(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記トナー像を保持する像保持体を挟んで前記転写部材と対向する対向部材を有し、前記移動手段は、前記対向部材の回転軸の一端側を移動させて前記転写部材を移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び具体例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【0024】
「第1実施形態」
(1)画像形成装置の全体構成及び動作
(1.1)画像形成装置の全体構成
図1は本実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す断面模式図、
図2は画像形成装置1の機能ブロック図である。
画像形成装置1は、画像形成部10と、画像形成部10の一端に装着された用紙供給装置20と、画像形成部10の他の一端に設けられ、印刷された用紙が回収される用紙回収部30と、操作表示部40と、上位機器から送信された印刷情報から画像情報を生成する画像処理部50と、を備えて構成されている。
【0025】
画像形成部10は、システム制御装置11、露光装置12、感光体ユニット13、現像装置14、転写装置15、用紙搬送装置16a、16b、16c、定着装置17を備えて構成され、画像処理部50から受け取った画像情報を、用紙供給装置20から送り込まれた連続紙P上にトナー画像として形成する。
【0026】
用紙供給装置20は、連続紙Pがロール状に巻かれた給紙部材20aを有する、給紙部材20aは回転可能に支持され、連続紙Pに張力を付与しながら画像形成部10に対して連続紙Pを供給するように構成されている。
用紙回収部30は、画像形成部10にて画像出力が行われた連続紙Pを回転駆動される巻取りロール30aで巻き取ることにより回収する。
【0027】
操作表示部40は、各種の設定や指示の入力及び情報表示に用いられるものである。すなわち、いわゆるユーザインタフェースに相当するもので、具体的には液晶表示パネル、各種操作ボタン、タッチパネル等を組み合わせて構成されている。
【0028】
(1.2)画像形成部の構成及び動作
このような構成の画像形成装置1では、画像形成のタイミングに合わせて用紙供給装置20の給紙部材20aから延びる連続紙Pが画像形成部10へ搬送される。
【0029】
感光体ユニット13は、露光装置12の下方に、それぞれが並列して設けられ、回転駆動する像保持体としての感光体ドラム31を備えている。感光体ドラム31の回転方向にそって、帯電器32、露光装置12、現像装置14、一次転写ローラ52、クリーニングブレード34が配置されている。
【0030】
現像装置14は、感光体ドラム31に対向して配置された現像ローラ42が配設され、それぞれの現像装置14は、現像剤を除いて略同様に構成され、それぞれの現像ローラ42で感光体ドラム上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
【0031】
現像装置14の上方には、現像剤を収容する交換可能なトナーカートリッジTCと、それぞれのトナーカートリッジTCから現像装置14に現像剤Gを供給する現像剤供給装置43が配置されている。
【0032】
回転する感光体ドラム31の表面は、帯電器32により帯電され、露光装置12から出射する潜像形成光により静電潜像が形成される。感光体ドラム31上に形成された静電潜像は現像ローラ42によりトナー像として現像される。
【0033】
転写装置15は、各感光体ユニット13の感光体ドラム31にて形成された各色トナー像が多重転写される像保持体の一例としての中間転写ベルト51、各感光体ユニット13にて形成された各色トナー像を中間転写ベルト51に順次転写(一次転写)する一次転写ローラ52、中間転写ベルト51上に重畳して転写された各色トナー像を記録媒体である用紙に一括転写(二次転写)する転写部材の一例としての二次転写ベルト53とから構成されている。
【0034】
