比較結果である。
図16】内部FvのIL−17に対するFv2mabsの結合親和度比較結果である。
図17】SECUKINUMAB、DVD−Ig(ABT−122)、Fv2mabsのIL−17に対するIC50値の比較結果である。
図18】SPR(Surface Plasmon Resonance)を用いたKd値の比較結果である。
図19】In vitro細胞基盤アッセイを用いたFv2mabsのTNF−α遮断効能(blockade efficacy)の比較結果である。
図20】In vitro細胞基盤アッセイを用いたFv2mabsのIL−17遮断効能(blockade efficacy)の比較結果である。
図21】Mono/dimeric linked Fvの結合親和度比較(number of linked Fv)結果である。
図22】リンカー(short、long、G4S)によるFv2mabの抗原結合親和度比較結果である。
図23】Fv2mabのリンカーによるin vitro効能(細胞基盤アッセイ)を示す図である。
図24】二重特異的抗体のフォーマットによる抗原結合親和度の比較(DVD−Ig vs.Fv2mab)結果を示す図である。
図25】DVD−IgとFv2mabのTNF−α/IL−17に対する遮断効能比較(細胞基盤アッセイ)結果である。
図26】TNF−αとIL−17Aによって同時に誘導された信号伝達の遮断程度をHT−29細胞を用いて測定した結果を示すグラフである(二重標的抗体及び単一標的抗体の遮断効能比較)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
別に定義されない限り、本明細書で使われた全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術の分野における熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使われた命名法は当該技術分野に周知であり、通常使われるものである。
【0012】
本発明は一観点において、VH1−[(L1)a−VH2]m−Xbの第1ポリペプチド及びVL1−[(L2)c−VL2]nを含む第2ポリペプチドを含む結合タンパク質に関する:前記第1ポリペプチドのVH1又はVH2はそれぞれ、同一の又は異なる抗原結合領域を含む重鎖可変領域であり、前記第2ポリペプチドのVL1又はVL2はそれぞれ、同一の又は異なる抗原結合領域を含む軽鎖可変領域であり、前記第2ポリペプチドはCLを含まず、前記第1ポリペプチドのL1はVH1とVH2との間に存在し、連続するVH1及びVH2を連結するためのリンカーであり、前記第2ポリペプチドのL2はVL1とVL2との間に存在し、連続するVL1及びVL2を連結するためのリンカーであり、前記第1ポリペプチドのXは、CH1を除くCH2及びCH3領域を含むFcであり、a、b及びcはそれぞれ0又は1であり、m及びnはそれぞれ1〜10の整数である。
【0013】
一般に、抗体の発現と分泌は、ER(endoplasmic reticulum)で起きる重鎖と軽鎖の組立てによって決定され、HSP70 chaperonであるBip(binding immunoglobulin protein)と重鎖のCH1領域が作用すると知られている(Feige,M.J.,Groscurth,S.,Marcinowski,M.,Shimizu,Y.,Kessler,H.,Hendershot,L.M.,&Buchner,J.(2009)。An Unfolded CH1 Domain Controls the Assembly and Secretion of IgG Antibodies.Molecular Cell,34(5)、569−579.doi:10.1016/j.molcel.2009.04.028)。しかし、本出願の発明者によって行われた様々な実験の結果、ERで起きるBiP依存的抗体組立ては、既存に知られているように抗体のCH1とCLだけが働く必須領域ではなく、抗体のVH及びVLもBiP依存的方式で抗体組立てに働くことが観察された。これは抗体を組み立てる際に、CH1とCL領域の有無が抗体の組立てを決定するのではなく、重鎖のVHとCH1に結合したBipを効果的に放出(release)させ得る軽鎖のフォルディングパートナーであるVLとCL領域の両方が抗体組立てを決定すると考えられる。
【0014】
すなわち、VHに結合したBiPはVLのみによって放出され、CH1に結合したBiPはCLのみによって放出される機作で抗体の組立てが調節される。したがって、抗体の重鎖中のCH1と軽鎖のCL領域は抗体を構成するための必須要素ではなく、それに代えて二次抗原が結合し得る重鎖のVHと軽鎖のVLをそれぞれ連続的に連結し、異なる2つ以上の抗原に結合し得る多価二重特異的抗体フォーマットを作製するようになった。CH1とCL領域に代えて二次可変領域が導入されることによって、Hで構成された二重特異的抗体Fv2mabは約150kDaのサイズを有し、これは一般の抗体と同じ分子量を有する。
【0015】
また、CH1とCL領域を含む約200kDaのDVD−Igフォーマットに比べて相対的に小さいサイズのFv2mab(150kDa)は、抗体医薬品の開発において大きなメリットとなり得る。二重特異的抗体Fv2mab生産性の場合、本出願人に保有されるHEK293一時的発現システム(transient expression system)で確認したとき、約100〜200mg/Lレベルの生産性を示すことが確認でき、DVD−Igに比べて相対的に高いレベルの生産性を示すことを観察した。
【0016】
さらに、E.coliのような原核細胞発現システム(prokaryotic expression system)を使用するDiabody(Holliger,P.,Prospero,T.,& Winter,G.(1993)。“Diabodies”:small bivalent and bispecific antibody fragments.Proceedings of the National Academy of Sciences,90(14)、6444−6448)及びその他ScFvベースの二重特異的抗体フォーマットに比べて、Fv2mabは、哺乳動物発現システム(mammalian expression system)を利用することによって相対的に高い生産性とクォリティー、及びCMC(Chemistry,Manufacturing,Control)面で優位を確保することができる。
【0017】
“結合タンパク質”は、標的に特異的に結合可能な形態のタンパク質であり、免疫グロブリン分子、抗体、その断片、その変異体又はその変形物を意味する。本発明に係る結合タンパク質は、VH1−(L1)a−VH2−Xbを含む第1ポリペプチド及びVL1−(L2)c−VL2を含む第2ポリペプチドを含み、Fab断片のうち重鎖の最初の不変領域(CH1)及び軽鎖の不変領域を含まない。場合によって、本発明に係る結合タンパク質は、VH1−[(L1)a−VH2−(IDD1)b]m−Xcで構成された第1ポリペプチド及びVL1−[(L2)d−VL2−(IDD2)e]nで構成された第2ポリペプチドを含む。前記第1ポリペプチドのVH1又はVH2はそれぞれ、同一の又は異なる抗原結合領域を含む重鎖可変領域又はその変異体であり、前記第2ポリペプチドのVL1又はVL2はそれぞれ、同一の又は異なる抗原結合領域を含む軽鎖可変領域又はその変異体であり、前記第1ポリペプチドのL1はVH1とVH2との間に存在し、連続するVH1及びVH2を連結するためのリンカーであり、前記第2ポリペプチドのL2はVL1とVL2との間に存在し、連続するVL1及びVL2を連結するためのリンカーであり、前記第1ポリペプチドのIDD1は、軽鎖とジスルフィド架橋を生成するための鎖間ジスルフィドドメイン(Inter Disulfide Domain)であり、前記第2ポリペプチドのIDD2は、重鎖とジスルフィド架橋を生成するための鎖間ジスルフィドドメインであり、前記第1ポリペプチドのXは、CH2及びCH3領域を含むFcであり、a、b、c、d及びeはそれぞれ0又は1であり、m及びnはそれぞれ1〜10の整数である。
【0018】
Fab断片は、軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域及び重鎖の最初の不変領域(CH1)を有する構造であり、1個の抗原結合部位を有する。Fab’断片は、重鎖CH1ドメインのC−末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabと異なる。F(ab’)は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしながら生成される。Fvは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域だけを持つ最小の抗体断片である。二重鎖Fv(two−chain Fv)は、非共有結合で重鎖可変領域と軽鎖可変領域が連結されており、単鎖Fv(single−chain Fv;scFv)は、一般に、ペプチドリンカーによって重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とが共有結合で連結されたり、又はC−末端において直接に連結されており、二重鎖Fvのように二量体のような構造をなし得る。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全抗体をパパインで制限切断すればFabが得られ、ペブシンで切断すればF(ab’)断片が得られる。)、遺伝子組換え技術を用いて作製することもできる。
【0019】
