特許第6919267号(P6919267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6919267
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】液体吐出装置および液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20210805BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20210805BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20210805BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   B41J2/01 401
   B41J2/045
   B41J2/14 605
   B41J2/14 607
   B41J2/18
   B41J2/14 301
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-62683(P2017-62683)
(22)【出願日】2017年3月28日
(65)【公開番号】特開2018-165004(P2018-165004A)
(43)【公開日】2018年10月25日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片倉 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】須貝 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】酒井 寛文
(72)【発明者】
【氏名】中村 真一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 純一
【審査官】 小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−119287(JP,A)
【文献】 特開2011−213094(JP,A)
【文献】 特開2014−061696(JP,A)
【文献】 特開2014−061695(JP,A)
【文献】 特開2016−007789(JP,A)
【文献】 特開2017−052153(JP,A)
【文献】 特開2010−274446(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0129798(US,A1)
【文献】 特開2017−119391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置であって、
液体を吐出するためのノズルに連通する液室と、
前記液室の容積を変更するための容積変更部と、
前記液室に接続され、前記液室に前記液体を流入させる流入路と、
前記液室に接続され、前記液室から前記液体を流出させる流出路と、
前記流入路に前記液体を供給する液体供給部と、
前記流出路の流路抵抗を変更するための流路抵抗変更部と、
御部と、
を備え、
前記制御部は、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を大きくするとともに、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を大きくする第1の制御を行い、前記ノズルから前記液体を吐出させるために前記液室に前記液体を充填させ、
前記制御部は、前記第1の制御を行った後に、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を小さくすることにより前記ノズルから前記液体を吐出させる吐出制御を行い、
前記制御部は、前記ノズルから前記液体を吐出させた後、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を大きくしたまま、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を大きくする第2の制御を行い、
前記制御部は、前記第2の制御を行った後、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を小さくするとともに、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を小さくする第3の制御を行い、
前記制御部は、前記第1の制御と、前記吐出制御と、前記第2の制御と、前記第3の制御とを繰り返し実行する、液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記容積変更部は、第1容積変更部と第2容積変更部とを含み、