二次転写ベルト53は、複数の回転体の一例としての二次転写ローラ54と剥離ローラ55とによって張架され、中間転写ベルト51の背面側に配置された対向部材の一例としてのバックアップローラ65と二次転写ローラ54とに挟持されて二次転写部TRを形成する。
【0035】
各感光体ユニット13の感光体ドラム31に形成された各色トナー像は、システム制御装置11により制御される電源装置等(不図示)から所定の転写電圧が印加された一次転写ローラ52により中間転写ベルト51上に順次静電転写(一次転写)され、各色トナーが重畳された重畳トナー像が形成される。
【0036】
中間転写ベルト51上の重畳トナー像は、中間転写ベルト51の移動に伴って二次転写ベルト53が配置された領域(二次転写部TR)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部TRに搬送されると、そのタイミングに合わせて用紙供給装置20から連続紙Pが二次転写部TRに供給される。そして、二次転写ベルト53を介して二次転写ローラ54と対向するバックアップローラ65には、転写電圧が印加され、連続紙P上に中間転写ベルト51上の多重トナー像が一括転写される。
【0037】
感光体ドラム31表面の残留トナーは、クリーニングブレード34により除去され、廃トナー収容部(不図示)に回収される。感光体ドラム31の表面は、帯電器32により再帯電される。
【0038】
定着装置17は一方向へ回転する無端状の定着ベルト17aと、定着ベルト17aの周面に接し、一方向へ回転する加圧ローラ17bとを有し、定着ベルト17aと加圧ローラ17bの圧接領域によってニップ部(定着領域)が形成される。
転写装置15においてトナー像が転写された連続紙Pは、トナー像が未定着の状態で用紙搬送装置16aを経由して定着装置17に搬送される。定着装置17に搬送された連続紙Pは、一対の定着ベルト17aと加圧ローラ17bにより、加熱と圧着の作用でトナー像が定着される。
【0039】
定着の終了した連続紙Pは、用紙搬送装置16bを経由して用紙回収部30に送り込まれる。用紙回収部30へ送り込まれた連続紙Pは、張力を付与されながら巻取りロール30aで巻き取られる。
【0040】
(2)転写装置の構成と作用
(2.1)転写装置の構成
図3は本実施形態に係る画像形成装置1の転写装置15の構成を示す断面模式図、
図4(a)は画像形成装置1の二次転写部TRの構成を示す断面模式図、(b)は平面模式図である。
転写装置15は中間転写ベルト51、一次転写ローラ52、二次転写ベルト53、バックアップローラ65、二次転写ローラ54、クリーニング装置56、を備えて構成されている。
【0041】
中間転写ベルト51(
図4(b)においては、二点鎖線で示す)は、ポリイミド(PI)あるいはポリアミドイミド(PAI)等の樹脂にカーボンブラック等の導電剤を適当量含有させたものが用いられ、その体積抵抗率が10
10〜10
14Ω・cmとなるように形成されており、その厚みが例えば0.1mm程度のフィルム状の無端ベルトで構成されている。
【0042】
中間転写ベルト51は、中間転写ベルト51を循環駆動させる駆動ローラ61、各感光体ドラム31の配列方向に沿って略直線状に伸びる中間転写ベルト51を支持する従動ローラ62、中間転写ベルト51に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト51の蛇行を防止するテンションローラ63、二次転写部TRの上流側に設けられ、中間転写ベルト51を支持する支持ローラ64、二次転写部TRに設けられるバックアップローラ165、中間転写ベルト51上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップローラ66に張架されて周回移動する(図中 矢印A参照)。
【0043】
バックアップローラ65は、表面にカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブで、内部はEPDMゴムからなり、その表面抵抗率が10
7〜10
10Ω/□でローラ径が28mmとなるように形成され、硬度は例えば70度(アスカーC)に設定されている。
