(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の三次元造形物製造用組成物を用いて層を形成する層形成工程と、前記層中に含まれる前記溶剤を除去する溶剤除去工程とを含む一連の工程を繰り返し行うことを特徴とする三次元造形物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付する図面を参照しつつ、好適な実施形態について詳細な説明をする。
《三次元造形物の製造方法》
まず、本発明の三次元造形物の製造方法について説明する。
【0029】
図1〜
図10は、本発明の好適な実施形態の三次元造形物の製造方法の工程を模式的に示す縦断面図である。
図11は、本発明の好適な実施形態の三次元造形物の製造方法を示すフローチャートである。
【0030】
本実施形態の三次元造形物10の製造方法では、三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)1’を用いて層1を形成する層形成工程(
図1、
図2、
図4、
図5参照)と、層1中に含まれる溶剤を除去する溶剤除去工程(
図3、
図6参照)とを含む一連の工程を繰り返し行い積層体50を得(
図7参照)、その後、積層体50に対して、積層体50(層1)中に含まれる粒子同士を接合する接合工程(
図9参照)を行う。
【0031】
そして、層1の形成に、複数個の粒子(主材粒子)と、当該粒子を分散させる溶剤と、ナノセルロースとを含む三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)1’を用いる。
【0032】
これにより、優れた生産性で寸法精度、信頼性に優れた三次元造形物10を製造することができる三次元造形物10の製造方法を提供することができる。
【0033】
なお、本発明において、溶剤とは、粒子を分散することができる液体(分散媒)であり、揮発性の液体のことをいう。
【0034】
特に、本実施形態では、層形成工程は、三次元造形物製造用組成物1’として、三次元造形物10の実体部(接合部)2の形成に用いる実体部形成用組成物1B’、および、実体部2となるべき部位を支持するサポート部(支持部、サポート材)5の形成に用いるサポート部形成用組成物1A’を用いて行い、サポート部形成用組成物1A’を吐出して第1のパターン(サポート部用パターン)1Aを形成する第1のパターン形成工程(サポート部用パターン形成工程)と、実体部形成用組成物1B’を吐出して第2のパターン(実体部用パターン)1Bを形成する第2のパターン形成工程(実体部用パターン形成工程)とを有している。
【0035】
そして、三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)1’としての実体部形成用組成物1B’およびサポート部形成用組成物1A’のうち少なくとも一方が、複数個の粒子(主材粒子)と、当該粒子を分散させる溶剤と、ナノセルロースとを含んでいる。
これにより、三次元造形物の寸法精度、信頼性をより向上させることができる。
【0036】
以下、各工程について詳細に説明する。
≪第1のパターン形成工程≫
第1のパターン形成工程では、サポート部形成用組成物1A’を、例えば、ステージM41の平面M410上に吐出して第1のパターン1Aを形成する。
【0037】
このように、第1のパターン1Aを、サポート部形成用組成物1A’の吐出により形成することで、微細な形状、複雑な形状を有するパターンであっても好適に形成することができる。
【0038】
サポート部形成用組成物1A’が、複数個の粒子(主材粒子)と、当該粒子を分散させる溶剤と、ナノセルロースとを含んでいる場合、言い換えると、サポート部形成用組成物1A’が本発明の三次元造形物製造用組成物である場合、サポート部形成用組成物1A’中における溶剤の含有率が比較的高い場合であっても、サポート部形成用組成物1A’の粘度を好適な値に容易に調整することができ、サポート部形成用組成物1A’中における粒子等の分散状態を良好にすることができ、サポート部形成用組成物1A’中における不本意な組成のばらつきや、吐出で形成される第1のパターン1Aにおける不本意な組成のばらつきを効果的に抑制することができる。また、サポート部形成用組成物1A’を吐出するノズルに固形分が固着することを効果的に防止することができ、長期間にわたって安定的なサポート部形成用組成物1A’の吐出を行うことができる。
【0039】
サポート部形成用組成物1A’の吐出方法は、特に限定されず、例えば、インクジェット装置等を用いて行うこともできるが、ディスペンサーにより吐出するのが好ましい。
【0040】
このように、ディスペンサーを用いてサポート部形成用組成物1A’の吐出を行うことにより、高粘度のサポート部形成用組成物1A’であっても好適に供給(吐出)することができ、サポート部形成用組成物1A’が目的の部位に接触した後の当該サポート部形成用組成物1A’のダレ等をより効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。また、高粘度のサポート部形成用組成物1A’を用いることにより、厚みが比較的大きい層1を容易に形成することができ、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0041】
特に、サポート部形成用組成物1A’が、複数個の粒子(主材粒子)と、当該粒子を分散させる溶剤と、ナノセルロースとを含んでいる場合、言い換えると、本発明の三次元造形物製造用組成物としてのサポート部形成用組成物1A’をディスペンサーにより吐出する場合、より高い安定性でサポート部形成用組成物1A’を吐出することができるとともに、比較的高粘度のサポート部形成用組成物1A’を用いることができることから、層1の形状の安定性も向上し、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度がさらに向上する。
【0042】
サポート部形成用組成物1A’は、例えば、ペースト状をなしていてもよい。
本工程におけるサポート部形成用組成物1A’の粘度は、100mPa・s以上1000000mPa・s以下であるのが好ましく、500mPa・s以上100000mPa・s以下であるのがより好ましく、1000mPa・s以上20000mPa・s以下であるのがさらに好ましい。
【0043】
これにより、例えば、サポート部形成用組成物1A’の吐出安定性をより向上させることができるとともに、適度な厚みを有する層1の形成に好適であり、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。また、被着体に接触したサポート部形成用組成物1A’が過剰に濡れ広がることがより効果的に防止され、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。このような粘度は、サポート部形成用組成物1A’が本発明の三次元造形物製造用組成物(ナノセルロースを含む三次元造形物製造用組成物)であることにより、後の工程での除去が容易な溶剤の含有率を比較的高くしつつ、容易かつ確実に実現することができる。
【0044】
なお、本明細書中において、粘度とは、特に条件の指定がない限り、せん断速度:10[s
−1]という条件で、レオメーターを用いて測定される値をいう。
【0045】
本工程では、サポート部形成用組成物1A’を、連続体状に吐出してもよいし、複数の液滴として吐出してもよいが、複数の液滴として吐出するのが好ましい。
【0046】
これにより、例えば、微細な構造を有する三次元造形物10の製造にもより好適に対応することができ、三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0047】
本工程でサポート部形成用組成物1A’を複数の液滴として吐出する場合、吐出される液滴の1滴あたりの体積は、1pL以上100000pL(100nL)以下であるのが好ましく、10pL以上5000pL(5nL)以下であるのがより好ましい。
【0048】
これにより、例えば、微細な構造を有する三次元造形物10の製造にもより好適に対応することができ、三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができるとともに、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0049】
三次元造形物10の製造においては、サポート部形成用組成物1A’として、複数種の組成物を用いてもよい。
なお、サポート部形成用組成物1A’については、後に詳述する。
【0050】
≪第2のパターン形成工程≫
第2のパターン形成工程では、実体部形成用組成物1B’を吐出して第2のパターン1Bを形成する。
【0051】
このように、第2のパターン1Bを、実体部形成用組成物1B’の吐出により形成することで、微細な形状、複雑な形状を有するパターンであっても好適に形成することができる。
【0052】
特に、本実施形態では、第1のパターン1Aで取り囲まれた領域に実体部形成用組成物1B’を吐出し、第2のパターン1Bの周囲全体が、第1のパターン1Aと接触するようにする。
【0053】
これにより、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0054】
実体部形成用組成物1B’が、複数個の粒子(主材粒子)と、当該粒子を分散させる溶剤と、ナノセルロースとを含んでいる場合、言い換えると、実体部形成用組成物1B’が本発明の三次元造形物製造用組成物である場合、実体部形成用組成物1B’中における溶剤の含有率が比較的高い場合であっても、実体部形成用組成物1B’の粘度を好適な値に容易に調整することができ、実体部形成用組成物1B’中における粒子等の分散状態を良好にすることができ、実体部形成用組成物1B’中における不本意な組成のばらつきや、吐出で形成される第2のパターン1Bにおける不本意な組成のばらつきを効果的に抑制することができる。また、実体部形成用組成物1B’を吐出するノズルに固形分が固着することを効果的に防止することができ、長期間にわたって安定的な実体部形成用組成物1B’の吐出を行うことができる。
【0055】
実体部形成用組成物1B’の吐出方法は、特に限定されず、例えば、インクジェット装置等を用いて行うこともできるが、ディスペンサーにより吐出するのが好ましい。
【0056】