前記制御部は、前記第1容積変更部を用いて前記ノズルから前記液体を吐出させる制御を行い、前記第2容積変更部を用いて前記液室の容積を変更する制御を行う、液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置であって、
更に、前記流出路に接続され、前記流出路から排出された前記液体を貯留する液体貯留部を備え、
前記液体供給部は、前記液体貯留部に接続された負圧発生源である、液体吐出装置。
【請求項4】
液体を吐出するためのノズルに連通する液室と、
前記液室の容積を変更するための容積変更部と、
前記液室に接続され、前記液室に前記液体を流入させる流入路と、
前記液室に接続され、前記液室から前記液体を流出させる流出路と、
前記流入路に前記液体を供給する液体供給部と、
前記流出路の流路抵抗を変更するための流路抵抗変更部と、
を備える液体吐出装置によって実行される液体吐出方法であって、
前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を大きくするとともに、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を大きくする第1の制御を行い、前記ノズルから前記液体を吐出させるために前記液室に前記液体を充填させ、
前記第1の制御を行った後に、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を小さくすることにより前記ノズルから前記液体を吐出させる吐出制御を行い、
前記ノズルから前記液体を吐出させた後、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を大きくしたまま、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を大きくする第2の制御を行い、
前記第2の制御を行った後、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を小さくするとともに、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を小さくする第3の制御を行い、
前記第1の制御と、前記吐出制御と、前記第2の制御と、前記第3の制御とを繰り返し実行する
液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置および液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に記載された循環型インクジェット装置では、インク室内のインクを吐出するためのアクチュエーターの駆動力がインク室に連通したインク出口流路に逃げてしまうことを抑制するため、インク吐出時にインク出口流路の流路抵抗を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−213094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、インク出口流路の流路抵抗を高める際に、インク出口流路の容積縮小に伴ってインク出口流路からインク室にインクが逆流し、インク室に連通するノズルから、インクが漏れる可能性があった。そのため、無用なインクがノズルから漏れることを抑制可能な技術が求められていた。このような課題は、インクを吐出する循環型インクジェット装置に限らず、液体を吐出可能な液体吐出装置全般に共通した課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の第1の形態は、液体吐出装置であって、液体を吐出するためのノズルに連通する液室と、前記液室の容積を変更するための容積変更部と、前記液室に接続され、前記液室に前記液体を流入させる流入路と、前記液室に接続され、前記液室から前記液体を流出させる流出路と、前記流入路に前記液体を供給する液体供給部と、前記流出路の流路抵抗を変更するための流路抵抗変更部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を大きくするとともに、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を大きくする第1の制御を行い、前記ノズルから前記液体を吐出させるために前記液室に前記液体を充填させ、前記制御部は、前記第1の制御を行った後に、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を小さくすることにより前記ノズルから前記液体を吐出させる吐出制御を行い、前記制御部は、前記ノズルから前記液体を吐出させた後、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を大きくしたまま、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を大きくする第2の制御を行い、前記制御部は、前記第2の制御を行った後、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を小さくするとともに、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を小さくする第3の制御を行い、前記制御部は、前記第1の制御と、前記吐出制御と、前記第2の制御と、前記第3の制御とを繰り返し実行する、液体吐出装置である。