(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[二次電池用正極合剤]
本実施形態に係る二次電池用正極合剤(以下、合剤とも示す)は、正極活物質と、結着剤と、有機酸とを含む。前記正極活物質は、層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物を含む。前記結着剤はフッ化ビニリデン系重合体を含む。また、前記正極活物質を純水に懸濁させた溶液のpHをA、前記正極活物質100質量部に対する前記有機酸の含有量をB質量部とするとき、AとBとは下記式(1)を満たす。
【0014】
30×B+5≦A≦30×B+10 (1)。
【0015】
本実施形態に係る二次電池用正極合剤を用いて作製された二次電池用正極を備える二次電池は、充放電サイクルにおいて高い容量維持率を示す。このような二次電池を実現できる理由は必ずしも明らかではないが、以下の理由が考えられる。
【0016】
結着剤としてフッ化ビニリデン系重合体を用いる場合、アルカリ成分の存在により、フッ化ビニリデン系重合体と微量水分との反応が促進され、フッ化ビニリデン系重合体の脱フッ酸化又は架橋反応が生じる。これにより、合剤のスラリーが高粘度化して、ゲル化する。その結果、スラリーの流動性が無くなり、合剤の塗工が困難になる。また、溶媒量を調整して合剤の塗工を可能とした場合にも、スラリー中においてフッ化ビニリデン系重合体の架橋反応が局所的に発生するため、高分子化したフッ化ビニリデン系重合体が溶媒により膨潤して微小なマイクロゲルが生じる。これらの微小なマイクロゲルの存在によって、合剤の塗布、乾燥により得られる正極活物質層内において導電助剤の不均一性が発生する。これにより、正極自体の体積抵抗率が上昇し、その結果、二次電池の抵抗が高くなり、サイクル特性が低下する。
【0017】
また、微小なマイクロゲルの成分は結着剤であるフッ化ビニリデン系重合体であるため、正極活物質層中の結着剤も不均一に存在することになる。そのため、正極活物質層と正極集電体との密着強度が低下し、サイクル特性が低下する。
【0018】
特に、正極活物質として層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物を用いる場合、該リチウムニッケル複合酸化物は不純物としての水酸化リチウムや炭酸リチウムを多く含むため、フッ化ビニリデン重合体の反応を促進するアルカリ成分を合剤中に多く持ち込むことになる。
【0019】
ここで、本発明者等は鋭意検討の結果、正極活物質が層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物を含み、結着剤がフッ化ビニリデン系重合体を含む場合において、合剤中に添加する有機酸の最適量は、正極活物質を純水に懸濁させた溶液のpHによって変化することを見出した。すなわち、本実施形態では、正極活物質を純水に懸濁させた溶液のpHをA、正極活物質100質量部に対する有機酸の含有量をB質量部とするとき、AとBとが前記式(1)を満たすことにより、得られる二次電池が充放電サイクルにおいて高い容量維持率を示す。
【0020】
一方、前記式(1)において有機酸の含有量が少ない場合、リチウムニッケル複合酸化物由来のアルカリ成分によるフッ化ビニリデン重合体の反応を抑制することが出来ず、合剤のスラリーが高粘度化して、塗工が困難になる。また、余剰に溶媒を追加して増粘したスラリーの粘度を下げ、合剤の塗工を可能とした場合にも、前述した微小なマイクロゲルの発生により、サイクル特性が低下する。また、前述したように結着剤も不均一に存在することになるため、正極活物質層と正極集電体との密着強度が低下し、サイクル特性が低下する。
【0021】
また、前記式(1)において有機酸の含有量が多い場合、合剤の乾燥時に有機酸がフッ化ビニリデン重合体の結晶構造を変化させる。その結果、正極活物質層と正極集電体との密着強度が低下し、サイクル特性が低下する。
【0022】
本実施形態に係る二次電池用正極合剤は、リチウムイオン二次電池用正極合剤であることができる。以下、本実施形態における各構成の詳細について説明する。
【0023】
<正極活物質>
本実施形態に係る正極活物質は、層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物を含む。リチウムニッケル複合酸化物としては、層状結晶構造を有すれば特に限定されないが、Li
αNi
xM
1−xO
2(但し、0<α≦1.15、0.2≦x≦0.9、MはCo、Mn、Mg及びAlからなる群から選択される少なくとも一種である。)で表されるリチウムニッケル複合酸化物が好ましい。前記式において、αは0.2≦α≦1.10であることが好ましく、0.5≦α≦1.05であることがより好ましい。また、二次電池の高容量化の観点から、xは0.3≦x≦0.87であることが好ましく、0.4≦x≦0.85であることがより好ましい。リチウムニッケル複合酸化物は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。リチウムニッケル複合酸化物の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。例えば、特許第3897387号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0024】