“ポリペプチド”は、アミノ酸の任意の重合体鎖を意味する。“ペプチド”及び“タンパク質”という用語は、ポリペプチドと同じ意味で使えるものであり、これも同様にアミノ酸の重合体鎖を意味する。“ポリペプチド”は、天然又は合成タンパク質、タンパク質断片及びタンパク質配列のポリペプチド類似体を含む。ポリペプチドは単量体又は重合体であり得る。
【0020】
抗体、ポリペプチド、タンパク質又はペプチドの相互作用と関連して“特異的結合”又は“特異的に結合する”とは、その相互作用が化学種上の特定構造(例えば、抗原決定因子又はエピトープ)の存在によってなされるということを意味する。例えば、抗体は一般に、タンパク質よりは特定タンパク質構造を認識してそこに結合する。抗体がエピトープ“A”に特異的であれば、標識された“A”と抗体を含む反応においてエピトープA(又は遊離した未標識A)を含む分子の存在は、抗体に結合された標識されたAの量を減少させるだろう。
【0021】
“抗体”とは、4個のポリペプチド鎖、すなわち2個の重鎖(H)と2個の軽鎖(L)で構成された任意の免疫グロブリン(Ig)分子又はこのようなIg分子の必須のエピトープ結合特徴を有する任意の機能性断片、突然変異体、変形体又は誘導体を意味する。このような突然変異体、変形体又は誘導体の具体例については以下に議論するか、それに限定されない。
【0022】
完全な抗体において、各重鎖は重鎖可変領域(HCVR又はVHで表示される)と重鎖不変領域で構成される。重鎖不変領域は、3個のドメインCH1、CH2、CH3で構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域と軽鎖不変領域で構成される。軽鎖不変領域は1個のドメインCLで構成される。VH及びVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域に分けることができ、ここには骨格領域(FR)というより保存的な領域が散在している。各VH及びVLは3個のCDR及び4個のFRで構成され、それらはアミノ末端からカルボキシ末端へ次のような順序で配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。免疫グロブリン分子は、任意の類型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスであり得る。
【0023】
“Fc領域”は、完全な抗体のパパイン分解によって生成され得る免疫グロブリン重鎖のC−末端領域を定義するために使われる。Fc領域は、固有配列Fc領域又は変異Fc領域であり得る。免疫グロブリンのFc領域は一般に2個の不変ドメイン、すなわちCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意にCH4ドメインを含む。
【0024】
結合タンパク質は、抗原に対する特異的結合能を有する一つ以上の抗体断片である“抗原結合部”を含み、他の抗原に特異的に結合でき、これによって二特異的、二重特異又は多重特異型であり得る。本発明において、抗原結合部はVH1又はVH2の重鎖可変領域及びVL1又はVL2の軽鎖可変領域に含まれており、各々は同一の又は異なる抗原結合領域を含む。
【0025】
“二特異的”又は“二重特異的”は、2個の異なるターゲットに特異的に結合してターゲットの活性を調節できる結合タンパク質の特性であり、例えば、各ターゲットに特異的に結合するモノクローナル抗体又はその断片の接合によってなり、また、2個の区分された抗原結合アーム(arm:2個ターゲットに対する特異性)を保有し、これに結合するそれぞれの抗原に対して1価である。
【0026】
これは、本発明においてm及びnと定義することができ、m及びnは、1〜10の整数、例えば1〜6の整数、1〜4の整数、2〜3の整数であり得る。一実施例において、本発明に係る結合タンパク質は、VH1又はVH2がそれぞれ、異なる抗原結合領域を含む重鎖可変領域であり、VL1又はVL2はそれぞれ、異なる抗原結合領域を含む軽鎖可変領域であり、m及びnがそれぞれ1である4価の二重特異的抗体であり得る。
【0027】
“リンカー”は、ペプチド結合によって連結された2個以上のアミノ酸残基を意味し、一つ以上の重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を連結するために利用される。本発明においてリンカーは存在しても存在しなくてもよい。存在する場合、L1は、VH1とVH2との間に存在し、連続するVH1及びVH2を連結するためのリンカーであり、L2は、VL1とVL2との間に存在し、連続するVL1及びVL2を連結するためのリンカーである。
【0028】
一実施例において、VH1−[(L1)a−VH2]m−Xbを含む第1ポリペプチドにおいて、VH1とVH2との間に存在して連続するVH1及びVH2を連結するためのリンカーであるL1の数と関連してaは1であり、このとき、L1は、ASTKGP(配列番号1)、ASTKGPSVFPLAP(配列番号2)、及びGGGGSGGGGS(配列番号3)から構成された群から選ばれるいずれか一つのリンカーでよい。
【0029】
他の実施例において、VL1−[(L2)c−VL2]nを含む第2ポリペプチドにおいて、L2はVL1とVL2との間に存在し、連続するVL1及びVL2を連結するためのリンカーであり、L2の数と関連してcは1であり、このとき、L2は、TVAAP(配列番号4)、TVAAPSVFIFPP(配列番号5)及びGGSGGGGSG(配列番号6)から構成された群から選ばれるいずれか一つのリンカーでよい。
【0030】
“鎖間ジスルフィドドメイン(IDD)”は、重鎖及び軽鎖を連結するための“鎖間ジスルフィド架橋(inter disulfide bridge)”を含む領域を意味し、本発明において第1ポリペプチドにおけるIDD1及び第2ポリペプチドにおけるIDD2はそれぞれ存在しても存在しなくてもよい。
【0031】
一実施例において、重鎖は、軽鎖と鎖間ジスルフィド架橋を生成するためにVH2とXbとの間に鎖間ジスルフィドドメイン(Inter Disulfide Domain:IDD)を含むことができ、このとき、鎖間ジスルフィドドメインはIDD1と表示でき、場合によってVH1−[(L1)a−VH2−(IDD1)b]m−Xcで構成された第1ポリペプチドと表現されてもよい。このとき、IDD1は、例えばEPKSC(配列番号7)であり得る。
【0032】
他の実施例において、軽鎖は、重鎖と鎖間ジスルフィド架橋を生成するためにC−末端に鎖間ジスルフィドドメイン(Inter Disulfide Domain:IDD)を含むことができ、このとき、鎖間ジスルフィドドメインはIDD2と表示でき、場合によって、VL1−[(L2)d−VL2−(IDD2)e]nで構成された第2ポリペプチドと表現されてもよい。このとき、IDD2は、例えばRGEC(配列番号8)であり得る。
【0033】
前記IDD(IDD1及び/又はIDD2)は、第1ポリペプチド及び/又は第2ポリペプチドのそれぞれにおいて存在しても存在しなくてもよいので、IDD1を含む第1ポリペプチドがIDD2を含む第2ポリペプチドと結合したり、IDD1を含む第1ポリペプチドがIDD2を含まない第2ポリペプチドと結合し得る。また、IDD1を含まない第1ポリペプチドがIDD2を含む第2ポリペプチドと結合したり、IDD1を含まない第1ポリペプチドがIDD2を含まない第2ポリペプチドと結合してもよい。
【0034】
“モノクローナル抗体”とは、実質的に同質的抗体集団から収得した抗体、すなわち集団を占めている個々の抗体が微量で存在し得る可能な天然発生的突然変異を除いては、同じものを指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であるため、単一抗原部位に対抗して誘導される。典型的に異なる決定因子(エピトープ)に対して指示された異なる抗体を含む通常の(ポリクローナル)抗体製剤とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は抗原上の単一決定因子に対して指示される。
【0035】
“エピトープ”は、抗体が特異的に結合し得るタンパク質決定部位(determinant)を意味する。エピトープは通常、化学的に活性である表面分子群、例えばアミノ酸又は糖側鎖で構成され、一般に特定の3次元の構造的特徴だけでなく特定の電荷特性を有する。立体的エピトープ及び非立体的エピトープは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は消失されるが、後者に対しては消失されないという点で区別される。
【0036】
“ヒト化”形態の非ヒト(例:ミューリン)抗体は、非ヒト免疫グロブリンから由来した最小配列を含有するキメラ抗体である。大部分の場合、ヒト化抗体は、受容者の超可変領域からの残基を目的の特異性、親和性及び能力を保有している非ヒト種(供与者抗体)、例えばマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類の超可変領域からの残基に取り替えたヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。
【0037】
“ヒト抗体”は、ヒト免疫グロブリンから由来する分子であり、相補性決定領域、構造領域を含む抗体を構成する全てのアミノ酸配列の全体がヒトの免疫グロブリンで構成されているものを意味する。
【0038】
“可変領域”は、相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)、及び骨格領域(FR)のアミノ酸配列を含む抗体分子の軽鎖及び重鎖部分を指す。VHは重鎖の可変領域を指す。VLは軽鎖の可変領域を指す。
【0039】
“相補性決定領域”(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)は、抗原結合のために必要な存在である、抗体可変領域のアミノ酸残基を指す。各可変領域は典型的に、CDR1、CDR2及びCDR3として確認された3個のCDR領域を有する。
