(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、一実施形態におけるプリンター100の斜視図である。このプリンター100は、インクを印刷媒体P上に吐出して印刷を行うインクジェットプリンターである。
図1には、互いに直交するXYZ軸が描かれている。X軸はプリンター100の幅方向に対応し、Y軸はプリンター100の奥行き方向に対応し、Z軸はプリンター100の高さ方向に対応する。プリンター100は、X方向とY方向とによって規定される水平な設置面に設置されている。
【0012】
プリンター100は、筐体110を有する。筐体110の内部には、主走査方向(X方向)に移動可能なキャリッジ120が設けられている。キャリッジ120の下面には、インクを印刷媒体P上に吐出する印刷ヘッド122が設置されている。筐体110の前面の一端には、開閉可能な蓋112が設けられている。蓋112の内部には、複数のインクタンク130が設置されている。
【0013】
複数のインクタンク130は、チューブ134によってキャリッジ120の印刷ヘッド122に接続されている。各インクタンク130内のインクは、チューブ134を介して印刷ヘッド122に供給される。これらのインクタンク130は、インク補給タイプのインクタンクである。各インクタンク130の上面には、インクをインクタンク130に補給するための筒状のインク入口流路部材132が設けられている。これらのインクタンク130は、キャリッジ120上に載置されていない定置型のインクタンクである。なお、各インクタンク130の前面は、透明部材で形成されており、各インクタンク130のインク残量が外部から目視可能である。インク残量が少なくなった場合には、蓋112を開けて、インクタンク130のインク入口流路部材132からインクを補給することが可能である。
【0014】
本明細書において、「インクの補給」という用語は、インクタンク130にインクを供給してインク残量を増やす動作を意味している。但し、「インクの補給」によってインクタンク130をインクで満杯にする必要はない。また、「インクの補給」は、プリンター100の初回使用時に、空のインクタンク130にインクを充填する動作も含む。
【0015】
図2は、一実施形態におけるインク補給容器200の分解斜視図である。インク補給容器200は、インクを収容可能な容器本体300と、インク出口460を形成するインク出口形成部400と、出口弁500と、インク出口形成部400の先端側に装着可能なキャップ600とを有している。容器本体300は、先端側に開口を有する中空円筒状の容器である。容器本体300の先端にある小径部分には、インク出口形成部400を装着するための外ネジ312が設けられている。インク出口形成部400の先端には、インク出口460が設けられている。出口弁500は、インク出口形成部400の後端側から挿入されて、インク出口460の直下に設置される。すなわち、出口弁500は、インク出口460の開口よりも後端側(容器本体300側)においてインク出口460に装着される。従って、出口弁500は、インク出口形成部400の一部を構成する部材とみなすことも可能である。インクタンク130へのインクの補給時には、インクタンク130のインク入口流路部材132(
図1)がインク出口460内に挿入される。
【0016】
インク出口460の周囲には、インクタンク130のインク入口流路部材132の周囲に設けられた凹部に嵌合する嵌合部450が設けられている。なお、本実施形態では、嵌合部450はインク出口460を挟んだ両側に設けられている。これらの2つの嵌合部450は、インク補給容器200の中心軸Cを中心として180度の回転対称の形状を有する。インクタンク130のインク入口流路部材132の周囲に設けられた凹部も同様に、インク入口流路部材132を中心として180度の回転対称の形状を有する。インクの補給時には、インク補給容器200の嵌合部450をインクタンク130のインク入口流路部材132の周囲の凹部に嵌合させることにより、インク補給容器200の向きが180度の回転対称である2つの向きに限定される。この結果、インク補給時にインク補給容器200を安定した姿勢に維持することが可能である。但し、嵌合部450は省略可能である。
【0017】
なお、本明細書において、インク補給容器200の中心軸Cと平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸Cから外側に向かう方向を「径方向」と呼ぶ。また、中心軸Cと垂直な平面において、中心軸Cを中心とする円を「中心軸C回りの円」と呼ぶ。
