(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に前記バランス機構は、前記前後回転方向で回転可能に前記第1スイベルユニット近傍に取り付けられる第1円盤リールと、先端間に前記スプリングが取り付けられる可動顎部及び固定顎部と、を含み、
前記可動顎部は、第1円盤リールの回転と共に、前記可動顎部の先端が前記固定顎部の先端に対して開閉する方向に回動するように、前記第1円盤リールに取り付けられ、
前記ワイヤは、前記スプリングが収縮する方向への前記可動顎部の回動によって前記第1円盤リールに巻き取られると共に、前記インボードアームが前記前傾姿勢になるにつれて前記第1円盤リールを繰り出し方向に回転させて前記可動顎部を回動させ、それによって前記スプリングを伸長させるように、前記ワイヤの他端側が前記第1円盤リールの外周の少なくとも一部に巻き付けられた状態で前記第1円盤リールに接続されていることを特徴とする請求項1又は3記載のローディングシステム。
インボードアーム及びアウトボードアームの移動を補助する移動補助手段により吊り下げるための吊り部が、前記第2スイベルユニット近傍に設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載のローディングシステム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10の構成の一例を示している。なお、このローディングシステム10は、大略アーム状をなし、例えば
図4に示すように、2つの設備70、80の片方の設備70に設置され、それらの設備70、80間で流体資源を荷役するためのものである。荷役対象の流体資源は、例えば液化天然ガス(LNG)、液化石油ガス(LPG)、石油、化学流体などであって、流体状のものであれば特に限定されるものではない。
【0026】
図1を確認すると、格納状態にあるローディングシステム10が示されており、
図1(a)と(b)とで異なる方向から図示されている。なお、以降では、特に断り書きのない限り、方向に関する説明を、
図1に示すような前後方向x、側方向y、高さ方向zに基づいて行っており、特に前方は前後方向xの矢印の先端側である。図示のように、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10は、インボードアーム12、アウトボードアーム14、接続部16、基部36、3つのスイベルユニット18、26、28、及びバランス機構40によって大略構成されている。基部36は、設置先の設備70(
図4参照)に固定されて、ローディングシステム10を支える部位であり、ローディングシステム10全体を支えるのに十分な強度を有している。基部36には、設置先の設備70の、流体資源を貯蔵する流体貯蔵部へ向かう配管78(
図4参照)に接続される接続口38が設けられている。
【0027】
第1スイベルユニット18は、基部36の上端とインボードアーム12の一方の端部との間を接続しており、高さ方向zに延びる軸を回転軸として水平回転方向に回転可能な水平回転部(スイベルジョイント)20と、側方向yに延びる軸を回転軸として前後回転方向に回転可能な前後回転部(スイベルジョイント)22とを有している。換言すれば、第1スイベルユニット18は、ローディングシステム10の水平旋回と垂直方向の動きとを実現するものである。インボードアーム12及びアウトボードアーム14は、基部36と接続部16との間で延びて、ローディングシステム10による流体資源の移送の大部分を担う長尺状のものである。第2スイベルユニット26は、インボードアーム12の他方の端部とアウトボードアーム14の一方の端部との間を接続しており、側方向yに延びる軸を回転軸として前後回転方向に回転可能な前後回転部(スイベルジョイント)27を有している。換言すれば、第2スイベルユニット26は、インボードアーム12とアウトボードアーム14との開閉の動きを実現するものである。
【0028】
第3スイベルユニット28は、アウトボードアーム14の他方の端部と接続部16との間を接続しており、側方向yに延びる軸を回転軸として前後回転方向に回転可能な前後回転部(スイベルジョイント)30と、高さ方向zに延びる軸を回転軸として水平回転方向に回転可能な水平回転部(スイベルジョイント)32と、前後方向xに延びる軸を回転軸として側回転方向に回転可能な側回転部(スイベルジョイント)34とを有している。換言すれば、第3スイベルユニット28は、接続部16をあらゆる角度で配置させるようになっている。接続部16は、第3スイベルユニット28によって適切な角度に調整された状態で、接続先の設備80のマニホールド82(
図4参照)と着脱可能に接続される部位である。
【0029】