リチウムニッケル複合酸化物が層状結晶構造を有するか否かについては、粉末X線回折測定により判断する。正極活物質100質量%に含まれる層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物の量は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%、すなわち正極活物質が層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物からなることが特に好ましい。
【0025】
前記式(1)において、正極活物質を純水に懸濁させた溶液のpH(A)は、充放電サイクルにおける容量維持率向上の観点から、8〜14であることが好ましく、9〜13であることがより好ましい。なお、前記式(1)における、正極活物質を純水に懸濁させた溶液のpH(A)は、JIS K5101−17−2に準じて測定した値である。具体的には、ガラス容器内に水100cm
3と正極活物質2gとを添加し、5分間混合した後、30秒間静置して得られた上澄み液のpHを、JIS Z8802に準じて測定する。pHの測定には、ガラス電極式水素イオン濃度計(商品名:HM−40V、東亜電波工業株式会社製)を使用する。pHは27℃にて測定する。
【0026】
正極活物質の平均粒子径は、合剤の塗工のしやすさやと二次電池の出力特性の観点から、5〜20μmであることが好ましく、7〜15μmであることがより好ましい。また、正極活物質のBET比表面積は、二次電池の出力特性の観点から、0.1〜2.0m
2/gであることが好ましく、0.2〜1.0m
2/gであることがより好ましい。なお、平均粒子径はレーザ回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒子径(メジアン径:D50)を意味する。また、BET比表面積はBET法により測定した値である。
【0027】
二次電池用正極合剤中の正極活物質の固形分比率は、特に限定されないが、例えば85〜96質量%とすることができる。
【0028】
<結着剤>
本実施形態に係る結着剤は、フッ化ビニリデン系重合体を含む。フッ化ビニリデン系重合体としては特に限定されないが、例えばフッ化ビニリデンの単独重合体、共重合体及びこれらの変性物等が挙げられる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。結着剤100質量%に含まれるフッ化ビニリデン系重合体の量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%、すなわち結着剤がフッ化ビニリデン系重合体からなることがさらに好ましい。
【0029】
正極活物質100質量部に対するフッ化ビニリデン系重合体の含有量は、1〜10質量部が好ましく、2〜7質量部がより好ましい。該含有量が1質量部以上であることにより、正極活物質層の剥離が抑制される。また、該含有量が10質量部以下であることにより、正極活物質層における正極活物質の占める割合が大きくなり、質量当たりの容量が大きくなる。二次電池用正極合剤中のフッ化ビニリデン系重合体の固形分比率は、1〜10質量%が好ましく、2〜7質量%がより好ましい。
【0030】
<有機酸>
本実施形態に係る有機酸は特に限定されないが、特性改善効果の観点から、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸及びフマル酸が好ましい。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機酸としてはシュウ酸がより好ましい。
【0031】
正極活物質100質量部に対する有機酸の含有量(B質量部)は、正極活物質を純水に懸濁させた溶液のpH(A)との関係で、前記式(1)を満たす。AとBとは、下記式(2)を満たすことが好ましく、下記式(3)を満たすことがより好ましく、下記式(4)を満たすことが特に好ましい。
【0032】
30×B+6≦A≦30×B+9.5 (2)
30×B+7≦A≦30×B+9 (3)
A=30×B+8 (4)。
【0033】
正極活物質100質量部に対する有機酸の含有量(B質量部)は、充放電サイクルにおける容量維持率向上の観点から、0.03〜0.50質量部であることが好ましく、0.04〜0.30質量部であることがより好ましく、0.05〜0.15質量部であることがさらに好ましい。
【0034】
<導電助剤>
本実施形態に係る二次電池用正極合剤は、本実施形態における効果がより得られ、また正極活物質層の導電性が向上する観点から、導電助剤を含有することが好ましい。導電助剤としては特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、炭素繊維等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0035】