【0040】
“骨格領域”(FR)は、CDR残基以外の可変領域残基である。各可変領域は典型的に、FR1、FR2、FR3及びFR4として確認された4個のFRを有する。
【0041】
“変異体”とは、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を構成するアミノ酸配列の変異、例えば置換、付加及び/又は欠失を意味でき、抗原結合及び効能を阻害しない限り、任意の変異が制限なく含まれ得る。本発明に係る結合タンパク質において変異の導入は、例えば、外部可変領域又は内部可変領域、若しくは外部可変領域及び内部可変領域の両方に適用可能である。
【0042】
一実施例において、本発明に係る結合タンパク質は、前記VH1及び/又はVH2のうちFR2 H44、FR2 H46、FR4 H101及びFR4 H103で構成された群から選ばれる一つ以上の位置のアミノ酸がシステインに置換された変異体を含むことができる。例えば、配列番号9のうち重鎖FR2に該当するWVRQAPGKGLEWVSにおいて、9番目に位置したアミノ酸であるグリシン(G)がH44、11番目に位置したグルタミン酸(E)がH46に該当し、それぞれがシステインに置換され得る。また、重鎖可変領域のFR4 H101、FR4 H103の位置も鎖間ジスルフィド結合の導入可能な位置であり、配列番号9のうち98番目に位置したアラニン(A)又は100番目に位置したグリシン(G)のそれぞれがシステインに置換され得る。
【0043】
他の実施例において、本発明に係る結合タンパク質は、前記VL1及び/又はVL2のうち、FR4 L100、FR4 L98、FR2 L44、FR2 L42及びFR2 L43で構成された群から選ばれる一つ以上の位置のアミノ酸がシステインに置換された変異体を含むことができる。例えば、配列番号10のうち、軽鎖FR2に該当するLAWYQQKPGKAPKLLIYにおいて10番目に位置したリシン(K)がL42、11番目に位置したアラニン(A)がL43、12番目に位置したプロリン(P)がL44に該当し、それぞれがシステインに置換され得る。L100及びL98の場合、配列番号10のうちFR4に該当するFGQGTKVEIKにおいて最初のフェニルアラニン(F)がL98、グルタミン(Q)がL100に該当し、これらのそれぞれがシステインに置換され得る。
【0044】
一実施例において、軽鎖又は重鎖システイン置換サイトのうちH44−L100の組合せが、2つの炭素間の距離が5Å程度と最も近接していることから、システイン置換を用いたエンジニアリングにおいて最適のサイトと判断され、H44−L100をエンジニアリングサイトとして選別した。(Zhao,J.−X.,Yang,L.,Gu,Z.−N.,Chen,H.−Q.,Tian,F.−W.,Chen,Y.−Q.,Zhang,H.,and Chen,W.(2011)。Stabilization of the Single−Chain Fragment Variable by an Interdomain Disulfide Bond and Its Effect on Antibody Affinity.Ijms12,1−11.)
【0045】
本発明に係る結合タンパク質は、ABCF1;ACVR1;ACVR1B;ACVR2;ACVR2B;ACVRL1;ADORA2A;アグリカン;AGR2;AICDA;AIF1;AIG1;AKAP1;AKAP2;AMH;AMHR2;ANGPT1;ANGPT2;ANGPTL3;ANGPTL4;ANPEP;APC;APOC1;AR;AZGP1(亜鉛−a−糖タンパク質);B7.1;B7.2;BAD;BAFF;BAG1;BAI1;BCL2;BCL6;BDNF;BLNK;BLR1(MDR15);BlyS;BMP1;BMP2;BMP3B(GDF10);BMP4;BMP6;BMP8;BMPR1A;BMPR1B;BMPR2;BPAG1(プレクチン);BRCA1;C19orf10(IL27w);C3;C4A;C5;C5R1;CANT1;CASP1;CASP4;CAV1;CCBP2(D6/JAB61);CCL1(I−309);CCL11(エオタキシン);CCL13(MCP−4);CCL15(MIP−1d);CCL16(HCC−4);CCL17(TARC);CCL18(PARC);CCL19(MIP−3b);CCL2(MCP−1);MCAF;CCL20(MIP−3a);CCL21(MIP−2);SLC;エクソダス−2;CCL22(MDC/STC−1);CCL23(MPIF−1);CCL24(MPIF−2/エオタキシン−2);CCL25(TECK);CCL26(エオタキシン−3);CCL27(CTACK/ILC);CCL28;CCL3(MIP−1a);CCL4(MIP−1b);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL8(mcp−2);CCNA1;CCNA2;CCND1;CCNE1;CCNE2;CCR1(CKR1/HM145);CCR2(mcp−1RB/RA);CCR3(CKR3/CMKBR3);CCR4;CCR5(CMKBR5/ChemR13);CCR6(CMKBR6/CKR−L3/STRL22/DRY6);CCR7(CKR7/EBI1);CCR8(CMKBR8/TER1/CKR−L1);CCR9(GPR−9−6);CCRL1(VSHK1);CCRL2(L−CCR);CD164;CD19;CD1C;CD20;CD200;CD−22;CD24;CD28;CD3;CD37;CD38;CD3E;CD3G;CD3Z;CD4;CD40;CD40L;CD44;CD45RB;CD52;CD69;CD72;CD74;CD79A;CD79B;CD8;CD80;CD81;CD83;CD86;CDH1(E−カドヘリン);CDH10;CDH12;CDH13;CDH18;CDH19;CDH20;CDH5;CDH7;CDH8;CDH9;CDK2;CDK3;CDK4;CDK5;CDK6;CDK7;CDK9;CDKN1A(p21Wap1/Cip1);CDKN1B(p27Kip1);CDKN1C;CDKN2A(p16INK4a);CDKN2B;CDKN2C;CDKN3;CEBPB;CER1;CHGA;CHGB;キチナーゼ;CHST10;CKLFSF2;CKLFSF3;CKLFSF4;CKLFSF5;CKLFSF6;CKLFSF7;CKLFSF8;CLDN3;CLDN7(クラウジン−7);CLN3;CLU(クラステリン);CMKLR1;CMKOR1(RDC1);CNR1;COL18A1;COL1A1;COL4A3;COL6A1;CR2;CRP;CSF1(M−CSF);CSF2(GM−CSF);CSF3(GCSF);CTLA4;CTNNB1(b−カイネチン);CTSB(カテプシンB);CX3CL1(SCYD1);CX3CR1(V28);CXCL1(GRO1);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC/IP−9);CXCL12(SDF1);CXCL13;CXCL14;CXCL16;CXCL2(GRO2);CXCL3(GRO3);CXCL5(ENA−78/LIX);CXCL6(GCP−2);CXCL9(MIG);CXCR3(GPR9/CKR−L2);CXCR4;CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo);CYB5;CYC1;CYSLTR1;DAB2IP;DES;DKFZp451J0118;DNCL1;DPP4;E2F1;ECGF1;EDG1;EFNA1;EFNA3;EFNB2;EGF;EGFR;ELAC2;ENG;ENO1;ENO2;ENO3;EPHB4;EPO;ERBB2(Her−2);EREG;ERK8;ESR1;ESR2;F3(TF);FADD;FasL;FASN;FCER1A;FCER2;FCGR3A;FGF;FGF1(aFGF);FGF10;FGF11;FGF12;FGF12B;FGF13;FGF14;FGF16;FGF17;FGF18;FGF19;FGF2(bFGF);FGF20;FGF21;FGF22;FGF23;FGF3(int−2);FGF4(HST);FGF5;FGF6(HST−2);FGF7(KGF);FGF8;FGF9;FGFR3;FIGF(VEGFD);FIL1(EPSILON);FIL1(ZETA);FLJ12584;FLJ25530;FLRT1(フィブロネクチン);FLT1;FOS;FOSL1(FRA−1);FY(DARC);GABRP(GABAa);GAGEB1;GAGEC1;GALNAC4S−6ST;GATA3;GDF5;GFI1;GGT1;GM−CSF;GNAS1;GNRH1;GPR2(CCR10);GPR31;GPR44;GPR81(FKSG80);GRCC10(C10);GRP;GSN(ゲルゾリン);GSTP1;HAVCR2;HDAC4;HDAC5;HDAC7A;HDAC9;HGF;HIF1A;HIP1;ヒスタミン及びヒスタミン受容体;HLA−A;HLA−DRA;HM74;HMOX1;HUMCYT2A;ICEBERG;ICOSL;ID2;IFN−a;IFNA1;IFNA2;IFNA4;IFNA5;IFNA6;IFNA7;IFNB1;IFNガンマ;IFNW1;IGBP1;IGF1;IGF1R;IGF2;IGFBP2;IGFBP3;IGFBP6;IL−1;IL10;IL10RA;IL10RB;IL11;IL11RA;IL−12;IL12A;IL12B;IL12RB1;IL12RB2;IL13;IL13RA1;IL13RA2;IL14;IL15;IL15RA;IL16;IL17;IL17B;IL17C;IL17R;IL18;IL18BP;IL18R1;IL18RAP;IL19;IL1A;IL1B;IL1F10;IL1F5;IL1F6;IL1F7;IL1F8;IL1F9;IL1HY1;IL1R1;IL1R2;IL1RAP;IL1RAPL1;IL1RAPL2;IL1RL1;IL1RL2IL1RN;IL2;IL20;IL20RA;IL21R;IL22;IL22R;IL22RA2;IL23;IL24;IL25;IL26;IL27;IL28A;IL28B;IL29;IL2RA;IL2RB;IL2RG;IL3;IL30;IL3RA;IL4;IL4R;IL5;IL5RA;IL6;IL6R;IL6ST(糖タンパク質130);IL7;IL7R;IL8;IL8RA;IL8RB;IL8RB;IL9;IL9R;ILK;INHA;INHBA;INSL3;INSL4;IRAK1;IRAK2;ITGA1;ITGA2;ITGA3;ITGA6(a6インテグリン);ITGAV;ITGB3;ITGB4(b4インテグリン);JAG1;JAK1;JAK3;JUN;K6HF;KAI1;KDR;KITLG;KLF5(GC