バランス機構40は、本実施形態において、スプリング42、ワイヤ44、第1円盤リール46、第2円盤リール48、可動顎部50、及び固定顎部52を含んでいる。第1円盤リール46は、側方向yに延びる軸を回転軸として前後回転方向に回転可能に、第1スイベルユニット18の前後回転部22の近傍に取り付けられている。第1円盤リール46は、前後回転部22の直径よりも大きい直径を有しており、前後回転部22の機能を妨げることなくインボードアーム12に追従するように、回転装置に取り付けられている。第1円盤リール46の外周の少なくとも一部には、ワイヤ44が巻き付けられるための溝が設けられている。可動顎部50は、第1円盤リール46の回転と共に側方向yに延びる軸を回動軸として回動するように、第1円盤リール46の一方の面に取り付けられている。可動顎部50は、
図1の状態では、第1円盤リール46から前側斜め下方向(側方向yと平行な軸を中心とする放射方向外側)に延びた後、その先端が前側斜め上方向に向けて約90°曲げられている。
【0030】
固定顎部52は、第1スイベルユニット18の水平回転部20と前後回転部22との間に位置する、基部36に対して水平回転方向の回転は可能であるが前後回転方向の回転は不可能な半固定部位24に固定されている。固定顎部52は、半固定部位24から後側斜め上方向(側方向yと平行な軸を中心とする放射方向外側)に延びた後、その先端が前側斜め上方向に向けて約90°曲げられている。このため、上記の可動顎部50は、第1円盤リール46が回転すると、可動顎部50の先端が固定顎部52の先端に対して開閉する方向に回動するようになる。スプリング42は、上記のような構造の可動顎部50の先端と固定顎部52の先端との間に接続されている。このため、スプリング42は、可動顎部50の回動に伴って、固定顎部52への接続部位に対する可動顎部50への接続部位の相対位置が変化し、それによって伸縮するようになっている。
【0031】
第2円盤リール48は、第2スイベルユニット26を介したインボードアーム12に対するアウトボードアーム14の開閉移動に伴って、アウトボードアーム14と共に回転するように、第2スイベルユニット26近傍のアウトボードアーム14の一方の端部側に取り付けられている。第2円盤リール48は、その中心軸が側方向yと平行になっており、第1円盤リール46と平行に取り付けられている。第2円盤リール48は、第2スイベルユニット26の直径やアウトボードアーム14の配管径よりも大きい直径を有しており、第2円盤リール48の外周の少なくとも一部には、ワイヤ44が掛け回されるための溝が設けられている。ワイヤ44は、その一端が接続部材60に接続され、第2円盤リール48の外周に掛け回された後、第1円盤リール46の外周に巻き付けられた状態で、他端が第1円盤リール46に接続されている。なお、第1円盤リール46及び第2円盤リール48には、ディスクやカム機構で構成されるものも含まれる。
【0032】
接続部材60は、アウトボードアーム14の長さ方向中央近傍の、側方向yについてインボードアーム12側に位置する外周部分から、
図1の状態では前側斜め上方向に延びて、その先端がアウトボードアーム14よりも突出している。このため、接続部材60の先端に接続されたワイヤ44は、アウトボードアーム14から離れた位置を通って、アウトボードアーム14と略平行に、第2円盤リール48の方へ延びている。そして、第2円盤リール48に至ったワイヤ44は、第2円盤リール48の外周に掛け回されて、
図1の状態で前側斜め下方向へ方向転換され、インボードアーム12から離れた位置を通って、インボードアーム12と略平行に、第1円盤リール46の方へ延びている。更に、第1円盤リール46に至ったワイヤ44は、前後方向xの前方を右側とする側面視で左回り方向に、第1円盤リール46の外周の少なくとも一部に巻き付けられて、その他端が第1円盤リール46に接続されている。
【0033】
又、ローディングシステム10は、吊り部62と、第1規制部材64及び第2規制部材66とを備えている。吊り部62は、インボードアーム12及びアウトボードアーム14の移動を補助する、例えば
図4に示すようなクレーンなどの移動補助手段76により吊り下げるためのものである。吊り部62は、本実施形態では
図1(b)に示すように、第2スイベルユニット26近傍のインボードアーム12の他方の端部側に設けられており、先端に穴が形成された板状をなしている。又、この吊り部62は、プレートやその他の形状で設計されてもよい。第1規制部材64は、ローディングシステム10が
図1に示すような格納状態にあるときに、アウトボードアーム14の移動を規制して位置決めしている。本実施形態の第1規制部材64は、インボードアーム12の長さ方向中央よりも第2スイベルユニット26寄りに位置する、
図1の状態で前側斜め上方向を向いた外周部分から、側方向yについてアウトボードアーム14側へ延びる棒状の部材である。
【0034】
第2規制部材66は、同じくローディングシステム10が
図1に示すような格納状態にあるときに、接続部16の移動を規制して位置決めしている。本実施形態の第2規制部材66は、第1突出部66a及び第2突出部66bから成り、第1突出部66aは、インボードアーム12の一方の端部近傍から、