このように、ディスペンサーを用いて実体部形成用組成物1B’の吐出を行うことにより、高粘度の実体部形成用組成物1B’であっても好適に供給(吐出)することができ、実体部形成用組成物1B’が目的の部位に接触した後の当該実体部形成用組成物1B’のダレ等をより効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。また、高粘度の実体部形成用組成物1B’を用いることにより、厚みが比較的大きい層1を容易に形成することができ、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0057】
特に、実体部形成用組成物1B’が複数個の粒子(主材粒子)と、当該粒子を分散させる溶剤と、ナノセルロースとを含んでいる場合、言い換えると、本発明の三次元造形物製造用組成物としての実体部形成用組成物1B’をディスペンサーにより吐出する場合、より高い安定性で実体部形成用組成物1B’を吐出することができるとともに、比較的高粘度の実体部形成用組成物1B’を用いることができることから、層1の形状の安定性も向上し、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度がさらに向上する。
実体部形成用組成物1B’は、例えば、ペースト状をなしていてもよい。
【0058】
本工程における実体部形成用組成物1B’の粘度は、100mPa・s以上1000000mPa・s以下であるのが好ましく、500mPa・s以上100000mPa・s以下であるのがより好ましく、1000mPa・s以上20000mPa・s以下であるのがさらに好ましい。
【0059】
これにより、例えば、実体部形成用組成物1B’の吐出安定性をより向上させることができるとともに、適度な厚みを有する層1の形成に好適であり、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。また、被着体に接触した実体部形成用組成物1B’が過剰に濡れ広がることがより効果的に防止され、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。このような粘度は、実体部形成用組成物1B’が本発明の三次元造形物製造用組成物(ナノセルロースを含む三次元造形物製造用組成物)であることにより、後の工程での除去が容易な溶剤の含有率を比較的高くしつつ、容易かつ確実に実現することができる。
【0060】
本工程では、実体部形成用組成物1B’を、連続体状に吐出してもよいし、複数の液滴として吐出してもよいが、複数の液滴として吐出するのが好ましい。
【0061】
これにより、例えば、微細な構造を有する三次元造形物10の製造にもより好適に対応することができ、三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0062】
本工程で実体部形成用組成物1B’を複数の液滴として吐出する場合、吐出される液滴の1滴あたりの体積は、1pL以上100000pL(100nL)以下であるのが好ましく、10pL以上5000pL(5nL)以下であるのがより好ましい。
【0063】
これにより、例えば、微細な構造を有する三次元造形物10の製造にもより好適に対応することができ、三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができるとともに、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0064】
三次元造形物10の製造においては、実体部形成用組成物1B’として、複数種の組成物を用いてもよい。
【0065】
これにより、例えば、三次元造形物10の各部位に求められる特性に応じて、材料を組み合わせることができ、三次元造形物10全体としての特性(外観、機能性(例えば、弾性、靱性、耐熱性、耐腐食性等)等を含む)をより向上させることができる。
【0066】
なお、実体部形成用組成物1B’については、後に詳述する。
上記のような第1のパターン形成工程、第2のパターン形成工程を行うことにより、第1のパターン1A、第2のパターン1Bを有する層1が形成される。言い換えると、層形成工程は、第1のパターン形成工程および第2のパターン形成工程を有している。
【0067】
サポート部形成用組成物1A’、実体部形成用組成物1B’を用いて形成される各層1の厚みは、特に限定されないが、10μm以上500μm以下であるのが好ましく、20μm以上250μm以下であるのがより好ましい。
【0068】
これにより、三次元造形物10の生産性を向上させつつ、三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0069】
≪溶剤除去工程≫
溶剤除去工程では、層1中に含まれる溶剤を除去する。
【0070】
これにより、層1の流動性が低下し、層1の形状の安定性が向上する。特に、実体部形成用組成物1B’およびサポート部形成用組成物1A’のうち少なくとも一方がナノセルロースを含んでいる。このため、本工程で溶剤が除去されることにより、ナノセルロースが粒子同士を仮結合するバインダーとして機能することができ、層1の形状の安定性をさらに向上させることができる。また、層1中にナノセルロースが含まれることにより、本工程において層1から溶剤が除去される過程においても、溶剤の除去の進行に伴う層1の粘度の上昇率は、特に高くなる。したがって、本工程中での層1の不本意な変形もより効果的に防止される。これらの効果が相乗的に作用することにより、最終的に、寸法精度に優れた三次元造形物10を得ることができる。上記のような効果は、実体部形成用組成物1B’およびサポート部形成用組成物1A’の両方がナノセルロースを含んでいる場合に、より顕著に発揮される。
【0071】
溶剤の除去の方法としては、例えば、層1の加熱や、層1への赤外線の照射、層1を減圧下に置くこと、乾燥空気等のような液体成分の含有率の低いガス(例えば、相対湿度30%以下のガス等)を供給すること等が挙げられる。また、これらから選択される2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0072】
図示の構成では、加熱手段から熱エネルギーEを供給することにより、層1を加熱している。
【0073】
また、本実施形態では、溶剤除去工程を(複数の層1に対して一括で行うのではなく)各層1について逐次行う。すなわち、層形成工程を含む一連の繰り返し工程中に溶剤除去工程が含まれる。
【0074】
これにより、複数の層1を備える積層体50の内部に比較的多くの溶剤が不本意に残存することをより効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をさらに向上させることができる。また、層1を積層して得られる積層体50において、不本意な変形が生じることをより効果的に防止することができる。
【0075】
なお、本工程においては、層1中に含まれる溶剤を、完全に除去する必要はない。このような場合でも、後の工程で残存する溶剤を十分に除去することができる。溶剤が揮発することで、層1中に含まれる溶剤量に対して溶解しているバインダー量が相対的に上昇し、粒子同士を仮結合する機能が発現されている状態も含む。
【0076】
本工程後の層1中における溶剤の含有率は、0.1質量%以上25質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるのがより好ましい。
【0077】
これにより、後の工程での溶剤の急激な揮発(突沸等)等に伴う不本意な変形を効果的に防止し、より確実に寸法精度に優れた三次元造形物10を得ることができ、三次元造形物10の信頼性をより向上させることができるとともに、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0078】
三次元造形物10の製造においては、層形成工程(第1のパターン形成工程および第2のパターン形成工程)および溶剤除去工程を含む一連の工程を所定回数だけ繰り返し行い、複数の層1が積層された積層体50を得る(
図7参照)。
【0079】
すなわち、すでに形成された層1上に新たな層1を形成すべきか否かを判断し、形成すべき層1がある場合には新たな層1を形成し、形成すべき層1がない場合には積層体50に対して後に詳述する工程を行う。
【0080】
≪脱バインダー工程≫
本実施形態では、上記のようにして層形成工程(第1のパターン形成工程および第2のパターン形成工程)および溶剤除去工程を含む一連の工程を繰り返し行うことにより得られた積層体50に対して、バインダーとしての機能を有する成分を除去する脱バインダー処理を施す脱バインダー工程を有している(
図8参照)。これにより、脱バインダー体70が得られる。このような脱バインダー体70を得ることにより、後の焼結工程(接合工程)をより好適に行うことができる。
【0081】
また、本工程に供される積層体50は、前述した溶剤除去工程により、溶剤の含有率が十分に低くなっているため、脱バインダー工程における不本意な変形(例えば、溶剤の急激な揮発に伴う変形等)が効果的に防止される。
【0082】
また、例えば、脱バインダー工程を行うことにより、最終的に得られる三次元造形物10中にバインダー(ナノセルロースを含む)やその分解物が不本意に残存することをより効果的に防止することができる。
【0083】
なお、本明細書において、脱バインダー体とは、所定の形状に成形された成形体(積層体50)に対し、バインダーを除去するための処理(脱バインダー処理)を施すことにより得られた物のことをいう。脱バインダー処理では、成形体(積層体50)中に含まれるバインダー(ナノセルロースを含む)のうちの少なくとも一部を除去すればよく、脱バインダー体70には、バインダーの一部が残存していてもよい。
【0084】
特に、本発明の三次元造形物製造用組成物(複数個の粒子(主材粒子)と、当該粒子を分散させる溶剤と、ナノセルロースとを含む組成物)を用いて層1を形成することにより、三次元造形物製造用組成物中におけるバインダー量を比較的少なくすることができるため、本工程で、短時間で効率よくバインダー(ナノセルロースを含む)を除去することができる。また、脱バインダーの処理条件を緩和した場合でも、バインダーを効率よく除去することができる。このようなことから、三次元造形物10の生産性を向上させつつ、三次元造形物10の信頼性を向上させることができる。
【0085】