【0018】
図3は、インク補給容器200の正置状態における正面図である。「インク補給容器200の正置状態」とは、容器本体300の底部を下にして机などの水平面の上に置いた状態を意味する。この正置状態におけるインク補給容器200の上端側を「先端側」と呼び、下端側を「後端側」と呼ぶ。
図3以降の各図におけるZ方向は、インク補給容器200の正置状態における鉛直上向きの方向を示す。
【0019】
図4は、インク補給容器200の縦断面図であり、
図5は、
図4の領域5の拡大図である。
図2でも説明したように、インク出口形成部400の2つの嵌合部450の間には、インク出口460が設けられている。インク出口460は、中心軸Cに平行に伸びる中空円筒部410と、中空円筒部410の先端側に設けられた筒状の出口リング部420とを有する。インク出口460の中央には、インクが通過する開口が設けられている。
【0020】
インク出口460の内部には、出口弁500が設置されている。この出口弁500は、インク出口形成部400の後端側から挿入されて、インク出口460の内部に設置される。出口弁500は、弁本体520と、弁本体520を保持する保持リング510とを有する。
【0021】
出口弁500の保持リング510は、第1筒状部512と、第1筒状部512の先端側に設けられた第2筒状部514とを有する。第2筒状部514は、第1筒状部512よりも内径が大きい。第1筒状部512と第2筒状部514の境界部分には、後端側に窪んだ凹部513が形成されている。弁本体520は、スリット弁521と、スリット弁521の周囲に設けられた中空円筒状の支持部523とを有する。支持部523の後端は、保持リング510の凹部513に支持される。なお、保持リング510の第2筒状部514の外面には、外側に突出する凸部515が設けられている。一方、インク出口460の中空円筒部410の内面には、凹部411が設けられている。保持リング510の第2筒状部514の外面の凸部515は、インク出口460の中空円筒部410の内面の凹部411に入り込んで嵌合しており、これによって保持リング510がインク出口460の内部に保持されている。
【0022】
スリット弁521の中央付近には、複数のスリット522が設けられている。これらのスリット522は、インクボトルの内圧が大気圧より高いとき外方に開放され、内圧が大気圧とほぼ等しいときに弾力作用により閉塞される機能を有する。なお、スリット弁521は、シリコーンゴムや、ゴム弾性を有する部材であるエラストマーで形成されていることが好ましい。なお、スリット弁521以外のインク補給容器200は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのような熱可塑性樹脂で形成することが可能である。
【0023】
キャップ600の内面には、第1突起610と第2突起620とが設けられている。本実施形態では、第1突起610と第2突起620は、それぞれ中心軸Cと平行に後端側に向けて延びる中空円筒状の部分である。すなわち、第1突起610と第2突起620は、インク補給容器200の中心軸Cを中心にした同心円環状の形状を有する。第2突起620は第1突起610の径方向内側(インク補給容器200の中心軸Cにより近い側)に存在する。第1出口シール部S461と第2出口シール部S462の間に、出口リング部420が配置される。第1突起610は、インク出口460の外周面と接して第1出口シール部S461を構成する。また、第2突起620は、インク出口460の内周面と接して第2出口シール部S462を構成する。インク出口460の内周面は、インク出口460の外周面の内側に位置する。なお、この実施形態では、第1突起610と第2突起620の後端部分が面取りされており、これによって第1出口シール部S461と第2出口シール部S462の長さが調整されている。
【0024】
インク出口460の先端にある出口リング部420の内周側には、後端側に向けて突出する第3突起424が形成されている。本実施形態では、第3突起424は、略筒状の形状を有する。この第3突起424は、X−Z平面における断面が略三角形形状を有しており、その1つの角が第3突起424の後端を形成している。第3突起424の後端は、出口弁500の弁本体520の上面に設けられた凹部に接して第3出口シール部S463を形成する。この第3出口シール部S463は、弁本体520の支持部523とスリット弁521の境界部分に設けられている。また、この第3出口シール部S463は、インク出口460の内周面とキャップ600の第2突起620との間に形成される第2出口シール部S462よりも、径方向外側に存在する。換言すれば、第2出口シール部S462は、インク補給容器200の中心軸Cを軸心とした半径方向において、第3出口シール部S463よりもインク補給容器200の中心軸Cに近い位置に形成される。