図1の状態で前方へ向かって延びている。又、第2突出部66bは、第3スイベルユニット28の水平回転部32と側回転部34との間の部位から、
図1の状態で後方へ向かって延びている。そして、第1突出部66aの先端面と第2突出部66bの先端面とが突き合わされるようになっている。
なお、上述したローディングシステム10の構成部材は、各々に求められる機能を実現可能な任意の材料で形成されるが、サイズ等が適合すれば従来のローディングシステムの部材の一部をそのまま流用してもよい。又、ローディングシステム10のサイズは特に限定されるものではないが、例えば3B〜16Bの口径に対応するものであり、場合によっては24Bの口径に対応してもよい。
【0035】
上記のような構成のローディングシステム10は、例えば
図4に示すように設置される。
図4には、ローディングシステム10が設置される一方の設備70として、水上を移動するタンカーなどの船舶が図示されており、ローディングシステム10が接続される他方の設備80として、あらゆる船舶や浮体式貯蔵設備(FSU)などの水上の設備が図示されている。しかしながら、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10は、2つの設備70、80の少なくとも片方が水上の設備である場合の、受入や払出を含む流体資源の全ての荷役シーンで利用可能なものであり、ローディングシステム10が桟橋や岸壁といった陸上の設備に設置されていてもよい。
【0036】
図4の実施形態では、設備70の下段デッキ74に4本のローディングシステム10が並んで設置されており、各ローディングシステム10の接続口38(
図1参照)に、設備70の流体貯蔵部へ至る配管78が接続されている。設備70の上段デッキ72には、移動補助手段76としてのクレーンが設置されている。4本のローディングシステム10は、状況に応じて任意の用途で使い分けられる。これに限定されるものではないが、例えば、4本のうち3本のローディングシステム10が、配管78を介して設備70の流体貯蔵部から流体資源を吸い上げて設備80へ送出するために用いられ、残りの1本のローディングシステム10が、設備70の流体貯蔵部内へ気化した流体資源を送り込んで圧力を保つために利用される場合もあり、4本のローディングシステム10がそれぞれ別の流体資源を受入や払出する場合もある。
【0037】
続いて、
図1〜
図4を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10の、格納状態及び接続状態にある場合の作用や、それらの間の移動中の作用、及び移動方法について説明する。なお、上述したように、
図1は格納状態のローディングシステム10を示しているのに対し、
図2及び
図3は移動途中のローディングシステム10を示し、
図4(b)は接続状態のローディングシステム10を示している。
図2及び
図3は、
図1(a)と同じ向きからローディングシステム10を図示している。
【0038】
まず、
図1に示すように、格納状態にあるローディングシステム10は、インボードアーム12が後側へ傾いた後傾姿勢にあり、この後側への傾きの限界位置は、例えば、第1スイベルユニット18の前後回転部22による回転角度にリミッタが設けられることで定められる。アウトボードアーム14は、インボードアーム12に設けられた第1規制部材64に接触する限界まで、インボードアーム12に対して第2スイベルユニット26を介して閉じた位置にある。このとき、ワイヤ44は、インボードアーム12に対してアウトボードアーム14が閉じていることで、第2円盤リール48の外周に掛け回されている部分の長さが、インボードアーム12に対してアウトボードアーム14が開いている場合よりも多くなる。これによって、接続部材60に接続されたワイヤ44の一端側が僅かに引っ張られることになり、ワイヤ44の他端側が巻き付けられて接続された第1円盤リール46に、前後方向xの前方を右側とする側面視で右回り方向(ワイヤ44の繰り出し方向)への付勢力がかかる。すると、第1円盤リール46に取り付けられた可動顎部50に対して、第1円盤リール46の回転方向と同じ方向、換言すれば、固定顎部52の先端に対して可動顎部50の先端が広がるような方向への付勢力がかかり、それらの先端間に接続されたスプリング42が僅かに伸長した状態になっている。
【0039】
又、
図1の格納状態では、インボードアーム12から延びる第2規制部材66の第1突出部66aの先端面に対して、第3スイベルユニット28から延びる第2規制部材66の第2突出部66bの先端面が当接している。これによって、第3スイベルユニット28の前後回転部30や水平回転部32を介した、接続部16の回転移動が防止されている。そして、格納状態のローディングシステム10は、インボードアーム12、アウトボードアーム14、及び接続部16の移動が、上記のように規制された状態で、設備70に固定された基部36を支点として自立している。
【0040】
図1の格納状態から移動するにあたり、