脱バインダー処理は、積層体50中に含まれるバインダーを除去する方法であればいかなる方法で行ってもよいが、酸素、硝酸ガス等の酸化性雰囲気の他、非酸化性雰囲気中、例えば真空または減圧状態下(例えば1.33×10
−4Pa以上13.3Pa以下)、または、窒素ガス、アルゴンガス等のガス中で、熱処理を行うことによりなされる。
【0086】
また、脱バインダー工程(熱処理)における処理温度は、特に限定されないが、100℃以上750℃以下であるのが好ましく、150℃以上600℃以下であるのがより好ましい。
【0087】
これにより、脱バインダー工程における積層体50、脱バインダー体70の不本意な変形をより確実に防止することができ、脱バインダー処理をより効率よく進行させることができる。その結果、より優れた寸法精度の三次元造形物10をより優れた生産性で製造することができる。
【0088】
また、脱バインダー工程(熱処理)における処理時間(熱処理時間)は、0.5時間以上10時間以下であるのが好ましく、1時間以上5時間以下であるのがより好ましい。
【0089】
これにより、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。また、脱バインダー体70におけるバインダーの残存率を十分に低くすることができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより向上させることができる。
【0090】
また、このような熱処理によるバインダーの除去は、種々の目的(例えば、処理時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で処理するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
【0091】
≪焼結工程(接合工程)≫
本実施形態では、脱バインダー工程で得られた脱バインダー体70中に含まれる粒子(主材粒子)同士を接合するための接合処理を施す接合工程としての焼結工程を有している。
【0092】
これにより、脱バインダー体70中に含まれる粒子同士が接合(焼結)されて接合部(実体部)2が形成され、焼結体としての三次元造形物10が製造される(
図9参照)。
【0093】
このように接合部2が形成されることにより、粒子が強固に接合した構造を有し、機械的強度等の特性が特に優れた三次元造形物10を得ることができる。
【0094】
また、前述した工程まででバインダーが残存している場合であっても、接合処理(焼結処理)により、バインダーを確実に除去することができる。その結果、三次元造形物10中にバインダーが不本意に残存することを防止することができ、三次元造形物10の信頼性をより高くすることができる。
【0095】
特に、本実施形態では、接合処理を、層1を複数備えた積層体(脱バインダー体70)に対して施す。言い換えると、本実施形態では、前記一連の工程を繰り返し行った後に、前記粒子同士を接合する接合処理を施す接合工程を有している。
これにより、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0096】
焼結工程は、加熱処理により行う。
焼結工程での加熱は、脱バインダー体70を構成する粒子の構成材料の融点以下の温度で行うのが好ましい。
【0097】
これにより、積層体の形状を崩すことなく粒子の接合をより効率よく行うことができる。
【0098】
焼結工程での加熱処理は、通常、脱バインダー工程での加熱処理よりも高い温度で行う。
【0099】
粒子の構成材料の融点をTm[℃]としたとき、焼結工程での加熱温度は、(Tm−200)℃以上(Tm−50)℃以下であるのが好ましく、(Tm−150)℃以上(Tm−70)℃以下であるのがより好ましい。
【0100】
これにより、より短時間の加熱処理でより効率よく粒子の接合を行うことができるとともに、焼結工程における脱バインダー体70の不本意な変形をより効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0101】
なお、粒子が複数の成分を含む場合には、前記融点としては、最も含有率の高い成分の融点を採用することができる。
【0102】
焼結工程での加熱時間は、特に限定されないが、30分以上5時間以下であるのが好ましく、1時間以上3時間以下であるのがより好ましい。
【0103】
これにより、粒子同士の接合を十分に進行させつつ本工程における不本意な変形をより効果的に防止することができ、三次元造形物10の機械的強度、寸法精度をより高いレベルで両立することができるとともに、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0104】
また、焼結処理時の雰囲気は、特に限定されないが、非酸化性雰囲気、例えば真空または減圧状態下(例えば1.33×10
−4Pa以上133Pa以下)、または、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス、必要に応じて水素等の還元性ガス雰囲気とすることができる。
【0105】
また、焼結工程は、2段階またはそれ以上に分けて行ってもよい。これにより、焼結の効率が向上し、より短い処理時間で焼結(焼成)を行うことができる。
【0106】
また、焼結工程は、前述の脱バインダー工程と連続して行ってもよい。
これにより、脱バインダー工程は、焼結前工程を兼ねることができ、脱バインダー体70に予熱を与えて、脱バインダー体70をより確実に焼結させることができる。
【0107】
また、このような焼結工程は、種々の目的(例えば、焼成時間の短縮等の目的)で、複数の工程(段階)に分けて行ってもよい。この場合、例えば、前半を低温で、後半を高温で焼成するような方法や、低温と高温を繰り返し行う方法等が挙げられる。
【0108】
≪サポート部除去工程≫
その後、後処理として、サポート部5(第1のパターン形成工程で形成された第1のパターン1A)を除去する。これにより、三次元造形物10が取り出される(
図10参照)。
【0109】
本工程の具体的な方法としては、例えば、サポート材5を機械的に破壊する方法、サポート材5を化学的に分解する方法、サポート材5を溶解する方法、刷毛等でサポート部5を払い除ける方法、サポート部5を吸引により除去する方法、空気等の気体を吹き付ける方法、水等の液体を付与する方法(例えば、液体中に前記のようにして得られたサポート部5と脱バインダー体70との複合物を浸漬する方法、液体を吹き付ける方法等)、超音波振動等の振動を付与する方法等が挙げられる。また、これらから選択される2種以上の方法を組み合わせて行うことができる。
【0110】
なお、サポート部除去工程を、前述した焼結工程前に行う場合、粉末状のサポート材の中に埋没させた状態で焼結工程を実施することも可能である。
【0111】
前述したような製造方法によれば、寸法精度、信頼性に優れた三次元造形物10を効率よく製造することができる。
【0112】
前述したような三次元造形物10の製造方法をフローチャートにまとめると、
図11のようになる。
【0113】
《三次元造形物製造用組成物》
次に、本発明の三次元造形物製造用組成物について説明する。
【0114】
三次元造形物の製造に複数種の三次元造形物製造用組成物を用いる場合、少なくとも1種の三次元造形物製造用組成物が、本発明の三次元造形物製造用組成物(複数個の粒子と、前記粒子を分散させる溶剤と、ナノセルロースとを含む組成物)であればよい。
【0115】
本実施形態では、三次元造形物製造用組成物として、実体部形成用組成物1B’と、サポート部形成用組成物1A’とを用いている。
【0116】
≪実体部形成用組成物≫
まず、三次元造形物10の製造に用いる三次元造形物製造用組成物としての実体部形成用組成物1B’について説明する。
【0117】
実体部形成用組成物1B’は、実体部2の形成(第2のパターン1Bの形成)に用いることができれば、その構成成分等は特に限定されないが、複数個の粒子(主材粒子)と粒子を分散する溶剤とを含んでいるのが好ましく、さらに、ナノセルロースを含んでいるのがより好ましい。
【0118】
以下の説明では、実体部形成用組成物1B’が複数個の粒子、溶剤およびナノセルロースを含む場合について、代表的に説明する。
【0119】
(粒子)
実体部形成用組成物1B’が、複数個の粒子を含むことにより、三次元造形物10の構成材料の選択の幅を拡げることができ、所望の物性、質感等を有する三次元造形物10を好適に得ることができる。例えば、溶媒に溶解した材料を用いて三次元造形物を製造する場合、使用することのできる材料に制限があるが、粒子を含む実体部形成用組成物1B’を用いることによりこのような制限を解消することができる。
【0120】
実体部形成用組成物1B’に含まれる粒子の構成材料としては、例えば、金属材料、金属化合物(セラミックス等)、樹脂材料、顔料等が挙げられる。
【0121】
実体部形成用組成物1B’は、金属材料、セラミックス材料のうち少なくとも一方を含む材料で構成された粒子を含むのが好ましい。
【0122】
これにより、例えば、三次元造形物10の質感(高級感)、機械的強度、耐久性等をより向上させることができる。また、これらの材料は、一般に、後に詳述するようなバインダー(ナノセルロースを含む)の分解温度で、十分な形状の安定性を有する。したがって、三次元造形物10の製造過程において、バインダーを確実に除去し、三次元造形物10中にバインダーが残存するのをより確実に防止しつつ、三次元造形物10の寸法精度をより確実に向上させることができる。
【0123】
特に、粒子が金属材料を含む材料で構成されていると、三次元造形物10の高級感、重量感、機械的強度、靱性等がさらに向上する。また、粒子の接合のためのエネルギーを付与した際の伝熱が効率よく進行するため、三次元造形物10の生産性を向上させつつ、各部位での不本意な温度のばらつきの発生をより効果的に防止することができ、三次元造形物10の信頼性をより向上させることができる。また、例えば、表面に水酸基やカルボキシル基を有している金属粒子の場合、ナノセルロースの水酸基やカルボキシル基と、金属粒子との結合がより向上し、後述するような、ナノセルロースが粒子の表面を被覆した構造を好適に形成することができる。
【0124】
粒子を構成する金属材料としては、例えば、マグネシウム、鉄、銅、コバルト、チタン、クロム、ニッケル、アルミニウムやこれらのうち少なくとも1種を含む合金(例えば、マルエージング鋼、ステンレス鋼、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル基調合金、アルミニウム合金等)等が挙げられる。