正極活物質100質量部に対する導電助剤の含有量は、1〜10質量部が好ましく、2〜7質量部がより好ましい。該含有量が1質量部以上であることにより、導電性が良好となる。また、該含有量が10質量部以下であることにより、正極活物質層における正極活物質の占める割合が大きくなり、質量当たりの容量が大きくなる。二次電池用正極合剤中の導電助剤の固形分比率は、1〜10質量%が好ましく、2〜7質量%がより好ましい。
【0036】
<溶媒>
本実施形態に係る二次電池用正極合剤は溶媒を含むことができる。溶媒としては、フッ化ビニリデン系重合体を溶解できる有機溶媒を用いることができ、例えばN−メチル−ピロリドン(NMP)等を用いることができる。
【0037】
[二次電池用正極の製造方法]
本実施形態に係る二次電池用正極の製造方法は、本実施形態に係る二次電池用正極合剤を正極集電体上に付与する工程を含む。該方法によれば、充放電サイクルにおいて高い容量維持率を示す二次電池用正極を製造することができる。該二次電池用正極はリチウムイオン二次電池用正極であることができる。
【0038】
正極集電体の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金などを用いることができる。正極集電体の形状としては、箔、平板状、メッシュ状等が挙げられる。特に、正極集電体としてはアルミニウム箔が好ましい。正極集電体の厚みは特に限定されないが、例えば10〜50μmとすることができる。
【0039】
正極集電体上に二次電池用正極合剤を付与して正極活物質層を形成するための装置としては、ドクターブレード、ダイコータ、グラビアコータ、転写方式、蒸着方式等の様々な塗布方法を実施する装置や、これらの塗布装置の組み合わせを用いることができる。これらの中でも、正極活物質層の端部を精度良く形成できる観点から、ダイコータを用いることが好ましい。ダイコータによる二次電池用正極合剤の塗布方式としては、大別して、長尺の正極集電体の長手方向に沿って連続的に二次電池用正極合剤を塗布する連続塗布方式と、正極集電体の長手方向に沿って二次電池用正極合剤の塗布部と未塗布部とを交互に繰り返して形成する間欠塗布方式の2種類がある。これらの方式から適宜選択することができる。
【0040】
正極活物質層の厚みは特に限定されるものではなく、所望の特性に応じて適宜設定することができる。例えば、エネルギー密度の観点からは正極活物質層を厚く設定することができ、また出力特性の観点からは正極活物質層を薄く設定することができる。正極活物質層の厚みは、例えば10〜250μmの範囲で適宜設定でき、20〜200μmが好ましく、50〜180μmがより好ましい。また、正極活物質層の密度は、2.55〜3.45g/cm
3であることが好ましい。正極活物質層の密度が前記範囲内であることにより、高放電レートでの使用時における放電容量が向上する。
【0041】
[二次電池の製造方法]
本実施形態に係る二次電池の製造方法は、本実施形態に係る方法により二次電池用正極を製造する工程と、前記二次電池用正極と、負極と、を備える二次電池を組み立てる工程と、を含む。該方法によれば、充放電サイクルにおいて高い容量維持率を示す二次電池を製造することができる。該二次電池はリチウムイオン二次電池であることができる。
【0042】
本実施形態に係る二次電池の製造方法により製造されるラミネート型の二次電池の一例を
図1に示す。
図1に示される二次電池は、正極集電体3と、正極集電体3上に設けられた正極活物質を含有する正極活物質層1とを備える正極と、負極集電体4と、負極集電体4上に設けられた負極活物質を含有する負極活物質層2とを備える負極とを有する。正極および負極は、正極活物質層1と負極活物質層2とが対向するように、セパレータ5を介して積層されている。この電極対は、外装体6内に収容されている。なお、
図1では1つの電極対が外装体6内に収容されているが、複数の電極対が積層された電極群が外装体6内に収容されていてもよい。電極の積層体に限らず、電極の捲回体であってもよい。正極集電体3には正極タブ8が接続されている。負極集電体4には負極タブ7が接続されている。これらのタブは外装体6の外部に引き出されている。外装体6内には不図示の電解液が注入されている。該二次電池は公知の方法に準じて作製することができる。なお、二次電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角型、扁平型等いずれの形状であってもよい。
【0043】
<負極>
本実施形態に係る負極は、リチウムを挿入・脱離可能な負極であることができ、負極活物質と、必要に応じて、結着剤と、導電助剤とを含む負極活物質層を備えることができる。また、本実施形態に係る負極は、負極集電体と、該負極集電体上に設けられた前記負極活物質層とを備えることができる。
【0044】
負極活物質としては、リチウム金属、炭素材料、Si系材料等のリチウムを吸蔵、放出できる材料を用いることができる。炭素材料としては、リチウムを吸蔵する黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等が挙げられる。Si系材料としては、Si、SiO
2、SiO
x(0<x≦2)、Si含有複合材料等を用いることができる。また、これらの材料を2種類以上含む複合物を用いてもよい。
【0045】