図4(a)に示すように、クレーン(移動補助手段)76から吊り下げたフック76aを、移動させるローディングシステム10の吊り部62に接続する。そして、クレーン76によってローディングシステム10を吊り下げて補助しながら、作業員によってローディングシステム10の移動を開始する。ここでは、
図1の格納状態から
図2の状態へ、更に
図3の状態を経て、
図4(b)の接続状態へと移動する場合を例にして説明する。
【0041】
図2を参照すると、
図2のローディングシステム10は、
図1の格納状態と比較して、インボードアーム12の姿勢はそのままで、インボードアーム12に対してアウトボードアーム14が開かれるように移動された状態である。このとき、格納状態よりもワイヤ44の第2円盤リール48の外周に掛け回されている部分の長さが短くなるため、ワイヤ44によってスプリング42にもたらされていた伸長方向への付勢力が解除されるような動きとなる。これにより、スプリング42の収縮しようとする力が、インボードアーム12に対してアウトボードアーム14が開かれるような移動の補助力として作用するものとなり、
図2に示すように、アウトボードアーム14の移動に伴ってスプリング42が収縮する。このとき、ワイヤ44の他端側が巻き付けられて接続された第1円盤リール46は、前後方向xの前方を右側とする側面視で左回り方向(ワイヤ44の巻き取り方向)へ僅かに回転される。
【0042】
次に、
図3を参照して、
図3のローディングシステム10は、接続先の設備80(
図4参照)へ向けて更に移動された状態であり、
図2のローディングシステム10と比較して、インボードアーム12が後傾姿勢から前傾姿勢になり、アウトボードアーム14がインボードアーム12に対してより大きく開かれるように移動されている。このような移動に伴い、ワイヤ44は、第2円盤リール48の外周に掛け回されている部分の長さがより短くなるものの、インボードアーム12が前傾姿勢になるにつれて前方へ引っ張られるため、第1円盤リール46を前後方向xの前方を右側とする側面視で右回り方向(ワイヤ44の繰り出し方向)へ僅かに回転させる。すると、第1円盤リール46に取り付けられた可動顎部50が、第1円盤リール46の回転方向と同じ右回り方向へ回動されるため、固定顎部52の先端に対して可動顎部50の先端が広がるような方向への付勢力がかかり、それらの先端間に接続されたスプリング42が伸長する方向へ付勢される。これにより、スプリング42の収縮しようとする力が、インボードアーム12やアウトボードアーム14を後側へ引き戻そうとする力として作用するようになる。
【0043】
更に、
図3のようにスプリング42の力を作用させた状態で、
図4(b)に示すように、接続部16が設備80のマニホールド82へ接続可能な位置に達するまで、インボードアーム12及びアウトボードアーム14を移動させる。そして、第3スイベルユニット28を介して接続部16の角度を調整し、接続部16をマニホールド82へ接続した後、吊り部62からクレーン76のフック76aを取り外す。この状態で、ローディングシステム10は、上述したような構成のバランス機構40を利用しながら、設備70に固定された基部36と、マニホールド82に接続された接続部16側とを支点として自立する。以降は、上記と同じようにして残りのローディングシステム10を全て接続すればよい。
【0044】
なお、上記の説明では、
図2のようにインボードアーム12に対してアウトボードアーム14を開くように移動させた後、
図3のようにインボードアーム12を前傾姿勢に移動させているが、ローディングシステム10の移動方法はこれに限定されることはなく、例えば、インボードアーム12に対してアウトボードアーム14を開くような移動と、インボードアーム12を前傾姿勢にさせる移動とを、同時に行ってもよい。又、ローディングシステム10を、
図4(b)のような接続状態から
図1及び
図4(a)のような格納状態に移動させる際は、基本的に上記の移動手順を反対から実行すればよい。
【0045】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10は、
図1〜
図4に示すように、2つの設備70、80間で流体資源の荷役を行うためのものであり、その2つの設備70、80の少なくとも片方が、船舶や浮体式貯蔵設備などの水上を移動する設備や水上に設置された設備のものである。このローディングシステム10は、具体的な構成要素として、インボードアーム12、アウトボードアーム14、接続部16、及びバランス機構40を含んでいる。そして、ローディングシステム10の設置先である一方の設備70の流体貯蔵部側とインボードアーム12との間が、2つのスイベルジョイント20、22を含む第1スイベルユニット18を介して接続され、インボードアーム12とアウトボードアーム14との間が、スイベルジョイント27を含む第2スイベルユニット26を介して接続され、アウトボードアーム14と接続部16との間が、3つのスイベルジョイント30、32、34を含む第3スイベルユニット28を介して接続される。更に、接続部16は、ローディングシステム10の接続先である他方の設備80のマニホールド82と着脱可能に接続される。