【0025】
図5に示す部分では、以下の箇所にインク又は空気を封止する機能を有するシール部が形成されている。
<インク出口形成部400とキャップ600の間のシール箇所>
(1)キャップ600の第1突起610の内周面と、インク出口460の外周面との間(第1出口シール部S461)。
(2)キャップ600の第2突起620の外周面と、インク出口460の内周面との間(第2出口シール部S462)。
<出口弁500とインク出口形成部400との間のシール箇所>
(1)インク出口形成部400の第3突起424の後端と、スリット弁521の上面の凹部との間(第3出口シール部S463)。
(2)保持リング510の第2筒状部514の外側にある凸部515と、インク出口形成部400の中空円筒部410の内側にある凹部411との間。
<出口弁500の部品間のシール箇所>
(1)スリット弁521の支持部523の後端と保持リング510の凹部との間。
【0026】
以上のように、本実施形態のインク補給容器200は、複数の箇所でシール部が形成されるので、複数の箇所においてインクや空気を封止できるという利点がある。
【0027】
なお、本実施形態では、第2出口シール部S462の後端高さH462は、第1出口シール部S461の後端高さH461よりも低い。ここで、後端高さH461,H462は、インク補給容器200を正置状態(
図3)においたときに、容器本体300の底面から鉛直上向きに測った距離を意味する。このような後端高さH461,H462の違いによる効果については後述する。
【0028】
図6は、
図4の領域6の拡大図である。容器本体300の先端部分には、ネジ形成部310が設けられており、ネジ形成部310の更に先端側に先端係合部350が設けられている。ネジ形成部310と先端係合部350は、いずれも中空円筒状の形状を有している。また、先端係合部350の外径は、ネジ形成部310の外径よりも小さく設定されている。先端係合部350とネジ形成部310との間には縮径部320が設けられている。ネジ形成部310の外周面には、外ネジ312(
図2)が形成されている。容器本体300のネジ形成部310の先端側には、肩部340が形成されている。この肩部340は、縮径部320の外側の斜面に相当する。
【0029】
インク出口形成部400の後端付近には、ネジ形成部430が設けられている。ネジ形成部430の内周面には内ネジ432が形成されており、外周面には突起434が形成されている。ネジ形成部430の外周面の突起434は、キャップ600の内面との間のギャップを狭めており、キャップ600の内部から外部にインクが漏れ出す現象を防止する機能を有する。ネジ形成部430の内ネジ432は、容器本体300の外ネジ312と係合する。これらの内ネジ432と外ネジ312を用いて、容器本体300にインク出口形成部400が螺合される。また、インク出口形成部400の内面には、容器本体300の先端係合部350と係合する筒状の係合突起470が設けられている。係合突起470は、その外周側に、容器本体300の先端係合部350が挿入される係合凹部472を形成している。
【0030】
インク出口形成部400の内部には、容器本体300のネジ形成部310の先端側にある肩部340に当接する当接部440が設けられている。すなわち、容器本体300にインク出口形成部400を螺合してゆくと、容器本体300の縮径部320の肩部340がインク出口形成部400の当接部440に当接して、螺合が完了する。螺合が完了した状態では、容器本体300の先端係合部350が、インク出口形成部400の係合凹部472と係合した状態になり、先端係合部350と係合凹部472の内面との接触によって2つの本体シール部S351,S352が形成される。第1本体シール部S351は先端係合部350の外周側のシール部であり、第2本体シール部S352は先端係合部350の内周側のシール部である。本実施形態では、内周側の第2本体シール部S352の後端高さH352は、外周側の第1本体シール部S351の後端高さH351よりも低くなるように係合凹部472が形成されている。なお、後端高さH351,H352は、容器本体300の底面から測った距離である。
【0031】
図7は、インク出口形成部400を後端側から見た斜視図であり、