本発明は、以下の形態としても実現できる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、液体吐出装置が提供される。この液体吐出装置は、液体を吐出するためのノズルに連通する液室と;前記液室の容積を変更するための容積変更部と;前記液室に接続され、前記液室に前記液体を流入させる流入路と;前記液室に接続され、前記液室から前記液体を流出させる流出路と;前記流入路に前記液体を供給する液体供給部と;前記流出路の流路抵抗を変更するための流路抵抗変更部と;前記容積変更部を制御して前記液室の容積を小さくすることにより前記ノズルから前記液体を吐出させる制御部と;を備える。そして、前記制御部は、前記ノズルから前記液体を吐出させるために前記液室に前記液体を充填する際に、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を大きくするとともに、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を大きくする第1の制御を行う。
このような形態の液体吐出装置であれば、流出路の流路抵抗を上げた際に、流出路中の液体が液室に逆流したとしても、液室の容積を大きくするため、逆流した液体がノズルから漏れることを抑制できる。そのため、無用な液体がノズルから漏れることを抑制できる。
【0007】
(2)上記形態の液体吐出装置において、前記制御部は、前記ノズルから前記液体を吐出させた後、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を大きくしたまま、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を大きくする第2の制御を行ってもよい。このような形態の液体吐出装置であれば、液体の尾切りを適切に行うことができるので、液体が過度に吐出されることを抑制できる。
【0008】
(3)上記形態の液体吐出装置において、前記制御部は、前記第2の制御を行った後、前記流路抵抗変更部を制御して前記流出路の流路抵抗を小さくするとともに、前記容積変更部を制御して前記液室の容積を小さくする第3の制御を行ってもよい。このような形態の液体吐出装置であれば、液体の吐出後に流出路の流路抵抗を小さくすることによって液室内の圧力が過度に低下することを抑制できる。そのため、液体吐出後にノズルから液体を引き込みすぎることを抑制でき、液室内に無用な空気が取り込まれることを抑制できる。
【0009】
(4)上記形態の液体吐出装置において、前記容積変更部は、第1容積変更部と第2容積変更部とを含み、前記制御部は、前記第1容積変更部を用いて前記ノズルから前記液体を吐出させる制御を行い、前記第2容積変更部を用いて前記液室の容積を変更する制御を行ってもよい。このような形態の液体吐出装置であれば、第2容積変更部によって液室の容積を変更することができるので、第1容積変更部の小型化やノズルの高密度化を図ることができる。
【0010】
(5)上記形態の液体吐出装置は、更に、前記流出路に接続され、前記流出路から排出された前記液体を貯留する液体貯留部を備え、前記液体供給部は、前記液体貯留部に接続された負圧発生源でもよい。このような形態の液体吐出装置であれば、負圧発生源によって発生させた負圧により、液体を液室に供給することができる。
【0011】
本発明は、上述した液体吐出装置としての形態以外にも、種々の形態で実現することが可能である。例えば、液体吐出装置によって実行される液体吐出方法や、液体吐出装置を制御するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムが記録された一時的でない有形な記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態における液体吐出装置の概略構成を示す説明図である。
図2】ヘッド部の概略構成を示す説明図である。
図3】液体吐出方法の処理内容を表すタイミングチャートである。
図4】ヘッド部の動作を示す図である。
図5】比較例におけるヘッド部の動作を示す図である。
図6】第2実施形態における液体吐出装置の概略構成を示す説明図である。
図7】液体吐出方法の処理内容を表すタイミングチャートである。
図8】第3実施形態におけるヘッド部の概略構成を示す説明図である。