【0125】
粒子を構成する金属化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコン、酸化錫、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム等の各種金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の各種金属水酸化物;窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミニウム等の各種金属窒化物;炭化珪素、炭化チタン等の各種金属炭化物;硫化亜鉛等の各種金属硫化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種金属の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の各種金属の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の各種金属のケイ酸塩;リン酸カルシウム等の各種金属のリン酸塩;ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム等の各種金属のホウ酸塩や、これらの複合化物等が挙げられる。
【0126】
粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、シンジオタクチック・ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリエーテルニトリル、ポリアミド(ナイロン等)、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、液晶ポリマー、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0127】
粒子の形状は、特に限定されず、球状、紡錘形状、針状、筒状、鱗片状等、いかなる形状であってもよく、また、不定形であってもよいが、球状であるのが好ましい。
【0128】
粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上20μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上10μm以下であるのがより好ましい。
【0129】
これにより、実体部形成用組成物1B’の流動性がより好適になり、第2のパターン形成工程をより円滑に行うことができるとともに、接合工程での粒子の接合をより好適に行うことができる。また、例えば、層1中に含まれる溶剤やバインダー等の除去等を効率よく除去することができ、不本意に粒子以外の構成材料が最終的な三次元造形物10中に残存することをより効果的に防止することができる。このようなことから、三次元造形物10の生産性をより向上させつつ、製造される三次元造形物10の信頼性、機械的強度をより向上させることができ、製造される三次元造形物10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0130】
なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径を言い、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(COULTER ELECTRONICS INS製TA−II型)にて、50μmのアパチャーを用いて測定することにより求めることができる。
【0131】
粒子のDmaxは、0.2μm以上25μm以下であるのが好ましく、0.4μm以上15μm以下であるのがより好ましい。
【0132】
これにより、実体部形成用組成物1B’の流動性がより好適になり、第2のパターン形成工程をより円滑に行うことができるとともに、接合工程での粒子の接合をより好適に行うことができる。その結果、三次元造形物10の生産性をより向上させつつ、製造される三次元造形物10の機械的強度をより向上させることができ、製造される三次元造形物10における不本意な凹凸の発生等をより効果的に防止し、三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0133】
実体部形成用組成物1B’中における粒子の含有率は、30質量%以上93質量%以下であるのが好ましく、35質量%以上88質量%以下であるのがより好ましい。
【0134】
これにより、実体部形成用組成物1B’の取扱いのし易さをより向上させつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少なくすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0135】
なお、粒子は、三次元造形物10の製造過程(例えば、接合工程等)において、化学反応(例えば、酸化反応等)をする材料で構成されており、実体部形成用組成物1B’中に含まれる粒子の組成と、最終的な三次元造形物10の構成材料とで、組成が異なっていてもよい。
また、実体部形成用組成物1B’は、2種以上の粒子を含んでいてもよい。
【0136】
(溶剤)
実体部形成用組成物1B’が溶剤を含むことにより、実体部形成用組成物1B’中において粒子を好適に分散させることができ、ディスペンサー等による実体部形成用組成物1B’の吐出を安定的に行うことができる。
【0137】
溶剤は、実体部形成用組成物1B’中において粒子を分散させる機能(分散媒としての機能)を有していれば、特に限定されないが、例えば、水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸iso−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル等の酢酸エステル類;カルビトールやそのエステル化合物(例えば、カルビトールアセテート等)等のカルビトール類;セロソロブやそのエステル化合物(例えば、セロソロブアセテート等)等のセロソロブ類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等の一価アルコールや、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、ピコリン(α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン)、2,6−ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等)等のイオン液体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0138】
中でも、溶剤は、多価アルコールを含んでいるのが好ましい。
これにより、実体部形成用組成物1B’の吐出性をより優れたものとすることができる。また、溶剤に対するナノセルロースの親和性を向上させることができ、例えば、実体部形成用組成物1B’中において、ナノセルロースが粒子の表面の少なくとも一部を被覆している場合に、実体部形成用組成物1B’中における粒子の分散性を向上させることができる。
【0139】
特に、多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、1,3−ブチレングリコールから選択することが好ましい。
【0140】
実体部形成用組成物1B’中における溶剤の含有量は、5質量%以上68質量%以下であるのが好ましく、8質量%以上60質量%以下であるのがより好ましい。
【0141】
これにより、実体部形成用組成物1B’の取扱いのし易さをより向上させつつ、三次元造形物10の生産性をより向上させることができ、また、生産コスト、省資源の観点等からも特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0142】
(ナノセルロース)
ナノセルロースは、セルロースまたはセルロースの誘導体で構成され、その幅および厚さが100nm以下の繊維状物質であり、いわゆる、セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタルを含む概念である。
【0143】
このようなナノセルロースを含むことにより、比較的低い含有率で実体部形成用組成物1B’全体の粘度を好適な範囲に調整することができる。その結果、例えば、実体部形成用組成物1B’中における粒子の含有率やナノセルロース以外のバインダーの含有率を高くしなくても、実体部形成用組成物1B’の粘度を十分に高くすることができる。したがって、実体部形成用組成物1B’中における粒子の不本意な凝集や、実体部形成用組成物1B’中や三次元造形物10中における不本意な組成のばらつき等を効果的に防止しつつ、層1の不本意な変形を防止することができる。その一方で、ナノセルロースを含む実体部形成用組成物1B’はチクソ性を有し、吐出時のようにずり応力が加わる状態では、実体部形成用組成物1B’の粘度が低下し、安定的な吐出を行うことができる。また、実体部形成用組成物1B’中に含まれるバインダー量を少なくすることができるため、脱バインダーの処理を短時間で効率よく行うことができ、優れた生産性で三次元造形物10を製造することができるとともに、最終的に得られる三次元造形物10中にバインダーやその分解物等が不本意に残存することを効果的に防止することができる。また、以上のことから、寸法精度、信頼性に優れた三次元造形物10を得ることができる。また、ナノセルロースは、脱バインダー工程や接合工程において、還元炭素源として機能することができ、例えば、粒子が酸化されやすい金属材料等で構成されていても、三次元造形物10の製造過程における不本意な酸化反応の進行をより効果的に防止することができる。
【0144】
ナノセルロースの幅および厚さは、100nm以下であればよいが、1nm以上80nm以下であるのが好ましく、4nm以上70nm以下であるのがより好ましく、10nm以上50nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0145】
ナノセルロースの長さは、特に限定されないが、100nm以上であるのが好ましく、100nm以上50μm以下であるのがより好ましく、150nm以上30μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0146】