バックアップローラ65は、中間転写ベルト51の裏面側に配置されて二次転写ベルト53の対向電極をなしている。そして、バックアップローラ65には、二次転写部TRにて二次転写電界を形成するための直流電圧を印加する金属製の給電ローラ65Aが接触配置されている。
【0044】
一次転写ローラ52は、中間転写ベルト51を挟んで、各感光体ドラム31に対向して設けられ、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム31上のトナー像が中間転写ベルト51に順次、静電吸引され、中間転写ベルト51上に重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0045】
二次転写ベルト53は、クロロプレンやEPDM等のゴム部材にカーボンブラック等の導電剤を適当量含有させ、例えば体積抵抗率が10
6〜10
10Ω・cmに調整されており、その厚みが例えば0.3〜0.5mm程度の半導電性の無端環状ベルトである。尚、二次転写ベルト53の表裏面には、ウレタン変性フッ素樹脂からなる樹脂コート層53aが設けられトナー等の付着が抑制されている。
【0046】
二次転写ベルト53は、
図3に示すように、二次転写ローラ54及び剥離ローラ55に張架され、予め定められた張力が与えられる。そして、本実施形態では、二次転写ベルト53は、二次転写ローラ54から駆動力を受けて、予め定められた速度で回転する(図中 矢印B参照)。
【0047】
二次転写ローラ54は、金属シャフトである芯材の外周に、例えば、カーボンブラック等の導電剤の分散されたシリコーンゴム、ウレタンゴム、またはEPDM等の発泡体で構成された導電層が積層されて構成され、二次転写ベルト53及び中間転写ベルト51を介してバックアップローラ65に対向して配置される。
【0048】
二次転写ローラ54は、二次転写ベルト53上に搬送される連続紙Pに対して、電気的に接地されて、バックアップローラ65とともに中間転写ベルト51が保持するトナー像を二次転写する二次転写部TRを形成する。
又、二次転写ローラ54には、駆動モータ(不図示)が接続され、駆動モータによる回転駆動を受けて回転し、さらに二次転写ベルト53を回転させる。
【0049】
剥離ローラ55は、
図3に示すように、二次転写ベルト53の回転方向(図中矢印B方向)において二次転写ローラ54の下流側に位置し、剥離ローラ55と二次転写ローラ54とによって、連続紙Pを下流側に向けて搬送するベルト面を形成する。
更に、剥離ローラ55は、二次転写ベルト53面から連続紙Pを剥離させるために、剥離ローラ55のローラ径は二次転写ローラ54のローラ径よりも小さく設定している。
【0050】
(2.2)二次転写ベルトの移動制御
図5(a)はシフト機構100による剥離ローラ55の回転軸の移動を示す二次転写部TRの断面模式図、(b)はシフト機構100の構成例を示す平面模式図、
図6はシフト機構100の動作により剥離ローラ55の回転軸が移動して二次転写ベルト53がスラスト方向に移動する状態を示す平面模式図、
図7はシフト機構100の動作の流れを示すフローチャート、
図13(a)は二次転写部TRの用紙端部におけるバックアップローラ65、中間転写ベルト51、連続紙P、二次転写ベルト53の関係を示す拡大断面模式図、
図11(b)は二次転写ベルト53の樹脂コート層53aの破断までの屈曲回数と伸縮量との関係を示す図である。
【0051】
ここで、二次転写ローラ54及び剥離ローラ55に張架されて周回移動する二次転写ベルト53において発生する現象について説明する。
二次転写部TRでは、二次転写ベルト53と中間転写ベルト51を介したバックアップローラ65との転写ニップで連続紙Pを圧接して二次転写バイアスを印加し、形成された電界によりトナー像を連続紙Pに転写する。
【0052】
中間転写ベルト51はポリイミドあるいはポリアミドイミドといった熱硬化性樹脂であり、二次転写ベルト53は、ゴム層53bの上に樹脂コート層を設けた弾性体で形成される。このように構成される二次転写部TRの転写ニップで連続紙Pが圧接されると、用紙端部において、中間転写ベルト51に比べて柔らかい二次転写ベルト53の樹脂コート層53aが変形し、大きな歪みが生じる(