【0046】
第1スイベルユニット18の2つのスイベルジョイント20、22が回転可能な方向は、ローディングシステム10の接続先へ向きを調整するための水平回転方向と、接続先へ接近するための前後回転方向とであり、第2スイベルユニット26のスイベルジョイント27が回転可能な方向は、同じく接続先へ接近するための前後回転方向である。第3スイベルユニット28は、3つのスイベルジョイント30、32、34による3軸回転によって実質的にあらゆる方向に回転する。このような構成において、接続部16が接続先設備80のマニホールド82に接続されると、インボードアーム12が第1スイベルユニット18を介して前傾姿勢になり、このインボードアーム12に対してアウトボードアーム14が第2スイベルユニット26を介して開いた状態になる。すると、バランス機構40が、アウトボードアーム14をインボードアーム12側へ閉じるような力を付加するため、接続先設備80のマニホールド82側に、ローディングシステム10の過度な荷重がかからないようにバランスをとることができ、接続部16をマニホールド82に接続したままローディングシステム10を自立させることができる。これにより、カウンターウェイトが不要になり、更に重心が低いことでベースライザーも不要になるため、ローディングシステム10の省スペース化を図ることができる。しかも、カウンターウェイトが船上などの他の機器へ干渉することもなく、重量が軽減されて設置設備への負荷も抑えることができるため、桟橋や岸壁といった陸上設備のみではなく、船舶や浮体式貯蔵設備などの水上設備にも問題なく設置することが可能となる。更に、バランス機構40によりバランスが保たれているため、少ない人数で操作することができ、ホースでの荷役作業に比べて省力化を図ることができる。
【0047】
又、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10は、バランス機構40がスプリング42及びワイヤ44を含み、ワイヤ44は、インボードアーム12が第1スイベルユニット18を介して接続先の設備80へ向かう前傾姿勢になるにつれて、スプリング42を伸長する方向に付勢するように引き回されている。特にワイヤ44は、その一端がアウトボードアーム14に接続されると共に、その他端がスプリング42側に接続される。これにより、上述したように接続部16が接続先設備80のマニホールド82に接続されると、インボードアーム12が第1スイベルユニット18を介して前傾姿勢になり、このインボードアーム12に対してアウトボードアーム14が第2スイベルユニット26を介して開いた状態になる。このとき、スプリング42はワイヤ44によって伸長する方向に付勢されているため、スプリング42の収縮しようとする力がワイヤ44に作用し、ワイヤ44の一端が接続されたアウトボードアーム14に対して、インボードアーム12の方に引き戻される力が作用する。従って、アウトボードアーム14をインボードアーム12側へ閉じるような力を付加することができ、バランス機構40がスプリング42及びワイヤ44を利用した単純な構成にも関わらず、ローディングシステム10の省スペース化及び省力化を図ることができる。
【0048】
又、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10は、バランス機構40が、更に第1円盤リール46と可動顎部50及び固定顎部52とを含み、第1円盤リール46は、第1及び第2スイベルユニット18、26と同じ前後回転方向で回転可能に、第1スイベルユニット18近傍に取り付けられる。可動顎部50及び固定顎部52は、それらの先端間にスプリング42が取り付けられ、固定顎部52はそれ自体が少なくとも可動顎部50に対して位置が変化しない固定位置に設置される一方、可動顎部50は固定顎部52に対して先端の位置が変化するように設置される。すなわち、可動顎部50は、第1円盤リール46の回転と共に回動するように第1円盤リール46に取り付けられ、その回動する方向に応じて、可動顎部50の先端が固定顎部52の先端に対して開閉する如く動作する。このため、可動顎部50及び固定顎部52の先端間に取り付けられたスプリング42の伸縮と、固定顎部52に対する可動顎部50の開閉動作とは、連動することとなる。
【0049】
そして、ワイヤ44は、その他端側が第1円盤リール46の外周の少なくとも一部に巻き付けられた状態で第1円盤リール46に接続されていることで、以下のように動作する。すなわち、ワイヤ44は、スプリング42の収縮力によって可動顎部50が回動すると、可動顎部50の回動と共に第1円盤リール46が回転し、それによって第1円盤リール46に巻き取られる。これにより、インボードアーム12を前傾姿勢とは反対の後傾姿勢にさせる操作や、ワイヤ44の一端が接続されたアウトボードアーム14を引き込む操作といった、ワイヤ44の他端側が巻き取られるような操作に対して、スプリング42の収縮力を利用することができるため、そのような操作を必要とするローディングシステム10の格納作業などを容易にすることができる。