Box BP);KLF6;KLK10;KLK12;KLK13;KLK14;KLK15;KLK3;KLK4;KLK5;KLK6;KLK9;KRT1;KRT19(ケラチン19);KRT2A;KRTHB6(毛髪特異的II型ケラチン);LAMA5;LEP(レプチン);Lingo−p75;Lingo−Troy;LPS;LTA(TNF−β);LTB;LTB4R(GPR16);LTB4R2;LTBR;MACMARCKS;MAG又はOmgp;MAP2K7(c−Jun);MDK;MIB1;ミドカイン;MIF;MIP−2;MKI67(Ki−67);MMP2;MMP9;MS4A1;MSMB;MT3(メタロチオネクチン−III);MTSS1;MUC1(ムチン);MYC;MYD88;NCK2;ニューロカン;NFKB1;NFKB2;NGFB(NGF);NGFR;NgR−Lingo;NgR−Nogo66(Nogo);NgR−p75;NgR−Troy;NME1(NM23A);NOX5;NPPB;NR0B1;NR0B2;NR1D1;NR1D2;NR1H2;NR1H3;NR1H4;NR1I2;NR1I3;NR2C1;NR2C2;NR2E1;NR2E3;NR2F1;NR2F2;NR2F6;NR3C1;NR3C2;NR4A1;NR4A2;NR4A3;NR5A1;NR5A2;NR6A1;NRP1;NRP2;NT5E;NTN4;ODZ1;OPRD1;P2RX7;PAP;PART1;PATE;PAWR;PCA3;PCNA;PDGFA;PDGFB;PECAM1;PF4(CXCL4);PGF;PGR;ホスファカン;PIAS2;PIK3CG;PLAU(uPA);PLG;PLXDC1;PPBP(CXCL7);PPID;PR1;PRKCQ;PRKD1;PRL;PROC;PROK2;PSAP;PSCA;PTAFR;PTEN;PTGS2(COX−2);PTN;RAC2(p21Rac2);RARB;RGS1;RGS13;RGS3;RNF110(ZNF144);ROBO2;S100A2;SCGB1D2(リポフィリンB);SCGB2A1(マンマグロビン2);SCGB2A2(マンマグロビン1);SCYE1(内皮単球活性化サイトカイン);SDF2;SERPINA1;SERPINA3;SERPINB5(マスピン);SERPINE1(PAI−1);SERPINF1;SHBG;SLA2;SLC2A2;SLC33A1;SLC43A1;SLIT2;SPP1;SPRR1B(Spr1);ST6GAL1;STAB1;STAT6;STEAP;STEAP2;TB4R2;TBX21;TCP10;TDGF1;TEK;TGFA;TGFB1;TGFB1I1;TGFB2;TGFB3;TGFBI;TGFBR1;TGFBR2;TGFBR3;TH1L;THBS1(トロンボスポンジン−1);THBS2;THBS4;THPO;TIE(Tie−1);TIMP3;組織因子;TLR10;TLR2;TLR3;TLR4;TLR5;TLR6;TLR7;TLR8;TLR9;TNF;TNF−a;TNFAIP2(B94);TNFAIP3;TNFRSF11A;TNFRSF1A;TNFRSF1B;TNFRSF21;TNFRSF5;TNFRSF6(Fas);TNFRSF7;TNFRSF8;TNFRSF9;TNFSF10(TRAIL);TNFSF11(TRANCE);TNFSF12(APO3L);TNFSF13(April);TNFSF13B;TNFSF14(HVEM−L);TNFSF15(VEGI);TNFSF18;TNFSF4(OX40リガンド);TNFSF5(CD40リガンド);TNFSF6(FasL);TNFSF7(CD27リガンド);TNFSF8(CD30リガンド);TNFSF9(4−1BBリガンド);TOLLIP;Toll様受容体;TOP2A(トポイソメラーゼIia);TP53;TPM1;TPM2;TRADD;TRAF1;TRAF2;TRAF3;TRAF4;TRAF5;TRAF6;TREM1;TREM2;TRPC6;TSLP;TWEAK;VEGF;VEGFB;VEGFC;バーシカン;VHL C5;VLA−4;XCL1(リンホタクチン);XCL2(SCM−1b);XCR1(GPR5/CCXCR1);YY1;又はZFPM2の標的に結合し得る。
【0046】
生物学的均等活性を有する変異を考慮すれば、本発明においてポリペプチド、結合タンパク質又はこれをコードする核酸分子は、配列番号に記載された配列と実質的な同一性(substantial identity)を示す配列も含むものと解釈される。実質的な同一性は、本発明の配列と任意の他の配列を最大限に対応するようにアラインし、当業界において通常利用されるアルゴリズムを用いてアラインされた配列を分析した場合に、最小で61%以上の相同性、好ましくは70%以上の相同性、より好ましくは80%以上の相同性、最も好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は当業界では公知である。BLAST(NCBI Basic Local Alignment Search Tool)は、NBCIなどで接近可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastn及びtblastxのような配列分析プログラムと連動して利用することができる。BLSATはwww.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で接続可能である。このプログラムを用いた配列相同性比較方法は、www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_ help.htmlで確認できる。
【0047】
これに基づいて、本発明に記載された配列は、明細書に記載された明示された配列又は全体と比較して60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性を有する配列も含むことができる。このような相同性は、当業界における公知の方法による配列比較及び/又は整列によって決定され得る。例えば、配列比較アルゴリズム(すなわち、BLAST又はBLAST2.0)、手動整列、肉眼検査を用いて本発明の核酸又はタンパク質のパーセント配列相同性を決定することができる。
【0048】
本発明は、他の観点において、VH1−[(L1)a−VH2−(IDD1)b]m−Xcで構成された第1ポリペプチド及びVL1−[(L2)d−VL2−(IDD2)e]nで構成された第2ポリペプチドを含む結合タンパク質に関する:前記第1ポリペプチドのVH1又はVH2はそれぞれ、同一の又は異なる抗原結合領域を含む重鎖可変領域又はその変異体であり、前記第2ポリペプチドのVL1又はVL2はそれぞれ、同一の又は異なる抗原結合領域を含む軽鎖可変領域又はその変異体であり、前記第1ポリペプチドのL1はVH1とVH2との間に存在し、連続するVH1及びVH2を連結するためのリンカーであり、前記第2ポリペプチドのL2はVL1とVL2との間に存在し、連続するVL1及びVL2を連結するためのリンカーであり、前記第1ポリペプチドのIDD1は、軽鎖とジスルフィド架橋を生成するための鎖間ジスルフィドドメイン(Inter Disulfide Domain)であり、前記第2ポリペプチドのIDD2は重鎖とジスルフィド架橋を生成するための鎖間ジスルフィドドメインであり、前記第1ポリペプチドのXはCH2及びCH3領域を含むFcであり、a、b、c、d及びeはそれぞれ0又は1であり、m及びnはそれぞれ1〜10の整数である。先に記載された各構成に対する具体的な説明及び例示は、上の結合タンパク質と関連した発明にも同一に適用され得る。
本発明は、さらに他の観点において、前記複数個の結合タンパク質が含まれている抗体に関する。
【0049】
前記複数個の結合タンパク質は、例えば、i)JUNドメイン及びFOSドメインのようなロイシンジッパーのようなタンパク質結合又は非共有相互作用、操作されたCHドメイン、操作された相互結合面などの公知の様々な相互作用を含む野生型結合タンパク質間相互作用による結合、ii)システイン導入によるジスルフィド結合、iii)coiled−coilドメイン融合によるcoiled−coil結合などによって結合でき、その他公知の結合方法を制限無く用いることができる。
【0050】
前記結合タンパク質を2個以上、3個以上、4個以上含むことができ、例えば、VH1−[(L1)a−VH2−(IDD1)b]m−Xcで構成された第1ポリペプチド及びVL1−[(L2)d−VL2−(IDD2)e]nで構成された第2ポリペプチドを含む結合タンパク質の2個が鎖間ジスルフィド結合によって連結された形態であり得る(図1)。
本発明は、更に他の観点において、前記結合タンパク質を含む接合体に関する。
【0051】