また、ナノセルロースの繊維のアスペクト比は、3以上2000以下であるのが好ましく、5以上1000以下であるのがより好ましく、7以上600以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0147】
ナノセルロースは、実体部形成用組成物1B’中において、粒子から独立して存在していてもよいが、粒子の表面を被覆しているのが好ましい。
【0148】
これにより、粒子の硬度が比較的高い場合(例えば、粒子が金属材料やセラミックス材料で構成されている場合等)に、ナノセルロースによる被覆層がクッション層として機能し、例えば、実体部形成用組成物1B’の吐出部(特に、ピストン式のディスペンサーやインクジェットのノズル)の摩耗を効果的に防止、抑制することができ、長期間にわたって安定的な実体部形成用組成物1B’の吐出を行うことができる。また、ナノセルロースのバインダーとしての効果がより効果的に発揮される。
【0149】
ナノセルロースが粒子の表面を被覆している場合、ナノセルロースによる粒子表面の被覆率は、20%以上100%以下であるのが好ましく、50%以上100%以下であるのがより好ましく、80%以上100%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0150】
実体部形成用組成物1B’中におけるナノセルロースの含有率は、0.02体積%以上0.42体積%以下であるのが好ましく、0.04体積%以上0.40体積%以下であるのがより好ましく、0.06体積%以上0.38体積%以下であるのがさらに好ましい。
【0151】
これにより、実体部形成用組成物1B’の保存性、吐出性をより向上させることができるとともに、三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。また、最終的な三次元造形物10中にナノセルロースが不本意に残存することをより確実に防止することができる。さらに、吐出時にフェブリル化してしまう現象を抑制することができる。
【0152】
(その他のバインダー)
前述したように、ナノセルロースは、溶剤が除去された状態において粒子同士を仮結合するバインダーとしての機能(溶剤が除去された状態で層1中において粒子同士を仮結合する機能)も有しているが、実体部形成用組成物1B’は、さらにナノセルロース以外にバインダーとして機能する成分(以下、「その他のバインダー」ともいう)を含んでいてもよい。
【0153】
これにより、溶剤が除去された状態において粒子同士を仮結合する力をより強くすることができ、粒子の不本意な飛散等をより効果的に防止することができる。
【0154】
その他のバインダーとしては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等の各種樹脂材料等を用いることができる。
【0155】
硬化性樹脂を含む場合、実体部形成用組成物1B’の吐出後であって接合工程よりも前のタイミングで、当該硬化性樹脂の硬化反応を行ってもよい。
【0156】
これにより、実体部形成用組成物1B’を用いて形成されたパターンの不本意な変形をさらに効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をさらに向上させることができる。
【0157】
硬化性樹脂の硬化反応を進行させる硬化処理は、例えば、加熱や紫外線等のエネルギー線の照射により行うことができる。
【0158】
硬化性樹脂としては、例えば、各種熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を好適に用いることができる。
【0159】
硬化性樹脂(重合性化合物)としては、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等を用いることができる。
【0160】
硬化性樹脂(重合性化合物)としては、エネルギー線の照射により、重合開始剤から生じるラジカル種またはカチオン種等により、付加重合または開環重合が開始され、重合体を生じるものが好ましく使用される。付加重合の重合様式として、ラジカル、カチオン、アニオン、メタセシス、配位重合が挙げられる。また、開環重合の重合様式として、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシス、配位重合が挙げられる。
【0161】
実体部形成用組成物1B’中において、その他のバインダーは、いかなる形態で含まれていてもよいが、液状(例えば、溶融状態、溶解状態等)をなすのが好ましい。すなわち、分散媒の構成成分として含まれているのが好ましい。
【0162】
これにより、その他のバインダーは、粒子を分散する分散媒として機能することができ、実体部形成用組成物1B’の保存性をより向上させることができる。
【0163】
その他のバインダーの具体例としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、PLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等が挙げられる。
【0164】
特に、ポリビニルアルコールを含むことにより、層1の表面の平滑性を向上させることができ、三次元造形物10の寸法精度をさらに向上させることができる。
【0165】
実体部形成用組成物1B’中におけるその他のバインダーの含有率は、2.0質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以下であるのがより好ましく、0.5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0166】
これにより、最終的に得られる三次元造形物10における炭素残存量をより確実に低減させることができ、三次元造形物10の純度をより確実に向上させることができる。また、実体部形成用組成物1B’の保存性、吐出特性等をより向上させることができる。
【0167】
(その他の成分)
また、実体部形成用組成物1B’は、前述した以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、重合開始剤;分散剤;界面活性剤;増粘剤;凝集防止剤;消泡剤;スリップ剤(レベリング剤);染料;重合禁止剤;重合促進剤;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤等が挙げられる。
【0168】
≪サポート部形成用組成物≫
次に、三次元造形物10の製造に用いる三次元造形物製造用組成物としてのサポート部形成用組成物1A’について説明する。
【0169】
サポート部形成用組成物1A’は、サポート部5の形成(第1のパターン1Aの形成)に用いることができれば、その構成成分等は特に限定されないが、複数個の粒子(主材粒子)と粒子を分散する溶剤とを含んでいるのが好ましく、さらに、ナノセルロースを含んでいるのがより好ましい。
【0170】
以下の説明では、サポート部形成用組成物1A’が複数個の粒子、溶剤およびナノセルロースを含む場合について、代表的に説明する。
【0171】
(粒子)
サポート部形成用組成物1A’が、複数個の粒子を含むことにより、形成すべきサポート部5(第1のパターン1A)が微細な形状を有する場合等であっても、サポート部5を高い寸法精度で、効率よく形成することができる。また、サポート部5を構成する複数の粒子の隙間から、溶剤やバインダー(分解物を含む)を効率よく除去することができ、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。また、脱バインダー体70に不本意に溶剤、バインダー等が残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより向上させることができる。
【0172】
サポート部形成用組成物1A’中に含まれる粒子の構成材料としては、例えば、実体部形成用組成物1B’の構成材料として説明したのと同様の材料が挙げられる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
【0173】
ただし、サポート部形成用組成物1A’を構成する粒子は、実体部形成用組成物1B’を構成する粒子よりも高融点の材料で構成されているのが好ましい。
【0174】
粒子の形状は、特に限定されず、球状、紡錘形状、針状、筒状、鱗片状等、いかなる形状であってもよく、また、不定形であってもよいが、球状であるのが好ましい。
【0175】
粒子の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上20μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上10μm以下であるのがより好ましい。
【0176】
これにより、サポート部形成用組成物1A’の流動性がより好適になり、第1のパターン形成工程をより円滑に行うことができる。また、サポート部5(第1のパターン1A)を構成する複数の粒子の隙間から、溶剤やバインダー(分解物を含む)をより効率よく除去することができ、三次元造形物10の生産性をさらに向上させることができる。また、脱バインダー体70に不本意に溶剤、バインダー等が残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより向上させることができる。また、三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0177】
粒子のDmaxは、0.2μm以上25μm以下であるのが好ましく、0.4μm以上15μm以下であるのがより好ましい。
【0178】
これにより、サポート部形成用組成物1A’の流動性がより好適になり、サポート部形成用組成物1A’の供給をより円滑に行うことができる。また、サポート部5(第1のパターン1A)を構成する複数の粒子の隙間から、溶剤やバインダー(分解物を含む)をより効率よく除去することができ、三次元造形物10の生産性をさらに向上させることができる。また、脱バインダー体70に不本意に溶剤、バインダー等が残存することをより効果的に防止することができ、最終的に得られる三次元造形物10の信頼性をより向上させることができる。また、三次元造形物10の寸法精度をさらに向上させることができる。
【0179】