図13(a)における破線で示す領域参照)。そのために、用紙端部に相当する二次転写ベルト53は、転写ニップを通過するたびに歪みと解放を繰り返し、疲労破壊してクラックが発生する虞があった。
【0053】
図13(b)に示すように、樹脂コート層53aの伸縮量が大きいほど少ない伸縮回数で破断することが知られている。すなわち、一回の伸縮量が大きいほど、伸縮回数が多いほど破断しやすくなり、伸縮量は連続紙Pの厚さに対応することから、薄紙に比べ、厚紙ではクラック発生までの用紙走行距離は短くなる。
【0054】
係る用紙端部におけるクラックの発生に対して、用紙がカット紙の場合には、二次転写部TRにおいて、用紙供給装置20及び用紙回収部30とは独立して、二次転写ベルト53で用紙搬送するために、用紙搬送位置を二次転写ベルト53の搬送方向と交差する方向に適宜、移動させることで二次転写ベルト53表面へのダメージを容易に分散させることができる。
【0055】
一方、用紙が連続紙の場合、用紙搬送は用紙供給装置20及び用紙回収部30で行なうため、二次転写部TRでは用紙搬送(用紙位置)を独立に移動させるが出来ない。その結果、用紙供給装置20及び用紙回収部30における用紙搬送方向と交差する方向の用紙位置、または、用紙幅が変更されない限り、用紙は常に二次転写ベルト53の幅方向に対して、同じ位置を通過することになり、二次転写ベルト53へのダメージを分散することが出来ず、早期に樹脂コート層53aにクラックが発生し、二次転写ベルト53の使用寿命が短くなってしまう虞があった。
【0056】
本実施形態に係る画像形成装置1においては、連続紙Pの用紙厚みtと用紙走行距離Lに基づいて転写部材の一例としての二次転写ベルト53を連続紙Pの搬送方向と交差する方向に移動させる移動手段としてのシフト機構100を備えている。そして、シフト機構100は、用紙厚みtが厚いほど、用紙走行距離Lが短い距離で二次転写ベルト53を移動させる。
【0057】
具体的には、
図5(a)に示す(
図5(a)中 矢印R1参照)ように、シフト機構100は、複数の回転体としての二次転写ローラ54及び剥離ローラ55の回転軸間距離を変化させることによって、二次転写ローラ54及び剥離ローラ55に張架されて周回移動する二次転写ベルト53に周回方向と交差するスラスト方向への蛇行力を発生させて二次転写ベルト53を移動させる。
【0058】
シフト機構100は、
図5(b)に示すように、二次転写ベルト53、二次転写ローラ54、剥離ローラ55、二次転写フレーム101、剥離ローラ支持フレーム102R、102L、偏心カム103、ロータリアクチュエータ104、引張りばね105からなる。
二次転写ローラ54は、二次転写フレーム101、101に軸受で回転自在に支持され、剥離ローラ55は、剥離ローラ支持フレーム102R、102Lに軸受で回転自在に支持されている。
【0059】
剥離ローラ支持フレーム102Lは、ピン106で二次転写フレーム101に係合し、剥離ローラ支持フレーム102Rは、スタッド107で二次転写フレーム101に長穴108の長径の範囲内で移動可能に支持されている。スタッド107は、二次転写フレーム101の長穴108を貫通して突出し、スタッド107には、偏心カム103が接触している。偏心カム103は、ロータリアクチュエータ104で回転することで、スタッド107を二次転写フレーム101の長穴108の長径の範囲内で移動させて二次転写ローラ54及び剥離ローラ55の回転軸間距離D1、D2を変化させる。これにより、二次転写ベルト53は回転軸間距離が短くなった側に移動することになる。
【0060】
例えば、
図6に示すように、ロータリアクチュエータ104で偏心カム103が回転すると、スタッド107は長穴108の範囲で図中矢印R1の方向に移動して、剥離ローラ55は、ピン106を起点にその回転軸が移動して二次転写ローラ54及び剥離ローラ55の回転軸間距離D1、D2が変化する(D1>D2)。その結果、二次転写ベルト53は回転軸間距離が短くなった側(D2側)に移動する。
【0061】