“接合体”とは、化合物、毒素など、例えば治療剤又は細胞毒性剤に化学的に結合した結合タンパク質を意味する。化学的化合物、化学的化合物の混合物、生物学的巨大分子又は生物学的物質から製造された抽出物が結合し得る。治療剤又は細胞毒性剤として、毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、ならびにそれらの類似体または同族体が結合し得るが、これに制限されるものではない。
【0052】
一実施例において、本発明に係る結合タンパク質は、鎖間ジスルフィドドメインIDD1を含む第1ポリペプチドが、鎖間ジスルフィドドメインIDD2を含む及び/又は含まない第2ポリペプチドと結合したH形態の多価抗体でよく、第1ポリペプチドにおいてIDD1として含まれたEPKSC(配列番号7)の自由システイン基にシステイン特異的接合、例えば、化合物、毒素などの例えば治療剤又は細胞毒性剤が結合したり、又はPEG(PEGylation)が結合し得る。
本発明はまた、前記結合タンパク質の第1ポリペプチド及び/又は第2ポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0053】
前記核酸を分離し、結合タンパク質の第1ポリペプチド及び/又は第2ポリペプチドを組み換えて生産することができる。核酸を分離して、それを複製可能なベクター内に挿入してさらにクローニングしたり(DNAの増幅)、又はさらに発現させる。これに基づいて、本発明は、さらに他の観点において、前記核酸を含むベクターに関する。
【0054】
“核酸”は、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味であり、核酸において基本構成単位であるヌクレオチドは、自然のヌクレオチドだけでなく、糖又は塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む。本発明に係る核酸の配列は変形され得る。前記変形は、ヌクレオチドの追加、欠失、又は非保存的置換又は保存的置換を含む。
【0055】
前記DNAを用いて通常の過程によって(例えば、DNAと特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)結合タンパク質の第1ポリペプチド及び/又は第2ポリペプチドのコーディングDNAを容易に分離又は合成する。多くのベクターが入手可能である。ベクター成分には一般に、次のいずれか一つ以上が含まれるが、これに制限されない:信号配列、複製起点、一つ以上のマーカー遺伝子、増強因子要素、プロモーター、及び転写終結配列。
【0056】
本明細書で使われる用語、“ベクター”は、宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段であり、プラスミドベクター;コスミドベクター;バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ−関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターなどを含む。前記ベクターにおいて抗体をコードする核酸はプロモーターと作動的に連結されている。
【0057】
“作動的に連結”は、核酸発現調節配列(例:プロモーター、シグナル配列、又は転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸配列との機能的な結合を意味し、これによって、前記調節配列は前記他の核酸配列の転写及び/又は解読を調節する。
【0058】
原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させ得る強力なプロモーター(例えば、tacプロモーター、lacプロモーター、lacUV5プロモーター、lppプロモーター、pLλプロモーター、pRλプロモーター、rac5プロモーター、ampプロモーター、recAプロモーター、SP6プロモーター、trpプロモーター及びT7プロモーターなど)、解読の開始のためのリボソーム結合座及び転写/解読終結配列を含むのが一般的である。また、例えば、真核細胞を宿主とする場合には、哺乳動物細胞のゲノムから由来したプロモーター(例:メタロチオネインプロモーター、β−アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)又は哺乳動物ウイルスから由来したプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーターエプスタインバーウイルス(EBV)のプロモーター及びラウスサルコマウイルス(RSV)のプロモーター)を用いることができ、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般的に有する。
【0059】
場合によって、ベクターは、それから発現する結合タンパク質及び/又はポリペプチドの精製を容易にするために他の配列と融合されてもよい。融合される配列は、例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(Pharmacia,USA)、マルトース結合タンパク質(NEB,USA)、FLAG(IBI,USA)及び6x His(hexahistidine;Quiagen,USA)などがある。
【0060】
前記ベクターは、選択標識として、当業界に通常使用される抗生剤耐性遺伝子を含み、例えば、アンピシリン、ゲンタマイシン、カベニシリン,クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0061】
本発明はさらに他の観点において、前記言及されたベクターに形質転換された細胞に関する。本発明の結合タンパク質及び/又はポリペプチドを生成させるために使用された細胞は、原核生物、酵母又は高等真核生物細胞であり得るが、これに制限されるものではない。
【0062】
大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌及びバチルスチューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)(例えば、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida))、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)及びスタフィロコッカス(Staphylococcus)(例えば、スタフィロコッカスカルノーサス(Staphylocus carnosus))のような原核宿主細胞を用いることができる。
【0063】
ただし、動物への関心が最も高く、有用な宿主細胞株の例は、COS−7、BHK、CHO、CHOK1、DXB−11、DG−44、CHO/−DHFR、CV1、COS−7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL3A、W138、Hep G2、SK−Hep、MMT、TRI、MRC5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS−0、U20S、又はHT1080が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0064】
本発明は、さらに他の観点において、(a)前記細胞を培養する段階;及び(b)前記培養された細胞から結合タンパク質及び/又はポリペプチドを回収する段階を含む前記結合タンパク質及び/又はポリペプチドの製造方法に関する。
【0065】
前記細胞は、各種培地で培養することができる。市販用の培地を制限なく培養培地として使用することができる。当業者に公知のその他全ての必須補充物が適度の濃度で含まれてもよい。培養条件、例えば温度、pHなどが発現のために選別された宿主細胞と共に既に用いられており、これは当業者には明らかであろう。
【0066】
前記結合タンパク質及び/又はポリペプチドの回収は、例えば遠心分離又は限外ろ過によって不純物を除去し、その結果を、例えば親和クロマトグラフィーなどを用いて精製することができる。追加のその他精製技術、例えば陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどを用いることができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例を用いて本発明をより詳しく説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのもので、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0068】
実施例1.新規二重特異的抗体フォーマットの構造(Fv2mab)
二重特異的抗体であるFv2mabは、2種類以上の異なる抗体の重鎖可変領域(variable region of heavy chain:VH)と軽鎖可変領域(variable region of light chain:VL)の結合からなる可変領域断片(fragment of variable domain:Fv)がタンデム(tandem)に連結されている構造である。互いに異なるタンデムに連結した2種類以上の可変領域はそれぞれ該当する他の抗原に独立して或いは同時に結合し得る能力を有し、重鎖のCH1ドメインとkappa或いはlambda軽鎖のCL領域が除去されている形態である(図1A参照)。
【0069】