図8はインク出口形成部400の背面図である。インク出口形成部400の当接部440は、インク補給容器200の中心軸C回りの円の全周にわたって連続する部分として形成しても良い。本実施形態においては、
図6及び
図7に示すように、半径方向に延びる複数のリブ状の当接部440が、中心軸C回りの円周上(周方向)の複数の箇所に分散して設けられている。リブ状の当接部440は、インク出口形成部400の内面に部分的に突出している。隣接するリブ状の当接部440の間の部分と、容器本体300の縮径部320の肩部340との間には、ギャップが形成されている。従って、容器本体300のネジ形成部310とインク出口形成部400のネジ形成部430との間が当接部440によって封止されて閉空間となってしまうことを防止できる。
【0032】
当接部440と同様に、容器本体300のネジ形成部310の外ネジ312(
図6)も連続していないことが好ましく、1つ以上の箇所で外ネジ312に切り欠きが設けられていることが好ましい。こうすれば、容器本体300の外ネジ312とインク出口形成部400の内ネジ432との間が封止されて閉空間となることを防止できる。
図6の構造の利点については更に後述する。
【0033】
図9〜
図13は、参考例のインク補給容器200Rの構成を示す図であり、実施形態の
図2〜
図6にそれぞれ対応する図である。実施形態のインク補給容器200と対応する部分には、
図2〜
図6において使用した符号の末尾に「R」を付している。参考例のインク補給容器200Rの各部分の詳細な説明は省略する。
【0034】
以下では、必要に応じて参考例と比較しつつ、
図2〜
図6に示す実施形態のインク補給容器200の構造的な特徴(structural features)について順次説明する。
【0035】
(A) インク補給容器の構造的特徴1:
実施形態のインク補給容器200(
図5)では、(i)キャップ600の第1突起610の内周面とインク出口460の外周面との間の接触部分が第1出口シール部S461を形成しており、また、(ii)キャップ600の第2突起620の外周面とインク出口460の内周面との間の接触部分が第2出口シール部S462を形成している。これに対して、参考例(
図12)では、第2出口シール部S462に相当するシール部は存在しない。実施形態では、インク出口460の内周面に第2出口シール部S462が形成されるので、インク出口460の先端側の表面(すなわち、出口リング部420の上面)がインクで汚れてしまうという不具合を抑制することが可能である。更に、実施形態では、インク出口460の外周面と内周面に2重の出口シール部S461,S462が形成されるので、キャップ600を閉めた状態におけるインク出口460からのインクの漏れ出しをより確実に抑制できる。
【0036】
(B) インク補給容器の構造的特徴2:
実施形態のインク補給容器200(
図5)では、第2出口シール部S462の後端高さH462が、第1出口シール部S461の後端高さH461よりも低い位置にある。換言すれば、容器本体300の底部から第2出口シール部S462の容器本体300側の後端位置までの距離H462が、容器本体300の底部から第1出口シール部S461の容器本体300側の後端位置までの距離H461よりも短い。このような構成を採用すれば、キャップ600を閉める際に、内周側の第2出口シール部S462の方が外周側の第1出口シール部S461よりも先にシールを開始する。すなわち、内周側の第2出口シール部S462では、外周側の第1出口シール部S461よりも部材同士の接触がより早く開始される。この結果、キャップ600の内部とインク出口形成部400との間に形成される空間の容積を小さくすることができる。ここで、仮に外周側の第1出口シール部S461の方が内周側の第2出口シール部S462よりも先にシールを開始する構造を想定する。この仮想的な構造では、キャップ600を閉める際に、キャップ600の内部とインク出口形成部400との間に形成される空間の容積が実施形態よりも大きくなり、また、キャップ600を完全に閉めた際にその内部の閉空間における圧力が実施形態よりも増大する。キャップ600内部の閉空間の圧力が増大すると、閉空間内の空気がスリット弁521を通過して容器本体300の内部に移動し、容器本体300の内部圧力も増大する。容器本体300の内部圧力が増大すると、インク補給容器200を用いてインクタンク130にインクを補給する際に、その内圧とともにインク水頭がスリット弁521に掛かり、一挙にスリット弁521が開弁してインクが噴出する可能性がある。一方、実施形態のインク補給容器200では、内周側の第2出口シール部S462の後端高さH462が外周側の第1出口シール部S461の後端高さH461よりも低い位置にあるので、仮想的な構造に比べてキャップ600の内部とインク出口形成部400との間に形成される空間の容積を小さくすることができる。この結果、インク補給容器200からインクが不用意に噴出してしまう可能性を低減できる。