サポート部形成用組成物1A’中における粒子の含有率は、30質量%以上93質量%以下であるのが好ましく、35質量%以上88質量%以下であるのがより好ましい。
【0180】
これにより、サポート部形成用組成物1A’の取扱いのし易さをより向上させつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少なくすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0181】
なお、粒子は、三次元造形物10の製造過程において、化学反応(例えば、酸化反応等)をする材料で構成されていてもよい。
また、サポート部形成用組成物1A’は、2種以上の粒子を含んでいてもよい。
【0182】
(溶剤)
サポート部形成用組成物1A’が溶剤を含むことにより、サポート部形成用組成物1A’中において粒子を好適に分散させることができ、ディスペンサー等によるサポート部形成用組成物1A’の吐出を安定的に行うことができる。
【0183】
サポート部形成用組成物1A’中に含まれる溶剤としては、例えば、実体部形成用組成物1B’の構成材料として説明したのと同様のものが挙げられる。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
【0184】
なお、サポート部形成用組成物1A’中に含まれる溶剤の組成は、実体部形成用組成物1B’中に含まれる溶剤の組成と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0185】
サポート部形成用組成物1A’中における溶剤の含有量は、5質量%以上68質量%以下であるのが好ましく、8質量%以上60質量%以下であるのがより好ましい。
【0186】
これにより、サポート部形成用組成物1A’の取扱いのし易さをより向上させつつ、三次元造形物10の製造過程において除去される成分の量をより少なくすることができ、三次元造形物10の生産性、生産コスト、省資源の観点等から特に有利である。また、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。
【0187】
(ナノセルロース)
サポート部形成用組成物1A’がナノセルロースを含むことにより、前述したのと同様の効果が得られる。
【0188】
サポート部形成用組成物1A’がナノセルロースを含む場合、当該ナノセルロースは、実体部形成用組成物1B’の構成成分の項目で説明したのと同様の条件を満足するのが好ましい。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
【0189】
なお、サポート部形成用組成物1A’中に含まれるナノセルロースは、実体部形成用組成物1B’中に含まれるナノセルロースと同一の条件(例えば、組成や含有率等)を満足していてもよいし、異なる条件であってもよい。
【0190】
(その他のバインダー)
前述したように、ナノセルロースは、溶剤が除去された状態において粒子同士を仮結合するバインダーとしての機能(溶剤が除去された状態で層1中において粒子同士を仮結合する機能)も有しているが、サポート部形成用組成物1A’は、さらにナノセルロース以外にバインダーとして機能する成分(その他のバインダー)を含んでいてもよい。
【0191】
これにより、溶剤が除去された状態において粒子同士を仮結合する力をより強くすることができ、粒子の不本意な飛散等をより効果的に防止することができる。
【0192】
その他のバインダーとしては、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等の各種樹脂材料等を用いることができる。
【0193】
硬化性樹脂を含む場合、サポート部形成用組成物1A’の吐出後であって接合工程よりも前のタイミングで、当該硬化性樹脂の硬化反応を行ってもよい。
【0194】
これにより、サポート部形成用組成物1A’を用いて形成されたパターンの不本意な変形をさらに効果的に防止することができ、三次元造形物10の寸法精度をさらに向上させることができる。
【0195】
硬化性樹脂の硬化反応を進行させる硬化処理は、例えば、加熱や紫外線等のエネルギー線の照射により行うことができる。
【0196】
サポート部形成用組成物1A’が硬化性樹脂を含む場合、当該硬化性樹脂としては、例えば、実体部形成用組成物1B’の構成成分として説明したのと同様の材料を用いることができる。
【0197】
なお、サポート部形成用組成物1A’中に含まれる硬化性樹脂と、実体部形成用組成物1B’中に含まれる硬化性樹脂とは、同一の条件(例えば、同一の組成等)であってもよいし、異なる条件であってもよい。
【0198】
サポート部形成用組成物1A’中において、その他のバインダーは、いかなる形態で含まれていてもよいが、液状(例えば、溶融状態、溶解状態等)をなすのが好ましい。すなわち、分散媒の構成成分として含まれているのが好ましい。
【0199】
これにより、その他のバインダーは、粒子を分散する分散媒として機能することができ、サポート部形成用組成物1A’の保存性をより向上させることができる。
【0200】
その他のバインダーの具体例としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、PLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等が挙げられる。
【0201】
特に、ポリビニルアルコールを含むことにより、層1の表面の平滑性を向上させることができ、三次元造形物10の寸法精度をさらに向上させることができる。
【0202】
サポート部形成用組成物1A’中におけるその他のバインダーの含有率は、2.0質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以下であるのがより好ましく、0.5質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0203】
これにより、サポート部形成用組成物1A’の保存性、吐出特性等をより向上させることができる。
【0204】
(その他の成分)
また、サポート部形成用組成物1A’は、前述した以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、重合開始剤;分散剤;界面活性剤;増粘剤;凝集防止剤;消泡剤;スリップ剤(レベリング剤);染料;重合禁止剤;重合促進剤;浸透促進剤;湿潤剤(保湿剤);定着剤;防黴剤;防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;キレート剤;pH調整剤等が挙げられる。
【0205】
《三次元造形物製造用組成物セット》
次に、本発明に係る三次元造形物製造用組成物セットについて説明する。
【0206】
本発明に係る三次元造形物製造用組成物セットは、三次元造形物の製造に用いる複数種の組成物を備えており、前記組成物のうちの少なくとも1種として前述したような本発明の三次元造形物製造用組成物(複数個の粒子と溶剤とナノセルロースとを含む組成物)を備えている。
【0207】
これにより、優れた生産性で寸法精度、信頼性に優れた三次元造形物を製造するのに用いることができる三次元造形物製造用組成物セットを提供することができる。
【0208】
三次元造形物製造用組成物セットは、前述したような本発明の三次元造形物製造用組成物を少なくとも1種備えていればよいが、2種以上の本発明の三次元造形物製造用組成物を備えているのが好ましい。
これにより、三次元造形物の寸法精度、信頼性をより向上させることができる。
【0209】
また、三次元造形物製造用組成物セットは、三次元造形物10の実体部2の形成に用いる実体部形成用組成物1B’を少なくとも1種備えるとともに、サポート部5の形成に用いるサポート部形成用組成物1A’を少なくとも1種備えているのが好ましい。
これにより、三次元造形物10の寸法精度、信頼性をさらに向上させることができる。
【0210】
《三次元造形物製造装置》
次に、本発明の三次元造形物製造装置について説明する。
図12は、三次元造形物製造装置の好適な実施形態を模式的に示す側面図である。
【0211】
三次元造形物製造装置M100は、本発明の三次元造形物製造用組成物を吐出するノズルを備え、前記ノズルより前記三次元造形物製造用組成物を吐出して層1を形成し、層1を積み重ねて三次元造形物10を製造する。
【0212】
より具体的には、三次元造形物製造装置M100は、層1の形成を繰り返し行うことにより、三次元造形物10を製造するのに用いられる装置であって、制御部(制御手段)M1と、三次元造形物10の実体部2となるべき部位を支持するサポート部5の形成に用いるサポート部形成用組成物1A’(三次元造形物製造用組成物1’)を吐出するサポート部形成用組成物吐出ノズル(第1のノズル)M2と、三次元造形物10の実体部2の形成に用いる実体部形成用組成物1B’(三次元造形物製造用組成物1’)を吐出する実体部形成用組成物吐出ノズル(第2のノズル)M3とを備えている。そして、サポート部形成用組成物1A’および実体部形成用組成物1B’のうち少なくとも一方(好ましくは少なくとも実体部形成用組成物1B’、より好ましくはサポート部形成用組成物1A’および実体部形成用組成物1B’の双方)は、本発明の三次元造形物製造用組成物(複数個の粒子と、溶剤と、ナノセルロースとを含む組成物)である。
【0213】
これにより、前述したような本発明の製造方法を好適に実行することができ、優れた生産性で寸法精度、信頼性に優れた三次元造形物10を製造することができる。
制御部M1は、コンピューターM11と、駆動制御部M12とを有している。
【0214】
コンピューターM11は、内部にCPUやメモリー等を備えて構成される一般的な卓上型コンピューター等である。コンピューターM11は、三次元造形物10の形状をモデルデータとしてデータ化し、それを平行な幾層もの薄い断面体にスライスして得られる断面データ(スライスデータ)を駆動制御部M12に対して出力する。
【0215】
制御部M1が有する駆動制御部M12は、サポート部形成用組成物吐出ノズルM2、実体部形成用組成物吐出ノズルM3、層形成部M4等をそれぞれに駆動する制御手段として機能する。具体的には、例えば、サポート部形成用組成物吐出ノズルM2および実体部形成用組成物吐出ノズルM3の駆動(XY平面上での移動等)、サポート部形成用組成物吐出ノズルM2によるサポート部形成用組成物1A’の吐出、実体部形成用組成物吐出ノズルM3による実体部形成用組成物1B’の吐出、