負極活物質が粒子状である場合、該負極活物質の平均粒子径は、充放電時の副反応を抑制し、充放電効率の低下を抑制できる観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましい。また、該平均粒子径は、入出力特性及び負極表面の平滑性等、負極作製上の観点から、80μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。なお、該平均粒子径は、レーザ回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒子径(メジアン径:D50)を意味する。
【0046】
負極活物質としてリチウム金属を用いる場合には、例えば融液冷却方式、液体急冷方式、アトマイズ方式、真空蒸着方式、スパッタリング方式、プラズマCVD方式、光CVD方式、熱CVD方式、ゾル−ゲル方式等の方式により負極を形成することができる。また、負極活物質として炭素材料を用いる場合には、例えば炭素材料とPVDF等の結着剤とを混合し、混合物をNMP等の溶剤中に分散して混錬し、これを負極集電体上に塗布する方法により、負極を形成することができる。また、蒸着法、CVD法、スパッタリング法等の方法により負極を形成することもできる。
【0047】
結着剤及び導電助剤としては、前述した正極合剤に用いることができる結着剤及び導電助剤と同様のものを用いることができる。
【0048】
負極集電体としては銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金を用いることができる。
【0049】
<電解液>
電解液としては、非水電解液を用いることができる。電解液は、例えば有機溶媒とリチウム塩とを含むことができる。有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート類;エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類;脂肪族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類;鎖状エーテル類;環状エーテル類等を用いることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。リチウム塩としては、リチウムイミド塩、LiPF
6、LiAsF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、LiBF
4、LiSbF
6などが挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0050】
<セパレータ>
セパレータは、樹脂製の多孔膜、織布、不織布であることができる。前記樹脂としては、例えばポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、特にポリオレフィン系の微多孔膜は、イオン透過性と、正極と負極とを物理的に隔離する性能とに優れているため好ましい。また、必要に応じて、セパレータには無機物粒子を含む層が形成されていてもよい。無機物粒子としては、絶縁性の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物等を挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、無機物粒子としてはTiO
2、Al
2O
3が好ましい。
【0051】
<外装体>
外装体としては、可撓性フィルムからなるケースや缶ケース等を用いることができる。これらの中でも、二次電池の軽量化の観点から可撓性フィルムを用いることが好ましい。可撓性フィルムには、基材である金属層の少なくとも一方の面に樹脂層が設けられたものを用いることができる。金属層の材料としては、電解液の漏出や外部からの水分の浸入等を防止できるバリア性を有する材料を選択することができ、例えばアルミニウム、ステンレス鋼などを用いることができる。金属層の少なくとも一方の面には、変性ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂層を設けることができる。外装体として可撓性フィルムを用いる場合には、可撓性フィルムの熱融着性樹脂層同士を対向させ、電極対を収納する部分の周囲を熱融着することにより、外装体が形成される。熱融着性樹脂層が形成された面とは反対側の面である外装体表面には、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルムなどの樹脂層を設けることができる。
【実施例】
【0052】
(実施例1〜4及び比較例1〜3)
正極活物質として、平均粒子径8.4μm、BET比表面積0.44m
2/gの層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物(LiNi
0.80Co
0.15Al
0.05O