【0037】
(C) インク補給容器の構造的特徴3:
実施形態のインク補給容器200(
図5)では、キャップ600とインク出口460との間に形成される第2出口シール部S462が、インク出口460と出口弁500との間に形成される第3出口シール部S463よりも、インク補給容器200の中心軸Cに近い側に形成されている。ここで、仮に2箇所の出口シール部S462,S463が、インク補給容器200の中心軸Cから同じ距離の位置に設けられている構造を想定する。この仮想的な構造では、キャップ600を閉める際にキャップ600とインク出口460とが接触したときに、第2出口シール部S462の位置(すなわち第2突起620とインク出口460との間)で発生する歪みが、インク出口460の第3突起424に伝わりやすい。この結果、第3突起424が変形してしまい、第3突起424と出口弁500との間に形成される第3出口シール部S463のシール性能が低下する可能性がある。実施形態のインク補給容器200では、上述した仮想的な構造に比べて第2出口シール部S462で発生する歪みが第3突起424に伝わり難いので、第3突起424と出口弁500との間に形成される第3出口シール部S463のシール性能が低下してしまうことを抑制できる。
【0038】
(D) インク補給容器の構造的特徴4:
実施形態のインク補給容器200(
図6)では、容器本体300の中心を軸心としたとき、容器本体300の先端係合部350の外径が、ネジ形成部310の外径よりも小さく設定されている。この結果、容器本体300とインク出口形成部400の間の本体シール部S351,S352が、容器本体300のネジ形成部310よりもインク補給容器200の中心軸Cに近い位置に形成されている。ここで、仮に先端係合部350とネジ形成部310の外径を同一にした構造を想定する。この仮想的な構造では、本体シール部S351,S351の周長が実施形態よりも長くなるので、本体シール部S351,S352のシール性能がやや低下する可能性がある。換言すれば、実施形態のインク補給容器200では、本体シール部S351,S352の周長が短く抑えられるので、シール性能を向上させることができる。一方、先端係合部350とネジ形成部310の外径を同一にしたままで、本体シール部S351,S352の周長が実施形態と同程度になるように容器本体300のネジ形成部310の径を小さくした他の仮想的構造を考えると、容器本体300の容積が減少してしまうという問題が生じる。一方、実施形態のインク補給容器200では、ネジ形成部310の外径が容器本体300の先端係合部350の外径よりも大きいので、容器本体300の容積が過度に小さくなることを抑制できる。このように、容器本体300の先端係合部350の外径をネジ形成部310の外径よりも小さく設定することによって、シール性能を向上させつつ、容器本体300の容積が過度に小さくなることを抑制できる。
【0039】
なお、上述の構造的特徴4の効果に関する限り、先端係合部350に2つの本体シール部S351,S352が形成される必要は無く、本体シール部S351または本体シール部S352のいずれか一方が設けられていればよい。また、インク補給容器200は、先端係合部350に1つの本体シール部のみが形成されるように構成されていてもよい。後者の構造は、例えば、参考例の
図13に示されている。
【0040】
(E) インク補給容器の構造的特徴5:
実施形態のインク補給容器200(
図6)では、先端係合部350の外周側の第1本体シール部S351の後端高さH351が、内周側の第2本体シール部S352の後端高さH352よりも高い位置にある。換言すれば、容器本体300の底部から第1本体シール部S351の容器本体300側の後端位置までの距離H351は、容器本体300の底部から第2本体シール部S352の容器本体300側の後端位置までの距離H352より長い。このような構成を採用すれば、インク補給容器200の製造時等において容器本体300にインク出口形成部400を装着する際に、内周側の第2本体シール部S352の方が外周側の第1本体シール部S351よりも先にシールを開始する。すなわち、内周側の第2本体シール部S352では、外周側の第1本体シール部S351よりも部材同士の接触がより早く開始される。ここで、内周側の第2本体シール部S352が無い仮想的な構造を考える。