図9】液体吐出方法の処理内容を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の第1実施形態における液体吐出装置100の概略構成を示す説明図である。液体吐出装置100は、タンク10と、加圧ポンプ20と、流入路30と、ヘッド部40と、流出路50と、液体貯留部60と、負圧発生源70と、制御部80と、を備える。
【0014】
タンク10には液体が収容されている。液体としては、例えば、所定の粘度を有するインクが収容される。タンク10内の液体は加圧ポンプ20により、流入路30を通じてヘッド部40に供給される。ヘッド部40に供給された液体は、ヘッド部40により吐出される。ヘッド部40の動作は、制御部80により制御される。
【0015】
ヘッド部40によって吐出されなかった液体は、流出路50を通じて液体貯留部60に排出される。液体貯留部60には、各種ポンプによって構成可能な負圧発生源70が接続されている。負圧発生源70は、液体貯留部60内を負圧にすることにより、流出路50を通じてヘッド部40から液体を吸引する。加圧ポンプ20および負圧発生源70は、流入路30と流出路50とに差圧を発生させて流入路30に液体を供給する液体供給部として機能する。なお、加圧ポンプ20および負圧発生源70のいずれか一方を省略して、加圧ポンプ20または負圧発生源70のいずれか単体で液体供給部を構成してもよい。上記のように、本実施形態では、ヘッド部40から吐出されなかった液体がヘッド部40から流出路50に排出されるので、ヘッド部40内に液体内の沈降成分が堆積することを抑制することができる。
【0016】
本実施形態では、液体貯留部60とタンク10とは、循環路90によって接続されている。液体貯留部60に貯留された液体は、循環路90を通じてタンク10に戻され、再び、加圧ポンプ20によってヘッド部40に供給される。循環路90には、液体貯留部60から液体を吸引するためのポンプが備えられていてもよい。なお、循環路90を省略し、液体吐出装置100を、液体を循環させない構成とすることも可能である。
【0017】
図2は、ヘッド部40の概略構成を示す説明図である。図2の下方は重力方向下向きであるものとする。ヘッド部40は、ノズル41と液室42と容積変更部43と流路抵抗変更部44とを備えている。液室42は、液体が供給される部屋である。液室42は、液体を外部に吐出するためのノズル41に連通している。液室42には、液室42に液体を流入させるための流入路30と、液室42から液体を流出させるための流出路50とが接続されている。液室42およびノズル41は、例えば、金属材料内に空間を形成することによって構成されている。
【0018】
液室42の天面45は、振動板や弾性ゴムなどの弾性変形可能な部材によって構成されている。この天面45の上部には、液室42の容積を変更するための容積変更部43が設けられている。容積変更部43は、天面45を上下方向に移動させることによって液室42の容積を変更することができる。本実施形態では、容積変更部43として、上下方向に伸張可能なピエゾアクチュエーターを用いる。
【0019】
本実施形態では、流出路50の天面51の一部が、振動板や弾性ゴムなどの弾性変形可能な部材によって構成されている。この天面51の上部には、流出路50の流路抵抗を変更するための流路抵抗変更部44が設けられている。流路抵抗変更部44は、天面51を上下方向に移動させることによって流出路50の流路断面積を変更することができる。本実施形態では、流路抵抗変更部44として、上下方向に伸張可能なピエゾアクチュエーターを用いる。
【0020】
容積変更部43および流路抵抗変更部44は、制御部80(図1)に接続されている。制御部80は、例えば、容積変更部43を制御して液室42の容積を小さくすることによりノズル41から液体を吐出させる。また、制御部80は、例えば、ノズル41から液体を吐出させるために液室42に液体を充填する際に、流路抵抗変更部44を制御して流出路50の流路抵抗を大きくするとともに、容積変更部43を制御して液室42の容積を大きくする。制御部80は、CPUやメモリーを備えたコンピューターとして構成されており、メモリーに記憶された制御プログラムを実行することにより、これらの処理を実現する。なお、制御プログラムは、一時的でない有形な種々の記録媒体に記録されていてもよい。
【0021】
図3は、制御部80によって実行される液体吐出方法の処理内容を表すタイミングチャートである。図3の横軸は経過時間を示し、縦軸は、液室42の容積と流出路50の開度とを示している。流出路50の開度が高いということは、流出路50の流路抵抗が低いということであり、流出路50の開度が低いということは、流出路50の流路抵抗が高いということである。以下の説明において、制御部80は、容積変更部43を制御することによって液室42の容積を変更し、流路抵抗変更部44を制御することによって流出路50の流路抵抗を変更する。