タンデムに連結した2つの可変領域(Fv)に該当するそれぞれの抗原に対する結合親和度(binding affinity)を保障するために外部可変領域(outer variable domain)と内部可変領域(inner variable domain)との間にショート(short)リンカー(VH:ASTKGP配列番号1、VL:TVAAP配列番号4)、ロング(long)リンカー(VH:ASTKGPSVFPLAP配列番号2、VL:TVAAPSVFIFPP配列番号5)、G4Sリンカー(VH:GGGGSGGGGS配列番号3、VL:GGSGGGGSG配列番号6)を使用して各可変領域に構造の独立性を保障した(図2参照)。
【0070】
コンセプト立証(proof of concept)に用いられた親抗体(parental antibody)は、anti−VEGFA、anti−TNF−α、anti−IL17Aモノクローナル抗体をテンプレート(template)として用いてFv2mabの可能性及び優秀性を証明した。
【0071】
実施例2.熱力学的安定性のためのFv2mabエンジニアリング
Fv2mab二重特異的抗体の構造は、2つ以上の連続するFv(VHとVL)を有するH形態の多価テトラマー(multivalent tetramer)である。一般の抗体は、構造的にテトラマー(H)の形態で存在するために、重鎖のCH領域と軽鎖のCL領域とが鎖間ジスルフィド架橋(inter disulfide bridge:共有結合(covalent bond))で連結されている。しかし、CH1とCLが削除されているFv2mabの場合、タンデムに連結されている可変領域(Fv)のVHとVL間の結合力(疎水性結合、イオン結合、水素結合など)によって構造及び安定性が決定され、一般の抗体とは違い、重鎖と軽鎖間の内部ジスルフィド架橋(intra disulfide bridge)(共有結合)が存在しない。このため、低濃度で重鎖と軽鎖の構造を決定する結合力が一般の抗体に比べて低いことと予想され、結果として、抗体に比べて低調なpK/pDの特性が予想できる。
【0072】
したがって、熱力学的安定性(thermodynamic stability)を増加させるためにVHとVLが相互作用する適切な位置に、アミノ酸の置換及び追加の方法を用いてシステインジスルフィド架橋(cysteine disulfide bridge)を導入し、Fv2mabの全体的な熱力学的安定性を増加させた。
【0073】
また、重鎖の上段ヒンジ(upper hinge:EPKS配列番号7)と鎖間ジスルフィド架橋を連結する軽鎖のC末端RGEアミノ酸(配列番号8)を含む配列から始めて4個ずつアミノ酸の長さを長くして導入する方法も適用した(図3参照)。置換及び追加の方法を用いたシステインジスルフィド架橋を導入する部分は、外部可変領域或いは内部可変領域、又はこれら可変領域のいずれをも適用可能である。置換による鎖間ジスルフィド架橋を導入する部分は表1に示し、ジスルフィド架橋を導入した構造は図1Bに示している。
【表1】
【0074】
実施例3.Fv2mabs構築
POC(proof of concept)のための様々な組合せの二重特異的Fv2mab作製に用いられた親抗体は、HUMIRA(adalimumab,AbbVie)、KOSENTYX(secukinumab,Novartis)、anti−VEGFA(In−house antibody)、ABT−122(DVD−Ig,AbbVie)の重鎖と軽鎖の可変領域配列をテンプレートとして用いて作製した。二重特異的抗体Fv2mabの組換えタンパク質の生産のための動物細胞発現ベクターは、本出願人のpFE発現ベクターを使用した。抗体の重鎖と軽鎖の可変領域は、超可変領域(VH)とフレームワーク(FR)で構成されている。可変領域内の始点であるFR1と終点であるFR4の場合、大部分の抗体は類似のアミノ酸配列で構成されているため、2種類の可変領域をPCRのような方法でタンデム連結することは容易でない。これは、FR1とFR4の類似なヌクレオチド配列により、特異的結合プリマーを作製及び使用することが難しいためである。したがって、親抗体のDNAテンプレートで重鎖と軽鎖の可変領域をそれぞれPCRし、VH1+VH2+pFEベクター或いはVL1+VL2+pFEベクターのような組合せによって3片ライゲーション方法を用いてFv2mabシリーズを作製した。
【0075】
タンデム連結されたVH1とVH2、VL1とVL2は性格によってショートリンカー、ロングリンカー、G4Sリンカーを用いて連結することができ、熱力学的安定性の向上のためにシステインジスルフィド架橋を可変領域の適切な位置に導入することができる(図4参照)。本発明においてエンジニアリング(cysteine disulfide bridge)したFv2mabの場合、エンジニアリングを導入した可変領域の前に‘e’を付して表記した。(例えば、eTNF−IL17の場合はanti−TNF−α Fvにシステインジスルフィド架橋を、TNF−eIL17の場合はanti−IL17AのFvにシステインジスルフィド架橋を導入)。
【0076】
また、軽鎖のC−末端にIDD(Inter Disulfide Domain;RGEC)を導入したエンジニアリングの場合、RGECと表記した(例:VEGF−TNF−RGEC)。3片ライゲーションクローニングに用いられた制限酵素(restriction enzyme)は、タイプII制限酵素sapI(NEB,England)であり、T4 DNA ligase(NEB,England)を使用してDNA断片をライゲーションした。本研究のために作製したFv2mabシリーズを表2に示した。このとき、各Fv2mabシリーズの配列は、表3に示した。
【表2】
【表3】
【0077】
実施例4.Fv2mab発現及びタンパク質Aを用いた精製
Fv2mabクローンシリーズ組換えタンパク質の発現確認及び生産は、HEK一時的発現システム(transient expression system)を使用し、HEK−293F細胞株(Invitrogen,USA)を宿主細胞とした。Fv2mabのHEKにおける発現は、共同形質感染(co−transfection)の方法を利用し、Fv2mab−Hc DNAとFv2mab−Lc DNAはそれぞれ1:1w/wの比率で形質感染を行った。PEI(polyethylenimine)を形質感染製剤として、DNA:PEI=1:4のw/wの比率でポリプレックス(polyplex)を作って形質感染した。形質感染して5日目にバッチ培養(batch culture)を中断し、発現培地(expression medium)を採取(harvest)して、SDS−PAGE及びタンパク質Aビーズ(GE healthcare,USA)を用いたプルダウンアッセイ(pull down assay)で結果を確認した。SDS−PAGE/クーマシーブルー染色(coomassie blue staining)を用いてinput(expression medium)、unbinding sample(flowthrough)、output(bounded Fv2mab protein)を、分画別に発現程度及び形態を確認した(図5参照)。
【0078】
プルダウンアッセイの対照群サンプルとしては親IgG抗体を使用した。pFE発現ベクターにクローニングされたFv2mabシリーズは、上述したように、PEIを用いてHEK293−F細胞に形質感染し、HEK293−F細胞の培養条件及びHEK293−Fを用いた組換えタンパク質の生産に関する方法は、メーカーで提供したプロトコルを遵守して行った。形質感染してから細胞の生存可能性が約60%〜70%程度と測定される6日〜7日目にバッチ培養(batch culture)を終了し、発現培地を遠心分離(4,800rpm、30分、4℃)して破片を除去後、上層液を0.22μmTOP−filter(Millipore,USA)を用いてフィルタリングした。その後、Fv2mabが含まれたフィルタリングした上層液は、タンパク質Aビーズ(GE healthcare,USA)を使用した親和クロマトグラフィー精製過程を経た後、溶出緩衝液の変更のためにSlide−A Lyzer Dialysis Cassette(Thermo,USA)を用いてpH7.4のPBSで透析(dialysis)された。HEK293Fを使用したFv2mabの発現レベルは、約100〜200mg/Lと確認され、タンパク質Aを用いたプルダウンアッセイから確認できるように、発現培地内で発現されたFv2mabの大部分が回収されることが分かる。
【0079】
実施例5.構造選別及びジスルフィド架橋エンジニアリング
二重特異的抗体Fv2mabの組立ては、Fv2mab−重鎖のVH領域フォルディング(folding)によって決定され、VHのフォルディングはER内でBiP依存的に起きる。Fv2mabの場合、BiPによって調節される領域は重鎖のタンデムに連結した2つのVHにあり、LCと結合しなかったBipとVH複合体(complex)はERで分解(degradation)される。Fv2mab重鎖のVHに結合したBiPは、軽鎖のVLによって競争的にVHから放出され、重鎖のVHは軽鎖のVLと組み立てられて外部に分泌される。
【0080】
抗体の場合、BiPによって調節される重鎖領域はCH1とVHであり、これは軽鎖のCLとVLのみによってBiPの放出が起きる。BiPによる調節は、他のフォルディングパートナー(VHとCL、或いはCH1とVL)による方式では発生せず、BiPによる調節の失敗は抗体の分解経路(degradation pathway)で進行される(図6参照)。
【0081】
一般の抗体に存在するCH1とCLの鎖間ジスルフィド結合が持つ熱力学的安定性に代えるために、Fv2mabの場合、鎖間ジスルフィド架橋を形成し得るRGEC領域を含む変異IDDを軽鎖C−末端に適用した方法と、可変領域(Fv)を形成するVHとVLのキー(key)アミノ酸のシステイン置換(H44L100)の方法を適用した。エンジニアリングが適用されたFv2mabクローンの組立て、形態、発現パターンなどは、HEK293を用いたタンパク質発現後にSDS−PAGEで確認した(図7参照)。SDS−PAGEの結果、鎖間ジスルフィド架橋による効果的なHテトラマー形成は、H44L100エンジニアリングされたクローンから確認され、発現率は約50〜100mg/Lレベルと予想される。