【0050】
更に、ワイヤ44は、インボードアーム12が前傾姿勢になるにつれて、上記の巻き取り方向とは反対の繰り出し方向に第1円盤リール46を回転させ、それによって可動顎部50の先端を固定顎部52の先端に対して開く方向に回動させる。すると、可動顎部50及び固定顎部52の先端間にあるスプリング42が伸長されるため、スプリング42の収縮しようとする力が、ワイヤ44を介して、前傾姿勢にあるインボードアーム12や、ワイヤ44の先端が接続されたアウトボードアーム14に伝わる。これにより、接続先設備80のマニホールド82側に対して、ローディングシステム10の過度な荷重がかかることを、より確実に防止することができる。従って、カウンターウェイトなどを利用していないにも関わらず、接続時のローディングシステム10をより安定して自立させることが可能となる。
【0051】
又、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10は、バランス機構40が、第1円盤リール46と平行に第2スイベルユニット26近傍に取り付けられる第2円盤リール48を更に含んでいる。又、固定顎部52は、第1スイベルユニット18の2つのスイベルジョイント20、22の間に位置する、水平回転方向の回転が可能であって前後回転方向の回転が不可能な半固定部位24に取り付けられ、その半固定部位24から前後回転方向の回転軸と平行な軸(側方向yと平行な軸)を中心とする放射方向外側へ延びている。更に、可動顎部50は、第1円盤リール46から、固定顎部52と同じく前後回転方向の回転軸と平行な軸を中心とする放射方向外側へ延びている。このため、固定顎部52及び可動顎部50は、第1スイベルユニット18近傍で、第1円盤リール46の回転軸と平行な回動軸で可動顎部50が回動するように設置されるものとなる。
【0052】
そして、ワイヤ44は、アウトボードアーム14に接続されたその一端から、前後回転方向の回転軸と平行な中心軸を有する第2円盤リール48の外周に掛け回された後、第1円盤リール46の外周に巻き付けられた状態で、ワイヤ44の他端が第1円盤リール46に接続されている。これにより、インボードアーム12が前傾及び後傾姿勢になるための第1スイベルユニット18の作動軸、アウトボードアーム14がインボードアーム12に対して開閉するための第2スイベルユニット26の作動軸、ワイヤ44が掛け回される第2円盤リール48の中心軸、ワイヤ44が巻き付けられる第1円盤リール46の回転軸、及び、可動顎部50の回動軸の全てが、前後回転方向の回転軸と平行になる。このため、ローディングシステム10の動きに対してバランス機構40を効率よく作用させることができ、ローディングシステム10の接続作業や格納作業を容易にすることができる。
【0053】
更に、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10は、第1円盤リール46の外周に巻き付けられるワイヤ44の他端側が、前後方向xを基準とする前方を右側とした側面視で、左回り方向で第1円盤リール46の外周に巻き付けられる。このため、ワイヤ44は、上記と同じ側面視で、第1円盤リール46が左回り方向に回転したときに巻き取られ、第1円盤リール46が右回り方向に回転したときに繰り出されることになる。又、前後方向xを基準として、固定顎部52は、第1スイベルユニット18の半固定部位24から後側斜め上方向に延び、可動顎部50は、固定顎部52よりも前側において、固定顎部52との間に取り付けられたスプリング42を開閉させるような位置に設置されている。より詳しくは、可動顎部50は、上記と同じ側面視で、第1円盤リール46の右回り方向の回転に伴って同方向に回動したときに、スプリング42を伸長させるような回転位相位置で第1円盤リール46に取り付けられている。これにより、ワイヤ44が巻き取り或いは繰り出しされる第1円盤リール46の具体的な回転方向に合わせて、スプリング42が開閉されるように固定顎部52及び可動顎部50を設置することができるため、省スペース化を図るローディングシステム10をより容易に実現することができる。
【0054】
又、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10は、インボードアーム12及びアウトボードアーム14の移動を補助する、クレーンなどの移動補助手段76によって吊り下げるための吊り部62が、第2スイベルユニット26近傍に設けられているものである。これにより、インボードアーム12を前傾姿勢や後傾姿勢にさせる移動や、インボードアーム12に対してアウトボードアーム14を開閉させるような移動を、吊り部62を介して接続される移動補助手段76により補助することができるため、ローディングシステム10を接続位置や格納位置に容易に移動させることができる。しかも、このようにして移動補助手段76を利用することにより、移動を補助するための油圧機構等をローディングシステム10自体に設ける必要がない。このため、従来は油圧機構が大部分を占めていたローディングシステム10のメンテナンス作業の負荷を軽減することができ、メンテナンス費用を抑制することが可能となる。更に、油圧作動油の漏洩による海洋汚染の可能性を排除することができ、環境への負荷を少なくすることもできる。