【0022】
まず、制御部80は、図3に示すタイミングt0からタイミングt1において、液室42の容積を、最小容積と最大容積の間の容積である所定の中間容積にするとともに、流出路50の流路抵抗を最小として、待機を行う。この待機状態では、流出路50の流路抵抗が小さく設定されているので、流入路30から液室42に流入した液体はノズル41から吐出されず、そのまま流出路50へ流出する。なお、加圧ポンプ20による加圧力、負圧発生源70による負圧力、流出路50の流路抵抗の最小値、および、流入路30の流路抵抗は、この待機状態において、液室42内の圧力が、ノズル41の出口に形成されているメニスカスの耐圧よりも小さい値になるように予め設定されている。メニスカスの耐圧Pmは、以下の式(1)によって表すことができる。
Pm=2γcosθ/r ・・・(1)
ただし、γは液体表面張力、θはノズル41に対する液体の接触角、rはノズル41の半径。
【0023】
本実施形態において、最小容積とは、容積変更部43が調整可能な最小の容積であり、最大容積とは、容積変更部43が調整可能な最大の容積である。また、流路抵抗が最大とは、流路抵抗変更部44が調整可能な流出路50の最大の流路抵抗であり、流路抵抗が最小とは、流路抵抗変更部44が調整可能な流出路50の最小の流路抵抗である。最大の流路抵抗では、本実施形態では、流出路50が閉塞された状態になる。
【0024】
待機後、制御部80は、タイミングt1からタイミングt2にかけて、流出路50の流路抵抗を大きくするとともに、液室42の容積を大きくする第1の制御を行う。より具体的には、制御部80は、流出路50の流路抵抗を最小から最大まで大きくし、液室42の容積を中間容積から最大の容積まで大きくする。この第1の制御により、吐出を行うための液体が液室42およびノズル41に充填される。
【0025】
第1の制御によって液室42およびノズル41に液体が充填された後、制御部80は、タイミングt2からタイミングt3までの間に、流出路50の流路抵抗を最大に保ったまま、液室42の容積を急減させて最小にする。すると、液室42に連通したノズル41から液体が吐出される。なお、液室42の容積の急減によって液体の吐出に必要な圧力(メニスカス耐圧を超える圧力)が確保できるよう、流入路30の流路抵抗は適切な抵抗値になるように予め設定されている。
【0026】
ノズル41から液体が吐出された後、制御部80は、タイミングt3からタイミングt4にかけて、流出路50の流路抵抗を大きくしたまま、液室42の容積を大きくする第2の制御を行う。より具体的には、制御部80は、流出路50の流路抵抗を最大に保ったまま、液室42の容積を最小から最大まで急激に大きくする。この第2の制御により、吐出された液体の尾が、ノズル41から引き込まれることによって切断され、液体が液滴状となって飛翔する。
【0027】
第2の制御を行った後、制御部80は、タイミングt4からタイミングt5にかけて、流出路50の流路抵抗を小さくするとともに、液室42の容積を小さくする第3の制御を行う。より具体的には、制御部80は、流出路50の流路抵抗を最大から最小まで下げるとともに、液室42の容積を最大から中間容積まで小さくする。この第3の制御により、液室42の容積および流出路50の流路抵抗が待機状態に戻る。制御部80は、以上で説明した処理を繰り返し実行することにより、ノズル41から連続的に液滴状の液体を吐出することができる。
【0028】
図4は、本実施形態におけるヘッド部40の動作を示す図である。図5は、比較例におけるヘッド部40の動作を示す図である。以上で説明した本実施形態の液体吐出装置100によれば、前述した第1の制御によって、液体を液室42に充填する際に、流路抵抗変更部44を制御して流出路50の流路抵抗を大きくするので、液体が流出路50から排出されることを抑制しつつ、効率的に液室42に液体を充填することができる。
【0029】
しかも、本実施形態では、図4に示すように、流路抵抗変更部44を制御して流出路50の流路抵抗を大きくするのと同時に、容積変更部43を制御して液室42の容積を大きくする。そのため、流出路50の流路抵抗を大きくするために流路抵抗変更部44(アクチュエーター)によって流出路50の天面51を押し込んだ際に、天面51の直下にある液体が液室42に逆流したとしても、その逆流した液体を、容積を大きくした液室42で捕捉することができる。従って、図5の比較例に示すように、流出路50から逆流した液体がノズル41から漏れてしまうことを抑制できる。この結果、無用な液体がノズル41から漏れることを抑制できる。なお、前述した第1の制御では、流出路50の流路抵抗が最大になるまでに、液室42の容積が最大になっていることが好ましい。こうすることにより、流出路50から逆流した液体を液室42によってより適切に捕捉することができる。
【0030】