【0082】
実施例6.Native PAGEを用いたFv2mabの構造確認
タンデムに連結された可変領域(Fv)のVHとVLの結合のみからなるFv2mabの構造(H,、テトラマー)の確認のために、Blue Native PAGE(Invitrogen,USA)を用いた。Fv2mabと抗体の軽鎖のC−末端に鎖間ジスルフィド架橋を連結するシステインを欠失(deletion)させ、鎖間ジスルフィド架橋無しにVHとVLの結合のみからなるHUMIRA LCΔC(−RGE)を対照群として用いてFv2mabの構造を確認した。
【0083】
Native PAGEの結果、pH7.4のPBS条件でFv2mabとHUMIRA LCΔC(−RGE)は、240kDa〜420kDa分子量の範囲でH形態のテトラマーを形成していることが確認できた(図8参照)。
【0084】
また、Native PAGEゲル上で240kDa〜420kDaの範囲に存在するFv2mabテトラマーバンドをPAGEゲルから分離し、SDS−PAGEで二次分析をした結果、イオン性界面活性剤(ionic detergent)(SDS)によって分離されたFv2mabの重鎖、軽鎖のいずれをも確認することができた(図9参照)。
【0085】
実施例7.タンパク質Aクロマトグラフィー後のFv2mab純度
様々な構造と組合せの二重特異的抗体Fv2mab発現精製によるタンパク質の純度をAgilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies,Germany)とSEC−HPLC(ThermoFisher,USA)を用いて分析した。熱力学的安定性の増加のためにシステインジスルフィド架橋を導入したエンジニアリングされたFv2mabsとFv2mabs(エンジニアリングされていない)、及び対照群としたHUMIRA、HUMIRA LCΔC、SECUKINUMABを当該メーカーのプロトコルを遵守して純度分析を行った。システインジスルフィド架橋エンジニアリングされたFv2mabクローンの場合、H44L100クローンがRGECクローンに比べてかなり高い比率で鎖間ジスルフィド架橋が形成されることを観察し(図10参照)、2100 BioanalyzerとSEC−HPLCの結果、HEK293臨時発現システムを用いたFv2mab組換えタンパク質は、約90%以上の純度を確認した(図11参照)。
【0086】
実施例8.ヒト血清内Fv2mabsの安定性(in vitro)
熱力学的安定性の向上のためにシステインジスルフィド架橋を導入したエンジニアリングされたFv2mabの安定性を、in vitroでヒト血清を用いて測定した。H44L100システイン置換が適用されたエンジニアリングされたFv2mab(eTNIL17)、ジスルフィド架橋がないFv2mab(TNIL17)、及び対照群抗体HUMIRAをそれぞれ、0%、5%、10%、25%のヒト血清が含まれた培地溶液に10nMの濃度で37℃で5日間反応後、TNF−αに対する結合親和度をELISA方法で測定し、Fv2mabの安定性を確認した。安定性の増加のためにH44L100システイン置換を適用したエンジニアリングされたFv2mab(eTNIL17)の場合、対照群抗体であるHUMIRAと同等の血清安定性を示したが、エンジニアリングが適用されていないタンデムFvからなるFv2mabの場合、低濃度において相対的に低い安定性を確認した(図12参照)。
【0087】
実施例9.各抗原に対するFv2mabの結合親和度の比較
HEK293臨時発現システムを用いて様々な組合せのFv2mabs発現精製後、IgG形態の親抗体と該当の抗原に対する結合親和度を相対的に比較した。結合親和度の測定は、ELISA方法とOCTETシステム(ForteBIO,USA)を利用した。
【0088】
実施例9−1.ELISA
Anti−TNF−αとanti−VEGFA、anti−TNF−αとanti−IL17AのタンデムFv形態の組合せからなるFv2mabsの親和度は、ELISA方法を用いて測定した。TNF−α、VEGFA、IL−17Aのような抗原は、100ng/ウェル(96ウェル)の濃度でpH7.4のPBSをコーティングバッファーとして4℃で一晩反応させ、免疫プレートに固定させた。ウェル当たり、PBST 200μlで1回洗浄後、5%脱脂乳を用いてRTで1〜2時間反応させて表面ブロッキング(surface blocking)を行った。ウェル当たりPBST200μlで2回洗浄後、測定しようとする適当な二重特異的Fv2mabと対照群親抗体を、適度の濃度から始めて1/2〜1/5間隔で階段希釈(serial dilution)してRTで1〜2時間反応させた。PBST200μlで3回洗浄し、結合しなかった抗体を除去し、HRP(horseradish peroxidase)が接合(conjugation)されているanti−human−Fc−HRP(Millipore,USA)を1:3000の比率で希釈してRTで1時間反応後、PBST200μlで3回洗浄し、結合しなかった検出用抗体(detection antibody)を除去した。HRPの発色は、TMB溶液(GEhealthcare,USA)を100μl/ウェルの量(volume)を用いて誘導し、停止液(stop solution)(2.5M HSO、100μl/ウェル)を用いて反応を終了した。分光光度計を用いて450nmの波長で吸光度を測定し、結合親和度を計算した。Anti−VEGFA抗体、Fv2mab_VE−TN、Fv2mab_VE−eTN(H44L100ジスルフィド架橋エンジニアされたクローン)のVEGFAとTNF−αに対する結合親和度の比較結果はそれぞれ、図13及び図14に表記した。
【0089】
また、HUMIRA、ABT−122(DVD−Ig for neutralizing TNF−α and IL−17A,AbbVie,USA)、Fv2mab_TNF−IL17、Fv2mab_eTNF−IL17のTNF−αに対する結合親和度の比較結果は図15に、SECUKINUMAB、ABT−122(AbbVie,USA)、Fv2mab_TNF−IL17、Fv2mab_eTNF−IL17のIL−17Aに対する結合親和度の比較結果及びIC50値は図16及び図17に、それぞれ示した。
【0090】
実施例9−2.OCTET(Surface Plasmon Resonance)
HUMIRAとSECUKINUMABの可変領域で構成されているFv2mab_TNF−IL17−SLとFv2mab_eTNF−IL17−SLのTNF−αとIL−17に対する結合程度及び特徴を、SPR(Surface Plasmon Resonance)を用いて測定した。OCTET QK systemを用いたラベルフリーキネティックス(Label−free kinetics)(タンパク質間相互作用)の測定は、anti−human IgG capture(AHC)バイオセンサーを選択して使用し、ヒトFcを含んでいるFv2mab_TNF−IL17−SL及びFv2mab_eTNF−IL17−SLをバイオセンサー表面に固定させた後、キネティックバッファーに濃度別に希釈されたTNF−αとIL−17に対して順次に反応させ、時間によるセンサーグラム値を収集した。平行状態における濃度によるセンサーグラム値をプロットしたキネティック値を表4に示した。Fv2mab_TNF−IL17−SLとFv2mab_eTNF−IL17−SLのキネティック値を求めるために選択した抗原の濃度は、TNF−α、IL−17両方とも1,000nMと333nMを選択し、反応させた抗原の順序による結合力の差異と両抗原に同時に結合し得る程度もOCTETシステムで確認した(図18参照)。
【表4】
【0091】
実施例10.Fv2mabs遮断効能(In vitro細胞基盤アッセイ)
実施例10−1.TNF−α遮断アッセイ
二重特異的抗体Fv2mabのTNF−αに対する遮断効能を確認するために、HEK blue TNF−α細胞(Invivogen,USA)を用いたSEAPアッセイシステムを使用した。Invivogenから提供されるHEK Blue TNF−α細胞の場合、TNF−αによるシグナリングを効果的にモニタリングできるシステムであり、シグナリングによって調節されるNF−kBプロモーターの下位にSEAP(secreted embryonic alkalinephosphatase)レポーター遺伝子が位置している形態で構成されている。TNF−αによって伝達されたシグナリングは最終的にSEAPの発現を増加させて培養培地に蓄積され、これは容易に量的測定が可能である。培養培地に蓄積されたSEAPの量は、Quanti−Blue substrate(Invivogen,USA)を用いた酵素反応による発色過程によって測定可能であり、分光光度計で吸光度を測定することによって遮断効能程度を確認することができる。TNF−α遮断アッセイの結果、Fv2mab_TNF−IL17−SLとFv2mab_eTNF−IL17−SLの両方とも、HUMIRAと対比して類似の効能を確認した(図19参照)。
【0092】
実施例10−2.IL−17A遮断アッセイ
二重特異的抗体Fv2mabの水溶性IL−17Aに対する遮断効能を確認するためにHEK Blue IL17細胞(Invivogen,USA)を使用したSEAPアッセイシステムを用いた。10−1で技術したHEK Blue TNF−α細胞システムと同様に、HEK Blue IL−17cellシステムも、SEAPがレポーター遺伝子として使用された。Fv2mab_TNF−IL17−SLとFv2mab_eTNF−IL17−SL及びSECUKINUMABのIL−17遮断効能は、Quanti−Blue substrate(Invivogen,USA)を用いた酵素反応によって数値化した(図20参照)。