なお、アウトボードアーム14を開閉させるような移動をさせるときは、アウトボードアーム14に取り付けたロープを手動で動かして移動させてもよく、或いは、スプリング42にバー操作の機能を付加し、バーを取り付けて動かすことでアウトボードアーム14を開閉させるように移動させてもよい。
【0055】
しかも、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10は、更に第1規制部材64及び第2規制部材66を含むものであり、これらは何れも、格納状態のローディングシステム10の移動を規制するものである。すなわち、第1規制部材64は、格納時に後傾姿勢になるインボードアーム12に対して、アウトボードアーム14が第2スイベルユニット26を介して閉じるように移動するときの、アウトボードアーム14の移動限界位置を定め、その位置でアウトボードアーム14を保持するものである。又、第2規制部材66は、ローディングシステム10の格納時に、接続部16が第3スイベルユニット28を介して特に重力などの影響で前後回転方向へ回転して不安定な状態にならないように、接続部16の移動を規制して位置決めするものである。これにより、ローディングシステム10をより安定した状態で格納することができる。
【0056】
続いて、
図5を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るローディングシステム10´について説明する。
図5において、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10と同一部分、若しくは相当する部分については、同一の符号を付している。なお、本発明の第2の実施の形態に係るローディングシステム10´について、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10との相違部分のみ説明をすることとし、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10と同様の部分の構成や作用効果等については、説明を省略する。
【0057】
図5(a)には、格納状態にあるローディングシステム10´を示し、
図5(b)には、接続先のマニホールド82(
図4参照)は図示していないものの、接続状態にあるローディングシステム10´を示している。図示のように、ローディングシステム10´は、ローディングシステム10と同様に、バランス機構40として、スプリング42、ワイヤ44、第1円盤リール46、第2円盤リール48、可動顎部50、及び固定顎部52を含んでいる。しかしながら、ローディングシステム10´は、可動顎部50及び固定顎部52の取り付け位置と、第1円盤リール46に対するワイヤ44の他端側の巻き付け方向とが、ローディングシステム10と異なっている。
【0058】
具体的に、ローディングシステム10´の可動顎部50は、第1円盤リール46の回転と共に側方向(紙面と直交する方向)に延びる軸を回動軸として回動するように、第1円盤リール46に取り付けられており、
図5(a)の状態では、第1円盤リール46から後側斜め上方向に延びている。又、固定顎部52は、第1スイベルユニット18の半固定部位24に固定され、この半固定部位24から前側斜め下方向に延びている。このため、第1円盤リール46が回転すると、可動顎部50の先端が固定顎部52の先端に対して開閉する方向に回動するようになっており、それらの先端間にスプリング42が接続されている。
【0059】
ワイヤ44は、その一端が接続部材60に接続され、第2円盤リール48の外周に掛け回された後、第1円盤リール46の外周に巻き付けられた状態で、他端が第1円盤リール46に接続されている。このとき、ワイヤ44の他端側は、
図5のような側面視で右回り方向に、第1円盤リール46の外周の少なくとも一部に巻き付けられて、第1円盤リール46に接続されている。このため、第2円盤リール48から第1円盤リール46へ至る際に、ワイヤ44は、
図5のような側面視で、インボードアーム12と平行ではなく、インボードアーム12と交差するように引き回されている。
【0060】
上記のような構成により、本発明の第2の実施の形態に係るローディングシステム10´は、
図5(a)のような格納状態において、インボードアーム12に対してアウトボードアーム14が閉じていることで、ワイヤ44の第2円盤リール48の外周に掛け回されている部分の長さが、インボードアーム12に対してアウトボードアーム14が開いている場合よりも多くなる。これによって、接続部材60に接続されたワイヤ44の一端側が僅かに引っ張られることになり、ワイヤ44の他端側が巻き付けられて接続された第1円盤リール46に、