また、本実施形態では、第1の制御によって液体を充填した後、流出路50の流路抵抗を大きくしたままノズル41から液体を吐出するので、液体を吐出するための圧力が、流出路50に逃げてしまうことを抑制できる。そのため、効率的に液体を吐出することができる。
【0031】
また、本実施形態では、ノズル41から液体を吐出させた後、前述した第2の制御によって、流路抵抗変更部44を制御して流出路50の流路抵抗を上げたまま、容積変更部43を制御して液室42の容積を急激に大きくするので、吐出された液体の尾をノズル41から吸引するための吸引力が、流出路50側に逃げてしまうことを抑制できる。この結果、液体の尾を適切に切断することができ、ノズル41から液体が過度に吐出されてしまうことを抑制できる。
【0032】
また、本実施形態では、ノズル41から液体を吐出させた後、前述した第3の制御によって、流路抵抗変更部44を制御して流出路50の流路抵抗を下げるとともに、容積変更部43を制御して液室42の容積を小さくするので、液室42の液体が流出路50に流れ出すことに伴って液室42内の圧力が過度に低下することを抑制できる。そのため、液体の吐出後にノズル41から液体を引き込みすぎることを抑制でき、これにより、液室42内に無用な空気が取り込まれることを抑制できる。この結果、例えば、液体を吐出する際に、液室42内に残存する空気(気泡)の存在によって、液室42内の圧力が十分に高まらず、吐出不能になってしまうことを抑制できる。なお、前述した第3の制御では、流出路50の流路抵抗を低下させる制御を開始した後に、液室42の容積を低下させる制御を開始することが好ましい。こうすることにより、液室42の容積を低下させることに伴って、ノズル41側に液体が流出することを抑制できる。
【0033】
B.第2実施形態:
図6は、本発明の第2実施形態における液体吐出装置100Aの概略構成を示す説明図である。本実施形態における液体吐出装置100Aは、ヘッド部40Aに、複数の液室42、ノズル41および容積変更部43が設けられている。以下では、1組の液室42、ノズル41および容積変更部43のことを、「ヘッド」という。つまり、本実施形態では、ヘッド部40Aに、複数のヘッドが備えられている。
【0034】
各ヘッドの液室42には、1つの流入路30から分岐された分岐流入路301がそれぞれ接続されている。また、各ヘッドの液室42に接続された分岐流出路501は、一つの流出路50に合流し、合流した流出路50に対して、1つの流路抵抗変更部44が設けられている。つまり、本実施形態では、複数のヘッドに対して、1つの流路抵抗変更部44が共通して使用される構成になっている。制御部80は、流路抵抗変更部44および各ヘッドの容積変更部43に接続され、これらの動作を制御する。なお、本実施形態の液体吐出装置100Aは、加圧ポンプ20(図1参照)および循環路90(図1参照)を備えていない。そのため、タンク10から各ヘッドの液室42への液体の供給は、負圧発生源70が発生する負圧によって行われる。
【0035】
図7は、制御部80によって実行される液体吐出方法の処理内容を表すタイミングチャートである。図7には、上部に、液体を吐出するヘッド(吐出ヘッド)についてのタイミングチャートを示し、下部に、液体を吐出しないヘッド(非吐出ヘッド)についてのタイミングチャートを示している。本実施形態では、各ヘッドからは同期したタイミングで液体が吐出されるものの、制御部80によって指定されたヘッドのみから液体が吐出される。
【0036】
本実施形態では、流路抵抗変更部44が各ヘッドに共通化されているため、図7に示すように、流路抵抗変更部44による流出路50の流路抵抗については、吐出ヘッドと非吐出ヘッドとで全く同じ変化が示されている。これに対して、容積変更部43による液室42の容積変化は、吐出ヘッドと非吐出ヘッドとで異なっている。つまり、吐出ヘッドについては、図の上部に示すように、液室42から液体を吐出させるために、タイミングt2からタイミングt3にかけて、液室42の容積が、最大から最小に変化し、タイミングt3からタイミングt4にかけて、最小から最大に変化している。これは、第1実施形態(図3)で示した制御内容と同じである。これに対して、非吐出ヘッドについては、図の下部に示すように、タイミングt2からタイミングt4にかけて、液室42の容積は、最大のまま維持される。このように、液室42の容積が変化せずに最大に維持されれば、非吐出ヘッドから液体が吐出されることはない。
【0037】
ただし、本実施形態では、非吐出ヘッドについても、タイミングt1からタイミングt2までの間における第1の制御において、流出路50の流路抵抗を上げるとともに、液室42の容積を大きくする。こうすることにより、流出路50の流路抵抗を大きくした際に、流出路50から逆流した液体を、それぞれのヘッドにおいて容積を大きくした液室42で捕捉することができる。そのため、本実施形態によっても、第1実施形態と同様に、流出路50から逆流した液体がノズル41から漏れてしまうことを抑制できる。また、本実施形態では、複数のヘッドに対して、1つの流路抵抗変更部44が共通化されているため、アクチュエーターの数を削減することができる。そのため、複数のヘッドを有するヘッド部40Aの小型化やノズル41の高密度化を図ることが可能になる。