この仮想的な構造では、第1本体シール部S351の内側が容器本体300とインク出口形成部400で囲まれる閉空間となるので、その閉空間の容積がかなり大きくなってしまう。一方、実施形態のインク補給容器200では、内周側の第2本体シール部S352の内側が容器本体300とインク出口形成部400で囲まれる閉空間となるので、仮想的な構造に比べて容器本体300とインク出口形成部400で囲まれる閉空間の容積を小さくすることができる。また、上述した仮想的な構造では、第1本体シール部S351においてシールが開始された後に更にインク出口形成部400を螺合してゆくと、容器本体300の内圧が増大してしまうという問題も生じる。一方、実施形態のインク補給容器200では、内周側の第2本体シール部S352において先にシールが開始されるので、容器本体300の内圧が過度に上昇する可能性を低減できる。
【0041】
(F) インク補給容器の構造的特徴6:
実施形態のインク補給容器200(
図6)では、容器本体300のネジ形成部310の先端側部分に設けられた肩部340が、インク出口形成部400の当接部440と当接するように構成されている。従って、容器本体300にインク出口形成部400を螺合してゆくと、ネジ形成部310の肩部340がインク出口形成部400の当接部440に当接して螺合が完了する。このとき、肩部340と当接部440間の応力は、インク補給容器200の軸方向に沿って、肩部340の後端側にあるネジ形成部310に伝達される。これに対して、参考例(
図13)では、インク出口形成部400Rの内面に設けられた当接部480Rが、シール部材302Rを挟んで容器本体300Rの先端係合部350Rの先端面に押しつけられた状態で螺合が完了する。この参考例では、当接部480Rが、ネジ形成部310Rよりもインク補給容器200Rの中心軸Cに近い位置にあるので、当接部480Rに押されて先端係合部350Rが軸方向又は径方向に変形し、当接部480Rと先端係合部350Rで挟まれるシール部材302Rのシール性能が損なわれる可能性がある。一方、実施形態のインク補給容器200では、容器本体300のネジ形成部310の先端側にある肩部340と当接部440の間の応力は、インク補給容器200の軸方向に沿ってネジ形成部310に伝達されるので、先端係合部350を変形させることが無い。従って、先端係合部350におけるシール性能が損なわれる可能性を低減できる。
【0042】
(G) インク補給容器の構造的特徴7:
実施形態のインク補給容器200(
図6)では、インク出口形成部400の当接部440として、複数のリブ状の当接部440を、中心軸C回りの円周上の複数の箇所に分散して設けている。この構造では、隣接するリブ状の当接部440同士の間の部分には、容器本体300の肩部340とインク出口形成部400との間にギャップが形成される。従って、インク出口形成部400のネジ形成部430と容器本体300との間の空間が、肩部340と当接部440によって封止されて閉空間となってしまうことを防止できる。また、インク補給容器200の製造時には、容器本体300にインクを充填した後に容器本体300の内部を減圧し、インク補給容器200の全体を密封材料で包装する減圧パック処理が実行される場合がある。この減圧パック処理を行う場合に、容器本体300とインク出口形成部400との間に閉空間が存在すると、この閉空間を十分に減圧できないので、インクの脱気が不十分となる可能性がある。一方、実施形態のインク補給容器200では、減圧パック処理の際にインクの脱気が不十分となる可能性を低減できる。また、インクの脱気を十分に行うことができるので、微少気泡の少ないインクをインクタンク130に補給できる。
【0043】
なお、上述した各種の構造的特徴は、それぞれ個別に任意に採用するとともに、他の構造的特徴を省略することが可能である。すなわち、インク補給容器としては、上述した構造的特徴の中から選択された1つ以上の構造的特徴を採用した容器として実現することが可能である。
【0044】
・変形例:
本発明は上述した実施形態やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0045】
・変形例1:
実施形態のインク補給容器200の部材の一部を任意に省略したり、変更したりすることが可能である。例えば、出口弁500やキャップ600を省略してもよい。また、容器本体300の一部又は全部を、可撓性の袋体で構成してもよい。
【0046】
・変形例2:
本発明は、インク補給容器などのインク収容容器に限らず、インク以外の液体を収容する他の種類の液体収容容器にも適用可能である。