2)を準備した。該リチウムニッケル複合酸化物を純水に懸濁させた溶液のpHは12.5であった。該リチウムニッケル複合酸化物100質量部と、導電助剤としてのカーボンブラック4.3質量部とを乾式混合した。得られた混合物と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)4.3質量部と、有機酸としてのシュウ酸とを、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に添加し、均一に分散させ、二次電池用正極合剤を得た。なお、有機酸としてのシュウ酸の添加量は、表1に示す値とした。また、該二次電池用正極合剤中のカーボンブラックの固形分比率は4質量%であった。また、該二次電池用正極合剤中のPVDFの固形分比率は4質量%であった。また、該二次電池用正極合剤中のリチウムニッケル複合酸化物の固形分比率は、91.8〜92.0質量%であった。
【0053】
前記二次電池用正極合剤を、正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布した後、乾燥させてNMPを蒸発させることにより、正極集電体上に厚さ85μmの正極活物質層を形成した。これにより、二次電池用正極を得た。
【0054】
負極活物質としての天然黒鉛と、結着剤としてのPVDFとを、天然黒鉛:PVDF=90:10(質量比)となるように混合した。この混合物をNMPに分散させ、二次電池用負極合剤を得た。該二次電池用負極合剤を、負極集電体である厚さ10μmの銅箔上に塗布した後、乾燥させてNMPを蒸発させることにより、二次電池用負極を作製した。前記二次電池用正極と、前記二次電池用負極とをポリエチレンからなるセパレータを介して積層した。この電極対を、電解質としてのLiPF
6を1mol/Lの濃度で含む電解液と共に外装体内に封入することで、二次電池を作製した。
【0055】
(実施例5〜9並びに比較例4及び5)
正極活物質として、平均粒子径8.1μm、BET比表面積0.42m
2/gの層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2)と、平均粒子径7.9μm、BET比表面積0.30m
2/gの層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物(LiNi
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2)との混合物(混合比1:1(質量比))を準備した。該混合物を純水に懸濁させた溶液のpHは11.6であった。該混合物を正極活物質として用いた以外は、実施例1と同様に二次電池用正極合剤、二次電池用正極及び二次電池を作製した。なお、有機酸としてのシュウ酸の添加量は、表2に示す値とした。
【0056】
(実施例10〜13並びに比較例6及び7)
正極活物質として、平均粒子径8.4μm、BET比表面積0.44m
2/gの層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物(LiNi
0.80Co
0.15Al
0.05O
2)と、平均粒子径10.1μm、BET比表面積0.80m
2/gの層状結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(Li
1.1Mn
1.9O
4)との混合物(混合比1:1(質量比))を準備した。該混合物を純水に懸濁させた溶液のpHは10.1であった。該混合物を正極活物質として用いた以外は、実施例1と同様に二次電池用正極合剤、二次電池用正極及び二次電池を作製した。なお、有機酸としてのシュウ酸の添加量は、表3に示す値とした。
【0057】
(実施例14、15及び比較例8〜10)
正極活物質として、平均粒子径8.4μm、BET比表面積0.44m
2/gの層状結晶構造を有するリチウムニッケル複合酸化物(LiNi
0.80Co
0.15Al
0.05O
2)と、平均粒子径10.1μm、BET比表面積0.80m
2/gの層状結晶構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(Li
1.1Mn
1.9O
4)との混合物(混合比2:8(質量比))を準備した。該混合物を純水に懸濁させた溶液のpHは8.9であった。該混合物を正極活物質として用いた以外は、実施例1と同様に二次電池用正極合剤、二次電池用正極及び二次電池を作製した。なお、有機酸としてのシュウ酸の添加量は、表4に示す値とした。
【0058】
(実施例16〜20)
有機酸として表5に示される有機酸を用い、有機酸の添加量を0.15質量部とした以外は、実施例1と同様に二次電池用正極合剤、二次電池用正極及び二次電池を作製した。
【0059】
(評価)
各実施例及び比較例において作製した二次電池について、高温サイクル特性を評価した。具体的には、温度45℃において、充電レート1.0C、放電レート1.0C、充電終止電圧4.2V及び放電終止電圧2.5Vの条件にて充放電サイクルを実施した。500サイクル後の放電容量(mAh)を、10サイクル目の放電容量(mAh)で割った値を容量維持率(%)とした。結果を表1〜5に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
この出願は、2016年3月18日に出願された日本出願特願2016−055170を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0066】
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。