【0038】
C.第3実施形態:
図8は、本発明の第3実施形態におけるヘッド部40Bの概略構成を示す説明図である。第3実施形態では、液体吐出装置100の全体的な構成は第1実施形態と同じであり、ヘッド部40Bの構成が第1実施形態と異なる。
【0039】
本実施形態におけるヘッド部40Bは、第1実施形態と同様に、ノズル41と液室42と流路抵抗変更部44とを備えている。本実施形態では、ヘッド部40Bは、これらに加え、容積変更部として、第1容積変更部431と第2容積変更部432とを備える。第1容積変更部431は、第1実施形態における容積変更部43と同じ構成である。第2容積変更部432は、第1容積変更部431と流路抵抗変更部44との間に設けられており、液室42の弾性変形可能な一側面452を変位可能なピエゾアクチュエーターによって構成されている。制御部80は、第1容積変更部431と第2容積変更部432と流路抵抗変更部44とに接続され、これらの動作を制御する。第1実施形態では、容積変更部43が、液室42の容積を変更する機能と、ノズル41から液体を吐出させる機能とを兼ねているのに対して、本実施形態では、第1容積変更部431が、主に、ノズル41から液体を吐出させる機能を果たし、第2容積変更部432が、主に、液室42の容積を変更する機能を果たす。つまり、本実施形態において、制御部80は、第1容積変更部431を用いてノズル41から液体を吐出させる制御を行い、第2容積変更部432を用いて液室42の容積を変更する制御を行う。
【0040】
図9は、制御部80によって実行される液体吐出方法の処理内容を表すタイミングチャートである。図9には、流出路50の開度の変化とともに、第1容積変更部431の伸縮状態および第2容積変更部432によって変更される液室42の容積の変化を示している。
【0041】
図9に示すように、本実施形態における制御部80は、流出路50の開度、すなわち、流出路50の流路抵抗を第1実施形態と同様の制御によって変化させる。一方、制御部80は、タイミングt0からタイミングt2まで、すなわち、待機状態および液室42に対する液体の充填の際には、第1容積変更部431の伸縮状態を一定にし、液体の吐出を行うタイミングt2において、第1容積変更部431を伸張させ、液体の吐出後、液体の尾切りを行うタイミングt3において、第2容積変更部432を収縮させる。そして、液体の尾切り後、タイミングt4以降において、第1容積変更部431を再び、収縮状態にする。また、制御部80は、タイミングt0からタイミングt1までの待機状態においては、第2容積変更部432によって液室42の容積を最小とし、液室に液体の充填を行うタイミングt1からタイミングt2までの間に、液室の容積を増大させて最大にする。そして、液体の吐出および液体の尾切りが完了したタイミングt4以降に、液室42の容積を低下させて最小にする。
【0042】
なお、本実施形態において、液室42の容積を最小にするとは、第1容積変更部431の伸張に伴う容積変化を考慮せず、第2容積変更部432が調整可能な範囲で液室の容積を最小にすることである。また、同様に、液室42の容積を最大にするとは、第1容積変更部431の伸張に伴う容積変化を考慮せず、第2容積変更部432が調整可能な範囲で液室42の容積を最大にすることである。
【0043】
以上で説明した第3実施形態によっても、制御部80が、第1容積変更部431と第2容積変更部432とをそれぞれ個別に制御することによって、第1実施形態の容積変更部43と同様の動作を行わせることができる。従って、第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態によれば、第2容積変更部432によって液室42の容積を変更することができるので、第1容積変更部431は、ノズル41から液体の吐出が可能な構成であればよい。そのため、第1容積変更部431を構成するアクチュエーターの小型化やノズル41の高密度化を図ることができる。また、本実施形態では、第2容積変更部432が独立しているため、第2容積変更部432の可動範囲を大きくすることによって、流出路50の大きな容積変化(つまり、液体の逆流量の増加)に耐え得る設計を容易に行うことができる。そのため、流出路50の流路抵抗の可変範囲を大きくすることができる。
【0044】
なお、第3実施形態におけるヘッド部40Bは、第1実施形態の液体吐出装置100に限らず、第2実施形態の液体吐出装置100Aに対しても適用することが可能である。第3実施形態におけるヘッド部40Bを第2実施形態の液体吐出装置100Aに対して適用する場合、流路抵抗変更部44のみを複数のヘッドで共通化することが可能であり、また、流路抵抗変更部44と第2容積変更部432とを複数のヘッドで共通化することも可能である。流路抵抗変更部44や第2容積変更部432を複数のヘッドで共通化すれば、アクチュエーターの数を削減することができるので、ヘッド部の小型化やノズル41の高密度化を図ることが一層容易になる。