システム制御装置11は、走行距離積算部110で、用紙供給装置20から供給された連続紙Pの累積の用紙走行距離Lを算出する(S101)。そして、用紙厚みtの情報から、シフト機構100による二次転写ベルト53の移動タイミングTとして、T=20000×1/tを算出し(S102)、これまでの用紙走行距離Lが移動タイミングTに達しているか否か判断する(S103)。その結果、累積の用紙走行距離Lが移動タイミングTに達した場合(S103:Yes)、システム制御装置11は、ロータリアクチュエータ104を180度回転駆動(S104)して剥離ローラ55の一端側を移動させて二次転写ベルト53をスラスト方向に移動させる。
【0062】
そして、再度、ロータリアクチュエータ104を180度回転駆動(S105)して剥離ローラ55の一端側を元の位置に移動させて二次転写ローラ54及び剥離ローラ55の回転軸間距離D1、D2をバランスさせ、移動した二次転写ベルト53のスラスト方向への移動を停止する。そして、用紙走行距離Lが二次転写ベルト53の使用寿命に到達するまで(S106:Yes)移動タイミングT毎に二次転写ベルト53を移動させる。
【0063】
このようにして、二次転写ベルト53の移動タイミングTが連続紙Pの用紙厚みtの逆数に比例して決定されることで、累積の用紙走行距離Lが短い距離で二次転写ベルト53をスラスト方向に移動させて、樹脂コート層53aにおける早期のクラックの発生を防止し、予め定められた二次転写ベルト53の使用寿命を達成することができる。
【0064】
「変形例1」
シフト機構100による二次転写ベルト53の移動タイミングTとしては、実施形態のように用紙厚みtの逆数に比例して決定することなく、二次転写ローラ54が二次転写ベルト53を介して連続紙Pを押圧する押圧力N(
図5(a)中 矢印N参照)が高いほど、用紙走行距離Lが短い距離で二次転写ベルト53を移動させるように決定してもよい。
【0065】
二次転写部TRにおいては、二次転写ベルト53と、中間転写ベルト51を介して対向するバックアップローラ65との間で連続紙Pを挟んで所定の押圧力Nで押圧した状態で二次転写電界を作用させて二次転写を行っている。そして、押圧力Nは、連続紙Pの用紙厚みtが厚いほど高く設定される。そのため、用紙厚みtが厚い場合には、二次転写ベルト53の樹脂コート層53aは転写ニップを通過するたびに高い押圧力が作用した状態で歪みと解放を繰り返し、疲労破壊してクラックが発生する虞がある。
【0066】
これにより、変形例1に係る画像形成装置1においては、二次転写ベルト53の移動タイミングTを、二次転写ローラ54が二次転写ベルト53を介して連続紙Pを押圧する押圧力Nが高いほど、用紙走行距離Lが短い距離で二次転写ベルト53を移動させるように決定する。
【0067】
「変形例2」
図8(a)は変形例2に係るシフト機構100Aによるバックアップローラ65の回転軸の移動を示す二次転写部TRの断面模式図、(b)はシフト機構100Aの構成例を示す平面模式図、
図9は変形例2に係るシフト機構100Aの動作によりバックアップローラ65の回転軸が移動して二次転写ベルト53がスラスト方向に移動する状態を示す平面模式図である。
二次転写ベルト53を連続紙Pの搬送方向と交差する方向に移動させる移動手段としてしては、
図8(a)に示す(
図8(a)中 矢印R2参照)ように、バックアップローラ65の回転軸を二次転写ローラ54の回転軸と交差するように移動させることにより二次転写ベルト53を移動させるシフト機構100Aであってもよい。
【0068】
シフト機構100Aは、
図8(b)に示すように、二次転写ベルト53、二次転写ローラ54、剥離ローラ55、バックアップローラ65、転写フレーム121、バックアップローラ支持フレーム122R、122L、偏心カム123、ロータリアクチュエータ124、引張りばね125からなる。バックアップローラ65は、バックアップローラ支持フレーム122R、122Lに軸受で回転自在に支持されている。
【0069】
バックアップローラ支持フレーム122Lは、ピン126で転写フレーム121に係合し、バックアップローラ支持フレーム122Rは、スタッド127で転写フレーム121に長穴128の長径の範囲内で移動可能に支持されている。スタッド127は、転写フレーム121の長穴128を貫通して突出し、スタッド127には、偏心カム123が接触している。