【0093】
実施例11.モノFv抗体及び2個連結されたFv抗体の結合親和度の比較
1個の可変領域からなるFv1mab(VH1−Fc,VL1)と2個の連続する可変領域からなるFv2mab(VH1−L−VH2−Fc,VL1−L−VL2)の結合親和度を、親抗体と対比して比較した。Fv1mabの場合、HEK293を用いた臨時発現においてもFv2mabに類似する程度の発現率を確認し、結合親和度の比較のためにこの実験に用いられたFv1mabは、システインジスルフィド結合エンジニアリング(H44L100)を適用した。Fv1mabの作製は、HUMIRA、SECUKINUMABを親テンプレートとして、各抗体のVHとVL領域をPCRして使用した。HUMIRA、Fv1mab_TNF、Fv2mab_eTNF−IL−SLは、TNF−αに対する結合親和度をELISA方法で比較し、SECUKINUMAB、Fv1mab_IL17、Fv2mab_TNF−IL−SLは、IL−17に対する結合親和度をELISA方法を用いて比較した(図21参照)。
【0094】
実施例12.リンカーによる結合親和度
連続する可変領域を連結するリンカーが抗原結合に及ぼす影響を、ELISAを用いて測定した。ショートリンカー(VH:ASTKGP配列番号1、VL:TVAAP配列番号4)、ロングリンカー(VH:ASTKGPSVFPLAP配列番号2、VL:TVAAPSVFIFPP配列番号5)、G4Sリンカー(VH:GGGGSGGGGS配列番号3、VL:GGSGGGGSG配列番号6)を、外部Fvと内部Fvとの間に導入し、リンカーによる結合親和度の変化を観察しようとした。また、外部FvにはHUMIRAの可変領域、そして内部FvにはSECUKINUMABの可変領域を使用して前記リンカーを含むFv2mabを作製した。異なる種類のリンカーで連結された3種のFv2mabのいずれにも、H44L100のシステインジスルフィド結合エンジニアリングが適用された。TNF−αとIL−17に対する結合親和度は、ELISAを用いて測定した。リンカーによるFv2mabの結合親和度の変化は、図22から確認できる。
【0095】
実施例13.リンカーによるFv2mabのIn vitro効能(細胞基盤アッセイ)
Fv2mabの連続する可変領域を連結するリンカーによるin vitro効能をHEK blue TNF−α細胞(Invivogen,USA)とHEK Blue IL17細胞(Invivogen,USA)を用いて確認した。In vitro効能の測定に用いられたshort、long、G4Sリンカーが導入されたFv2mabは、10nMと200nMの濃度から階段希釈され始め、それぞれTNF−αとIL−17と共に反応された。抗原に対する遮断程度は、培地に蓄積されたSEAPの発現程度によって確認した。培地に蓄積されたSEAPの量的確認のためにQuanti−Blue substrate(Invivogen,USA)を使用し、反応による発色の程度を測定することによって遮断効能を確認した(図23参照)。
【0096】
実施例14.DVD−Ig及びFv2mab間の結合親和度の比較
二重特異的抗体フォーマットによる結合親和度の比較分析のためにAbbVie社のABT−122_DVD−Ig(anti−TNF−α/IL−17二重特異的抗体)とanti−TNF−α/IL−17に対する同じ可変領域のアミノ酸配列を有するABT−122_Fv2mabを作製した。ABT−122_DVD−IgとABT−122_Fv2mabは同じ可変領域のアミノ酸配列と連結リンカーを有しているが、CH1とCLを含んでいるDVD−Igの場合、約200kDaの分子量を有するのに対し、CH1とCLがないFv2mabの場合は約150kDaの分子量有する。可変領域間の連結にはG4Sリンカーを使用し、ABT−122_Fv2mabの場合、システインジスルフィド結合エンジニアリングが導入された。二重抗体フォーマットの比較は、TNF−αとIL−17抗原に対する結合親和度をELISA方法で測定し、同じG4Sリンカーを使用し、SECUKINUMABの可変領域を使用したeTNFIL−G4Sも対照群として、共に比較分析した。二重特異的抗体フォーマットは異なるが、ABT−122_DVD−Igと同じ可変領域の配列を有するABT−122_Fv2mabの場合、TNF−αとIL−17に対する親和度は、両二重抗体とも同一に測定された。また、DVD−Igに比べて3/4レベルの分子量を有するFv2mabの場合、抗体医薬品の開発において他社の二重抗体フォーマットと比較して、際立つ長所となり得る(図24参照)。
【0097】
実施例15.In vitro効能(二重特異的抗体フォーマットの比較)
実施例15−1.HEK blue cellを用いたTNF−α及びIL−17A遮断アッセイ
二重特異的抗体フォーマットによるin vitro効能をHEK blue TNF−α細胞(Invivogen,USA)とHEK Blue IL17細胞(Invivogen,USA)を用いて確認した。ABT−122_DVD−IgとABT−122_Fv2mabは、10nMの濃度から使用し始め、TNF−αとIL−17に対する信号伝達遮断の程度をHUMIRA及びSECUKINMABと対比して確認した(図25参照)。同じ可変領域のアミノ酸配列を使用したABT−122_Fv2mabの場合、ABT−122_DVD−Igと同じモル濃度に対して同じ程度のTNF−αとIL−17に対する遮断効能を示した。また、ABT−122_Fv2mabの場合、IL−17に対する遮断効能は、モノクローナル抗体であるSECUKUNUMABに比べて良い結果を確認した。これは、一般抗体と同じ分子量で2種類以上の抗原に特異的に結合し、モノクローナル抗体よりもとびきり高い効果を有する二重特異的抗体を選択的に作製し易く、またDVD−Igに比べて約25%少ない分子量を有することにより、効果的な組織浸潤及び速くて高い血中濃度維持が可能であり、臨床実験及び治療剤として投与時に、DVD−Ig重量に比べてより多いモル(mole)の効果を期待することができる。
【0098】
実施例15−2.HT−29細胞を用いたTNF−αとIL−17Aの遮断アッセイ
二重特異的抗体のTNF−αとIL−17Aに対する同時遮断効能を確認及び比較するために、HT−29(ATCC(R)HTB−38TM)細胞を用いた遮断アッセイを実施した。HT−29細胞を用いたサイトカイン(cytokine)遮断アッセイは、TNF−α、IL−17A及びIL−22によって伝達される信号伝達によってHT−29細胞で分泌されるCXCL1ケモカイン(chemokine)のレベルを測定することによって可能である。HT−29細胞でサイトカインに誘導された細胞信号伝達を阻害する二重抗体の効果を測定するために使用したTNF−α、IL−17A及びIL−22の濃度は、1.17ng/ml、2.5ng/ml及び0.1ng/mlである。HT−29細胞の培養に用いられた培地は、10%のFBSが含まれたRPMI 1640(Hyclone,USA)培地であり、サイトカイン遮断アッセイに用いられた培地は、2%のFBSが含まれたRPMI 1640培地だった。TH−29から分泌されたCXCL1量の測定は、R&D社のduoset ELISA kit Human CXCL1/GROaキットを使用し、ELISAを用いたCXCL1の測定方法は、メーカーで提供するプロトコルを遵守して実験した。HT−29を用いたサイトカイン遮断アッセイに用いられた二重標的抗体(ABT122_DVD−Ig、ABT122_Fv2mab)と単一標的抗体(HUMIRA、SECUKINUMAB)はいずれも同一に、736pMから0.7pMまで1/4間隔で希釈して使用した。HT−29細胞から1.17ng/ml TNF−α単独或いは2.5ng/ml IL−17A単独で誘導されるCXCL1のレベルは、同一条件でELISAを用いて測定時に、それぞれ1.5と2.5O.Dレベルであり、TNF−αとIL−17A両方によって誘導されるCXCL1のレベルは3.4O.D程度である。HT−29細胞でTNF−αとIL−17Aによって同時に誘導された細胞信号伝達の阻害程度は、二重標的抗体の場合、単一標的抗体に比べてとびきり良い効果を確認することができ、二重標的抗体の場合と同じモル(mole)濃度において、ABT122_DVD−IgとABT122−Fv2mabは同じサイトカイン遮断効果を示した(図26参照)。このような結果は、同じ可変領域の抗体配列を有する二重特異的抗体フォーマットの場合、Fv2mabがDVD−Igに比べて様々な優れた長所を有し得ることが予想できる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係る新規フォーマットの多重特異的多価の結合タンパク質により、従来の多重特異的多価結合タンパク質が持つ短所を補完し、2種類以上のターゲットに同時に結合して目的のターゲットの活性を抑制させることによって、単一標的抗体治療に比べて疾病治療及び診断に優れた効果を期待できる新規フォーマットの多重特異的多価の結合タンパク質を提供することができる。
【0100】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述してきたが、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的記述は好適な実施態様に過ぎないもので、これらによって本発明の範囲が制限されるわけではない点は明らかであろう。したがって、本発明の実質的な範囲は添付の請求項とそれらの等価物によって定義されるといえよう。
図1A
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]