図5(a)のような側面視で左回り方向(ワイヤ44の繰り出し方向)への付勢力がかかる。すると、第1円盤リール46に取り付けられた可動顎部50に対して、第1円盤リール46の回転方向と同じ方向、換言すれば、固定顎部52の先端に対して可動顎部50の先端が広がるような方向への付勢力がかかり、それらの先端間に接続されたスプリング42が僅かに伸長した状態になる。
【0061】
又、
図5(b)のような接続状態において、ローディングシステム10´は、インボードアーム12が前傾姿勢になっていることで、ワイヤ44が前方へ引っ張られるため、第1円盤リール46が
図5(b)のような側面視で左回り方向(ワイヤ44の繰り出し方向)へ付勢されている。すると、第1円盤リール46に取り付けられた可動顎部50が、第1円盤リール46の回転方向と同じ左回り方向へ回動するように付勢されるため、固定顎部52の先端に対して可動顎部50の先端が広がるような方向への付勢力がかかり、それらの先端間に接続されたスプリング42が伸長する方向へ付勢される。これにより、スプリング42の収縮しようとする力が、インボードアーム12やアウトボードアーム14を後側へ引き戻そうとする力として作用する。
【0062】
上記構成をなす本発明の第2の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の第2の実施の形態に係るローディングシステム10´は、第1円盤リール46の外周に巻き付けられるワイヤ44の他端側が、前後方向xを基準とする前方を右側とした側面視で、右回り方向で第1円盤リール46の外周に巻き付けられる。このため、ワイヤ44は、上記と同じ側面視で、第1円盤リール46が右回り方向に回転したときに巻き取られ、第1円盤リール46が左回り方向に回転したときに繰り出されることになる。
【0063】
又、前後方向xを基準として、固定顎部52は、第1スイベルユニット18の半固定部位24から前側斜め下方向に延び、可動顎部50は、固定顎部52よりも後側において、固定顎部52との間に取り付けられたスプリング42を開閉させるような位置に設置されている。より詳しくは、可動顎部50は、上記と同じ側面視で、第1円盤リール46の左回り方向の回転に伴って同方向に回動したときに、スプリング42を伸長させるような回転位相位置で第1円盤リール46に取り付けられている。このように、ワイヤ44が巻き取り或いは繰り出しされる第1円盤リール46の回転方向が、本発明の第1の実施の形態に係るローディングシステム10と反対であっても、スプリング42が開閉されるように固定顎部52及び可動顎部50を問題なく設置することができるため、これによっても省スペース化を図るローディングシステム10´を容易に実現することが可能となる。
【0064】
ここで、本発明の実施の形態に係るローディングシステム10、10´は、
図1〜
図5に示した構成に限定されるものではなく、別の構成であってもよい。例えば、バランス機構40は、インボードアーム12及びアウトボード14が
図3や
図5(b)のような状態にあるときに、アウトボードアーム14をインボードアーム12側へ閉じるような力を付加するものであれば、スプリング42やワイヤ44を利用していなくてもよい。この場合は、それらに替えて、ギヤ、リンク、油圧などの各種の機構を用いたものであってもよい。又、バランス機構40は、スプリング42やワイヤ44を利用する構成において、インボードアーム12が前傾姿勢になるにつれて、ワイヤ44がスプリング42を伸長する方向に付勢するように引き回されていれば、第1円盤リール46、第2円盤リール48、可動顎部50、及び固定顎部52の一部を含まなくてもよく、それらが別の構成部材に置き換わっていてもよい。又、移動の補助に利用される移動補助手段76は、
図4に示したような常設タイプのクレーンに限定されるものではなく、移動式のクレーンや他の重機であってもよい。更に、格納状態で使用される第1規制部材64や第2規制部材66の構成も、アウトボードアーム14や接続部16の移動を規制して位置決めするものであれば任意である。
【解決手段】ローディングシステム10は、一方の設備の流体貯蔵部側へ接続されるインボードアーム12と、アウトボードアーム14と、他方の設備のマニホールドと着脱可能に接続される接続部16とを含み、それらの間が第1〜第3のスイベルユニット18、26、28を介して接続され、更にスプリング42及びワイヤ44を含むバランス機構40を含んでいる。そして、ワイヤ44は、インボードアーム12が前傾姿勢になるにつれて、スプリング42を伸長する方向に付勢するように、一端がアウトボードアーム14に他端がスプリング42側に接続される。このため、マニホールド側に過度な荷重がかからないように、スプリング42の収縮力によりバランスをとることができ、カウンターウェイト等が不要になるため、ローディングシステム10の省スペース化及び省力化を図ることができる。