【0070】
偏心カム123は、ロータリアクチュエータ124で回転することで、スタッド127を転写フレーム121の長穴128の長径の範囲内で移動させてバックアップローラ65の回転軸を二次転写ローラ54の回転軸と交差させる。これにより、二次転写ベルト53には周回方向と交差するスラスト方向への蛇行力が作用してスラスト方向に移動することになる。
【0071】
例えば、
図9に示すように、ロータリアクチュエータ124で偏心カム123が回転すると、スタッド127は長穴128の範囲で図中矢印R1の方向に移動して、バックアップローラ65は、ピン126を起点にその回転軸が移動して二次転写ローラ54と回転軸が交差した状態となる。その結果、二次転写ローラ54とバックアップローラ65に挟まれて周回移動する二次転写ベルト53は
図9中 矢印R2の方向に移動する。
【0072】
このようなシフト機構100Aにおいて、連続紙Pの累積の用紙走行距離Lが、用紙厚みtに基づく移動タイミングT(=20000×1/t)に達した時点で、ロータリアクチュエータ124を180度回転駆動してバックアップローラ65の一端側を移動させて二次転写ベルト53をスラスト方向に移動させる。
【0073】
そして、再度、ロータリアクチュエータ124を180度回転駆動してバックアップローラ65の一端側を元の位置に移動させて、移動した二次転写ベルト53のスラスト方向への移動を停止する。そして、用紙走行距離Lが二次転写ベルト53の使用寿命に到達するまで移動タイミングT毎に二次転写ベルト53を移動させる。
【実施例】
【0074】
図10(a)は比較例における二次転写ベルト53の樹脂コート層53aにクラックが発生するまでの用紙走行距離Lを示す表、
図10(b)は実施例における用紙走行距離Lと二次転写ベルト53の樹脂コート層53aのクラックとの関係を示す表である。
【0075】
第1実施形態に係る画像形成装置1についての効果を確認するために、
図1に示すような画像形成装置の試作機を使用して、低温・低湿環境(10℃/15%RH)下で、連続紙Pとして幅300mmのロール状透明フィルム(PET)を用い、それぞれ用紙厚さt=100μm、150μm、200μmの3種類について走行評価した。評価は、各色(Y、M、C、K)画像密度5%で画像形成を行い、クラックの発生有無を、用紙走行距離10000m毎に、プロセス方向に200mmの全幅ベタの帯状画像(M100%、C100%)を描画して検知することにより行った。
【0076】
「比較例」
比較例においては、シフト機構100を備えていないために、二次転写ベルト53のスラスト方向への移動無しで、上記連続紙を走行させた。
その結果、
図10(a)に示すように、用紙厚みが厚い用紙ほど、二次転写ベルト53の樹脂コート層53aにクラックが発生するまでの用紙走行距離Lが短いことが確認された。
二次転写ベルト53の目標の使用寿命を500000m走行とした場合、いずれの厚み水準の連続紙Pにおいても、必要な用紙走行距離Lに到達しなかった。
【0077】
「実施例」
実施例においては、シフト機構100による二次転写ベルト53のスラスト方向への移動タイミングを、T=20000×1/t(m)に1回と設定し、そのタイミング毎にスラスト方向に二次転写ベルト53を1mmずらして走行を行なった。
その結果、
図8(b)に示すように、連続紙Pの全ての厚み水準において、目標の使用寿命500000m走行中にクラックが発生しないことが確認された。
【0078】
「第2実施形態」
図11は本実施形態に係る画像形成装置1Aの転写装置15Aの構成を示す断面模式図、
図12(a)は画像形成装置1Aの二次転写部TRの構成を示す断面模式図、(b)はシフト機構100Bの構成例を示す平面模式図である。
以下、図面を参照しながら、画像形成装置1Aについて説明するが、第1実施形態に係る画像形成装置1と共通の構成要素には、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0079】