【0045】
D.変形例:
<変形例1>
上記実施形態において、制御部80は、流出路50の流路抵抗を大きくしたまま、液室42の容積を大きくする第2の制御を実行することによって、ノズル41から液体の尾を吸引して尾切りを行っている。これに対して、例えば、ノズル41の出口付近に液体の尾を切断するためのカッターを設け、そのカッターを液体の吐出タイミングに同期させて駆動することによって液体の尾を切断してもよい。
【0046】
<変形例2>
上記実施形態では、制御部80は、第2の制御後に、流出路50の流路抵抗を小さくするとともに、液室42の容積を小さくする第3の制御を実行することによって、液体の吐出後にノズル41から液体が過度に引き込まれることを抑制している。これに対して、制御部80は、第3の制御において、液室42の容積を変化させず、例えば、加圧ポンプ20によって液室42内の液体を加圧することによって、ノズル41から液体が過度に引き込まれることを抑制してもよい。
【0047】
<変形例3>
上記実施形態では、容積変更部43(第1容積変更部431、第2容積変更部432)および流路抵抗変更部44としてピエゾアクチュエーターを採用した。しかし、これらは、ピエゾアクチュエーターに限らず、エアシリンダーやソレノイド、磁歪材料などの他のアクチュエーターによって構成してもよい。
【0048】
<変形例4>
本発明は、インクを吐出する液体吐出装置に限らず、インク以外の他の液体を吐出する任意の液体吐出装置にも適用することができる。例えば、以下のような各種の液体吐出装置に本発明は適用可能である。
(1)ファクシミリ装置等の画像記録装置。
(2)液晶ディスプレイ等の画像表示装置用のカラーフィルターの製造に用いられる色材吐出装置。
(3)有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや、面発光ディスプレイ(Field Emission Display、FED)等の電極形成に用いられる電極材吐出装置。
(4)バイオチップ製造に用いられる生体有機物を含む液体を吐出する液体吐出装置。
(5)精密ピペットとしての試料吐出装置。
(6)潤滑油の吐出装置。
(7)樹脂液の吐出装置。
(8)時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置。
(9)光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂液等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置。
(10)基板などをエッチングするために酸性又はアルカリ性のエッチング液を吐出する液体吐出装置。
(11)他の任意の微小量の液滴を吐出させる液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置。
【0049】
なお、「液滴」とは、液体吐出装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体吐出装置が消費できるような材料であればよい。例えば、「液体」は、物質が液相であるときの状態の材料であれば良く、粘性の高い又は低い液状態の材料、及び、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような液状態の材料も「液体」に含まれる。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなども「液体」に含まれる。液体の代表的な例としてはインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種の液体状組成物を包含するものとする。
【0050】
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態や変形例の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
10…タンク、20…加圧ポンプ、30…流入路、301…分岐流入路、40…ヘッド部、40A…ヘッド部、40B…ヘッド部、41…ノズル、42…液室、43…容積変更部、44…流路抵抗変更部、45…天面、50…流出路、501…分岐流出路、51…天面、60…液体貯留部、70…負圧発生源、80…制御部、90…循環路、100…液体吐出装置、100A…液体吐出装置、431…第1容積変更部、432…第2容積変更部、452…一側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9