図12中Z方向に移動可能なステージ(昇降ステージ)M41の下降およびその下降量等を制御する。
【0216】
サポート部形成用組成物吐出ノズルM2および実体部形成用組成物吐出ノズルM3には、それぞれ、図示しない材料貯留部(材料供給部)からの配管が接続されている。この材料供給部には、前述した三次元造形物製造用組成物1’が貯留されており、駆動制御部M12の制御により、サポート部形成用組成物吐出ノズルM2および実体部形成用組成物吐出ノズルM3より吐出される。
【0217】
サポート部形成用組成物吐出ノズルM2、実体部形成用組成物吐出ノズルM3は、ガイドM5に沿って、
図12中のX方向およびY方向に各々独立して移動することができる。
【0218】
層形成部M4は、サポート部形成用組成物1A’および実体部形成用組成物1B’が供給され、サポート部形成用組成物1A’および実体部形成用組成物1B’を用いて形成された層1を支持するステージ(昇降ステージ)M41と、昇降ステージM41を取り囲む枠体M45とを有している。
【0219】
昇降ステージM41は、先に形成された層1の上に、新たな層1を形成する(積み重ねる)のに際して、駆動制御部M12からの指令により所定量だけ順次下降(Z軸マイナス方向へ移動)する。
【0220】
ステージM41は、その上面(より詳しくは、サポート部形成用組成物1A’および実体部形成用組成物1B’が付与される部位)が平坦な平面(受液面)M410となっている。これにより、厚みの均一性の高い層1を容易かつ確実に形成することができる。
【0221】
ステージM41は、高強度の材料で構成されているのが好ましい。ステージM41の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼等の各種金属材料等が挙げられる。
【0222】
また、ステージM41の平面M410には、表面処理が施されていてもよい。これにより、例えば、サポート部形成用組成物1A’の構成材料や、実体部形成用組成物1B’の構成材料がステージM41に強固に付着してしまうことをより効果的に防止したり、ステージM41の耐久性を向上させ、三次元造形物10のより長期間にわたる安定的な生産を図ったりすることができる。ステージM41の平面M410の表面処理に用いられる材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0223】
サポート部形成用組成物吐出ノズルM2は、駆動制御部M12からの指令により移動し、サポート部形成用組成物1A’をステージM41上の所望の部位に所定のパターンで吐出するように構成されている。
【0224】
サポート部形成用組成物吐出ノズルM2としては、例えば、インクジェットヘッドノズル、各種ディスペンサーノズル等が挙げられるが、ディスペンサーノズルであるのが好ましい。
【0225】
これにより、高粘度のサポート部形成用組成物1A’であっても好適に供給(吐出)することができ、サポート部形成用組成物1A’が目的の部位に接触した後の当該サポート部形成用組成物1A’のダレ等をより効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。また、高粘度のサポート部形成用組成物1A’を用いることにより、厚みが比較的大きい層1を容易に形成することができ、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0226】
サポート部形成用組成物吐出ノズルM2の吐出部の大きさ(ノズル径)は、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であるのが好ましい。
【0227】
これにより、三次元造形物10の寸法精度をより向上させつつ、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0228】
サポート部形成用組成物吐出ノズルM2は、サポート部形成用組成物1A’を液滴として吐出するものであるのが好ましい。これにより、微細なパターンでサポート部形成用組成物1A’を付与することができ、微細な構造を有する三次元造形物10であっても、特に高い寸法精度、特に高い生産性で製造することができる。
【0229】
実体部形成用組成物吐出ノズルM3は、駆動制御部M12からの指令により移動し、実体部形成用組成物1B’をステージM41上の所望の部位に所定のパターンで吐出するように構成されている。
【0230】
実体部形成用組成物吐出ノズルM3としては、例えば、インクジェットヘッドノズル、各種ディスペンサーノズル等が挙げられるが、ディスペンサーノズルであるのが好ましい。
【0231】
これにより、高粘度の実体部形成用組成物1B’であっても好適に供給(吐出)することができ、実体部形成用組成物1B’が目的の部位に接触した後の当該実体部形成用組成物1B’のダレ等をより効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる三次元造形物10の寸法精度をより向上させることができる。また、高粘度の実体部形成用組成物1B’を用いることにより、厚みが比較的大きい層1を容易に形成することができ、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0232】
実体部形成用組成物吐出ノズルM3の吐出部の大きさ(ノズル径)は、特に限定されないが、10μm以上100μm以下であるのが好ましい。
【0233】
これにより、三次元造形物10の寸法精度をより向上させつつ、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0234】
実体部形成用組成物吐出ノズルM3は、実体部形成用組成物1B’を液滴として吐出するものであるのが好ましい。これにより、微細なパターンで実体部形成用組成物1B’を付与することができ、微細な構造を有する三次元造形物10であっても、特に高い寸法精度、特に高い生産性で製造することができる。
上記のような構成により、複数の層1を積層して、積層体50を得ることができる。
【0235】
得られた積層体50に対して、脱バインダー処理、接合処理(焼結処理)を施すことにより、三次元造形物10を得ることができる。
【0236】
本実施形態の三次元造形物製造装置M100は、脱バインダー処理を行う脱バインダー手段(図示せず)、接合処理(焼結処理)を行う接合手段(焼結手段)(図示せず)を備えていてもよい。
【0237】
これにより、層1の形成等と、脱バインダー処理、接合処理とを同一の装置で行うことができ、三次元造形物10の生産性をより向上させることができる。
【0238】
《三次元造形物》
本発明に係る三次元造形物は、前述したような本発明の三次元造形物製造装置を用いて製造することができる。
【0239】
これにより、優れた生産性で寸法精度、信頼性に優れた三次元造形物を製造することができる。
【0240】
三次元造形物の用途は、特に限定されないが、例えば、人形、フィギュア等の鑑賞物・展示物;インプラント等の医療機器等が挙げられる。
【0241】
また、三次元造形物は、プロトタイプ、量産品、オーダーメード品のいずれに適用されてもよい。
【0242】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されない。
【0243】
例えば、前述した実施形態では、単一の層について、第1のパターン形成工程の後に第2のパターン形成工程を行うものとして説明したが、少なくとも1つの層の形成において、第1のパターン形成工程と第2のパターン形成工程の順番は逆であってもよい。また、異なる領域で複数種の組成物を同時に付与してもよい。
【0244】
また、前述した実施形態では、単一の層について、第1のパターン形成工程および第2のパターン形成工程を行った後に溶剤除去工程を行う場合について代表的に説明したが、例えば、第1のパターン形成工程の後、および、第2のパターン形成工程の後のそれぞれについて、個別に、溶剤除去工程を行ってもよい。
【0245】
また、前述した実施形態では、全ての層の形成に第1のパターンおよび第2のパターンを形成する場合について代表的に説明したが、積層体は、例えば、第1のパターンを有さない層や、第2のパターンを有さない層を備えていてもよい。また、ステージとの接触面(ステージの直上)に、実体部に対応する部位が形成されない層(例えば、サポート部のみで構成された層)を形成し、当該層を犠牲層として機能させてもよい。
【0246】
また、本発明の三次元造形物の製造方法においては、工程・処理の順番は、前述したものに限定されず、その少なくとも一部を入れ替えて行ってもよい。例えば、前述した実施形態では、積層体を得た後に、脱バインダー工程、接合工程、サポート部除去工程をこの順に行う場合について代表的に説明したが、これらの順番を入れ替えて行ってもよい。より具体的には、脱バインダー工程、サポート部除去工程、接合工程の順で行ってもよいし、サポート部除去工程、脱バインダー工程、接合工程の順で行ってもよい。また、例えば、層形成工程と溶剤除去工程とを、同時進行的に行ってもよい。また、各層について、逐次接合処理を施してもよい。この場合、各層への接合処理は、例えば、レーザー光の照射により好適に行うことができる。
【0247】
また、接合工程において、粒子の接合とともに、バインダーの除去を行ってもよく、このような場合、脱バインダー工程を省略することができる。
【0248】
また、前述した実施形態では、接合工程において、実体部形成用組成物中に含まれる粒子の接合を行うとともに、サポート部形成用組成物中に含まれる粒子の接合を行う場合について中心的に説明したが、接合工程では、実体部形成用組成物中に含まれる粒子の接合を選択的に行い、サポート部形成用組成物中に含まれる粒子同士を接合させなくてもよい。このような選択的な接合は、各粒子の構成材料の融点と焼結工程での温度との関係を調整することにより、好適に行うことができる。
【0249】
また、製造すべき三次元造形物の形状によっては、サポート部を形成しなくてもよい。
また、前述した実施形態では、三次元造形物製造用組成物を所定のパターンで吐出し、所望の形状を有する層を形成する場合について代表的に説明したが、本発明は、スキージー、ローラー等の平坦化手段を用いて、三次元造形物製造用組成物を平坦化して層を形成し、当該層にレーザー光を照射して接合部を形成する方法等(SLS法等)に適用してもよい。
【0250】