転写装置15Aは中間転写ベルト51、一次転写ローラ52、二次転写ローラ54Aを含む二次転写ユニット150、シフト機構100Bを備えて構成されている。
【0080】
転写部材としての二次転写ローラ54Aは、樹脂コート層54Aaとしてフッ素コートが施されたウレタンゴムのチューブからなる表面層を有する体積抵抗率が10
6〜10
10Ω・cmの半導電性ゴムからなり、ローラ径が28mmとなるように形成され、硬度は例えば30度(アスカーC)に設定されている。
二次転写ローラ54Aは、中間転写ベルト51を介してバックアップローラ65に対向して配置され、用紙供給装置20から供給される連続紙Pに対して、バックアップローラ65とともに中間転写ベルト51が保持するトナー像を二次転写する二次転写部TRを形成する。
【0081】
二次転写ローラ54Aに対向して、樹脂コート層54Aaの表面に付着する残留トナーや紙粉等を除去するクリーニング装置56が配置されている。
クリーニング装置56は、二次転写ローラ54の表面に潤滑剤56dを塗布する塗布ブラシ56aと、塗布ブラシ56aで予め掻き乱された残留トナーや紙粉等を除去するクリーニングブレード56bから構成されている。
塗布ブラシ56aには、フリッキングバー56cが当接配置されて塗布ブラシ56a表面に付着した残留トナーや紙粉等を除去すると同時に塗布ブラシ56aに付着した潤滑剤56dを均一に均している。
【0082】
シフト機構100Bは、
図12(b)に示すように、二次転写ローラ54A、転写フレーム131、二次転写ローラ支持フレーム132R、132L、ラックギア133、ピニオンギア134、ロータリアクチュエータ135からなる。二次転写ローラ54Aは、二次転写ローラ支持フレーム132R、132Lに軸受で回転自在に支持されている。
【0083】
二次転写ローラ支持フレーム132Lは、スタッド136で転写フレーム131にブッシュB1を介してスライド方向に移動可能に支持され、二次転写ローラ支持フレーム132Rは、スタッド137で転写フレーム131にブッシュB2を介してスライド方向に移動可能に支持されている。スタッド137には、止め具Cの間にラックギア133が取り付けられ、ラックギア133にはピニオンギア134が噛み合っている。
【0084】
ピニオンギア134は、ロータリアクチュエータ135で回転することで、ラックギア133をスライド移動させ(
図10(b)中 矢印参照)、ラックギア133が取り付けられたスタッド137及び二次転写ローラ支持フレーム132R、132Lがスラスト方向に移動する。これにより、二次転写ローラ54Aが用紙搬送方向と交差するスラスト方向に移動することになる。
【0085】
このようなシフト機構100Bにおいて、連続紙Pの累積の用紙走行距離Lが、用紙厚みtに基づく移動タイミングT(=20000×1/t)に達した時点で、ロータリアクチュエータ135を回転駆動して二次転写ローラ54Aをスラスト方向に移動させる。
【0086】
また、シフト機構100Bによる二次転写ローラ54Aのスラスト方向への移動タイミングTは、二次転写ローラ54Aが連続紙Pを押圧する押圧力Nが高いほど、用紙走行距離Lが短い距離で二次転写ベルト53を移動させるように決定してもよい。
【0087】
このように、用紙厚みtが厚いほど、用紙走行距離Lが短い距離でシフト機構100Bを介して二次転写ローラ54Aをスラスト方向へ移動させることで、樹脂コート層54Aaに発生するクラックを防止することができる。
また、二次転写ローラ54Aが連続紙Pを押圧する押圧力Nが高いほど、用紙走行距離Lが短い距離でシフト機構100Bを介して二次転写ローラ54Aをスラスト方向へ移動させることで、樹脂コート層54Aaに発生するクラックを防止することができる。
【0088】
以上、本発明に係る実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で種々の変更を行うことが可能である。
【0089】
例えば、本実施形態では画像形成装置1は中間転写ベルトを用いた中間転写方式のタンデム型のカラープリンタとして説明したが、用紙搬送ベルトを有する直接転写方式の画像形成装置にも適用できる。