また、本発明の製造方法においては、必要に応じて、前処理工程、中間処理工程、後処理工程を行ってもよい。
前処理工程としては、例えば、ステージの清掃工程等が挙げられる。
【0251】
後処理工程としては、例えば、洗浄工程、バリ取り等を行う形状調整工程、着色工程、被覆層形成工程、粒子の接合強度を向上させるための熱処理工程等が挙げられる。
【0252】
また、本発明の三次元造形物製造装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0253】
また、前述した実施形態では、ステージの表面に直接層を形成する場合について代表的に説明したが、例えば、ステージ上に造形プレートを配置し、当該造形プレート上に層を積層して三次元造形物を製造してもよい。
【0254】
また、本発明の三次元造形物の製造方法は、前述したような三次元造形物製造装置を用いて実行するものに限定されない。
【実施例】
【0255】
以下に具体的な実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に温度条件を示していない処理は、室温(25℃)において行った。また、各種測定条件についても特に温度条件を示していないものは、室温(25℃)における数値である。
【0256】
(実施例1)
[1]三次元造形物製造用組成物の製造
平均粒径が3.0μmのSUS316L粉末:100質量部と、溶剤としてのグリセリン:28.33質量部と、セルロースで構成されたナノセルロース:0.071質量部とを混合することにより、三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)としての実体部形成用組成物を得た。このようにして得られた実体部形成用組成物において、ナノセルロースは、SUS316L粉末の構成粒子の表面を被覆していた。表面状態は、実体部形成用組成物を液体窒素温度で急冷凍させ、そのままFIB付きSEM装置内で加工をすることで観察した。
【0257】
また、平均粒径が3.0μmのアルミナ粉末:100質量部と、溶剤としてのグリセリン:28.33質量部と、セルロースで構成されたナノセルロース:0.071質量部とを混合することにより、三次元造形物製造用組成物(層形成用組成物)としてのサポート部形成用組成物を得た。このようにして得られたサポート部形成用組成物において、ナノセルロースは、アルミナ粉末の構成粒子の表面を被覆していた。
【0258】
これにより、実体部形成用組成物とサポート部形成用組成物とからなる三次元造形物製造用組成物セットを得た。
【0259】
[2]三次元造形物の製造
前記のようにして得られた三次元造形物製造用組成物を用いて、設計寸法が厚さ:4mm×幅:10mm×長さ:80mmの直方体形状である三次元造形物を、以下のようにして製造した。
【0260】
まず、
図12に示すような三次元造形物製造装置を用意し、ディスペンサーのサポート部形成用組成物吐出ノズルから、ステージ上に所定のパターンで、サポート部形成用組成物を複数の液滴として吐出して第1のパターン(サポート部用パターン)を形成した。
【0261】
次に、ディスペンサーの実体部形成用組成物吐出ノズルから、ステージ上に所定のパターンで、実体部形成用組成物を複数の液滴として吐出して第2のパターン(実体部用パターン)を形成した。
【0262】
これにより、第1のパターンおよび第2のパターンからなる層が形成された。層の厚みは50μmであった。
【0263】
その後、第1のパターンおよび第2のパターンからなる層に対して、200℃での加熱処理を施し、層中に含まれる溶剤を除去した(溶剤除去工程)。
【0264】
その後、溶剤が除去された層上への新たな層形成工程(第1のパターン形成工程、第2のパターン形成工程)および溶剤除去工程を繰り返し行うことにより、製造すべき三次元造形物に対応する形状の積層体を得た。
【0265】
次に、得られた積層体に対し、窒素ガス中で、400℃×5時間という条件での加熱による脱バインダー処理を施し、脱バインダー体を得た。
【0266】
次に、脱バインダー体から刷毛でサポート部を払い除ける方法でサポート部を除去した。
【0267】
その後、サポート部が取り除かれた脱バインダー体に対し、水素ガス中で、1320℃×2時間という条件での加熱による焼結処理(接合処理)を施し、三次元造形物を得た。
【0268】
(実施例2〜9)
実体部形成用組成物、サポート部形成用組成物の組成を表1、表2に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして三次元造形物製造用組成物(三次元造形物製造用組成物セット)、三次元造形物を製造した。
【0269】
(比較例1)
実体部形成用組成物、サポート部形成用組成物の構成成分として、ナノセルロースを用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして三次元造形物製造用組成物(三次元造形物製造用組成物セット)、三次元造形物を製造した。
【0270】
(比較例2、3)
実体部形成用組成物、サポート部形成用組成物の構成成分として、ナノセルロースの代わりにポリビニルアルコールを用い、各成分の利用量を表1、表2に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして三次元造形物製造用組成物(三次元造形物製造用組成物セット)、三次元造形物を製造した。
【0271】
前記各実施例および各比較例の三次元造形物製造用組成物(三次元造形物製造用組成物セット)の組成を表1、表2にまとめて示す。なお、表中、ポリビニルアルコールを「PVA」で示した。
【0272】
また、前記各実施例および比較例3で用いたサポート部形成用組成物、実体部形成用組成物の粘度は、いずれも、1000mPa・s以上20000mPa・s以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例および各比較例でのサポート部形成用組成物、実体部形成用組成物の液滴1滴あたりの体積は、いずれも50pL以上100pL以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例および各比較例では、溶剤除去工程後の層中における溶剤の含有率は、いずれも、0.5質量%以上20質量%以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例で用いたサポート部形成用組成物、実体部形成用組成物では、ナノセルロースの幅および厚さは、いずれも、10nm以上50nm以下の範囲内の値であり、ナノセルロースの長さは、いずれも、150nm以上400nm以下の範囲内の値であり、ナノセルロースの繊維のアスペクト比は、いずれも、7以上30以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例で用いたサポート部形成用組成物、実体部形成用組成物では、いずれも、ナノセルロースが粒子の表面を被覆しており、ナノセルロースによる粒子表面の被覆率は、いずれも、80%以上100%以下の範囲内の値であった。
【0273】
【表1】
【0274】
【表2】
【0275】
[3]評価
[3.1]三次元造形物の生産性(バインダーの除去効率)
前記各実施例および各比較例について、各三次元造形物製造用組成物(実体部形成用組成物、サポート部形成用組成物)を用いて、それぞれ、前記と同様にして、積層体を製造した。
【0276】
その後、これらの積層体について、それぞれ、窒素ガス中で、400℃での加熱処理(脱バインダー処理)を施した。
【0277】
積層体中に含まれるバインダー量が初期の5%となるまでの時間(溶剤の含有率が三次元造形物製造用組成物中での含有率の20分の1になるまでの時間)を測定し、以下の基準に従い評価した。当該時間が短いほど三次元造形物の生産性に優れているといえる。
【0278】
A:バインダー量が初期の5%となるまでの時間が3時間未満である。
B:バインダー量が初期の5%となるまでの時間が3時間以上4時間未満である。
C:バインダー量が初期の5%となるまでの時間が4時間以上5時間未満である。
D:バインダー量が初期の5%となるまでの時間が5時間以上6時間未満である。
E:バインダー量が初期の5%となるまでの時間が6時間以上である。
【0279】
[3.2]寸法精度
前記各実施例および各比較例の三次元造形物について、厚さ、幅、長さを測定し、設計値からのずれ量を求め、以下の基準に従い評価した。
【0280】
A:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が1.0%未満である。
B:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が1.0%以上2.0%未満である。
C:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が2.0%以上4.0%未満である。
D:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が4.0%以上7.0%未満である。
E:厚さ、幅、長さのうち、設計値からのずれ量が最も大きいものについての設計値からのずれ量が7.0%以上である。
これらの結果を表3にまとめて示す。
【0281】
【表3】
【0282】
表3から明らかなように、本発明では、寸法精度、信頼性の高い三次元造形物を効率よく製造することができた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。より具体的には、バインダーを含まない比較例1では、溶剤が除去された状態において粒子同士を仮結合する機能が発揮されず、製造された三次元造形物の寸法精度は著しく低かった。また、ナノセルロースを含まず、その他のバインダーを比較的低い含有率で含む組成物を用いた比較例2でも、溶剤が除去された状態において粒子同士を仮結合する機能が十分に発揮されず、製造された三次元造形物の寸法精度は低かった。また、ナノセルロースを含まず、その他のバインダーを比較的高い含有率で含む組成物を用いた比較例3では、溶剤が除去された状態において粒子同士を仮結合する機能が効果的に発揮されるものの、バインダーの除去に要する時間が長く、三次元造形物の生産性が低かった。また、比較例3では、組成物の粘度が高く、かつ、固形分含有率が高いため、固形分がディスペンサーの吐出ノズルに固着し、長期的に安定的な液滴吐出を行うことが困難であった。